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White Paper 天びんの適正状態を示す 緑のライト このホワイトペーパーをお読みいただく前に メトラー・トレドの新しい分析天びん Excellence Plus シリーズは、緑のステータスライト を搭載し、 Good Manufacturing Practice (GMP) の遵守が要求されるラボで、正確な計量を するために必要なすべての要素が適正状態にあるかどうか、天びんが使用可能な状態 かどうかを表示します。 1つでも適正でない場合には、ライトの色で警告します。黄色は、 警告を示しますが計量は安全に行えます。赤になると、計量を開始することができませ ん。問題に対して是正措置が実施されると、ライトは計量可能な緑に変わります。 天びんのこのような新しい機能を使用することで、規制遵守が要求されるラボにおい て、確実に規制に準拠した計量作業を行うことができます。さらに最も重要なのは、規 格外 (OOS) 、規格内異常値 (OOT) 、期待値からの外れ (OOE) の結果を引き起こす恐れ のある計量エラーを減らすことができることです。ステータスライトを搭載したこの分析 天びんにより、適正ではないプロセスによって生じるエラーを回避し、それに対するラ ボでの調査に費やす時間と労力を節約することができます。 目次 対象とする読者 2 このホワイトペーパーの意義 2 分析天びんができる規制的な観点への対応 3 査察官によるの呼び出し 5 査察の実施方法 5 査察の対応 5 分析天びんができる規制的な観点への対応 8 ステータスライトの採用 8 LevelControl 8 計量皿の不正確な位置 9 内部調整: proFACT proFACT Advanced 9 TestManager 11 結論 11 参考文献 12

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aper 天びんの適正状態を示す

緑のライト

このホワイトペーパーをお読みいただく前にメトラー・トレドの新しい分析天びん Excellence Plus シリーズは、緑のステータスライトを搭載し、Good Manufacturing Practice (GMP) の遵守が要求されるラボで、正確な計量をするために必要なすべての要素が適正状態にあるかどうか、天びんが使用可能な状態かどうかを表示します。1つでも適正でない場合には、ライトの色で警告します。黄色は、警告を示しますが計量は安全に行えます。赤になると、計量を開始することができません。問題に対して是正措置が実施されると、ライトは計量可能な緑に変わります。

天びんのこのような新しい機能を使用することで、規制遵守が要求されるラボにおいて、確実に規制に準拠した計量作業を行うことができます。さらに最も重要なのは、規格外 (OOS) 、規格内異常値 (OOT) 、期待値からの外れ (OOE) の結果を引き起こす恐れのある計量エラーを減らすことができることです。ステータスライトを搭載したこの分析天びんにより、適正ではないプロセスによって生じるエラーを回避し、それに対するラボでの調査に費やす時間と労力を節約することができます。

目次対象とする読者 2

このホワイトペーパーの意義 2

分析天びんができる規制的な観点への対応 3

査察官によるの呼び出し 5

査察の実施方法 5

査察の対応 5

分析天びんができる規制的な観点への対応 8

ステータスライトの採用 8

LevelControl 8

計量皿の不正確な位置 9

内部調整:proFACT と proFACT Advanced 9

TestManager™ 11

結論 11

参考文献 12

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ight 対象とする読者

このホワイトペーパーは、規制環境下にあるラボまたは組織で、分析を担当する科学者および品質保証責任者を対象としています。

このホワイトペーパーの意義分析天びんは、規制遵守を要求される GxP ラボで行われるほぼすべての定量分析の要となるものです。以下に示すラボ内の重要な手順を実施するため、計量は必ず正確に行わなければなりません。• 分析用標準物質の調製• 分析用サンプルの一定量の採取• 溶液、バッファ、HPLC 移動相の準備

このように、ラボ業務で使用する分析天びんは優れた分析科学を実施するために重要であるため、管理されている必要があります。分析天びんまたはその使用方法に問題がある場合、どちらの問題もラボ全体の作業に重大な影響を及ぼします。

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3White Paper METTLER TOLEDO

分析天びんができる規制的な観点への対応

このセクションでは、GMP および GLP 規制、米国薬局方 (USP) の分析天びんに関する総則、および FDA の承認前査察 (PAI) に関するコンプライアンスプログラムガイド 7346.832 の適用されるセクションについて考察を行います。分析天びんに関する規制要件を確認し、査察でのアプローチ方法を明確にします。このセクションの全体の構成は図1の通りです。また、規制に準拠しなかった場合に受ける、分析天びんに関するFDA 警告レターについてご案内します。

図 1:分析天びんに適用される GxP 規制

機器に関する GMP および GLP 規制:米国 GMP [参考資料 1、2] および米国、OECD、および日本 GLP [参考資料 3、4、および 5] 規制では、分析天びんは機器または器具のどちらかで定義されています。要約では、これらの規制では、機器の設置場所、大きさは用途に合ったものでなければならず、また適正な精度かを評価するために、正確さを確認することのみ述べられています。

それとは対照的に、EU GMP には天びんに対する具体的な要件が2つ記載されています。すなわち、天びんには適切な範囲と精度が定義されていなければならないこと、また天びんは決められた間隔で校正を行い、校正結果も記録しておかなければならないことです [参考資料 6]。

ラボの管理および記録に関するGMP 規制: 米国 GMP 規制のラボ管理のセクション [参考資料 7、8] では、分析天びんの適格性評価と校正について科学的アプローチに基づく適正な仕様と試験手順を確立させ、ラボの品質管理を行う必要があると述べられています。天びんが検査に合格しない場合、問題を特定して解決するまで天びんは使用することが認められません。

ラボの記録のセクション [参考資料 9、10] では、リリース試験に関係するすべての試験から得られたサンプル重量および行った計算を含む完全なデータが必要だとしています。また、ラボの標準物質、試薬、および試験で使用した標準溶液 (HPLC 標準液または移動相など) の調製に関するすべての記録を保管する必要もあります。ラボの検査方法に関しては EU GMP 規制の方が簡単に述べられていますが、要件は基本的に同じです。

EU GMP 規制の第 4 章 [参考資料 11] と米国 GMP 規制 [参考資料 12] の両方とも、天びんには使用した装置、校正、メンテナンスを時系列に記録し、さらにそれを実行した日付とスタッフも記録したログが必要だとしています。

GxP 規制

医薬品安全性試験実施基準 (GLP)

米国薬局方 (USP)

分析天びん 第 41 章および第 1251 章

確定済みの査察方法

分析天びん関連のFDA 警告出頭命令

米国薬局方

分析機器要求項目 第 1058 章

FDA コンプライアンスプログラムガイド 7346.832

承認前査察設備機器を対象とする規制

適正製造基準 (GMP)

設備機器を対象とする規制

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ight 分析天びんに関する米国薬局方: GXP 規制は一般的な製造機器に言及していますが、米国薬局方 (USP)

は、分析天びんの具体的かつ詳細な要件について述べています。分析天びんに適用される General Chapter/Information が 3 つあります。• <41> Balances ;• <1251> Weighing on an Analytical Balance ;• <1058> Analytical Instrument Qualification .

USP では分銅および天びんに関する既存の Chapter <41> を新しい 2 つの総則に変更します。改訂される <41> の新たなタイトルは“Balances”と変更され、今回追加される <1251> は“Weighing on an Analytical Bal-ance”というタイトルです [参考資料 13、14]。今回のUSP の改定では新しいアプローチを取っています。すなわち、Chapter の改訂に伴い、必須となる試験の章 (<1000> 番未満) および適切な実施のアドバイスを記載する一般情報の章(<1000> 番から <1999> 番の間)と共に、改訂する章を 2 つ一組にして公開します。

改訂される USP <41> は USP の中でも一番短い章のひとつですが、「正確な計量」を行うには、繰り返し性と正確性をしっかりと検証した、要件に適合する校正された天びんを使用する必要があるとしています。繰り返し性の検査は、天びんのひょう量範囲内の点検用分銅で最低 10 回測定しなければなりません。天びんのひょう量の 5% 以下の分銅を使用した場合、最小サンプル重量は繰り返し性で到達した値から計算することができます。Chapter ではさらに、分析天びんの校正は設置の最中および使用前に実施する必要があると述べています。

分析機器適格性評価 (AIQ) に関する USP <1058> [参考資料 15] では、機器の適格性評価プロセスおよびラボのコンピューター化されたシステムに関する概要が記載されています。ただし、適格性評価できるパラメータの詳細は新しい USP <1251> にも記載されます [参考資料 14]。USP <1251> には適格性評価 (設計時適格性評価 (DQ)、据付時適格性評価 (IQ)、運転時適格性評価 (OQ)、および性能適格性評価 (PQ) からなる全体的なプロセス)、天びんのチェック、最小計量値、およびさまざまなサンプルタイプの計量のための適切な技術に関するセクションがあります [参考資料 14]。

コンプライアンスポリシーガイド 7346.832 (承認前査察): エイブル・ラボラトリーズによる 2005 年の詐欺事件 [参考資料 16] 以降、FDA でカバーされていない改ざんおよび詐欺事件が増加したことにより、新しく査察官向けのガイドが作られました。ガイドの施行は 2012 年。承認前査察に関するコンプライアンス プログラム ガイド (CPG) 7346.832 [参考資料 17] には目的が 3 つあり、そのうちの 3 番目の目的はラボに直接注目するデータ整合性監査です。3 番目の目的について以下のように述べています。

生データ、ハードコピー、または電子コピーを監査し、申請する CMC セクションに提出されたデータが本物であることを証明する。提出されたデータが完全かつ正確であると CDER 製品審査官が信用できるように、関連するすべてのデータ (安定性データ、バイオバッチ データなど) が CMC セクションに提出されたことを検証する。

この目的はラボの記録の検査と紙および電子媒体による記録の調査を行うことにより達成され、記録が報告書を改変して作られたものではなく論理的な方法で作られていることが保証されます。CGP はさらに次のように詳細に述べています。

査察中はクロマトグラム、スペクトログラム、ラボの分析ノート、CMC セクションに提出した概要データの付いたラボの付加的な情報などのような生データ、ハードコピー、電子コピーを比較します。生データのファイルは、企業の上層部も認識している部品および完成品に関するすべてのデータ/情報を反映させることにより、申請書のデータ/情報が完全で客観的な分析がされているという結論が支持されるものでなければなりません。文脈的整合性に欠ける例には、提出されたクロマトグラフィーのシーケンスに異常な試験結果がある、または試験結果がないなど、関連するデータが提出されていないことを申請者が科学的に正当化できないために、申請書に部品、プロセス、完成品がすべてまたは正確に記載されていない可能性がある場合も含まれます。

このように、ラボは規制要件を遵守することにより、承認前査察のためだけでなく製品分析のためにも使用される分析の記録が完全なものであることを示すことができます。

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査察官による呼び出しGxP ラボでの作業では、監督当局による査察が定期的に行われます。査察は、予定されている施設への訪問や、研究部門に特化した訪問、または事前承認された訪問、または正当な理由による予告なしの査察などがあります。査察は 1 つの規制機関だけで行うものと、複数の機関で行うものがあり、査察を受ける会社の場所と製品の販売場所によって違います。また、ラボが委託研究機関 (CRO) または委託製造機関 (CMO) の一部である場合、地域または社内の職員、もしくは第三機関により内部監査が行われます。

しかし、2009 年に FDA による post 483 観察所見プログラムの導入 [参考資料 18] に伴い、査察に対する準備は必須となりました。このプログラムでは、すべての 483 観察所見または査察後 15 営業日以内のコンプライアンス違反に対してラボは返事をする必要があります。

査察の実施方法上述でも紹介した規制等から、査察官による分析天びんの調査方法は以下の通りだと考えられます。• 分析天びんは規定通りの仕様で、正しく設置および適格性評価されており、適切な文書が添付されていなければならない。

• 天びんの校正は設置時および設定された間隔で行い、校正後の天びんは正確で許容範囲内になければならない。

• 校正は記録しておかなければならない。• 分析天びん関連の仕様および操作は科学的に正当でなければならない。• 校正で不合格となった分析天びんは、問題が解決されるまで使用してはならない。• 実施したメンテナンスまたはサービスは記録し、文書化する。• ラボは、天びんの使用時および計量時を、時系列で記載したユーザーログを保管する。

査察への対応分析天びんの所有者として、ラボに査察官が来た時に何を予想しますか?通常、査察官は製剤の品質システムから始め、文書の管理、トレーニング記録、ポリシーと手順、規定逸脱管理に注目します。品質システムを十分に査察し終えると、次の焦点はラボです。査察官は、ラボが GMP 規制および薬局方の要件に違反していないかチェックします。重要なポイントは上記のセクションに記載しました。査察の際のチェックリストとして使用することが可能です。

分析天びんは規制遵守が必要とされるすべてのラボで定量分析の要となるものなので、査察の範囲は非常に広くなる可能性があります。しかし、査察官は天びんが管理されており、適格性評価、校正、メンテナンスが行われているかどうかを以下のようにして知ることから始めるでしょう。• 分析天びんはどのように設置されているか?通常、これは装置の DQ、IQ、およびOQ 文書を確認して行います。

• 分析天びんは、使用中にどのように校正されているか?これは、基準分銅を使用した外部校正、日常の点検記録、および天びんの内部調整などを調べて確認します。

• 分析天びんのサービスおよびメンテナンスはどのように行っているか?ここでは、適切な管理が実行されているか確認するためにサービス記録が調査されます。

査察官は通常、バッチ記録の分析、または分析ログブックから選択した項目から査察を始め、標準物質の計量の準備、ラベル付け、保存、使用の方法を確認します。ID を適正に管理した溶液の調製や、保管状態、調製日付が記載されている溶液の有効期限も査察に含まれます。また、製品または研究で使用されるさまざまなバッチの分析用の溶液の使用方法、さらには溶液の期限が切れた場合の処分方法についても調査が行われる可能性もあります。その他には、サンプルの分析方法や報告可能な結果を計算する際に分注の計量が使用されているかどうかについてを調査されます。

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ight 警告レター

残念ながら、FDA の査察官によって分析天びんの規制遵守を達成できないやり方を行っているラボが発見されるケースもあります。これらのラボは警告レターが発行されます。

警告レター 1: 校正記録および装置の使用ログの不足はラボの作業全体に影響を及ぼす重大な欠陥です。下記に1 つ目の違反事例をご紹介します。

装置と加圧滅菌機の校正プログラムを作成し、天びんと pH メータの使用ログを実行する予定と記載されてると回答がありました。しかし、米国市場への提供を意図した API の生産またはテストに使用するすべての機器と器具類について校正の状況の見直しがなく、対応が不十分です。 (FDA 警告書、2012 年 3 月)

「システム」として組み合わされた環境特性を持つラボでは、1つの装置の問題はラボ全体に影響が及びます。

警告レター2:天びんの校正を外部分銅で行っていても、それぞれの計量結果をただ記載しただけでは意味がありません。得られた値は仕様と比較し、天びんが事前に定義した許容範囲内で動いていることを確認する必要があります。

査察官は以前の <編集済み> の天びんの年間校正記録を確認し、その記録が仕様の許容範囲からはずれていることを見つけました。(FDA 警告書、2011 年 9 月)

得られた結果が定義した許容範囲から外れている場合、その分析天びんを使用することはできません。また、逸脱は文書化し、調査・修正を行わなければなりません。調査の一環として、天びんが許容範囲外だった時に分析を行った製品バッチ数、およびそれぞれを除去した時の影響について把握しておく必要があります。

警告レター 3:校正チェックを行っていても、それは適切な校正チェックでしょうか?分析天びんには作動範囲があり、確実に正しく作動しているかチェックする必要があるということを忘れないでください。天びんが範囲の全体で作動するように、作動範囲の両端でチェックを実行しなければなりません。また、この違反事例の中で、1 つの分銅によるチェックではないほうがいいとも記述されています。

文書化されている手順および設定されているスケジュールから見て、API の品質確保に重要な計量機器の校正が不十分です。例えば、実際に使用する計量範囲内での校正が適切に行われていませんでした。はかりの校正は 500mg (0.5g) まで行われ、日々の検証は 100mg (0.1g) まで行われていましたが、このはかりは実際には 10mg (0.01g) のラボのサンプル重量を測定するために、何度も使用されていました。(FDA 警告書、2011 年 4 月)

このメッセージは明確です。範囲内の補間は容認できますが、1 つの値からの補外は容認できないということです。このように、作動範囲は設計時適格性評価 [参考資料 15] にあるように決定される必要があり、また、OQ を通して分析天びんの使用方法と結び付いている必要があります。

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警告レター 4: USP <41> では、分析天びんの最小計量値を明確にし、分析天びんが作動範囲外では使用されないということを保証するするよう求めています。これは、最小表示(天びんは小数点以下 4 桁まで表示)と精度(正確な結果と 10mg までの近さ)の関係に関する問題です。

QC ラボ装置の適切な性能適格性評価 (校正) プログラムの欠陥。分析天びんの最小計量値や、測定の不確かさ、およびドリフト値に問題があります。(FDA 警告書、2010 年 10 月)

まとめ:規制に違反してミスを修正するよりも、遵守した方が簡単でコストも抑えられます。また、科学的にも正当 [参考資料 7、15] かつ適切な計量方法です [参考資料 19]。

ラボの調査およびコンプライアンスポリシーガイド 7346.832 の問題に戻りましょう [参考資料 17]。

査察中はクロマトグラム、スペクトログラム、ラボの分析ノート、CMC セクションに提出した概要データの付いたラボの付加的な情報などのような生データ、ハードコピー、電子コピーなどを比較します。生データのファイルは、企業の上層部も認識している部品および完成品に関するすべてのデータ/情報を反映させることにより、申請書のデータ/情報が完全で客観的な分析がされているという結論が支持されるものでなければなりません。文脈的整合性に欠ける例には、提出されたクロマトグラフィーのシーケンスに異常な試験結果がある、または試験結果がないなど、関連するデータが提出されていないなどの案件について、申請者が科学的に正当化できないために、申請書に部品、プロセス、完成品がすべてまたは正確に記載されていない可能性がある場合も含まれます。

査察中に査察官にはっきり示すべき重要なポイントは、ラボが管理下にあるということです。規制およびラボの手順が遵守されており、ラボの記録は完全なもので、データには整合性があるという点を見せることが重要です。

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ight 分析天びんができる規制への対応

メトラー・トレドの新しい分析天びんは品質および規制遵守に対する要求にどのように応じることができるでしょうか?

ステータスライトの採用それに対する答えは非常に簡単です。 Excellence 分析天びん XPE / XSE の表示部ターミナルにステータスライトを内蔵しました。このライトは使用前の天びんが適正な状態であるかをお知らせするライトで、適正でない場合には、天びんが使用可能ではないことをユーザーに警告します。ステータスライトは信号と同じコンセプトです。• 赤はエラーを意味します。エラーが修正されるまで天びんは使用できません。• 黄色は警告を示します。例えば TestManager が天びんの点検を知らせる時、または再校正の時期が近づいている場合などです。その場合でも、天びんは使用することができます。

• 緑は天びんが適正なサインです。何も問題が検出されず、天びんは適正に計量できる状態です。

ステータスライトと連携する安全機能は、天びんの測定の精度と正確性が保証されるように設計されています。これらの機能は図 2 に示してあります。それぞれの機能については、以下でより詳しく説明します。

図 2:ステータスライトと連携する天びん状態のパラメータ

管理はできていますか?

LevelControl Test ManagerFACT Advanced

およびproFACT Advanced

LevelControl

天びんが水平であることは正確な計量のために必須の要件です。少量のサンプルまたは標準物質を計量する際には特に重要です。通常、分析天びんの水準器は、天びん背面部にあり、天びんがドラフト内に設置されていたり、天びん周辺のスペースに制限がある場合などは特に確認が困難です。多くのラボでは、天びんとその周辺を定期的に清掃して汚染の可能性を除去することを必要としています。天びんが不適切に設置されたり、水平になっていないことを検出するために、 LevelControl という機能を搭載しています。

この機能は、天びんが水平状態を、自動的かつ継続的に検出し、逸脱している場合には、ユーザーに赤い信号で警告します。また、画面の右上にステータスアイコンが表示され、警告音が鳴ります。その時、ターミナルディスプレイには、現在の水準器の泡の位置をお知らせするグラフィック表示が赤色でされます。天びんが水平に近づくと泡の色は黄色に変わり、水平が取れた時点で緑に変わります。天びん前部にあるステータスライトも同じ順序で変わります。水平状態の警告および補正は天びん内部に記録されます。また、LevelControl と TestMananer を併用している場合には、ユーザーが必要とすればプリントアウトすることができます。天びんを LIMS または ELN と接続している場合には、水平に関する情報は外部の LabX Bal-ances SW と連携しているどちらかのアプリケーションのデータベースへと送られます。

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もちろん、いつでも実物の水準器を使用してソフトウェアの動作状況を確認できます。ソフトウェアが機能していない場合も使用することができます。

計量皿の不適切な設置確実に正確な計量を行うために、天びんの計量皿の位置がずれているかどうかを検出するセンサを搭載しました。計量皿を清掃した場合、エルゴクリップ等、種類の違う計量皿との交換を行った場合などに特に重要な機能です。どちらの場合でも、天びんは計量皿が装置内に正しく置かれているかどうか確認します。この時、ステータスライトは赤に変わり、天びんの画面に警告メッセージが表示されます。計量皿が正しい位置に戻されると、警告メッセージは消え、ステータスライトは緑に変わります。

内部調整: proFACT と proFACT Advanced

FACT は全自動調整機構(Fully Automated Calibration Technology)の頭文字をとって付けられた名称です。分析天びんで発生する計量値のズレは、天びんの置かれている場所の温度変動が最大の要因です。FACT は、工場で校正を行った内部分銅によって、温度変動によって起こる測定のズレを除去する機構です。

分析天びんの内部調整:天びんは内部分銅を使用して、ユーザーが定義した調整の頻度で調整されます。分析天びんの内部に温度センサを搭載しており、ユーザーの設定した条件によって内部調整が始まります。環境温度がユーザーの設定を超えて上昇または下降すると (例えば、1-3°K の間など)、天びんは自動的に内部調整を開始し、確実に精度が保てるようにします。内部調整が始まるとステータスライトは緑で点滅し、調整中、天びんはブロックされます。調整が終了するとステータスライトの点滅は収まり、緑の点灯状態になります。調整には 2 つの種類があります。• proFACT はユーザーが時間と温度条件を設定し、その条件に依存して内部調整が始まります。プロセスの安全性は最高レベルです。

• proFACT Advanced 機能では、FACT 機構がかかる直前の状態で、前回の FACT 調整以降に天びんがどの程度ズレていたかを確認することができます。(この機能は、分析天びんの "FACT 前点検" および "FACT 後点検" で実行されます。)

この情報は天びんの測定前後の天びんの状況を把握でき、装置がどの程度調整されたかを把握できます。また、ユーザーは警告およびアクションの許容範囲を設定し、点検に合格するかしないかを設定することができます。この情報は印字することができるので、分析者は署名し、天びんログブックに保存できます。

図 3:外部天びん校正の警告と管理限界

管理限界

警告限界

公称値

警告限界

管理限界

問題となる結果の追跡可能期間

調整後点検

調整前点検合格

調整前点検不合格

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ight また、天びん設置場所の温度変化があらかじめ定義した温度範囲を超えた場合、または事前設定した時期

が過ぎた場合のいずれかにおいて、天びんの感度チェックおよび非直線性チェックを行うことができます。つまり、天びんは特定の範囲内になるように自動的に調整が行われるということです。新しい proFACT Ad-vanced 機能を使用して、OOS や OOT の結果を回避または減らすことができます。

新しい USP Chapter <1251> [参考資料 14] では、天びんの日常点検に対するリスクベースのアプローチとして、内部調整分銅付きの天びんの点検頻度は、計量リスクのレベルに応じて外部分銅調整タイプの天びんより低い頻度で行うことが可能だと記載しています。しかし、外部校正の頻度や内部校正の信頼度についてはそれぞれのラボで決定しなければなりません。

内部調整では、2つの分銅を使用して天びんの測定範囲の上側と下側を測定します。先ほどの警告レター 3 では、装置のすべての操作範囲を通して適切に分析天びんの校正を行わなかったとしてラボは警告を受けました。Excellence Plus 分析天びんシリーズは、天びんの操作範囲での内部調整で FDA の期待値に適合することができます。補外でなく補間を使用します。

外部校正と併用した内部調整機能の使用:proFACT 機能と proFACT Advanced 機能は無効にすること自体は可能ですが、それらの機能は、外部校正を必要とする回数を減らすことができるため、規制遵守が必要とされるラボでは無効にする必要がないと思われます。ただし、規制遵守が必要とされるラボは、分析天びんの内部調整機能だけに依存しないことが非常に大切です。内部調整機能は、国内基準または国際基準まで追跡が可能な分銅セットによる外部校正のプログラムと併用して実施する必要があります。FDA のウェブサイトには内部調整および校正に関するアドバイスが掲載されています [参考資料 20]。そのなかで、質問と回答の形式で記載されています。

質問:大手の分析天びんメーカーの多くは、「自動校正」機能を内蔵している天びんを提供しています。そのような自動校正は、外部の性能チェックの代わりとして基準を満たしていますか?基準を満たしていない場合、校正のスケジュールをどう設定すべきですか?

回答:天びんの自動校正機能には、外部の性能チェックをなくすまでには信頼性がありません (§211.68)。自動校正機能内蔵のはかりでは、依然、外部の性能チェックは定期的に実施する必要がありますが、この機能のないはかりと比較すると少ない頻度とすることができます。性能検査の頻度は、使用頻度と、プロセスまたは分析ステップの重要度および許容度に応じて決定してください。

基本的に、天びんが行う内部チェックのみに依存すべきではなく、ラボは外部で校正された分銅を使用して天びんの性能検査を行わなければなりません。ただし、FDA のガイドには警告の言葉が続いています。

ここで注意すべきは、2回の連続した検証の間に製造した製品のすべてのバッチは影響を受けている可能性があるため、自動校正機能によるチェックで問題を明らかにしなければならない。

つまり、校正された分銅を使用して年に1回チェックを行って問題が発見された場合、前回のチェックは図 3の通り事前設定された限度内にあるため、すべての作業に影響が出るということです。しかし、proFACT Ad-vancedを使用すると、規制遵守を必要とするラボで正確な計量に影響を及ぼす重要な要因を処理し、OOS の結果が生じる原因を減らすことができます。

規制遵守が必要なラボにおける計量の重要度を考えると、ラボ管理者はリスク評価を実施して、外部の校正チェックの間隔を短くするかどうかを決定したいと考えているかもしれません。proFACT および proFact Advanced による内部調整と、外部校正を併用した、リスクベースのアプローチをとることで、計量結果の信頼性を適切に高め、天びんを管理下に置くことができます。

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TestManager™

天びん点検による精度管理と、確実な規制対応を確実に行うためのもう 1 つの方法として、Excellence 分析天びん XPE および XSE に標準搭載した TestManager 機能の使用があります。規制遵守が要求されるラボでは、外部の分銅セットを使用して、天びんがあらかじめ定義した許容範囲内にあることを確認します。また、この作業は標準作業手順(SOP)に沿って行います。

TestManager で権限のあるユーザーは分銅を天びんに登録することができます。天びんには分銅の情報として、番号、クラス (E2、F1 など)、実際値、公差、分銅セット番号、再校正の予定日などの情報を入力可能です。

次に、天びんの表示部画面に正しい順番で日常点検の指示が表示されるように SOP のステップを定義します。作業者は確実に SOP を遵守した日常点検を行うことができます。繰り返し性および感度の検査を実行する時期は、天びんに設定が可能。作業者はあらかじめ設定した間隔で、確実に実行することができます。この手順は管理者権限によって保護されているため、権限のあるユーザーのみ変更することができます。実際の作業プロセスと、SOP 文書上のプロセスが一致することになり、確実に SOP を遵守することができます。

直近で点検が予定されている場合、TestManagerのステータスライトは黄色に変わります。これは、点検の時期が間もなく近づいていることをユーザーに知らせます。その状態でも、天びんは通常の操作を行うことができます。ただし、点検の予定日が過ぎてしまった場合、ステータスライトは赤に変わって天びんはブロックされ、点検の実施を促します。点検手順の実行時には、TestManager は試験に間違ったマスが使用されている場合、エラーを検出し、基本的なミスを修正することができます。手順が完了すると、分析者用に付属のプリンタから点検結果が印字されるので、署名をしてラボのノートまたは分析バッチ記録に保管可能です。点検に合格すると、ステータスライトは再び緑に変わり、天びんは使用できるようにブロックが解除されます。点検に合格しないと、天びんはブロックされた状態で 211.160(b)(4) [参考資料 8] に適合しますが、この場合サービス要求が出る可能性があります。

結論規制遵守が要求される今日のラボでは、分析天びんの正確な計量、ラボ調査の回避、および規制機関の査察官にプロセスが管理下にあることを知らせることは重要な課題となっています。ラボがこのような課題にうまく対処できるように、メトラー・トレドは Excellence Plus の各種分析天びんに以下の機能を搭載しました。• 表示部ターミナル前部のステータスライトの緑のライトは、装置の主要な機能が管理下にあり、使用前の天びんが適正な状態かを知らせます。赤いライトは、計量を安全に行う前に解決すべき問題があることを示します。

• 天びんの内部調整機能の制御はユーザーが設定可能です。内部調整の温度トリガーは 1-3°K の範囲で設定できます。また、内部校正の "調整前点検" および "調整後点検" が実施・記録が可能です。

• TestManager 機能では、分銅による外部校正/点検の定義が可能。結果の許容範囲と次の校正までの間隔も定義することができます。

この機能を活用すれば、規制遵守が必要とされるラボにおいて、分析天びんが精度が高く正確な測定を行うと同時に、査察官に信頼感を与えることもできます。

Page 12: White Paper 天びんの適正状態を示す 緑のライト - Mettler …...格外 (OOS) 、規格内異常値 (OOT) 、期待値からの外れ (OOE) の結果を引き起こす恐れ

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参考文献

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15. United States Pharmacopoeia <1058> Analytical Instrument Qualification, Rockville, Maryland, 2013

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18. FDA Post 483 Inspection Program August 2009

19. GMP (Good Weighing Practice) The Standard, Science Based Weighing, METTLER TOLEDO

20. FDA Questions and Answers on Current Good Manufacturing Practices, Good Guidance Practices, Level 2 Guidance – Laboratory Controls http://www.fda.gov/Drugs/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/Guidances/ucm124785.htm#1 (accessed 18 Aug 2013)

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