39
VOL.155 2017 INSTITUTE OF   MATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF   INFORMATION SYSTEMS 一般財団法人 関西情報センター KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS 特集:「平成28年度実施事業からの報告」

DIC 171s* KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS … · すビジネス変革」をテーマに企業や自治体等における利活用の実態を調査することとした。調査の初年

  • Upload
    others

  • View
    2

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

VOL.1552017

KANSAI INSTITUTE OF    INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF  

INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF   INFORMATION SYSTEMS

一般財団法人 関西情報センター

KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS

DIC 171s*

特集:「平成28年度実施事業からの報告」

定価¥5 0 0(送料込)(ただし、一般財団法人関西情報センター会員については、年間購読料は年間会費に含まれております。)

◇ごあいさつ 一般財団法人関西情報センター 会長 森下 俊三 …………1

◇平成28年度実施事業からの報告 ………………………………………………………………………………2

 □「e-Kansaiレポート2017

          ~データ利活用社会の進展と地域・産業活性化~ 調査結果概要」 ……………2

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

 □ 平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業)

  「IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業」 ……………………9

事業推進グループ 研究員 六井 奈菜

 

 □「スマートインフラセンサ利用研究会」

   ~橋梁等の社会インフラの維持管理・点検へのセンサデータ活用推進の取り組み~  ……… 13

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

 □「KIISサイバーセキュリティ研究会 平成28年度活動報告」 ……………………………………… 18

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

 □「災害に強い通信技術を活用した「災害情報共有システム」の構築に向けて」 ………………… 24

新事業開発グループ 主任研究員 牧野 尚弘

◇賛助会員企業のご紹介

  株式会社ジェイスピン …………………………………………………………………………………… 28

  情報セキュリティ株式会社 ……………………………………………………………………………… 31

  ドコモ・システムズ株式会社 …………………………………………………………………………… 33

  TDCソフトウェアエンジニアリング株式会社 ………………………………………………………… 35

KIIS Vol. 155 目    次

本誌は、当財団のホームページでもご覧いただけます。http://www.kiis.or.jp/content/info/magazine.html

KIIS Vol.155 ISSN 0912-8727平成29年 7月発行人 田中 行男発行所 一般財団法人 関西情報センター    〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目3番1-800号 大阪駅前第1ビル8F TEL. 06-6346-2441

ご あ い さ つ一般財団法人関西情報センター

                                    会長 森下 俊三

 最近の世界経済の情勢は欧州の混乱や中国経済の減速、東アジアの地政学リスクなど予測困難な要因を多数含みながら一進一退を続けているのが現状です。 こうした経済社会の中で、次のイノベーションを起こすと期待されている技術が人工知能技術です。音声認識や画像認識における専用チップの性能向上に加えて、これらのデバイスから生成されたビッグデータとディープラーニングによる自動処理技術の進展が、様々な分野における革新的な製品・サービスを生み出すものと期待されています。 移動体の分野では、安心で安全に移動できる自動運転移動体(自動車)への期待が高く、従来の自動車メーカーだけではなく、米国の巨大 ICT 企業(GAFA)を含めたいかなる企業が主導権を握るのかが注目されています。 また、従来の電話や時計、カメラといった日本の得意とする工業製品の分野では、インターネットの進展による「モノ」と「コト」の分離によって、「写真を撮る」、「時刻を表示する」機能(コト)などが携帯電話というモノに統合されました。その結果、万能デバイスとしての「スマートフォン」が生み出され、従来型の工業製品の市場に大きな影響を与えることになりました。さらに次の段階として生活空間全体へ IoT が浸透し、スマホのみならずあらゆる環境デバイスからサービスを受けることができる社会が到来するものと予測されています。その始まりが、ソファに座りながら会話でサービスをコントールすることができる

「スマートスピーカー」なのかもしれません。 さて、当財団が平成28年度に実施したe-Kansai レポートでは、「AI・IoT・ビッグデータがもたらすビジネス変革」をテーマ

にして企業や自治体における AI の利用の展望について調査を行っています。まさに現在注目されている AI 技術が、今後ビジネスにどのように変革を生み出すのか、学識経験者、企業、自治体の方々にヒアリングした内容を中間レポートとしてまとめています。 また、「スマートインフラ研究会」では、各種インフラの管理に利用が見込まれる様々なセンサーやそこから生成される各種データを流通・管理するプラットフォームの構築を検討しています。 合わせて、「『IoT 等の新 IT 分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム』作り事業」では IoT や AI の利用が進む時代における新たな知財活用の方向性について検討しました。 一方、世界的なサイバーセキュリティの脅威は拡大傾向にあり、大企業だけではなく中小企業においても経営者がそのリスクを認識し、着実な対策を講じていく必要があります。特に、情報セキュリティに携わる人材の育成は重要な課題であり、引き続き関西地域におけるサイバーセキュリティについての人材育成や CSIRT などのコミュニティ形成に貢献してまいります。 また、南海トラフによる大規模震災への対応の面でも、防災・減災を目的とした災害情報システムの構築を目指して活動を継続しており着実に実績を積んできております。 本号では、平成28年度に実施した代表的な事業について賛助会員の皆様にご報告させていただきます。皆様の事業・ビジネスの一層の発展のご参考になれば幸いです。 賛助会員企業、国や自治体などの関係機関におかれましては、当財団の事業活動に今後とも引き続きご支援、ご協力を賜るようお願い申し上げます。

1

2

1.調査の趣旨

 IoT やビッグデータに加え、AI の利活用が普及す

ることで、企業・自治体のビジネスや業務は一変する

可能性がある。あらゆるモノやコトが「賢く」「便利に」

なることで起こりうる変化(ビジネスモデル、働き方

等)を見定めることは、今後企業がビジネスをより拡

大していく、あるいは自治体がより地域住民のための

業務を推進する上で極めて重要である。

 経済産業省産業構造審議会・新産業構造ビジョン中

間整理(2016.4.27)においては、これからデジタル

化がますます進展していく社会において、適切な組織

改革やビジネスモデル変革等対策をとらなかった場合

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

平成28年度実施事業からの報告

e-Kansai レポート2017~データ利活用社会の進展と地域・産業活性化~

調査結果概要

 一般財団法人関西情報センターでは、平成20年度より、関西地域における情報化の動向を多角的に捉

え分析することで、関西の情報化の問題点や課題を明らかにし、その解決策を提案する調査研究事業

「e-Kansai レポート」を実施している。平成28年度からの 2 ヵ年は、「AI・IoT・ビッグデータがもたら

すビジネス変革」をテーマに企業や自治体等における利活用の実態を調査することとした。調査の初年

度となる平成28年度は、事前調査として、AIやIoT、ビッグデータ等の利活用を推進している先進事例や、

有識者・学識経験者等へのヒアリングを行うことで、今後の本格調査実施に向けた調査ポイントの抽

出・整理を行った。調査の途中経過を報告する。

 経済産業省産業構造審議会 新産業構造部会「新産業構造ビジョン中間整理」より抜粋

増加

変革の成否を問わず減少

変革

増加。

増加。

減少。

増加。

変革の

減少。

③営業販売(低代替確率)③営業販売(低代替確率)

④営業販売(高代替確率)④営業販売(高代替確率)

⑤サービス(低代替確率)⑤サービス(低代替確率)

⑥サービス(高代替確率)⑥サービス(高代替確率)

カスタマイズされた高額な保険商品カスタマイズされた高額な保険商品の営業担当の営業担当 等等

低額・定型の保険商品の販売員、低額・定型の保険商品の販売員、スーパーのレジ係スーパーのレジ係 等等

高級レストランの接客係、高級レストランの接客係、きめ細やかな介護きめ細やかな介護 等等

大衆飲食店の店員、コールセンター大衆飲食店の店員、コールセンター 等等

①上流工程①上流工程

②製造・調達②製造・調達

⑦IT業務⑦IT業務

⑧バックオフィス⑧バックオフィス

⑨その他⑨その他

経営戦略策定担当、研究開発者経営戦略策定担当、研究開発者等等

製造ラインの工員、製造ラインの工員、企業の調達管理部門企業の調達管理部門 等等

製造業におけるIoTビジネスの開発者、製造業におけるIoTビジネスの開発者、ITセキュリティ担当者ITセキュリティ担当者 等等

経理、給与管理等の人事部門、経理、給与管理等の人事部門、データ入力係データ入力係 等等

建設作業員建設作業員 等等

の成否を問わず減少。

成否を問わず減少。

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

3

(現状放置シナリオ)、社会全体で735万人の雇用が減

少するとされている。中でも製造や調達など、IoT や

ロボット等の導入により大幅に効率化が進められる職

種においては、仮に先の適切な対策をとった場合(変

革シナリオ)においても297万人分の雇用が取って代

わられるとされている。特に関西地域は製造業の占め

る割合が高く、またその多くが中小企業であることを

考えると、大規模な IT 投資を前提とした業務の改革

をスムーズに実行することは難しいと言わざるをえな

い。また自治体においても、法令や制度に則った業務

の実施にあたっては AI や情報システムの利活用が有

効となる可能性も高い。

 これらの状況を踏まえ、e-Kansaiレポート調査では、

関西圏を中心とする企業・自治体を対象に、AI の利

活用等今後の新たなデジタル化の流れの中で、ビジネ

スや業務、組織体制、求められる人材がどのように変

わりつつあるのか、現状と課題を明らかにする。

 なお、平成28年度においては、次年度以降に本格的

に調査を実施するための予備調査として、企業や有識

者へのヒアリング、文献調査等を実施することとした。

2.ビジネス等における AI 利活用の現状認識

 人工知能(AI)は1950年代から研究が続けられて

いる。現在は第 3 次人工知能ブームと言われるように、

歴史的には研究自体が注目された時代とされなかった

時代とが交互に訪れてきた。 2000年代の初め、コン

ピュータスペックの向上やクラウド・コンピューティ

ングの普及を背景に、ビッグデータを用いることで

AI 自身が知識を獲得する「機械学習」の技術が確立

されたことにより、一気に期待度が高まった。 IBM

の Watson や Google の TensorFlow など、AI あるい

はビッグデータ解析のサービスプラットフォームが提

供されるようになったことで、各種ビジネスや業務等

に「AI を活用」する事例が続出した。大手企業を中

心に、製造業・サービス業といった業種を問わず AI

のビジネス導入が始まっている。

経済産業省産業構造審議会 商務流通情報分科会 情報経済小委員会中間取りまとめ報告書(平成27年5月)

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

4

 一般に、AI の実用化により実現できる機能領域と

しては「識別」「予測」「実行」のフェーズが考えられ

るが、昨今報道等でとりあげられている事例を見ても

その内容は千差万別であり、単に業務を自動化するシ

ステムを導入するような事例から、ディープラーニン

グによってビッグデータを解析し、その結果をもとに

新たな業務を提案するものなど、様々なケースが含ま

れている。

 IoT、ビッグデータ、AI の特性を踏まえ、経済や社

会への実装により価値を生み出すコンセプトが「サイ

バ ー・ フ ィ ジ カ ル・ シ ス テ ム(Cyber Phisical

Systems、CPS)」である。各種センサ等を現実社会

の様々な箇所に設置し、それをインターネットに接続

することで(IoT)膨大なデータを収集する。これら

の膨大なデータはサイバー空間において AI により処

理・解析され、識別・予測・実行のフェーズに移され

る。実行に際しては、再び物理的な空間へのフィード

バックを行うため、ロボットやアクチュエータ等に

よって様々な活動がなされていく。これらのサイクル

を効率的・効果的に回すことにより、大きな経済価値

を生み出そうというものである。

 今後のビジネスや社会システム構築において AI ・

IoT ・ビッグデータ等利活用を考える上で、様々な仕

組みを社会実装していく観点が求められる。

3.調査結果

(1) 調査の手順・方法

 昨年度までの調査結果を踏まえ、また前章で見たよ

うな新たな IT の動き等を踏まえ、今回の e-Kansai レ

ポート調査では、まず AI や IoT、ビッグデータ等が

ビジネスや社会システムにどのような変革をもたらし

ているかを、ヒアリングにより具体的に把握すること

とした。それに加え、今後の展望や克服すべき課題等

を明らかにし、企業や自治体がとるべき戦略や方針を

見出すことを目的とし調査を実施した。

 本調査は 2 カ年の調査とし、第 1 年度である平成

28年度は、次年度以降実施する本格調査(大規模アン

ケート調査、ヒアリング調査等)の前段階として、課

題や調査ポイントを整理するための予備調査として実

施した。主に有識者や先進的・特徴的な事例等へのヒ

アリング調査を行い、得られた意見から次年度以降実

施するアンケート調査やヒアリング調査での論点・ポ

イントを整理した。

(2)調査の手順・方法

 平成28年度調査におけるヒアリング調査対象とし

て、各種ニュース報道やメディア記事、書籍、シンポ

ジウム・セミナー情報等を参考に、以下の通り AI ・

IoT ・データ活用等に関する①企業・自治体等事例、

②有識者 を選定した。これらの企業・有識者に対し、

具体的な AI・IoT・データ活用等の状況を聞き取ると

ともに、これら新しい IT の利活用を進めていく上で

の課題や今後の方向性について示唆を得、次年度以降

の調査項目検討の材料にすることが今年度の目的であ

る。

 各ヒアリング結果を一覧にまとめたものが次ページ

の表である。各事例の特徴や AI ・データ利活用等に

対する考え方等を整理した。

(3) ヒアリング結果のまとめ

 ヒアリング調査では対象件数が限られるため、業種

や規模等のカテゴリで整理した分析は難しい。一方で、

データ利活用や AI 導入に向けた考え方、戦略の立て

方等においては、ある程度の共通項を見出すことがで

きた。

 すなわち、大きく以下の 4 点であると考える。

1) 「デザイン志向」や「IT 戦略部門の重要性」の指摘

 昨年度調査においても「提言」の形で取りまとめた

ポイントである。デザイン志向については、いかに社

会に必要な製品やサービスを企画・創出し、事業とし

て組み立てることができるかという点がポイントにな

る。これまでのビジネスや業務の経験、専門分野・周

辺分野に対する多くの知見をベースにしながらも、

ユーザーの生活や経験、体験をより深く洞察し、対象

とするユーザーの課題を再定義できるようなひらめき

やインスピレーション、想像力が必要である。

 NEC の事例では、ペルソナマーケティングの手法

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

5

に AI を取り入れ、マーケティング担当者のノウハウ

に加えて膨大なデータ分析結果を足し合わせること

で、効果的に規則性や調査質問項目等を見つけ出すも

のであった。

 また、日経 BP ・杉本氏の意見からは、ビッグデー

タや AI、IoT 等を積極的に導入して社内改革を進め

ている企業の特徴として、データ活用の全社的な戦略

を立案する「情報戦略本部」のような部署を発足させ

ている、フラットな組織において迅速な意思決定を実

現している、オープンイノベーションにより新たなア

イデアを積極的に取り入れている、といった点が挙げ

られた。

2) 組織・働き方改革の観点(AI は人間に取って代わ

るか)

 組織・働き方改革の観点で、AI に人間が取って代

わられることを単純に恐れているという意見はなかっ

た。逆に、AI化によって業務の枠組みが大きく変わり、

人間にしかできない仕事の領域が見出されつつあるだ

ろうとの意見が大半であった。

 一方で、AI 化により代替可能な職業について研究

を行った野村総合研究所の意見では、組織の中間層で

あるミドルマネジメントと一部の事務職は AI に取っ

て代わられるだろうとの見解であった。また駒澤大

学・井上氏の見解では、さらに将来を見据えると、実

空間での肉体労働や商品開発・マーケティング、社会

的コミュニケーションが必要な職業に至るまで、AI

による代替の可能性があるという意見であった。

3) 組織における「情報資産」の重要性

 そもそも業務の中でどれだけ情報資産を確保できて

いるか、あるいは情報資産を生み出せるビジネスモデ

ルが構築されているかが重要であるということであ

る。多くの企業事例において、本業や企業の成り立ち

からもともと持っていた膨大なデータを分析すること

で、新たな価値を見出していた。一方で単に雑多な

データでは分析に不向きで、求める成果が得られない

場合もあるという意見もあった。TSON の事例では、

データの重要性に早くから着目し、そのデータが世の

中に存在しないことから、自社で活用しやすいデータ

をまず作るということから取り組んだという点が注目

に値する。本当に活用できるデータを貪欲に追求する

ことの重要性が認められる。また企業間・組織間の

データのやり取りの重要性に対するコメントも多数得

られ、将来的に克服すべき課題(データの信頼性向上、

所有権の議論等)解決を求める声も多かった。

 個々人に寄り添うサービスを提供していく上で、単

に量が多いだけのビッグデータではなく、きちんと個

人に紐付いたビッグデータがより重要であるとの意見

も得られた(Warrantee・庄野氏)。

4) 他社との連携・協調によるビジネスモデル構築

 AI や IoT、ビッグデータ分析によるビジネス活性

化のためには、 1 社だけでなく、連携によるビジネス

モデルが重要であるということである。ダイキン工業

の事例では、ディープラーニングに強いAIベンチャー

との提携により、社内に眠っていた膨大な業務データ

の分析が可能となり、新たなビジネス創出につながっ

た。また日本情報経済社会推進協会が推進する IoT 推

進ラボの取り組みにおいても、ものづくり企業と IT

企業の連携など、新たな座組によりビジネスを創出す

る事例が生まれている。互いにデータをどの程度出し

ヒアリング結果から得られたポイント(共通項)

「デザイン志向」や「IT戦略部門の重要性」の指摘

組織・働き方改革の観点(AIは人間に取って代わるか)

組織における「情報資産」の重要性

他社との連携・協調によるビジネスモデル構築

1 2

3 4

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

6

e-K

ansa

iレポ

ート

2017

調査

 ヒ

アリ

ング

対象

企業

等一

覧企

業名

事業

概要

事業

・取

り組

みの

特徴

、主

なコ

メン

トA

I等導

入の

経緯

など

AIを

実用

化し

てい

くこ

と等

に対

して

の意

株式会社

オークネット・

アイビーエス

中古車オーク

ション会社の

ITシステム運

中古

車や

ブラ

ンド

品等

の事

業者

間ネ

ット

オー

クシ

ョン

シス

テム

を運

営し

てい

る中

で蓄

積さ

れた

膨大

な写

真(

画像

)デ

ータ

を、

ディ

ープ

ラー

ニン

グプ

ラッ

トフ

ォー

ムTe

nsor

Flow

を用

い解

析。

写真

から

自動

車の

メー

カー

、車

種、

型式

等の

特定

、撮

影角

度等

によ

る整

理・

分類

等を

自動

で行

える

よう

にな

った

オー

クシ

ョン

シス

テム

を運

営し

てい

る中

で、

大量

の画

像デ

ータ

を車

両情

報が

蓄積

され

てい

た。

ため

込ん

でい

るだ

けで

活用

でき

てい

ない

、と

いう

問題

意識

から

活用

でき

る膨

大な

デー

タ(情

報資

産)

を持

って

いる

かど

うか

がA

I化の

決め

手で

ある

。また

効率

よく

学習

させ

るた

めに

は、

デー

タの

適切

なク

レン

ジン

グが

必要

。仕

事が

AI化

され

たと

して

も、

人間

の役

割が

なく

なる

わけ

では

ない

。さ

らに

付加

価値

を高

める

こと

に注

力で

きる

近畿大学

大学事務業務

効率化に向けた

情報システム導

入とAI活用

ワー

クス

アプ

リケ

ーシ

ョン

ズ社

製の

人工

知能

型E

RP

パッ

ケー

ジ「

HU

E」を

導入

決定

。大

学内

業務

から

生成

され

る各

種ビ

ッグ

デー

タを

収集

・解

析・

機械

学習

し、

各種

入力

作業

の簡

略化

、財

務状

況の

リア

ルタ

イム

可視

化、

研究

費・

出張

費等

に係

る業

務の

効率

化、

勤怠

状況

管理

によ

るワ

ーク

ライ

フバ

ラン

ス実

現等

を目

的と

して

いる

AI機

能だ

けで

なく

、ク

ラウ

ドや

各種

拡張

性、

包括

性等

も評

価し

導入

決定

。膨

大な

事務

作業

の効

率化

に期

待。

ユー

ザと

して

シス

テム

その

もの

の面

倒を

見な

くて

よい

点も

評価

ユー

ザ部

門が

個別

にパ

ッケ

ージ

を導

入し

始め

ると

、全

体最

適が

損な

われ

る恐

れが

生じ

る。

個別

に導

入を

進め

なが

らも

全体

統制

を図

る役

割が

IT部

門に

は求

めら

れる

。そ

のた

め基

礎的

な技

術は

何ら

かの

方法

でIT

部門

に担

保し

てお

かな

けれ

ばな

らな

い。

ダイキン工業

株式会社

データ活用によ

る業務用空調

機の保守・メン

テナンス効率化

20年

以上

にわ

たり

蓄積

して

きた

業務

用空

調機

の修

理・

メン

テナ

ンス

デー

タを

ディ

ープ

ラー

ニン

グで

学習

させ

、ユ

ーザ

から

の不

調・

トラ

ブル

相談

等に

対し

て迅

速に

故障

原因

や交

換部

品を

ナビ

ゲー

トす

る仕

組み

を開

発。

また

納入

した

空調

機に

セン

サを

設置

し、

遠隔

監視

を行

うと

とも

に、

稼働

状況

に関

する

デー

タを

1時間

おき

に収

集、

ディ

ープ

ラー

ニン

グに

より

故障

予知

シス

テム

を開

発す

る計

画。

ディ

ープ

ラー

ニン

グに

対す

る注

目が

高ま

る中

、イ

ベン

トで

知り

合っ

たA

Iベン

チャ

ーと

の協

業に

際し

、最

も社

内で

デー

タが

蓄積

され

てい

ると

考え

られ

る空

調機

の保

守メ

ンテ

事業

での

デー

タ活

用に

取り

組ん

だ。

将来

的に

は外

部の

デー

タ活

用や

デー

タ連

携も

必要

にな

ると

考え

てい

る。

デー

タが

媒介

とな

り新

たな

協業

が生

まれ

る可

能性

もあ

る。1

社単

独で

のビ

ジネ

スモ

デル

では

なく

、ベ

ンチ

ャー

を含

めた

複数

社が

共同

でデ

ータ

の価

値を

高め

てい

くや

り方

を模

索す

る必

要が

ある

株式会社

TSON

不動産仲介販

売及び関連情

報サービス

分譲

住宅

市場

の販

売価

格等

デー

タを

収集

・分

析し

、地

域で

の不

動産

販売

にか

かる

マー

ケテ

ィン

グシ

ステ

ムを

開発

。不

動産

販売

価格

に際

して

は人

海戦

術で

集め

るも

のの

、こ

れに

周辺

の道

路状

況や

公共

施設

・店

舗等

情報

、エ

リア

内の

人口

構造

(世

帯構

成)

等の

情報

をマ

ッシ

ュア

ップ

し、

対象

とな

る物

件の

販売

戦略

を企

画す

るこ

とで

商品

の競

争力

を高

めて

いる

。ま

た同

ノウ

ハウ

を地

域外

同業

他社

への

コン

サル

ティ

ング

にも

活用

して

いる

分譲

住宅

の需

給情

報が

ビジ

ネス

上重

要で

ある

とい

うこ

とに

は早

くか

ら着

目し

てい

たも

のの

、有

償の

もの

を含

め適

切な

デー

タが

存在

しな

かっ

たた

め、

自分

たち

でデ

ータ

から

作る

こと

にし

た。

世の

中で

AI化

が思

うよ

うに

進ん

でい

ない

のは

、デ

ータ

その

もの

はた

くさ

んあ

るも

のの

本当

に活

用で

きる

デー

タが

少な

いた

めで

はな

いか

。一

方で

貪欲

にデ

ータ

を収

集す

ると

いう

企業

も少

ない

よう

に思

う。

また

AIが

出し

た結

論に

対し

ても

、最

後は

人間

が判

断を

下す

必要

はあ

る。

一般財団法人

日本情報経済

社会推進協会

IoT・AI関連ビ

ジネス創出活動

AI、

IoT、

ビッ

グデ

ータ

を活

用し

た新

たな

ビジ

ネス

を企

画提

案す

る企

業や

グル

ープ

を支

援す

る「

IoT

推進

ラボ

」を

運営

。も

のづ

くり

系企

業で

のIo

T利

活用

は比

較的

地道

に進

んで

いる

が、

小売

や飲

食な

どサ

ービ

ス業

での

活用

が進

んで

いな

いと

認識

。ま

た新

たな

ビジ

ネス

創出

のた

めに

は各

種デ

ータ

の共

同利

用が

不可

欠で

ある

と考

える

が、

所有

権の

議論

も含

めま

だ十

分検

討さ

れて

いな

い状

況で

ある

と考

えて

いる

一般

的に

、も

のづ

くり

系の

企業

では

比較

的Io

T化

の取

り組

みが

進み

つつ

ある

。一

方で

小売

や飲

食な

ど、

大半

の雇

用を

占め

るサ

ービ

ス業

での

導入

具合

が低

い。

サー

ビス

業の

生産

性向

上は

社会

的に

重要

な課

題で

ある

業界

横断

でデ

ータ

活用

が進

めば

もっ

とビ

ジネ

スが

活性

化す

る。

いか

に互

いに

デー

タを

出し

合え

るか

。そ

のた

めに

はデ

ータ

の信

頼性

を高

める

取り

組み

や仕

組み

が重

要に

なる

日本電気

株式会社

AI活用サービ

ス・コンサル

ティング

「A

I活用

味覚

予測

サー

ビス

」をモ

デル

とし

て、A

Iを活

用し

たペ

ルソ

ナマ

ーケ

ティ

ング

手法

を研

究し

てい

る。

これ

らの

ノウ

ハウ

も合

わせ

、企

業に

おけ

るA

I活用

を全

般的

にサ

ポー

トす

るD

IVA

フレ

ーム

ワー

クを

確立

し、

サー

ビス

展開

を図

って

いる

。企

業が

ビジ

ネス

にお

いて

AIを

活用

する

上で

は、(

1)求

める

べき

成果

や解

決す

べき

問題

は何

か、

(2)

その

ため

に新

たに

どん

な価

値を

生み

出さ

ねば

なら

ない

か、(

3)そ

の価

値を

生む

ため

には

どの

よう

な情

報が

必要

か、(

4)そ

の情

報を

得る

ため

には

どの

よう

な分

析が

必要

か、

のプ

ロセ

スが

重要

マー

ケテ

ィン

グの

課題

とし

て、

ユー

ザの

意見

を集

める

ため

の調

査や

設問

設計

に膨

大な

時間

を要

して

いた

。こ

れを

AIを

用い

て軽

減し

たい

とい

うこ

とが

出発

点。

デザ

イン

志向

によ

るマ

ーケ

ティ

ング

を効

果的

・効

率的

に推

進す

る枠

組み

を構

築し

た。

闇雲

に10

0%の

自動

化を

目指

すの

では

なく

、人

とA

Iとが

最適

なコ

ンビ

ネー

ショ

ンで

働け

る仕

組み

を設

計す

るこ

とが

重要

。A

Iによ

って

人の

作業

は確

実に

減る

が、

人の

新た

な役

割を

いか

に見

出し

てビ

ジネ

ス化

でき

るか

。デ

ータ

を収

集・

分析

して

も、

すぐ

に成

果が

得ら

れる

とは

限ら

ない

。成

果が

出る

まで

トラ

イ&

エラ

ーを

続け

るこ

とが

精度

を高

める

上で

重要

であ

る。

株式会社

野村総合研究

AIによって代

替可能な職業

に関する調査研

英国

研究

者と

とも

に、

国内

601

種類

の職

業に

対し

てそ

れぞ

れA

Iやロ

ボッ

ト等

で代

替さ

れる

技術

的な

確率

を試

算。

その

結果

、10

~20

年後

には

我が

国労

働人

口の

49%

に相

当す

る職

業に

つい

て代

替可

能性

があ

ると

の推

計結

果を

得た

。「人

でな

けれ

ばで

きな

い」

仕事

とし

て残

るの

は「

創造

性」「

ソー

シャ

ルイ

ンテ

リジ

ェン

ス」「

非定

型へ

の対

応」

がキ

ーワ

ード

とな

る専

門的

な仕

事で

ある

とし

た。

漢字

変換

ソフ

トや

SFA

等の

サー

ビス

でも

、裏

では

AI的

な仕

組み

が稼

働し

てい

る。

AI・

IoT

・ビ

ッグ

デー

タの

活用

はこ

れか

ら確

実に

進ん

でい

く。

AI化

の進

展に

より

、組

織の

中間

層で

ある

ミド

ルマ

ネジ

メン

トと

事務

職の

一部

の仕

事が

なく

なる

。人

の役

割は

トッ

プ戦

略立

案と

オペ

レー

ショ

ンの

一部

に二

極化

する

。ま

たA

I化に

より

各部

門が

横串

され

、縦

割り

の組

織は

崩れ

てい

くと

考え

られ

る。

団塊

ベテ

ラン

社員

が退

職す

る今

こそ

、暗

黙知

のA

I化の

チャ

ンス

であ

る。

福島県

会津若松市

スマートシティ

構想

市民

のパ

ーソ

ナル

デー

タや

自治

体の

オー

プン

デー

タ等

を徹

底的

に収

集・

活用

する

こと

で都

市を

活性

化す

る「ス

マー

トシ

ティ

会津

若松

」プロ

ジェ

クト

を推

進。

様々

なデ

ータ

収集

が可

能と

なる

プラ

ット

フォ

ーム

とし

て「

会津

若松

+」「

IoT

ヘル

スケ

アプ

ラッ

トフ

ォー

ム」

等の

事業

を推

進。

会津

大学

等と

も連

携し

、ア

ナリ

ティ

クス

人材(

デー

タサ

イエ

ンテ

ィス

ト)

の育

成に

も取

り組

む。

デー

タ収

集・

分析

は特

定の

業種

分野

に限

らず

、医

療・

健康

・福

祉、

農業

、教

育、

エネ

ルギ

ー、

観光

など

多様

なタ

ーゲ

ット

を設

定。

ビジ

ネス

とし

てエ

コシ

ステ

ムが

形成

でき

るよ

うコ

ーデ

ィネ

ート

を図

って

いる

。合

わせ

て市

内の

ICT

関連

産業

の振

興に

も役

立て

る。

市長

がIC

Tに

熱心

であ

った

こと

、震

災復

興に

アク

セン

チュ

アが

関わ

って

くれ

たこ

とが

スマ

ート

シテ

ィ計

画推

進の

きっ

かけ

とな

った

。エ

ネル

ギー

や観

光と

いっ

た特

定分

野で

のデ

ータ

活用

では

なく

、様

々な

事業

領域

で横

断的

にデ

ータ

が取

り扱

える

仕組

みを

構築

して

いる

デー

タを

核と

した

官民

協働

の取

り組

みは

、参

画す

る側

それ

ぞれ

にメ

リッ

トが

ない

と成

立し

ない

。市

が積

極的

に主

導し

て市

民の

デー

タを

活用

する

ため

のプ

ラッ

トフ

ォー

ムを

整備

し、

ICT

関連

をは

じめ

とす

る企

業が

集ま

って

くる

こと

によ

って

、地

域の

経済

循環

が始

まる

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

7

e-K

ansa

iレポ

ート

2017

調査

 ヒ

アリ

ング

対象

有識

者等

一覧

企業

名意

見の

概要

活動

概要

、主

なコ

メン

ト等

AIを

実用

化し

てい

くこ

とに

対し

ての

意見

井上智洋氏

(駒沢大学経済学部)第4次産業革命で生

産性の上昇が始まる

のは2030年頃から

と推定

2030

年頃

には

様々

な知

的作

業を

行え

る汎

用人

工知

能(A

GI)

が実

現し

、ホ

ワイ

トカ

ラー

の仕

事は

もち

ろん

、医

者や

弁護

士等

専門

性の

高い

仕事

も人

工知

能が

取っ

て代

わる

時代

が来

ると

して

いる

。ま

た20

45年

頃に

はA

I化や

ロボ

ット

化が

さら

に進

み、

人工

の1割

程度

しか

労働

に従

事し

てい

ない

可能

性が

ある

とし

てい

る。

生産

活動

に労

働力

が不

要と

なる

純粋

機械

化経

済の

到来

を予

測し

、そ

うい

った

社会

を維

持す

る経

済シ

ステ

ムと

して

BI

(ベ

ーシ

ック

イン

カム

)の

重要

性を

指摘

して

いる

ITに

よる

事務

労働

の代

替は

、す

でに

第3次

産業

革命

時に

始ま

って

いる

。日

本で

はIT

化が

遅れ

てい

るた

め、

事務

労働

のダ

ブつ

きが

顕在

化し

てい

ない

だけ

だ。

飲食

、建

設、

介護

など

実空

間で

の肉

体労

働や

、商

品開

発や

マー

ケテ

ィン

グの

よう

な仕

事、

社会

的な

コミ

ュニ

ケー

ショ

ンの

必要

な仕

事も

、今

後、

AIに

代替

され

るだ

ろう

。第

3次産

業革

命が

情報

空間

内で

のIT

革命

であ

った

のに

対し

て、

第4次

産業

革命

は実

空間

と連

動す

るIT

革命

であ

る。

自動

車で

あれ

、ロ

ボッ

トで

あれ

、スマ

ート

マシ

ンの

OS

を制

する

者が

グロ

ーバ

ルな

規模

で業

界の

覇権

を握

るだ

ろう

神田啓史氏

(経済産業省)

第4次産業革命の第

二幕のチャンスを活

かすための様々な課

産業

構造

審議

会・

新産

業構

造部

会に

おい

て、

第4次

産業

革命

に対

応し

た我

が国

社会

経済

シス

テム

のあ

るべ

き方

向性

をま

とめ

た「

新産

業構

造ビ

ジョ

ン(

中間

とり

まと

め)」

を作

成。

現時

点で

は、

GA

FA(

Goo

gle、

App

le、

Face

book

、A

maz

on)

に代

表さ

れる

プラ

ット

フォ

ーマ

ーに

市は

席巻

され

たが

、今

後の

第二

幕と

して

は、

リア

ルな

世界

にお

ける

デー

タの

取り

扱い

や実

装技

術等

に中

心が

シフ

トし

てく

ると

考え

てい

る。

ここ

はロ

ボッ

ト技

術等

で日

本の

強み

が発

揮で

きる

とと

もに

、超

高齢

化等

社会

課題

が世

界で

最初

に訪

れる

国と

して

、今

後の

世界

のモ

デル

にな

れる

可能

性を

秘め

てい

ると

考え

てい

る。

第二

幕を

勝ち

抜く

ため

に必

要な

国の

施策

は、

次の

6つ。

①デ

ータ

利活

用促

進に

向け

た環

境整

備(

デー

タ帰

属の

明確

化、

デー

タ流

通市

場の

創設

、知

的財

産と

して

の保

護、

サイ

バー

セキ

ュリ

ティ

の強

化な

ど)、

②イ

ノベ

ーシ

ョン

・技

術開

発の

加速

化(

オー

プン

イノ

ベー

ショ

ンシ

ステ

ムの

構築

など

)、③

規制

改革

、④

企業

の稼

ぐ力

、⑤

人材

育成

・雇

用、

⑥中

小企

業、

地域

経済

への

波及

。個

別企

業に

共通

する

これ

から

の大

きな

課題

は、

第4次

産業

革命

に対

応で

きる

人材

育成

。た

だし

、中

小企

業で

は難

しい

ので

、専

門家

の伴

走が

必要

にな

るだ

ろう

栗原潔氏

(文部科学省)

日本発のトップレベ

ルの基礎研究を産

学連携でビジネスに

育てる

我が

国情

報科

学分

野は

、先

端研

究等

で世

界に

大き

く後

れを

取っ

てい

る。

第2次

人工

知能

ブー

ムが

下火

にな

った

199

0年代

から

の約

20年

間、

日本

では

計算

機科

学や

数学

分野

での

論文

発表

数が

他国

に比

べ伸

び悩

んだ

。こ

れら

の状

況を

踏ま

え、

文部

科学

省だ

けで

なく

、総

務省

、経

済産

業省

の3省

が連

携し

て人

工知

能分

野の

研究

振興

を図

るこ

とと

して

いる

。産

学官

の連

携に

より

、取

り組

むべ

き研

究開

発目

標と

産業

化ロ

ード

マッ

プを

作成

、研

究開

発か

ら社

会実

装ま

でを

一元

的に

推進

する

こと

とし

てい

る。

日本

が今

取り

組む

べき

こと

は、

主に

、①

グロ

ーバ

ルな

観点

、②

基礎

研究

の重

視、

③そ

の上

での

産学

連携

の強

化、

の3点

。基

礎研

究を

グロ

ーバ

ルな

ビジ

ネス

に育

てて

いく

ため

には

、特

に③

の産

学連

携を

もっ

と強

化し

てい

かな

けれ

ばな

らな

い。

現時

点で

は、

人間

の仕

事が

AIに

とっ

て代

わら

れる

こと

を懸

念す

るよ

り、

むし

ろ、

AIの

普及

に伴

う法

改正

など

によ

る影

響に

留意

した

方が

いい

と思

われ

る。

小嶌不二夫氏

(株式会社ピリカ)人間もAIも得手不

得手があるので、適

切な役割分担が効

率化の決め手

ITに

よる

環境

問題

への

貢献

とし

て、「

ポイ

捨て

ごみ

問題

」に

取り

組む

。路

上の

ごみ

を拾

った

こと

をS

NS

で共

有す

るこ

とで

、人

々が

自主

的に

地域

のご

み拾

いに

取り

組む

よう

にな

るプ

ラッ

トフ

ォー

ム「

ピリ

カ」

を開

発。

また

それ

に加

えて

、地

域の

ごみ

分布

をA

Iによ

り画

像認

識し

調査

する

サー

ビス

「タ

カノ

メ」

を開

発。

今後

は自

治体

の清

掃情

報や

固定

カメ

ラ等

の映

像情

報も

合わ

せ、

ポイ

捨て

分野

にお

ける

アメ

ダス

のよ

うな

サー

ビス

の開

発に

挑み

たい

AIを

導入

しや

すい

条件

は、

大き

なデ

ータ

を持

って

いる

こと

と、

対費

用効

果を

生む

だけ

の事

業規

模で

ある

こと

。逆

にそ

れが

なけ

れば

、A

Iの導

入は

進ま

ない

。た

だし

、A

Iはす

でに

ある

程度

社会

に浸

透し

てい

るの

で、

キラ

ーア

プリ

やキ

ラー

コン

テン

ツが

登場

すれ

ば、

一気

に普

及す

ると

思わ

れる

。将

来構

想や

夢を

持つ

こと

も、

AI化

推進

の動

機づ

けと

して

は大

きい

佐久間洋司氏

(大阪大学/人工

知能研究会AIR)

第一線の研究者が

参加するコミュニ

ティで、若手研究者

は学び育つ。

次世

代を

担う

学生

が自

ら次

世代

の人

工知

能研

究・

応用

を目

指す

こと

を目

的に

、自

主的

な活

動と

して

設立

。大

学や

企業

等か

らも

活動

に支

援が

寄せ

られ

てい

る。

日本

には

北米

のよ

うな

大学

横断

的な

講義

がな

く、

オー

プン

コー

スウ

ェア

を使

って

世界

に発

信し

てい

く文

化も

ない

。そこ

で大

阪大

学、

京都

大学

、東

京大

学等

の学

生が

中心

にグ

ルー

プを

形成

。自

らの

カナ

ダへ

の留

学体

験か

ら、

大学

にお

ける

人工

知能

関連

の講

義レ

ベル

や、

研究

をビ

ジネ

スへ

つな

げて

いく

ため

の各

種支

援、

環境

に大

きな

差が

ある

と感

じて

いる

機械

学習

研究

のた

めの

環境

が整

って

おり

、ま

た、

日々

様々

な情

報が

飛び

交う

北米

各地

と比

較す

ると

、日

本で

は人

工知

能の

将来

につ

いて

適切

な評

価が

され

てい

ない

ので

はな

いか

。日

本国

内だ

けで

対策

を考

える

ので

はな

く、

学生

や若

手研

究者

が海

外の

先進

的な

地域

に出

て行

って

学び

、そ

の地

域の

コミ

ュニ

ティ

との

つな

がり

を持

った

まま

日本

に帰

って

きて

もら

うと

いう

のが

、日

本の

取る

方法

とし

て考

えら

れる

かも

しれ

ない

。人

工知

能の

発展

は、

長い

目で

見れ

ば大

学か

ら、

すな

わち

優れ

た学

生を

育て

ると

ころ

から

始ま

って

いる

と言

え、

日本

の将

来は

適切

な環

境を

構築

でき

るか

どう

かに

かか

って

いる

庄野裕介氏

(株式会社

Warrantee)

消費者ニーズの総和

ではなく、個々人に

紐づいたビッグデー

タが重要

家電

製品

や住

設機

器な

どの

保証

書を

電子

化し

登録

でき

るサ

ービ

スを

提供

。利用

者に

とっ

ては

紙の

保証

書を

紛失

して

も、

保証

期間

内で

あれ

ばス

マホ

から

直接

修理

依頼

が可

能。

一方

、利

用者

がい

ろい

ろな

家電

・機

器等

を登

録す

るこ

とで

、ア

プリ

を通

し、

利用

者の

属性

と保

有し

てい

る商

品に

関す

る膨

大な

デー

タが

集ま

るこ

とに

なる

。将

来的

には

機器

の故

障予

測や

需要

(買

い替

え)

予測

等に

も発

展が

期待

でき

る。

これ

から

は単

なる

ビッ

グデ

ータ

では

なく

、個

々人

に紐

づい

たビ

ッグ

デー

タが

より

有効

にな

る。

また

AIの

実用

化が

遅れ

てい

るの

は、

デー

タは

あっ

ても

、使

える

デー

タが

少な

いか

らで

はな

いか

。何

にど

う使

うの

かを

想定

して

デー

タ収

集し

ない

と、

使え

るデ

ータ

は蓄

積で

きな

い。

20年

後、

30年

後の

自社

の姿

をイ

メー

ジし

て、

そこ

から

逆算

して

、今

の課

題を

設定

すれ

ば、

ツー

ルと

して

AIや

IoT

の活

用方

法が

見え

てく

るは

ず。

杉本昭彦氏

(日経ビッグデータ)中堅・中小企業にAI

が普及する条件の

一つが、成功事例の

パッケージ化

全国

のA

I・Io

T・

ビッ

グデ

ータ

等活

用事

例を

取材

して

いる

。A

Iの利

活用

は、

2015

年に

企業

内一

部署

・一

業務

で本

格的

に始

まっ

た年

だと

考え

てい

る。

2016

年に

は全

社的

な活

用が

始ま

り、

2017

年以

降は

一企

業を

越え

て業

界横

断的

に利

活用

が始

まる

と予

測し

てい

る。

一方

で中

堅・

中小

企業

に対

して

も、

成功

事例

のパ

ッケ

ージ

化や

機械

学習

関連

の各

種A

PIの

普及

、個

人情

報保

護法

改正

など

制度

面で

の環

境整

備を

背景

に、

利用

でき

る条

件が

整い

つつ

ある

。先

進的

に取

り組

んで

いる

企業

は、

いず

れも

経営

者が

業界

の将

来に

危機

感を

持ち

、新

しい

こと

へチ

ャレ

ンジ

する

こと

を恐

れず

に取

り組

んで

いる

こと

が共

通点

とし

て挙

げら

れる

ビッ

グデ

ータ

、Io

T、A

I等の

導入

・活

用に

積極

的な

企業

で進

む社

内改

革は

、①

デー

タ活

用の

全社

的な

戦略

を立

案す

る「

情報

戦略

本部

」の

よう

な部

署の

発足

、②

フラ

ット

な組

織と

意思

決定

の速

さ、

③オ

ープ

ンイ

ノベ

ーシ

ョン

を積

極的

に推

進、

によ

り促

進さ

れる

と考

える

。AIの

導入

が進

んで

も、

人が

やら

なか

った(

でき

なか

った

)仕

事を

AIが

こな

すか

、あ

るい

は、

余っ

た人

材は

新た

な仕

事に

就く

など

して

、当

面、

社内

失業

は発

生し

ない

。デ

ジタ

ルや

デー

タの

世界

には

まり

込む

と近

視眼

的に

なり

、部

分最

適だ

けを

追い

求め

るこ

とに

なり

かね

ない

。一

歩引

いて

、リ

アル

な顧

客体

験を

踏ま

えた

り、

ビジ

ネス

モデ

ルと

して

社会

性が

ある

かど

うか

を検

証し

たり

する

こと

が重

要だ

e-Kansaiレポート2017 調査結果概要

8

合えるか、データの信頼性を高められるかといった議

論は引き続き必要であるものの、データを媒介とした

新しい協業、オープンイノベーションの取り組みが今

後も多数生み出されると期待される。これは民間企業

同士の取り組みだけに留まらず、会津若松市の事例の

ように、自治体と民間企業とがデータをうまく連携

し、官民共同の枠組みを実現するチャレンジも進みつ

つあるところである。

4.今後の調査の方向性

 平成28年度 e-Kansai レポート調査においては、本

格的なアンケートやヒアリング調査の実施前の予備調

査として、企業・団体・有識者等へのヒアリング調査

を行った。その結果、今後の AI・IoT・ビッグデータ

等利活用によるビジネス・地域活性化に向けて注視す

べきポイントを整理した。

 今後、次年度実施の調査に向けて、アンケート調査

の項目やヒアリング調査のポイント等を整理していく

こととなる。今年度調査の結果を踏まえ、現時点で想

定される調査項目を以下に挙げる。調査実施時におい

ては、社会動向や他の情報等を鑑み、再度詳細につい

て検討する必要がある。

平成29年度調査におけるアンケート調査項目(素案)企業における情報資産保有状況・データの内容(種類、形式、量、粒度、…)・活用したいデータの有無・現在の利活用状況(成果の有無) 等

IT戦略部門の状況・有無・人員構成/ IT 人材の配置状況・組織の形態、役割(事業部門との連携状況)、位置づけ

組織・働き方改革の観点・現在の業務が AI やロボットに取って代わられるか(考

え方)・AI により単純作業等が代替された場合、人間が注力し

たい仕事・組織のあり方をどのように変えるべきか 等

ビジネスにおける他社との連携の状況・AI ・IoT ・ビッグデータ関連での専門業者や他社との

連携状況及び意思・新たなビジネスモデルの創出状況 等

基礎データ・業種、規模、職員数、資本金、売上、IT 投資額(率)・デジタル化に関する認識(社会状況、自社ビジネスへ

の影響)・着目している技術/利活用している技術・デジタル化を推進する上での障壁(法制度、人材不足、

レガシーシステムの影響、サイバーセキュリティ等)・公的施策等への要望・IT 経営力指標各項目 等

業務経歴

石橋 裕基(事業推進グループ リーダー・主任研究員)

・ 電子自治体の構築に向けた課題についての調査研究(2002)

・ NIRA 型ベンチマーク・モデルを活用した政策評価システムおよび行政改善への提案に関する研究(2003~)

・ 滋賀県データセンター機能構築基本調査(2003)・ 自治体における電子申請システムに関する調査研究

(2003)・ 利用者の視点に立った電子自治体エージェントシステ

ム実現に向けた調査研究(2004)・ 共同利用型自治体版 CRM 実現に向けた研究会(2004)・ 地域再生計画認定制度等の事後評価に関する調査

(2005)・ 近畿地域産業クラスター計画「関西フロントランナー

プロジェクト『ネオクラスター』」事業(2006~2008)・ 近畿地域イノベーション創出共同体形成事業(2008~

2009)・ 未来型情報家電分野における川上・川下ネットワーク

構築事業(2009)・ e-Kansai レポート(2010~)・ 次世代電子・エネルギー技術産業ナンバーワン戦略プ

ロジェクト(プロジェクト NEXT)(2010)・ 東大阪市内企業の環境ビジネス参入に向けた調査

(2010)・ 情報家電系組込み産業振興ネットワーク活性化事業

(2011~2012)・ 関西新エネルギービジネス創出ネットワーク事業

(2011)・ 地域主権時代における現代版井戸端会議導入によるコ

ミュニティマネジメントの実証研究・研究会支援業務(2012~2014)

・ IT 融合ビジネスパートナーズ事業(2013~2014)・ 四国地域情報セキュリティ人材育成推進事業(2013)・ オープンデータ・ビッグデータ利用推進フォーラム

(2014~)・ IoT/IoE のビジネス環境とその発想を促す試行的ワー

クショップによる産業育成方策に関する調査(2014)・ KIIS サイバーセキュリティ研究会(2015~)・ 平成27年度 IT 分野における先進的知財アイデア(新

IT 知財)応用商品事業化促進調査(2015)・ 平成27年度ビッグデータの関西地域機械産業への活用

方策に関する調査(2015)・ IT 分野における先進的知財アイデア(新 IT 知財)応

用商品事業化促進調査(2016)

9

1. 事業の趣旨・目的

 IoT、AI、ビッグデータ活用、ロボット等の新たな

技術が台頭したことにより、ビジネスの在り方が大き

く変革しつつある状況である。従来は製品の売り切り

型のモノ売りビジネスが主流であったが、新サービス

を提供し継続的に利益を上げることができるコト売り

ビジネスへの転換が始まっている。

 世界ではそのような動きが既にみられており、例え

ば Nest 社はスマートサーモスタットを提供している

が、単にサーモスタットを販売していると考えるのは

正解ではない。Nest のサーモスタットはネットワーク

接続しており、町全体の電力ピークコントロールが実

現できた。電力コントロールだけでなく、住空間のあ

らゆるモノのプラットフォームとなったと考えられる。

 世界の動きと同様に、日本においてもサービス提供

型の新ビジネスを創出していく必要がある。そのため

には自社単独ではなく、異業種連携によりそれぞれが

持つ技術・知財を組み合わせていく必要がある。

 しかし、日本では従来どおりの自社単独での活動が

主流である。他社と技術・知財を共有し新ビジネスを

創出する動きが少ない要因の一つとして、異業種連携

による新ビジネス創出の仕組みが確立されていないこ

とが考えられる。以前より、ビジネスマッチング活動

は数多く行われてきたが、ビジネスが生まれるプロ

ジェクト化の段階までの支援が今まで以上に必要とさ

れていると感じる。

 そこで、関西を対象に、IT 関連の知財・技術を活

用した、異業種連携での新ビジネス創出のためのプ

ラットフォーム形成に取り組んだ。図 1 の通り、まず

は異業種連携の呼びかけの場を作りだすため、提案型

フォーラムを開催した。大阪だけでなく関西の他地域

でも新ビジネス創出の機運を醸成するため、他地域団

体と連携し、大阪と京都のそれぞれで提案型フォーラ

ムを開催した。その後、提案型フォーラムで出会った

発表企業と参加者の事業連携を支援するため、プロ

ジェクトメイキングを行った。

図1 事業フロー図

2. アドバイザリボードの設置

 まず事業全体への助言機関として、大阪大学 産学

連携本部 正城 敏博教授を委員長に迎え、表 1 のと

事業推進グループ 研究員 六井 奈菜

平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業)

「IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業」

 IoT、AI 等が重要なテーマとなっている今、従来のようなモノ売りビジネスから、新サービスを提供

するコト売りビジネスへの転換が求められている。新しいサービス開発のためには、自社単独でなく異

業種連携により新たな分野を開拓する必要がある。平成28年度、KIIS では「IoT 等の新 IT 分野におけ

る知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業」(平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補

助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業))を実施し、新 IT 分野で異業種連携による新ビジネスを

創出する仕組み作りに取り組んだ。本稿では本事業の概要について説明する。

IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業

10

おり有識者 4 名から構成するアドバイザリボードを設

置し、意見を受けつつ事業を推進した。

 表1 アドバイザリボード委員

委員長 大阪大学 産学連携本部 総合企画推進部長 兼 知的財産部長 教授 正城敏博氏

委員一般財団法人ニューメディア開発協会 新情報技術企画グループ グループ長

林 充宏氏

委員一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)理事 近畿支部長(株式会社コミュニケーション・テクノロジー 代表取締役)

松本浩樹氏

委員

組込みシステム産業振興機構(ESIP)第2部会長(ダイキン工業株式会社 テクノロジー・イノベーションセンター エネルギーシステムグループ 産官学連携専任部長)

加井隆重氏

 第 1 回アドバイザリボードでは、提案型フォーラム

(大阪開催)の内容や発表企業を検討した。第 2 回で

は、提案型フォーラム(大阪開催)の実施報告を行う

とともに、大阪開催からのプロジェクトメイキング企

画、提案型フォーラム(京都開催)企画についても検

討した。第 3 回では、提案型フォーラム(京都開催)

および大阪開催からのプロジェクトメイキング企画、

先行プロジェクト企画の実施報告を行った。

3. 提案型フォーラムの開催

 新ビジネス創出のための仕組み作りの一つとして、

技術・知財のシーズを持つ企業・大学からの提案を行

う提案型フォーラムを大阪と京都で開催した。

 今回の提案型フォーラムでは、より多くの参加者に

興味を持ってもらうため、偏りなく多様な技術・知財

シーズを提案紹介した。具体的には、関西の中小企業

だけでなく大学研究者、開放特許を保有する大手企業

にも発表頂いた。ニーズを持つ多くの参加者に興味を

持ってもらい、発表者(シーズ)と参加者(ニーズ)

とのマッチングに繋がったと感じる。マッチング精度

を高めるための取り組みとして、連携に関する意向を

記述するアンケートを発表企業・参加者の双方から取

得する、展示交流会の時間を設ける等の様々な工夫を

施した。

 大阪開催に関しては、開催後に発表企業・参加者に

対しフォローアップを行い、プロジェクトメイキング

へと繋げた。

■大阪開催

日時:平成28年10月24日(月) 14:00~17:00

場所:グランフロント大阪タワー C 8F C01+02会議室

主催:一般財団法人関西情報センター

参加:53名(申込76名)

内容:基調講演

「IoT で創りだすビジネスイノベーション」

 株式会社ウフル 上級執行役員

 IoT イノベーションセンター所長兼

エグゼクティブコンサルタント 八子 知礼 氏アイデア発表

【中小企業】

「しなやかな IoT 通信の実現

~高強度フレキシブル導電糸の活用~」

ウラセ株式会社

「非接触型タッチパネルによる新たな可能性

~新光学素子『パリティミラー』の活用~」

株式会社パリティ・イノベーションズ

「4D センサーの技術による安全・安心のための

ものづくり~高速・高精度形状変形計測装置~」

4D センサー株式会社

【大学研究】

「感覚融合技術で達人の技を学ぶ

~追体験システムの活用~」

 大阪大学大学院 情報科学研究科

バイオ情報工学専攻 准教授 安藤英由樹 氏

【開放特許企業】

「AR(拡張現実感)技術を適用したテレビシステム

~ Augmented TV の活用~」

一般財団法人 NHK エンジニアリングシステム展示交流会

 発表企業が実機の展示を行い、参加者と自由に交流

できる時間を設けた。参加者が発表企業との連携を検

討できるよう、知財や活用検討分野を展示パネルにま

とめ、合わせて展示した。■京都開催

日時:平成29年 1 月26日(木) 14:00~17:00

場所:TKP ガーデンシティ京都  7 階 橘

IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業

11

主催:一般財団法人関西情報センター

   一般社団法人システム科学研究所

参加:49名(申込62名)

内容:基調講演

「IoT で実現するスマートハウスとサービスの将来像」

 京都産業大学 コンピュータ理工学部

准教授 平井 重行 氏アイデア発表

【中小企業】

「IoT を活用した点眼デバイス

~前を向いて点眼できるインクジェット方式~」

株式会社京都マイクロシステムズ

「ウェアラブルデバイスで完全ハンズフリー作業を

実現~ RFID 活用による作業の効率化~」

株式会社ゴビ

「地域と外国人観光客をつなげる「IoT ×観光」

おもてなしサービス~ KoI(こい)サービス~」

京なか GOZAN

【大学研究】

「ヒト触感の客観的デジタル化理論と実装

~「やわらかさ」のデザイン技術として~」

京都工芸繊維大学 繊維学系 教授 佐久間 淳 氏

「次世代無線技術を活用した IoT の未来

~広範囲で通信可能なセンサーネットワーク~」

 京都産業大学 コンピュータ理工学部

准教授 瀬川 典久 氏展示交流会

4. プロジェクトメイキングの実施

 本事業において整備した「知財活用ビジネス推進プ

ラットフォーム」のトライアル活動として、具体的な

プロジェクトメイキングを行った。技術シーズ等を有

する企業に対し関心を持つ異業種企業が集まり、少人

数グループを作り連携可能性を模索するものである。

今回は、大阪フォーラムからの企業連携プロジェクト

2 件と研究会プロジェクト 1 件の、合計 3 件を実施した。

 大阪フォーラムでは、発表された企業シーズに対し、

参加者からの連携希望を聴取した上で、興味がマッチン

グしたグループを組成し事務局が活動をフォローした。

 また、大阪フォーラム発表企業の中から、関西情報

センター主催の「スマートインフラセンサ利用研究

会」との連携が期待できる発表企業を選出し、同研究

会において技術提案の場を設けた。同社の技術は本研

究会において検討中である社会インフラ点検・管理作

業に応用が期待できる。

 また、独自提案プロジェクトとして、関西情報セン

ターが検討中の研究会の企画検討を掘り下げる活動を

行い、研究会の立ち上げに繋げた。

■大阪フォーラムからの企業連携プロジェクト

① 発表企業 A 社(立体映像技術)と関西の大手企業

B 社とのプロジェクト第 1 回

日 時:2016年12月

参加者:発表企業 A 社  1 名

    大手企業 B 社  4 名

    一般財団法人関西情報センター  2 名

内 容:発表企業 A 社と大手企業 B 社の間で意見交

換を行った。第 2 回

日 時:2017年 2 月

参加者:発表企業 A 社  1 名

    大手企業 B 社  3 名

    一般財団法人関西情報センター  2 名

内 容:発表企業 A 社と大手企業 B 社の開発中技術

との融合を検討した。

②発表企業 C 社(センシング技術)と KIIS スマート

インフラセンサ利用研究会とのプロジェクト第 1 回

日 時:2016年12月

参加者:発表企業 C 社  1 名

スマートインフラセンサ利用研究会メンバー

内 容:一般財団法人関西情報センター主催のスマー

トインフラ研究会(センサーを用いたインフ

ラ検査等を研究)で発表企業 C 社が技術を

発表し、活用可能性についてメンバーでディ

スカッションした。

IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業

12

第 2 回

日 時:2017年 2 月

参加者:発表企業 C 社  1 名

    研究会参加企業 D 社  4 名

    一般財団法人関西情報センター  2 名

内 容:研究会で興味を持った研究会参加企業 D 社

と発表企業 C 社との間で意見交換を行い、

連携可能性を検討した。

■独自企画プロジェクト

 提案型フォーラム、プロジェクトメイキングと並行

し、独自企画プロジェクトとして「破壊的イノベー

ションがもたらすデジタル社会」を実施した。未来社

会を予想し、自社の将来を見据えた新ビジネス発想が

できる人材の育成を目的に開催し、様々な業種の若手

社員を集め、少人数でのディスカッション中心の研究

会形式とした。第 1 回

日 時:2017年 2 月22日(水)15:30-18:30

場 所:オカムラ 大阪ショールーム内研修室

    「KIZUKI LABO SHOWROOM」

参加者:メンバー 5 名、事務局 4 名

内 容:

1. 研究会趣旨/スケジュール説明

2. メンバー自己紹介

3. 研究会の進め方

・方法論について

・個別テーマについて

4. その他

5. まとめ

 本事業では、新ビジネス創出の仕組み作りの取り組

みの一つとして、提案型フォーラムを 2 地域(大阪、

京都)で開催した。その結果、連携可能性の高い企業

をマッチングさせるプロジェクトメイキングにも取り

組み、企業間連携を検討するプロジェクトを 2 件と、

独自企画プロジェクト 1 件を立ち上げた。

 まず、大阪フォーラムでは、発表企業の技術・知財

へ興味を持った参加者が多数存在し、合計 2 件のプロ

ジェクトを立ち上げるに至った。それぞれのプロジェ

クトでは、発表企業と参加者の間で 2 回ずつ会合を行

い、連携可能性について議論を行った。これらのプロ

ジェクトは現在も進行中である。京都フォーラムでも、

互いに強い興味を持つ企業が複数あり、今後の進展が

期待される。

 独自企画プロジェクトでは、第 1 回を開催しメン

バー間で研究の進め方等について議論することができ

た。平成29年度からは、本格的に未来社会の研究を推

進していく予定である。

 工夫した点は、提案型フォーラムでは、発表企業と

ともに発表内容を検討し、参加者にとって技術・知財

のポイントとビジネス連携の呼びかけが分かりやすい

発表となるようにしたことである。さらに参加者アン

ケートを工夫し、参加者のニーズを把握しやすくする

とともに、発表企業側からもアンケートを取り、マッ

チング精度を向上させた。展示交流会の時間を設けた

ことも、参加者と発表者の意見交換に効果的だったと

考えられる。さらに、互いに興味を持つ企業に対し、

2 回の打合せのコーディネーションを行い、プロジェ

クト化に成功した。一方、独自企画プロジェクトでは、

研究会の趣旨と進め方を企業に説明することで、研究

会活動にふさわしいメンバーの人選をお願いし、その

結果、当初より目論んでいた異業種の若手社員による

議論の場を作ることができた。

 本事業実施の結果、新ビジネスを創出する仕組み作

りのノウハウを得ることができた。KIIS ビジネスマッ

チング等へこの手法を取り入れることで、プロジェク

トメイキングを効果的にサポートしていきたい。

業務経歴

六井 奈菜(事業推進グループ 研究員)

・情報家電系組込みシステム産業振興ネットワーク活性化事業(2012)

・ 関西 CIO ネットワークサロン(2012~2015)・ IT 融合ビジネスパートナーズ事業(2013~2014)・四国地域情報セキュリティ人材育成推進事業(2013)・IoT/IoEのビジネス環境とその発想を促す試行的ワー

クショップによる産業育成方策に関する調査(2014)・ビジネスイノベーションセミナー(2015~)・IT 分野における先進的知財アイデア(新 IT 知財)

応用商品事業化促進調査 (2015)・IoT 等の新 IT 分野における知財活用ビジネス推進

プラットフォーム作り事業(2016)・デジタル社会とイノベーション研究会 (2016~ )

13

1.社会インフラ老朽化のもたらす課題と研究会の目的・構成

 橋梁等の社会インフラは、日本においては1960年

代を中心とする高度経済成長期に建設が急増してお

り、図 1 のように今後20年間で築後50年を超える老

朽化が加速度的に進展する。長寿命化が大きな社会課

題となっており、また、 5 年に 1 度の近接目視点検が

平成26年度より義務づけられた。そのための予防保全、

点検・維持管理費用の削減、熟練者不足の支援策が喫

緊の問題となってきている。また最近 IoT センサ ・ ロ

ボット・AI 活用や CIM の取り組みが盛んになってい

る。

図1 建設後50年以上を経過する社会資本の割合出展:国土交通省

 しかしながら、センサ利用へのニーズ・シーズのア

ンマッチや、各種情報は現場での紙媒体での点検帳票

や図面が多く、維持管理の効率向上の余地が多いのが

現状である。またインフラ施設管理者毎に管理されて

いるため、入出力や変換等の重複コストが発生し、事

業者間の共同利用が妨げられている。それらの課題に

対し、センサ利用の推進の場作りや、各種情報のデジ

タル化による維持管理業務の効率化、さらに長寿命の

構造物の長期的・継続的管理には、複数の事業者でも

管理できるよう共通したデータ仕様が必要となり、そ

のための標準化が重要となる。点検維持作業を支援す

るDB開発も必要となる。そこで、当研究会ではスマー

トインフラセンサが普及した場合に共同利用のために

必要となるであろうのデータ活用 ICT 基盤としての

センサコード化・データモデル標準化を研究テーマと

して、平成27年度から活動を行ってきた。

 土木分野での ICT 活用を研究する土木情報学を専

門とする大阪大学大学院工学研究科教授矢吹座長のも

とで、大学、設計コンサル・施工・測量企業、センサ

メーカ、システムベンダをメンバ(10機関)に、国・

自治体等の行政や高速道路管理企業をオブザーバ( 7

機関)、および関連活動機関として土木情報学委員会

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

「スマートインフラセンサ利用研究会」~橋梁等の社会インフラの維持管理・点検への 

       センサデータ活用推進の取り組み~

 高度成長期から50年余が経過し、橋梁やトンネルなどの土木インフラ構造物の経年劣化が問題となっ

てきて、笹子トンネル崩落事故や、最近の集中豪雨・地震などの自然災害による斜面等崩壊などが多発

している。

 その中で平成25年の政府による「インフラ長寿命化基本計画」以降、センサ・カメラ・ロボット等に

よる予防保全で、長寿命化と保守点検の省人適正化・費用削減を目指す活動が活発化してきている。

KIIS は、マルチステークホルダによる研究会を平成27年度に立上げ、土木インフラ構造物用センサ(以

下スマートインフラセンサ)の各種情報・データの共同利用を推進し、ICT 基盤としてのコード・デー

タモデル標準化をテーマにセンサの利用推進に寄与するべく活動してきた。昨年度は、 3 つのワーキン

ググループ(以下 WG)を作り、WG1 :標準案の検討やデータモデルの作成、WG2 :センサポータル

の構築、WG3 :新センサ技術・AI 活用した維持管理システムについて研究を開始した。本稿では。そ

の WG 活動の内容を紹介する。

スマートインフラセンサ利用研究会

14

センサ利用技術小委員会をアドバイザに迎えた体制で

研究会を平成27年度から運営した(参加メンバー数は

平成29年 6 月時点)。標準的なコードを付与し、セン

サ種別データベース(以下 DB)・設置 DB や点検情

報 DB、モニタリング情報 DB 等で構成される標準化

情報基盤を構築を目指している。

これにより、図 3 のセンサ開発・選定・設置・維持

管理のエコシステムを目指す。特に、⑤点検( 5 年に

1 回の近接目視)支援ニーズが非常に大きい。

図2 社会インフラ老朽化による課題と研究会の目的とテーマ

図3 センサのコード・データモデルによるプラットフォームとエコシステム

スマートインフラセンサ利用研究会

15

2.研究会における WG 立ち上げと活動内容

 初年度の研究会での議論の結果、図 4 に示すよう

に、ここでの 4 種類の DB(センサ種別 DB、センサ

設置 DB、センサモニタリング情報 DB、点検調書

DB)からなるスマートインフラセンサ IoT プラット

フォームを構築するため、平成28年度 3 つの WG を

設置し活動を開始した。

1)WG1:コード・データベースモデルとメリット実証

(目的/ゴール)目視点検や維持管理業務の効率化を

進めるために、点検情報 DB やセンサ設置状況を

AR として表現し、近い将来の点検・維持管理の姿

を示す。

(課題)

・センサ種別・設置コードとリレーショナル DB モ

デル標準化による社会インフラ IoT プラット

フォームの構築

・タブレット上での AR(VR)表示・入力・検索

ツール試作とメリット実証実験(県市町村ニーズ)

(メンバ)大阪大学矢吹研究室、KIIS、+ 4 社

(H28年度 Goal)コードと DB モデルの基本設計、プ

ロト版ツール作成

2)WG2 :センサ種別データベース構築・運用(ス

マートインフラセンサポータルサイト)

(目的/ゴール)土木構造物へのセンサ利用を進める

ため、センサポータルの活性化を進め、センサの企

画開発に資する。

(課題)

・新たな運用体制の構築と運用をスタートする。

・WG1のコード化・データベースモデル構築化案

を盛り込む

・(土木学会)センサポータルサイト運営協力(移管)

(メンバ)KIIS、土木学会土木情報学委員会、次世

代センサ協議会

(H28年度 Goal)運用移管準備

3)WG3:a) 新センサ技術、b)AI 活用点検・維持管理

システム

(目的/ゴール)土木構造物の点検・維持管理におけ

るセンサ活用のための新しい動きを探る。

(課題)

・切り口 1 :新センサ技術 技術シーズ事例紹介と

点検・維持管理ニーズからの議論

・切り口 2 :AI活用 センサモニタリングデータ、

点検情報データによる劣化・災害予測、要因推定

図4 3つの WG 活動

設置

スマートインフラセンサ利用研究会

16

図5 平成28年度研究会、WG 活動の実績

図6 平成29年度のWG活動内容の予定

スマートインフラセンサ利用研究会

17

支援 ex. 橋梁・トンネル劣化、道路付帯物劣化、

斜面崩落予知

(メンバ)大阪大学矢吹研究室、KIIS、+ 6 社

(H28年度 Goal)システム仕様策定

平成28年度の研究会は、図 5 のとおり 4 回実施し、

ゲストおよびメンバの取組み紹介による事例研究 8 件

とさらに 3 つの WG 活動を立上、各 2 回実施した。

3.今後の進め方

 昨年度立ち上げた 3 つの WG 活動(図 6 )を本格

化し、センサデータの情報基盤「仮称スマートセンサ

IoT プラットフォーム」の重要な構成要素である、 4

つのデータモデルとそれを紐付けるセンサ種別コー

ド・設置個体コードの標準化の具体的な検討と、プ

ラットフォーム構築・メリット実証を進めていく(図

7 )。

 さらに将来的には、センサ認定登録や ID 管理、関

連情報発信を行う「(仮称)センサ ID センター」の

設立を目指し、その第 1 弾として、今年度土木学会土

木情報学委員会のセンサポータルサイトを引き継ぎ、

運営の体制作りを進めていく。

図7 研究会の今後の予定

業務経歴

澤田 雅彦(事業推進グループ 部長)

・ 平成26年 4 月に当財団にメーカーより出向。・ オープンデータ / ビッグデータ活用推進フォーラ

ム主担当(平成26~)。平成27より「デもKan (データでもうかる Kansai)研究会」の立上と、データ共同利用のメリット実証の社会実験を企画。

・ 「スマートインフラセンサ利用研究会」主担当(平成26~)。社会インフラ構造物の長寿命化に資する予防保全や、点検効率化のためのセンサ活用・コード化についてステークホルダによる研究を行う。

・ 「破壊的イノベーションがもたらすデジタル社会研究会」担当(平成28~)

・ 出向元企業においては、シミュレーション技術を活用した LSI 設計や組込み機器関連の設計技術開発に従事し、そのビジネス化・ベンチャー会社立上運営を行う。

18

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

KIIS サイバーセキュリティ研究会平成28年度活動報告

1.事業の趣旨

 サイバーセキュリティ分野において企業や団体が抱

える大きな不安は、具体的にどのような攻撃が行われ

ているか、またそれに対しどういった対策が取られて

いるかという最新情報が得られないことである。とり

わけ、首都圏以外の地域においては、最新の技術や事

例、政策等に関する情報が得にくい状況である。

 また一般に、企業におけるセキュリティ担当者は

「孤軍奮闘」していると言われる。攻撃者が次々と新

たな武器を生み出し、絶え間なく侵入を試みるのを水

際で防ぐ役割を担っている。その中で、何も事故が起

きなければ誰からも特に気にされず、逆に不幸にして

ひとたび事故等が発生した場合には、様々な対応に追

われる。このようなセキュリティ担当者が孤独な状態

 サイバーテロへの不安が高まる中、平成26年11月にサイバーセキュリティ基本法が成立し、重要イン

フラ企業や一般企業のサイバーセキュリティへの対策が規定された。その一方で、特に「標的型攻撃」

や「ランサムウェア」等による被害が昨今多発しており、多くの企業においてサイバーセキュリティが

喫緊かつ重要な課題であると認識されている。

 KIIS では平成27年度より「サイバーセキュリティ研究会」を実施している。参加メンバー企業等に

よる情報交換や事例研究を行うとともに、関係各機関とも連携し、最新のサイバーセキュリティ情報を

共有することで、地域全体のセキュリティレベルを向上させることを目的とするものである。本稿では

研究会の趣旨及び活動概要を報告するとともに、今年度以降の活動方針について説明する。

図1 KIIS サイバーセキュリティ研究会 事業概要

KIISサイバーセキュリティ研究会

19

に陥らないためには、企業や団体の枠を越えて担当者

同士が情報交換できる「コミュニティ」の存在が重要

である。

 こういった考え方のもと、平成28年度は、企業等へ

の最新のセキュリティ情報の提供、高度なセキュリ

ティ研修、それに関係者コミュニティの醸成のための

各種取り組みを重点的に実施した。

 これらの取り組みを推進するため、本研究会座長と

しては平成27年度に引き続き 森井 昌克 教授(神戸大

学)に就任いただくとともに、各団体・有識者等との

ネットワークを駆使し事業を展開した。

<協力機関>(順不同)

・内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)

・(独)情報処理推進機構(IPA)セキュリティセン

ター

・(一社)JPCERT コーディネーションセンター

・NTT セキュアプラットフォーム研究所

・(株)ラック 等

<共催団体>

・大阪商工会議所

・(一社)組込みシステム技術協会近畿支部

 また、平成28年度からは新たに有料の会員制度を設

け、各イベントでの情報提供や講座等の内容の充実を

図った。研究会としては10社の有料会員(ゴールド会

員)と30社・団体の一般会員によりグループを形成し

た。

年会費:

168,000円(KIIS 賛助会員、提携団体会員の場合)

216,000円(その他企業の場合)

2.平成28年度研究会の枠組みと実施状況

 平成28年度事業の枠組み、及び各事業の実施状況は

以下の通りである。

(1) 無料セミナー及びメールマガジンの発行

 最新のセキュリティ技術、制度、ソリューション等

に関する情報を広く提供する、一般向けの普及啓発活

動である。また E メール等により、最新の技術情報

や制度情報、イベント情報等を定期・不定期に配信し

た。

キックオフセミナー(2016/8/9)

基調講演:神戸大学大学院工学研究科 教授

森井 昌克 氏

ビジネス講演:PwC コンサルティング合同会社 

ディレクター 林 和洋 氏

人材育成プログラム講演:株式会社ラック 理事

長谷川 長一 氏

人材育成プログラム講演:株式会社神戸デジタル・ラボ

セキュリティコンサルタント

マシス ザッカリー 氏

フリーディスカッション・交流会

参加76名

第 1 回サイバーセキュリティセミナー(2016/10/6)

テーマ:「サーバ監視最前線」

KIISサイバーセキュリティ研究会

20

基調講演:和歌山大学システム情報学センター 講師

川橋 裕 氏

協賛講演:株式会社クルウィット 代表取締役

国峯 泰裕 氏

協賛講演:サイバーリーズン・ジャパン株式会社

 営業部 部長 相田 伸彦 氏

フリーディスカッション・交流会

参加46名

第 2 回サイバーセキュリティセミナー(2017/2/6)

テーマ:「身近な脅威『内部不正』」

基調講演:立命館大学情報理工学部 教授

上原 哲太郎 氏

協賛講演:SOMPO リスケアホールディングス 主任

コンサルタント 井口 洋輔 氏

協賛講演:日本電気株式会社株式会社 スマートネッ

トワーク事業部 石井 真之 氏

フリーディスカッション・交流会

参加74名

メールマガジンの発行

 40通(2016/8~2017/3)

  

(2) セキュリティ人材育成プログラム

 企業等におけるセキュリティ担当人材、およびマネ

ジメント人材の育成のため、各界の有名講師を招聘

し、必要な技術や制度等に関する研修講座を開講し

た。主に企業等でセキュリティ関連事業に従事する担

表1 平成28年度人材育成プログラム カリキュラム(a)セキュリティ担当人材向け

回 タイトル スタイル 講師(敬称略)a-01 サイバーセキュリティ概論

~その動向と対策技術一般~講義 森井 昌克(神戸大学)

a-02 ウェブセキュリティ 講義 松本 悦宜(神戸デジタル・ラボ)a-03 サイバー空間の秩序と情報法の役割 講義 林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学)a-04 無線 LAN 周辺とその脆弱性対策

~暗号の実装とその問題点~講義 森井 昌克(神戸大学)

a-05 デジタル・フォレンジック 講義+演習 マシス・ザッカリー(神戸デジタル・ラボ)a-06 インシデント対応 講義 富田 一成(ラック)a-07 クラウドセキュリティ(1)理論 講義 長谷川 長一(ラック)、

吉田 雄哉(日本マイクロソフト)a-08 クラウドセキュリティ(2)実践 講義+演習 長谷川 長一(ラック)、

吉田 雄哉(日本マイクロソフト)a-09 Capture The Flag 実践(1) 講義+演習 園田 道夫(情報通信研究機構)a-10 Capture The Flag 実践(2) 講義+演習 園田 道夫(情報通信研究機構)

(b)セキュリティマネジメント人材向け回 タイトル スタイル 講師(敬称略)

b-01 サイバーセキュリティ概論~その動向と対策技術一般~

講義 森井 昌克(神戸大学)

b-02 クラウドセキュリティ理論 講義 長谷川 長一(ラック)b-03 サイバー空間の秩序と情報法の役割 講義 林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学)b-04 経営者が考えるべきリスクベースの

セキュリティ対策講義 三木 剛(神戸デジタル・ラボ)

b-05 情報セキュリティの評価と検証(監査)・リスクアセスメント(1)

講義+演習 嶋倉 文裕(JNSA)

b-06 情報セキュリティの評価と検証(監査)・リスクアセスメント(2)

講義+演習 嶋倉 文裕(JNSA)

b-07 経営リスクと情報セキュリティ(組織内 CSIRT 構築・運用)(1)

講義 満永 拓邦(JPCERT/CC)

b-08 経営リスクと情報セキュリティ(組織内 CSIRT 構築・運用)(2)

講義 満永 拓邦(JPCERT/CC)

b-09 インシデント対応(1)サイバー攻撃対策

講義+演習 長谷川 長一(ラック)

b-10 インシデント対応(2)ヒューマンエラー対策

講義+演習 長谷川 長一(ラック)

KIISサイバーセキュリティ研究会

21

当者を対象とした「セキュリティ担当人材向けコー

ス」と、そういった部門を取りまとめる「マネジメン

ト人材向けコース」の 2 種類を設け、それぞれ10回の

講座を 1 セットとして講座を開講した。

 セキュリティ担当人材向けのコースでは、普段のセ

キュリティチェックやインシデント発生時の技術的対

応等を学ぶこととした。一部の講義では PC を用いた

ハンズオン演習を取り入れ、実際にデジタル・フォレ

ンジックの手順等を体験した。またマネジメント人材

向けコースでは監査や運用、組織マネジメント等につ

いて学ぶものとし、グループディスカッション等の演

習を取り入れることで理解を深めた。

 本講座は参加者から特に高評価を得、 8 割近い受講

者が有意義であったと回答するとともに、「関西でこ

ういったプログラムが他にないため助かる」といった

感想をいただけた。

(3) セキュリティ最新情報解説サロン

 第一線のコンサルタント、ホワイトハッカー等セ

キュリティ専門家を招聘し、最新の技術動向や事故事

例等に関する解説、情報共有を行うサロン活動を実施

した。限られたメンバーが「この場限り」のルールの

もとで、講師からのコアな情報提供や会員同士の密な

意見交換等を行うものとして推進した。

第 1 回:2016年11月16日(水) 17:30~20:30

テーマ:「サイバー・インテリジェンス」

ゲスト:経済産業省 サイバーセキュリティ・情報化

審議官 伊東 寛 氏

第 2 回:2016年12月 5 日(月) 17:00~20:00

テーマ:「韓国サイバーセキュリティ事情」

ゲスト:東京大学大学院 情報学環 セキュア情報化

社会研究寄附講座 特任助教 趙 章恩 氏

図2 人材育成プログラム 受講者による評価

KIISサイバーセキュリティ研究会

22

第 3 回:2017年 1 月31日(火) 17:00~20:00

テーマ:「我が国のサイバーセキュリティ政策の現況

と事例研究」

ゲスト:内閣官房 内閣サイバーセキュリティセン

ター 内閣参事官 山内 智生 氏

第 4 回:2017年 2 月21日(火) 17:00~20:00

テーマ:「もしも社長がセキュリティ対策を聞いてき

たら」

ゲスト:日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフト

テクノロジーセンター セキュリティアーキテクト

蔵本 雄一 氏

(4) サーバ監視サービス

 無料セミナーにおいても情報提供をいただいたクル

ウィット株式会社の協力を得、同社が提供する不正通

信検知サービス「SiteVisor」の研究会会員に対する

無償試用サービス提供を行った。結果として 5 社・団

体の会員が同サービスを 3 ヶ月間試用した。

3.平成29年度以降の展開

 平成28年度事業の結果を受けて、平成29年度は基

本的な事業フレームは踏襲し、量的・質的に大幅に拡

大した形で活動を展開する予定である。例えば、平成

28年度は10月~12月の間に実施した「人材育成プロ

グラム」について、10回の講義× 2 コース(担当者向

け、マネジメント向け)のセットを 2 クール( 7 ~

9 月、11~ 2 月)実施することとしている。無料セ

ミナーやサロン活動も回数を拡大し、地域全体へのセ

キュリティ普及啓発活動を推進するとともに、サイ

バーセキュリティに携わる人的ネットワークの拡大と

ハブ機能を備えることを目標とする。

 また大阪商工会議所等各種団体とも連携を密にし、

様々な規模や業種の企業グループを対象とした情報提

供を行う予定である。 6 月末にはセキュリティ・キャ

ンプ実施協議会と連携し、「セキュリティ・ミニキャ

ンプ in 近畿(神戸)」を開催するが、これも社会人だ

けでなく学生を含めた若手技術者への情報発信を活性

化させる一環として実施するものである。

図3 平成29年度 KIIS サイバーセキュリティ研究会 事業フレーム案

KIISサイバーセキュリティ研究会

23

4.今後に向けて

 KIIS サイバーセキュリティ研究会立ち上げ後も、

サイバー攻撃による被害が後を絶たない。 NPO 日本

ネットワークセキュリティ協会(JNSA)では、「2016

年 情報セキュリティインシデントに関する調査報告

書~個人情報漏えい編~」として、2016年に新聞や

インターネットニュースなどで報道された個人情報漏

えいインシデントの情報を集計し、分析を行ってい

る。その結果、調査対象となった年間468件のインシ

デントの結果、のべ1,510万人分あまりの個人情報が

漏洩したとしている。インシデントの件数としては

「管理ミス」「誤操作」が全体の半数を占めるが、漏

えい人数について見ると、「ワーム・ウイルス」及び

「不正アクセス」だけで全体の85%、およそ1,300万

人分を占める。ひとたびサイバー攻撃に遭うと、引き

起こされる被害は甚大なものになるということである。

 加えて、昨今では「WannaCry」のようなランサム

ウェアによる世界同時被害の事例や、「Mirai」マルウェ

アによる IoT 関連機器を経由した DDoS 攻撃など、

世界規模でのサイバー攻撃事案なども発生している。

攻撃がグローバル化し高度になればなるほど、企業の

重要なビジネス情報や業務情報が利用できなくなった

り、人々の暮らしや社会システムに必要不可欠となる

重要インフラに障害が発生したりすると、国全体の社

会・経済が麻痺してしまうようなことにもなりかね

ず、非常に危険である。

  1 社での被害が甚大となる大手企業や重要インフラ

企業ばかりが課題を抱えているわけではない。それら

の企業と下請取引等を行っている地域の中小企業等

は、セキュリティ対策が大幅に遅れていることは想像

に難くない。規模が小さいからといって被害を受けな

いということには決してならず、大企業との取引の中

で「踏み台」となって結果的にサイバー攻撃の加害者

になってしまう恐れすらある。経済産業省「サイバー

セキュリティ経営ガイドライン」にも示されているよ

うに、もはやビジネスにおいてサイバーセキュリティ

はどのような企業にとっても重要な経営課題となって

いる。

 このような中、経済産業省では、本年 4 月に独立行

政法人情報処理推進機構(IPA)内に「産業サイバー

セキュリティセンター」を立ち上げた。これは、我が

国の経済・社会を支える重要インフラや産業基盤のサ

イバー攻撃に対する防御力を抜本的に強化するため、

これらに携わる人材や組織、技術を生み出していくた

めの総合的な機関として位置づけられている。また総

務省においては「ナショナルサイバートレーニングセ

ンター」を設立し、主に学生等若手技術者を対象とし

て、これからのサイバーセキュリティ人材の育成を加

速していくとしている。特に「人材不足」が深刻であ

ると言われるサイバーセキュリティ業界において、企

業や社会の中で第一線で活躍する人材の輩出が最も望

まれるところである。

 KIIS サイバーセキュリティ研究会はこれらの活動

とも協調し、関西地域における企業・団体のセキュリ

ティレベル向上に向けて、人材育成をはじめとする

様々な事業を展開していく予定である。

 引続き会員企業のみなさまのご参加、ご協力をいた

だきたい。

業務経歴

石橋 裕基(事業推進グループ リーダー・主任研究員)

−前掲−

24

新事業開発グループ 主任研究員 牧野 尚弘

災害に強い通信技術を活用した「災害情報共有システム」の構築に向けて

1.大規模災害時における減災・復旧を目的とした「災害情報共有システム」の必要性

(1)大規模災害発生時における官民連携による災害

情報共有の現状と課題

 大規模災害発生時には、人命救助を第一に、地域の

減災に必要な情報として、安否確認情報、地域の被害

情報、避難所への誘導・開設情報、ライフラインの被

害情報、生活支援物資等の配給情報、ボランティア情

報等の様々な種類の情報がある。これらの情報は、行

政、民間企業、地区住民が共有し、利活用することで

初めて有効な情報となる。

図1 発災時に必要となる情報

 また、災害情報の収集においては、被災地全体を俯

瞰する「鳥の目」と被災現場の詳細情報である「虫の

目」の両方の情報を収集する必要がある。

 しかし、現状では、それらの情報を迅速に収集、共

有できる仕組みがないため、地区住民等の共助による

被災者の安否確認を始め、救出・救助活動等の対応が

効率よく行えず、行政機関への救助連絡が遅れる等、

被害の拡大要因ともなっている。

 また、民間企業においても災害対策本部の立ち上げ

や企業 BCP の発動に遅れが生じ、応急・復旧対策の

意思決定が迅速に行えず、被害が拡大する状況となっ

ている。

 このように、被災地の被害状況を行政、民間企業、

地区住民が相互に共有できる仕組みを構築し、迅速な

応急対応を行うことが課題となっている。

図2 官民で共有すべき災害情報

(2)官民連携による「災害情報共有システム」の概要

 上記の課題を解決するために、当財団では、大規模

災害発生時において、有人ヘリコプターやドローンを

活用して、被災地の空撮映像を収集・蓄積し、行政、

 当財団では、大規模災害発生時における地域の防災・減災に必要な災害情報を行政、民間企業、地区

住民が共有し、利活用することを目的とした「災害情報共有システム」の構築に向けて取組みを行って

いる。

 本報告では、上記取組の一環として、初めに昨年度実施した徳島県鳴門市をフィールドとして、商用

通信回線網が途絶した場合を想定した災害情報の発信・収集・共有する実証実験について述べる。次に、

国等の研究機関が開発している災害時における情報通信技術の取組事例を紹介した「災害情報共有セミ

ナー」の概要について述べる。さらに、これらの事業成果を踏まえ、今後の「災害情報共有システム」

の構築に向けての取組みについても述べる。

災害情報共有システムの構築に向けて

25

民間企業、地区住民に対して必要な被害情報を配信す

る仕組みを構築する。

 具体的には以下の手順で実施する。

①撮影位置特定装置の製作及びドローンへの装着、カ

スタマイズ

 被災地の空撮映像を収集する際に、ヘリコプターや

ドローンの撮影位置は、GPS 機能を活用して把握で

きるが、撮影した映像の位置を特定することができな

いため、有人ヘリコプターやドローンに搭載する「撮

影位置特定装置」を製作する。

②災害情報共有センターの構築

 ヘリコプターやドローンを活用して撮影した位置等

の付帯情報(緯度、経度、標高等)と空撮映像情報を

「災害情報共有センター」に伝送し、「付帯データベー

ス」、「空撮映像データベース」に蓄積する。

 さらに、蓄積した被害情報の中から、民間企業等が

利用する施設等の住所等を予め登録し、該当する付帯

情報及び空撮映像情報を配信する「配信テーブルデー

タベース」も構築する。

③撮影位置付空撮映像情報の収集・蓄積・配信

 災害情報共有センターでは、収集・蓄積した付帯情

報及び空撮映像情報の中から、民間企業等が必要とす

る情報を配信テーブル情報に基づき、撮影位置付空撮

映像情報として配信する。

 民間企業等では、各社で利用している地図に配信す

る撮影位置付空撮映像情報を重ね合わせることによ

り、自社施設や取引先等の被害状況を把握することが

できる。

2.平成28年度に当財団が実施した事業

 平成28年度は「災害情報共有システム」の構築に向

けて、国立研究開発法人情報通信研究機構(以下

「NICT」とする)とも連携し、検討を行った。その

一環として、ワイヤレスメッシュネットワーク※1

を活

用した実証実験を実施するとともに「災害情報共有セ

ミナー」を開催した。

(1)ワイヤレスメッシュネットワークを活用した実

証実験

1)実証実験の概要

 実証実験は、大規模災害が発生し、商用通信回線網が

途絶した状況を想定し、ワイヤレスメッシュネットワー

クを活用した災害情報を関係各機関で発信・収集・共有

し、迅速な対応が取れ、減災に資することの実証・検証

を目的として、徳島県鳴門市にて実証実験を実施した。

 実証実験の参加者には、音声通話が可能な環境を構

築※2

したうえで、スマートフォンを活用した災害対策

本部と各避難所間の避難者、負傷者の情報、物資配給

情報についての受発信、情報共有を行った。さらに、

避難所の一箇所(里浦小学校)に Web カメラを設置

し、海岸の状況(津波情報)についてもリアルタイム

に映像情報を災害対策本部に送信することで、海岸の

状況確認を行った。

※1 NICT が開発した、商用通信回線網が途絶した場合でも通信

可能で、容易に構築が可能な分散型無線メッシュネットワー

クシステム

※2 日本電信電話株式会社 NTT 未来ねっと研究所が開発してい

る「アタッシュケース型 ICT ユニット」を介すことで音声通

話が可能となる。図3 「災害情報共有システム」のイメージ

図4 実証実験のネットワーク回線構成

災害情報共有システムの構築に向けて

26

2)実証実験の実施日及び参加者

 実証実験は次に示す日時と参加者のご協力のもとに

実施した。

 実施日:平成28年 9 月 8 日(木)10:00~12:00

 参加者:80名

参加組織 消防本部鳴門市 12 6 2 2 2大塚製薬工場 9 9里浦小学校 1 1鳴門第二中学校 1 1里浦自主防災連合会 4 2 2川東地区自主防災会 8 4 4その他(NICT 他関係者) 45 34 3 5 3

合 計40 20 10 10

80

鳴門二中 里浦小大塚製薬工場

3)実証実験の実施結果

 ワイヤレスメッシュネットワーク及びアタッシュ

ケース型 ICT ユニットを用いた音声通話により、災

害対策本部や各避難所と安否確認、被害情報等の情報

交換を行い、共有すべき情報を確認することができ

た。また、Web カメラを用いてリアルタイムに海岸

の状況を確認することにより、迅速な避難対応に有効

であることが分かった。

 このことから、ワイヤレスメッシュネットワークに

よる無線 LAN 環境を構築することにより、災害対策

本部と各避難所間で災害情報の収集・伝達・共有が可

能であることを検証した。

4)実証実験により得られた課題

 商用通信回線網が途絶した場合においても、必要な

情報を共有することができるとの評価を得たが、音声

通話が途切れがちになったこともあった。これは、

Web カメラから映像情報を送信したことにより通信

回線の帯域を大幅に使用したため、音声データの送信

に支障をきたしたためで、映像情報や音声情報の軽減

や帯域を確保することが課題として浮かび上がった。

(2)「災害情報共有セミナー」の実施

1)セミナーの実施目的

 大規模災害発生時には、国等の行政機関と各種防災

関係機関が連携し、災害情報を共有することで、迅速

な災害対応が可能となる。

 こうした状況を受け、国等の各研究機関でも災害発生

時の情報収集・伝達・共有に関する研究が行われている。

 「災害情報共有セミナー」では、国等の各研究機関

での取組内容を紹介するとともに、当財団が構築を進

めている「災害情報共有システム」について報告し、

参加者の賛同を得ることを目的として開催した。

2)セミナーの実施概要

 セミナーの実施概要については、以下の通り。

実施日:平成29年 3 月13日(月)13:00~17:15

場 所:中央電気倶楽部  5 F 大ホール

参加者:約120名

Q6:スマートフォンでの情報交換の的確性 (N=34)

14.7%

44.1%

2.9%0.0%

29.4%

8.8%音声が聞き取れ、情報交換が行えた

音声が聞き取りづらかったが、情報交換は行えた

音声も聞こえず、情報交換が行えなかった

使っていない

その他

無回答

音声が聞き取れ、情報交換が行えた

音声が聞き取りづらかったが、情報交換が行えた

82.4%

23.5%

67.6%

5.9%

2.9%

0% 10% 20% 70% 80%

携帯電話・スマートフォン等を使った情報伝達の充実

防災行政無線による情報伝達の充実

地域の助け合いによる声がけなど人的な情報伝達の充実

その他

無回答

Q8:今後の災害情報伝達手段のあるべき姿 (N=34)90%60%50%40%30%

50.0%

14.7%

14.7%

17.6%

2.9%

Q9-1:災害発生時に、避難及び復旧に最も役立つ情報 (N=34)

地域の被災状況が分かる映像情報

地域の被災状況が分かる音声情報

地域の被災状況が分かる文字情報

その他

無回答

地域の被災状況が分かる映像情報

【開会】 13:00~13:15挨拶  一般財団法人 関西情報センター 専務理事 田中 行男

【基調講演】 13:15~14:15「我が国における防災・減災対策の強化に向けて」国立研究開発法人 防災科学技術研究所 理事長 林 春男 氏

【事例紹介】 14:15~16:30(1)「熊本地震における情報集約・共有による災害対応支援」

国立研究開発法人 防災科学技術研究所 総合防災情報センター長臼田 裕一郎 氏

(2)「災害に強い情報通信技術の研究開発」国立研究開発法人 情報通信研究機構 耐災害ICT研究センター

センター長  熊谷 博 氏(3)「災害時の通信確保に資する移動式ICTユニット」

日本電信電話株式会社 NTT未来ねっと研究所 メディアイノベーション研究部部長  東條 弘 氏

【報告】関西情報センター(KIIS)からのご報告 16:20~16:40「民間版災害情報共有システム構想の概要」~共助による被災状況の早期把握に向けて~

一般財団法人 関西情報センター 理事【展示】 12:30~17:30

竹中 篤

■プログラム

災害情報共有システムの構築に向けて

27

3)セミナー参加者からのアンケート結果

 セミナー参加者アンケート結果では、発災時の情報

収集・共有・伝達手段で有効と思われるものとして

「災害の位置情報が含まれた情報(映像・画像)」が

挙げられた。また、発災直後、官と民が連携すべき情

報として「道路損壊情報」、「人の生存、負傷関連情報」、

「火災延焼情報」、「建物・土木構造物等の損壊情報」

等、インフラ施設、人命に関するものが挙げられた。

さらに「災害情報共有システム構想」については、

94.4%の回答者から「必要性を感じた」との回答を得た。

 以上の結果から、発災時には官民が連携して災害情

報を共有する必要性と「道路損壊情報」や「建物・土

木構造物等の損壊情報」等といったインフラ施設の被

害情報を共有することが重要であるとの意見より、当

財団が構築を目指す「災害情報共有システム」につい

ても、よりその重要性を確認することができた。

3.今後の取組み

 以上のことから、実証実験では、大規模災害発生時

に商用通信回線網が途絶した場合でも、代替通信手段

を確保し、災害情報を共有することの有効性を検証し

た。

 さらに、災害情報共有セミナーでは、官民が共有す

べき情報として、インフラ施設の被害情報が重要であ

るとの認識を得るとともに、災害情報共有システムの

構築に向けた体制づくり(コンソーシアム)について

も賛同を得ることができた。

 これらのことから、今後は、図 5 に示す通り、初め

に災害情報共有システムの構築に賛同する企業等に対

するニーズ調査を実施する。

 次に、その調査結果を踏まえた企画書を作成する。

さらに、企画書をもとに、システム設計、製造、試験

を実施して「災害情報共有システム」を構築する。

 本システムを構築し、多くの企業等に利用してもら

うことにより、大規模災害発生時における地域の防

災・減災に役立てたいと考えている。

図5. 災害情報共有システムの構築計画

業務経歴

牧野 尚弘(新事業開発グループ 主任研究員)・ e-Kansai レポート(自主事業2008、2012~2015)・ クラウドの利活用促進のための自立的なネット

ワーク形成と新たなビジネスモデルの構築に関する調査等(独立行政法人情報処理推進機構2012)

・ 四国地域情報セキュリティ人材育成推進事業(経済産業省四国経済産業局2013)

・ 関西 CIO カンファレンス(自主事業2013~2015)・ 災害情報配信技術の研究開発に関わる三者共同社

会実証実験(国立研究開発法人情報通信研究機構2016)

29.6%

46.3%

18.5%

3.7%0.0% 1.9%Q9:コンソーシアムの必要性 (N=54)

コンソーシアムの必要性を大いに感じた

コンソーシアムの必要性を感じた

コンソーシアムの必要性は内容によっては感じた

コンソーシアムの必要性はあまり感じなかった

コンソーシアムの必要性は感じなかった

その他

コンソーシアムの必要性を大いに感じた

コンソーシアムの必要性を感じた

Q4:発災時の情報収集・共有・伝達手段で有効だと思われるもの(N=69)

56

41

38

36

30

4

0 10 30 40 60

緊急地震速報等のスマホ、携帯電話から得られる情報(文字)

各種メディアから得られる情報(Lアラート:文字)

Twitter等のSNS、インターネットからの情報(文字)

災害の位置情報が含まれた情報(映像・画像)

地域の防災無線情報(音声)

その他

5020

44

43

34

34

23

8

0 20 25 40 45

道路損傷状況情報

人の生存・負傷関連情報

火災状況情報

建屋・設備等の損壊状況情報

人の生埋め・下敷き情報

その他

Q8:発災直後、官と民が連携すべき情報 (N=63)50353015105

■アンケートグラフ

28

デジタルトランスフォーメーションによるビジネス革新とソーシャルインパクト~日本の社会が抱える課題解決を図る Society5.0を目指して~

 ビジネストランスフォーメーション(DX)は、昨

今 IoT、インダストリー4.0などの台頭により、ビジ

ネス全体を変革することが期待される大きな潮流とな

りつつある。米国のグローバル企業の多くでは、経営

トップ自らがビジネスの成長を牽引する経営戦略の柱

としてデジタルトランスフォーメーションを推進し、

DX 戦略の推進に特化した部門および役職(CDO) を

新たに設置している。一方、日本では、世界に事業を

展開するグローバル企業であっても、「経営戦略の柱」

として DX を推進する企業は限定的で、情報システム

部門の仕事の一部として位置付けているケースが多い

のが現状だ。多くの日本企業にとって、DX への対応

が今後大きな課題となる一方、DX への対応が従来の

守りの IT 投資から、IT を活用してイノベーションの

創出やビジネス拡大を目指す「攻めの IT 投資」に転

換するための大きな機会となることが期待される。

 

 IT Forum & Roundtable 事務局では、 4 月12日東京

都霞が関のイイノホール&カンファレンスセンターで

デジタルトランスフォーメーションイニシアティブ

(DX Initiative)「~デジタルトランスフォーメーション

が実現するビジネス革新とソーシャルインパクト~」

を開催。本会では、米ベライゾン・エンタープライズ

ソリューション部門プレジデントのジョージ・フィッ

シャー氏によるゲストプレゼンテーションと、総務省

谷脇康彦情報通信国際戦略局長、東京大学大学院情報

理工学系研究科江崎浩教授、株式会社オランファウン

ダー代表で、CIO 賢人倶楽部の木内里美会長、国立研

究開発法人情報通信研究機構富田二三彦理事らが出席

したパネルディスカッションが行われ、デジタルトラ

ンスフォーメーションが起こすビジネス革新について

の熱い議論が行われた。

エンタメソリューション市場の 5 つのトレンド傾向 米ベライゾン・エンタープライズソリューション部

門プレジデントのジョージ・フィッシャー氏による

ゲストプレゼンテーションでは、「A Journey in

Transformation」をテーマに、ベライゾン社のエンター

プライズ・ソリューション部門の取り組みとマーケッ

トトレンドについての説明がされた。

 ベライゾン社は現在、「ネットワーク仮想化」「高度

データ通信システム」「マネージドサービス」を成長

分野に掲げる。フィッシャー氏は、「エンタープライ

ズ・ソリューション部門は大きく成長しています。

ネットワークの世界は目まぐるしく変化し、人的資源

とグローバルネットワークの重要性を注視していま

す。我々は差別化のためのデジタルソリューションの

提供を目指しています。」と説明した。

 続けて、エンタープライズ・ソリューション市場の

トレンド傾向について、「IT サービスは消費ベースモ

デルへと移行。リソース不足により、コア事業とそれ

以外の事業とのせめぎあいが加速」「常に接続してい

る状態が生活および業務の基本に」「企業のサプライ

チェーンはグローバルかつ相互に接続されている」「数

百万のユーザーから、数十億の接続デバイスへと拡

大」「電子商取引の大幅な増加により、セキュリティ

に対する脅威が増大」という 5 つの傾向について説明。

さらに、「2019年までに、全世界で IP ネットワーク

に接続されるデバイス数は人口の 3 倍以上へ」「2018

年までに、アジア太平洋地域のビジネス IP トラヒッ

クは世界最大となる最大9.5エクサバイト/月に」

「2019年までに、アジア太平洋地域における IP トラ

ヒックは54.4エクサバイト/月に到達」という数値を

賛助会員企業のご紹介

株式会社ジェイスピン 代表取締役 清水 美孝(IT Forum & Roundtable 事務局)

賛助会員企業のご紹介

29

加えて、より具体的な見通しを示した。

 こうした状況下で、「先進的技術によりもたらされ

る想定外の脅威がビジネスを破壊するかもしれない。

これら脅威をどのように予測すればよいでしょうか」

という問いを投げかけた。予測する考え方として

フィッシャー氏は、「ライフサイクルとテクノロジー

の S 字曲線内での位置により、事業のプロダクトや

サービスがどれだけ創造的破壊がされやすい状態を明

確にすること」を提案した。

 通信事業者としてのベライゾンは現在、ミレニアル

世代に訴求するコンテンツを提供するデジタル動画

サービス事業等を展開し、コネクティビティ分野には

数10億ドルを投資している。「今、大事なことはオー

プンコミュニケーション。それを確実に伝えることが

できれば、ワクワクしてもらえます。ベライゾンは自

信を持ってソリューションをご提供します」とフィッ

シャー氏は話し、プレゼンテーションを締めくくった。

日本政府全体の施策と連携する「IoT 総合戦略」 続いて行われたディスカッションではフィッシャー

氏と並んで、総務省谷脇康彦情報通信国際戦略局長、

江崎浩東京大学大学院情報理工学系研究科教授、オラ

ン木内里美ファウンダー代表が登壇し、「データをど

のように社会の課題解決に活用するのか」をテーマに

議論が繰り広げられた。

 先のフィッシャー氏のプレゼンテーションを受け

て、谷脇氏は「ビッグデータはいろいろなカテゴリー

のものがありますが、ポイントは大きく 5 つに分かれ

ます。オープンデータと、暗黙値をいかに恒常化して

いくこと、ストリーミングデータを使った効率化、

パーソナルデータ、それから OT と IT の一体化です」

と意見をまとめた。また江崎氏は「デジタルファース

トでシステムを作っているため、早いスピードでデジ

タルイノベーションが起こっています。グローバルに

デジタルインフォーメンションを流通させる基盤がな

いとグローバルインフォメーションは生まれないと私

は考えます。セキュリティの問題は諸刃の剣。トラン

スペアレントなネットワークが重要です。デジタル時

代の新しいリテラシーも必要になってきます」と指摘

した。木内氏は「iPhone が誕生して今年は10年目に

入りました。いまや誰もが常時インターネットに繋

がっている状態です。ビジネスも変革しないわけがな

いですよね」と市場の状況を説明した。

 谷脇氏は今年 1 月に総務省が策定し、政府全体の施

策と連携する「IoT 総合戦略」の考え方についても説

明。これの基本的な考え方は「第四次産業革命の実現

による30兆円の付加価値の創出があらゆる社会経済活

動 を 再 設 計 し、 社 会 の 抱 え る 課 題 解 決 を 図 る

Society5.0を目指す」というもの。それは「データ主

導社会」を目指すもので、IoT がオープンデータやス

トリーミングデータ、パーソナルデータを上げ、蓄積

されるとサバー空間でビッグデータが動的・静的な

データを生成・収集・流通するというもの。さらに、

それを解析するために AI が使われ、その結果、課題

解決のためのソリューションを実現し、現実世界へ

フィードバック、つまり社会的課題の解決に繋がる循

環をデータ主導社会は生み出すと説明した。

 谷脇氏は「IoT、ビッグデータ、AI の 3 つがセット

となって、単体ではなく、相互に連携していると思い

ます。 IoT のシステムは複数のシステムが相互につな

がるイメージです。リスクが顕在化されると、他のシ

ステムに波及するため、リスクも内向しています。こ

賛助会員企業のご紹介

30

れをいかに断ち切り、ビジネスに活かしていく上で必

要なデータを流通する仕組みを制度として築くことも

必要です。データセントリックなスマートシティとい

ろいろなデータを扱うことができるモジュール型のプ

ラットフォーム作り、都市のデータを吸い上げなが

ら、都市課題を解決するためのソリューションをプ

ラットフォーム経由で提供できる基盤も作りたいと

思っています。提供するのは大企業に限られるもので

はありません。ベンチャーが新しいアプリケーション

を作り、都市課題の解決に繋げていくことも十分ある

はずです」と述べ、今年 1 月に総務省が発表した「IoT

総合戦略」を策定する作業が現在進められていること

を説明した。

 これに対して、木内氏は「中小企業のセキュリティ

がクラウドにシステム移行することでより共通な守り

が構築されます。そんな視点があってもいいですね」

と同調。さらに江崎氏は「IoT デバイスはプッシュ型

からプル型へと変化し、大量のデータ処理が必要にな

ります。ユーザー主導対ベンダー・プロバイダ主導の

構造で、Industry4.0の伝えられていない方向性はサプ

ライチェーンでなく、デマンドチェーンということで

す」と意見を述べ、さらに「垂直統合型モデルはビッ

クデータ解析、AI 実現には障害があります。これに

相反するのは連携・協調プラットフォームの水平統合

型モデルですが、互いに既得権益があります。ナショ

ナルセキュリティが強くなっている状況のなか、国ご

とにネットワークがばらけることが大きなリスク回避

につながるとしています。セキュリティの話で重要な

のはゼロリスクではなく、ある程度の余裕を持ちなが

ら安心する思想で作らないといけません。イノベーショ

ンの障害がセキュリティになることをどのように構築

すべきか、これが重要です。セキュリティはビジネス

ですから、クオリティを上げるためにセキュリティを

どうするかを考えなければいけません」と問題意識を

提議した。

IoT 人材は不足、人材育成の必要性 ビジネスを支える ICT 基盤の在り方についても議

論が展開された。なかでも登壇者の全員によって意見

の一致をみたのは、IoT 人材育成の必要性。谷脇氏は

「IoT を進めていく上で直面しているのは人材不足で

す」と話し、今現在、日本では103万人が IoT 人材と

して活躍していますが、アメリカと同程度の人材を育

てるためには実はさらに100万人の IoT ヒューマンリ

ソースが必要だと試算されていることを明かした。補

うために IoT 関連機器等に対して、一定の専門知識を

持つ人材の増加と、IoT を支えるネットワークの運用

管理を担う人材の訓練・育成、プログラミング教育等

の量的拡大が必要だという。谷脇氏は、「IT 企業に人

材が偏っており、流通や製造業では人材が極めて少な

い。セキュリティの素養を身に着けながら、いろいろ

な分野で IoT 人材を IT 企業から非 IT 企業に異動さ

せることが大事」だと指摘した。

 最後に今後を見据えた方向性についての提言が各登

壇者からなされた。谷脇氏は「IoT が社会インフラに

なり、オープン性を確保しながら、モジュール化し、

共通化できるところは共通の議論としていきたいと考

えています。柔軟な多様性を担保するためにクラウド

の活用があり、データを連携させるプラットフォーム

と、API のエコノミーシステムをいかに作っていくこ

とが議論の中心になっていきます」と述べた。また木

内氏は「マイルドチェンジを前提に、デジタルイノ

ベーションは民間企業から引っ張っていくべきでしょ

う」と提言。一方、江崎氏は「IoT はセキュリティを

無視しています。これが IoT の最大のリスクだと私は

考えます。通信キャリアがセキュリティを担ってきま

したが、人材育成問題を含めてこれからはどのように

IoT バブル企業に移行していくことがミッションにな

るかと思います」と意見を述べた。

 

 デジタルトランスフォーメーションによるビジネス

現場の変革の議論が今後ますます活性化されていくこ

とを期待したい。

[企業情報]会社名 株式会社ジェイスピン

代表取締役 清水美孝

本社住所 東京都新宿区新宿1-6-8新宿鈴木ビル B 館4F

資本金 1,000万円

事業内容

外資系企業を中心にマーケティングコンサルティングサービスを提供。動画配信サイト bzcast.net、IT Forum & Roundtable 事務局(http://itforum-roundtable.com/)を運営。

31

情報セキュリティ株式会社

賛助会員企業のご紹介

【代表者あいさつ】

 情報セキュリティ株式会社(iSEC)は、セキュリ

ティソリューション、診断・監査、サーバの仮想化、

データセンターへの移設、安心・安全なシステム運用

の提案を行っている会社です。企業や政府機関を狙っ

た標的型サイバー攻撃が増加している中でサイバーセ

キュリティの知識やフォレンジックなどの高度スキル

を持つ人材の育成に取り組んでいます。

 弊社では、お客様の

大切な情報を守るため

の情報セキュリティの

普及活動を行うことに

より、監査・運用・開

発を通じて情報の安全

性確保と世の中のセ

キュリティレベルの向

上に貢献することを使

命としております。弊

社は決して規模の大き

な会社ではありませんが、大小問わず案件を確実に遂

行し、多くのお客様と良好な関係を構築しております。

【当社の特徴】

◎数少ない情報セキュリティの専門企業

 情報セキュリティ分野に特化して事業を展開してい

る当社は、同分野での豊富な専門知識と業務経験、充

実したネットワーク、高い研究開発力を有していま

す。またそれらをもとに、顧客の予算や利用形態、他

システムとの整合性などさまざまな要素を勘案し、「最

適な提案」を導き出します。

◎顧客に寄り添う姿勢を忘れない

 規模が小さな当社だからこそ、常にユーザと同じ目

線に立ち、顧客が望む製品の開発や提案、顧客に寄り

添ったきめ細やかな対応を心がけています。

◎新技術の研究と展開に努める

 技術革新のための研究を怠らず、日々移り変わる

IT 業界のトレンドや新手のサイバー攻撃に対応して

います。近年注目を浴びる「フォレンジック」や

「SIEM(Security Information Event Management)」

の研究にも力を入れています。

【事業領域】

■セキュリティ支援

 セキュリティ施策の導入や効果的な運用に欠かせな

い環境づくりをお手伝いします。最適な施策の提案や

コンサルティングのほか、情報セキュリティに関する

基本的な規則(ポリシー)制定、組織体制の構築、ま

た必要に応じて、組織内の ICT 利用者に対する教育

も行っています。

■セキュリティ監査

 既存の情報セキュリティ対策やシステムを調査し、

その妥当性や有効性を評価します。さらに評価に基づ

いた改善提案を行い、より精度の高いセキュリティ対

策の実現をサポートします。経済産業省の定める「情

報セキュリティ監査制度」にのっとった「情報セキュ

リティ監査」、システムに対する「脆弱性診断」を承っ

ています。

■セキュリティ運用

 顧客のネットワーク環境や要件に応じた最適な運用

をサポートします。 24時間365日の監視により、トラ

ブルの未然防止やインシデント発生時の迅速な対応が

可能となります。自社開発のツールを用い、高品質で

効率的なセキュリティ運用を心がけています。

代表取締役社長 鈴木 義久

賛助会員企業のご紹介

32

■セキュリティ開発

 高性能なセキュリティツールの開発に取り組んでい

ます。当社の開発ツールを組み合わせることで、コス

トを抑えつつも、操作性と互換性に優れたネットワー

クをワンストップで構築・運用することが可能です。

【その他の取り組み】

◎品質・セキュリティに関する取り組み

 当社では、お客様に高品質で安全なシステムやサー

ビスを提供するため、国際規格 ISO9001、ISO27001

の早期取得をはじめとする品質活動、また情報セキュ

リティマネジメントシステム(ISMS)への積極的な

取り組みを常に心がけ、全社をあげて行っています。

◎セキュリティ専門家育成に関する取り組み

 情報セキュリティ分野の 3 大グローバルセキュリ

ティ資格である、CISA(公認情報システム監査人)や、

CISSP(公認情報システムセキュリティプロフェッ

ショナル)の資格取得を推進しています。 CISA や

CISSP は、IT ガバナンスやリスク管理、情報セキュ

リティに関する包括的な知識を身につけた、世界トッ

プレベルのセキュリティ技術者の証明であり、国際的

にも通用する資格です。

 また、従業員のその他の資格試験への挑戦や各種研

修の受講も全面的に支援しています。

◎従業員に対する取り組み

 当社には、多様な働き方に柔軟に対応する環境が整

えられています。フレキシブルな働き方を容認するこ

とで多様な人材を確保し、彼らのさまざまな視点を取

り入れることが、これからの企業の成長に欠かせない

と確信しています。例として、女性の積極的採用と子

育て支援、テレワークの推進、ワークライフシナジー

実現のためのフレックスタイム制導入など、従業員が

働きやすい環境作りに力を入れています。

【会社概要】商号 情報セキュリティ株式会社

英記:Information Security Inc.設立 2014年9月2日資本金 13,000,000円代表者 代表取締役 鈴木 義久従業員 17名所在地 神戸市中央区北長狭通4丁目9-26

西北神ビル3階主要取引先

兼松エレクトロニクス株式会社キヤノン IT ソリューションズ株式会社神戸大学株式会社ナニワ計算センター西日本電信電話株式会社兵庫県

加盟団体 特定非営利活動法人 日本セキュリティ監査協会(JASA)クラウドセキュリティ推進協議会 (JCISPA)一般財団法人関西情報センター(KIIS)特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会 (JNSA)NPO デジタルフォレンジック研究会(IDF)地域 ICT 推進協議会(COPLI)

認可・事業資格等

経済産業省 情報セキュリティ監査企業台帳電気通信事業者(認可番号 :C-26-01736)全省庁統一資格(業者コード :0000168384)大阪府 物品関係入札参加資格大阪市 物品関係入札参加資格京都府 物品関係入札参加資格奈良市 物品関係入札参加資格兵庫県 物品関係入札参加資格中小企業庁 経営力向上計画認定公認情報セキュリティ監査人(CAIS)情報セキュリティスペシャリスト(IPA)品質マネジメントシステム(ISO9001:2008 ISAQ1018)情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001:2013 3687069)

33

ドコモ・システムズ株式会社

賛助会員企業のご紹介

【ご挨拶】

 ドコモ・システムズは、ドコモグループの IT を支

える会社として、グループ内のビジネスインフラや、

お客様にご利用いただくさまざまなサービスの通信プ

ラットフォーム、さらに d マーケット、d ポイントな

ど巨大な IT 基盤を確かな技術でしっかりと支え、お

客様に「更なる価値」を提供するため、日々取り組ん

でおります。

 一方私たちは、ドコモグループのみならず、企業・

法人のお客さま向けに独自の事業を推進しています。

クラウドでご提供する企業情報システム「dDREAMS」

が、弊社の代表的なサービスですが、他にも Web 会

議システム「sMeeting」、通信型ドライブレコーダー

による安全運転支援サービスと車両動態管理を提供可

能な「doco です car」など様々なクラウドサービスを

ご提供しております。

 セキュアな基盤上で、タブレット、スマホなどのモ

バイル機能を徹底的に活用した社内外での業務の推

進。「安心」「安全」「快適」はもちろんのこと、今社

会が求める「働き方改革」の実現に向かって、お客様

とともにより良きサービスのご提供を進めてまいりま

す。

【会社概要】社名 ドコモ・システムズ株式会社設立 1985年5月30日本社 東京都港区赤坂2丁目4-5  国際赤坂ビル 5F大阪ロケ 大阪市北区堂島1丁目6-20 堂島アバンザ16F資本金 113億8287万円代表者 代表取締役社長 西川 清二社員数 796名(2017年3月31日現在)売上高 502億円(2017年3月期)

【主なサービス内容のご紹介】 1. 「dDREAMS」(ディードリームス)

 クラウド型企業情報システム「dDREAMS」は、ド

コモグループ 5 万人の業務を10年以上支え続けてい

る社内システムを、そのままお客様に導入いただける

サービスです。ドコモと同水準の高いセキュリティ環

境、働き方改革を加速させるアプリケーションなど

を、運用を含めトータルで提供いたします。また、セ

キュリティと使い勝手を両立した社員にとって「快

適」なシステムとして提供いたします。

~特長~

●ドコモが考えるセキュリティのベストプラクティ

クス

●高いセキュリティを維持しながらコストを最適化

●長時間労働の是正と柔軟な働き方で「働き方改

革」を加速

●サービス残業を撲滅、ワークライフバランスの推

進と労働生産性アップ

●いつでもどこでも、ドコモだからできる先進のモ

バイル機能

2.「sMeeting」(エスミーティング)

賛助会員企業のご紹介

34

 「sMeeting」は、ドコモ・システムズが提供する高

音質、高セキュリティなクラウド型 Web 会議サービ

スです。 PC やスマホ・タブレットなどのスマートデ

バイスからいつでもどこでもセキュアに利用でき、映

像・音声・資料を共有しながら、様々なシーンでコ

ミュニケーションを可能とします。

~特長~

●クリアな音質でスムーズなコミュニケーションを

実現

●高度なセキュリティでモバイル利用、重要な会議

でも安心

●簡単な操作ですぐに会議をスタート

●確かな実績と高い品質

●活用シーンは多種多様、費用対効果は極めて高い

3.「doco です car」(ドコデスカー)

 「doco です car」は業務車両の運行管理業務を総合

的に支援する法人のお客様向けクラウドサービスで

す。 < 事故削減 > < 業務効率化 > < コスト削減 > 

< コンプライアンス遵守 > など、様々な共通課題をサ

ポートします。

~通信機能搭載・高性能ドライブレコーダーの特長~

●高速通信「LTE」対応

●高度な診断技術による安全運転支援機能+車両動

態管理機能 

●リアルタイムな運転状況の確認やドライバーごと

の運転診断結果、イベント映像を利用した効果的

な運転指導

● IC カードリーダーによる本人認証や音声ガイダ

ンスによる注意喚起

●アルコールチェック・IT 点呼等多くの機能を満

載。(オプション)

【CSR に対する考え方】

 ドコモ・システムズは、「事業活動を通じた社会貢

献・価値の創出」を行うことが CSR であると考えて

います。また、すべての企業活動を通じ、誠実な行動

に徹底いたします。

●2016年、「子育てサポート企業」として、厚生労

働大臣認定マーク「くるみん」を取得、2017年

女性活躍推進法に基づいて厚生労働大臣が認定す

る「えるぼし」の最高位の 3 段階目を取得いたし

ました。

くるみんマーク えるぼしマーク

●富士山環境保護活動

ドコモ・システムズは自然環境保護活動の一環と

して、環境NPO法人富士山クラブの協力のもと、

2001年から定期的に富士山周辺の清掃活動や特

定外来種駆除活動などを実施しています。

【今後に向けて】

 弊社は2017年 5 月に入会をさせていただきました。

関西情報センター様の活動目標に向かって少しでも寄

与できれば幸いです。末永くご支援、ご鞭撻のほどよ

ろしくお願い申し上げます。

*「dDREAMS/ ディードリームス」、「sMeeting/

エスミーティング」、「doco です car/ ドコデス

カー」はドコモ・システムズ株式会社の登録商標

です。

35

TDC ソフトウェアエンジニアリング株式会社

【ご挨拶】

 TDC ソフトウェアエンジニアリングは、1962年に

創業し、2017年10月に創業55周年を迎えます。創業

時から受け継がれる自主自立の精神から、独立系

SIer として情報サービス産業の発展に貢献してまい

りました。当社は、経営ビジョン「情報通信技術で社

会とお客様の繁栄に寄与し、最も信頼されるパート

ナー企業」を掲げ、お客様の価値を高める ICT パー

トナーとしてサービスを提供し続けております。

【経営理念】

 当社は、企業理念「最新の情報技術を提供し、お客

様の繁栄に寄与するとともに社員の生きがいを大切に

し、社会と共に発展することを目指します」に則り、

お客様へサービスを提供し続けています。

【事業内容】

 当社は金融、エネルギー、製造・流通などあらゆる

分野の業務システムに加え、IT インフラ、ネットワー

ク構築、クラウド、パッケージソリューションなど幅

広いソリューションを提供します。

【会社概要】

商   号 TDC ソフトウェアエンジニアリング株式会社

設   立 昭和38年12月

本   社 東京都渋谷区代々木3丁目22番7号新宿文化クイントビル

関西事業所 大阪府大阪市中央区道修町1丁目5番18号朝日生命道修町ビル

資 本 金 9億7,040万円

代 表 者 代表取締役社長 谷上 俊二

社 員 数 1,443名(2017年4月)

売 上 高 グループ連結 229億9100万円

証券コード 4687

賛助会員企業のご紹介

賛助会員企業のご紹介

36

【品質への取り組み】

 当社は国際規格 / 標準である ISO9001、PMBOKⓇ、

CMMI をベースに、50年を超える TDCSOFT の技術

力及びマネジメントノウハウを注入し、プロジェクト

管理、品質管理、システム開発技術の要素を備えた

TDCSOFT Group 品 質 マ ネ ジ メ ン ト シ ス テ ム

(TQS=TDCSOFT Quality management System)を構

築しています。この TQS を根幹に当社組織の各階層

におけるマネジメントを的確に実施することで、お客

様の信頼にこたえるプロジェクト品質の提供を実現し

ています。

【今後に向けた取り組み】

 当社は、平成28年 4 月から平成31年 3 月における

中期経営計画において、将来の事業基盤に必要不可欠

となる人材、知財へ集中的に投資し、継続的成長を実

現するための財産づくりを行う戦略を基本戦略に掲げ

ております。この基本戦略を実現するための知財への

投資の一環として、2016年 4 月にインキュベーショ

ン推進室を新設し、未来に向けた新規ビジネスモデル

を創出すべく、パートナー企業の開拓、協業提案等に

取り組んでいます。

【当社製品のご紹介】

・Trustpro(トラストプロ)

クラウド型開発プラットフォーム。 WEB ベースの

カスタマイズ機能で柔軟な業務アプリケーションを

作りこむことができます。

・M-Check+(エムチェックプラス)

ストレスチェック義務化に伴う、導入準備、チェッ

クの実施、事後対応などの様々な手続きをトータル

サポートするストレスチェック支援ソリューション

です。

・HuTaCT(ヒュータクト)

必要な情報の集約、有効活用を促進し、組織の最適

化、次世代の人材育成、従業員の意欲向上、潜在リ

スクの回避など、様々な問題解決をお手伝いします。

【当社マスコットキャラクター】TDC ベアー

定価¥5 0 0(送料込)(ただし、一般財団法人関西情報センター会員については、年間購読料は年間会費に含まれております。)

◇ごあいさつ 一般財団法人関西情報センター 会長 森下 俊三 …………1

◇平成28年度実施事業からの報告 ………………………………………………………………………………2

 □「e-Kansaiレポート2017

          ~データ利活用社会の進展と地域・産業活性化~ 調査結果概要」 ……………2

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

 □ 平成28年度中小企業知的財産活動支援事業費補助金(地域中小企業知的財産支援力強化事業)

  「IoT等の新IT分野における知財活用ビジネス推進プラットフォーム作り事業」 ……………………9

事業推進グループ 研究員 六井 奈菜

 

 □「スマートインフラセンサ利用研究会」

   ~橋梁等の社会インフラの維持管理・点検へのセンサデータ活用推進の取り組み~  ……… 13

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

 □「KIISサイバーセキュリティ研究会 平成28年度活動報告」 ……………………………………… 18

事業推進グループ リーダー・主任研究員 石橋 裕基

 □「災害に強い通信技術を活用した「災害情報共有システム」の構築に向けて」 ………………… 24

新事業開発グループ 主任研究員 牧野 尚弘

◇賛助会員企業のご紹介

  株式会社ジェイスピン …………………………………………………………………………………… 28

  情報セキュリティ株式会社 ……………………………………………………………………………… 31

  ドコモ・システムズ株式会社 …………………………………………………………………………… 33

  TDCソフトウェアエンジニアリング株式会社 ………………………………………………………… 35

KIIS Vol. 155 目    次

本誌は、当財団のホームページでもご覧いただけます。http://www.kiis.or.jp/content/info/magazine.html

KIIS Vol.155 ISSN 0912-8727平成29年 7月発行人 田中 行男発行所 一般財団法人 関西情報センター    〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目3番1-800号 大阪駅前第1ビル8F TEL. 06-6346-2441