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「図表でみる教育:OECDインディケータ」は、世界の教育の状況に関する適正かつ確かな情報源であり、OECD 加盟国およびパートナー諸国における教育制度の構造、財政および成果に関するデータを提供するものである。 日本 女性は高等教育修了率で男性を上回るが、短期高等教育課程に在学する傾向がより強い。 高等教育を修了した女性の就業率は、11ポイント増加し、OECD加盟国の中で最も急激な伸びを示している。 日本は、高等教育の授業料がデータのあるOECD加盟国の中で最も高い国の1つであり、過去10年、授業料 は上がり続けている。 授業料の高さにもかかわらず、生産年齢人口の半数以上が高等教育を修了しており、その割合は2534歳人口 60%に達する。 幼児教育および高等教育に対する支出は、その50%以上が家計から捻出され、各家庭にきわめて重い経済的負 担を強いている。しかしながら、3歳未満で幼児教育および保育に在籍する子どもの割合は23%にすぎず、こ れはOECD平均31%を下回る。 教員は他のOECD加盟国の教員より長時間勤務し、教育相談、学校運営業務や課外活動など、授業以外の活動 に従事することが求められている。 1: 博士課程における女性新入学者の割合 (2005年、2010年、2016) 1.調査年は2015年。 左から順に、博士課程または同等の学位プログラム新入学者に占める女性の割合が大き国( 2016年時)。 出典:OECD/UIS/Eurostat (2018)。表B4.1図表で見る教育データベース http://stats.oecd.org/詳細は下記URLより「資料」および付録3の注を参照 (w w w .oecd.org/education/education-at-a-glance-19991487.htm)StatLink https://doi.org/10.1787/888933803558 図表でみる教育 2018年版

図表でみる教育 2018 - OECD.org - OECD「図表でみる教育:OECDインディケータ」は、世界の教育の状況に関する適正かつ確かな情報源であり、OECD

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Page 1: 図表でみる教育 2018 - OECD.org - OECD「図表でみる教育:OECDインディケータ」は、世界の教育の状況に関する適正かつ確かな情報源であり、OECD

「図表でみる教育:OECDインディケータ」は、世界の教育の状況に関する適正かつ確かな情報源であり、OECD 加盟国およびパートナー諸国における教育制度の構造、財政および成果に関するデータを提供するものである。

日本• 女性は高等教育修了率で男性を上回るが、短期高等教育課程に在学する傾向がより強い。

• 高等教育を修了した女性の就業率は、11ポイント増加し、OECD加盟国の中で最も急激な伸びを示している。

• 日本は、高等教育の授業料がデータのあるOECD加盟国の中で最も高い国の1つであり、過去10年、授業料は上がり続けている。

• 授業料の高さにもかかわらず、生産年齢人口の半数以上が高等教育を修了しており、その割合は25~34歳人口で60%に達する。

• 幼児教育および高等教育に対する支出は、その50%以上が家計から捻出され、各家庭にきわめて重い経済的負担を強いている。しかしながら、3歳未満で幼児教育および保育に在籍する子どもの割合は23%にすぎず、これはOECD平均31%を下回る。

• 教員は他のOECD加盟国の教員より長時間勤務し、教育相談、学校運営業務や課外活動など、授業以外の活動に従事することが求められている。

図1: 博士課程における女性新入学者の割合 (2005年、2010年、2016年)

1.調査年は2015年。

左から順に、博士課程または同等の学位プログラム新入学者に占める女性の割合が大きな国( 2016年時点)。

出典:OECD/UIS/Eurostat (2018)。表B4.1。 図表で見る教育データベース http://stats.oecd.org/。詳細は下記URLより「資料」および付録3の注を参照 (w w w .oecd.org/education/education-at-a-glance-19991487.htm)。 StatLink https://doi.org/10.1787/888933803558

図表でみる教育2018年版

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日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

2 © OECD2018

女性は高等教育修了率で男性を上回るが、短期高等教育課程に在学する傾向がより強い

• 日本は、若年齢層の高等教育修了率が最も高い国の1つである。2017年時点で、25~34歳人口の60%が高等教

育を修了しており、これはOECD加盟国の中で2番目に高い割合である。高等教育修了率は、男性より女性の方

がやや高く、男性59%に対し女性は62%である。

• 女性は高等教育修了率で男性を上回るが、男性に比べ短期高等教育課程に在学する傾向がより強い。2016年時点

で、高等教育初回入学者に占める短期課程在学者の割合はOECD平均で16%であったが、日本では、初回入学の

女性の43%が短期課程を選んでいる。一方、男性で同課程を選ぶ者は全体の28%にすぎなかった。短期課程を選

ぶ女性の割合が男性を上回ることは、専攻分野の選択に起因するものかもしれない。同課程新入学者のほぼ半数

が、保健・福祉またはサービスを専攻するが、これらは従来から女性に人気のある分野である。同じパターンの

男女差は、後期中等教育職業プログラムでの専攻分野選択においても散見される。職業プログラム卒業者で保健・福祉プログラムを専攻した者の83%が女性であり、サービスプログラム専攻者では81%が女性である。

• 日本ではまた、女性が高等教育の上位課程に在学する傾向が、男性および他のOECD加盟国と比較して弱い。

OECD 加盟国平均75%に対し、日本の場合、女性新入学者のうち学士課程に在学する者の割合は55%である。

これに対し、男性初回入学者の70%が学士課程に在学する。博士課程新入学者に占める女性の割合は、2016 年時点で31%であり、OECD 加盟国の中で最も低い(図 1)。

• 高等教育を修了した女性の就業率は、過去10年で11ポイント上昇しており、2017年時点では79%に達した。

これは OECD 平均 80%と同程度である。同時期に OECD 加盟国の半数以上が女性の就業率を下げていることを鑑みれば、きわめて大きな伸びといえる。日本で高等教育を修了した女性の雇用状況が好転しているのは、2013年より女性をターゲットに進められてきた一連の施策の成果といえる。「ウーマノミクス」の名で知られる政策は、女性の労働市場への参画と積極的な登用を奨励することで経済成長を促すことを狙っている(Groysbergほか, 2017)。

• 日本は、教育における上昇移動が依然としてきわめて限定的である。2015年時点で、少なくとも両親のどちらか

が高等教育修了者である成人の4分の3が高等教育を修了しているのに対し、高等教育未修了の親を持つ成人で高

等教育を修了する者は全体の4分の1にすぎない。データのある加盟国の中で、日本は高等教育修了者を両親のど

ちらかに持つ高等教育修了者の割合が2番目に高い。この点と考え合わせると、日本では学歴の世代間での移動

が少なく、同様の学歴が世代間で引き継がれていることが明らかである。

• 学歴差は就業機会の不平等と結びつくが、日本の場合、学歴レベルと就業機会の結びつきはそれほど顕著ではない。

25~64歳人口について、後期中等教育修了者よりも高等教育修了者の方が雇用されやすい傾向はみられるにせよ、

就業率の差は5%にすぎず、この差はOECD 加盟国平均の半分である。

•日本では、高等教育修了者の多くが学歴に見合わない仕事に就いている。2012年時点で、少なくとも1つの学士号を

持つ成人のうち、後期中等教育修了資格で十分な仕事に従事する者の割合は29%に上る。有する学歴以下の仕事に

従事する高等教育修了者の割合は、全OECD加盟国中、日本が最も高く、OECD 平均13%の2倍以上である。

授業料高騰にもかかわらず高等教育修了率は依然として高い

• 日本の国公立教育機関の学士または同等レベルの課程の授業料は5218米ドルであり、これはデータのあるOECD加

盟国の中で、イングランド、米国、チリに次ぎ4番目に高い。2005 年から2016年にかけ、高等教育課程の授業料

は、博士課程での3%から学士課程での8%まで上昇した。これは学生ならびに家族にきわめて大きな負担を強いて

いる。とはいえ、日本では最近、給付型奨学金制度の創設、無利子貸与型奨学金の拡充、所得連動返還式(卒業後の年収に応じた返還月額の設定)の導入等、学生に対する経済的支援制度の改善が図られてきている。2014年時

点で、無利子貸与型奨学金を受ける高等教育で学ぶ学生の割合は全体の45%であった。卒業時に抱える平均的負債

額は32170米ドルで、返済には学士課程を卒業した学生で最長15年を要する。これは、データのあるOECD加盟国

の中で最も大きな負債の1つである。

• 授業料の高さにもかかわらず、日本の高等教育は著しく拡大している。2017年時点で、25~64歳人口の51%が高等教育を修了している。これはOECD平均38%を大きく上回り、またOECD加盟国ではカナダ(57%)に次ぎ2番目に高い割合である。

• 現在のパターンが継続すると、日本では、成人の 80%が生涯で1度は高等教育段階に進み(OECD平均は66%)、72%が修了することが見込まれる(OECD平均は 49%)。

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© OECD2018 3

• 日本は、高等教育に初めて進む者のほぼすべてが18歳までに進学するため、高等教育機関への初回入学者の年齢

幅がOECD 加盟国中で最も小さい。高等教育修了率が全体としてきわめて高いにもかかわらず、日本では成人教育およびセカンドチャンス・プログラムで学習を継続する機会がほとんどない(OECD, 2018)。

• いずれの割合もOECD加盟国平均を下回るものの、日本は、高等教育機関に在学する留学生の割合が、国外に留学

する自国学生の割合を上回っている。OECD加盟国平均6%に対し、日本の高等教育機関の全学生に占める留学生の

割合は4%である。同様に、海外で学ぶ日本人学生の割合は全体の1%で、これは OECD 加盟国平均2%の半分であ

る。日本で学ぶ留学生のほぼ3分の2は近隣諸国から来ており、大部分がアジア・太平洋地域の国々、その中でも特

に中国出身者が多数を占める(日本で学ぶ全留学生の53%)。

初等から高等教育の教育機関に対する支出総額は過去10 年でほとんど変化していない

• 日本の生徒・学生1人当たりの教育支出は、一貫してすべての教育段階でOECD加盟国平均を上回る。初等教育機関か

ら高等教育までの教育への総支出は、学生・生徒1人当たり12120米ドルであり、OECD平均10391米ドルを上回る。

学生数の減少にもかかわらず、2010年以降、初等教育から高等教育における教育支出はほとんど変化していない。

• 初等教育から高等教育までの生徒・学生1人当たり教育支出がOECD平均を上回るにもかかわらず、日本の国内総生産

(GDP)に占める教育支出の割合は、OECD平均を下回る。OECD加盟国では平均してGDPの5%が初等から高等教育段

階の教育費に充てられるが、日本の場合、その割合は4.1%である。初等・中等教育段階では特に低く、OECD平均3.5%に対し、日本は2.7%である(図2)。

• 日本はまた、他のOECD加盟国に比べ、一般政府総支出に占める教育支出の割合も小さい。OECD加盟国平均8%に対

し、日本では公財政支出総額の6.3%が初等・中等および高等教育以外の中等後教育に充てられる。OECD平均との差

は高等教育においてさらに顕著で、その割合は公財政支出の1.7%であり、これはOECD加盟国平均3%の半分をやや

超える程度である。

• OECD加盟国の3分の2と同様、日本でも、初等および中等教育段階での教育支出の90%以上が公財政支出によるもので

ある。一方で高等教育段階では、私費負担に著しく依存している。同段階の支出の68%が私的に賄われており、これ

はOECD平均30%の2倍を超える。私費負担の4分の3以上が家計による直接負担である。しかしながら、高等教育段階

での教育支出の公私負担割合は 2005年から2015年の間、比較的変化が少ない。

• 日本は、インフラへの投資の度合いが高い。特に初等および中等教育段階で顕著であり、総教育支出に占める資本的支

出の割合は、いずれの教育段階でも13%を占める。これはOECD平均7%の2倍以上である。しかしながら、高等教育段

階ではOECD加盟国平均13%と同程度である。

図2:教育機関に対する総支出の対GDP比 (2015年)

公財政支出、私費負担・国際財源による支出、教育段階別

1.調査年は2016年。

2.初等教育に就学前教育と前期中等教育を含む。

左から順に、初等から高等教育の機関に対する総教育支出の対GDP比が大きい国。

出典:OECD/UIS/Eurostat (2018)。表C2.1。 詳細は下記URLより「資料」および付録3の注を参照 (http://dx .doi.org/10.1787/eag-2018-36-en)。StatLink https://doi.org/10.1787/888933804318

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

対GDP比(%)  初等教育、中等教育および高等教育以外の中等後教育 高等教育

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4 © OECD2018

幼児教育および保育サービスは依然として主に家計が負担しており、3 歳未満児の幼児教育

在籍率は引き続きOECD 平均を下回っている

• 日本では、低年齢の子どもが幼児教育および保育サービスに在籍する傾向がOECD加盟国に比べ弱い。2015年時点で、3歳未満児で正規の幼児教育および保育サービスを受ける者の割合は23%であり、これはOECD平均31%を下回る。しかしながら、これらきわめて低年齢の子どもの幼児教育在籍率は上昇傾向にある。3歳未満児在籍率は、2005 年で16%、2010 年は19%であった。幼児教育および保育サービスを受けることは、母親の就業、子どもの発達の双方の点できわめて重要である(OECD, 2017)が、日本の場合、育児環境の改善を図る政府の諸施策がわずかながら効果を表し始めているといったところである。

• 3~5歳児の幼児教育在学率は各段に高く、大部分の子どもが就学前教育を受けている。3歳児の在籍率は84%であり、これはOECD平均を8ポイント上回る。4歳児および5歳児については、ほぼすべてといえる95%の在籍率である。

• 日本は、就学前教育に対する教育支出が OECD加盟国の中で最も低い国の1つである。GDPのわずか0.2%が就学前教育に充てられ、この割合は、OECD加盟国平均の3分の1である(図3)。

• 幼児教育に対する支出の半分以上は私的財源によるものである。就学前教育段階での教育支出の52%が私的に賄われるが、そのうち65%は家計負担による。その結果日本では、就学前教育を受ける子どもの4分の3が独立した私立教育機関に在籍することとなる。OECD加盟国の大部分では、子どもは国公立または政府資金によって運営される教育機関で幼児教育を受けており、アイルランドと日本だけが例外である。幼児教育における家庭の経済的負担については、「第2期教育振興基本計画(2013-17)」の中で取り上げられ、すべての子どもに対する総合的な幼児教育・保育の提供を目指し、幼児教育の段階的無償化を目指すことが決議された(OECD, 2015)。この施策の展開は、仕事と家庭の両立を願う女性の後押しとなることも期待されている。

図3:就学前教育に対する支出の対GDP比(2005年、2010年、2015年)

国公立および私立教育機関

注 : 各国の幼児教育および保育に対する相対的支出の比較は、就学前教育の履修期間によっても決定づけられる。例えば、複数の国でGDPに占める

幼児教育支出の割合がOECD平均を下回ることは、初等教育への早期移行による就学前教育履修期間の短縮によって説明されるだろう (各国の就学前

教育履修期間については表B1.4参照)。

左から順に、教育支出の対GDP比が大きい国(2015年時点)。

出典: OECD (2018)。 表B2.3a。 詳細は下記URLより「資料」および付録3の注を参照 (http://dx.doi.org/10.1787/eag-2018-36-en)。StatLink https://doi.org/10.1787/888933803273

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

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日本の教員は大規模学級を抱え、他のOECD 加盟国よりも長時間勤務している

• 日本の初等教育における学級規模は、OECD 加盟国の中で、チリ(1クラス当たり30人)に次いで2番目に大き

く、1クラス当たり27人とOECD平均21人を大きく上回る。学級規模は前期中等教育ではさらに大きくなり、国

公立および私立教育機関共に1クラス当たり平均32人である。これはOECD平均より9人多い。OECD加盟国に

比していまだ大人数ではあるものの、日本の1クラス当たり生徒数は、初等および前期中等教育の両段階で、過

去10年で4%減少している。

•日本は、教員の法定勤務時間数が OECD加盟国の中で最も長い国の1つであり、就学前教育から後期中等教育まで

を通じ、年間1883時間である。これは、すべての教育段階で OECD平均を200時間以上上回る。しかしながら日本

の場合、勤務時間の長さにもかかわらず、教員が授業に充てる時間は比較的少なく、教員の年間授業時間数は全教育段階でOECD平均を大きく下回る。例えば前期中等教育の普通プログラムでは、OECD平均693時間に対し、日本

の授業時間数は年間616時間である。これは、日本では教員が教育相談、学校運営業務、課外活動や指導プログラ

ムへの参加等、授業以外の様々な職務をこなしている実態のためである。

• 日本の年間必修授業時間数は、初等教育で763時間、前期中等教育で893時間である。これは、各教育段階における

OECD平均793時間、913時間を、いずれもやや下回る。しかしながら、授業日数については、イスラエルを除く他の

大部分のOECD加盟国より多く、初等および前期中等教育の年間平均授業日数は201日となる。これに対しOECD 加盟国平均は、初等教育で185日、中等教育で183日である。日本では通常、学期は4月に始まり3月に終了する。ま

た、学年度内の学校休暇は各学校の設置者が決定する。

• 日本の教員給与は、所定の勤務年数においては、初等教育、前期中等教育、後期中等教育の各段階間でほとんど差が

ない。しかしながら日本では、教員の初任給がOECD 平均を下回る一方、勤続年数に応じた給与の上昇幅が他の

OECD加盟国よりも大きい。例えば、初等および前期中等教育では、勤続10年で教員給与はOECD 平均にほぼ等しく

なり、勤続15年では初等・中等教育(後期中等教育も含む)のすべての教員がOECD平均以上の給与を得る。法定最

高給与は、教育段階に応じてOECD加盟国平均を約12~20%上回り、結果的に日本は、法定最高給与と初任給の差

がもっとも大きな国の1つとなっている。

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

初等から前期および後期中等教育を通じ、学校長の法定最低給与は64,958米ドルから66,563米ドルであり、教員の法定最高給与と同程度の金額に上る。しかしながら、学校長の最低給与に対する最高給与の比率は小さく、教育段階に応じ、1.11~1.14となる。このことは、学校長の報酬は教員より手厚いものの、学校長としての在職中における給与上昇はきわめて小さいことを示している(図4)。日本では、非常に長い勤続年数を経て初めて教員から学校長に昇進する。給与上昇幅の小ささは、このような学校長としてのキャリアスタートの遅さに起因するものといえるかもしれない。OECD加盟国平均が65%であるのにに対し、日本の場合、学校長の98%が50 歳以上である(OECD,2016)。学校長および教員の給与は、地域レベルで規定される。

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図4:前期中等教育の教員と学校長の法定給与の最低額と最高額(2017年) 最も標準的な資格を持つ教員と最低限の資格を持つ学校長を基準とする

授業体系および計画と構成に関する学校の裁量度は限定的である

• 日本の学校におけるガバナンスは比較的分権化している。国公立前期中等教育段階では、3分の1の事項が地域レベ

ルで決定され、47都道府県の教育委員会によって行われる。4分の1に満たない事項が地方レベルで決定され、学校

裁量で決定する事項は約21%に過ぎない。ただし、それらも上位の当局が規定する枠組み内での決定となる。この

ため、授業体系およびその計画と構成を学校の裁量で行える度合いは限られており、前者については33%、後者で

は50%が学校レベルで決定される。中でも教育課程の内容については、カリキュラム編成の際の基準とされる学習

指導要領に照らして学校が決定できる。

• しかしながら、人事および資源に関しては、学校レベルで決定がなされることはほとんどなく、大部分が地域レベ

ルまたは複数の関係当局レベルで行われる。国公立前期中等教育段階での教職員の任免、教育活動にかかわる諸条

件、教員給与に関する決定は、すべて地域レベルで行われる。服務規定については、地域レベルで定められた枠組

み内で地方の実情に合った内容が定められる。

本書は、OECD 事務総長の責任のもとで発行されている。本書で表明されている意見や主張は、必ずしも OECD 加盟国

の公式見解を反映するものではない。

本書に掲載する文書および地図は、あらゆる領土の地位や主権を、国際的な境界設定や国境を、また、あらゆる領土や

都市、地域の名称を害するものではない。

イスラエルのデータに関する注記

イスラエルの統計データは、イスラエル政府関係当局により、その責任の下で提供されている。OECD における当該デ

ータの使用は、ゴラン高原、東エルサレム、およびヨルダン川西岸地区のイスラエル入植地の国際法上の地位を害する

ものではない。

1. 実際の基本給。

左から順に、学校長の法定給与最高額が高い国。

出典: OECD (2018)。ホームページの表D3.1b。 表D3.10。 詳細は下記URLより「資料」および付録3の注を参照(http://dx.doi.org/10.1787/eag-2018-36-en)。

StatLink https://doi.org/10.1787/888933805515

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

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リトアニアは「図表でみる教育」編集時点でOECD未加盟であったため、同書内の加盟国総計に含んでいない。しかし

ながら、当カントリーノートはリトアニア加盟後に作成しており、ここに示すOECD加盟国およびEU平均はリトアニア

のデータを含む最新の値である。このため、「図表でみる教育」に示される値とは異なる場合がある。

参考文献

Groysberg, B. et al. (2017), “Womenomics in Japan”, Harvard Business School Case Collection, no. 417-002, Harvard Business School (revised January 2018), www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=52270.

OECD (2015), Education Policy Outlook: Japan, OECD Publishing, Paris, www.oecd.org/edu/Japan-country-profile.pdf.

OECD (2016), Education at a Glance 2016: OECD Indicators,, OECD Publishing, Paris, http://dx.doi.org/10.1787/eag-2016-en

OECD (2017), Starting Strong 2017: Key OECD Indicators on Early Childhood Education and Care, OECD Publishing, Paris. http://dx.doi./10.1787/9789264276116-en

OECD (2018), Education at a Glance 2018: OECD OECD Publishing, Paris, http://dx.doi.org/10.1787/eag-2018-en.

OECD (2018), Education Policy in Japan: Building Bridges towards 2030, Reviews of National Policies for Education, OECD Publishing, Paris, http://doi.org/10.1787/9789264302402-en.

The Japan Institute for Labour Policy and Training (JILPT) (2011), Non-Regular Employment – Issues and Challenges Common to the Major Developed Countries, JILPT Report No. 10, http://www.jil.go.jp/english/reports/documents/jilpt-reports/no.10.pdf

「図表でみる教育 2018年版」についての詳しい情報および全インディケータは、 www.oecd.org/education/education-at-a-glance- 19991487.htmをご覧ください。

最新のデータは、 http://dx.doi.org/10.1787/eag-data-en または本書内の各図下にある で確認

のこと。

データおよび結果・解説をさらに調べる、比較する、視覚化するには:

http://gpseducation.oecd.org/CountryProfile?primaryCountry=JPN&treshold=10&topic=EO.

問い合わせ先:

Marie-Helene Doumet Directorate for Education and Skills [email protected]

カントリーノート著者:

Axelle Magnier Directorate for Education and Skills [email protected]

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

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8 © OECD2018

出典 『図表でみる教育』主要テーマ

男性(%) 女性(%) 男性(%) 女性(%)

後期中等教育未満 ** ** 17% 14%後期中等教育または高等教育以外の中等後教育 ** ** 46% 37%高等教育 59% 62% 38% 50%

15~29歳人口の就業せず、教育も訓練も受けていない者(ニート)の割

合、出生国別

調査を行った国生まれ

外国生まれ

調査を行った

国生まれ外国生まれ

調査を行った

国生まれ外国生まれ

後期中等教育未満 ** ** 56% 60%後期中等教育または高等教育以外の中等後教育 ** ** 76% 72%高等教育 ** ** 87% 79%

25~64歳女性の男性との所得比率、学歴別 後期中等教育未満

後期中等教育または高等教育以外の中等後教育

高等教育

中等教育普通プログラムにおける女子原級留置者の割合

前期中等教育

後期中等教育

男性(%) 女性(%) 男性(%) 女性(%)

自然科学・数学・統計学 15% 9% 22% 20%工学・製造・建築 23% 9% 22% 10%保健・福祉 40% 46% 12% 19%

高等教育初回卒業者

表 B5.1 女性の割合 25~64歳人口の学校教育や学校教育以外の教育への参加率

調査を行った国生まれの成人および外国生まれで25歳までに調査国

に来た成人の参加率

外国生まれで26歳以降に調査国に来た成人の参加率

3歳児の在学率

表 B2.1a 幼児教育およびその他の認定保育サービス

国公立機関

私立機関

就学前教育段階の教育支出

表 B2.3a 在学者1人当たり年間支出(購買力平価による米ドル換算額)

全ての職業プログラム

学校・企業連携プログラム

普通プログラム

職業プログラム

普通プログラム

職業プログラム

留学生または外国人学生の割合、課程別2

学士(または同等)

修士(または同等)

博士(または同等)

全ての高等教育

高等教育初回修了者の割合、課程別

短期高等教育 学士(または同等)

修士(または同等)

25~64歳人口の就業率、学歴別

短期高等教育 学士(または同等)

修士(または同等)

博士(または同等)

全ての高等教育

25~64歳のフルタイム通年労働者の相対所得、高等教育の学歴別

(後期中等教育を100とする)

短期高等教育 学士(または同等)

修士、博士(または同等)

全ての高等教育

表 A1.2

2017

表 A2.3 ** 13%** 18%

「図表でみる教育2018年版」日本に関する主要統計

日本 OECD平均

公平性

25~34歳人口の学歴、男女別2017

** 74%2016

表 B1.3 ** 39%** 42%

25~64歳人口の就業率、学歴別、出生国別

2017

表 A3.4

2016

表 A4.3 ** 78%** 78%

20121

表 A7.142% 49%

** 48%

博士課程進学者の男女比率、専攻分野別2016

表 B4.1

201652% 57%

表 B2.2 26% 68%74% 32%

2015

幼児教育および保育(ECEC)2016

84% 76%

就学前教育の在学率、設置形態別 2016

表 B1.3 23% 44%** 11%

後期中等教育卒業者に占める女性の割合、プログラムの性格別 2016

USD 7 499 USD 8 426職業教育・訓練(VET)

後期中等教育における職業教育在学率、プログラムの性格別 2016

表 C1.1 ** USD 8 981** USD 10 831

高等教育

図B3.1 51% 54%43% 46%

後期中等教育の在学者1人当たり教育支出総額、プログラムの性格

別(フルタイム換算の在学者)2015

2016

表 B5.135% 14%63% 75%2% 10%

2016

表 B6.1

2% 4%7% 12%

18% 26%4% 6%

2017

表 A3.1

79% 81%88% 84%

** 88%** 92%

152 155

84% 85%

2016

表 A4.1

** 123** 145** 191

日本 -カントリーノート- 図表でみる教育 2018: OECD インディケータ

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出典 『図表でみる教育』主要テーマ

在学者1人当たり総教育支出、教育段階別(購買力平価による米

ドル換算額、フルタイム換算の在学者)

初等教育

中等教育

高等教育(研究・開発活動を含まない)

初等教育から高等教育までの教育機関に対する支出総額

表C2.1 対GDP比高等教育機関に対する支出割合、財源別

3

公財政支出

私費負担

公財政から私費への移転

初等から高等教育までの公財政総支出

表C4.1. 一般政府総支出に占める割合

2016

教員 学校長 教員 学校長

就学前教育 ** ** 0.82 **初等教育 ** ** 0.86 1.21前期中等教育(普通プログラム) ** ** 0.91 1.34後期中等教育(普通プログラム) ** ** 0.96 1.42

2017

初任給勤続15年後の

給与初任給

勤続15年後の

給与

就学前教育 ** ** USD 30 229 USD 40 436初等教育 USD 30 631 USD 51 593 USD 31 919 USD 44 281前期中等教育(普通プログラム) USD 30 631 USD 51 593 USD 33 126 USD 46 007後期中等教育(普通プログラム) USD 30 631 USD 51 593 USD 34 534 USD 47 869

2017正味の授業時

間数

総法定勤務時

間数

正味の授業時

間数

総法定勤務時

間数

就学前教育 ** 1883時間 1029時間 1628時間

初等教育 742時間 1883時間 778時間 1620時間

前期中等教育(普通プログラム) 610時間 1883時間 701時間 1642時間

後期中等教育(普通プログラム) 511時間 1883時間 655時間 1638時間

50歳以上教員の割合 2016表 D5.1 初等教育から後期中等教育 33% 35%

国公立および私立教育機関における女性教員の割合、教育段階別 2016初等教育 65% 83%前期中等教育 42% 69%後期中等教育 30% 60%高等教育 27% 43%

教育段階別にみた学級規模の平均 2016初等教育 27人 21人前期中等教育 32人 23人

1. OECD平均には2015年のデータを用いた国を含む。

2. 複数の国については留学生ではなく外国人学生のデータを用いている。

3. 国際財源からの支出は公財政支出に含む。

これらデータの詳細は、資料に記載の元の表を参照のこと。

データの締切日は2018年7月18日。更新データはホームページで閲覧可能(http://dx.doi.org/10.1787/eag-data-en)。

2015

8% 11.1%教員、学習環境と学校組織

20154.1% 5.0%

参照年は引用年またはデータを入手可能な直近年。

表 D2.1

表 D5.2

表 D3.1a

国公立教育機関の教員の1学年度当たり授業時間数および勤務時間数

表 D4.1

高等教育を修了した就業者(フルタイム通年労働者)の所得に対

する国公立教育機関教員および学校長の実際の給与の比率

表 D3.2a

最も標準的な教員資格を持つ国公立教育機関教員の年間法定給

与 、勤続年数別(購買力平価による米ドル換算)

2015

図C3.1** 73%** 21%

2015

表 C1.1USD 9 105 USD 8 539

USD 11 147 USD 9 868** USD 11 049

** 6%

日本 OECD平均

教育に投資される財源

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