4
国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 熾烈な国際競争に " ⽇本 " が打ち勝つ情報活⽤へ。Linux ベース の学術リポジトリ システム「T2R2」の安定運⽤をはかり、他⼤学 へも広く開放していくために、 Windows Azure を活⽤したハイブ リッド クラウド環境を構築 国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 ( 以下、東京⼯業⼤学) では、世界的に⼤学間の競争が激しくなって いる今、外部に向けたタイムリーかつ正確な情報発信が⼤変重要になっていることを受けて、2011 年に研究者検索システム「東京⼯業⼤学 STAR Search ( 以下、STAR Search) 」を公開しました。そ して 2012 年、 STAR Search の柱の 1 つである学術リポジトリ システム「東京⼯業⼤学リサーチリ ポジトリ ( 以下、T2R2) 」のクラウド化に向けた取り組みに着⼿しました。このプロジェクトにおい て、 Linux ベースで開発された T2R2 の移⾏先候補として選ばれたのが、マイクロソフトのパブリッ クラウド サービス、Windows Azure でした。 導⼊の背景とねらい 国際的な認知を⾼めるために⽋かせない、研究成果などの情報発信を、 効率よく⽀える基盤の実現へ 東京⼯業⼤学では、国内における少⼦化問題と、グローバルで進⾏している留学⽣の獲得競争な ど、⼤学を取り巻く環境が⼤きく変化する中にあって、 " 世界最⾼の理⼯系総合⼤学 " を⽬指し、 研究と教育の両⾯から、競争⼒強化のための取り組みを続けています。 その⼀環として、学外に向けた情報発信を強化するため、2011 年、「Tokyo Tech STAR (Science and Technology Academic Repository) 構想」に基づき、これまで学内に散在していた情報を統 合的に検索し、互いに関連づけて表⽰することによって、研究および教育活動における情報収集 や成果の発信に貢献することを⽬的とした STAR Search が構築されました。 東京⼯業⼤学 グローバルリーダー教育院 特任教授 ⼤学情報活⽤センター センター⻑ 名誉教授 ( 取材当時 ) ⼯学博⼠ 古井 貞煕 ⽒は、STAR Search の重要性について、次のように説明します。 「世界的に⼤学間の競争が激しくなっている今、外に向けた情報発信を、タイムリーかつ正確に⾏ うことが⼤変重要になっています。⽇本の研究者においては、往々にして、『優れた研究さえ⾏えば、 誰かが⽬にとめてくれる』という謙虚な姿勢もあり、研究成果などの積極的な発信を不得⼿として きた側⾯があります。しかし、研究成果を国内外に認知してもらうために積極的な情報発信が求 められている今、⼤学側で情報発信のためのシステムを整えることが重要でした。」 システムを整えると⼀⼝に⾔っても、学内に存在する教育、研究に関するデータは膨⼤です。 散在するデータを体系的に整理し、分かりやすく表⽰するための努⼒が積み重ねられてきたと、 古井 ⽒は続けます。 「最近になって『ビックデータ』という⾔葉を よく⽿にしますが、本学としても以前から⼤ 規模なデータを体系化して使いやすくするこ との重要性を認識し、さまざまな取り組みを 続けてきました。 たとえば、2004 年度から 5 年間取り組ん " ⼤規模知識資源の体系化と活⽤基盤構 " Tokyo Tech's 21st Century Center of Excellence (COE) Program) もその 1 つです。 この時に得た知⾒を基に、横⽥ 教授を中⼼として 東京⼯業⼤学 ソリューション概要 ○プロファイル 国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 (http://www.titech. ac.jp/) 1881 年に創⽴された、130 年の歴史を 持つ国内最⼤の理⼯系総合⼤学です。時代の最 先端を切り拓くユニークな研究活動と、密度の 濃い専⾨教育を継続的に⾏うことで、数多くの優 れた "⼈財 " を世に送り出しています。⽇本にお けるインターネット接続の発祥の地の 1 つとして も知られています。 ○ソフトウェアとサービス Windows Azure- 仮想マシン - 仮想ネットワーク ○パートナー 株式会社ピコラボ 富⼠ソフト株式会社 ○メリット Windows Azure 上に直接、Linux を仮想マシ ンとしてプロビジョニング プロフィール情報の⼊ったサーバーはオンプレ ミスとして学内に残し、それ以外のデータを Windows Azure 上 に 移 ⾏。Windows Azure 仮想ネットワークを活⽤した VPN 接続で、セ キュアにデータを連携 Windows Azure の新しい包括ライセンス サー ビスを提供 ○ユーザー コメント 「⽇本の⼤学が教育、研究に関する情報発信を強 化していくためには、リポジトリなどシステムの 整備が⽋かせません。今回、そのシステム構築 と拡張に関する障壁を下げることに、Windows Azure が役に⽴つことが実感できました。今後 本学で得た成果は⽇本中の⼤学に活⽤していた だきたいと思っています。その上で、たとえば論 ⽂を英訳する仕組みをクラウド化するなど、⼤学 間で協調し合って⽇本全体の仕組み作りを早め ていくことができれば理想的だと思います。」 国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 グローバルリーダー教育院 特任教授 ⼤学情報活⽤センター センター⻑ 名誉教授 ⼯学博⼠ 古井 貞煕 Gold Application Lifecycle Management Gold Midmarket Solution Provider Gold Volume Licensing

Linux Windows Azure プロファイルdownload.microsoft.com/download/4/3/9/4393FE16-189E-4B08...Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横

  • Upload
    others

  • View
    3

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: Linux Windows Azure プロファイルdownload.microsoft.com/download/4/3/9/4393FE16-189E-4B08...Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横

国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学

熾烈な国際競争に "⽇本" が打ち勝つ情報活⽤へ。Linux ベースの学術リポジトリ システム「T2R2」の安定運⽤をはかり、他⼤学へも広く開放していくために、Windows Azure を活⽤したハイブリッド クラウド環境を構築

国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 (以下、東京⼯業⼤学) では、世界的に⼤学間の競争が激しくなっている今、外部に向けたタイムリーかつ正確な情報発信が⼤変重要になっていることを受けて、2011 年に研究者検索システム「東京⼯業⼤学STAR Search (以下、STAR Search) 」を公開しました。そして 2012 年、 STAR Search の柱の 1 つである学術リポジトリ システム「東京⼯業⼤学リサーチリポジトリ (以下、T2R2)」のクラウド化に向けた取り組みに着⼿しました。このプロジェクトにおいて、 Linux ベースで開発された T2R2 の移⾏先候補として選ばれたのが、マイクロソフトのパブリック クラウド サービス、Windows Azure でした。

導⼊の背景とねらい国際的な認知を⾼めるために⽋かせない、研究成果などの情報発信を、効率よく⽀える基盤の実現へ

東京⼯業⼤学では、国内における少⼦化問題と、グローバルで進⾏している留学⽣の獲得競争など、⼤学を取り巻く環境が⼤きく変化する中にあって、 "世界最⾼の理⼯系総合⼤学 " を⽬指し、研究と教育の両⾯から、競争⼒強化のための取り組みを続けています。

その⼀環として、学外に向けた情報発信を強化するため、2011 年、「Tokyo Tech STAR (Science and Technology Academic Repository) 構想」に基づき、これまで学内に散在していた情報を統合的に検索し、互いに関連づけて表⽰することによって、研究および教育活動における情報収集や成果の発信に貢献することを⽬的とした STAR Search が構築されました。

東京⼯業⼤学 グローバルリーダー教育院 特任教授 ⼤学情報活⽤センター センター⻑ 名誉教授 (取材当時 ) ⼯学博⼠ 古井 貞煕 ⽒は、STAR Search の重要性について、次のように説明します。「世界的に⼤学間の競争が激しくなっている今、外に向けた情報発信を、タイムリーかつ正確に⾏うことが⼤変重要になっています。⽇本の研究者においては、往々にして、『優れた研究さえ⾏えば、誰かが⽬にとめてくれる』という謙虚な姿勢もあり、研究成果などの積極的な発信を不得⼿としてきた側⾯があります。しかし、研究成果を国内外に認知してもらうために積極的な情報発信が求められている今、⼤学側で情報発信のためのシステムを整えることが重要でした。」

システムを整えると⼀⼝に⾔っても、学内に存在する教育、研究に関するデータは膨⼤です。散在するデータを体系的に整理し、分かりやすく表⽰するための努⼒が積み重ねられてきたと、古井 ⽒は続けます。「最近になって『ビックデータ』という⾔葉をよく⽿にしますが、本学としても以前から⼤規模なデータを体系化して使いやすくすることの重要性を認識し、さまざまな取り組みを続けてきました。たとえば、2004 年度から 5 年間取り組んだ "⼤規模知識資源の体系化と活⽤基盤構築 "(Tokyo Tech's 21st Century Center of Excellence (COE) Program) もその 1 つです。この時に得た知⾒を基に、横⽥ 教授を中⼼として

東京⼯業⼤学

ソリューション概要○プロファイル国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学 (http://www.titech.ac.jp/) は 1881 年に創⽴された、130 年の歴史を持つ国内最⼤の理⼯系総合⼤学です。時代の最先端を切り拓くユニークな研究活動と、密度の濃い専⾨教育を継続的に⾏うことで、数多くの優れた "⼈財 " を世に送り出しています。⽇本におけるインターネット接続の発祥の地の 1 つとしても知られています。

○ソフトウェアとサービス・ Windows Azure™ - 仮想マシン - 仮想ネットワーク

○パートナー株式会社ピコラボ富⼠ソフト株式会社

○メリット・ Windows Azure 上に直接、Linux を仮想マシンとしてプロビジョニング

・ プロフィール情報の⼊ったサーバーはオンプレミスとして学内に残し、それ以外のデータを Windows Azure 上に移⾏。Windows Azure 仮想ネットワークを活⽤した VPN 接続で、セキュアにデータを連携

・ Windows Azure の新しい包括ライセンス サービスを提供

○ユーザーコメント「⽇本の⼤学が教育、研究に関する情報発信を強化していくためには、リポジトリなどシステムの整備が⽋かせません。今回、そのシステム構築と拡張に関する障壁を下げることに、Windows Azure が役に⽴つことが実感できました。今後本学で得た成果は⽇本中の⼤学に活⽤していただきたいと思っています。その上で、たとえば論⽂を英訳する仕組みをクラウド化するなど、⼤学間で協調し合って⽇本全体の仕組み作りを早めていくことができれば理想的だと思います。」

国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学グローバルリーダー教育院 特任教授⼤学情報活⽤センター センター⻑名誉教授 ⼯学博⼠古井 貞煕 ⽒

Gold Application Lifecycle ManagementGold Midmarket Solution ProviderGold Volume Licensing

Page 2: Linux Windows Azure プロファイルdownload.microsoft.com/download/4/3/9/4393FE16-189E-4B08...Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横

東京⼯業⼤学

STAR Search の構築が進められてきました。」

そして、この STAR Search の重要な柱の 1 つとして存在しているのが、東京⼯業⼤学内の学術研究論⽂などの蓄積と発信を⾏うため、 2005 年から開発が始められた「T2R2」です。T2R2 は、書誌情報や公開特許情報などが登録された学術リポジトリ システムであり、学外からの閲覧件数は、⽉間の PV (Page View) で約 16 万件、学内からは各種情報の登録や活⽤のために⽉間約 17 万件のアクセスが寄せられています。

東京⼯業⼤学では T2R2 の可能性をさらに広げるために、2012 年 9 ⽉、1 つの新しい試みを⾏いました。それが、「T2R2 のクラウド化」です。

東京⼯業⼤学 ⼤学院 情報理⼯学研究科 計算⼯学専攻 教授 (取材当時 ) ⼯学博⼠ 横⽥ 治夫 ⽒は、次のように説明します。「T2R2 を安定運⽤するための⽅法を以前から検討していました。⼤学では毎年 1 回、設備点検のために停電する期間がありますが、停電中もサービスを続けるため、特別に電源を⽤意して対応しています。システムをクラウド化すれば、この⼿間も減らせるでしょう。さらに東⽇本⼤震災とその後の電⼒不⾜を経験した今、システムの安定運⽤の取り組みをさらに強化する必要も感じていました。また、サーバーの陳腐化も課題でした。これまでにも、システムのパフォーマンスを上げるために、よりハイスペックなサーバーへと切り替えたことがありましたが、クラウド サービスを活⽤すれば、そうした費⽤負担を抑えられるという期待がありました。これらの理由からパブリック クラウドの利⽤を検討し始めました。」

さらに、クラウド化の検討に⾄ったもう 1 つの重要な動機は「情報発信のためにリポジトリなどのシステムを整備することは、⽇本の⼤学全体に共通の課題であり、その課題解決のために、T2R2 を他⼤学にも広く開放することを視野に⼊れていることにある」と、古井 ⽒は⾔います。「⼤学からの情報発信を強化することは、本学だけの問題ではなく、国からも求められている課題です。しかし、システムを 1 から整備するというのは、⼤変な負担です。そのため、本学が率先して実験を⾏い、T2R2 を全国の⼤学に広く開放することで、⽇本全体に貢献することが

できれば良いと思っています。そして、クラウド サービスの活⽤というのは、システム構築、運⽤にかかるハードルを下げ、より⼤きな可能性を実現するために有効ではないかと考え、今回の試みを⾏ったのです。」

そして、東京⼯業⼤学が T2R2 のクラウド化を推進するためにパートナーとして選択したのが、マイクロソフトのパブリック クラウド サービスである Windows Azure でした。

システムの概要Windows Azure 上の仮想マシンにLinux 環境を移⾏。オンプレミスのサーバーとVPN でセキュアに接続

東京⼯業⼤学の T2R2 は、Linux 上に構築されたシステムです。Windows Azure は、以前は PaaS (Platform as a Service) のサービスだけを提供していました。しかし、古井 ⽒は今回の試⾏での Windows Azure の採⽤は「すぐに決まった」と笑顔を⾒せます。その理由が、新しくリリースされた機能の 1 つである「Windows Azure 仮想マシン」にあります。Windows Azure 上に直接仮想マシンをプロビジョニングできるこの機能を使い、Windows Azure を IaaS (Infrastructure as a Service) として活⽤し、Linux を仮想マシンとして稼働しています。

古井 ⽒は⾔います。「Windows Azure を IaaS として使って Linux 環境を構築し、T2R2 の書誌情報なども簡単に移⾏できるという話でしたので、『それならぜひ試してみたい』ということになりました。」

そして、今回の試みのもう 1 つの特⻑がオンプレミスのサーバーと、Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横⽥ ⽒は次のように説明します。「T2R2 に登録されたデータは、研究資⾦獲得のためのプロポーザル作成などに簡単に利⽤できるようになっています。近年は、国の定常的研究費が縮⼩傾向にあり、研究資⾦を獲得するために、教員も事務職員も、相当量の書類を作成して提出しています。その作業を少しでも省⼒化で

国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学グローバルリーダー教育院 特任教授⼤学情報活⽤センター センター⻑名誉教授 ⼯学博⼠古井 貞煕 ⽒※所属・役職は取材当時のものです。

国⽴⼤学法⼈ 東京⼯業⼤学⼤学院 情報理⼯学研究科計算⼯学専攻教授 ⼯学博⼠横⽥ 治夫 ⽒

株式会社ピコラボ取締役知識情報処理事業部⻑博⼠ (⼯学 )鈴⽊ 泰⼭ ⽒

富⼠ソフト株式会社ソリューション事業本部MS部第2技術グループ 課⻑三塚 正⽂ ⽒

Page 3: Linux Windows Azure プロファイルdownload.microsoft.com/download/4/3/9/4393FE16-189E-4B08...Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横

T2R2

( )

Windows Azure

VPN

仮想ネットワーク プロジェクト概要図

東京⼯業⼤学

きるように、提案書に必要な資料などを T2R2 から容易に引き出せるように⼯夫しました。また、研究者たちのプロフィール情報も、履歴書のフォームに⾃動で書き出せるように、詳細に登録されています。しかし、このプロフィール情報などは、慎重に取り扱う必要があります。そこで今回は、⼀部のデータのみを Windows Azure に移し、それ以外の特に研究者のプロフィールに関わるデータはオンプレミスのままにして、VPN で安全に接続してデータ連携を⾏うようにしています。」

⼀部のデータのみをクラウド上に移⾏させて、オンプレミス環境と VPN で安全に連携させたこのハイブリッド環境は、「Windows Azure 仮想ネットワーク」という新機能によって実現しています。システム構築を担当した株式会社ピコラボ 取締役 知識情報処理事業部⻑ 鈴⽊ 泰⼭ ⽒は、次のように説明します。「個⼈情報の取り扱いは重要な課題であり、学内にサーバーを置かなければならないケースが多くあります。しかし、学内にすべてのサーバーを置いていると、停電や災害時に安定したシステム稼働が難しいことは明⽩です。Windows Azure 仮想ネットワークを活⽤してクラウド上に移すデータと、オンプレミスに残すデータを切り分けて運⽤することで、個⼈情報の取り扱いを損ねることなく、クラウド サービスを利⽤することができます。このような柔軟な運⽤ができることは、⼤きな魅⼒です。」

Windows Azure 採⽤の効果驚くほど簡単に Linux 環境を構築。プロジェクトはスムーズに進⾏

古井 ⽒と横⽥ ⽒は、Windows Azure について、「本学のニーズに対して、⼗分に対応できる機能を備えていると認識している」と声を揃えます。「ピコラボ社には、T2R2 の構築時から協⼒いただいています。そのピコラボ社からいただく報告からも、Windows Azure は⼗分に使えるという認識を持っています。今後、学内のコンセンサスを固めるディスカッションを進めていく上でも、議論の前提となる重要な結果が得られたと思います。」(横⽥ ⽒ )

鈴⽊ ⽒は⾔います。

「Windows Azure 上に Linux 環境を構築するということについて、最初は不安もありました。しかし、実際に構築してみると、驚くほどあっさりと Linux を動かすことができました。仮想ネットワークという初めての機能を使いましたので、⼿探りで作業する部分も多かったのですが、マイクロソフトのサポートも受けながら、スムーズに進みました。」

Windows Azureの機能を利⽤した Linux + VPN という、初めて尽くしとなった今回のシステム構築がスタートしたのが、2012 年 9 ⽉のこと。約 3 か⽉後の 12 ⽉には、最初に予定していたテスト環境が構築できました。鈴⽊ ⽒は次のように⾔います。「今回のプロジェクトでは、⾮常に細かく構成を組み替えながらテストを続けています。東京⼯業⼤学は、⽇本におけるインターネット発祥の地の 1 つです。そのため、⼀般的な企業に⽐べれば "オープン " なネットワーク環境になっています。しかも、全学で管理している領域と、組織ごとに管理している領域が混在しています。この複雑なネットワーク環境の中で、Windows Azure のテストを繰り返すことで、それぞれの状況に対応した "理想的なソリューション " を増やしていけると思います。」

東京⼯業⼤学の複雑なネットワーク環境は、⽇本の⼤学が抱えているネットワーク環境が凝縮されたような空間だと⾔えると鈴⽊ ⽒は続けます。「今ここで実験していることは、全国の⼤学でも、そのまま活⽤できるはずです。東京⼯業⼤学以上に複雑なネットワーク構成は、他の⼤学にはないでしょう。この環境下で、本当に細かく設定を分けてテストを繰り返していますので、他⼤学から Windows Azure 仮想ネットワークを試したいとお声がけいただいた場合にも、すぐに対応できると確信しています。」(鈴⽊ ⽒ )古井 ⽒も「この実験結果を、他⼤学にも公開する予定」であると話します。「STAR 構想全体としても、将来的にはクラウド化が進んでいくのが、⾃然な流れなのだろうと感じています。しかし、そこに⾄るまでにはきちんとしたステップを踏まなければなりません。そのためにも、

Page 4: Linux Windows Azure プロファイルdownload.microsoft.com/download/4/3/9/4393FE16-189E-4B08...Windows Azure 上に構築した Linux 環境を VPN (Virtual Private Network) で接続していることにあります。横

導⼊についてのお問い合わせ本ケース スタディは、インターネット上でも参照できます。http://www.microsoft.com/ja-jp/casestudies/本ケース スタディに記載された情報は制作当時 (2013 年 4 ⽉ ) のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。本ケース スタディは情報提供のみを⽬的としています。Microsoft は、明⽰的または暗⽰的を問わず、本書にいかなる保証も与えるものではありません。製品に関するお問い合わせは次のインフォメーションをご利⽤ください。■インターネット ホームページ http://www.microsoft.com/ja-jp/■マイクロソフト カスタマー インフォメーションセンター 0120-41-6755(9:00 〜 17:30 ⼟⽇祝⽇、弊社指定休業⽇を除く )※電話番号のおかけ間違いにご注意ください。*Microsoft、Windows、Windows Azureは、⽶国 Microsoft Corporation および、またはその関連会社の商標です。*その他記載されている、会社名、製品名、ロゴ等は、各社の登録商標または商標です。*製品の仕様は、予告なく変更することがあります。予めご了承ください。

〒108-0075 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー

しっかりと検証を重ねていきたいと思います。今回の取り組みをどう評価していくかは、まだ明確に定義できていませんが、通信スピードの問題から、システム拡張性の問題まで、さまざまなファクターを整理した上で評価を⾏う予定です。こうした検証には、時間と⼿間がかかります。各⼤学がバラバラに⾏っていては負担が⼤き過ぎますので、今後本学で得た成果を⽇本中の⼤学で活⽤していただければと思っています。」

今後の展望学内のよりスムーズな情報活⽤と⽇本の⼤学全体の認知向上を助ける仕組みの実現に期待

T2R2 のクラウド化について「まだ学内の議論は終わっていない」と前置きしながら、古井 ⽒と横⽥ ⽒は、今後に向けた⼿応えを実感していると話します。「⼤学の中で、情報をいかに活⽤していくかということが、とても重要になっています。外部への発信と同時に、内部の研究推進にもつながるような IT インフラを、柔軟に構築、運⽤できることが望まれます。教育、研究に活⽤するインフラには多様性が⽋かせないのですが、今回 Windows Azure が Windows はもちろん Linux 環境に対応できることも分かりました。これは重要なポイントだと思います。」(横⽥ ⽒ )

また、今回の取り組みと並⾏して、 Windows Azure 導⼊に適した新しいライセンス サービスの整備も、マイクロソフト認定の Large Account Reseller (LAR) としてボリューム ライセンスの提供を⾏っている富⼠ソフト株式会社によって進められています。新しいライセンス サービスでは、 Windows Azure を年間の包括契約で提供します。同社 ソリューション事業本部 MS部 第2技術グループ 課⻑ 三塚 正⽂

東京⼯業⼤学

⽒は、次のように説明します。「Windows Azure は、PaaS としての魅⼒に加えて IaaS のサービスまで整ったことで、利⽤環境を選ぶことなく、幅広く活⽤できるクラウド サービスになりました。この Windows Azure を⼤学でも⽀障なくご利⽤いただくために、年間のアクセス想定などの試算を基に包括契約が可能なサービス化に取り組んでいます。東京⼯業⼤学様や各⼤学の負担を軽減し、適正な価格で Windows Azure を活⽤いただけるようにしていきたいと思います。」

最後に、古井 ⽒は次のように締めくくります。「優秀な学⽣の獲得競争は、世界的に熾烈になってきています。⽇本の⼤学が教育、研究に関する情報発信を強化するためには、リポジトリなどシステムの整備が⽋かせません。今回、そのシステム構築と拡張に関する障壁を下げることに、Windows Azure が役に⽴つことが実感できました。今後はクラウド活⽤の対象を広げて、プラットフォームやストレージを共有するだけではなく、たとえば、⽇本語の論⽂を英訳するサービスのクラウド化なども必要になるでしょう。各⼤学で、バラバラに論⽂を英訳していたのでは、リソースがかかり過ぎますからね。ICT の進化によって可能性が⼤きく広がっている中にあって、⼤学間で協⼒し合うだけではなかなか作れない仕組みも、マイクロソフトの協⼒があれば⼤きく前進するかもしれません。⽇本の⼤学の国際的なステータスを⾼める鍵として、情報の利活⽤の効率化に今後も協⼒いただけることを期待しています。私たちも、より⼀層の努⼒をしていきたいと思います。」

5442-WI1