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新潟県PPP/PFI活用指針 (令和2年4月改定) 令和2年4月

新潟県PPP/PFI活用指針...PPP/PFI事業には、一般的に向いている事業と向いていない事業があるが、同種の事 業であっても立地条件やその他の要因によって事業成立の要件は大きく異なる。したが

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新潟県PPP/PFI活用指針

(令和2年4月改定)

令和2年4月

新 潟 県

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目 次

第1章 PPP/PFI導入の基本的考え方

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. PPP/PFIの意義 1

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2. PPP/PFIの積極的活用 1

・・・・・・・・・・・・・・・・・3. PPP/PFI導入(検討)における基本的留意事項 2

第2章 PPP/PFIの概要

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. PPPとは 5

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.1 PPP手法 5

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2. PFIとは 6

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.1 PFI法について 6

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.2 PFIの目的 6

・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.3 PFIの対象施設(公共施設等:法2条1項) 7

・・・・・・・・・・・・・2.4 PFIの事業主体(公共施設等の管理者等:法2条3項) 7

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.5 PFI手法の基本特性 7

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.6 PFI方式と従来方式の違い 10

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.7 PFIの効果 13

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.8 PFIの事業類型 15

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.9 PFI事業の方式 16

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.10 PFIの事業スキーム 17

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.11 PFIの「5原則」と「3主義」 18

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3. PPP/PFI事業のプロセス 19

第3章 PFI導入の手引き

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1. PFI事業実施プロセス 29

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2. 事業の発案 30

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.1 事業の発案プロセス 30

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.2 PFI基本適性について検討 32

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.3 制度的障害の有無・程度 33

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.4 効果の大きさ 33

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2.5 民間提案に対する対応(法6条) 34

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3. 実施方針の策定/公表(法5条) 35

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.1 基本的考え方 35

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.2 実施方針に定める内容 35

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.3 リスクの検討と分担について 38

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.4 実施方針策定見通しの公表(法15条) 41

・・・・・・・・・・・・・・・4. 特定事業(PFI事業)の評価/選定/公表(法7条) 41

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.1 基本的考え方 41

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.2 VFM評価の概要 42

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4.3 特定事業の評価/選定/公表のプロセス 44

・・・・・・・・・・・・・・・・・5. 民間事業者の募集/評価/選定/公表(法8条) 45

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.1 基本的考え方 45

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.2 契約方式の検討 46

・・・・・・・・5.3 民間事業者の募集/評価/選定/公表のプロセス(標準的な例) 49

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6. 契約の締結 54

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.1 仮契約の締結と契約の議決 54

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.2 契約の締結 54

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.3 契約上の留意事項 54

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6.4 契約内容の公表(法15条) 56

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7. PFI事業の実施/事業の監視(モニタリング) 57

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.1 事業の実施、監視 57

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7.2 事業破綻時等の対応 61

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8. 事業の終了 62

資料集

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料1 PFI検討調書 65

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料1-2 発案検討内容と留意点 67

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料2 VFM算定シート 72

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料2-2 VFM(Value For Money)について 76

・・・・・・・資料3 行政財産の使用について(H13年12月、H17年8月法改正) 111

・・・・・・・・・・・・・・・資料4 WTO政府調達協定の適用を受けるPFI契約 113

・・・・・・・・・・・・・資料5 公物管理法(公物・公共施設に関する法律) 115

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料6 性能発注について 116

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料7 アドバイザーについて 117

資料8 PFI事業におけるファイナンスについて(㈱日本政策投資銀行新潟支店)119

・・・・資料9 PFI事業の収益性分析について(㈱日本政策投資銀行新潟支店) 122

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・資料10 PFI事業と県議会との関係 124

・・・・・・・・・・・・・・資料11 公共施設等運営権制度(H23年5月法改正) 125

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第1章 PPP/PFI導入の基本的考え方

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1. PPP/PFIの意義

PPPは、公共と民間が連携して公共サービスの提供を行うスキームの総称である。PPP

の中には、PFI、DBO、指定管理者制度、包括的民間委託等の公民連携事業手法が含まれ、

PFIはPPPの一手法である。

◆ PPPの概念図

(㈱日本政策投資銀行)

PFIは、公共施設等の建設、維持管理、運営等に民間の資金、経営能力及び技術的能

力を活用することにより、同一水準のサービスをより安く、又は、同一価格でより上質の

サービスを提供する手法である。

PFI導入の効果としては次の点があげられる。

①低廉かつ良質な公共サービスの提供

(民間の経営ノウハウや技術的能力を活用し、コスト削減と質の高い公共サービスの提供)

②新たな官民パートナーシップの形成

(官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップの形成)

③柔軟性のある財政運営の確立

(財政健全化の取組の一環としての歳出の質的見直し)

④説明責任の向上

(情報公開、質疑・応答等による説明責任のさらなる向上)

⑤民間の事業機会の創出及び経済の活性化

(民間需要創出・民間雇用創出、金融市場の活性化等)

2. PPP/PFIの積極的活用

厳しい財政状況、人口減少の中で、効率的・効果的に公共施設等を整備・運営していく

ことが重要であり、PPP/PFI手法の導入は、公共施設等の整備・運営に民間の資金や創意

指定管理者制度

包括委託業務委託

PPP

民間の経営関与度

民間資金活用度

民営化

D B

PFIコンセッション

DBO

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工夫を活用することにより、効率的かつ効果的であって良好な公共サービスを実現するこ

とを目的としている。

したがって、公共施設の整備などを行う場合には一つの有力な選択肢としてPPP/PFI手

法の導入を検討し、効果が見込まれる場合には積極的に活用を図るものとする。

(1) 検討の開始時期

PPP/PFI手法の導入の検討を開始する時期は、公共施設等の整備・運営の方針を検討

する時期とし、具体的には以下の場合などが該当する。

①新たに公共施設等の整備等を行うために基本構想、基本計画等を策定する場合

②公共施設等の運営等の見直しを行う場合

(2) 対象事業

検討対象事業は、民間事業者の資金、経営能力及び技術的能力を活用する効果が認め

られる事業とする。例えば以下の事業などが対象となる。

①事業費の総額が10億円以上

②単年度の運営費が1億円以上

なお、上記に関わらず、以下の場合などは検討対象から除外することができる。

・既に公共施設の整備等に着手している場合

・公共施設等の整備等を行う手法が決定している場合(従来手法により実施する方

針が決定している場合を含む)

・既にPPP/PFI手法又は市場化テストの導入が前提とされている場合

・民間事業者が実施することが法的に制限されている場合

・災害復旧事業等、緊急に実施する必要がある場合

・PPP/PFI手法の導入により、当該公共施設を民間事業者が建設、所有、維持管理

・運営することが、公共性・公益性を担保できないおそれがある場合

3. PPP/PFI導入(検討)における基本的留意事項

(1) 事業の必要性

PPP/PFIは、総経費の削減や支出の平準化等の財政的な効果が見込まれるが、PPP/PFI

方式による場合であっても、あくまで事業の必要性を明確にすることが前提となる。

(2) 個別の判断の重要性

PPP/PFI事業には、一般的に向いている事業と向いていない事業があるが、同種の事

業であっても立地条件やその他の要因によって事業成立の要件は大きく異なる。したが

って、他県例などで安易に判断することなく、あくまで個別事業ごとに検討し、判定す

ることが必要である。

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(3) 現状を見直す姿勢

従来手法とPPP/PFI手法を比較検討する際は、民間のノウハウを活用するメリットは

どこにあるのか、どのような行政サービスの向上が図れるのかの観点から、吟味する必

要がある。

また、一般にコスト削減の効果は、構想・企画段階といった初期の段階での検討が大

きな効果をもたらし、建設・維持管理の段階になってからは大きなコスト削減は困難と

言われている。したがって、従来の組織体制や管理運営方法を前提として検討するので

はなく、民間の提案も取り入れながら民間のノウハウを最大限に活かせるように管理運

営方法そのものについても見直した上、PPP/PFIの検討を行うことも必要である。

(4) 課題を克服していく努力

国の税制や補助金などが、PPP/PFI事業を効果・効率的に実施する上で支障となって

いる場合は、これらを積極的に克服していく努力が必要である。

(5) 柔軟な対応

PPP/PFI手法の導入を検討する場合には、庁内での基本構想・基本計画を策定する段

階から検討を行う。特にPFIの場合は、特定事業(PFI事業)を選定する段階までは、最

適な調達手法を検討する重要なプロセスである。PFIの検討過程においては、実施方針

を公表し、民間の意見を反映させながら事業スキームの再構築を行い、最終的に事業の

適性を判断することとなるが、庁内外から十分意見を聴いて進めるなど柔軟な対応が必

要である。

検討の過程でPPP/PFIが有利でないと判断されれば、途中からでも従来手法へ変更す

ることは可能であり、たとえ従来手法となっても最善の手法を追求したことに意義があ

るので、その検討資料等は従来方式による事業実施の際にも十分活用が可能である。

(6) PFIはあくまでも一つの調達手法

PFIは、あくまで公共施設等の整備等における調達手法の一つであり、従来手法を含

めたあらゆる可能性の選択肢の一つであることに留意すべきである。

(7) PFIの原則を踏まえた取組(基本方針前文)

PFIに取り組む場合には、5つの原則(公共性、民間経営資源活用、効率性、公平性、

透明性)と3つの主義(客観、契約、独立)に則り行うことが基本である。(詳細後述)

(8) 県内産業の振興と県内企業の技術力の向上

PFIに取り組む場合には、建設技術のみならず、財務・金融、法務など幅広い専門の

知識が必要となる。県内産業の振興と県内企業の技術力の向上を図るため、PFI制度に

関する情報の積極的提供や、発注において県内企業の参加を要件とする(WTO政府調達

協定の適用を受ける場合を除く。)等の配慮等が必要である。

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第2章 PPP/PFIの概要

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1. PPPとは

「PPP(Public Private Partnership:パブリック・プライベート・パートナーシップ)」

とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民

間の創意工夫を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図るものである。

PFIはPPPの一類型であり、PPP/PFI手法は以下の特徴を有している。

①従来の官民の役割分担を見直し、民間事業者の役割を大幅に拡大し、その主体性を幅

広く認めるものであること

②協定等に基づき官民双方がリスクを分担すること

③民間事業者が事業実施に当たり相当程度の裁量を有し、創意工夫を活かすことで、事

業の効率化やサービスの向上を図れること

1.1 PPP手法

PFI以外の主なPPP手法として、以下のような事業手法がある。

◆ DB(Design Build)

民間事業者に設計(Design)、建設(Build)を一括して委ね、施設の所有、資金の調

達については県が行う方式。

◆ DBO(Design Build Operate)

民間事業者に設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施設の

所有、資金の調達については県が行う方式。

◆ 指定管理者制度

公の施設の維持管理・運営等を管理者に指定した民間事業者等に実施させる手法。

指定管理者は公の施設の利用料金を自らの収入とすることが可能。(詳細は、「指定

管理者制度の運用ガイドライン(新潟県)」を参照。)

◆ 包括的民間委託

民間事業者に維持管理等を複数年契約又は性能発注等により一括発注する委託方式。

◆ 公的不動産(Public Real Estate:PRE)の有効活用

公有地や公有施設を有償又は無償で民間事業者に貸与等を行い、民間事業者が公有

地や公有施設を活用して事業運営やサービスの提供を行う方式。

◆ リース

民間事業者が調達した設備等を公共が賃借する手法。(本活用指針では、建物など

公共施設等のリースを想定。)

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2. PFIとは

「PFI(Private Finance Initiative:プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)」

とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力及び技術的能力を活

用して行う手法である。

PFIは、従来公共部門が対応していた社会資本整備や公共サービスの提供を民間に委ね

ようとするものであり、民間の持つ資金、技術やノウハウ、事業管理能力などを活用する

ため、公共側の関与は必要最小限にとどめ、民間の創意工夫を積極的に導き出すように努

める必要がある。

2.1 PFI法について

我が国では、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI

法)が平成11年7月に制定され(同年9月施行)、平成12年3月にPFIの理念とその実現のた

めの方法を示す「基本方針」が、民間資金等活用事業推進委員会(PFI推進委員会)の議

を経て内閣総理大臣によって策定され、PFI事業の枠組みが設けられた。

以後、数回に亘る法改正を経て、平成23年5月には、PFI事業への民間参入促進に向けた

大幅な法改正が行われ、「民間事業者による提案制度」や「公共施設等運営権制度」等の

新たな制度が創設された。

2.2 PFIの目的

PFIの導入により、国や地方公共団体の事業コストの削減、より質の高い公共サービス

の提供を目指す。

◆ PFI手法の意義

PFI手法は、市場機能の有効活用や評価制度の導入などにより行政運営の効率化・活性化を図るNPM

理論の一翼を担う有力な手段と考えられる。

特に、従来の行政システムの効率性向上や厳しい財政状況下における行政需要の増大への対応など、

行政が抱える諸問題の解決策として期待できる事業手法であり、公共サービスにおける経済性(Econo

my)、有効性(Effectiveness)、効率性(Efficiency)の3Eを達成する手段の一つとして、活用意義が

ある。

また、PFI手法は、単に民間から資金調達を行いながら、事業費の低減化や平準化を図るだけではな

く、民間の経営、技術、サービス提供等のノウハウを活用して、市民にとってより良質で利便性の高

いサービス提供を実現し、あわせて民間の事業機会や雇用を創出する手法である。

※ NPM理論

ニュー・パブリック・マネジメント(NPM;New Public Management)は、1980 年代半ば以降、英国

・ニュージーランドなどのアングロサクソン系諸国を中心に行政実務の現場を通じて形成された革新

的な行政運営理論であり、その後世界各国に波及した概念である。民間経営の理念、手法をできる限

り多く行政運営に取り入れることにより、効率化やサービスの向上を図ろうというものであり、顧客

志向、成果主義、現場への権限委譲、競争原理の導入などからなる。

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2.3 PFIの対象施設(公共施設等:法2条1項)

道路、鉄道、港湾、空港 庁舎

河川、公園、水道、 宿舎等

下水道、工業用水道等

賃貸住宅及び教育文化施設 情報通信施設、熱供給施設、

廃棄物処理施設、医療施設、社会福祉施設 新エネルギー施設、リサイクル施設

更生保護施設、駐車場、地下街等 観光施設、研究施設

船舶・航空機等の輸送施設

・公共施設等の「等」はソフト事業のPFIを想定しているものである。

・上記以外で、これらに準ずる施設として、今後政令で追加されるものもある。

2.4 PFIの事業主体(公共施設等の管理者等:法2条3項)

PFI事業は、民間事業者により包括的に事業を委ねることが基本となるが、あくまで公

共政策であり、施設等の管理者は、下記に掲げる者に限られる。

(各省庁の大臣等) (都道府県知事)

(市町村長等)

2.5 PFI手法の基本特性

(1) 市場メカニズムに基づく事業手法

性能発注や競争性を前提とした市場メカニズムを活用して、民間の創意工夫が最も図

られた提案に基づき、公共サービスを調達することが可能である。

(2) 官民の明確・適切なリスク分担を前提とした事業手法

行政が殆どのリスクを負担していた従来手法に対し、PFI手法では、リスクを最も適

切に管理することができる者が当該リスクを分担するという考え方を前提に、官民のリ

スク分担を明確かつ適切に行い、官民それぞれの役割を契約で規定する事業手法である。

リスク分担(3章3.3 リスクの検討と分担について参照)

リスクとは、事業の実施にあたり、事故、需要の変動、物価や金利の変動等の経済状況の変化、

計画の変更、天災等様々な予測できない事態により、損失等が発生する可能性のことである。リス

ク分担とは、建設、維持管理、運営などライフサイクル全体において、リスクに対する処理責任の

所在を官民全ての関係者間で適切に分担することである。

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(3) ライフサイクル全体の効率性を評価指標とする事業手法

設計、建設、資金調達、運営、維持管理の一部又は全部を包括的に民間部門に委ね、

事業の開始から終了に至るまでのライフサイクル全体において、バリュー・フォー・マ

ネー(VFM)を追求することにより効率的な公共サービスの提供が実現され、財政負担

の軽減が可能となる事業手法である。

◆ VFMとは

VFMとは、一般に「支払に対して最も価値の高いサービスを提供する」という考え方である。具体

的には、同一コストを前提とした場合、最も価値の高い公共サービスを提供することであり、また

は同一水準のサービス確保を前提とした場合、最も安価に公共サービスを提供することである。

すなわち、公共サービスの調達において、税金等を原資とする財源の最も効率的又は効果的な資源

配分を意味する。

◆ VFMがある

同一の目的を有する2つの事業を比較する場合、支払に対して価値の高いサービスを供給する方を

他に対して「VFMがある」といい、残りの一方を他に対し「VFMがない」という。

◆ PFIを実施するかどうかの基準

PFI事業を実施することにより、当該事業が効率的かつ効果的に実施できることを基準とする。

「PFI事業として実施すること」が「公共部門が自ら実施する場合」に比べて「VFMがある」場合、

効率的かつ効果的に実施できるという当該基準を満たすことになる。

したがって、PFI事業としての実施を検討するに当たっては、「VFMの有無を評価すること」が基本

となる。(VFMの最大化の追求)

VFMの有無の評価

PSC PFI事業のLCC

リスク調整費 「VFMがある」

税・配当

維持管理・運営費

維持管理・運営費

設計、建設費 設計、建設費

支払利息 支払利息

リスク調整:事業に伴う費用超過など従来方式で行政が費用として算定していないコストを定量化したもの

・PSC(Public Sector Comparator)

公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値

・PFI事業のLCC(Life Cycle Cost)

PFI事業として実施する場合の事業期間全体を通じた公的財政負担の見込額の現在価値

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◆ VFMの源泉(VFM発生メカニズム)

PFIによる追加発生コスト

○より高い資金調達コスト PFIによる新たなコスト削減

(支払利息等) ○一括発注による民間経営ノウハウ活用

○民間の利潤 ○工期短縮による設計・建設費の削減

○PFI入札コスト ○リスク移転によるリスク管理コストの

(調査・設計・提案コスト等) 削減

○固定資産税などの公租公課 ○性能発注によるコストパフォーマンス

○事業監視コスト の最適化

※ 「VFMが発生する源」 ○建物のライフサイクルコストを考慮し

PFI実施による追加発生コストより、新たに削減される た設計と維持管理・運営の実施

コストの方が大きい場合 ○公共の財政支出の平準化による実質的

負担の軽減

○その他民間の技術力・経営力の活用

など

◆ 民営化、外部委託、PFIについて

民営化は、対象となるサービスの提供を全面的に民間部門に委ねるものであり、事業は市場からの

収益を基本として完全に独立した事業体(企業等)で実施される。このメリットとしては、民間の専

門分野のノウハウや資金、経営能力をフルに活用できることがあげられるが、採算性等の面から本来

必要なサービスが確保されるかどうかなどの問題が残る。

また、外部委託(アウトソーシング)は、事業の実施主体や管理主体はあくまでも公共部門である

が、サービス提供の現場的な業務を民間に発注するものである。この場合、公共部門が定めた仕様や

作業指示書等に基づき事業が実施されるため、民間部門の創意工夫の余地は限られている。ただし、

包括的外部委託や利用料金制による公の施設の指定管理者制度など管理者の自主性を重んじる手法も

出てきている。

これに対し、PFIは事業の設計・施設整備・運営等を一括して民間部門が担い、公共部門は民間部門

からサービスを調達する方式である。具体的には、官民の明確かつ適切なリスク分担に基づき、民間

部門のノウハウを最大限活用し、低廉良質な公共サービスを長期に亘って民間部門から調達する。公

共部門は、契約書に規定された公共サービスの水準の監視を行い、サービスに対する対価を支払うが、

細かな仕様、作業手順等は民間部門に委ねる。但しPFIでも独立採算型は民営化に近いものとなる。

外部委託 PFI 民営化

公共部門 民間部門

国・自治体 公社・公団 サービス委託 BOT,BTO,BOO 民間企業

公益企業 指定管理者制度等 等

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2.6 PFI方式と従来方式の違い

(1) 事業手法の検討

従来方式においては、「請負発注」、「工事期間の分割や工区別・工種別発注」が原則

であるが、PFI事業方式においては、「包括的発注(一括発注かつ維持管理・運営も含む)」

を基本とした長期契約が原則であるため、ライフサイクル全体の効率性を評価するため

の検討経費や検討期間が必要となる。

企画 設計 建設 管理・運営 監視

従来型公共事業

公共

PFI事業 民間

※・管理・運営のみのPFIも考えられる。

・PFIでは、事業の発案が民間からなされる場合もある。

(2) 管理運営主体

従来方式においては、事業の継続責任及び事業の包括的執行責任を公共部門が担った

まま、細かな仕様に基づいて民間事業者に業務を委託することが原則であるが、PFI方

式においては、長期の場合は20~30年に亘って民間事業者に事業の包括的執行責任を委

ねることが原則となるため、民間の創意工夫のインセンティブが働き、効率性を誘導す

ることができる。

(3) 支援措置

従来方式においては、発注する契約内容の中に支援措置という概念は一般的にないが、

PFI方式においては、VFMの範囲内であれば、民間事業者の受注が可能となるような支援

措置の設定により民間事業者の事業参画を誘導し、良質なサービスの確保を担保するこ

とがあり得る。

※ 支援措置の例

①法制上の措置に関する事項

・事業実施に必要な許認可に関連した措置がある場合は、その具体的内容

②税制上の措置に関する事項

・適用可能な税制上の特例措置がある場合は、その具体的内容

③財政上の支援に関する事項

・補助金、土地の無償貸与、(地方公共団体から)出資がある場合など、その内容及び条件

④金融上の支援に関する事項

・無利子融資枠が予算計上されている場合には、その対象となる事業の条件

・資金の融通のあっせんがある場合には、あっせん先の金融機関及び供与条件

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(4) 契約方式

従来方式においては、「仕様発注」による契約や、価格のみで入札等を行うことが原

則であるが、PFI方式においては、民間ノウハウの活用を図るため、「性能発注」(資料6)

を原則として、価格以外の要素を加味した総合評価方式を採用することが一般的である。

※ 性能発注(資料6)

発注者が求めるサービス水準を明らかにし、事業者が満たすべき水準の詳細を規定した発注方法。

PFI方式の最大の目的は、民間のノウハウを活かし「求められるサービスを提供するための」施設

を整備し運営することである。したがって、従来の方式においては不可欠な、施設の仕様(形状、

配置等)を明確にして発注するよりも、「要求されるサービス内容とその水準」を明確にして発注す

ることが重要となる。すなわち、「仕様発注」から「性能発注」へ手続を転換することが必要になる。

(5) リスク分担

従来方式においては、リスクは基本的に行政が負担することとし、不確定要素の大き

いリスクについては、その発生時に契約当事者間で協議する契約が一般的であるが、PF

I事業方式においては、契約期間において発生するリスクを契約時に詳細に明示し、リ

スクの一部を民間に移転させるとともに、官民の役割分担により不確定性を排除し、ト

ラブルの発生を未然に防ぐことを基本としている。

(6) 情報公開

従来方式においては、入札に関する必須情報の公表や情報公開制度に基づく情報の提

供などが主なものであるが、PFI方式においては、各手続段階における「基準」、「方法」、

「結果」などの公表を積極的に行い、「客観性」、「公正性」、「透明性」を確保すること

になる。

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◆ 三セクなどの民活手法の反省をPFIに活かすために

・三セクは、行政と民間が共同出資した事業体が事業を実施することで、公益的な事業に民間の経営

手法を取り入れて効率的な事業運営を行おうとするものである。

・他方、PFIは行政と民間の協働を前提とするが、民間の資金や経営ノウハウを活用し、契約に基づい

て建設、資金調達、維持管理の一連の行為を民間に委ねるものである。(ただし、例外的に維持管理

のみのものも考えられる。)

・三セクが経営悪化に陥ったのは、一般的に次のようなことが原因といわれている。

① 自治体を担保にした信用膨張(自治体を担保にした金融機関の甘い融資等)

② 経営責任の曖昧さ(官民もたれ合いで、責任体制が不明確等)

③ 施設の経営に対する意識が希薄(施設建設を重視、運営は二の次的な感覚等)

④ 公的支援を受けていることによる制約(出資を受けている分、経営の自由度が低い等)

⑤ 当初の採算見積の甘さ(バブル期の右肩上がりの採算見込み等)

⑥ 経営のチェック機構がない(工事受注等のための出資者が多く経営に無関心、情報開示少ない等)

・PFIは上記の反省の上に立って、以下の面が期待されている。

① プロジェクトの採算性の十分な評価

② 市場メカニズムに基づく資金調達

③ 官民の責任分担の明確化

④ 利害関係者に対する積極的な情報開示

・また、PFI事業者が国又は地方公共団体の出資又は拠出に係る法人である場合には、責任が不明確に

ならないよう特に留意して、事業契約において公共施設等の管理者との責任分担が明記されなけれ

ばならないとしている。(法第14条2項)

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2.7 PFIの効果

(1) 低廉かつ良質な公共サービスの提供

PFI事業では、民間事業者の経営上のノウハウや技術的能力を活用することができる。

また、事業全体のリスク管理が効率的に行われることや、設計・建設・維持管理・運

営の全部又は一部を一体的に扱うこと等により、事業期間全体を通じてのコスト(ライ

フサイクルコスト)の削減が期待できる。

これらにより、コストの削減と質の高い公共サービスの提供が期待される。

(2) 新たな官民パートナーシップの形成

従来、国や地方公共団体等が行ってきた事業を民間事業者が行うようになるため、官

民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップが形成されていくことが期待

される。

(3) 柔軟性のある財政運営の確立

民間事業者の資金調達能力の活用により、公共部門の支出の平準化が期待でき、将来

発生するリスクを一部民間に移転することで、従来、あいまいで不確実性が高かった将

来支出を明確化かつ低減化することが可能となり、柔軟性のある財政運営の確立に寄与

する。

(4) 説明責任の向上

各手続過程の中で、情報公開、質疑・応答及び意見募集などに積極的に対応すること

で説明責任の向上に寄与する。

(5) 民間の事業機会の創出及び経済の活性化

従来、国や地方公共団体等が行ってきた事業を民間事業者にゆだねることから、民間

に対して新たな事業機会をもたらす。また、他の収益事業と組み合わせることによって

も、新たな事業機会を生み出すこととなる。

PFI事業のための資金調達方法として、プロジェクトファイナンス等の新たな手法を

取り入れることで、金融環境が整備されるとともに、新しい金融市場の創出につながる

ことも予想される。

このようにして、新規産業を創出し、経済構造改革を推進する効果が期待される。

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◆ ファイナンス(融資)について

◆ コーポレートファイナンス

いわゆる会社の信用力による融資のこと。ファイナンスの直接目的である事業が破綻しても、他の

事業分野の収益もしくは資産処分によって返済がカバーされる見通しが立てばファイナンスが成立す

る。(借り手企業の全ての事業分野にわたる収益と返済能力をよりどころとして、借り手の資産全体を

返済財源の担保の対象としている。)

◆ プロジェクトファイナンス(PFI事業で活用されている)

あるプロジェクトの資金調達において、返済原資をその事業から生み出されるキャッシュフローの

みに依存するファイナンスのこと。また、担保は当該事業に関連する資産(含む契約上の権利)に限

定し、プロジェクトを行う企業の親会社の保証、担保等は原則としてない。

PFIにおいては、基本的に当該PFI事業のみを行うSPC(特別目的会社)が設立されること、収入は当

該PFI事業により生み出されるキャッシュフローに限られること、公共と民間事業者とのリスク分担が

決められており、一方が包括的に事業リスクを負うものではないことから、プロジェクトファイナン

スによる資金調達になじみ易いものとなっている。

・ノンリコースファイナンス

破綻時に、親会社へ責任を全く遡及(リコース)しない

・リミテッドリコース

限定的な事由による債務不履行の場合にのみ親会社に責任を遡及する

◆ SPC(特別目的会社)に対する融資

プロジェクトファイナンスは、特定のプロジェクトに対するファイナンスであるので、そのプロジ

ェクトを遂行する別会社であるSPC(Special Purpose Company)を設立して、この会社が独立して借り

入れを行う資金調達の仕組みであり、親会社の倒産等の危険から隔離する方法がとられている。

◆ 責任の明確な取り決めと適切なリスク分担

契約期間が長期に亘るため、様々なリスクが存在するが、事業に参加する各当事者がどのようにリ

スクを分担するか、あるいは万が一そのプロジェクトが破綻した場合その処理方法をどうするかを契

約により明確に取り決めるのがプロジェクトファイナンスの特徴である。

◆ キャッシュフロー分析

プロジェクトファイナンスは、その事業から生み出されるキャッシュフローのみを返済財源として

融資が行われるため、SPC(事業者)と貸し手の銀行では、長期間の事業から得られる予想損益を、そ

れが実現するまでの期間に応じた割引率で割引いて、現時点での価値に引き直した上で、投資採算を

評価するNPV(Net Present Value:正味現在価値)方式を採用することが多い。

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2.8 PFIの事業類型

公的部門が行うべき分野は、本来、民間事業として馴染みにくいものであることから、

PFI事業の多くは「サービス購入型」で実施することとなる。

また、施設の利用者から料金を徴収するなど、より民間事業に近いものについては、「ジ

ョイントベンチャー型」や「独立採算型」で実施することとなる。

◆「公共関与の形態」や「事業資産の所有形態」の側面から分類した例

類型 内容 公共部門の関与 事例 イメージ図

民間事業者が独自に資 サービス提供の対 学校

サービス購入型 金を調達して、施設や資 価を支払う 美術館 公共部門

産の設計、施工、維持管 病院 サービス対価の支払

理及び運営(サービスの 庁舎

提供)を行い、公共セク 公営住宅 民間事業者

ターが公共サービス購入 など サービス提供

の対価として支う料金で

PFI事業の事業費を賄 利用者

う類型

民間事業者が独自に資 初期投資や利用料

ジョイントベン 金を調達して施設や資産 金の一部を補助 公共宿泊 公共部門

チャー型 に対して投下した資本の 施設 補助金等

回収を、受益者からの対 など

価支払だけでは賄うこと 民間事業者

ができないと見込まれる サービス 利用料金

場合に、当該事業の公共 提供 支払

性を考慮して、公共部門 利用者

が一定の財政負担をする

ことによって、民間事業

者のサービスの提供を可

能にする類型

民間事業者が独自に資 行政的な許認可の 駐車場

独立採算型 金を調達して、施設や資 付与やサービス要求 港湾荷役 公共部門

産の設計、施工、維持管 水準の規定など、公 施設 事業認可、占用許可等

理及び運営(サービスの 共性の確保に関する 水族館

提供)を行い、サービス 処理のみを行い、財 など 民間事業者

の利用者からの直接的な 政的な関与は行わな サービス 利用料金

対価の支払によって、利 い。 提供 支払

益を含めた投資を回収し、 利用者

公共部門の支出が生じな

い類型

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2.9 PFI事業の方式

事業の建設・所有形態により、下記のような事業方式がある。様々な事業をどの事業類

型にするかが決まれば、さらに具体的に、事業方式を検討する必要がある。

この中で、わが国で最も一般的な事業手法はBTOである。

◆ BOT(Build Operate Transfer)

民間事業者が施設を建設(Build)し、契約期間にわたり運営(Operate)、事業終了後、

県にその施設を譲渡移管(Transfer)する方式。

◆ BT0(Build Transfer Operate)

民間事業者が施設を建設(Build)した後、施設の所有権を県に移管(Transfer)した

上で、民間事業者がその施設の運営(Operate)を行う方式。

◆ BOO(Build Own Operate)

民間事業者が施設を建設(Build)し、そのまま保有(Own)し続け、事業を運営(Opera

te)する方式で、BOTと異なるのは、事業終了段階で施設の譲渡を行わず民間事業者が

保有し続けるか、若しくは撤去する点である。

◆ BT(Build Transfer)

民間事業者が施設を建設(Build)し、施設完成直後に施設の所有権を県に移管(Tran

sfer)する方式。

◆ RO(Rehabilitate Operate)

施設を改修(Rehabilitate)し、管理・運営(Operate)する事業方式。所有権の移転

はなく、地方公共団体が所有者となる方式。

◆ BTOかBOTかは事業内容、事業スキーム、資金返済方法など考慮し、事業ごとに判断する必要がある。

① 法制度上BTOもしくはBOTに関する規制があるかを調査(所有権が必要か否か等)

② 補助金交付等について制約はないか(各省庁に確認する必要あり)

③ PFIの導入メリットに何を求めるか(参考例)

・民間事業者の創意工夫によるサービス向上を重視 運営自由度が高いBOTを選択する傾向あり

・VFMを重視する場合 固定資産税等税負担がVFMの支配的要素となる時、BTOを選択する傾向あり

・民間事業者へのリスク移転を重視する場合 所有権が民間事業者にあるBOTを選択する傾向あり

〔参考〕公共施設等運営事業(資料11)

利用料金の徴収を行う公共施設等について、施設の所有権を県が有したまま、施設

の運営権を民間事業者に設定する方式(コンセッション方式)で、平成23年5月のPFI

法改正により新たに導入されたもの。

なお、公共施設等運営権制度の具体的な内容等については、資料11を参照すること。

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2.10 PFIの事業スキーム

PFIには、様々な事業スキームが考えられ、個々の事業の性格により、それぞれに適し

た事業スキームの適用を図る必要がある。

◆ PFIの事業スキーム(例)

(特別目的会社(SPC)を設立して、PFI事業を実施していく場合の一般的な例)

補助金

新潟県 国

直接協定 事業契約 PFI支払

監視

融資契約 出資・配当

金融機関 特別目的会社 出資者

保険契約 (SPC) 建設会社、商社

保険会社 ビル管理会社、投資家など

サービス

提供

利用者

管理・運営 設計・建設

委託契約 管理・運営会社 設計・建設会社 請負契約

民間事業者のグループ(コンソーシアム)

※ 特別目的会社(SPC:Special Purpose Company)(資料8)

契約相手方として選定された民間事業者のグループによって設立される、事業目的などを限定し

た会社法上の株式会社

※ 直接協定(資料8)

SPCが事業遂行困難となった場合に、資金を共有している金融機関がプロジェクトの修復を目的に、

事業に介入するための必要事項を規定した公共と金融機関との間で結ばれる協定

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2.11 PFIの「5原則」と「3主義」

PFIの基本理念や期待される成果を実現するため、PFI事業は次のような性格を持つこと

が求められており、これらに則りPFIに取り組む必要がある。(基本方針前文)

◆公共性原則 ・公共性のある事業であること。

◆民間経営資源活用原則 ・民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用すること。

◆効率性原則 ・民間事業者の自主性と創意工夫を尊重することにより、効

率的かつ効果的に実施すること。

◆公平性原則 ・特定事業の選定、民間事業者の選定において公平性が担保

されること。

◆透明性原則 ・特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確

保されること。

■客観主義 ・各段階での評価決定について客観性があること。

■契約主義 ・公共施設等の管理者等と選定事業者との間の合意につい

て、明文により、当事者の役割及び責任分担等の契約内容

を明確にすること。

■独立主義 ・事業を担う企業体の法人格上の独立性又は事業部門の区分

経理上の独立性が確保されること。

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3. PPP/PFI事業のプロセス

PPP/PFI手法の導入を検討する場合の手続は、以下のとおりとする。

(1) 適切なPPP/PFI手法の選択

基本構想・基本計画を策定する段階において、当該事業の期間、特性、規模等を踏ま

え、当該事業の品質確保に留意しつつ、最も適切なPPP/PFI手法(以下「採用手法」と

いう。)を選択する。

(2) 簡易な検討(庁内検討)

事業担当課は採用手法について、従来手法による場合との費用総額の比較(簡易な検

討)を行う。簡易な検討に当たっては、コンサルタント会社を活用せずに、以下の「PP

P/PFI手法簡易定量評価調書」に基づき採用手法の導入の適否について検討する。

※具体的には、内閣府「PPP/PFI手法導入優先的検討規程策定の手引」の別紙2~5

を参照。

※調書の作成に当たっては、総務管理部行政改革課に相談することができる。

なお、採用手法の過去の実績が乏しいこと等により、費用総額の比較による簡易な検

討が困難な場合は、公的負担の抑制につながることを客観的に評価することができる方

法により、採用手法の導入の適否を評価することができる。具体的には以下の場合など

が該当する。

①民間事業者への意見聴取を踏まえた評価

②類似事例の調査を踏まえた評価

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(3) 詳細な検討(導入可能性調査)

事業担当課は簡易な検討においてPPP/PFI手法の導入可能性があると判断された場合

は、必要によりアドバイザー(コンサルタント会社)を活用した詳細な検討(導入可能

性調査)を実施する。(導入可能性調査の詳細については、p35のPFI導入可能性調査の

フローを参照。)

(4) 検討の省略

同種の過去の実績(他自治体のものを含む。)に照らし、PPP/PFI手法の導入が適切と

認められる場合は、PPP/PFI手法導入の検討を省略することができる。具体的には以下

の場合などが該当する。

①簡易な検討及び詳細な検討共に省略可能な場合

指定管理者制度を導入する場合

②簡易な検討のみを省略可能な場合(詳細な検討は実施)

・BTO方式であって、施設整備業務の比重が大きい事業又は運営等の業務内容が定型的

な事業

・民間事業者からの提案であって、客観的な評価によりPPP/PFI手法導入が有利な場合

(5) 評価結果の公表

事業担当課は簡易な検討及び詳細な検討の結果、PPP/PFI手法を導入しないと判断さ

れた場合は、入札手続の終了後等の適切な時期にそれぞれ導入しないこととした理由及

び評価内容を県ホームページ上で公表する。

PFIにおいては「事業の発案」から始まり、事業概要を示した「実施方針」の公表、PFI

の導入を決定する「特定事業」の選定、「民間事業者」の選定、「契約」の締結などの一

連の手続をアドバイザーを活用しながら進め、その後、民間事業者により事業が実施され、

発注者側は事業終了まで監視を行う。

なお、PFI以外の例えばDBOを選択した場合は、PFIの場合の手続を準用することができ

る。

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◆ PPP/PFI事業の一般的なフロー(総合評価一般競争入札の場合の例)

【一般的なフロー】 【手続内容等】

基本構想・基本計画策定

事 業 の 発 案 適切なPPP/PFI手法の選択

簡易な検討(庁内検討)

⇒PPP/PFI手法を導入しない場合は、

評価結果を公表

(アドバイザーの活用) ↓PPP/PFI手法の導入可能性あり

詳細な検討(導入可能性調査)

0.5 ⇒PPP/PFI手法を導入しない場合は、

~ 評価結果を公表

1年 ※これ以降はPFIの場合 PFI評価委員会開催

PFI導入方針決定

実施方針作成検討開始

PFI評価委員会開催

・実施方針の評価など

実施方針の策定 /公表

実施方針公表、質問・回答、意見募集

特定事業の評価/選定/公表

特定事業(PFI事業)の評価 /選定

/公表

債務負担行為設定の議決

事業者選定委員会開催

1年 ・入札説明書等の評価

~ 民間事業者の募集 /評価 /選定 /公表 入札説明書等の配布と説明会の開催

1.5年 質問受付・回答

入札

事業者選定委員会開催

・落札者の選定

選定結果の通知・公表

仮契約締結

契 約 の 締 結 議会の議決(本契約)

約10年 事業の実施 /事業の監視(モニタリング) 着工

~ 事業の監視(モニタリング)

30年

事 業 終 了 財産引継、事後評価など

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 ◆ 新潟県のPPP/PFI事業実施プロセスと実施体制

手続内容 PFI推進事務局 事業担当課 民間事業者

事業の発案

(民間提案の審査協力)・基本構想、基本計画策定(民間提案の受付・適否判断)【財政課】面積査定・適切なPPP/PFI手法の選択・簡易な検討(庁内検討)⇒PPP/PFIを導入しない場合、評価の結果を公表・導入可能性調査の予算要求

(PPP/PFI事業の提案)

・詳細な検討(導入可能性調査) ・提案書依頼 ・委託業者選定⇒PPP/PFIを導入しない場合、評価の結果を公表

※これ以降はPFIの場合 ・PFI検討調書 VFM算定シート作成協力・PFI評価委員会の開催

・PFI導入の検討(PFI検討調書、VFM算定シートの作成)

・PFI導入方針決定・アドバイザー予算要求

・PFIアドバイザーの募集・選定

・相談窓口、情報収集・検討の進行管理

・アドバイザー契約・事業計画の作成・サービス・ニーズの特定・比較対象方式の設定・事業方式の検討(法制面の制約条件、事業期間、契約方式、事業スキーム、リスク分析・官民役割分担、市場調査、資金調達、ライフサイクルコスト算定等)・要求水準書の作成・VFMの検討・支払システム・監視方法の設定・契約の基本条件の整理・事業管理計画の作成・【財政課】PSCグレード査定・【財政課】VFM査定

・市場調査への協力

実施方針の策定/公表

・内容精査・確認・PFI評価委員会の開催(実施方針の評価決定など)

・実施方針の策定見通しの公表・実施方針の策定・実施方針の公表・質問・意見の受付・反映

・実施方針の確認・質問・意見の提出

特定事業の評価/選定/公表

・内容精査・確認 ・実施方針の修正・評価・選定報告書の作成・選定結果の公表・実施方針修正内容の公表

・特定事業の公表内容及び実施方針の修正内容確認

実施方針の検討(PFIとしての可能性の検討)

〈導入検討段階〉

〈特定事業の選定段階〉

〈事業計画段階〉

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 ◆ 新潟県のPPP/PFI事業実施プロセスと実施体制(その2)

手続内容 PFI推進事務局 事業担当課 民間事業者

民間事業者の募集準備(入札説明書等作成準備)

・内容確認 ・募集計画の作成・契約方式の検討・審査方法案の作成・事業者選定委員会の設置案の作成

民間事業者の募集(公告)/入札説明書等の配布

・質問・回答協力 ・事業者選定委員会の開催(入札説明書等の評価)・債務負担行為設定の議決・公告(公募)・入札説明書等の配布と説明会の開催・質問受付と回答

・応募の判断・社内調整、応募準備開始・説明書の読込と質問作成

民間事業者の選定/公表(PFI事業を行う民間事業者の評価・選定)

・審査協力・結果の確認

・審査協力、結果の確認

・入札参加資格申請書(一次提案)受付・(事業者選定委員会による資格(一次提案)審査)・資格審査通過者の公表

・(二次募集要項の配布と説明会の開催)・(対話の実施)・入札(二次提案受付)・事業者選定委員会による審査 (審査講評、客観的評価)・基本協定締結(構成企業)・落札者の決定・公表(優先交渉権者と次点者の決定・公表)・苦情申立の受付・対処

・入札参加資格申請書(一次提案書)作成・提出

・企業グループ内の調整

・(要項の読込、質問作成・提出)

・提案書作成・入札(二次提案)・(苦情申立)

契約の締結/公表(選定された民間事業者との交渉や契約締結)

・契約内容の検討協力

・契約内容の確認

・契約書案の作成・契約条件の交渉・仮契約の締結・議会の議決・契約の締結・契約締結内容等の公表

・契約書案の精査・契約条件の確認、交渉・仮契約の締結(SPC)・特別目的会社(SPC)設立・契約の締結(SPC)・その他関連契約の締結・ファイナンス成立

PFI事業の実施(設計/建設)

・監視実施計画書の確認

・完工確認状況の確認

・監視実施計画書の作成・監視体制の構築・関連許認可等取得、必要調査実施・設計に関する監視・建設工事等に関する監視・完工確認

・実施計画書作成・実施体制構築・関連調査・(基本設計)・実施設計・建設工事等実施・完工検査(第三者機関による)

PFI事業の実施(運営・維持管理)事業の監視(モニタリング)(事業内容の監視と定期評価)

・評価結果の確認 ・事業の定期評価(運営段階の監視(モニタリング)・評価報告書の作成・公表

・事業の運営・維持管理

事業終了(財産移管、事後評価等の実施)

・検査内容の精査・手続履行の精査・事後評価結果のフィードバック及び公表・(PFI評価委員会の開催(事後評価、今後改善すべき内容の検討))

・事業の移管・終了段階の監視・検査報告書の作成・事業終了手続履行・PFI契約の終了・事後評価報告書の作成

・事業完了前の品質検査・事業終了確認検査・事業終了手続履行・PFI契約の終了・SPCの清算

下線は、公募型プロポーザル方式の場合

〈事業者選定段階〉

〈事業実施段階〉

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各機関の役割

● PFI評価委員会について

個別事業へのPFI導入可能性の検討、及びPFI事業を進める際の手続きの透明性、客観性を確保することを目的に設置する。委員は外部委員で構成する。

①構成員 外部委員:民間有識者3名程度

②委員会の業務 ・個別事業におけるPFI導入可能性の検討・実施方針に関する検討・その他PFI事業の推進に関すること

③事務局 行政改革課内に置く

具体的には、事業担当課の作成するPFI検討調書、VFM算定シートをもとに、PFI導入可能性について検討する。同様に事業課の作成する実施方針案についてその内容を検討する。

● 事業者選定委員会について

事業者募集書類の作成、審査方法・審査基準の決定、事業者選定の各プロセスにおいて、公平性、客観性、透明性を確保することを目的として設置する。個別事業の分野・特性を踏まえ、事業ごとに事業担当課で設置する。委員は原則として外部委員で構成するものとする。

①構成員 外部委員:民間有識者5名程度

※ 県職員が加わる場合は「オブザーバー委員」とし、人数も必要最小限に止め、委員会において施設管理者等の立場から意見を述べたり、申請者のプレゼンテーションに対して質問等は行うが、委員会としての意思決定や選定に当たっての採点には加わらないこととする。

※ 法律・金融等の専門家を委員とする場合には、利益相反の観点から、当該専門家は応募企業側には参画できない点に留意が必要。

〔委員構成(例)〕・実施事業の専門家・建築の専門家・PFI・金融の専門家・利用団体の代表・地元市町村等の代表・県営繕課長(オブザーバー委員)・県担当課長(オブザーバー委員)

②委員会の業務 ・入札説明書(募集要項)に関する検討・審査方法、審査基準に関する検討・事業者選定に関する検討

③事務局 事業担当課内に置く

事業者選定の際は、委員会が決定するのではなく県として決定する必要があることに留意する。

● PFI推進事務局と事業担当課について

PFIに関するノウハウを先導的に取得し、全庁に提供していく部門が必要であり、これを「PFI推進事務局」として位置づける。(当面は総務管理部行政改革課が担当)

実際に事業を推進していくに際しては、事業担当課とPFI推進事務局が緊密に連携を図って、全庁的にPFI事業の推進を図っていく必要がある。

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第3章 PFI導入の手引き

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1. PFI事業実施プロセス

2. 事業の発案 2.1 事業の発案プロセス(P30)

2.2 PFI基本適性について検討(P32)

2.3 制度的障害の有無・程度(P33)

2.4 効果の大きさ(P33)

2.5 民間提案に対する対応(P34)

3. 実施方針の策定 / 3.1 基本的考え方(P35)

公表(法5条) 3.2 実施方針に定める内容(P35)

3.3 リスクの検討と分担について(P38)

3.4 実施方針策定見通しの公表(P41)

4. 特定事業(PFI事業) 4.1 基本的考え方(P41)

の評価 /選定 /公表 4.2 VFM評価の概要(P42)

(法7条) 4.3 特定事業の評価/選定/公表のプロセス (P44)

5. 民間事業者の募集 5.1 基本的考え方(P45)

/評価 /選定 /公表 5.2 契約方式の検討(P46)

(法8条) 5.3 民間事業者の募集 /評価/選定/公表のプロセス(P49)

6. 契約の締結 6.1 仮契約の締結と契約の議決(P54)

6.2 契約の締結(P54)

6.3 契約上の留意事項(P54)

6.4 契約内容の公表 (P56)

7. PFI事業の実施/事 7.1 事業の実施、監視(P57)

業の監視(モニタリング) 7.2 事業破綻時等の対応 (P61)

8. 事業の終了

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2. 事業の発案

2.1 事業の発案プロセス

事業担当部局は、実施すべき公共事業の調達手法について、必要によりPFI導入可能性

調査(p35参照)を行い、PFIと従来方式を比較検討する。具体的には、PFI検討調書、VFM

算定シートその他これらに類する資料を作成しPFI推進事務局に提出する。PFI推進事務局

は提出された調書、シート等を審査し、明らかにPFI導入可能性がないと判断される場合

を除き、PFI評価委員会を開催し、第三者による客観的な評価を行う。事業担当部局はPFI

評価委員会の検討結果を踏まえ、必要に応じ関係課と調整を行いながら、実施方針の作成

に移行するかどうかの判断を行う。

なお、PFI導入可能性調査の結果、PFI手法を導入しないと判断された場合は、入札手続

の終了後等の適切な時期に導入しないこととした理由及び評価内容を県ホームページ上で

公表する。

また、民間事業者から、PFI事業として実施する事業についての提案があった場合は、

PFI事業として実施に移すかどうかについて検討を行う。

実施すべき事業として明確な位置付けあり

○ 公共サービスとしての必要性や緊急性を勘案し、当該事業が必ず実施される

べきものとして明確な位置付けがある。

a. 整備方針(基本構想・基本計画)決定済み等の位置付け

※これ以降がPFI事業の検討段階

調達手法の検討 (PFIか従来手法かの検討)

効率的かつ効果的な事業を実施するという観点から、その事業に適した実施方法

を検討する。具体的には、①PFI検討調書、②VFM算定シート等を作成する。作成は

PFI推進事務局の協力を得て行う。

2.2 PFI基本適性について検討(→PFI検討調書)

○ PFI事業として相応しいかどうか、PFI基本特性に照

らして検討する

2.3 制度的障害の有無・程度(→PFI検討調書)

○ 民間事業者が事業主体になれるか(法制度上の検討)

○ PFIと従来手法を比較して、PFIの場合に資金調達上

のデメリットが存在しないか

2.4 効果の大きさ(→VFM算定シート)

○ 財政的メリットがあるか

○ 民間のノウハウの活用が、サービスの質の向上に結

びつくか

通常は、事業担当部局における検討と

並行して「PFI導入可能性調査」を

コンサルタント会社へ委託

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(PFI導入可能性あり) (明らかにPFI導入可能性がない

と判断される場合)

PFI評価委員会の開催

○ PFI検討調書、VFM算定シート等をもとにPFI導入可能性を検討する。

PFI導入方針の決定

○ PFI評価委員会の検討結果を踏まえ、必要に応じ関係課と調整を行いながら、

PFI事業として実施方針の作成に移行するかどうか決定する。

NO

従来手法 YES

予算要求

○ アドバイザー(資料7)の予算を要求する。

※一般的には、PFI導入可能性調査終了後、PFI実施が確定した上で、別途アドバイ

ザー業務を委託する場合が多い。

実施方針の作成に向けた検討開始

◆ 基本構想・基本計画の策定

PFIは調達手法の1つにすぎないため、この段階ではPFIに限定することなく、当該事業の期間、特性、

規模等を踏まえ、当該事業の品質確保に留意しつつ、採用手法を選択する。採用手法について、従来手法によ

る場合との費用総額の比較(簡易な検討)を行う。

簡易な検討の結果、PFI手法による事業化の検討を行うことが想定される場合には、この段階か

らPFIに対する適切な理解や認識の共有化を図るとともに、運営段階まで見据えた計画の策定が望

ましい。

評価結果を公表

⇒PFI以外の手法を検討検討結果をPFI推進事務局に提出

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2.2 PFI基本適性について検討

(1)「事業計画」が具体化しているか

・事業内容、事業規模、事業費(建設費、維持管理・運営費等の概算)、スケジュー

ルなどの事業計画が具体化しているか。

(2)「資産形成」において、民間の「創意工夫」の発揮の余地があるか

・公共サービスの提供手段の一部として、有形資産や情報技術・ソフトウェア等の無

形資産の形成及び活用の責任を民間に委ねることによって事業の創意工夫が図られ

るもの。

(3) サービスに対する「需要」が安定的、継続的に確保可能か

・サービス内容を構成する需要が安定的に継続する可能性が高いこと。

(4) 民間に任せられる部分があり、それが現実的に契約可能か

・設計・建設だけでなく運営・維持管理(人件費や補修費等)も含むものであること。

・民間に任せる部分に付随する「リスク」が民間で処理できること。

・民間に任せる部分に関連する行政の事業や「政策」が明確であること。

(5) 民間に任せる部分のサービス要求水準を明確に設定することが可能で、そのための

「性能発注」(資料6)が可能か

・サービス内容を明確に記述可能で、達成すべき数量的な水準や必要とする機能が明

確に規定できること。

・目標として設定されたサービス要求水準の「監視(モニタリング)」が現実的に可能で

あること。

(6) 民間にノウハウがあるか

・「類似市場」が存在していること。

・「類似のノウハウ」を民間が保有していることが確認できること。

(7) 競争性を確保できるか

・対象事業分野への民間企業の参入が複数社期待できること。

(8) 事業実施のための資金調達が可能か

・事業の「収益性」の仕組み(資料9)が資金調達を可能にする内容になっているこ

と。

・「受益者負担」の可能性やその程度を確認できること。

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2.3 制度的障害の有無・程度

(1) 民間事業者が事業主体になれるか(法制度上の検討)

・各事業分野個別の法律、省庁通知、県の条例・要綱などで、民間事業者が事業主体

になることが制限されていないこと。

・道路法、都市公園法、河川、下水道法などの「公物管理法」(資料5)により、法

的に設置、管理が地方公共団体等に制限されていないこと。

・BTO方式により整備する施設を県の公の施設として位置づける場合は、指定管理

者制度を導入するか、あわせて検討が必要であること。

・サービスの提供に「公権力」の行使が必要でないこと。

・サービスの執行に「個人情報」保護に関する制限がないこと。

・サービス提供に公務員の身分が必要でないこと。

※ 公の施設の指定管理者制度

従来、公の施設の管理運営の委託先については、地方公共団体が出資する法人等に限られていた

が、「民間でできるものは民間で行う」という視点から、地方自治法の一部を改正する法律が施行

(平成15年9月2日)され、民間企業やNPO法人等の幅広い団体が管理運営を行えることとなった。

公の施設の管理に民間の知識やノウハウを活用し、住民サービスの向上と経費の節減を図ること

を目的としている。

(詳細は、「指定管理者制度の運用ガイドライン(新潟県)」を参照)

※ 公物管理法(資料5)

道路法等の公物・公共施設に関する法律(公物管理法)により、法的に「設置」、「管理」が地方

公共団体等に制限されている場合、設計に関する技術基準や管理基準が細かく規定されていること

などから、民間主導による創意工夫のインセンティブが働きにくく、VFMの確保が担保できない場

合がある。

(2) PFIと従来手法を比較して、PFIの場合に資金調達上の著しいデメリットが存在しな

いか

・「補助」や「起債」に関する制限がないこと。

・既存資産を利用する場合、法的制限に抵触しないこと。(「行政財産の使用」(資料

3))

◆ いわゆるイコールフッティングの実現とPFI事業を効果・効率的に実施する上で

隘路となる規制等の改正は、PFI推進事務局並びに事業担当課において、あらゆ

る機会を利用して国に要望していくものとする。

2.4 効果の大きさ

(1) 財政的メリットがあるか

・事業費削減効果が期待でき、「VFM(概算)」(資料2-2)があること。

・既存の「資産の活用」が図れること。

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(2) 民間ノウハウの活用が、サービスの質の向上に結びつくか

・民間の「ノウハウの活用」要素が大きいこと。

・複数の事業をひとつのPFI事業として構成し、「相乗効果」やスケールメリットを

活かせること。

2.5 民間提案に対する対応(法6条)

PFI事業は、民間事業者の自主性、創意工夫を尊重し、これを公共サービスに活かすこ

とが重要であり、実施方針の策定に係る民間事業者からの提案(以下「民間提案」という。)

に関し、下記により対応する。

①民間提案に係る受付は、各事業担当部局で行う。

②事業担当部局は、民間提案を促すために必要な情報を積極的に公表する。

③民間提案に当たっては、「特定事業の案」に「特定事業の効果及び効率性に関する

評価結果」及び「評価の過程及び方法」を示す書類を添えて提出するものとする。

④民間提案を受け付けた事業担当部局は、公共事業としての必要性や今実施すべきか

どうかをまず検討し、実施すべきと判断したときは、PFI評価委員会において提案

事業の実現可能性やPFI手法を活用することの妥当性等について評価を行う。

※ 検討に際しては、提案内容に係る知的財産の保護に留意するとともに、提案者

との対話の実施や、提案者への追加資料提出の要請を適宜行う。

⑤検討結果(実施しない場合はその理由も含む。)については、提案者へ通知する。

※ 業務の遂行に支障のない範囲内で可能な限り速やかに検討する必要があるが、

相当の時間(1年程度)を要する場合は時期の見込を通知する。

⑥民間提案事業をPFI事業として実施することが適当と認めたときは、自らの発案に

よる事業と同様に、実施方針の策定等の手続を進める。

◆ 民間提案に対する対応フロー(1を経ない場合あり)

1.計画事業等の公表 ア ド バ

民 (整備方針決定内容等) 事 助言 イザー 助言 PFI推進

間 業 事務局

事 2.PFI事業提案 担 (PFI評価

業 当 検討協力 委員会)

者 3.検討結果通知 部

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3. 実施方針の策定 /公表(法5条)

3.1 基本的考え方

PFIの発案検討の結果、法第7条に基づき、特定事業(PFI事業)の選定を行おうとする

場合には、必ずその前に、特定事業の実施に関する方針(以下「実施方針」という。)を

策定し、公表しなければならない。

実施方針の策定に当たっては、PFI法関連規定(基本方針、ガイドライン)等と事業ごとに

公表される実施方針等を参考に検討することとなる。

実施方針の検討は、法務・財務・技術等の専門知識を有するアドバイザー(資料7)を

活用し、PFI推進事務局の協力を得ながら進めるものとする。

実施方針の策定及び公表は、公平性及び透明性の確保の観点から、又、民間事業者に対

する準備期間の提供、関係住民に対する周知に資するため、当該事業に関する情報が早く

かつ広く周知されるよう、なるべく早い段階で行うことが大切である。また、株式譲渡に

関する方針は、実施方針に記載するなど早い段階で示すことが望ましい。

◆ PFI導入可能性調査のフロー(導入可能性の検討~実施方針(案)作成検討)

施設の基本計画等 PFI導入可能性調査

基本計画 従来方式の設定 従来手法の場合の設計・建設、管理

・運営の事業計画とコスト試算

(基本設計) PFI事業スキームの検討 法的制約、公的支援、PFI事業の範囲、

事業スキームの検討、リスク分担等

市場調査(民間意向調査) 民間事業者の参画意向、事業スキー

※ PFIでは、設計も民間事 ムに対する意見等聴取等

業者に委ねることが望まし VFMの試算 「従来方式」と「PFI方式」のそれぞ

いが、仮に基本又は実施設 れの公共の財政負担額を試算

計済みであっても、VE提案 PFI事業スキームの確定 上記検討結果より当初想定した事業

を組み合わせることで、PF スキームを見直し決定

Iに取組むケースがある。 実施方針(案)の作成 実施方針(案)を作成する

※ VE(Value Engineering)

提示された設計図書に対して施設、設備の価値向上を目的に、機能面、コスト面の観点から行われ

る技術提案のこと。通常、PFIでは、設計も民間事業者が行うので、採用されることは少ないが、実施

設計まで公共部門で行った神奈川県(近代美術館等)や調布市(小学校)の事例で採用されている。

3.2 実施方針に定める内容

実施方針の作成に当たっては、民間事業者にとって事業への参入のための検討が容易に

なるよう、事業内容や事業者選定の方法等について、なるべく具体的に記述するとともに、

民間の参入意欲を促す魅力的な事業スキームを構築する必要がある。

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(1) 実施方針の構成(例)

1.特定事業の選定 ①事業内容に関する事項

に関する事項 ・公共施設等の種類

・公共施設等の管理者等の名称

・事業目的

・提供される公共サービスの内容

・事業に必要とされる根拠法令・規則、許認可事項等

・想定される事業形態(公共施設等の管理者等の費用負担形態、利用者の料金負担

のあり方及び民間事業者の併設事業の範囲、事業期間、事業終了時における施

設の移管に関する方法や条件等)

②選定に関する事項

・選定方法、選定の手順及びスケジュール

・選定基準(事業の適否の理由、事業のVFM(ライフサイクルコスト、民間へのリス

ク移転、割引率等))

2.民間事業者の募 ・公募等の具体的方法

集及び選定に関す ・募集期間

る事項 ・民間事業者が備えるべき参加資格要件

・応募に係る提出書類

・選定基準(総合評価方法の活用、段階方式の採用・段階ごとの選定基準等)

・選定結果及び選定における客観的評価の公表方法

3.民間事業者の責 ・予想される責任及びリスクの分類と官民間での分担

任の明確化等事業 ・提供されるサービス要求水準(性能に関する仕様)

の適正かつ確実な ・公共施設等の管理者等による支払に関する事項

実施の確保に関す ・民間事業者による設計、建設、維持管理、運営に関する責任の履行に関する事

る事項 項

・事業の実施状況の監視(監視)(主体、頻度、内容・基準、結果の公表)

4.公共施設の立地 ・所在地、面積、地目、現況

並びに規模及び配 ・施設の立地条件(都市計画等法令上の規制等)

置に関する事項 ・土地の取得等についての公共施設等の管理者等による措置

・国公有財産を使用する場合の措置

・公共施設等の規模、配置

5.事業契約の解釈 ・協議、調停、仲裁、裁判

について疑義が生 ・裁判管轄の指定

じた場合における

措置に関する事項

6.事業の継続が困 ・想定される事業継続が困難となり得る事由の具体的列挙と対応措置

難になった場合に ・事業破綻事由に至った場合の具体的対応措置及び責任の負担(介入権、契約解除、

おける措置に関す 事業引継(金融団との直接協議に関する事項等))、施設の移管等破綻事由に応じ

る事項 て事業契約において約定すべき事項

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7.法制上及び税制 ①法制上の措置に関する事項

上の措置並びに財 ・事業実施に必要な許認可に関連した措置がある場合は、その具体的内容

政上及び金融上の ②税制上の措置に関する事項

支援に関する事項 ・適用可能な税制上の特例措置がある場合は、その具体的内容

③財政上の支援に関する事項

・(地方公共団体から)出資がある場合には、その内容及び条件

④金融上の支援に関する事項

・無利子融資枠が予算計上されている場合には、その対象となる事業の条件

・資金の融通のあっせんがある場合には、あっせん先の金融機関及び供与条件

8.その他特定事業 ・契約に当たって議会の議決を経る必要の有無

の実施に関し必要 ・法の定めのあるもののほか情報公開の対象及び公開方法

な事項 ・環境保全への配慮及び環境アセスメントの実施に関する事項

・実施方針に関する問い合わせ先

(2) 作成上の留意点

・事業の実施方針なので、あまり詳細に書かず補足の余地を残したものにする。

・項目(例えば「事業契約の解釈について疑義が生じた場合における措置に関する事

項」や「事業の継続が困難になった場合における措置に関する事項」)によっては

法律の専門家のアドバイスが必要なものがあるので注意が必要。

・関係者からのコメントを求めるため、特定事業の選定までの時間的余裕を設けて公

表する(少なくとも1~2 ヶ月)

・想定されるリスクやリスク分担を可能な限り明確にする。

・募集、選定等の手続は、なるべく具体的に記述する。

・県が行う支援について明確に記述する。

・特に、事業の内容や検討の熟度等によって、PFI事業に適用される契約方式の妥当

性やWTOの取扱を検討し、実施方針に反映させる。

(3) 実施方針の決定

事業担当課は実施方針案を作成し、PFI推進事務局に提出する。PFI推進事務局は実施

方針案の内容を確認の上、PFI評価委員会を開催する。PFI評価委員会では実施方針案の

内容の検討を行い、検討結果を事業担当課に通知する。

事業担当課は、PFI評価委員会の検討結果を踏まえ、実施方針を決定する。(内容の再

検討が必要な場合は、必要な修正を行い委員会の再審査を受ける。)

(4) 実施方針の公表

実施方針の公表は、県報、記者発表(資料提供)、ホームページ等により行うことと

し、公表項目は、概ね下記の内容とする。

・実施方針概要、実施方針閲覧方法、場所

・実施方針説明会の開催内容(必要時)

・実施方針本文

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・要求水準書案などを必要に応じて添付

・意見・質問の受付期間、処理方法等

・民間提案に基づく実施方針である場合はその旨

(5) 質問・意見の受付・反映

事業担当課は、実施方針に関する民間事業者の質問・意見を下記により受付け、有用

な意見は実施方針に反映させ、公表する。実施方針の公表から質問・意見の受付までに

少なくとも2週間以上確保し、民間事業者にとって十分検討が行える期間を確保する。

・質問・意見、電子メール、郵送、持参によって受付、意見の内容によって分類整理

する。

・回答は、文書でもって質問・質問の提出者に対し行う。

・事業担当課は、民間意見により実施方針の内容を改正する場合は、改正案をPFI評

価委員会に提出し、委員会の検討を踏まえた上で決定する。

3.3 リスクの検討と分担について

リスクとは、事故、需要の変動、物価や金利の変動、測量・調査のミスによる計画・仕

様の変更、工事遅延による工事費の増大、関係法令や税制の変更等といった様々な予測の

できない事態により損失が発生するおそれのことである。

PFIでは、「リスクを最も効率的に管理し得る主体が当該リスク管理費を負担し、それ

に応じた報酬を得る」という原則があり、リスクの明確化及びその配分を適切に行うこと

で、分担したリスク管理費用の最小化を図る。

(1) リスクとその原因の把握

当該選定事業の実施に係るリスクとその原因をできる限り把握する。

(2) リスクの評価

①抽出したリスクが顕在化した場合に必要と見込まれる追加的支出のおおよその定量

化を行う。

②定量化が困難な場合には定性的に選定事業への影響の大きさの評価を行う。

③経済的に合理的な手段で軽減又は除去できるリスクの有無の確認、当該軽減又は除

去に係る費用を見積る。

(3) リスクを分担する者

リスクが顕在化した場合又はリスクが顕在化するおそれが高い場合において、県と民

間事業者のどちらがそれらへの対応能力を有しているかを検討し、かつ、リスクが顕在

化する場合のその責めに帰すべき事由の有無に応じて、リスクを分担する者を検討する。

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(4) リスクの分担方法

リスクは次のような分担方法が考えられるが、リスクが顕在化した場合の必要となる

追加的支出の分担の方法を、当該者が負担し得る追加的支出の負担能力はどの程度かも

勘案しつつリスクごとに検討する。

①県あるいは民間事業者のいずれかが全てを負担

②双方が一定の分担割合で負担

③一定額まで一方が負担し、当該一定額を超えた場合①又は②の方法で分担

④一定額まで双方が一定の分担割合で負担し、当該一定額を超えた場合①の方法で分

(5) 事業の各段階別の主なリスク

①調査、設計に係るリスク

・調査、設計の遅延や瑕疵等についての取り決め

②用地確保に係るリスク

・用地確保の遅延、用地確保の経費等についての取り決め

③建設に係るリスク

・建設の遅延、建設した施設の瑕疵についての取り決め

④維持管理・運営に係るリスク

・運営開始が遅延する場合の措置

・公共サービスの利用度が変動する場合を想定した公共側が支払うサービス料の取り

決め

・維持管理・運営の中断、施設の損傷、利用者等に被害を与える事故の発生の場合の

取り決め

・技術革新による施設の陳腐化等を想定した措置

⑤事業修了段階でのリスク

・施設の修繕費用、撤去・原状回復費用の確保手続等の取り決め

⑥各段階に共通に関連するリスク

・天災等の不可効力が発生した場合の取り決め

・物価、金利の変動等があった場合の取り決め

・施設の設置基準等の変更の場合の措置、許認可の取得についての措置

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◆ リスク分担の参考例(他の自治体のPFI事業のリスク分担表)

段 リスクの種類 リスクの概要 負担者

階 官 民

募集要項の誤り 募集要項の誤りによるもの ○

法令等の変更 本事業に直接関係する法令等の変更 ○

一般の民間事業全てに影響を及ぼす法令等の変更 ○

共 第三者賠償 調査・工事による騒音・振動・地盤沈下等による場合 ○

住民問題 本事業を行政サービスとして実施することに関する ○

住民反対運動、訴訟

調査・工事に関わる住民反対運動、訴訟 ○

事故の発生 設計・建設・運営における事故の発生 ○

通 環境の保全 設計・建設・運営における環境の破壊 ○

測量・地質調査の 官が実施した測量・地質調査部分(想定部分を除く) ○

誤り 事業者が実施した測量・地質調査部分 ○

事業の中止・延期 官の指示、議会の不承認によるもの ○

施設の建設に必要な許認可などの遅延によるもの ○

事業者の事業放棄、破綻によるもの ○

物価 開業後のインフレ・デフレ ○

金利 金利の変動 ○

不可抗力 天災・暴動等による設計変更・中止・延期 ○ ○

計 設計変更 官の提示条件・指示の不備,変更によるもの ○

画 事業者の指示・判断の不備によるもの ○

設 応募コスト 落選時の応募コストの負担 ○

計 資金調達 必要な資金の確保に関すること ○

用地の確保 建設に要する資材置き場の確保に関すること ○

設計変更 官の提示条件・指示の不備、変更によるもの ○

整 事業者の指示・判断の不備によるもの ○

備 工事遅延・未完工 工事遅延・未完工による開業の遅延 ○

段 工事費増大 官の指示による工事費の増大 ○

階 上記以外の工事費の増大 ○

性能 要求水準不適合(施工不良を含む) ○

一般的損害 工事目的物・材料・他関連工事に関して生じた損害 ○

瑕疵担保 隠れた瑕疵の担保責任 ○

計画変更 用途の変更等、官の責による事業内容の変更 ○

運 運営費の上昇 物価、計画変更以外の要因による運営費用の増大 ○

営 施設損傷 事故・災害による施設の損傷 ○

段 性能 要求水準不適合(施工不良を含む) ○

階 仕様不適合による施設・設備への損傷、公共複合施 ○

設運営への障害

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3.4 実施方針策定見通しの公表(法15条)

当該年度に策定することが見込まれる実施方針(公表することに支障がある場合を除

く。)について、次に掲げる事項を県ホームページ等で公表する。

(1) 特定事業の名称、期間及び概要

(2) 公共施設等の立地場所

(3) 実施方針を策定する時期

なお、公表した場合は、当該年度の3月31日まで掲載し、見通しに関する事項に変更が

ある場合には、速やかに変更後の当該事項を公表する。

4. 特定事業(PFI事業)の評価/選定/公表(法7条)

4.1 基本的考え方

実施方針を公表した事業について、民間からの意見を反映させた後、VFMを中心とした

評価を行い、特定事業(PFI事業)として選定する。

特定事業の選定を判断するVFM評価は、PFIの可能性検討段階の調査等によりすでに検証

したVFMに、民間からの意見を反映した内容で修正を加えたもので行う。

◆ VFM評価のフロー

・コスト算出(定量的評価)

従来方式のコスト(PSC) ・民間移転リスクの価格換算

リスク調整 その他の評価

比較 (定量的評価) (定性的評価) 総合評価

PFIで実施する場合の県の支払コスト ・PFIの便益評価

早期開業便益

安全性向上便益など

(1) 選定の基準(VFM評価)

PFI事業として実施することにより、公共施設等の建設(設計を含む)維持管理及び

運営が効率的かつ効果的に実施できることが選定の基準となっており、次のいずれかが

期待できることをいう。

・公共サービスが同一の水準にある場合において事業期間全体を通じた公的財政負担

の縮減を期待できること。

・公的財政負担が同一の水準にある場合において公共サービスの水準の向上を期待で

きること。

(2) 公共サービスの水準の評価

公共サービスの水準の評価は、できる限り定量的に行うことが望まれるが、定量化が

困難なものを評価する場合においては、客観性を確保した上で定性的な評価を行う。

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4.2 VFM評価の概要

(1) PSCの算定

①経費算出

設計、建設、維持管理及び運営の段階ごとに、県が自ら実施する場合に採用する事

業形態に基づき支出及び収入を算出し、事業期間にわたるキャッシュフロー表を作成

する。

項目 内容

収 施設利用料金 ・事業期間における収入を算出する

補助金

入 地方債 等

設計、建設費 ・従来工法、標準工期での標準積算、予定価格ベースで経費を算出する。

支 ・設計、建設に関わる県の人件費等間接費も合理的な範囲で算出する。

維持管理、 ・類似施設の実績等を参考に経費を算出する。

出 運営費 ・維持管理、運営に関わる県の人件費等間接費も合理的な範囲で算出する。

支払利息 ・設計、建設に必要な資金を地方債等により調達する場合は支払利息を算出する。

その他経費 ・その他必要な経費を算出する。

②リスク調整前で割引前の県の財政負担の算定

事業期間におけるリスク調整前かつ割引前の県の財政負担額を算定する。

③リスク調整

想定されるリスク分担にしたがい、リスク調整を行う。

従来の公共事業において公共が担っていたリスクを、PFI事業では、公共と民間事

業者で分担するため、民間事業者に移転するリスクの対価のみ(リスク調整額)算出

し、PSCに加える。(従来方式で実施しようが、PFIで実施しようが、公共が負担すべ

きリスクはVFM評価の際には相殺されるので、民間事業者に移転するリスクの対価の

み、PSCに加えることとなる。)

④PSCの算定

リスク調整前かつ割引前の県の財政負担額にリスク調整額を加えたものを、現在価

値へ換算し、PSCを算定する。

※ 現在価値(資料2-2)

将来における金銭の価値を割引率を用い現在の価値に換算することを現在価値に換算するという。

例えば、現時点での1億円と10 年後の1億円とでは価値が異なるため、この2つの価値を比較する際、

10 年後の1億円が現時点での何円に相当するかという換算が必要となる。PFIの基本方針やガイド

ラインにおいて、公的財政負担の見込額の算定は現在価値に換算して評価することとされている。

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(2) PFI事業のLCCの算定

①経費算出

PFI事業として実施する場合の費用等を、設計、建設、維持管理、運営の段階ごと

に算出し、事業期間にわたるキャッシュフロー表を作成する。

項目 内容

収 県のサービス購入費(施設利用料金等) ・事業期間における収入を算出する

補助金等

入 調達資金(出資金、借入金等)

設計、建設費 ・アドバイザーの活用や類似施設に関する調査等を行い、施設に関する民間のノ

支 ウハウを活用した設計・建設費を算出する。

出 維持管理、運営 ・アドバイザーの活用や類似施設に関する調査等を行い、施設の維持管理、運営

費 に関する民間のノウハウを活用した経費を算出する。

減価償却費 ・建物、設備等の資産の種類ごとに、減価償却費を算出する。

支払利息 ・事業者が設計施工に必要な資金について、実現可能な借入金の金利及び返済期

間を想定した上で、支払利息を算出する。

その他経費 ・その他必要な経費を算出する。

②事業の収益性分析

民間事業者の参画の可能性を判断するため、事業の収益性を分析し、どの程度の財

政負担が必要なのかについて検討する。(収益性の仕組み(資料9))

③税収調整前・割引前県財政負担額算定

事業期間におけるキャッシュフロー表を作成し、税収調整前かつ割引前の県の財政

負担額を計算する。

④税収等適切な調整

不動産取得税、登録免許税、固定資産税、法人税等民間事業者が負担すべき税金を

算定する。この際、県に納付されるものと、そうでないものに区別して算定し、県に

納付されるものについては、税収調整前・割引前の県の財政負担額から控除する。

⑤PFI事業のLCCの算定

上記により想定された各年度の県の財政負担額を現在価値に換算し、その総額を算

出する。

(3) VFM評価

上記により求めた、定量的評価(PSC及びPFI事業のLCC)及び定性的評価の結果をも

とに、特定事業として選定するかどうか評価する。

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4.3 特定事業の評価/選定/公表のプロセス

(1) 評価書の作成

事業担当課は、実施方針の公表結果を踏まえて、財政課等の関係部署と調整の上、特

定事業選定のための評価書を作成する。この評価書に、必要により事業計画及び実施方

針の公表結果を添付して、評価・選定報告書案としてPFI推進事務局に提出する。

PFI推進事務局は、事業担当課から提出された評価・選定報告書案について、必要に

応じてヒアリングを行うなど、その内容に関しての確認・調整を行う。

◆ 事業計画の内容(例) ◆ 評価書の内容(例)

○サービス・ニーズの特定 ○事業の必要性

○比較対象方式の設定 ○PFI事業実施の妥当性(事業方式の確実性・安

○PFI事業方式の検討 定性・安全性など)

・法制面の制約条件 ○VFMの妥当性

・事業期間 ・ライフサイクルベースの定量的なVFMの検証

・契約方式 結果

・事業スキーム ・民間事業者に移転するリスクの定量的な算定

・リスク分析・官民役割分担 (リスク調整値)とそれを加えたVFMの検証

・市場調査(民間意向調査) 結果

・資金調達 ・PFI事業として実施することの定性的な評価

・ライフサイクルコスト(LCC)算定 ・総合評価の結果

○要求水準書の作成 ○リスク分担の妥当性

○VFMの検討 ○民間事業者の応募の可能性

○支払システム、監視方法の設定 ○事業管理計画の妥当性

○PFI契約の基本条件の整理 ○想定される実行上の問題とその対応策

○事業管理計画の作成

(2) 選定結果等の公表

事業担当課は、PFI推進事務局との調整結果を踏まえ、特定事業の評価・選定を行い、

特定事業の選定結果等について、透明性、公正性確保の観点から、評価に当たっての前

提条件を示した上で、以下に示した4項目の評価を行い、実施方針と同様な方法で公表

する。

① コスト算出による定量的評価

② 事業者へ移転するリスク調整

③ PFI事業として実施することの定性的評価

④ 総合的評価

(3) 公表における留意点

・民間事業者の選定その他公共施設等の整備等の実施への影響に配慮する。

・公的財政負担の見込額については、原則として公表する。

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・ただし、公表することにより、その後の入札等において正当な競争を阻害するお

それがある場合は、縮減額又は割合の見込みのみを示すこととしても差し支えな

い。

・特定事業の選定を行わないとしたときも、同様に公表する。

5. 民間事業者の募集 /評価/選定/公表(法8条)

5.1 基本的考え方

PFI事業では、競争性を担保しつつ、手続の透明性を確保した上で、民間事業者の募集、

選定を行い、詳細な事務の内容やリスク分担等を盛り込んだ包括的な事業契約を締結して

サービス等を確定する。

特定事業の選定の後に行う民間事業者の募集、評価・選定においては、次のような点に

留意する必要がある。

(1) 創意工夫を引き出すための配慮が必要

提供される公共サービスの水準を必要な限度で示すことがポイントで、構造物、建築

物の具体的な仕様の特定については必要最小限にとどめるという、性能発注の考え方を

採ることが必要である。(ただし、性能表示はできるだけ明確にする必要がある。)

(2) 提案準備や契約締結に要する期間の確保に配慮が必要

民間事業者に対して、性能発注に対応する仕様の検討(調査、設計等)、創意工夫(維

持・管理、運営等)及び長期の事業期間に対応する事業計画の検討(資金計画やリスク

対応等)、提案した事業計画に基づく契約書の作成等、これらに要する十分な時間を確

保することが必要である。(入札公告(公募)から入札(提案)までに十分な期間設定

をすることが必要である。)

(3) 応募者の負担の軽減について配慮が必要

従来手法では、公共が実施した調査・設計に基づき、民間事業者は積算・入札をする

だけで良く、入札に係るコストはそれほど大きくない。

しかし、PFIでは調査・設計・提案の費用は応募者負担が原則であり、仮に契約でき

なければ、それらの費用は無駄になることから、応募できる企業については、資金力の

ある大企業が有利となる要因の1つとなっている。

このため、募集要項に記載する評価項目以外は評価しないことや、二段階選定の採用

(資格審査と簡単な提案審査を通過したものが最終提案できる)など、応募者の負担軽

減に配慮し、競争参加を促す必要がある。

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5.2 契約方式の検討

法8条民間事業者の選定は、公募の方法等によるとされており、公募の方法とは一般競

争入札が原則である。特に、PFI事業においては創意工夫を引き出す有効な選定方法であ

る「総合評価一般競争入札方式」を活用するのが一般的であるが、それによらない「公募

型プロポーザル方式(随意契約)」も想定されている。

事業担当課は下のフロー図を参考に契約方式を検討する。(あくまでも、原則的な検討

フローであり、契約方法については、事例等も含め今後十分検討する必要がある。)

契約要件の設定 実施方針及び特定事業の選定の検討結果を踏まえて調達内

・調達内容 容、要求水準、事業方式及び事業規模について契約要件と

・要求水準 して設定する。

・事業方式及び事業規模等

予定価格の設定 予定価格は、PFI事業方式で実施する場合に県が民間事業

者に対して契約期間に支払う支払い額の総額とする。

WTOとの整合性の検討 県の場合、予定価格が現行においては、24.7億円以上が対

(WTO適用対象事業か) 象(特例政令の適用)。

yes no

契約方式の選定 一般競争入札において契約交渉は認められてい

(契約交渉は必要か) ない。

no yes

総合評価一般競争入札 公募型プロポーザル方式

(随意契約)

※ 契約交渉について

入札後、契約の締結に当たっては、民間事業者が提案できるものは、募集の際にあらかじめ明示

された事項や軽微な事項を除き、落札者の入札価格及び入札説明書等に示した契約内容について変

更できないのが原則である。このため、入札においては落札後に契約交渉という概念は存在しない。

(ただし、平成18年11月27日PFI 関係省庁連絡会議幹事会申合せ(P41)において、競争性の確保

に反しない限り、落札者決定後の入札契約書等の内容の変更は可能とされている。)

公募型プロポーザル方式においては、優先交渉権者という概念を導入し、交渉過程の中で、要求

水準と提案内容の不一致、それらの解釈の齟齬に関する調整、リスク分担に関する調整等を行い相

手方を決定することが可能である。

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◆ 落札者決定後の応募条件の変更について

(1)変更の最小化について

(略)PFI 事業においては、個々の事業者の事業提案内容が、必ずしも予め発注者が契約書案、入

札説明書等を作成する段階で想定し得る範囲内のものであるとは限らないため、落札者決定後の契約

書案、入札説明書等の内容の変更は一切許容されないものでなく、競争性の確保に反しない場合に限

り変更は可能である。

(2)競争性の確保に反しない例

同じコストで質が向上する場合や、質が同じでコストが低減できる場合は、競争性の確保に反するも

のとはいえない。なお、要求水準書に関しては、その変更により競争性に影響する可能性が高いこと

から、落札者決定後から契約締結の間に変更が生じないよう留意するべきである。

(※)「PFI 事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて」

(平成18年11月27日PFI 関係省庁連絡会議幹事会申合せ)から抜粋

◆ 総合評価一般競争入札について(平成11年地方自治法施行令一部改正:第167条の10の2)

予定価格の制限の範囲内において、価格だけでなくその他の条件(サービス要求水準、リスクへの

対応方法、技術力や安全性等)も併せて、最も有利な企画をもって提案したものを落札者とする方法

で、PFI事業において、創意工夫を引き出すには有効な入札方法である。

総合評価を行うに当たり次の各段階で、2人以上の学識経験者の意見を聴かなければならない。(地

方自治法施行規則第12条の3)

・総合評価一般競争入札を行うか否か決定する

・落札者決定基準を定める

・落札者を決定する

◆ 公募型プロポーザル方式について

公募によって民間事業者から提案書の提出を受け、これをもとに審査し、事業者を選定する方式で

あるが、随意契約となるため、選定事由等について明確な根拠が必要とされる。このため選定プロセ

スにおいても前述した総合評価一般競争入札に準じるものとし、透明性や客観性の確保に努める。

◆ PFIの契約方式 入札者なし 再入札

(総合評価)一般競争入札 落札者なし

★原則(法7①) 落札者と契約せず 随意契約

随意契約(公募型プロポーザル、要客観評価) (自治令167の2①Ⅵ,Ⅶ)

★競争によることが不可能又は困難の場合 (要客観評価)

(自治令167の2①Ⅱ)

:ただし、県の場合、24.7億円(予定価格)以上の契約については、政府調達協定との整合が必要で

ある。例えば、一般競争入札の参加資格要件に地域要件(本社、営業所等の所在地要件)の設定

はできない。また、随意契約では、芸術品や特許権等に係るもので相手が特定できる場合などに限

定される。(特例政令5、10)

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(1) 予定価格の設定

契約予定価格は、PFI事業方式で実施する場合には、民間事業者に対して契約期間に

支払う支払い額の総額とする。

(2) WTOとの整合性の検討

①県における公共調達において、ある一定金額以上の調達を行う場合、WTO政府調達

協定にしたがわなくてはならない。

②PFI契約は、公共施設等の建設のみならず、維持管理及び運営をも内容とするもの

であり、政府調達協定対象の役務と対象外の役務の双方を包含する混合的な契約と

なり得るため、こうした混合的な契約においては、主目的である調達に着目し、全

体を当該主目的に係る調達として扱うこととされており、主目的が物品等又は協定

の対象である役務の調達契約であって、当該契約の全体の予定価格(主目的以外の

物品等及び役務に係る価額を含む。)が適用基準額を超える場合に、特例政令の適

用を受けることとされている。(旧自治省通知)

③建設工事をともなう場合、現行においては、総額24.7億円以上の契約条件について

は、WTO政府調達協定の適用を受け、県の場合は、一般競争入札となる可能性が高

い。その場合は価格以外の評価が可能な総合評価一般競争入札が原則となる。

④総合評価一般競争入札の場合、契約締結時にトラブルが発生しないよう入札以前に

質問・回答を複数回設定し、十分に情報交換を行うことが必要となる。なお、WTO

政府調達協定の適用を受ける場合は、公告から入札提案書の受領までの期間を40日

以上設定しなければならない。

(3) 契約方式の選定

①WTO政府調達協定の適用を受けない場合は、事業担当課は対象とする事業の契約の

相手側を決定する過程において交渉が必要であると判断される場合、公募型プロポ

ーザル方式とし、必要でないと判断される場合は総合評価一般競争入札を原則とす

る。

②入札の場合とは異なり、公募型プロポーザル方式においては、複数者から見積を取

る以外に手続に関する具体的な定めはなく、優先交渉権者という概念を導入するこ

とも可能と考えられる。実際に、優先交渉権者を選定した上で事業者の特定を行う

としているPFI事業の事例は、いずれも随意契約となっている。

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5.3 民間事業者の募集 /評価/選定/公表のプロセス(標準的な例)

民間事業者の募集準備 ・募集計画の作成、契約方法の検討

(入札説明書等の作成準備) ・審査方法、審査基準案の検討

・事業者選定委員会の設置案作成

入札説明書等の評価 ・事業者選定委員会の位置付け、募集計画、契約方式、

(事業者選定委員会) 審査方法、審査基準、募集用書類等の審査

債務負担行為設定の議決 ・入札公告(公募)前に行う

(総合評価一般競争入札) (公募型プロポーザル) (留意事項等)

公告 公募 ・提案準備、企業グループの組織化の

期間を十分確保した上で公告日を設定

入札説明書配布・説明会 募集要項配布・説明会 ・必要に応じ現地説明会も開催

質問受付 ・関係課、アドバイザーと協力し回答

を作成

入札参加資格申請書提出 一次提案提出 ・参加者が多い場合、二段階選定は民

間の提案準備費用軽減に有効

入札参加資格審査(事業者選 一次提案審査(事業者選定 ・資格、能力、事業内容等の理解度に

定委員会)・公表 委員会)・公表 ついて審査、入札参加(二次提案)者

絞込み(必要に応じて委員会開催)

審査不合格とした理由の説明要求・回答 ・必要に応じ説明会開催

(二次募集要項配布・説明会・質問受付) ・(事前資格審査通過者を対象として、

必要に応じて実施)

入札 二次提案書提出 ・WTO適用対象事業は公告から入札提案

書受領まで40日以上確保

総合評価(事業者選定委員 二次審査(事業者選定委 ・総合評価の場合は審査委員に2人の学

会) 員会) 識経験者必要

落札者の決定・公表 優先交渉権者、次点者の ・資格(一次)審査同様、落選者から

決定・公表 苦情等申立があれば受付・回答する

交渉 ・入札では交渉過程がないため、質問

回答で十分契約条件等を確認する

仮契約 ・ WTO適用対象事業は落札後の翌日か

ら72日以内に落札者名等必要事項を公

議会承認 表しなければならない

PFI契約締結・公表

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(1) 債務負担行為の設定

PFI事業における契約は、建設から維持管理・運営までの複数年度にわたる契約であ

ることから、予算で債務負担行為を定めることが必要である。

①限度額

債務負担行為の限度額は、特定事業の評価により得られた民間事業者との契約予定

金額であり、その内容は、建物等の建設・取得及び維持管理・運営に関する費用の総

額である。

なお、これらの金額には、金利や物価上昇率を含むが、現在価値へ割り引いた金額

ではないことに留意が必要である。

債務負担行為の限度額については、金額表示が困難な場合は、文言により記載する

ことも可能である。

②期間

債務負担行為の期間は、PFI事業の契約期間とする。

③留意点

・債務負担行為は、入札公告前までに設定する。

・債務負担行為の議決を得た年度内に、その債務の原因となる契約手続を完了させ

る必要がある。

・PFI事業における債務負担行為に係る支出のうち、施設整備費や用地取得費に相当

するもの等公債費に準ずるものは、起債制限比率の計算の対象とされている。

(2) 入札公告(公募)

入札説明書又は募集要項(以下「入札説明書等」という。)に関する内容、募集計画、

審査方法、審査基準、契約方式、事業者選定委員会名簿等について入札公告を行い、公

告後速やかに、入札説明書等を民間事業者に配布する。

なお、入札説明書等の公表は、県報、記者発表(資料提供)、ホームページ等により

行うこととする。

(3) 入札説明書等

サービス要求水準、選定基準及び契約書案(条件規定書)など、民間事業者の選定に

係る事項について示した入札説明書等を作成し、民間事業者に配布する。

◆ 入札説明書等の例

① 事業の目的

② 事業の概要(事業名、施設概要、事業期間、事業内容、事業スケジュール、費用負担、サービス要求水

準、遵守すべき法令等)

③ 募集計画(説明会開催、質問受付・回答、資格審査申請、提案書受付、審査結果発表等)

④ 契約方法、選定基準(選定委員会、審査方法、審査項目)

⑤ 契約書案(条件規定書)(基本的考え方、リスクと責任分担、支払方法、事業実施状況の監視、契約

の解釈、事業の破綻)

⑥ その他(リスク分担表、事業スキーム図、参考資料(様式集、関係規程集、図面))

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(4) 入札説明書等の配布、説明会及び質問・回答

入札説明書等の配布及び説明会の開催を行い、事業内容を潜在的な事業参加者に周知

する。この説明会は、民間事業者に事業の内容を理解してもらう上で、極めて重要な機

会となるため十分な準備をして開催する必要がある。また、必要に応じて現地説明を開

催する。

説明会開催の後、文書による質問を受け付け、関係課やアドバイザーの協力を得て質

問回答書を作成する。民間からの全ての質問に対する回答書を応募者全員に書面にて配

布する。

◆ 対話の実施(※)

実施方針の公表以降において、入札の際の判断材料となる事項について、発注者と民間事業者との

意思の疎通を図るための質問・回答等(以下、「対話」という。)を行うことで、発注者と民間事業者

との意思の疎通を図ることが重要となる。

対話を行う場合には、公正性・透明性等を担保するため、実施方針等においてその旨を明記し、文

書による質問・回答、説明会の実施等の方法により、応募者全員に対して共通の方法で行うとともに

書面により記録し、その内容を共有することが基本となる。なお、応募者毎に対面で対話を行うこと

により、発注者のニーズに適った提案が得られる可能性が高まる場合も考えられるため、必要に応じ

て応募者毎に対面による対話を行うことも考えられる。

(※)「PFI 事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて」

(平成18年11月27日PFI 関係省庁連絡会議幹事会申合せ)から抜粋

(5) 技術提案制度の活用(法10条)

事業者の選定(総合評価一般競争入札方式の場合)に先立ち、募集に応じようとする

者に対して、特定事業に関する技術又は工夫についての提案を求めるよう努める必要が

あり、当該提案がされたときは、適切な審査及び評価を行う必要がある。

なお、技術提案制度を活用する場合は、「総合評価方式試行の手引(土木部)」を参

考に評価方法等について検討すること。

(6) 事業者の選定

事業者の選定に当たっては、契約方式の検討において述べたように、総合評価一般競

争入札と公募型プロポーザル方式(随意契約)の二つの方法がある。

参加希望者の提案準備費用の軽減を考慮して、原則として二段階選定方式(資格審査

と簡単な提案審査を通過したものが入札参加(二次提案)できる)を想定している。

ただし、参加希望者が少ないと予測される場合は、一括審査によって行うことも可能

である。

二段階選定方式を採用する場合は、公告(公募)に際して下記の事前資格審査基準を

公示する必要がある。

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①入札参加資格審査(一次審査):事前資格審査

適性資格基準、基本能力基準及び事業内容の理解度に関する評価基準の項目に下限

値を設定し、各項目が下限値以上であるかどうかで評価を行い、入札参加(二次提案)

できる事業者を絞る。(必要に応じ事業者選定委員会を開催する。)

◆ 入札参加資格審査(一次審査)の例

参加資格を判定する対象について、コアの企業種類(含む幹事会社)を特定して評価するか、全構

成員全参加企業を評価するかの方針を決定する。全構成員あるいは複数の構成員を評価する場合は、

幹事会社とその他構成員の評価の重み付けなどの取り扱いを決めておく。

評価に当たっては、評価基準の全ての項目に、下限値を設定し、各項目が下限値以上であるかどう

かの審査を行う。

・適性資格基準

違法行為や社会倫理違反などの欠格事項、財務状況、技術力等について

・基本能力基準

技術適性、品質保証能力、類似事業実績等について

・事業内容の理解度の評価基準に基づく評価(基本的には二次審査で行うものであるが、応募者数

が非常に多い場合に有効であるため、一次審査におけるその実施の有無についても検討する。)

②総合評価(二次審査)

事業担当課は、事業者選定委員会を開催し、詳細な事業経営・管理能力評価基準と

事業提案書評価基準に基づいて評価を行い、落札者及び優先交渉権者の選定を行う。

◆ 総合評価(二次審査)の例

先入観をもった評点付けを回避するため、応募者からの提案書は、提案内容(価格以外)と提案価

格を別々に提出し、提案内容の評価が終了するまでは提案価格の封筒を開けない、ツーエンベロップ

方式の採用が望ましい。

① 価格と価格以外の項目を総合評価する方法

提案内容(価格以外)のみで評点付けをした後、価格も含めた総合評価を行う方法。

総合評価の方法には「単位価格当たりの点数化方式」と「総合点数化方式」の2 通りがある。

ア 単位価格当たりの点数化方式

提案に価格差が殆ど無い状況では問題は発生しないが、価格以外の評価項目を重視したいと発

注者が意図したにもかかわらず、PFI市場の初期段階など民間事業者が提案価格を極端に低くし

た結果、提案価格にばらつきが発生する場合、総合評価の優劣が提案価格の優劣に支配されて

しまう可能性が高くなる。

イ 総合点数化方式

価格及び他の評価項目間において、提案の優劣の違いを明確にすべき項目について、重く配分

するなどの重み(ウェイト)付けを行って、意図したとおりの総合評価を行うことが可能であり、

価格以外の評価項目を重視する場合、発注者が意図した評価項目間のウェイトと提案内容の優劣

が、確実に審査結果に反映される。

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② 価格以外の項目に関する下限値を設定し足切りを行った後、価格で評価

発電施設などのようなプラント事業等で、性能発注がやり易い事業については、価格以外の項

目に関する下限値を設定し足切りを行った後に、価格評価を行い事業者を選定する方法の採用も

可能である。

(7) 民間提案に対する評価

民間提案が実施方針の策定に寄与した程度について提案内容の先進性等を勘案し、公

平性・透明性・競争性の確保に留意しつつ、当該提案に対して加点評価を行うなど、適

切に評価する。

原則として、知的財産に該当するものが評価対象となるが、知的財産に該当しないも

のについても、個別の事業の内容等に応じ、事業者選定の公平性・透明性・競争性の確

保に留意した上で、評価対象を幅広く判断することも可能である。

① 実施方針の策定に寄与する提案について、例えば、以下のものが考えられる。

ⅰ)従来事業実施が難しいと考えられ、実施されていなかった分野や業務について、

PFIによる事業実施を可能とするような優れた提案がなされた場合

ⅱ)PFI事業の実績がある分野や業務において、より効果的・効率的な事業実施を

実現するような優れた提案がなされた場合

② 知的財産として保護対象となるべき情報や提案内容を、民間事業者の了解を得て

公表した場合についても、適切に評価する。

③ 評価基準を検討する際に、事業者選定委員会等において有識者に意見聴取を行う

など、適正な評価の確保を図る。

(8) 選定結果等の公表(法11条)

事業担当課は、事業者選定委員会の報告を受け、民間事業者の選定を行ったときは、

下記に留意し、その結果を速やかに公表する。

なお、公表に当たっては、原則として審査項目ごとに応募者の点数と評価を公表する。

・評価の結果、評価基準及び選定の方法に応じた選定過程の透明性を確保するために

必要な資料を併せて公表する。

・ただし、公表することにより、民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益

を害するおそれのあるものを除く。

・選定されなかった応募者に対し、非選定理由の説明機会を設けることが必要である。

・選定事業者の事業計画に基づく公的財政負担の縮減の見込額等についても公表する

ことが適当である。

事業者選定以降のVFM評価結果の公表にあたっては、VFM評価結果の総額表示

のみでなく、VFMの源泉となる主な要因(例:施設整備費や運営管理費等の削減

率等)を明示することに努めること。

(下記「VFM公表の例」を参照)

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・なお、民間事業者の選定をせず、特定事業の選定を取り消した場合、その理由を所

要の資料と併せて、速やかに公表する。

◆ VFM公表の例(事業者選定以降)

項目 値 備考

①PSC(現在価値ベース) 円

②PFI-LCC(現在価値ベース) 円

③VFM(金額) 円

④VFM(割合) %

うち施設整備費に係るもの ( %)

うち運営関係費に係るもの ( %)

※ その他、PFI手法導入による収支改善や民間雇用機会創出等の効果が認められる

場合は、併せて明示すること。

6. 契約の締結

6.1 仮契約の締結と契約の議決

PFI契約において、予定価格の金額のうち維持管理、運営等に要する金額を除いた金額

が5億円以上の場合は、議会の議決が必要なことから、あらかじめ仮契約を締結する。一

般的には、選定事業者(SPC)との間で仮契約を結び、議会承認後、設立されたSPCとの間

で契約を締結することになる。

また、公有財産の貸付については、地方自治体法第96条第1項第6号で、条例で定める場

合を除いて適正な対価なくして貸し付ける場合、議会の議決が必要であるとされているこ

とにより、議会に付議することとする。

6.2 契約の締結

複数の契約書の構成になる場合も多いため、PFIに関連する法律に精通した専門家に契

約書の締結のプロセスを漏れのないように管理してもらうことが必要である。サービス提

供の仕様書や支払予定表等の契約書に添付する別紙もPFI契約の一部を構成するものとな

るため、契約締結時には最終版を作成し添付する。契約締結後の別紙内容の修正はできな

い。

6.3 契約上の留意事項

PFI契約の内容を検討する際に重要な視点のひとつは、事業のキャッシュフローに影響

を与えるような重要な項目に関して、明確な対応を契約上で決めておくという点であり、

その主な内容は以下のとおりである。

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(1) リスク分担

事業の履行に関わる諸事項の官民間の義務と責任を明確に明文化する。こうして規定

した諸事項に関する問題発生時の責任の所在と対応方法を明確にする。リスク分担に当

たっては、余分な経費が発生しないように、官民それぞれがリスク管理の手馴れたリス

クを分担し合うことが基本である。

(2) リスクに対する費用負担や賠償条件に関わる明確な取り決め

事業のキャッシュフローに大きな影響を与えるリスクである施設の完工も含む履行の

遅延、費用の増加、契約の解除などの発生事由(民間事業者の責に帰する事由、公共部

門の責に帰する事由、不可抗力や法令変更による事由)にしたがって、費用負担や賠償

条件などを明確に取り決める必要がある。

(3) 事業の介入や事業破綻時の処理方法の明確化

公共部門の事業への関与の中で、特に重要な事項は、事業に問題があった場合の公共

性、安全性を確保するための県の事業への介入基準や、問題を解決するための金融機関

による事業への介入条件を明確化することと、破綻した場合の対応方法について、破綻

事由別に契約で明確に規定する必要がある。

(4) 紛争処理方法

紛争が発生した場合の処理については契約で明確に規定するとともに、事業停止によ

って費用と時間の余分なコストの発生を回避するための監視内容については明確に規定

する。また、契約当事者だけで解決ができない場合は、中立的第三者の調停人(あるい

は機関)等で対処することをあらかじめ契約で規定することが必要である。

(5) 支払システム

契約上のサービス要求水準に対する監視結果が支払レベルに連動するシステムを明記

するとともに、サービス要求水準が維持できる様なインセンティブが働くように、支払

システムにボーナス・アンド・ペナルティ制度の内容を組み込む検討を行う。また、支

払に関するインフレーションリスクの取り扱いを明確に規定する。

(6) 保険契約付保の義務付け

事業を円滑に推進する上で、保険によってカバーされるリスクについては必ず、保険

契約することを義務付ける。

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6.4 契約内容の公表(法15条)

締結したPFI契約の内容は、事業者の不利益となる部分を除いて、原則遅滞無く次に掲

げる事項を県ホームページ等で公表する。

(1) 公共施設等の名称及び立地

(2) 選定事業者の商号又は名称

(3) 公共施設等の整備等の内容

(4) 契約期間

(5) 事業の継続が困難となった場合における措置に関する事項

(6) 契約金額(契約金額が存在しない場合(独立採算型)を除く。)

(7) 契約終了時の措置に関する事項

◆ 契約書の構成(例)

1. 事業契約の当事者双方の負う債務の詳細及び履行方法等

(1) 提供されるサービスの内容と質

(2) 提供されるサービス要求水準の測定と評価方法

(3) 料金及び算定方法等

(4) 選定事業の修復に必要な適切かつ合理的な措置

(5) 債務不履行の治癒及び当事者の救済措置

2. 公共施設等の管理者等の民間事業者への関与

(1) 提供される公共サービスの水準の監視

(2) 事業者からの事業の実施状況及び財務の状況についての報告

(3) 選定事業の実施に重大な悪影響を与えるおそれがある事態が発生したときの選定事業者からの

報告

(4) 公共サービスの適正かつ確実な提供を確保するための必要かつ合理的な措置及び公共施設等の

管理者等の救済のための手段

3. リスク分担

4. 選定事業の終了時の取扱い等

(1) 選定事業の終了時期

(2) 事業終了時における土地等の明渡し等、当該事業に係る資産の取扱い

5. 事業継続困難時の措置等

(1) 事業継続が困難となる事由

(2) 事業修復に必要な措置

6. 事業契約の解除条件等

事業契約の解除条件となる事由について、その要件及び当該事由が発生したときに事業契約の当

事者のとるべき措置

7. 第三者による選定事業の継承の要求についての取決め

選定事業者の破綻に伴い、金融機関等第三者が選定事業の継承を要求し得る場合、公共性、公平

性の観点に基づき、継続的な公共サービスの提供を確保することについての取決め

8. 事業契約の疑義等の解消手続等

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7. PFI事業の実施/事業の監視(モニタリング)

7.1 事業の実施、監視

事業は、基本方針及び実施方針に基づき、契約書等にしたがって実施されるが、県は、

契約書等に定める範囲内で事業の監視を行い、提供するサービスが規定した水準に達して

いるかどうかを把握・評価し、その結果を支払システムに反映させて、サービスの対価を

支払う。

他県のPFI事業においては 事業開始数年後に、事業が破綻するケースや、当初計画の

想定以上に赤字が膨らみ、PFI契約の解除に至った事例も発生している。

PFI事業の破綻を招かないためにも、当初の計画どおりに事業が実施されているか、以

下に示すモニタリングの実施により、継続的に監視を行うことが非常に重要である。

なお、監視のための費用(人件費等)は県が負担する。

・PFI事業者により提供される公共サービス(施設整備、維持管理・運営)の水準の監

・PFI事業者からの事業契約の義務履行に係る事業の実施状況報告の定期的な提出

・PFI事業者からの公認会計士等による監査を経た財務の状況についての報告書(選定

事業の実施に影響する可能性のある範囲内に限ります。)の定期的な提出

・選定事業の実施に重大な悪影響を与えるおそれがある事態が発生したときは、PFI事

業者に対し報告を求めるとともに、第三者である専門家による調査の実施とその調査

報告書の提出を求めること。

(1) モニタリングの基本的考え方

PFIにおけるモニタリングについては、内閣府の民間資金等活用事業推進委員会が

「モニタリングに関するガイドライン(平成15年6月23日。以下「ガイドライン」

という。)」を定めている。

県事業担当課は、ガイドラインの趣旨に沿って、特に本活用指針に示す事項に留意

し、モニタリングを行うものとする。

注)ガイドラインでは、サービス購入型のPFI事業を想定するとともに、施設整備完了後、供用開始

から事業終了までの間のモニタリングに関連する考え方等を整理

① モニタリングの定義

モニタリングとは、選定事業者による公共サービスの履行に関し、契約に従い適

正かつ確実なサービスの提供の確保がなされているかどうかを確認する重要な手段

であり、選定事業の公共施設等の管理者等の責任において、選定事業者により提供

される公共サービスの水準を監視(測定・評価)する行為をいう。

② モニタリングにおける留意事項

基本方針においては、次に示す事項について、PFI事業契約で合意しておくこと

とされている。

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・ 管理者等が選定事業者により提供される公共サービスの水準を監視することができ

ること

・ 管理者等が、選定事業者から、定期的に次の報告を求めることができること

ⅰ)事業の実施状況報告

ⅱ)公認会計士等による監査を経た財務の状況についての報告

ⅲ)選定事業の実施に重大な悪影響を与えるおそれがある事態が発生した場合の報告

・ 公共サービスの適正かつ確実な提供を確保するために、必要かつ合理的な措置と、

管理者等の救済のための手段を規定すること

・ PFI事業契約等の規定の範囲を超えた管理者等の関与は、安全性の確保、環境の保

全に対する検査等合理的な範囲に限定すること

③ モニタリング結果に基づく協議の定め(係争の防止)

モニタリングの結果はサービス対価の支払に直接つながることとなるが、モニタ

リングに係る規定の解釈等についての係争が生じないようPFI事業契約を定めてお

く必要がある。また、係争が生じた場合の協議規定等について、PFI事業契約に定

めておく必要がある。

なお、モニタリングを通じて得られる情報を基に、サービス水準を維持するため

の改善提案や効率化提案など情報交換を目的とした協議を行うことも有意義であ

る。

④ 指定管理者制度を導入する場合の留意事項

PFI事業に指定管理者制度を併用する場合は、「指定管理者制度の運用ガイドライ

ン(新潟県)」を参考に、モニタリング及び評価を行うことを検討すること。

(2) モニタリングの実施方法

① 報告書等による履行内容の確認

ⅰ)管理者等と選定事業者の間で取り決められた業務報告書などの報告書が契約に

定めた期限等で提出されているかの確認

ⅱ)報告書の具体的内容が要求水準を満たしたものとなっているかの確認

ⅲ)財務状況の把握

監査報告書、損益計算書、キャッシュフロー計算書などから、当初の計画値か

ら大きく乖離している数値はないか、ある場合は、その理由は何かを中心に確認

することとする。

② 事実の確認

報告書の内容自体がそもそも事実行為として行われているかについて確認

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【事実の確認手法(例)】

ⅰ 測定機器による計測

ⅱ サンプルの抽出による検査

ⅲ 現場での抜き打ち検査

ⅳ サービス受益者等からの苦情等の連絡

③ 顧客満足度調査

サービスの提供の仕方、接客状況などについて、サービス受益者の満足度を調査

するもの

④ その他

・ モニタリングの頻度は、日常的に行うもの、一定の期間を定め定期的に行うも

の、随時の抜き打ち等非定期的に行うもの等その内容に応じて考える必要がある。

・モニタリングの実施においては、その全てを管理者等が自ら行う必要はなく、選

定事業者、公共サービスの受益者(利用者等)、専門機関等その内容に応じてモニ

タリングの体制を構築し協同で行うことが必要である。

(3) モニタリング手法等の入札公告時における提示

管理者等は、モニタリング情報の収集方法や体制の考え方を整理し、入札公告時に

以下のような事項として提示し、モニタリング手法等の具体的な提案を募り、約定の

上これを確定することとなる。

・ サービス要求水準とモニタリングの指標(対象)

・ モニタリング全体の枠組みや体制、モニタリングの各業務に係る官民の役割

分担(リスク、費用負担を含む)

・ モニタリングに際しての測定、観測、記録、報告等の考え方

・ サービス対価支払の考え方

・ 要求水準を満たしていない場合の措置の考え方

(4) 適正な公共サービスの提供がなされない場合の対応方法

選定事業者に問題の修復の可能性があり、事業を継続することが合理的である場

合には、その修復を図り履行を促す仕組みが必要である。

この場合、債務履行を促すためにサービス対価の支払を留保あるいは減額するな

どの経済的動機付けを与えることを考慮することも有効な手法と考えられる。

また、契約解除は管理者等にとっての最終的手段となることに留意すべきである。

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① 対応の方法

1) 支払留保

一定の業務要求水準を満たさない場合には、サービス対価の一定部分の支払を

一定期間にわたり「留保」するという経済的動機付けを講じる考え方もある。

2) サービス対価の減額

債務不履行を回避するための仕組みを構築するためには、管理者等が各事業に

応じた履行確保のスキームを考えるとともに、その中で必要に応じサービス対価

の減額の仕組みを講じる必要がある。

サービス対価の減額の仕組みを構築するに当たっては、概ね次の点を考慮しな

がら、個別事業ごとに検討する必要がある。

1) サービス対価を構成する要素の何を減額の対象とするか、

2) どのような考え方で何を測定して減額するか、

3) どの程度の減額とするか、

4) 減額措置の猶予や減額措置の留保等の軽減措置を設けるのか、

5) 契約解除等その他の措置とどのように関連付けるか、

② 具体的な対応例

・履行体制の強化(第一段階)

選定事業者自ら履行体制を強化し、改善を図る。

・是正通告(第二段階)

管理者等は選定事業者に対して「是正通告」を為し、改善計画書の提出を求め

る。選定事業者は、管理者等が合意した改善計画書に基づき改善を図る。

・契約解除(第三段階)

上記の手段を講じても改善が認められず、債務不履行の状態が継続する場合、

一定の通告期間経過後、PFI事業契約を解除する。

(5) モニタリング(監視)等の結果の公表

・PFI事業は、基本方針においても「特定事業の発案から事業の終結に至る全過程

を通じて透明性が確保されなければならない(透明性の原則)」とされている。

・管理者等は、当該選定事業の実施に係る透明性を確保するため、PFI事業契約等

に定めるモニタリング等の結果について、住民等に対して公表することが必要で

ある。

・ただし、公表することにより民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益

を害するおそれのある事項については、あらかじめPFI事業契約等で合意の上、

これを除いて公表することが必要である。

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7.2 事業破綻時等の対応

(1) 基本的考え方

何らかの事由により、PFI事業者から契約に規定するサービスの提供が受けられな

くなる、または受けられなくなるおそれがある場合のような事業破綻時等の対応策に

ついては、その事由ごとに、県とPFI事業者との間での責任の所在と対応方法をあら

かじめ具体的かつ明確に契約で定めておくことが必要である。

破綻等の事由として、次のような場合が想定できる。

・県の債務不履行による場合

・PFI事業者の債務不履行による場合

・両当事者の責めに帰すことのできない不可抗力の場合

また、事業破綻を理由にPFI契約が終了した場合、資産等を民間事業者から県に移

管することを同意する場合があるが、このような場合には、次のようなことについて、

あらかじめ取り決めておくことが必要である。

・破綻事由、責任の所在等、買取権または買取義務の条件

・資産等の価格の決定方法、その他移管に要する費用の官民間での分担等

(2) 具体的な対応策

債務不履行等によりPFI事業の実施に支障をきたした場合等の具体的な対応策につ

いて、破綻等の事由ごとにあらかじめ規定しておくことが必要である。破綻事由ごと

における対応の考え方については、次のとおりである。

①県の債務不履行によるPFI事業破綻等の場合

・事業の修復

PFI事業契約を解除する前に、PFI事業者は県に対し、相当な期間を定め、債務

不履行を治癒することを催告し、県に事業を修復する機会を与える。

・契約の解除

相当の期間内に係る事由が治癒されない場合、PFI事業者は、当該契約を解除

し、さらに、県に対し、損害賠償請求をすることができる。この場合、県はPFI

事業者に対し、その遺失利益を含む一切の損害を賠償しなければならない。

②民間事業者の責に帰すべき事由による破綻の場合

・事業の修復

PFI契約を解除する前に、県はPFI事業者に対し、相当な期間を定め、債務不履

行を治癒することを催告し、PFI事業者に事業を修復する機会を与える。

また、当該事業者に事業資金を貸し付けている金融機関等に対しても同様に、

事業修復の機会(介入権)を与え、当該事業者や関係者は相当の期間中に事業修

復に努める。

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※ 介入権(Step-in right)

プロジェクトファイナンス方式などのように、PFI事業者の借入金返済の原資を事業に係る

収入、資産に限定する資金調達方式においては、融資を行う金融機関にとって、事業の悪化時

に事業の収益の源泉となる資産・権利・契約・担保などを確実に管理し、事業を修復する機会

を確保し、事業会社からの返済原資を確実なものにすることが必要である。

このため、金融機関はPFI契約や融資契約において、こうした事業修復を行う権利(介入権)

を確保することが必要となる。

例えば、修復可能な範囲の事業悪化については、契約上、PFI事業者に相当の

期間内に修復する義務が科されるとともに、金融機関の関係者には、相応の期間

を置いて、追加資金の注入やオペレーターの交代など、事業の修復を行う権利が

付与されることになる。

③契約の解除

相当の期間内に不履行状態等を治癒し、事業を修復しない場合、県はPFI事業者

との契約を解除し、当該事業者に対し、損害賠償請求をすることができる。また、

当該事業者が県の提供した財産を利用していた場合、その上に存在するその所有物

を収去し、当財産を現状回復させた上で、これを県に返還させなければならない。

(3) 不可抗力による破綻

不可抗力によりPFI事業契約に規定された債務の履行ができず、当該事業を実施す

ることができない場合、事業の性格、保険付保の有無等を勘案の上、当事者間でその

適切な処理方法について、まず協議することが必要である。この際、当事者間で新た

な合意が成立したときは、契約条件を変更の上、PFI事業契約を継続することになる。

しかし、相当の期間内に当事者間の合意に至らない場合、PFI契約を解除すること

になる。(なお、民法は特定物に関する物件の設定移転の契約については危険負担債

権者主義(534条)をとっているので、これを回避するには、その特約を設けておく

ことも必要である。)

8. 事業の終了

事業の終了時期は、契約書等に明確に規定する。

契約書等に定める事業の終了時期となった場合は、土地等の明渡し等、あらかじめ契約

書等で定められた資産の取扱いにのっとって措置がなされ、事業は終了する。

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