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ユーザインタフェースの革新とブルー・オーシャン戦略 - Wii と iPhone の事例研究 - 学籍番号 09E0195 氏名 髙田 悠馬 キーワード ユーザインタフェースの革新、ブルー・オーシャン戦略、技術革新 要旨 情報化の進展とともに、種様のデジタル機器が開発された。デジタル機器はデジタルコン バージェンスという特性によって複数の機能を融合することに成功した。例えば携帯電話にデジタ ルカメラが付与できたり、カーナビにオーディオメーカーを一体化したりなど、ユーザインタフェース の機能化が加速した。これによりデジタル機器の操作もより複雑化・高度化している。すべての ユーザが扱える適正な操作性が求められ、ユーザインタフェースの重要性が高まっている。 周知のように、種様なユーザインタフェースが市場に出回りつつある。Wii の入力デバイスと しての Wii リモコンや、iPhone に内蔵されているタッチパネルなどはきな話題としてとりあげられ た。今後開発されるデジタル機器には、「革新的技術」を持ったユーザインタフェースの搭載が必 須となってくる。また、革新的ユーザインタフェースは新規市場を開拓するためのトリガーとなり、従 とは異なった新たな顧客獲得を可能とする。 Wii はリモコン型コントローラによって、iPhone は静電容量式のマルチタッチパネルによって、そ れぞれ「新しいユーザインタフェース」の採用により、使いやすさと汎用性の共存を可能とした。次 世代のユーザインタフェースの開発は、この 2 点を基として行われていくと推察する。ユーザインタ フェースは、マルチタッチ・センサや 3 軸加速度センサなど、新しい技術の登場と共に革新されてき た。しかし、新しいユーザインタフェースの開発には、過去の技術を効に利用していくという特徴 がある。次世代のユーザインタフェースにも Wii iPhone の良い部分を開発過程に取り入れる可 能性は十分にある。よって、3 軸加速度センサとマルチタッチパネルは、今後のユーザインタフェー ス開発に広く採用されると考察する。 ブルー・オーシャン戦略のひとつとして、今後も革新的ユーザインタフェースが販戦略に採用 されるであろうと推する。また、ブルーオーシャン戦略において、高付加価値をつける役割とし て、革新的ユーザインタフェースは適任といえる。高付加価値を創出するには、業界に存在しない 知の要素を採用する必要がある。革新的ユーザインタフェースの操作性は、様々な機器への応 用が容であり、知の要素を満たす可能性が高いと推される。(22 ) 稿は、第7回経学部卒業研究発表会にて報告(2008 12 2 201 教室)

ユーザインタフェースの革新とブルー・オーシャン戦略kkojima/seminar/soturon/09e0195.pdf · しての Wiiリモコンや、iPhone に内蔵されているタッチパネルなどは夓きな話題としてとりあげられ

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ユーザインタフェースの革新とブルー・オーシャン戦略∗

- Wii と iPhone の事例研究 -

学籍番号 09E0195 氏名 髙田 悠馬

キーワード

ユーザインタフェースの革新、ブルー・オーシャン戦略、技術革新

要旨

情報化の進展とともに、多種多様のデジタル機器が開発された。デジタル機器はデジタルコン

バージェンスという特性によって複数の機能を融合することに成功した。例えば携帯電話にデジタ

ルカメラが付与できたり、カーナビにオーディオメーカーを一体化したりなど、ユーザインタフェース

の多機能化が加速した。これによりデジタル機器の操作もより複雑化・高度化している。すべての

ユーザが扱える適正な操作性が求められ、ユーザインタフェースの重要性が高まっている。

周知のように、多種多様なユーザインタフェースが市場に出回りつつある。Wiiの入力デバイスと

してのWii リモコンや、iPhoneに内蔵されているタッチパネルなどは大きな話題としてとりあげられ

た。今後開発されるデジタル機器には、「革新的技術」を持ったユーザインタフェースの搭載が必

須となってくる。また、革新的ユーザインタフェースは新規市場を開拓するためのトリガーとなり、従

来とは異なった新たな顧客獲得を可能とする。

Wiiはリモコン型コントローラによって、iPhoneは静電容量式のマルチタッチパネルによって、そ

れぞれ「新しいユーザインタフェース」の採用により、使いやすさと汎用性の共存を可能とした。次

世代のユーザインタフェースの開発は、この 2 点を基として行われていくと推察する。ユーザインタ

フェースは、マルチタッチ・センサや3軸加速度センサなど、新しい技術の登場と共に革新されてき

た。しかし、新しいユーザインタフェースの開発には、過去の技術を有効に利用していくという特徴

がある。次世代のユーザインタフェースにも Wii と iPhone の良い部分を開発過程に取り入れる可

能性は十分にある。よって、3軸加速度センサとマルチタッチパネルは、今後のユーザインタフェー

ス開発に広く採用されると考察する。

ブルー・オーシャン戦略のひとつとして、今後も革新的ユーザインタフェースが販売戦略に採用

されるであろうと推測する。また、ブルー・オーシャン戦略において、高付加価値をつける役割とし

て、革新的ユーザインタフェースは適任といえる。高付加価値を創出するには、業界に存在しない

未知の要素を採用する必要がある。革新的ユーザインタフェースの操作性は、様々な機器への応

用が容易であり、未知の要素を満たす可能性が高いと推測される。(全 22頁)

∗ 本稿は、第7回経済学部卒業研究発表会にて報告(2008年 12月 2日 201教室)

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目次

第 1章 はじめに ..................................................................................................................... 3

第 2章 Wiiの特徴 ................................................................................................................. 4

2-1 Wiiの概要 ..................................................................................................................... 4

2-2 3つのゲームメーカー ..................................................................................................... 5

2-3 ゲームメーカーのシェア競争 .......................................................................................... 8

2-3-1 据え置きゲーム機 ................................................................................................... 8

2-3-2 携帯ゲーム機.......................................................................................................... 9

2-4 シェア競争を左右する三要素 ....................................................................................... 11

2-5 ブルー・オーシャン戦略 ............................................................................................... 12

第 3章 iPhoneの特徴 ......................................................................................................... 14

3-1 iPhoneの発売 ............................................................................................................. 14

3-2 iPhoneの概要 ............................................................................................................. 15

3-3 iPhoneの通信規格...................................................................................................... 16

第 4章 Wii と iPhoneのユーザインタフェース ...................................................................... 18

4-1 Wii と iPhoneの共通点 ............................................................................................... 18

4-2 ユーザインタフェースの役割......................................................................................... 19

第 5章 おわりに.................................................................................................................... 21

参考資料................................................................................................................................ 22

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第 1章 はじめに

情報化の進展とともに、多種多様のデジタル機器が開発された。デジタル機器はデジタルコン

バージェンス1という特性によって複数の機能を融合することに成功した。例えば携帯電話にデジタ

ルカメラが付与できたり、カーナビにオーディオメーカーを一体化したりなど、ユーザインタフェース

2の多機能化が加速した。これによりデジタル機器の操作もより複雑化・高度化している。すべての

ユーザが扱える適正な操作性が求められ、ユーザインタフェースの重要性が高まっている。スマー

トフォン、カーナビ、ゲーム機に至るまで、操作性に優れたユーザインタフェースを必要とする場は

増加している状況にある。情報を画像として出力するグラフィカルユーザインタフェースを主軸に、

様々な入力法を搭載したユーザインタフェースが開発されている。また、携帯電話業界では液晶タ

ッチパネルを採用した携帯電話の開発が本格化しており、量産化に伴ってタッチパネルの価格が

安価になりつつある。

周知のように、多種多様なユーザインタフェースが市場に出回りつつある。Wiiの入力デバイスと

してのWii リモコンや、iPhoneに内蔵されているタッチパネルなどは大きな話題としてとりあげられ

た。これらの商品がヒットした最大の要因は、奇抜かつ操作性に優れたユーザインタフェースを採

用したところにあると推測される。操作性に優れたユーザインタフェースを持つ機器は一般ユーザ

に親しまれやすく、顧客の満足度を高め、購買意欲を高める効果がある。よって、今後開発される

デジタル機器には、上述したような「革新的技術」を持ったユーザインタフェースの搭載が必須とな

ってくる。また、革新的ユーザインタフェースは新規市場を開拓するためのトリガーとなり、従来とは

異なった新たな顧客獲得を可能とする。

本論文では、事例研究として Wii と iPhone に着目し、それぞれのユーザインタフェースの有効

性と革新性を調査する。現在最も話題となっているユーザインタフェース 2 つを事例として研究す

ることで、顧客が求めるユーザインタフェースとはどのようなものであるかを考察する。加えて、Wii

と iPhoneが登場するまでの技術背景などを説明する。そして、ユーザインタフェース以外にどのよ

うな要素が両機の販売数増加につながったのかを考察する。

本稿の構成は以下の通りである。まず、第 2 章では Wii の概要を論述する。Wiiの発売元企業

である任天堂と、そのライバルメーカーとの競争関係を示すことで、Wiiと任天堂の優位性を述べる。

また、ゲーム業界におけるシェア獲得の条件を述べ、どのようにゲーム業界トップシェア機が決定

するのかを論述する。最後の節では、ブルー・オーシャン戦略が Wii に及ぼした効果について論

ずる。第 3 章では、iPhone の概要を論述する。iPhone の機能を一通り述べ、iPhone がツールと

してどのように優れているのかを論ずる。また、背景として存在する通信規格の問題にも触れる。第

4章では、Wiiと iPhone、それぞれの共通点である、優れたユーザインタフェースについて論述す

る。ユーザインタフェースの役割を述べることで、どのようなユーザインタフェースが必要とされるの

かを明確にする。

1 digital convergence:デジタル融合という意味で、一つの器機とサービスにすべての情報通信技術を縛った新し

い形態の融合商品を指す。 2 コンピュータと利用者とをつなぐ役割を担う機器。

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第 2章 Wiiの特徴

本章では、Wiiの特徴について述べる。まず、2-1では、Wiiの概要について述べ、独特のコント

ローラ(ユーザインタフェース)の有用性を示す。続く 2-2 では、Wii のライバルとなる他ゲームメー

カーと任天堂との関係を示す。次の 2-3 では、ゲームメーカーのシェア競争を据え置きゲーム機、

携帯ゲーム機の 2つの視点から論述する。さらに 2-4では、ゲームメーカーのシェア競争を左右す

る要素が何なのかについて言及する。最後に 2-5 では Wii の中心的な戦略となっているブルー・

オーシャン戦略についての概要を論述する。

2-1 Wiiの概要

周知のとおり Wii(ウィー)とは、任天堂より販売されている据え置き型ゲーム機の一種である。任

天堂によれば、Wii という名称は、英語の we(私たち)をイメージしており、「家族の誰もが楽しめ

る」というイメージを表している。iiは独特の形状のコントローラと、人々が集まる様子を象徴したもの

である。他にもフランス語の Oui(はい)とも発音が似ており、肯定的な意味が含まれている。

Wiiの最大の特徴は、簡単な操作で楽しめるWii リモコンであろう。Wii リモコンは、一般家庭に

馴染み深いテレビリモコンに類似した形状をしており、Wii リモコンを使用することで、テレビリモコ

ンを操作するかのように、ゲームを楽しむことが可能である。前述のように、Wii のコンセプトは「家

族の誰もが楽しめること」であり、コントローラを一般家庭に馴染み深い形状にすることによって、よ

り一般家庭に受け入れられるようにしている。また、「家族の誰もが楽しめる」というコンセプトに従い、

家族の誰もが楽しむためには「怖がられない」という新たなコンセプトが必要となった。

そこで、任天堂が Wii リモコンを開発する上で、最も労力を費やしたことの一つは、Wii リモコン

の形状である。任天堂は「怖がられないコントローラ」というコンセプトを実現するために,膨大な数

の試作品を製作した。同社によると、当初 Wii の開発陣は、両手で操作する従来のコントローラの

形状を基に、画面を指し示すポインタ機能3を加えるために棒状の突起物をそれの中央に加えた

形状を想定していた(図 1 参照)。しかし、いくら試作品を製作しても「怖がられない」というコンセプ

トを実現できなかった。そこで開発陣は発想を転換した。ポインタ機能を実現する棒の形状を基本

に、コントローラ機能を加えるという発想に変更したのである。この結果完成したのが、テレビリモコ

ンのような形状のコントローラであった。この一連のチューンアップを経て、「怖がられない」というコ

ンセプトを体現したWii リモコンを完成させた。

3 リモコン操作で、矢印やバーなどのポインタを投映画面に表示する機能。

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図 1 Wii コントローラの試作品

(出所:Buzzurl(バザール) 「Wii コントローラの試作品」)

2-2 3つのゲームメーカー

日本で現在、主なゲーム機シェアを占めているゲーム機メーカーは、任天堂、ソニー・コンピュー

タエンタテインメント(以下 SCE と略)、マイクロソフトの三社である。現在は、この三社以外のハード

メーカーが存在しないため、市場競争はこの三社のみによって行われている。セガも長年、独自の

ハードを販売してきたが、ドリームキャストを最後にゲーム機事業から撤退した。その他、ゲーム事

業から撤退したハードメーカーは、PCエンジンを開発したNECホームエレクトロニクス、3DOを創

出したパナソニック、ピピンアットマークを作り出したバンダイ・デジタル・エンタテイメントなどである。

これらのハードが普及しなかった原因は、ハードの高価格、ソフトのラインナップが魅力に乏しい、

性能が他機種に及ばなかったことなどが原因である。以下、日本で主要のハードメーカー三社の

概要を述べる。

まず、任天堂の概要を説明する。任天堂は、据え置きゲーム機市場では、ファミリーコンピュータ

(以下 FC と略)、スーパーファミコン(以下 SFC と略)で圧倒的なトップシェアを維持し、1996 年の

NINTENDO64(以下N64 と略)で SCEのプレイステーション(以下 PS と略)にトップシェアの座を

奪われた後も、一定のシェアを獲得している。一方、携帯ゲーム機市場ではゲームボーイ(以下

GB と略)発売以降トップシェアを守り続けている。2007 年現在、任天堂は携帯ゲーム機(ニンテン

ドーDS)と、据え置きゲーム機(Wii)を合わせた市場では、ゲーム業界トップシェアを維持している。

販売するゲーム機の特徴としては、スペックが他社製品に劣ることが多いものの、枯れた(開発され

てから時間の経った)技術を有効に活用した設計をすることで市場のシェアを獲得し続けており、

低コストで廉価、高い信頼性の商品を作り出している。

次に、SCEについてを概観する。SCEは 1994年に PSによって据え置きゲーム機のトップシェ

アとなり、続くプレイステーション 2(以下 PS2 と略)でもその状態を維持した。2007年 11月現在は

PS2 とプレイステーション・ポータブル(以下 PSP と略)、プレイステーション 3(以下 PS3 と略)を主

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に販売している。 親会社が AV・音響機器で有名なソニーであることから、Blu-ray Disc(ブルーレ

イ・ディスク)再生機能などを付け加えることでハードの付加価値を高め、普及を促進している。ゲー

ム機の特徴としては、最新技術の活用、総合 AV 機能、原価割れしているハードの赤字分をソフト

の売り上げやハード自体のコストダウンによって補うビジネスモデルなどが挙げられる。一方、問題

点としては、ハードの信頼性の低さが露呈している、ソフト面の売り上げがやや小さい、経営体力も

マイクロソフトや任天堂に比べて弱いことなどが挙げられる。

最後に、マイクロソフトの概略を論述する。マイクロソフトは 2002 年に Xbox で参入し、現在は

Xbox 360を販売している。本業は世界最大のコンピュータソフト会社であり、圧倒的な経営体力を

保持している。パソコン市場でのノウハウを活かし、パソコンとの連携やオンラインサービスを売りに

している。ハードの特徴は極めて良好なソフト開発環境を準備する点にあるとされ、映像的に優れ

たゲームを低コストで開発できることに関しては定評がある。一方、日本におけるゲーム機メーカー

としての知名度・ブランド力の低さ、日本の居住環境と日本人の嗜好に合致しないハードの特性

(騒音、大味なデザインなど)が指摘されている。

以上が日本での主なハードメーカー三社の概要である。上記したように、現在、三社の販売して

いる主なゲーム機は、任天堂がWii、SCEが PS3、マイクロソフトが Xbox 360である。「ゲームデ

ータの部屋」の統計データによると、この三つのゲーム機の累計売り上げ台数は順位変動が起こっ

ておらず、一位がWii、二位が PS3、三位が Xbox 360で、常に Wiiがトップシェアを維持し続け

ていることが理解できる(グラフ 1 参照)。また、ゲーム機三機種のシェア率を比較すると、Wii が市

場のシェア約 7割を占め、シェア率 2割の PS3、シェア率 1割の Xbox 360を大きく引き離してい

る(グラフ 2参照)。以上のように、現在 3つのゲームメーカーの中では任天堂のWiiの売り上げが

最も好調であると理解できる。

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グラフ 1 ゲーム機三機種の売り上げ

ゲーム機三機種の売り上げ

0

50

100

150

200

250

300

350

400

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

万万万万

Wii

PS3

XBOX360

(出所:ゲームデータの部屋「ハード売り上げデータ」)

グラフ 2

ゲームゲームゲームゲーム機三機種機三機種機三機種機三機種ののののシェアシェアシェアシェア率率率率

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月

Wii

PS3

Xbox360

(出所:ゲームデータの部屋「ハード売り上げデータ」)

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2-3 ゲームメーカーのシェア競争

日本におけるゲーム機のシェア競争は、大半が一機種による独占で結末を迎えている。FC の

登場以後、シェアトップのゲーム機の売り上げは、常に二位以下のハードの数倍に達し、シェアの

大半を占めている。ハードウェアが一定数以上普及すると、その販売機会の大きさに期待したサー

ドパーティ4の参入が促進される。サードパーティが参入すると、そのゲーム機のソフトウェアがより

多く開発されるため、消費者にとってはソフトの選択肢が増えることになる。ハードウェアを新規購

入する消費者は、サードパーティ参入の多い、より市場に普及したハードウェアを選択するようにな

る。一度この好循環が形成されると、市場が飽和し、衰退するまでこのサイクルが続き、逆に普及率

で劣ったハードは、負のサイクルが続くことになる。このような現象が生ずる理由は、経済学上、ネッ

トワーク外部性5という概念で説明されている。

ゲームメーカーはゲーム機販売の初期段階より、一定数以上のユーザを獲得しなければ、負の

サイクルにより市場から撤退することになる。よって、ゲームメーカーは市場のシェアを獲得するた

めに試行錯誤する。以下では、ゲームメーカーのシェア競争の歴史を 2-3-1 据え置きゲーム機と、

2-3-2携帯ゲーム機に分けて考察する。

2-3-1 据え置きゲーム機

1980年代初期はFCが、1980年代後期にはSFCがシェアを独占している。双方、任天堂の据

え置きハードで、爆発的に売れた商品である。同時期、NECホームエレクトロニクスがPCエンジン

を、セガはSG-1000、セガ・マーク III、メガドライブなどのハードを発売したが、FC・SFCの独占状

態を崩すまでには至らなかった。

1990年代中期から2000年代前期にかけては、SCEのPS・PS2によってシェアが独占された。

1980 年代、トップを独走していた任天堂は、PS発売と同時期に N64 を発売するも、SFC同様に

単価が高く容量の少ないロムカセットを採用したことを要因に、シェア獲得に失敗した。また、PS発

売と同時期、セガもセガサターン(以下 SS と略)を発売した。PS と SS は共に 32 ビット CPU で

CD-ROM ドライブを保有していたが、PS は 3D に特化したハード構成で、SS は 2D 性能に秀で

ていた。また、パナソニックからは 3DO が発売、バンダイ・デジタル・エンタテイメントからピピンアッ

トマークが発売されたものの、ハードの価格が高価格であったと同時に、ソフトのラインナップが魅

力に乏しかった、さらに性能が PSや SSに及ばなかったことなどから台数を伸ばすことができなか

った。PCエンジンの流れを汲んだPC-FXは動画再生に特化した性能のため、当時のゲーム業界

の流れであった 3D 化から外れ、「1995 年内に 50 万台以上普及させる」という目標も達成できず

短命に終わった。PSの売り上げの勢いに他企業は、有力ソフトメーカーの流出を食い止めることが

4 Third party:他社の OS や機器などに対応する製品を作っているメーカーのこと。ここでは、ゲームソフトを作る

会社を指す。

5 電話などのネットワーク型サービスにおいて、加入者数が増えれば増えるほど、1利用者の便益が増加するという

現象。利用者が増加することによって、ますます利用者が増えるという、正のフィードバックが発生する。

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できず、最終的に PSがトップシェアとなった。

PS2の販売時期には、セガがドリームキャスト(以下 DC と略)を発売。DCは PS2に比べて機能

が劣っていることや、DVD が使用不可能であること、SS との互換性がないこと等があって売り上げ

が低下していった。そして 2001 年、セガは DC の販売を終了すると同時にハードウェア事業から

撤退した。同年、任天堂がN64の後継機であるニンテンドーゲームキューブ(以下GCと略)を発売。

さらに翌 2002 年、世界のソフトウェア最大手のマイクロソフトが日本のゲーム機市場に参入し、

Xbox を発売した。これによって日本のゲーム機シェア競争は任天堂、SCE、マイクロソフトの三つ

巴となった。GC や Xbox も性能では PS2 を上回っていたものの、GC は「PS2 より発売が遅すぎ

た」「DVD 再生機能がなかった」「下位機種との互換性がなかった」こと、Xbox は「発売が遅かっ

た」「初期のゲームソフト(ロンチタイトル)が充実していなかった」ことなどが影響して、どちらも販売

台数が伸びず、ゲームソフト開発社(サードパーティ)の獲得に失敗した。結果、GC は日本におい

ては一定の評価を得たが、海外では伸び悩み、Xbox は逆に海外で健闘しているものの、日本で

は低迷した。2003年頃には国内外ともに PS2がトップシェアとなった。

しかし、PS2 のソフト売り上げは 2004 年にピークに達するが、ニンテンドーDS の急激な普及も

あって、2006年上半期には据え置き機のシェアは携帯型ゲーム機に逆転されてしまい、次世代据

え置き機が出揃う前に携帯機のニンテンドーDS がゲーム市場の覇者となった。 以後、ゲーム業

界は、据え置きゲーム機から携帯ゲーム機へと風向きを変えていった。

2-3-2 携帯ゲーム機

携帯ゲーム機の原点は、1989 年に任天堂から発売されたゲームボーイ(以下 GB と略)である。

対抗して、1990 年にセガがゲームギア(以下 GG と略)、日本電気ホームエレクトロニクスが PC エ

ンジン GT で携帯ゲーム機業界に参入した。GB は『テトリス』などの記録的ヒットに支えられ、携帯

ゲーム市場でトップに立った。ゲームギアはゲームボーイのような人気コンテンツを提供できず、ま

たカラー液晶採用による消費電力の大きさが問題となり、GB に大きく水をあけられた。PC エンジ

ン GTは据え置き機の PCエンジンと互換性があるほか、当時としては高性能なカラー液晶を使用

していたが、その分高価で電池の消耗も速く短命に終わった。

1990 年代中期、携帯ゲーム機市場は据え置きゲーム機市場からの影響を受けた。1994 年に

登場した PSや SSは、メディアに CD-ROM を採用した結果、ROM カートリッジに比べてソフトの

価格を大きく下げることに成功した。結果、携帯ゲーム機用のソフトは据え置きゲーム機用ソフトに

比べて割高に感じられるようになり、売れ行きが悪化し、市場は縮小した。GGはこの時期に販売を

終了し、GBも新作ソフトが月に数本程度しか出ない状況が続いた。しかし、1996年にGB用ソフト

『ポケットモンスター 赤・緑』が登場し、携帯ゲーム機ならではの特性を活かしたこのソフトは世界

規模で大ヒットを記録した。ヒット作品に支えられる形で携帯ゲーム機市場は再活性化された。

1990 年代後期、1998年に任天堂がゲームボーイカラー(以下 GBC と略)を、SNK がネオジオ

ポケット(以下NGPと略)を、1999年にバンダイがワンダースワン(以下WS と略)を発売した。NGP

は他機種を上回る処理性能を搭載していた。WS は軽量さと低価格をセールスポイントとし、『ファ

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イナルファンタジー』のリメイク版を発売した。GBCでは、1999年にポケモンシリーズ第2弾、『ポケ

ットモンスター 金・銀』が発売され、大ヒットを記録した。この時期のヒットタイトルには、エニックス

(現スクウェア・エニックス)の『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』、コナミの『遊☆

戯☆王』シリーズがある。NGP と WS は共にカラー液晶搭載版を発売したが、ソフトのヒットが続く

GBの独占状態を崩すには至らなかった。

2000 年代初期、任天堂は 2001 年にゲームボーイアドバンス(以下 GBA と略)を発売、さらに

2003年にはGBAの改良型のゲームボーイアドバンス SPを発売した。WSの後継機種であるスワ

ンクリスタルも登場したがGBAには対抗できず、WSはNGPと共に携帯ゲーム市場より撤退した。

この結果携帯ゲーム機市場から GBA の対抗機種が全て消え、携帯ゲーム機市場は任天堂が完

全に市場を独占した。この世代以降、携帯ゲーム機も 32 ビット以上の高い性能と緻密なカラー液

晶を備えたものが主流となった。携帯ゲーム機の高機能化に伴い、携帯ゲーム機で SFC 時代の

過去のハードのリメイク作品が数多く発売された。また、携帯ゲーム機を携帯音楽プレーヤーとして

使用するなど、ゲーム機にとどまらない周辺機器も登場した(プレイやん)6。

2000年代中期、2004年 12 月 2 日に任天堂がニンテンドーDS(以下 DS と略)を、同年 12月

12日に SCEが PSP を発売し、携帯ゲーム機市場においても任天堂と SCE とのシェア競争が起

こった。どちらの機種もカラー液晶や無線 LAN を搭載しており、携帯ゲーム機におけるライバルと

言われた。PSPはこれまでの他のライバル機以上に健闘し、ある程度のシェアを獲得した。しかし、

DS は『Touch! Generations』7シリーズなどにより、それまでゲームに興味を持たなかった年齢層

へのアピールや、従来型ゲームに飽きていた層の回帰に成功した。新市場となる層の顧客や従来

の層の回帰により、DS は PSP を上回るシェアを獲得した。ハードのスペックを武器に従来の携帯

ゲーム機市場を切り崩そうとした PSP に対し、2 画面、タッチスクリーンによる新しい操作性で市場

を開拓した DS、という方向性の違いが結果に表れた。

結局のところ、携帯ゲーム機市場においては任天堂の一人勝ちであった。また、任天堂の主力

製品であるDSが、携帯ゲーム機市場から据え置きゲーム機市場へとシェア侵食を拡大しつつある

現状である。現在の日本ゲーム機市場は、DSがシェア全体の 6割超を占めており、他のハードは

(Wii Sports などのロングセラーソフトを除いて)有力なソフトが発売された際に少し顔を見せる程

度である。このため、各社の対応次第では「機種の存亡」はもとより「据え置きゲーム機」というジャン

ルそのものの存亡が危ぶまれると推測する(グラフ 3参照)。

6 任天堂より発売された SD メモリー対応デジタルオーディオプレーヤー。動画や音楽再生機能を搭載していない

機種を携帯音楽プレイヤーにすることができる。 7 老若男女を問わず楽しむことができるソフトウェア群の総称。電子辞典や料理のレシピ集といったゲームではな

いソフトウェアも含まれている。

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グラフ 3 ゲーム機の売り上げ総数

ゲーム機の売り上げ総数

PSP21% DS

62%

Wii12%

PS34%

Xbox3601%

(出所:ゲームデータの部屋「ハード売り上げデータ」)

2-4 シェア競争を左右する三要素

前述したとおり、日本におけるゲーム機のシェア競争は、ほとんどの場合が一機種による独占で

結末を迎えている。初期段階からトップシェアを獲得することは極めて重要であり、いずれのハード

メーカーもトップシェアを獲得するために様々な工夫を凝らしている。新規ハードゲームを開発する

際に、ハードメーカーが考慮する要素は以下の三つが存在する。①キラータイトル、②トップシェア

機の後継、③価格の三つである。以下、三つの要素の概要を述べる。

まず、キラータイトルとは、そのゲーム機を背負って立つ人気ソフトを指す。人気ソフトの有無が、

ゲーム機シェア競争に及ぼす影響は極めて大きい。キラーソフトの発売が決定すると、ユーザはそ

のソフトを目当てに新規ハードを購入する。ユーザが新規ハードの購入を推進すると、それに伴い

地盤となる市場が拡大するため、キラータイトルを持つ新規ハードはシェア競争において圧倒的優

位を獲得することになる。これまでの例では、FC の『スーパーマリオブラザーズ』、PS の『ファイナ

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ルファンタジーVII』、(正式商品名)GB の『ポケットモンスター』、DS の『脳トレ』シリーズが挙げら

れる。

次に、トップシェア機の後継とは、前世代トップシェアのハードの名称を引き継ぐこと、及び、前世

代トップシェアのハードで遊べたゲームソフトを今世代のハードでも遊べるようハード開発すること

を指す。PS2、GBA、はいずれも前世代のトップシェア機の後継機種である。PS2では PSのソフト

を、GBAでは GBのソフトをそれぞれプレイ可能である。また、SFCでは FCのソフトをプレイする

ことはできないが、名称だけは前世代から引き継いでいる。DSは名称がGBシリーズではないが、

GBA のソフトのプレイが可能なため、GBA の事実上の後継機種とみなされている。トップシェア機

の後継は、前世代のプラスイメージを引き継ぐことができるため、販売初期のトップシェア競争で有

利になると考えられている。日本のゲーム機シェア競争において、前世代のトップシェア機の後継

機ではないゲーム機が勝利した例は、PSおよびWiiのみである。

最後に、価格は、低価格なハードであるほどトップシェア獲得の可能性が高いことを指す。家庭

用ゲーム機には、手頃な販売価格が求められる。過去のトップシェア機の初期の販売価格はそれ

ぞれ、FC=14,800 円、SFC=25,000 円、PS=39,800 円、PS2=39,800 円、GB=12,800 円、

GBA=9,800 円、DS=15,000 円となっている。PS・PS2 の高価格が目立つが、両ハードは断続的

に値下げを実施し、同時期のライバル機種に比べて、価格面でも互角か優位に立っていた。過去

にも高性能を売りにする 4 万円から 5 万円を超える高額なハードも発売されたが、いずれも広く普

及するには至らず短命で終わっている。現在のゲーム機市場でも、PS3 の高価格に懸念が集まり、

SCEは発売前に値下げを余儀なくされた。

以上の三点が、ゲーム機のシェア競争を左右する要素である。上述から考えて、次のような法則

が定義できる。ゲーム機のシェア競争において、高性能は優位性に結びつかない。GB、PS、PS2、

DS といった代表的なトップシェア機の多くは、ほぼ同時期に発売されたライバル機種に比べ、性

能的に優れていたわけではなく、操作性やキラータイトル、 あるいは付加価値を売りにトップシェ

アを獲得した。このように、ユーザはハードの性能の良さよりも、発売されるソフトや、ゲーム機が持

つ付加価値、価格の高低によってハードを選ぶケースが多い。近年はスペックよりも操作性に力を

入れた任天堂Wiiの成功が、ブルー・オーシャン戦略として評価されている。

2-5 ブルー・オーシャン戦略

上述したブルー・オーシャン戦略とは、以下のようなものである。通常、事業が成功するためには

「低価格戦略」か「差別化(高付加価値)戦略」のいずれか一つを選択する必要がある。二つの戦

略を両立することは、概念上不可能となっている。低価格のモノは、コストの低さから高付加価値を

生み出すことができず、高付加価値のモノは価値の高さから高価格になる。しかし、ブルー・オー

シャン戦略では、低コストと顧客にとっての高付加価値は両立し得ると定義している。

ブルー・オーシャン戦略では、競争の激しい既存市場を「レッド・オーシャン(赤い海)」とし、競争

のない未開拓市場を「ブルー・オーシャン(青い海)」としている。ブルー・オーシャン戦略では、未

開拓市場のブルー・オーシャンを切り開くべきだと説いている。Wii はブルー・オーシャン戦略によ

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って「非顧客」を顧客化した典型的な事例である。従来ゲームで遊ばなかった幼児や老人にも満

足してもらえるゲームを発売することで、ブルー・オーシャン(新市場)を開拓した。

任天堂も(Wiiの前世代の)GC を発売した時は、SCEや米マイクロソフトとの激しい競争の中で、

レッド・オーシャンにおぼれそうになっていた。任天堂を含むどの企業も、ゲーム機の主要な顧客を

10 代後半であると考え、この層を満足させるために、画像処理の性能や機能面で競争してきた。

しかし、任天堂は Wii で方向転換をし、幼児や老人といった、これまでゲームをやってこなかった

世代向けのゲーム機を製造した。このブルー・オーシャン、未開拓かつ競争が行われていない新し

い市場で販売を開始したことが、現在Wiiが PS3に販売数で勝っていることの要因といえる。

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第 3章 iPhoneの特徴

前章では Wii の特徴について述べた。それに対応し、本章では iPhone の特徴を論述する。ま

ず、3-1 では iPhone の発売について、スティーブ・ジョブズの公表の様子を交えながら論述する。

続く 3-2 では、iPhone の概要を概観する。さらに、3-3 では iPhone の通信規格について論述す

る。

3-1 iPhoneの発売

Appleの最高責任者であるスティーブ・ジョブズは、2007年 1月、iPhone開発の計画を公表し

た。公表時、「Apple が電話を再発明する」という、スティーブ・ジョブズの宣言もあり、各メディアは

iPhone に注目していた。以下は、公表の様子を記す。公表の様子は、「マイコミジャーナル」の

「Macworld 2007たっぷり見せます、携帯電話を変える『iPhone』」に基づき引用する。資料(参考

サイト[1])

スティーブ・ジョブズは、Apple の歴史を紹介した上で、「今日、革命的な 3 つの製品を紹介す

る」と発表した。まず、「タッチコントロールが可能なワイドスクリーン搭載の iPod」である。当時、ワイ

ドスクリーン搭載の iPodの登場は度々噂になっており、会場は大盛り上がりであった。続いて、「革

命的なモバイルフォン」である。これまで数々の革命的な製品を生み出してきたAppleが携帯電話

を開発するということで、会場はさらに盛り上がりをみせる。最後に、「画期的なインターネット・コミュ

ニケータ」である。

上記した 3 つの製品の概要を聞いて Macworld 会場は騒然となったが、冷静に受け止めると、

いずれも、これまでに登場が噂されたことのあるタイプの製品である。そのため、Macworld 会場の

一部の人間は、革命的というほどではないと判断していた。しかし、スティーブ・ジョブズは「iPod、

携帯電話、インターネット・コミュニケータ」と何度も繰り返して説明をした。何度も繰り返し説明をし

た後、スティーブ・ジョブズは 3 つの製品のアイコンを横一列に並べてみせた。そして、スティーブ・

ジョブズは、「実はこの 3つの製品は 1つの製品、『iPhone』である」と発表した。これまで別個の製

品として噂になり、Macworld会場においても別々の製品であると思われていた 3つの製品が、実

は 1つの製品であったのである。その際、スティーブ・ジョブズが用いたキャッチコピーは「Appleが

電話を再発明」という表現である。

発表から半年、2007 年 6 月 29 日午後 6 時に、全米で iPhone が発売された。ニューヨークの

Apple Storeの前には 5日前から並ぶ人が現れ、発売直前には 600人以上の行列となる盛況で

あった。サンフランシスコの Apple Storeでも 400人以上が並び、フィラデルフィア8市長は雨の中、

iPhone を買うため前日から並んでいる姿を発見され、公務との優先順位を問われることとなった。

また、2007年 11月 9日にはイギリス、ドイツでの販売を開始、2007年 11月 29日にはフランスで

の販売を開始した。日本での販売開始は、2008年 7月 11日である。

8 Philadelphia:アメリカ合衆国ペンシルバニア州南東部にある都市。

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3-2 iPhoneの概要

iPhoneとは、2007年 6月 29日にAppleより発売されたスマートフォン9の一種である。iPhone

は、簡単に言ってしまえば、携帯電話と iPodを足したものである。iPhoneの特徴としては以下のよ

うなものがある。まず、iPhone は画面に触れて操作する「タッチスクリーン」を搭載した携帯電話で

ある。次に、音楽を聴ける iPod機能を搭載しており、インターネットやメールを使うことも可能である。

最後に、iTunes10を使ってパソコンとデータを同期可能という特徴がある。

iPhone は画面に触れて操作する「タッチスクリーン」を採用しているため、キーパッドを廃しタッ

チパネル主体のデザインをしている。iPhone の操作ボタンは液晶画面に表示され、液晶上のボタ

ンを指でタッチすることで、操作が可能となっている(図 2 参照)。液晶画面のメニューに表示される

ボタンには以下のものがある。Text、Calendar、Photos、Camera、YouTube、Stocks、Maps、

Weather、Clock、Calculator、Notes、Settings、以上 12 のボタンである。さらに、モードを切り

替える 4つのボタンとして Phone、Mail、Safari、iPodがある。(表 1参照)

iPhone を利用するにはアクティベーションの作業が必須となる。アクティベーションとは、電話機

を使えるように設定する作業であり、キャリアと通信回線契約を行い、その関連情報を電話機に設

定し、ユーザ(契約者)が電話機を使用できる状態にすることである。従来の携帯電話では、キャリ

アが店頭でアクティベーション作業を行っていたが、iPhoneは購入したユーザ自身がアクティベー

ション作業を行う必要がある。

アクティベーション作業には、自宅のパソコンにインストールされた iTunes を使用する。自分で

アクティベーション作業を行うというのは煩雑な作業に思えるが、iTunes の指示に通りに必要な項

目を入力していくだけですぐに完了する。すべての人に最適な方法とは言えないが、日常的にパ

ソコンを使い慣れている人にとっては簡単な作業である。

9 Smartphone:携帯電話・PHS と携帯情報端末(PDA)を融合させた携帯端末。通常の音声通話や携帯電話・

PHS単独で使用可能な通信機能だけでなく、本格的なネットワーク機能、PDAが得意とするスケジュール・個人情

報の管理など、多種多様な機能を持つ。 10 Apple社が開発及び配布している、メディアプレーヤー(動画および音楽の再生・管理ソフト)である。

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図 2 iPhoneの液晶画面

(出所:トリニティ株式会社「iPhoneに 4つのアプリケーションを追加(その 1)」)

表 1 iPhoneの機能

Text ショートメッセージの送信

Calendar 予定表・スケジュールの表示

Photos 写真の閲覧

Camera 写真の撮影

YouTube 動画の閲覧

Stocks 株価変動グラフの表示

Maps 地図の表示

Weather 天気・気温の表示

Clock 「世界時計」「アラーム」「ストップ

ウォッチ」「タイマー」の表示

Calculator 電卓機能の起動

Notes メモ書き機能の起動

Settings 各種機能の設定

Phone 電話機能の起動

Mail メール機能の起動

Safari インターネット機能の起動

iPod 音楽機能の起動

(出所:毎日コミュニケーションズ『iPhone Fan Book』)

3-3 iPhoneの通信規格

iPhoneの通信規格には、GSM方式とEDGE方式が採用されている。GSM方式は、世界で一

般的に利用されている携帯電話の方式で、日本と韓国を除く全世界で使用されている。世界の携

帯電話市場の 82%は GSM 方式であり、212 ヵ国で約 20 億人が利用している。EDGE 方式は、

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GSM 方式の携帯電話網を使ったデータ伝送技術の一つである。最大で 384kbps のデータ転送

が可能である。すでに広く普及している GSM 方式をベースとした方式であるため、既存の通信設

備を有効利用することができる。

iPhoneの仕様の発表当時、比較的高速な 3Gではなく、速度的に劣る EDGE方式を採用した

ことに大きく落胆した人間も多かった。しかし、3GとEDGE方式のサービスエリアを比較してみると、

EDGE方式がほとんどのエリアをカバーしているのに対して、3Gはごく一部の都市しかカバーして

いなかった。ビジネス用途の端末であれば 3G で問題ないが、一般のユーザが使用する電話端末

としては、この狭いカバーレンジでは問題があったのである。iPhone はネットワークを使用すること

で魅力が増大するという、ネットワーク端末としての側面を持つため、ネットワークの繋がらない状況

では魅力が半減すると言っても過言ではない。このように、iPhone はカバーレンジの都合上、3G

ではなく、GSM方式と EDGE方式を採用したのである。

近年、日本で iPhone の販売が開始されなかった原因は、iPhone の通信規格が GSM 方式と

EDGE方式であったためである。iPhoneに採用されている GSM方式と EDGE方式は、現状で

は日本で全く使用できない。日本で利用できる主な通信規格は、すでに 3G へと移行しており、今

後 GSM 方式や EDGE 方式に対応できるインフラを整備する予定もない。結果、日本で iPhone

の販売が開始されるには 3G方式に対応した iPhoneの開発を待つ必要があった。iTunes Store

が権利関係の問題で、他国と比較して日本でのスタートが大幅に遅れたように、独自のインフラを

持ち独特のビジネスモデルが確立している日本の携帯電話市場には、iPhone 発売に向けてのハ

ードルが高く、発売が遅れることが予想されていた。

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第 4章 Wii と iPhoneのユーザインタフェース

第 4章では、Wii と iPhoneそれぞれのユーザインタフェースに着目し、どのような点から 2点が

優れていたのかを考慮する。4-1ではWiiと iPhoneの共通点について論述し、優れた要素を検討

する。4-2 ではユーザインタフェースの役割を論じ、どのようなユーザインタフェースが顧客から必

要とされているのかを考察する。

4-1 Wii と iPhoneの共通点

Wii と iPhoneの共通点としては、「新しいユーザインタフェース」を採用している点が挙げられる。

「新しいユーザインタフェース」とは、Wiiや iPhoneが、従来にない独創的な特徴を持ったリモコン

や操作性を有していることを指す。ユーザインタフェースは、ユーザと機器とをつなぐ窓口のような

ものである。優れたユーザインタフェースを持つ機器はユーザに親しまれやすく、性能を 100%発

揮し、顧客の満足度と購買意欲を高める効果がある。

Wii の場合、「新しいユーザインタフェース」に相当するのは、独特の形状をした Wii リモコンで

ある。Wii リモコンは、テレビリモコンに近い形状にすることで、より一層家庭に馴染むよう工夫され

ている。さらに 3 軸加速度センサによって、「振る・指す・回す」といった腕の動きを検知するユーザ

インタフェースを実現している。3 軸加速度センサはこれまで、パソコンやカメラの落下を感知する

地味な機能に利用されていた。ところが Wii では、テニスラケットやゴルフクラブのスイングなど、手

の動きをそのままゲームに伝える直感的なインタフェースとして実用化され、注目を集めた。

一方、iPhone で「新しいユーザインタフェース」に該当するのは、静電容量式のマルチタッチパ

ネルである。「指で撫でる・指で押す」といった、直感的に理解しやすいユーザインタフェースにな

っている。実際に試すと、説明書を読まなくとも指で軽く触ったり撫でるだけで、写真表示やウェブ

閲覧、音楽再生などの機能が直感的に使用できる。高機能のスマートフォンであるにも関わらず、

らくらくホン11のように使い勝手がよい。この快適な使い心地には、モバイル機器ではおそらく初の

採用となる静電容量式のタッチパネルが貢献している。静電容量式の長所は、2 本の指で同時に

タッチする技術が使える点にある。写真やウェブを拡大縮小するときは、タッチパネル上で 2 本の

指を広げたり縮めたりするだけでよい。

ユーザの心をとらえる「ヒット商品」の傾向は、ここ数年で劇的に変わった。2000 年以降、「新・三

種の神器」と呼ばれた「デジタル・カメラ、DVDレコーダー、薄型テレビ」といったデジタル家電群の

登場で、日本の機器メーカーはその業界を席捲した。これらの製品はいずれも、機能増加や個別

機能の強化をすることが直接、競争優位につながる。たとえ価格が下落しても、新機能を加えた新

製品を絶え間なく投入することで、価格を一定水準に維持できた。しかし、2004 年頃から,ヒット商

品の傾向が大きく変化する。多機能・高性能といった仕様の優劣ではなく、ユーザインタフェース

の新しさや使い勝手の良さ、質感といった、総合的なユーザ体験で勝負する機器の台頭である。

11 携帯初心者および 50代以上の高齢者層をターゲットに見据えた携帯電話端末シリーズである。万人に使いや

すいようにと人間工学に基づき設計されたデザイン(ユニバーサルデザイン)・装備・機能が特徴である。

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その機器を誰かが使っている様子を見て、思わず自分も使いたくなってしまう。その様な「思わず

好きになる製品」がヒットし、これまでの高機能品を駆逐し始めた。

「思わず好きになる製品」で先行しているメーカーの代表が、Appleと任天堂である。Appleが発

売した「iPod」は、2004年以降世界的に大ヒットした。そして、2007年には、マルチタッチ入力によ

る直感的なユーザインタフェースを持つ「iPhone」を発売し、他の携帯電話機メーカーに衝撃を与

えた。2007年 9月には iPhoneのコンセプトを引き継ぐ音楽プレーヤー「iPod touch」を発売し、ラ

イバルを引き離しにかかる。任天堂は,2005 年にタッチパネルを採用した携帯型ゲーム機「ニンテ

ンドーDS」を、2006 年末には 3 軸加速度センサを内蔵したリモコン形状のインタフェースを備える

据置型ゲーム機「Wii」を発売し、いずれも大ヒットさせた。高い動画処理能力を売りにする SCE の

ゲーム機「PSP」および「PS3」が、いずれも任天堂の製品に対して苦戦を強いられているのは象徴

的である。Apple 社や任天堂が開発した機器は、ビジネスモデルの点でも既存のデジタル機器と

は大きく異なる。必要と判断した機能の実現にはコストを惜しまない一方、重要でないと判断した機

能を大胆に削ったり、性能が低い汎用部品を多用したりすることで、トータルの部材コストや開発コ

ストを抑制する。この結果、ハードウェアの売り上げのみで大きな利益を上げられる体制を作り上げ

た。

4-2 ユーザインタフェースの役割

ユーザインタフェースは、役割によってそれぞれ違った形状・特色を保有している。ユーザインタ

フェースには多種多様な形状が存在し、テレビのリモコン、パソコンのマウスなど、それぞれに対応

した“形”が存在する。また、リモコンにはリモコンの使い方、マウスにはマウスの使い方が存在し、

ユーザインタフェースの使い方はそれぞれの機器によって異なっている。したがって、新しい機器

や機能が登場する度に、ユーザは新しい使い方を覚えなければならない。

高度な情報処理をする場合、ユーザインタフェースの果たす役割は極めて重要である。情報機

器に対する知識がなくとも、情報機器が優れたユーザインタフェースを保有していれば、ユーザは

必要な機能を使用できる。情報機器から必要な機能を引き出すことができるかは、ほとんどその情

報機器が持つユーザインタフェースに依存しているといって良い。ユーザインタフェースの役割とし

て求められる事柄は、以下の 2点である。

第 1 に、使いやすいことである。使いやすいとは、ユーザに理解されやすい・ユーザが勘違いす

ることなく使える、という意味を指す。使いやすさを追求する手段として、もっともシンプルで効果的

なのは単機能化である。「一つの機械に一つの機能」を実践すれば、多くの場合、使いやすさは向

上する。第 2 に、汎用性が高いことである。汎用性とは、どのような事態にも対応できる・それ一つ

で何でもできることを指す。ユーザインタフェースの汎用性が高ければ、ユーザは一つの機器で多

彩な操作が可能となる。以上、2 点を満たすものがユーザインタフェースとしてベストであるが、この

2 点は相反する要素である。使いやすさを求めて「単機能化」を施した場合、何にでも対応できる

「汎用性」が失われてしまう。一方、どのような事態にも対応できるよう汎用性を高めれば、操作の複

雑化により、使いやすさは減少する。したがって、この 2 点を満たすユーザインタフェースを開発す

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ることは困難である。

しかし、この 2 点を満たすユーザインタフェースの候補として Wii と iPhone が挙げられる。Wii

は、コントローラに汎用性を持たせて、一つのコントローラで何種類ものスポーツの体感ができるよ

うに工夫されている。また、コントローラを普段から使い慣れているテレビリモコン型にすることにより、

使いやすさを実現している。iPhoneは、静電容量式のマルチタッチパネルにより、説明書を読まな

くとも指で軽く触ったり撫でるだけで、機能が直感的に使用できる使いやすさを保有している。そし

て、iPhone は、スマートフォンとして、多様な事柄に対応できる汎用性を兼ね備えている。このよう

に、Wiiと iPhone は、「新しいユーザインタフェース」の採用により、使いやすさと汎用性の共存を

可能とした。

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第 5章 おわりに

ユーザインタフェースの革新によって、ユーザは新しい操作感を体験すると共に、使いやすさと

汎用性を兼ね備えたユーザインタフェースから、デジタル機器を十分に活用できるようになった。ま

た、ブルー・オーシャン戦略に基づき、新たな顧客層を開拓することも可能とした。高度な情報処

理をする場合、ユーザインタフェースの果たす役割は極めて大きい。情報機器の機能を十分に活

用できるかは、ほとんどその情報機器が持つユーザインタフェースに依存しているといっても過言

ではない。優れたユーザインタフェースは、使いやすさと汎用性の両立を可能とし、新しい市場を

開拓する。よって、優れたユーザインタフェースの開発は今後も重要視されていくと推測する。

本論で取り上げたように、新しいユーザインタフェースの成功事例としてWii と iPhoneが挙げら

れる。Wiiはリモコン型コントローラによって、iPhoneは静電容量式のマルチタッチパネルによって、

それぞれ「新しいユーザインタフェース」の採用により、使いやすさと汎用性の共存を可能とした。

次世代のユーザインタフェースの開発は、この 2点を基として行われていくと推察する。ユーザイン

タフェースは、マルチタッチ・センサや3軸加速度センサなど、新しい技術の登場と共に革新されて

きた。しかし、新しいユーザインタフェースの開発には、過去の技術を有効に利用していくという特

徴がある。次世代のユーザインタフェースにも Wii と iPhone の良い部分を開発過程に取り入れる

可能性は十分にある。よって、3軸加速度センサとマルチタッチパネルは、今後のユーザインタフェ

ース開発に広く採用されると考察する。

ブルー・オーシャン戦略のひとつとして、今後も革新的ユーザインタフェースが販売戦略に採用

されるであろうと推測する。また、ブルー・オーシャン戦略において、高付加価値をつける役割とし

て、革新的ユーザインタフェースは適任といえる。高付加価値を創出するには、業界に存在しない

未知の要素を採用する必要がある。革新的ユーザインタフェースの操作性は、様々な機器への応

用が容易であり、未知の要素を満たす可能性が高いと推測される。

最後に、本論文で扱えなかった内容として、次世代ユーザインタフェース候補のパーセプチュア

ルユーザインタフェース12、物理的な接触を可能としたタンジブルユーザインタフェース13が挙げら

れる。上記の 2 つは研究段階であり、商品開発の段階に至るまでには、相応の時間が必要になる

と推測される。また、ユーザインタフェースの研究自体が、依然として発展段階であり、これからの

研究成果に注目が集まる。

最後に本稿を起稿するにあたり、多くの助言をいただいた小笹仁氏、兼井徹也氏、伊藤彰徳氏

の先輩方ならびに、安宅正憲氏、岩渕亮柄氏、柴田勇紀氏、松井俊輔氏、吉川昇吾氏、垣下晃

毅氏、柴田勇紀氏、鳥居賢治氏、伊藤恭子氏、永井雄太氏、佐藤茉利生氏、近藤紘充氏(以上、

児島ゼミナール)に心より感謝の言葉を述べる。

12 Perceptual User Interface:入力方法に身振り手振りや音声といった、人間同士のコミュニケーションに用いら

れる意思伝達手段を用いるユーザインタフェースである。 13 Tangible user interface:既存のコンピュータの概念を一新し、形のない情報を直接触れることができる(タンジ

ブル)ようにした、より実体感のあるインタフェースである。

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参考資料

■参考文献

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社,2005年 6月 21日

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URLは 2009年 1月 20日 現在

最終提出日:2009年 1月 20日