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1.直接作用と間接作用OER は、無酸素状態で同一の細胞致死効果を得るのに必要な線量を (9)の高い状態で同様の効果を得るのに要する線量で(10)もので

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1.直接作用と間接作用

(基 本 )

放射線の生物作用の主要な標的 分子は DNA。放射線が直接 DNA 分

子に損傷を与える場合を直接作用という。放射線が細胞中の水分子に

作用してラジカルを生成し、それが DNA 分子に作用する場合を間接

作用という。

(1)標的分子が直接電離 ・励起される( 1) 作用と、細胞内の( 2)が 電

離・励起され、その結果生じた (3)が標的分子に損傷を与える間接

作用とがある。

(2)X 線やγ線では生物効果の( 4)%が水の放射線分解の結果生じるラ

ジカルによる( 5)作用の寄与によるものである。ラジカルの中でも

(6)ラジカルの寄与が最も大きい。

(3)希釈効果、ラジカルスカベンジャによる防護効果、温度(凍結)効

果、酸素の有無および酸素分圧で生物 作用が 変 化する( 7)効 果は主

に間接作用が関与している。

(4)低酸素状態で照射すると間接作用による酸素効果が(8)し、( 9)

の寄与が大きくなる。

(5)細胞を凍結した状態で照射し、その後解凍して生存率を調べると、凍

結せずに照射した場合よりも生存率は (10) なる。凍 結することによ

りフリーラジカルの拡散が抑制され、 (11) 作用の比 率が小さくな

る。

(6)乾燥した酵素の X 線照射による不活性化でも上記と 同様の現象を示

す。不活性化の主な原因は(12)によるものとなる。

(7)温度が上昇すると( 13)が拡散しやすくなり間接作用が( 14)され

る。これを(15) という。 直接作用はラジカルの発生がないため温度

の影響を受けにくい。

(8)発生したフリーラジカルを除去する 物質を(16)という。( 17)基

を持つ( 18)、システアミン、グルタチオン 、ジメチルスルホキシド

がある。これらは活性ラジカルを捕捉するラジカルスカベンジャは、

間接作用を(19)する。この効果を防護効果といい、(20)LET 放

射線の場合に顕著に現れる。

1 直接

2 水分子

3 フリ一ラジカル

4 50~ 80

5 間接

6 ヒドロキシ

7 酸素

8 減少

9 直接作用

10 高く

11 間接

12 直接作用

13 ラジカル

14 促進

15 温度効果

16 ラジカルスカ

ベンジャ

17 SH

18 システイン

19 抑制

20 低

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(9)DNA 損傷のような生物作用においては、X 線のような(21) LET 放

射線の場合は (22)作用の寄与が大きく、重粒子線のような (23)LET

放射線の場合は X 線の場合と比べて直接作用の寄与が大きくなる。低

LET 放射線による間接作用の寄与は(24)%程 度とされている。間接作

用の方が直接作用の寄与より大きい。

(10)放射線の生物作用は、最初のエネルギー付与を出発点として、時間

的に次々に起こる反応の結果である。この連鎖的な過程は、各過程が

起こる時期の早い方から、(25)過程、化学過程、生化学過程、生物過

程に分類される。水の励起・電離は (25)過程に含まれ、 (26)秒程度で

起こる。ラジカルの生成・拡散は化学過程に含まれ、 (27)~10- 4 秒

程度の時間スケールである。

21 低

22 間接

23 高

24 50~80

25 物理

26 10- 16

27 10- 12

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2.希釈効果

(1)希釈効果は(1)を特徴づけるものである。(左側のグラフ)

(2)グラフの縦軸に注意する。

1)中央の図の説明(間接作用)

酵素の不活性化数→標的数(濃度)が増加しても(2)の数は変

化しない。そのため、( 3)に変化は生じない。

酵素の( 4)→標的数が増加すると( 4)は(5)する。

2)右側の図の説明(直接作用)

酵素の不活性化数→標的数が増加すると、照射を受ける確率が増

加する。そのため、不活性化数は(6)する。

酵素の( 4)→標的数が増加しても( 4)は変化しない。

1 間接作用

2 ラジカル

3 不活性化数

4 不活性化率

5 低下

6 上昇

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3.酸素効果

(基本 1)

間接作用は酸素濃度の影響を受 ける。 酸素濃度が高いと放射線の生体有害作用が強くなる。

これを酸素効果と呼ぶ。酸素には生体分子に生じた損傷が化学的修復をされる前に損傷として

固定する働きがあるといわれている。 酸素の有無は放射線により引き起こされる生体反応の大

きさに影響する。

(1)放射線(1)に酸素があると、酸素がない場合に比べて細胞の放射線感

受性は( 2)なる。この現象を酸素効果という。酸素効果の大きさは

(3)で表される。酸素の有無に関わらず生物学的効果が等しい場合

は 0ER の値は( 4)である。

(2)放射線の線質や照射中の溶存酸素濃度は、細胞生存率に大きな影響を

与えることが知られている。線質の効果を定量的に表すために( 5)

が、酸素の効果を定量的に表すために(6)が用いられる。

(3)酸素の濃度が 0.5%以 下の条件で照射すると酸素濃度 21%の大気条

件下で照射した場合と比較して生存率は(7)なる。

(4)酸素効果の程度を表す指標に(8)がある。細胞致死効果に関する

OER は、無酸素状態で 同一の 細胞致死効果を得るのに必要な線量を

(9)の高い状態で同様の効果を得るのに要する線量で (10)も ので

ある。同じ生物効果を示すための線量の比である。

(5)X 線やγ線の場合にはその値の最大値は( 11)程度である。速中性子

線など LET の高い放射線では、低い放射線に比べ酸素効果は( 12)

なる。

(6)(13)に酸素濃 度を高めても酸素効果 はみられない。また、腫瘍細

胞だけでなく、正常細胞も酸素 効果が ある。

(7)酸素分圧が上 昇すると放射線感受性 は高くなる。しかし、( 14)

mmHg 程度になると飽和し、それ以降は変化が見られなくなる。

1 照射時

2 高く

3 0ER

4 1

5 RBE

6 OER

7 高く

8 OER

9 酸素分圧

10 割った

11 2~ 3

12 小さく

13 照射中 及び照

射後

14 30

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(8)酸素の存在がラジカルの化学的収率を増加させるということの他に

標的分子の損傷が (15)と反応してより (16)されにくい形になる

ことが考えられる。(*授業で余り説明されてないと思われる)

(9)グルタチオンは DNA 損傷を( 17)させる。しかし、酸素が存在する

状態で照射されると、上 記( 8)に示した通り、損傷部位が( 18)で

酸化固定され、さらにはグルタチオンによる修 復が(19)される。

その結果、細胞の放射線感受性が高くなる。

15 酸素

16 修復

17 減少

18 酸素

19 阻害

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一重項酸素:片方の酸 素に 8 個、もう一つ に 6 個の電子。

不対電子を持たないた め、ラジカルで はない 。

強い酸化力。

二重項酸素:スーパー オキシドラジカ ル。

三重項酸素:基底状態 の酸素。空気中 に存在する酸 素。

両者ともに不対電子 を持つので「 ラ ジカル」であ る。

(基本 2)

水の放射線分解では生体分子と反応する様々なラジカルが生じる。スーパーオキシドラジカル

は、水の電離で生じた電子(e-)のまわりに水分子が取り囲むように配列した水和電子が酸素

を 1 電子還元して生じる。

水和電子 スーパーオキシド

(1)呼吸で 酸素を取り込み,主に(1)に存在する電子伝達により(2)

を産生し,生命活動に必要なエネルギーを得る .この過程で酸素は

(3)電子還元され( 4)(02 +4H++4e-→2H20)となるが、必ずし

も酸素分子に電子が完全に( 5)つ渡されるとは限らない。酸素分子

に不完全に電子が渡された状態 、つまり酸素分子が部分的に還元され

たものが(6)である .

(2)酸素が (7)電子還元されると( 8)( ・O2- )となる。これは(9)

(・)をもつラジカル種である。スーパーオキシドアニオンラジカル

とよばれることもある .

(3)(8)(・O2- ) がさらにもう (10)電子還元されたものは O2

2-であ

るが,これに H+ が( 11)個つくと( 12) (H202)になる .

(4)(12)(H202)が さらにもう( 13)電子還元されると,O 原子と O

原子の問の結合は安定に存在することができず,結合が切れて ( 14)

(・OH)と水酸化物イオン(OH- )となる .

(5)以上の過程で生じた スーパーオキシド,過酸化水素,ヒドロキシルラ

ジカルはいずれもフリーラジカルの一 種である .

1 ミトコンドリア

2 ATP

3 4

4 水

5 4

6 活性酸素

7 1

8 スーパーオキシ

9 不対電子

10 1

11 2

12 過酸化水素

13 1

14 ヒドロキシル

ラジカル

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4.フリーラジカルの生成・生物作用・除去

(1)フリーラジカルの生成

1)水分子へのエネルギー付与から 10- 12 秒程度の時間が経過した段

階では、これらの水分分解生成物は、空間的には数 nm の狭い領域

内に分布されている。この局所領域を( 1)と呼ぶ。

(1) の間隔は、LET が高くなるほど (2)なる。

2)水分解生成物の多くは化学的反応性に富む。水分解生成物同士は

お互いに反応しつつ溶液内を拡散し、やがて系全体が均一となる。

OH ラジカルの移動距離は (3) μm 程 度とされている。

3)水が励起 され ると解離してヒドロキシラジカルと (4)ラジカル

が生じる。

<励起された水分子(H2O*)>

H2O*→・OH+・H の反応

4)水が電離 されるとすると H2O+と( 5) が生じる。

H2O+は非常に不安定であり、分解して (6)を生じる。

(5) は、 その周りに水分子が配列して(7)となる。

<水分子のイオン化(電離)を表す反応式>

・H2O→H2O+ +e- ― ①

・反応①で生成した H2O+ は周囲の水分子と反応して、

H2O+ +H2O→H3O+ +・OH ― ②

・反応②で生成した「・OH」に付与された(・)はこの

分子の持つ不対電子。

・反応①で生じた 電子は、エネルギーを失うと、水分子を引き付けて

安定化する。この状態の電子は水和電子と呼ばれ、記号 e-aq で表

される。e-aq は酸素と反応し、スーパーオキシド(O2

- )を生成す

る。酸素効果に寄与している。

5) (上記をもう一度 ):水が( 8)されると、(9) と非常に不安定な

「H2O+」ラジカルを生じる。前者は( 10)が配位することにより

(11)電 子を生じる。H2O+ラジカルからは水素イオンと( 12)が生

じる。

1 スパー

2 狭 く

3 10~ 20

4 水 素

5 e-

6 ヒドロキシ

ラジカル

7 水和電子

8 電 離

9 電 子

10 水分子

11 水和

12 ヒドロキシ

ラジカル

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6)水和電子は強い (13)である。( 14)と反応すると

スーパーオキシドラジカルを生じ、水分子や水素イオンと反応する

と水素ラジカルを生じる。

7)e-aq は非常に強い (15) 剤として働く。また、・H は強い

(16)剤、・OH は 非常に 強い (17)反応を示す( 18)剤である。

・OH は相手の分子に酸化的損傷を与え、自身は(19)される。

8)OH ラジカルが結合すると・OH+・OH→ (20)が生成する。

過酸化水素は (21) を通過しやすい性質がある。( 22)を持たな

いため、直接的なフリーラジカルでない。 活性酸素種の1つであ

る。

13 還元剤

14 酸素

15 還元

16 還元

17 求電子

18 酸化

19 還元

20 H2O2

21 生体膜

22 不対電子

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(2)生物作用

1)不対電子をもつフリーラジカルは非常に不安定 。 ・O2- の半減期は

10- 6 秒、 ・OH の半減期は(1)秒である。化学的に不安定という

ことは(2)が高いといえる。

2)( 3)は反応性が高いため、スパーオキシドラジカルなど他のラジ

カルより寿命が短 く、早く消失する。

3)フリーラジカルが生体内で発生すると,脂質,タンパク質,核酸

などの生体成分を攻撃 し、 その機能に影 響を与える .特に( 4)は活

性酸素の中でもっとも反応性が(5)。すなわち生体に有害であ

るといえる。(*授業であまり解説されていないと思われる。)

4)OH ラジカルは脂質などの有機分子との反応により酸化脂質などを

生じさせる。

1 10- 9

2 反応性

3 ヒドロキシル

ラジカル

4 ヒドロキシル

ラジカル

5 高 い

5)OH ラジカルは生物影響が最も大きい。OH ラジカルは DNA な ど

の生体高分子と反応して(6)を引き抜いたり(電子引き抜き反

応:酸化)、 (7)反応を起こす。その結果、生体高分子ラジカル

が生じる。生体高分子ラジカルは( 8)と反応して損傷が固定され

る。その結果として DNA に 2 本鎖切断などの損傷が(9)すると考

えられている。(下図参照)

6 水 素

7 付 加

8 酸 素

9 増 加

ラジカル

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6)ヒドロキシラジカルなどは飽和炭化水素から水素を引き抜く。

これを(10)引き抜き反応という。生じた有機ラジカルは酸素分子

が反応すると、―O-O-結合を持つ有毒な( 11)を生じる。

7)フリーラジカルにより( 12)( LH)から( 13)ラジカルが引き抜

かれると脂質ラジカル( L・)が生じる 。L・が(14)と反応して

できる脂質ペルオキシラジカル(LOO・)と別の脂質分子が反応す

ると,過酸化脂質( LOOH)と L・が生じ,この L•がまた酸素と反

応し……と脂質過酸化の連鎖反応へとつながり、これらの脂質過酸

化物は動脈硬化,心筋梗塞などのさまざまな疾病の原因になるとい

われている。(下図参照)

10 水素

11 過酸化物

12 脂質

13 水素

14 酸素

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(3)フリーラジカルの除去

(基本 )

スーパーオキシドジムスターゼ (Superoxide dismutase, SOD)はスーパーオキシドを 不均化し

て過酸化水素と酸素に変える。2・O2- +2H— →H202+02 という反応を触媒する酵素である .

この反応は酵素なしでもきわめて速く進む(・O2-の半減期は 10- 6 秒)。

それにもかかわらず SOD が存在するということは,スーパーオキシドを少しでも早く消去す

ることが生体にとって重要であることを示している .

過酸化水素に紫外線を当てると酸素-酸素結合が切断され .もっとも生体成分傷害性の高い・

OH を生成する(H202→2・OH)。そのため、生体は過酸化水素を安全に分解する必要がある .

過酸化水素を消去する酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼ やカタラーゼは,2H202→

02+2H20 のように過酸化水素を 還元( 不均化 )して安全な酸素と水にする .

1)SOD は( 1) を消去するが ,その分解過程で(2)が生成する。

その後、( 3)が(2)を分解する。SOD とカタラ―ゼが協同的に

働くことにより,活性酸素から生体を防御している .

2)間接作用の過程でスーパーオキシドラジカルが生じるが、その量

は(4)濃度に依存する。スーパーオキシドラジカルは活性酸素種

の一つであり、生体に( 5) を示す。生体内で生じたスーパーオキ

シラジカルを消去する酵素として最も重要なのは(6)である。

1 スーパ一

オキシド

2 過酸化水素

3 カタラーゼ

4 酸 素

5 毒 性

6 スーパーオキシ

ドジムスターゼ

3)フリーラジカルを除去することによって、標的分子の損傷を低減

し致死効果を小さくする物質がある。このような物質は( 7)と呼

ばれ、代表例としてグルタチオンが挙げられる。

7 ラジカル

スカベンジャ

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4)ラジカルス力ベンジャは、OH ラジカルと反応して OH ラジカル

の作用を減弱する。また、生体高分子ラジカルは、ラジカルス力ベ

ンジャーの一種であるグルタチオン、( 8)、システアミンなどの

(9) 基から(10) を受け取り、その結果、放射線による DNA の

損傷の発生が 減少する。

5)防護剤の 1 つとして、( 11)作用の原因となるラジカルを取り除

くラジカルスカベンジャがある。(12)やグリセリンなどはヒドロ

キシラジカルと反応してその効果を減ずる。

放射線治療では、正常組織の障害を防ぐことも重要であり、その

ための防護剤の開発が行われている。防護剤の開発においては、防

護剤の効果が腫瘍組に比べ、正常組織では大きくなることが重要で

ある。

8 システイン

9 SH

10 水素

11 間接

12 アルコール

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5.放射線感受性

(基本)

ベルゴニー・トリボンドーの法則

・形態及び機能において未分化な細胞ほど放射線感受性は高い。

→リンパ球は例外(成熟しているが、高感受性)

・細胞分裂頻度の高い細胞ほど放射線感受性は高い。

→幹細胞(造 血幹細胞、生 殖幹細胞、骨 髄幹細胞、皮膚幹細胞など)

→免疫担当細胞のうち、骨髄由来の B 細胞が最も感受性が高い。

(1)細胞は放射線に被ばくすると細胞障害や細胞死などを起こす。その感

受性は、細胞の種類によって異なり、「ベルゴニー・トリボンドー」

の法則では、細胞分裂の頻度が(1)細胞ほど、将来長期にわたり分

裂を続ける細胞ほど、また、形態及び機能において(2)な細胞ほど感

受性が高いとしている。

(2)高線量率の X 線やγ線による全身被ばくでは、線量に応じて様々な組

織で障害が起こる。これらの障害の原因となる細胞の放射線感受性

は、いくつかの例外はあるものの(3)の法則としてまとめられてい

る。細胞分裂の頻度が( 1)細胞ほど、また、形態及び機能におい

て、(4)な細 胞ほど放射線感受性が高いとしている。

1 高い

2 未分化

3 ベルゴニー・

トリボンドー

4 未熟

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6.細胞周期・毛細血管拡張性運動失調症

(基 本)

分裂から次の分裂までの 1 周期を細胞周期と呼び、4 つの時期が区別できる。DNA 複製を行

う S 期と細胞が分裂する M 期の間には、G1 期 と G2 期がある。

G1 期から移行した後、一時的に分裂を停止又 は分裂を終えた細胞はある時期に止まっている

と考えられる。これを G0 期と呼ぶことがある。

(1)細胞周期と感受性

1)細胞がどの時期で放射線を被ばくするかによって細胞の放射線感受

性が異なる。増殖している細胞は、S 期の( 1)から G2 期前半にかけ

て放射線 (2)になる。また、G1 期の前半で放射線( 2)になる場合

がある。M 期と S 期前半は放射線感受性が高い。なお、(3)は細 胞

周期で大きな変化は示さない。

2)高 LET 放射線は放射線感受性の(4)が小さい。

3)M 期には、まず、( 5)が消失し、中心体を極として微小管が伸びて

(6)が形成され、また、染色体が凝縮する。次に、この(6)に凝縮

した染色体が結合し、中央に整列する。続いて、姉妹染色分体が 1 本

ずつ反対側の中心体に向かって移動する。さらに核膜が再び形成さ

れ、最後に細胞質分裂が起こって、細胞分裂が完了する。

1 後半

2 抵抗性

3 OER

4 細胞周期依存性

5 核膜

6 紡錘体

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(2)細胞周期の遅延

1)培養細胞に放射線を照射すると、(1) の進行が一時停止する。こ

れを細胞周期( 2)機構という。細胞周期( 2)機構は細胞の放射線致

死感受性に深く関わっている。

2)放射線照射により細胞は DNA 損傷を感知して、3 つの時期で細 胞

周期は( 3)する。それら 3 つの時期は G1 チェックポイント、 (4)

チェックポイント及び S 期チェックポイントと呼ばれている。

3)放射線によって DNA に( 5)が生じた場合、DNA 損傷が存在して

いるというシグナ ルを( 6) というタンパク質が受け取る。( 6)タ ン

パク質は他のタンパク質に( 7)をつける働きがある。

1 細胞周期

2 チェックボイント

3 停止

4 G2

5 損傷

6 ATM

7 リン酸

①ATM タンパク質が p53 タンパク質をリン酸化(→活性化)

②活性化した p53 タンパク質はさまざま遺伝子にタンパク質を作らせる

③遺伝子→mRNA→タンパク質の過程で新たに DNA 修復タンパク質がつくられる。

④分裂遅延が起きる。(損傷を治す)

⑤DNA 損傷があまりにも多く修復しきれない場合

→p53 タンパク質は細胞死を引き起こすタンパク質を作らせる。

→アポトーシスを引き起こす。

4)ATM

ヒトの代表的な放射線高感受性遺伝病の 1 つに(8)がある。この遺

伝病の原因となる ATM 遺伝子は( 9)番常染色体上にあり、( 10)遺

伝子形質を示す。そのため、患 者は父親と母親から受け継いだ( 9) 番

常染色体の 2 本ともに ATM 遺伝子に異 常を持っていることなる。

両親ともに(11) 番目染色体の片 方に ATM 遺伝子に異常を持っている

保因者であった場合、潜性であるため疾患は発現せず、健康である。

父親と母親の両方が一対の ATM に変異を持つ子供は、正常:保因者:

患者は( 12)の割合で生まれる可能性がある。このうち、健康なのは

(13)で保因者となる確率は( 14)である。

8 毛細血管拡張性

運動失調症

9 11

10 潜性(劣性)

11 11

12 1: 2: 1

13 3

14 2/3

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(3)毛細血管拡張性運動失調症

1)DNA の 合成量は( 1)を用いて調べることができる。健常者の細胞

では、放射線照射を受けると、細胞周期が( 2)するため、一定時間

あたりの(1)の細胞 DNA への取り込み量は(3)する。

2)毛細血管拡張性運動失調症の患者の細胞では、(4)機構が働か

ず、細胞分裂( 2)が起きないため、健常者の細胞が放射線を照射さ

れた場合に比べ、(1)の細胞(DNA)への取り込み量の(3)は少 な

い。

4)毛細血管拡張性運動失調症患者由来の線維芽細胞は放射線致死高感

受性を示す。( 5)遺伝子に異常があるため、DNA 損傷修復のための

(6)の(4)機能が働かず、修復が行われないまま( 7)期に進行す

る。(8)や細胞死が高頻度で起こる 。

5)細胞周期チェックポイント機構において重要な役割を担う分子の 1

つに(5)がある。p53 をはじめ多くのタンパク質を( 9)し、活性化

させる。

1 ( 3H)チミジン

2 遅延

3 減少

4 チェックポイント

5 ATM

6 細胞周期

7 M

8 (突然)変異

9 リン酸化

6)ATM は p53 など細胞周期や (10)を制御するタンパク質を (9)

し、その活性化を引き起こす。p53 が活性化されると、さまざまな関

連する遺伝子の( 11)を活性化し、細胞周期の進行を制御し、細胞の

(12)を引き起こす。この間に DNA 損傷の修復を促す。

7)ATM タンパク質は多くのタンパク質を(9)することで活性化す

る。ATM タンパク質は p53 タンパク質を( 9)し、これを活性化す

る。活性化したリン酸化 p53 タンパク質は特定の DNA に結同し、そ

の近傍にある遺伝子群の (11)を促進し、(6)の調節や(10)の誘

導にかかわるタンパク質群の発現量を調節している。

8)ATM(リン酸化酵素)が活性化され、標的の p53 や Chk2 タンパク

質がリン酸化され活性化する。これらが細胞増殖の阻害や(13) の誘

導の働きを持つ。

10 アポトーシス

11 転写

12 分裂遅延

13 細胞死

Page 19: 1.直接作用と間接作用OER は、無酸素状態で同一の細胞致死効果を得るのに必要な線量を (9)の高い状態で同様の効果を得るのに要する線量で(10)もので

9)放射線照射による DNA 損傷が生じると、放射線高感受性遺伝病であ

る毛細血管拡張性運動失調症の原因遺伝子産物(ATM)が活性化し、

最終的に Cdk1 や Cdk2 を抑制すること等により(6)を停止させ

る。

10)p53 は特定の DNA 配列に結合し、その近傍にある遺伝子の (11)

を促進する。p53 によって制御を受ける遺伝子群の中には、p21 など

(6)の進行を抑制する働きを持つタンパク質の遺伝子がいくつか知

られている。p21 は細胞周期進行を制御するサイクリン依存性キナー

ゼに結合し、その活性を阻害する。

11)ATM タンパク質は、放射線によって生じた DNA2 本鎖切断部位に

NBS1 タンパク質 (ヒト放射線高感受性遺伝病の 1 つであるナイミーヘ

ン染色体不安定性症候群の原因遺伝子から作られるタンパク質 )などを

介して結合し、p53 タンパク質やヒストン H2AX タンパク質など少な

くとも数百種類のタンパク質を (9)する機能を持っている。

12)p53 タンパク質は特定の DNA 配列に結合し、その近傍にある遺伝

子群の( 11)を促進する。これらの遺伝子群から作られるタンパク質

群のなかには、細胞周期チェックポイントや( 10) に関わるものがあ

る。また、DNA2 本鎖切断の修復に関わるタンパク質の中には、

(9)された H2AX タンパク質に直接的あるいは間接的に結合するこ

とによって損傷部位に集積するものが多数存在する。このように、

ATM タンパク質は DNA2 本鎖切断に対するさまざまな応答を制御す

るのに重要な役割を担っている。

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7.線量-生存率曲線・回復

(基本 1)

同じ吸収線を、2 回あるいはそれ以上に分割して間隔をおいて照射すると、1 回で照射した

場合に比べて致死効果は小さい。このような現象を SLD 回復と呼ぶ。

培養細胞において、照射後に増殖培地の代わりに生理食塩水中で数時間培養すると、増殖培

地でそのまま培養した場合に比べ生存率が高い。この現象は、PLD 回復と呼ばれる。

(補足):PLD 回復は増殖できない環 境下で起こる。低栄養、低酸素、低 PH

(1)培養細胞に( 1)放射線を照射した場合、総吸収線量が同一であるな

らば 1 回で照射したときと比較して、2 回に分けて時間間隔をおいて

照射したときに細胞生存率は( 2)なる。この現象を( 3)の 回復

(SLD 回復)という。SLD 回復は( 4)時間以内に完了する。

(2)低 LET 放射線を照射した後、培養条件(低栄養)に細胞を置くと生

存率の上昇が見られることがある。これは( 5)の回復 (PLD 回復)

によるものである。照射後 1 時間以内に終了するものと、照射後 2~

6 時間かけて行うものの 2 種類がある。8 時間後以降で は PLD 回復は

起きない。PLD 回復は低栄養、低酸素、低 PH など細胞が(6)でき

ない環境下で起こる。

(3)低 LET 放射線では、特別な場合を除けば吸収線量が同じであれば

(7)が低くなると生物効果は小さくなる。

(4)細胞集団に、ある線量を数回に分けて照射した場合の生存率は、同 じ

線量を一度に照射した場合と比 較して(8) な る。その程度は、亜致

死損傷からの回復を示し、1 回照射の場合の生存曲線の (9) の大きさ

に依存する。

(5)被ばく線量が同じであっても、線量率の大きさで生物的効果 は異な

る。この現象を( 10)という。( 11)LET 放射線の場合、これらの

効果は( 12)。

(6)α/β比(値)が( 13)ほど、亜致死損傷の回復の程度は( 14)。

1 低 LET

2 高く

3 亜致死損傷

4 12

5 潜在的致死損傷

6 増殖

7 線量率

8 高く

9 肩

10 線量率効果

11 高

12 小さい

13 大きい

14 小さい

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(基本 2)

縦軸 (対数目盛)に細胞の生存率、横軸 ( 線形目盛 )を放射線量で目盛る。

→線量が増加すると生存率が低下するため右下がりの曲線になる

→普通目盛で表示した場合には S 字状の曲線を示す。

→縦軸を対数目盛とすると肩のある生存曲線となる。

(1)線量-生存率曲線には( 1)と「シグモイド(S 字)型」の 2 つの

タイプがある。( 1)は DNA、酵素などの生体高分子、ウイルスの不

活性化、微生物の致死においてみられる。「シグモイド(S 字)型」

は(2)の細胞に見られる。

1 指数関数型

2 哺乳動物

(2)縦軸は(3)目盛で細胞の生存率、横軸は( 4)目盛で放射線量を目

盛る。

(3)放射線感受性が高い標的があり、この標的にヒットされると細胞死が

起こる。生存率曲線の形を説明するために( 5)が提唱されている。

3 対数

4 線形

5 標的論

指数関数型

シグモイド型

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(4)標的の数とヒット数の組合せによって次の 4 つに分類できる。

1) 1 標的 1 ヒット型

①1 つの細胞に( 6) だけ標的が存在し、この標的が(6)ヒットを

受けると細胞死が起こると仮定する。

②生存率曲線は片対数グラフ上で(7)を示す。

③平均致死線量 D0 は(8)を示す。哺乳 動物では(9)Gy 程度の値

を示す。

④指数関数型のグラフでは D0 は(10)と同じ数値となる。( 10)

は(11)が 37%となる線量である。

2)多標的 1 ヒット型

①1 つの細胞内に複数の標的がある。1 つヒットでは細胞は (12)

するが、細胞死までには至らない。しかし、すべての標的がヒッ

トされると細胞死が起こる。

②線量―生存率曲線は( 13)型になり( 14) のある曲線になる。

③高 LET 放射線では 1 本の放射線で細胞内の標的がすべてヒットを

受けるため、生存率曲線は( 15)となる。

3)1 標的多ヒット型

1つの細胞に 1 つだけ存在し、その標的が複数のヒットを受けた

場合に細胞死となる。

4)多標的多ヒット型

1つの細胞内に複数の標的が存在し、その各々が複数のヒットを

受けたときに細胞死が起こる。

(5)細胞の標的数と肩

1)高線量域の直線部分を縦軸に外挿して交わった外挿値(N値)

は、多標的1ヒット論における細胞内の(16)を表す。

2)N値が5とある場合、4ヶ所のヒットまでは細胞の障害が受ける

が、その細胞は生存し致死的損傷にまで至っていないことを意味す

る。

3)哺乳動物の細胞はすべて、低線量域で( 14)がある。(14)が大

きいものは(17)が大きい。

4)高 LET 放射線では n 値が( 18)に近づき、線量―生存率曲線は

(19)型になる。

5)直線部の延長が生存率 1.0 を与える線量を(20)という。これは

(3)の大きさを示す。

6 1つ

7 直線

8 放射線感受性

9 1~2

10 D37

11 生存率

12 不活性化

13 シグモイド

14 肩

15 直線

16 標的数

17 修復

18 1

19 指数関数

20 Dq

Page 23: 1.直接作用と間接作用OER は、無酸素状態で同一の細胞致死効果を得るのに必要な線量を (9)の高い状態で同様の効果を得るのに要する線量で(10)もので

6)(20)は(21)からの回復(SLD 回復)と関係する。( 20)大

きいほど回復が大きく、全体の(22)は低くなる。

7)Dq が大きいと N の値も大きくなる。

8)生存率 37%を与える線量(D37)は D37= (23)で示される。

(6)線量―線量率曲線の傾斜角度と放射線感受性

1)D0 が(24)ほど放射線感受性は( 25)。

2)線量―生存率曲線の傾斜角度が穏やかなほど放射線感受性は

(26)。

3)線種、 線量率 、分割回数、 細胞周期 、温度 、酸素濃度、ラジカル

スカベンジャの存在で傾 斜角度 は変化する。

4)傾斜角度が穏やか(=感受性が低い)になるパターン

1)高 LET 放射線 (中性子、α線 など) よ り低 LET 放射線(回復

大)

2)中性子の場合、(エネルギー)が高くなると透過しやすくなり

傾斜角度 が穏やか

3)線 量率が低下する。(回復)

4)S 期と M 期との 比較。(感受性)

5)酸素が少ない。 (酸素効果 )

6)温度が低い。(ラジカルの拡散 )

7)nが同じで Dq が大きい。(回復)

(7)線量率が極端に低いと細胞分裂が続き、細胞は定常状態を保つことに

なる。そのため、生存率 曲線の(14)が小さくなり、生存率曲線は

(15)となる。

(8)生存率曲線における生存率(S)

1)1 標的 1 ヒット型

①細胞がヒットを受けない確率(P(0))は

S=P(0)=e-λ S は生存率を示す。

②標 的 1 個当たりに平均1個ずつのヒットが生じたときは、λ=1 と

なる。

S=e- 1=0.37

このときの線量を平均致死線量 D0 と定義する。

③ヒット数は線量 D に比例するので、λ=D/D0

S=e- D/D0

21 亜致死損傷

22 放射線感受性

23 Dq+D0

24 小さい

25 高い

26 小さい

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2)多標的 1 ヒットモデル

①1つの標的が生き残る確率:e -D/D0

②ヒットされる確率:(1-e-D/D0)

③N 個の標的のすべてにヒットする確率:(1-e- D/D0) N

④細胞の生存率 S=1-(1-e- D/D0) N

(9)直線―2 次曲線モデル

1)放射線の吸収線量を D、生存率を S とすると、多くの培養細胞の線

量‐生存率曲線は InS=-αD-βD2 で近似できる。細胞の致死損傷と

なるのは(27)鎖切断が生じたときである。1 本の放射線が同時に 2

つを切断(飛跡内事象) とする場合と、2 つの切断が別々の放射線に

よって生じる(飛跡間事象)場合とに分けることができる。前者が起

こる確率は線量に比例(αD)し、飛跡間事象は線量の 2 乗に(βD2)

に比例する。αとβの値は、照射条件や細胞の性質に大きく左右され

る。

2)高 LET 放射線は飛跡間事象の確率(αD)が高くなり、β値と比較し

てα値の寄与が大きくなり、αD 項だけの公式となる。正常ヒト線維芽

細胞に中性子線を照射した場合、 137Cs 線源のγ線照時と比べてα/βの

値は(28)。このとき OER は( 29)。

27 2 本

28 大きくなる

29 小さくなる

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8.細胞死

(基本)

数 Gy のγ線を被ばくした培養細胞は、数回の分裂を経てから死に至る。このような細胞死を

増殖死と呼ぶ。骨髄幹細胞や腫瘍細胞など培養細胞以外でも増殖死が起こる。

放射線照射後の細胞生存率を定量する手法→コロニー形成法

(1)細胞死とは2つの意味を示す。

1)神経細胞など細胞分裂をしない細胞

→(1) の喪失。

2)生殖、造血幹細胞など増殖を繰り返している細胞

→何回かの分裂を繰り返した後 、分裂する能力を喪失し て細胞死

に至る。これを( 2)という。20~30Gy 以下の線量で起こ

る。

→分裂を停止した細胞でも核酸、タンパク質合成など( 3)が 維

持することがある。分裂を再開し、または分裂までに至らず細

胞同士の融合が起こり、(4)が形成される。

(2)間期死

放射線被ばく後を受けた細胞が、次の分裂に入ることがなく細胞死

に至る。(5) 細胞や筋肉細胞など放射線感受性の低い非再生系の細

胞が大線量(数十~数百 Gy)の照射を受けたときに起こる。しかしな

がら、分裂能力に限りのある( 6)は小線量( 0.2~ 0.5Gy 程度)の照

射で(7)に至る。

(3)放射線照射で分裂能力が喪失すると、0 回から数回の分裂後に分 裂

は(8)する。分裂能を失っていない細胞では分裂を繰り返し、1 つ の

細胞由来の細胞集団(コロニー)が形成される。単独の培養細胞は肉眼

では見えないが、コロニーを形成すると肉眼で確認できる大きさにな

る。このようなコロニーを作るかどうかで細胞の生死を判定する。

(4)( 9)を定量するために、通常、( 10) 法が用いられる。この方法

で得られた細胞生存率の (11)を縦軸に、(12)を横軸にとってグ

ラフを描くと、低線量の部分に (13)を持つ右下がりの曲線が得られ

る。これを(14)と呼ぶ。

1 機能

2 増殖死

3 代謝機能

4 巨大細胞

5 神経

6 リンパ球

7 間期死

8 停止

9 増殖死

10 コロニ一形成

11 対数

12 吸収線量

13 肩

14 生存率曲線

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(5)( 15) 法では、細胞を単一細胞に分離して細胞培養皿に播種し、

一定期間培養した後に生じるコロニーを計数する。通常、細胞を播

種した後 7∼21 日程度してから 50 個以上の細胞からなるコロニー

を計数する。計数したコロニーを播種した細胞数で除した値を

(16)という。

(6)放射線照射後の細胞生存率は、放射線を照射した細胞の( 16)

を、照射していない細胞のコロニー形成率で ( 17) 割合で表す。コ

ロニー形成法により得られた細胞生存率から細胞生存率曲線を描く

が、通常、細胞生存率曲線は縦軸に( 18)を対数目盛りで示し、横

軸に吸収線量を( 19)目盛りで示す。

(7)一般に、細胞を放射線防護剤で処理してからγ線照射すると、この

生存率曲線の( 20)は穏やかになる。

(8)放射線照射後の細胞生存率を計算する。照射していない 100 個の細

胞を培養して 90 個のコロニーができたとする。このときのコロニー

形成率は(21)%である。

同じ細胞 1,000 個に X 線を 2Gy 照射した後培養して 90 個のコロ

ニーができたとすると、2Gy 照射での生存率は(22)である。

15 コロニー形成

16 コロニー形成率

17 除した

18 生存率

19 線形

20 傾き

21 90

22 0.1

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(9)線維芽細胞 (1 種でよく出る細胞)

結合組織の主要な細胞。組織が損傷したとき、その部位に移動して大

量のコラーゲンをつくり、修復を助ける。( 23)が活発なため、通常

は(24)である。線維芽細胞では非相同末端結合修復を欠損すると、

生存率曲線の肩は小さくなる。

23 細胞分裂

24 増殖死

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9.ネクローシスとアポトーシス

(基 本 )

大線量を浴びた場合は、細胞の機能が失われ、細胞が壊れてそのまま死に至る。このような

細胞死をネクローシスと呼び、細胞および核の膨潤や膜の損傷による内容物の漏出などが観察

される。

細胞が生理的な死のシグナルに反応して死に至る細胞死をアポトーシスと呼び、DNA の 断

片化、クロマチン (染色質)の凝縮、細胞の分断化などが観察される。

(補足) :細胞や核の膨潤、細胞膜、細胞小器官の膜破裂 で内容物が漏出。

①細胞小器官の膨潤 ② 細胞質の透明化 ③ 細胞形質膜構造の破たん(ネクローシス)

細胞膜の破裂を伴わず、核の断片化、細胞内容物が膜に包まれたまま分断化

①細胞質の凝集 ②核の断片化 ③クロマチンの辺縁化 ④細胞表面への PS 表出

⑤細胞膜 表面の突出(アポトーシス)

(1)放射線による細胞死には様々な様式が存在する。細胞が大きくなり細

胞内容が流出することが特徴的な細胞死である(1)と、細胞が小さ

くなり核が(2)するアポトーシスが挙げられる。これらの細胞死で

は細胞死に伴い DNA は断片化される。

(2)ネクローシスは、断片化された DNA を

電気泳動 法で観察すると(3)状となる。

アポトーシスでは 梯子は し ご

状(ラダー状)となる。

(3)いろいろなサイズが混在した状態を(3)状という。電気泳動を行な

ったとき、はっきりとしたバンドが確認できない。全体がぼやけた状

態になる。

(4)末梢血液中の (4)は照射後、 1h 以内でアポトーシスが見られる。

(5)p53 夕ンパク質は 修復できない DNA を持った細胞 に対して(5)を

誘導する方向に働く。

(6)(5)は放射線被ばく以外でも起こる。

1 ネクローシス

2 凝縮

3 スメア

4 リンパ球

5 アポトーシス

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(7)動物の細胞はリン脂質で形作られている。ホスファチジルセリン

(PS)はそのうちの 10~20%を占めている。分子内のリン酸にアミ

ノ酸のセリンが結合した構造をしている。神経細胞間の情報を伝える

アセチルコリンの働きを高めることが作用機構の 1 つと考えられてい

る。(6)の内側に留められており、(5)が起こるとホスファチジル

セリンが(6) の外側に露出してくる。

ホスファチジルセリンが目印となり、(7) などの食細胞に認識さ

れ、貪食処理が行われる。

6 細胞膜

7 マクロファージ

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10.適応応答・バイスタンダー効果

(1)適応応答

(1)の被ばくを受けた生物体は、次 の中・高線量被ばくに対して

(2)を示す。事前照射は( 3)Gy 程度。その効果は数時間( 6~

12h)認められる。化学物質でも同様の効果が確認されている。

(2)バイスタンダー効果

放射線被ばく を受けた細胞から何らかのシグナルが 発生する。その

シグナルは非照射(バイスタンダー) 細胞に伝わる。その結果、被ば

くを受けていない細胞に放射線被ばく を受けた細胞と同様の影響が発

現する。

1 低線量

2 放射線抵抗性

3 0.01

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11.DNA の構造、損傷および修復

(基本 1)

正常ヒト二倍体細胞 1 個当たり、22 組の常染色体と 1 組の性染色体の 23 組 46 本の染色体を

有する。また、60 億(約 6×106)個の塩基対がある。

DNA はデオキシリボ一ス、リン酸、塩基から構成される。塩基にはアデニン (A)、シトシン

(C)、グアニン(G)、チミン(T)の 4 種類があり、向かい合った鎖の A と T、G と C が対をな

す。これを塩基の相補性 (*決まった相手と対 になること)という。

(1)DNA は(1)とリン酸、 (2) から構成される。(1) とリン酸は

交互に並んで結合し、主鎖を形成する。この鎖が 2 本、互いに逆向きに

並んで( 3)を形成する。

(2)塩基にはアデニン(A)、シ卜シン(C)、グアニン(G)、チミン

(T)の 4 種類があり、向かい合った鎖の( 4) と T、(5)と C が 互

いに(6)結合 で結びついている。( 4) とT の間の( 6)結合の数

は(7) 個であり、( 5) と C の間 の(6)結合の数は 3 個である。

1 デオキシ

リボース

2 塩基

3 二重らせん構造

4 A

5 G

6 水素

7 2

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2 重結合の数で判別(アデニン 4 つ、グアニン 3 つ)

水素結合 2 つ 水素結合 3 つ

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(3)合 成

1)細胞が増殖する際、(1) 期において、

DNA の 2 本鎖がほどけて 1 本鎖となり、

塩基の( 2)に基づいて、それぞれ

の 1 本鎖と対をなすもう 1 本の鎖が合成さ

れる。結果として,元々存在していた DNA

と同じ( 3)を持つ DNA が 2 分子

合成される。この過程を DNA の複製という。

2)( 1)期における DNA 複 製は次のようにして行われる。まず、

DNA の 2 本鎖がほどけて 1 本鎖となり、これを(4)として、塩基

の(2) に基づいて、もう 1 本の鎖が合成される。そのとき、新し

い DNA 鎖は必ず 5´末端から 3´末端の方向に合成される。( 4)と

なる 1 本鎖のある位置にグアニンがあったとすると、もう 1 本の鎖

の向かい合った位置には (5)が入る。

1 S

2 相補性

3 塩基配列

4 鋳型

5 シトシン

<5´末端、 3´末端>

DNA の方向の定義

「5´末端」

五炭糖の炭素原子にもとづき、鎖の末端

「3´末端」

3´にある OH がある末端を 3´末端

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(基本 2)

①アミノ酸の合成

細胞骨格や酵素などとして働くタンパク質は、グリシン、アラニンなどのアミノ酸から構

成される。

②転 写

タンパク質の合成では、まず 2 本鎖 DNA の一部がほどけて 1 本鎖となり、鋳型となる

DNA のヌクレオチドの塩基に対し相補的な塩基を持つ RNA のヌクレオチドが結合し、その

後隣り合うヌクレオチド同士が連結されてメッセンジャーRNA(mRNA)がつくられる。た

だし、RNA の塩基には、チミンに代わりウラシルが使われる。

③コドン

mRNA は核外に運び出されてリボゾームと結合する。リボゾームに結合した mRNA には

トランスファー RNA(tRNA)という 別の種類のRNAが 運んできたアミノ酸と結合す る、3

個の塩基配列(コドン)に対応して相補的に並んだ 3 個の塩基配列(アンチコドン)になる

④翻 訳

tRNA 構造のアンチコドンの反対側には mRNA のコドンの指定するアミノ酸が結合してい

る。このようにして mRNA のコドンにしたがって tRNA がアミノ酸を運び、アミノ酸がペ

プチド結合により連なってタンパク質が合成される。

DNA であればアデニンにはチミンが相補的に結合。

RNA では アデニンにウラシル が結合する。

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(1)タンパク質を合成する際、まず、DNA をもとに塩基の(1) に基づ

いて RNA が合成される。この過程を(2)という。合成された RNA

をメッセンジャ一 RNA(mRNA)という。なお、mRNA には T が含ま

れず、代わりに(3)が含まれる。mRNA の塩基(4)個を 1 組とし

て、1 個のアミノ酸を対応させることにより、タンパク質の合成が行

われる。この過程を(5)といい、mRNA の塩基 3 個の組を(6)と

いう。

1 相補性

2 転写

3 ウラシル

4 3

5 翻訳

6 コドン

CH3 が付く

(2)タンパク質が合成される際、まず、DNA をもとに、塩基の (1)

に基づいて RNA が合成される。この過程を( 2)といい、合成された

RNA を( mRNA)という。なお、mRNA には DNA に含まれる( 7)

が含まれず、代わりに(3)が含まれる。

(3)mRNA は核から運び出されて、( 8)に結合する。(8)では、

mRNA の塩基( 9)個 を 1 組として、1 個の( 10) を対応させること

により、タンパク質の合成が行われる。この過程を(5)といい、

mRNA の塩基( 9)個の組を (6)という。 tRNA はコドンに対応する

アミノ酸を(8)に運ぶ役割を担う。

(4)( 6)には、タンパク質合成の開始を指定する開始コドンと、停 止

させる働きのある(11)が含まれる。開始コドン「AUG」は、メチオ

ニンを指定するコドンである。

(11)には「UAA」、(12)、 「UGA」の 3 つがある。対応する

(10)がないため、タンパク質合成を停止させる(6)として働く。

7 チミン

8 リボゾーム

9 3

10 アミノ酸

11 終止コドン

12 UAG

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(5)コドン表

1)アルファベットが3つあるごとに、1つの (10)と対応する。配

列が(10) の種類1つを指定する ことになる 。

2)mRNA の塩基が CUU→ロイシン AUA→ イソロイシン

3)A,U,C,G の配列が、ロイシン、イソロイシンなど( 10)の配列に

(5)された。

4)コドン表の見方

例 1:一文字目 U 、二文字目 C、 三文字目 A

UCA を探し、横に書いてあるアミノ酸 Ser(セリン )を読み取る。

例 2:AUGUUAAUAGUU

左側 (5'側 )から三文字ずつに分けて見ていき、表から当てはまる

アミノ酸を探す

→ AUG UUA AUA GUU

AUG:メチオニン UUA:ロイシン AUA:イソロイシン

GUU:バリン

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(6)( 13)変異

本来あるべきアミノ酸が違った塩基に変異することをいう。

前頁 404 番の「G」が 「U」に変異した場合( UGC→UUC)

システインからフェニルアラニンに変わる。

(7)( 14)変異

前頁 405 番の「C」が「A」に変化した(UGC→UGA)

終止コドンには UAA、UAG、UGA の 3 つがある

終止コドンが現れるとタンパク質の合成が停 止する。

アミノ酸番号 134 でタンパク質の合成が停止する。

(8)( 15)

塩基の欠失や挿入が起きたときに見られる。

塩基の欠失や挿入が (16)の倍数のとき、フレームシフトは起こら

ない。

3 個の塩基が欠失→アミノ酸 1 個の欠損

3 個の塩基が挿入→アミノ酸 1 個の挿入(下図、参照)

終止コドンができ、タンパク質の合成が停止される。

13 ミスセンス

14 ナンセンス

15 フレーム

シフト

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(9)練習問題1(変異の場合)

ATM タンパク質の mRNA の 8,711 番目のアデニンがグアニンに置き換

わるような変異がある。正常な ATM タンパク質の mRNA の 8,701 番

目から 8,720 番目の塩基配列を 下記の①に示す。

①3 つごとに線(又は数字)を書く。

塩基の番号 : 8,701 番から 8,720 番

CCU1 2 3

ACU4 5 6

CCU7 8 9

G A G101112

A C A131415

G U U161718

C C1920

②設問中の 8711 番目の塩基を確認→(16)

③アミノ酸の数を確認する。

(17)番~ 8700 番→ 8700÷3=2900 個目のアミノ酸

8701 番~ 8703 番→8703÷3=2901 個目のアミノ酸(CCU)

8704 番~ 8706 番→8706÷3=2902 個目のアミノ酸(ACU)

8707 番~ 8709 番→8709÷3=2903 個目にアミノ酸(CCU)

8709 番~ 8712 番→8712÷3=( 18) 番目のアミノ酸(GAG)

④コドン表から GAG が( 19)酸であることを確認

⑤アデニン(A)がグアニン(G)に置き換わる。

GGG になる。コドン表より( 20)に変化

16 アデニン

17 8698

18 2904

19 グルタミン

20 グリシン

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練習問題2 (欠失の場合)

ATM タンパク質の mRNA の 7,517 番目から 7,520 番目までの 4 個

の塩基が欠失するような変異がある。 下記に 正常な ATM タンパク質の

mRNA の 7,511 番目から 7,530 番目の塩基配列を示す。このような変

異を(フレームシフト)変異といい、この変異遺伝子からは正常な ATM

タンパク質より小さい( 2507)個のアミノ酸からなるタンパク質が作

られる。

塩基の番号 :7,511 番から 7,530 番

UGAAGAGAGACGGAAUGAAG

①3 塩基ごとに分類( *3 で割り切れる数で分類すること)

*一番左に注意すること

○10

U11

G12

A13

A14

G15

A1 6

G1 7

A1 8

G19

A20

C21

G G A222324

A U G252627

A A G282930

②17 番~ 20 番 目の塩基が欠失。コドンの読みにずれが生じる。

→(フレームシフト)が生じる 。

○10

U G1112

A A1314

G15

A C G162122

G A A232425

UGA2 6 2 7 2 8

AG

⑰ ⑱ ⑲⑳㉑

③翻訳

アミノ酸への翻訳は、終止コドンの前の GAA(グルタミン酸)で終わ

る。この場合の終止コドンは(UGA) である。

④アミノ酸の数

GAA の“A”は 7521 番目の塩基となる。

7521÷3= 2507→GAA は 2507 個目のアミノ酸である。

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(基本 3)

放射線によって生じる DNA 損傷には、塩基損傷や架橋に加え、鎖切断がある。鎖切断には

大きく分けて 1 本鎖切断と 2 本鎖切断がある。正常ヒ卜 2 倍体細胞に 1Gy のγ線を照射した場

合、細胞 1 個あたり、 1 本鎖切断は約 1000 個 、2 本鎖切断は約 40 個生成する。2 本鎖切断

は 1 本鎖切断の 1/10~1/30 程 度となる。発がんの原因となる。

放射線、紫外線、活性酸素などの影響や DNA 複製過程でのエラーによって、異常な塩基や

塩基対が形成される。細胞にはこのような異常な塩基や塩基対を修復する機構が備わってい

る。2 本鎖切断は正常に修復 しにくい。

(1)電離放射線によって引き起こされる DNA 損傷には、塩基損傷、塩基

遊離、架橋形成、 1 本鎖切断、2 本鎖切断などがある。正常ヒト 2 倍

体細胞に 1Gy の X 線を照射すると、細胞 1 個当たり 1 本鎖切断は約

(1)個 、DNA2 本鎖切断は約 (2) 個生成する。その他、( 3)は

1000~2500 箇所、塩基の遊離は 500 箇所、 架橋は( 4)程度とされ

ている。

(2)1 本鎖切断と 2 本鎖切断の比率は放射線の種類によって変化する。高

LET 放射線(中性子、炭素線、α線など)は( 5)を起こしやすい。

(3)細胞には様々なタイプの DNA 損傷が生じる。DNA を構成する( 6)

にヒドロキシルラジカル(・OH)が付加して生じるチミングリコール

などの塩基損傷、 DNA 糖鎖の損傷による DNA 鎖切断がある。

(4)プリン塩基(アデニン、グアニン)の方がN-グリコシド結合が弱

く、遊離が起きやすい。

(5)DNA1 本鎖切断や DNA2 本鎖切断の生成や修復は( 7)で調べるこ

とができる。これは、DNA の( 8)が小さいほど、電場をかけたゲル

中を速く移動することを利用している。DNA の電気泳動には種々の方

法があるが、DNA2 本鎖切断の生成や修復を調べるのに適した方法と

して、パルスフィールドゲル電気泳動法がある。

(6)放射線に特異的な DNA 損傷はない。鎖の切断、塩基損傷、架橋など

は化学物質でも生じる可能性がある。

1 1000

2 40

3 塩基損傷

4 150

5 2 本鎖切断

6 チミン

7 電気泳動法

8 分子量

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↑5‘末端側

↓3‘末端側 塩基損傷

損傷塩基と対をなす塩基 ↑3‘末端側

↓5‘末端側

(7)修 復

1)放射線、紫外線、活性酸素などの影響や DNA 複製過程でのエラー

によって、異常な塩基や塩基対が形成される。細胞にはこのような

異常な塩基や塩基対を修復する機構が備わっている。たとえば、

(1)が脱アミノ化されるとウラシルが生じる。ウラシルは( 2)に

は含まれるものの、本来 DNA に含まれない塩基であるため、細 胞

はこれを異常と察知し、 (3)を行う。この場合の修復は(4)修復

によって行われる。

2)塩基損傷の修復には、塩基損傷の部位だけを切り出して正しい塩

基を挿入する( 4)修 復と、塩基損傷の周辺の塩基を含めた広い範

囲を取り去り修復を行う (5)修復がある。

3)(4)修復は、まず、DNA グリコシラ一ゼによって下図のiの位

置で切断が起こり、塩基のない部位(AP 部位)が生じる。次に、

AP エンドヌクレア一ゼによって下図の f の位置で切断が起こる。

さらにホスホジェステラーゼによってもう一方のリン酸ジエステル

結合が切断され、損傷塩基が取り除かれると、DNA の 2 本の鎖のう

ち、一方の鎖が切れた構造が残ることになる。この構造は DNA1 本

鎖切断の修復機構を使って修復することが可能である。

1 シトシン

2 RNA

3 修復

4 塩基除去

5 ヌクレオチド除

右図を見ながら・・・・

DNA グリコシラーゼ: 1 塩基を切り取る (損傷をはずす)糖と塩基の間の結合を切る

AP エンドヌクレアーゼ:鎖を切る (ヌクレオチドを除去)。

DNA の糖一リン酸のエステル結合を切断

エキソヌクレアーゼ:完全に除去

DNA ポリメラーゼ :新しい塩基を作る。反対の塩基に相補的なヌクレオチドを連結

DNA リガ一ゼ:切れた鎖を完全に埋める。ヌクレオチドの 3’ 0H 末端と 5 ‘リン酸末端をエス

テル結合させることにより修復が完了

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4)1 本鎖切断と 2 本鎖切断は最終的に(6) によって結合されるが、

結合の際には、5’末端にリン酸基、3’末端に水酸基が必要である。末

端の形状がこれと異なる場合には、ボリヌクレオチドキナーセソホス

ファタ一ゼなどによる整 形を必要とする。

6 DNA リガーゼ

(8)二本鎖切断の修復

(基本 4)

DNA2 本鎖切断は主として、非相同末端結合と相同組換えの 2 つの機構で修復される。

相同組換えは姉妹染色分体を必要とするため、細胞周期の S 期の後半から G2 期に限定され

る。相同組換えが行われる期間では、効率よく修復が行われるため、その他の時期と比べ放 射

線致死感受性は低い。

1)DNA 損 傷の中で、DNA2 本鎖切断は最も重篤なものと考えられてい

る。正常ヒト二倍体細胞に 1Gy のγ線を照射すると、細 胞 1 個当たり

約(1) 個の DNA2 本鎖切断が生じる。2本鎖切断は 1 本鎖切断に比

べて修復されにくい。細胞死の主な原因は( 2)切断である。

2)DNA2 本鎖切断は( 3)と相同組換えのニつの機構で修復される。

3)(3)は相同組換えと比較して、誤りを(4)と考えられている。組

み換えるべき相同な DNA が存在しないので、切断した 末端を単に結

合する修復過程をとることになり、誤りがちな修復となる。

4)(5)は鋳型として(6)を必要とするため、細胞周期の( 7)後半か

ら(8)期に限定される。欠損した遺伝情報を相同な DNA と組み換え

て修復するため、誤りが少ない修復機構となる。この期間では、その

他の期間と比べ、放射線致死感受性は低い。

5)非相同末端結合修復は(9)全般に見られ、誤りが(10)修復といわ

れている。この修復方法は元に戻りにくく細胞死や(11)の原因にな

ると考えられている。

これに対し、相同組換え修復は細胞周期の( 12)後半~( 13) 期

に限られるが、誤りが( 14)修復といわれている。

1 40

2 2 本鎖

3 非相同末端結合

4 起こしやすい

5 相同組み換え

6 姉妹染色分体

7 S 期

8 G2

9 細胞周期

10 多い

11 染色体異常

12 S 期

13 G2

14 少ない

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6)相同組み換え 修復は 7 時 間、非相同末端結合は 30 分以内に終 了す

る。

7)非相同末端結合に関わる DNA 依存性プロテインキナーゼ触媒サブユ

ニット(DNA-PKcs)の遺伝子に変異を有する scid(スキッド)マウス

は、放射線致死高感受性の他に免疫不全を呈する。近年、ヒトでも

DNA-PKcs の遺伝子に変異を有する患者が報告され、免疫不全が認め

られている。

8)非相同末端結合に関わる DNA 依存性プロテインキナ一ゼ触媒サブユ

ニッ卜(DNA-PkcS)遺伝子に変異を有する scid(スキッド)マウスは放

射線致死高感受性に加え、免疫機能の異常を呈する。また、近年ヒト

でも DNA-PkcS の遺伝子に変異を有する患者が報告され、免疫機能の

異常が認められている。

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12.染色体異常

(基本 1)

染色体の数または構造の変化を伴う遺伝情報の変化を染色体異常という。染色体異常にはさ

まざまなものがある。高 LET 放射線や高い線量率で発生頻度が増加する。

染色体異常は不安定型染色体異常と安定型染色体異常に分類できる。

不安定型染色体異常は、細胞分裂の際に正しく分配できない可能性が高く、細胞は分裂を続

けることができない。一方、安定型染色体異常は、照射後長期にわたって存在し続ける。

(1)DNA 鎖の切断は全周期で起こる。染色体異常として認知できるのは

染色体が形成される( 1)期中期に限られる。薬剤で人為的に( 1) 期以

外でも染色体を形成させ、異常を検知する。

1 M

1)欠失 (1 本 鎖切断)

①1 本の染色体に 1 箇所の切断が入り、

切断端が切り離されてしまう→末端欠失

②1 本の染色体の動原体の長椀側、または

短椀側に 2 箇所の切断が入り、その中央

部が失われてしまう→中間欠失

2)転座・逆位( 2 本鎖切断が必要)

①1 本の染色体に動原体を挟む 2 箇所の

切断が入り、切断端が交換して結合する

→逆位

②2 本の染色体で切断が起き、この切断を

受けた染色体の間で切断端がそれぞれ

交換し結合する→転座

3)二動原体染色体

動原体を含む染色体同士が切断端で結合する、。

→二動原体染色体

ニ動原体をもつ細胞は細胞分裂で増殖できない。

4)環状染色体

動原体を含む両端で結合してしまった。

→環状染色体

環状染色体をもつ細胞は細胞分裂で増殖できない。

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(2)下の図 2 の 2 本の染色体で、染色体 1 の a̶b 間と染色体 2 の c-d

間で DNA2 本鎖切断が生じたとする。このとき、誤って染色体 1 の a

側の末端と染色体 2 の c 側の末端が結合されると(2)が生じる。ま

た、染色体 1 の a 側の末端と染色体 2 の d 側の末端が結合され、同時

に染色体 1 の b 側の末端と染色体 2 の c 側の末端が結合されると、

(3)が生じる。

2 二動原体染色体

3 転 座

(3)染色体の数又は(4)の変化を伴う遺伝情報の変化を染色体異常とい

う。図において、染色体 1 の d-e 間、染色体 2 の oーp 間においてく

びれた部分は動原体である。

1)染色体 1 の h- i 間と染色体 2 の s- t 間 で DNA2 本鎖切断が生

じ、誤って前者の h 側の末端と後者の t 側の末端が結合され、同時

に前者の i 側の末端と後者の a 側の末端が結合されると(3)が生

じる。

2)染色体 1 の a- b 間と kー l 間 で DNA2 本鎖切断が生じ、誤って前

者の b 側の末端と後者の k 側の末端が結合されると( 5)が生じ

る。

3)染色体 1 の h- i 間と染色体 2 の s- t 間 で DNA2 本鎖切断が生

じ、誤って前者の h 側の末端と後者の s 側の末端が結合されると

(2)が生じる。

4 構 造

5 環状染色体

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(4)染色体異常は安定型染色体異常と不安定型染色体異常に分類できる。

(6)や環状染色体は(7) 染色体異常に分類される。安定型染色体異

常と(7)染色体異常のうち、(8)に関係するのは安定型染色体異常

であると考えられている。また、急性期における放射線被ばく線量の

生物学的推定は( 7) 染色体異常を指 標として行う場合が多い。

(5)二動原体染色体や環状染色体は形態的な特徴があり、顕微鏡下での観

察は容易である。その出現割合から被ばく線量を推定することができる。

しかし、( 7)染色体異常であるため、被ばく後短時間で検体を採取する

必要がある。

(6)通常は末梢( 9)を培養して観察する。( 9)は通常、G0 期 に あ るが、

適切な培養を行うと G1 に移行し、細胞分裂に入ることができる。(10)

は核がないため染色体異常は観察できない。

(7)転座に比べて二動原体染色体の方が放射線による頻度の増加をより低

線量で検出できる。転座は放射線に対する特異性が低いため、γ線で

(11)Gy 以上のときのみ線量推定が可能となる。

(8)放射線被ばく線量の生物学的推定は(7)染色体異常を指標として行

う場合が多い。低 LET 放射線の場合、被ばく線量と( 7)染色体異常

の頻度の関係は、直線― 2 次曲線モデルにあてはまる。X 線急照射に

よる染色体異常は、線量に比例して直線的に増加する。

(9)染色体異常= (12)

α:1 粒子による 2 本鎖切断による染色体異常は吸収線量に( 13)す

る。(14) 放射線、高い線量率の場合( =回復小)

β:2 粒子による 2 本鎖切断による染色体異常は吸収線量に( 15)に

比例する 。

6 二動原体染色体

7 不安定型

8 がん化

9 リンパ球

10 赤血球

11 1

12 αD+βD2

13 比例

14 高 LET

15 2 乗

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(基本 2)

染色体異常は染色体型異常と染色分体型異常に分類することができる。

1 対の染色分体の同じ位置に異常が認められるものを染色体型異常という。もう一方の異常

は、1 本の染色分体のみに異常が認められるもの、あるいは 1 対の染色分体の異なる位置に異

常が認められるものである。細胞を G1 期に照射した場合に現れる染色体異常は染色体型異常

である。

(1)DNA 複製より前(つまり G1 期)に照射され生じた異常は、複製さ

れるため 2 セットに同じ異常ができる。この場合を (1)という。

(2)DNA 複製後(つまり G2 期)の照射では 1 セットに生じた異常は、

もう一方には起こらない。この場合を(2)という。

1 染色体型異常

2 染色分体型異常

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13.(突然)変異

(1)放射線により細胞に生じた DNA 損傷が正確に (1)されないと、細

胞に(突 然)変異 が生じる可能性があり、(2)や遺伝性(的)影響リ

スクが増加すると考えられている。

(2)放射線による( 3)の(突然)変異誘 発 率に関しては、生殖細胞の

発育段階により差があることがマウスやショウジョウバエを用いた

検討からわかっている。

(3)放射線による生殖細胞の (突然)変異誘発率に関しては、生殖細

胞の発育段階により差があり、精子は精原細胞より誘発率が

(4)。この要因の一つとして精子が精原細胞と比べて放射線によ

る細胞致死感受性が( 5)ことが挙げられる。

(4)ラッセルらによるマウスを用いた検討の結果では、(6)は精原細

胞より、 (突然)変異誘発率が (4)、成熟した卵母細胞は未熟な

卵母細胞と比べて (突然)変異 誘発率が高いことがわかっている。

(5)低 LET 放射線に関するマウスを用いた Russell らの特定座位法に

よる検討では、精原細胞の(突然)変異率は線量の増加とともに

(7)に増加ずる。

一方、同一線量で比較すると、約 900mGy/min の高線量率で照

射した場合は線量率が約 100 分 の 1 である約 8mGy/min の場合

と比べて(突然)変異率 は( 8)。

(6)線量率が約 4mGy/mi の場合と 0.007∼0.05mGy/min の場合を

比較すると、前者による (突然)変異 率は後者のそれと比べてほぼ

等しいことが示されている。このことは、 ある線量率以下では DNA

損傷の修復効率が変化しないことを示唆している。

(7)点(突然)変異は 1 箇所の塩基情報の誤りで起こる。そのため、

低 LET 放射線では線量に比例して増加する。

1 修復

2 がん

3 生殖細胞

4 高い

5 低い

6 精子

7 直線的

8 高い

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(8)(突然) 変異の種類

①点変異 ②静的変異(サイレント変異 ) ③ミスセンス変異

④ナンセンス変異 ⑤フレームシフト変異 ⑥ポリメラーゼの読み違い

⑦脱塩基部位の生成 ⑧脱アミノ化 ⑨塩基の酸化 ⑩塩基類似物質

⑪メチル化

1)点変異

A と G はプリン塩基 で T と C は ピリミジン塩 基である。

点変異には「プリン塩基→プリン塩基 orピリミジン塩基→ピリミジ

ン塩基」の変化と「プリン塩基→ピリミジン塩基 or ピリミジン塩基→

プリン塩基」の 2 種類の変化がある。前者を卜ランジションといい、

後者を卜ランスバージョンという。

2)静的変異(サイレント変異 )

静的変異と DNA 配 列に変 化があるが、アミノ酸配列には無関係の

場合の変異。アミノ酸には全く影響を与えない。

例:UCU(セリン)。

1 つの塩基が別の塩基に置き換わった。「UCC」になっ た。

1つのアミノ酸を 指定す るコドンが複 数ある。

→セリンのまま変化していない。

3)ミス センス変異

ミスセンス変異とは DNA 配列が変化することによって、アミノ 酸

が置き換わることである。変異した場所のアミノ酸がタンパク質にと

って重要でない部分ならさほど問題とならないが、変異した部分が重

要な場所であればかなり 問題である。

例 UGC(システイン)→UUC(フェニルアラニン)

本来指定するアミノ酸でなくなったことによる変異。

4)ナンセンス変異

ナンセン ス変異とはアミノ酸のコード が終止 コドンに変化する変 異

のことである。終止コドンは、へと変化する。終止コドンには

「UAA」、「UAG」、「UGA」の 3 つがある。終止コドンに変化す

るとタンパク質の合成は途中でストップする。この場合、途中で 途切

れた短い タンパク 質が合成される。なお、このタンパク質のほとんど

は活性が ない。

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5)フレームシフト変異

1 つのアミノ酸を指定する 3 つの塩基(コドン)の

組合せが 1 塩基、または 2 塩基ずれて違うアミノ酸を

指定してしまう変異をいう。この場合はアミノ 酸を

コードする配列がすべて変化する。

3の倍数の塩基の挿入又は欠失ではフレームシフトは起こらない。

置換されたときも起こらない。

(例:アデニンがチミンによって置換)

6)ポリ メラーゼの読み違い

DNA の合成 は DNA ポリメラーゼ が行う。しかし、このポリメラ一

ゼが誤っ た塩基を 揷入してしまうと変異が起きてしまう。

7)脱塩基部位の生成

脱塩基は自然に起こる変 異であり、常に発生している。

脱塩基ではデオキシリポースとプリンヌクレオチドを繋いでいる N-

グリコシド結合が開裂する。これによって塩基が失われる反応を脱プ

リン反応という。プリン塩基にはアデニンとグアニンがある。

8)塩基の酸化

DNA の塩基は酸化されると変異をもたらすことがある。チミンが酸

化されるとチミングリコールとなり、グアニンが酸化されると 8-オキ

ソグアニン (8-ヒドロキシグアニン )に変化する。この 8-オキソグアニ

ンはアデニンともシ卜シンとも対合することができる。

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9)脱アミノ化

塩基からアミノ基が失われる反 応である。この脱アミノ化は水に よ

って起こる。シトシンが脱アミノ化するとウラシルに変化 する。

(C→U、100 塩基/日 )ウラシルはアデニンと対を作るので、脱アミ

ノ化をそのままにしておくと DNA の複製によって U:G → U:A とな

り、もう一度複製を行ううと U:A →T:A となる。

こうなると C:G が完全に T:A となる。 (C:G — U:G — U:A — T:A)

通常の①DNA のシ卜シンは約 4%がメチル化されている。メチ ル化

された結果、シ卜シンは ②5-メチルシ卜シンとなる。

5-メチルシ卜シンは③シ卜シン と同じように脱アミノ化する。シ 卜

シンが脱 アミノ化するとウラシルヘと変化したが、5-メチルシ卜シン

が脱アミノ化すると④チミンへ変異する。この状態で DNA の複数が

起こると G:T → A:T となる。

10) メチル化

5-メチルシトシンは正常なメチル化であるが、正常でないメチル化

も存在する。この正常でないメチル化には O6-メチルグアニンなどが

あり、O6-メチルグアニンは、シトシンにもチミンにも対合する性質

がある。 メチル化されると DNA に記録されている遺伝情報が読み出

しにくくなる。そのため、遺伝情報をもとにタンパク質が合成されな

くなる場合が多い。メチル化は、がんや先天性の遺伝疾患などの病気

の発症にも関わっていると考えられている。

11) 塩基類似物質

塩基に似ている物質があると DNA ポリメラーゼが塩基と間違って

DNA 上に組み込んでしまうことがある。これによって変異が起こる。

例えば、5-プロモウラシル (BUdR)はアデニンともグアニンとも対合

することができる。

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14.確率的・確定的影響

(基本)

しきい値 症状のひどさ(重篤度) 影 響

確率的影響 ある 線量増加とともに悪化 すべての身体的影響

(発がんをのぞく)

確定的影響 ない(LNT 仮説) 線量の大小に関係しない。 発がん 遺伝的影響

(1)確定的影響

1)( 1)以上の被ばくを受けると、ほぼ確実に発症する。発がんを

除く、すべての( 2)が確定的影響である。( 1)は、障害の種類で

異なる。受けた放射線の量が多いほど、その症状は重篤になる。

2)放射線防護は個人の確定的影響の発生を( 3)するように行う。

(2)確率的影響

1)理論的に( 1)は存在しないと考えられている。

2)発生した症状のひどさ( 4)は、受けた放射線の量には( 5)であ

る。

3)放射線防護は確率的影響を(6) できるレベルに押さえるように

行う。

1 しきい値

2 身体影響

3 完全に防止

4 悪性度

5 無関係

6 容認

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15.身体的影響

(基本)

全身被ばくでは致死が問題となり、局所被ばくでは高線量を被ばくしても致死とはならず、被

ばくした組織や臓器の障害が問題となることが多い。いずれも、被ばくした本人に影響が出る。

これを身体的影響という。胎内被ばくによる奇形の発生は、本人への被ばくで生じるので身 体 的

影響に分類される。

組織や臓器の放射線障害では、被ばくした直後から数週間以内に起こる障害を急性(早期)障

害と呼び、数ケ月から数年後以降に起こる障害を晩期障害と呼ぶ。臓器にはそれぞれ特徴的な晩

期障害が存在する。晩発障害にはしきい値がないとされる遺伝的影響、がんの発生がある。

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16.急性全身被ばく

(基本)

急性障害は、高線量率で高線量の放射線を被ばくした後に、多数の細胞に細胞障害や細胞

死が生じることによって起きる障害をいう。

全身に被ばくした場合に、数週間以内に生じる一連の症状を急性放射線症と言い、一般

に、約 1Gy 以上の線量を被ばくすると起きる。被ばく後の時間経過は、典型的には、前駆

期、潜伏期、発症期、回復期に分けられる。

(1)急性障害

上皮組織内部では、上皮としての機能を担っている機能細胞は、

(1)と比べて放射線感受性は (2)。機能細胞は有限の寿命をもち、そ

れによる減少分を(1)の増殖によって補充している。

(2)放射線被ばくによって(1)が死滅し、新たな細胞の供給が停止する

と急性的な障害が発症する。一定数の機能細胞が失われ、症状が現れ

るまでの時間については、被ばく線量が多くなるにつれて短くなるこ

とが多い。

(3)高線量放射線を一度に全身被ばくしたような場合、数週間以内に

現れる障害を急性障害という。線量によって症状は異なるが、典 型

的な経過は以下の 4 つの病期に分けられる。

1)被ばく直後から( 3)時間以内に悪心、 (4)、頭痛、発熱、

(5)の痛み・腫脹、血中( 6)の上昇など非特異的な症状が現れる

→前駆期

2)これらの症状が一時的に消失する→ (7)

3)骨髄や消化管の障害、脱水など多彩な症状が現れる→(8)

4)その後の回復期あるいは死亡

1 幹細胞

2 低い

3 48

4 嘔吐

5 唾液腺

6 アミラーゼ

7 潜伏期

8 発症期

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(4)前駆期

1)放射線宿酔と呼ばれる症状などが一過性に現れる (9)時間以内の

時期を指す。

2)前駆期に現れる初期症状のうち、1Gy の被ばくで 10%程度の

人に 2 時間以降で現れ、線量の増加とともに頻度の上昇と発現時

期の早期化がみられる( 4)を、線量推計の参考となる臨床的症

状としている。

3)1 時間以内に(4)がみられる場合、少なくとも(10)Gy 以上の

被ばくと考えられ、専門医療機関での医療処置が必要となる。

(11)Gy を超える被ばくになると 10 分以内に嘔吐がみられる

ようになる。

4)初期紅斑:2Gy 程度の被ばく。被ばくを受けた上皮細胞がヒスタ

ミン様物質を放出し、皮膚の(12)拡張、血管 (13)が亢 進する。これ

により一時的な紅斑が生じる。痛みは 生じない 。

5)アミラーゼ:アミラーゼは膵臓から分泌される消化酵素の 1 つで

ある。膵臓、唾液腺に多く分布する。(14)酵 素であり、組織の障害

に伴って血液中に流出される。唾液腺への被ばくでは細胞の変性、

壊死によってアミラーゼを血中に (14)させる。

6)唾液腺:大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)の炎症による腫

脹、疼痛、圧痛がある。3Gy 以上に被ばくで血管拡張に伴う浮腫が

生じる。

9 48

10 4

11 8

12 毛細血管

13 透過性

14 逸脱

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(5)発症期

1)(15)を経て、発症期に入ると、被ばく線量に応じた放射線障害

が現れる。例えば、治療をしない場合、被ばく線量が約 10Gy 以上

になると、腸管上皮の再生ができなくなり、腸死が生じ始める

2)ヒ卜が高線量のγ線を全身被ばくした場合に医療処置がなされない

と、5∼10Gy では (16)週間程度で (17)の障害により、

10∼20Gy では( 18)日程度で( 19)の障害により死 亡する危険性が

高い。

3)全身に一定以上の線量を急性被ばくすると、急性障害により個体は

死に至る。集団の 50%が死亡する線量を( 20)と呼ぶ。ヒトの

(20)は( 21)日以内に 50%が死亡する線量(LD50/60)で示され、

約 3.5~4.5Gy である。

4)腸管死は小腸上皮細胞の喪失に伴う脱水、(22)が原 因となる。腸

管死を引き起こす線量の被ばくでは、小腸上皮細胞が障害され、細胞

分裂の停止や細胞死が起こる。しかし、分化の進んだ( 23)細胞はこ

の線量域では細胞死に至らない。そのため、直ちに症状は現われな

い。上皮細胞が寿命で脱落し、表面を覆うことができなると症状が現

れる。小腸上皮の幹細胞は( 24)に存在する。ヒトの小腸上皮細胞の

寿命は約 (25)日であり、この期間に応じて症状が現れる。

5)人の場合、腸管死をひき起こす線量では平均生存期間は( 26)日で

ある。マウスにおける腸管死の平均生存期間は 3.5 日である。

5)中枢神経の障害による死亡は被ばく線量が 50∼100Gy を超える場

合に起こり、( 27)による頭蓋内圧亢進が主な原因のうちの 1 つと考

えられている。

6)LD50/60 程度以上の線量を全身被ばくした場合には、肺では 30 日

以内に( 28)が生じる。特に肺で (29)感染が高頻度に生じる点に

注意が必要である。(レア問題)

15 潜伏期

16 3∼4

17 骨髄

18 10∼14

19 腸管

20 半致死線量

21 60

22 感染症

23 機能

24 クリプト

(腺窩)

25 3~7

26 10~20

27 脳浮腫

28 放射線肺炎

29 ウイルス

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(6)治療法

1)LD50/60 前後の線量を被ばくした場合には、骨髄幹細胞の放射線障

害により (30)と出血傾向が生じ、それらが死の主な原因となる。

この線量域の放射線を被ばくした場合の治療法としては、輸血や抗

生剤の投与の他に (31)を投与して( 32) の増殖を期待する。

サイトカイン:情報伝達物質。免疫細胞が動きだす(免疫系が感染に対

処するのを助ける働き。感染症や出血を減少される)

2)被ばく事故後骨髄の強い再生不良状態が継続する場合などでは

(33)移植を検討する。

3)造血幹細胞移植としては( 34)が最も一般的で、一卵性双生児又は

兄弟間ドナーの骨髄が使用できない場合には、非血縁者のヒト白血球

型抗原(Human Leukocyte Antigen ;HLA)適合ドナーからの骨髄

移植を行う。しかし、非血縁者からの移植では HLA が適合する骨髄提

供者からの骨髄採取などに時間がかかり、事故時に対応できない可能

性が高い。近年ではすべての HLA が一致しなくとも移植が可能な

(35)幹細胞移植が急性放射線症治療に用いられている。

(7)γ線による急性全身被ばくの場合、ヒ卜の半致死線量( LD50) は

(36)Gy 程度とされているが、この線量は体 重 50kg のヒトを考え

ると約 200J のエネルギー吸収に過ぎない。このエネルギーがすべて

体温の上昇に使われ、人体の比熱が水と等しいと仮定すると、体温上

昇は 0.0001 度程度になる。すなわち、小さなエネルギーが大きな生

物作用をもたらしていることになる。

30 感染症

31 サイトカイン

32 骨髄幹細胞

33 造血幹細胞

34 骨髄移植

35 臍帯血

36 4

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17.晩発障害

(1)晩発影響としては、白内障、発がん、遺伝性(的)影響などが挙げら

れる。このうち、発がんと遺伝性(的)影響は、(1) 影響である。

遺伝性(的)影響は主に放射線に被ばくした ( 2)細胞に遺伝子の

(突然)変異や( 3) が起こることで発生する。

(2)脳では (4)、脊髄神経では脊髄神経麻痺(放射線脊髄症)、 消化管

で穿孔や (5) が晩期障害として重要である。これらの晩期障害は主

に(6) の閉塞が原因である。緑内障は放射線被ばくによって動脈硬

化が起き、血流障害が発生することで引き起こされる。ただし、すべ

ての晩期障害の原因によるわけではなく、肺の晩期障害として重要で

ある放射線肺線維症では(7)細胞の障害などが原因として考えられ

ている。また、膀胱は( 8)が起こり、頻尿となる。

1 確率的

2 生殖

3 染色体異常

4 脳壊死

5 狭窄

6 血管

7 肺胞

8 萎縮

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18.放射線誘発がん

基 本

放射線被ばくにより細胞に誘発された DNA の損傷が正しく修復されないまま細胞が増殖し

た場合、発がんに至ることがある。発がんのリスクは疫学データに基づいて推定されている。

1950 年の国勢調査で広島・長崎に居住していた者を対象に放射線疫学調査が実施されてい

る。被ばく群 120,000 名、非被ばく群 27,000 名が調査対象となった。放射線の暴露から疾

病発生までの過程について時間を追って観察するコホート調査(前向き調査)で寿命調査、死

亡、がんの罹患などが調査された。

(1)白血病

1)原爆被爆者のこれまでの疫学調査の結果から、放射線による白血

病の過剰発生は、被爆後 (1)年の潜伏期を経て、被爆後約( 2)年

前後にピークを迎え、その後( 3)するという推移をたどることが

明かになった。被爆時年齢が( 4)ほど初期の死亡リスクは高く、

(5)も短くなる。

2)病型別でみると、急 性骨髓性白血病 、急性リンパ性白血病の発生リ

スクは増 加している。( 6)リンパ性白血病、成人 T 細胞白血病のリ

スクの増加は認められていない。

3)白血病死亡の過剰絶対リスク

10 歳での被ばくは、30 歳での被ばくと比較して高い。

(2)その他の固形 がん

白血病と異なり、被ばく後 10 年程度 経過した時点から持続して発

がんのリスクが増 加していく。被ばく時の年齢が高いほど(7)は短

くなる。被ばく時の年齢が低いほど生涯がん死亡率が高くなる。

1 2~3

2 6~7

3 減少

4 若い

5 潜伏期間

6 慢性

7 潜伏期

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(3)LNT 仮説(モデル)

疫学調査が進み、がんの発生にしきい値があるかが議論されるように

なった。当時、放射線被ばくの影響は十分に解明されておらず、 ICRP で

は将来の放射線利用の拡大を見据えて、「しきい値なし 」と慎重な姿勢

をとった。100ⅿ Sv 以上の被ばくでは統計学的に有意な差を証明できる

客観的なデータが存在するが、それ以下については高線量域を直線的に

外挿したものにすぎず、科学的に立証されたものではない。100ⅿSv 以

下の低線量(率)被ばくについてはリスクを証明するデータはない。放

射線疫学調査の結果から 3Gy 程度までの線量域での線量 -効果関係の型

を推定し、そのモデルに従って低線量域でのリスクを観察値から外挿し

て推定している。

(4)直線モデル( L)・直線―2次曲線モデル ( LQ)

1)白血病の線量反応は、被ばく線量が 2Gy 以 下では( 8)モデルに

従う。

2)原爆被ばく者における 3Gy 程度までの線量域での白血病の増加の

観察値は(9)に適合し、白血病以外のがんの増加の観察値では

(10)に最もよく適合する。

(5)リスクの推定

1)線量-線量率効果係数(DDREF)

高線量・高線量率被ばくで算出されたリスクは、低線量・低線量率

における 被ばくと一致しない。そこで、生物効果の減少分を補正する

線量―線量率係数(DDREF)が決められている。現在、(11)が採

用されている。高線量・高線量率被ばくで予想されるリスクの半分と

なる。

8 直線-2 次曲線

9 LQ モデル

10 L モデル

11 2

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2)( 12)は線量あたり自然発生率の何倍の影響が発生するかという

評価法である。例えば、1Sv あたり自然発がんが 1.7 倍発生すると

いった評価法である。さらに( 12)から(13)を引いて表したも

のが(14)である。これは自然発生分を除いた、すなわち放射線に

よる影響のみを示している。両者の値が一致することはない。

3)固形がんの過剰相対リスクは、被爆時年齢が若年の方が高齢の場合

よりも高い値となる。広島・長崎の原爆被爆者の死亡率に関する疫学

調査(寿命調査)では、男女平均の 1Gy 当たりの過剰相対リスクと

して、30 歳で被爆した人が 70 歳になった時点で 0.42/Gy との結

果が得られている。

4)自然発生が多いほど、相対リスクは小さい。

胃→ 過剰絶対リスクは大きい。過剰相対リスクは小さい

5)( 15)とは、線量あたりどれだけの影響が発生するかという評価

法である。例えば、1Sv あたり 5%、または 1Sv の被ばくで 1 万人

あたり 500 名などの評価法である。被ばくした部位や年齢によって

値が変化する。

6)1 万人当たりの症例数を対照群で Ic、1Gy 被ばく群で Iγとする

と、1 万人、 1Gy 当たりの過剰絶対リスクは( 16)で、1Gy 当 た

りの(17)は((Iγ/Ic)-( 18))で表される。

例 Ic: 100 件 Iγ:120 件

①過剰絶対リスク→ 120- 100= 20

②相対リスク→120÷100= 1.2

③過剰相対リスク→ 1.2- 1= 0.2

12 相対リスク

13 1

14 過剰相対リスク

15 絶対リスク

16 Ir- Ic

17 過剰相対リスク

18 1

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(6)名目リスク係数

1)がんと遺伝的影響

①全集団 100 名に 1Sv 照射をすると(19) 名ががんになる。

②通常は(19)×10- 2 と表記される。2007 年 Pub.103 では 1990

年より小さい値を示している。

③成人より全集団の方が( 20) 値となる。

④成人は就労年齢集団(18-64 歳)であり、放射線感受性の高い小 児

を含んでいない。そのため、全集団より小さい値となる。

⑤遺伝的影響は 100 名中、 0.2 名に遺伝的影響が起こる。

2)部位別の名目リスク係数

①1 万人に 1Sv 照 射したときの症例数を示す。

②名目リスク係数の大きい順

(皮膚)→( 21)→乳房→胃→結腸→(22)→甲状腺

*過剰絶対リスクと同義と考えてよい。

③全年齢集団における甲状腺がんの名目リスク係数は 33。就労年齢集

団(18~64 歳 )では 9 となる。小児の名目リスク係数が大きい。

19 5.5

20 大きい

21 肺

22 骨髄

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19.遺伝的影響

(1)遺伝的影響は放射線に被ばくした( 1) に遺伝子の(突然)変異や

(2)が起こることによる。生殖腺以外の被ばくでは起こらない。ま

た、本人ではなく、次世代に影響が出る。

(2)遺伝性(的)影響のリスクの推定には( 3)と、線量効果関係を動物

実験によって求め、これをヒ卜に適用して行う(4)とがある。

(3)倍加線量法では、( 5)す る(突然)変異率と同率の (突然)変異を

誘発する (6)を用いる。

(4)遺伝性(的)影響のリスクは、倍加線量が (7)ほど低く、同一線量

の場合には一般的に( 8)が低いほど低い。UNSCEAR (原子放射線の

影響に関する国連科学委員会)2001 年報告ではヒトにおける倍加線

量として(9)Gy を使ってリスク推定を行っている。

(5)原爆被爆者の疫学調査では、有意な増加は認められて(10) 。

(6)生殖年齢又は生殖年齢以前の被ばくでも生じる可能性がある。

1 生殖細胞

2 染色体異常

3 倍加線量法

4 直接法

5 自然発生

6 吸収線量

7 大きい

8 線量率

9 1

10 いない

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20.放射線感受性の高い遺伝性疾患

毛細血管拡張性

運動失調症

ナイミーヘン

染色体不安定性症候群 色素性乾皮症

チェックポイントが働かな

いため、DNA 損傷が修復

できず。遺伝形式は潜性 遺

伝(潜性(劣性) 遺伝) 。

高い発がん性あ り

2 本鎖切断が修復されない

紫外線に対して高感受性

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21.しきい線量

基 本

臓器・組織の急性障害は、主に臓器・組織の実質細胞の死によって起こると考えられる。臓

器・組織によって実質細胞の放射線致死感受性が違うために、障害を認めるようになるしきい

値線量も臓器・組織によって異なる。

1)一般に、現れる障害の重篤度は、被ばくした線量が大きいと高い。

1 回のγ線による被ばくでは、末梢血中のリンパ球数の減少は( 1)Gy

以上の被ばくによって起こる。

2)女性の永久不妊は( 2)Gy 以上の生殖腺被ばくによって起こり、男

性の永久不妊は( 3)Gy 以上の生殖腺被ばくによって起こる。

3)男性の一時的不妊のしきい線量は (4)Gy である。女性の一時的不

妊が起こる線量は (5)~1.5Gy であり男性に比べて高い。

4)骨髄死 (6)Gy、白内障( 7)Gy、一時的脱毛(8)Gy、放射線肺炎

症(9)Gy、皮 膚紅斑 はひとまず( 10)Gy 以上で起こる。

1 0.25

2 2.5~8

3 3.5~6

4 0.15

5 0.65

6 1.5

7 0.5

8 3

9 6

10 3

遅発性有害反応

最小耐容線量 ( Gy) 最大耐容線量 ( Gy)

5 年以内

2~5%の頻度

(TD5/5)

25~50%の頻度

(TD50/5)

唾液腺

眼(網膜)

甲状腺

視神経

脊 髄

食 道

小 腸

直 腸

肝 臓

腎 臓

膀 胱

尿 管

肋 骨

口内乾燥

網膜炎、失明

機能低下

梗塞、壊死

失 明

梗塞、壊死

食道炎、潰瘍

心膜炎

潰瘍、穿孔、出血

潰瘍、穿孔、出血

穿孔、潰瘍、狭窄

放射線肝炎、腹水

腎硬化

萎 縮

狭 窄

病的骨折

32

45

45

45

50

50

55

45

45

45

60

30

23

65

75

50

46

65

200

75

65

70

68

55

55

55

80

40

28

80

180

65

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22.生殖腺被ばく

(1)精子形成過程と放射線感受性

1)( 1)細 胞 → 第 1 次精母細胞 → 第 2 次精母細胞

→ 精細胞 → 精子

2)( 2)であるほど放射線感受性が高い。よって、最も放射線感受性

が高いのは(1)細胞である。(1)細胞が被ばくを受けると( 3)

が停止する。

3)(1)細 胞が( 4)Gy 以上の急性被ばくを受けると永久不妊となる。

4)男性ホルモン産生に関係する間質細胞(ライディッヒ細胞)は、

(1)細 胞より放射線感受性が(5)。そのため、放射線被ばく で

ホルモン分泌異常は起こりづらい。間質細胞から放出されるテスト

ステロン濃度にあまり変 化は見られない。

5)( 1)細 胞から形成された細胞が成熟して精子になるまで約 70 日間

を有する。照射時に存在していた精子が寿命を迎える(6)カ月後

から精子数が減少する。そのため、一時的不妊は直ちには起きな

い。

6)被ばく線量は多いほど一時的不妊からの回復に時間がかかる。

回復は1Gy で 9~ 18 か月、 2~ 3Gy で 30 か月、4Gy で 5 年以上

かかったとの報告がある。

(2)卵の形成過程と放射線感受性

1)分裂を始めた(7)卵母細胞は,(8)卵母細胞より放射線感受性

が高い。

2)永久不妊は急性被ばくで( 9)Gy 程度で起きる。

3)永久不妊のしきい値は年齢とともに (10)なる。

(20 代: 7Gy、40 代:3Gy)

4)(7)卵母細胞は(11)(アポトーシス)で死ぬ。

1 精原

2 未分化

3 細胞分裂

4 3.5~6

5 低い

6 2~3

7 第二次

8 第一次

9 2.5~8

10 低く

11 間期死

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5)女性ホルモンと呼ばれるのは、卵胞ホルモン(エストロゲン)と

黄体ホルモン(プロゲステロン)の 2 種類である。

6)脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホ

ルモン( LH)が卵巣に作用し、「卵胞 」が発育し始め、エストロゲ

ンが分泌される。排卵後の卵胞は黄体になり、プロゲステロンとエ

ストロゲンを分泌する。卵胞細胞は放射線感受性が高く,ホルモン

分泌異常を起こし易い。ホルモン分泌異常により早期に不妊になる

ことがある。

7)放射線被ばくで女性ホルモンの産生を担う成熟した卵胞の発育が

障害される。このため女性ホルモンの産生が一時的に減少する。

8)卵巣が被ばくした後、卵胞刺激ホルモンの一過性の(12)がみら

れることがある。

(3)変異感受性

1)精細胞の時期における放射線被ばくは変 異を誘発しやすい。

2)精原細胞に起きた変異は修復能力が高いため(13)しやすい。そ

のため変異誘発率は(14)。精子には(15)変異から( 16)する能

力がない。

3)成熟した生殖細胞(精細胞,精子)に起こる変異は,(17)効果を

示さず, (18)に比例して増加していく。

4)卵原細胞は未分化であるため修復能力が高い。そのため、変異誘発

率は低い。

12 上昇

13 回復

14 低い

15 突然

16 回復

17 線量率

18 線量

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23.皮膚の影響

(基 本)

皮膚の急性障害としては、紅斑、脱毛などが代表的なもので、脱毛のしきい線量は約 3Gy

とされ、被ばくの 2~ 3 週間後に生じる。皮膚の晩期障害としては難治性潰瘍が重要であ

る。皮膚紅斑のしきい値といえば3Gy(ひとまず)。

皮膚の晩期障害である難治性潰瘍の原因は主に血管の閉塞であるため、基底細胞よりも深

部での吸収線量が問題となる。

(1)人の皮膚は(1)、真皮、皮下組織の三層構造となっている。その

うち、( 1)には生きている層と生きていない層が存在する。後者

は死細胞からなる角質層であり、表皮の厚さの約 25%を占めてい

る。角質層は放射線感受性が( 2)、α線や( 3)からの低ネネルギ

ーβ線がこの層に吸収されても臨床的な症状は現れない。

(2)( 1)の下部には、( 4)があり、この部位に存在する幹細胞(基

底細胞)から新しい細胞が供給される。細胞分裂が激しいため、放

射線感受性が( 5)。

(3)X 線・γ線などで生ずる皮膚の障害の程度は吸収線量に応じて 4 つ

に分けられる。

第 1 度 :(6)~ 6Gy 程度の被ばく後、(7) 週間の潜伏期間を経て

皮膚は( 8)し、脱毛が生じる。しかしながら、その他の症

状はほとんどでない。

第 2 度 :(9)~ 10Gy 程度の被ばく後、およそ 2 週間の潜伏期を経

て、充血、腫脹、(10)などを起す。

第 3 度 :(11)Gy 程度の被ばく後、およそ 1 週の潜伏期を経て、高

度の紅斑、腫脹などの炎症が現れ、その後に ( 12) から

(13)皮膚炎となる。

第 4 度 :20Gy 以上の被ばく後、およそ 3~ 5 日の潜伏期を経て、は

げしい炎症を起し、進行性のびらんや(14) をもたらす。

1 表皮

2 低く

3 3H

4 基底層

5 高い

6 2

7 3

8 乾燥

9 6

10 紅斑

11 10~20

12 水泡

13 湿性

14 潰瘍

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(4)放射線照射後の皮膚反応

1)皮膚が被ばくすると紅斑(発赤)が繰り返し生じる場合がある。2Gy

超の線量で比較的広く被ばくした場合、(15)後に初期反応 (初期の

一時的な紅斑 )が見られる。これは血管の拡張および(16)の変化に

関係する。( 16)が亢 進し、浮腫や炎症性物質により(17)が刺激

され、軽い痛みを生じる。

2)主要な紅斑応答はおよそ 10 日後から( 18)の死後に次いで生じる

(19)によって発 症する。被ばくして約 8~10 週後から紅斑の晩発

性反復が見られる場合もある。これは青みを帯び皮膚の虚血を示す。

10Gy 程度の被ばくで皮膚の虚血、壊死に伴う紅斑が生じる。

3)表皮の (18)への被ばく後、徐々に死滅し、被ばく後 3~5 週以内

に表皮形成不全が発症する。表皮形成不全に関する臨床的変化の重

篤度は、放射線線量の大きさに依存する。

重篤な表皮の形成不全は(20)落 屑として顕れる。表皮の形成不全

をもたらすのと同時に毛母細胞の増殖を抑制する。その結果、一 時

的な薄毛や脱毛症が発生する。脱毛は被ばくから(21)後に現れ

る。

4)(20)落屑の治癒は、非常にゆっくりとしか進まない。このよう

な場合、続発性( 22)形成とよばれる皮膚組織の欠損に進むことが

ある。この(22)形成は、(23)の併発で著しく拡大する可能性

がある。続発性の放射線誘発( 22)は、火傷や皮膚切除による傷と

同様 ,照射領域の収縮や線維組織の形成 (瘢痕化 )の過程を経て被ばく

から約 6~10 週間あるいはそれ以上の時間をかけてゆっくりと治癒

する。

5)皮膚の晩発変化は照射後 26 週 以降から起こり、皮膚組織の

(24)、毛細血管拡張症、 晩発性壊死が生じたりするなどの特徴が

ある。毛細血管拡張症は、まれには被ばく後 52 週より前に発症が

認められる。被ばくしてから少なくとも 10 年以上は発症率と重篤

度が高くなる。皮膚の萎縮は 10Gy 程度の被ばくで 52 週以降に起

こる。

15 数時間

16 血管透過性

17 神経

18 基底細胞

19 炎症

20 湿性

21 数週間

22 潰瘍

23 感染

24 菲薄化

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(5)皮膚は体表面に位置する組織であるために、照射線量が同一であって

も、放射線エネルギーの違いにより、急性障害や晩期障害の程度は異

なる点に注意を要する。すなわち、X 線やγ線のエネルギーが異なる場

合には、 (25)による吸収線量のピークの位置(深さ)が異なり、結

果として 皮膚の( 26)への吸収線量は異なることとなる。

(6)コバルト 60 とイリジウム 192 の密封線源を比較した場合、コバル

ト 60 から放出されるγ線の平均エネルギーは約 1250keV であるのに

対して、イリジウム 192 から放出されるγ線の平均エネルギーは

350keV である。照射線量が同一である場合には皮膚の急性障害はイ

リジウム 192 の方が重篤となる。

25 ビルドアップ

26 基底細胞

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24.血液の変化

基 本

①リンパ球

・間期死により減少。照射後 1 時間以内に減少が始まる。

・寿命が 2~ 4 日と短く、造血組織から供給されないため回復は遅れる。

②顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球)

・被ばく後、 3~ 4 日で最低値。

・被ばく後、1~2 日以内に好中球は増加する。(一過性の増加)

・リンパ球より早く回復する。

③血小板

・被ばく後、 3~ 5 日で減少。

・血小板の寿命は8~ 9 日。

・照射後、10 日前後で最低値となる。

④赤血球

・被ばく後、 5~ 6 日後に若干の減少がみられる。照射後、 20 日前後で最低値となる。

・赤血球の寿命が 100~ 120 日であるので、減少する前に幹細胞が回復。

(1)骨髄は赤血球や白血球を作る造血組織である。造血作用があるときは

赤く、造血能力を失うと(1)に置き換わり( 2)を呈するようにな

る。前者を赤色骨髄、後者を( 2)骨 髄と呼ぶ。胎児までは赤色骨髄

のほか、肝臓や脾臓でも造血が行われる。生後の造血機能は赤色骨髄

のみとなり、骨髄のほとんどが赤色骨髄で占められる。その後、加齢

とともに赤色骨髄の造血機能が失われ、(2) 骨髄に置き換わってく

る。しかしながら、頭蓋骨、椎骨,肋骨、寛骨、上腕骨・大腿骨の近

位端は老年まで赤色骨髄をとどめる。

(2)造血系の障害により血液細胞の供給が止まると、末梢血の血球数の減

少となって現れる。ただし、( 3)については放射線被ばく後、数時

間から 1 日の間に( 4)を起こすことにより、最も早期に細胞数の減

少が観察される。一方、(5)については、放射線感受性が低く細胞

寿命が約 (6) 日と長いため、出血を伴わない場合には、急速な減少

はみられない。また、好中球の血液内での通常の(7) が 1 日以内と

短く、被ばく後第 1 日 目に急激に増加するが、その後線暈依存的に減

少する。

1 脂肪組織

2 黄色

3 リンパ球

4 アポトーシス

5 赤血球

6 120

7 寿命

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(3)末梢血中の細胞数は、末梢を流れる細胞自体の(8)と、(9)から

の細胞供給停止の 2 つの要因によって減少する。末梢血中のリンパ球

は機能分化を遂げた細胞であるが放射線感受性が極めて高く、( 10)

Gy 程度の照射を受けると、骨髄からの細胞供給停止を待たずに(4)

を起し( 11)日以内に急激に減少し、回復も (12)。

(4)(13)は、血中での寿命は 1 日と短いが、一部は( 14)などの臓器

に蓄えられており、感染などが起こると臓器から放出されることによ

り機能を発揮する。放射線によってもこの現象起こるため、( 13)は

被ばく後初期に血中の細胞数が増える初期増多がみられる。しかし、

細胞自身の放射線感受性は高いため、すぐに細胞数は減少に転じ、

(15)以内に最低となる。

(5)赤血球の減少は赤血球の (16)により脾 臓などで壊されるためで

ある。末梢での寿命は( 17)日程度と長いため急激に減少することは

ない。被ばく後、 5~ 6 日後に若干の減少がみられる。照射後、 20 日

前後で最低値となる。

(6)血小板数は( 18)日後から減少し、( 19)日で最低値となる。

(7)輸血用血液照射

輸血する血液に放射線を 照射し、移植片対宿主病(GVHD)を予防

する目的で実施される。

137Csγ線や X 線を 15~ 50Gy 照射する。新鮮凍結血漿はリンパ球

が壊されているため、血液照射の対象にならない。照射した血液はリ

ンパが短時間でアポトーシスを起すため、時間を置かずに使用するこ

とができる。

8 放射線感受性

9 骨髄

10 0.25

11 1

12 遅い

13 好中球

14 脾臓

15 数日

16 寿命

17 120

18 3~ 5

19 10

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25.甲状腺の影響

(1)放射線照射に伴う 甲状腺疾患には、甲状腺機能低下症( 5Gy 以

上)、急性甲状腺 炎( 20Gy 以上)、慢性 リンパ性甲状腺炎(10Gy 以

上)、自己免疫の異常を原因とするバセドウ病などがある。その他、甲

状腺に腫瘍ができる結節性甲状腺腫があり、良 性または悪性に分 類さ

れる。結 節の約 95%は(1)とされる。

(2)安定ヨウ素剤の経口 投与によって、放射性ヨウ素の甲状腺への集積 が

抑制され、甲状腺への被ばく線量が低 減される。放射性ヨウ素が体内

に(2)に服用することで、90%以上の集積を抑制できる。服用後は

少なくとも 1 日程度の効果が持続するとされる。安定ヨウ素剤の投与

は、甲状腺以外の 臓器や(3)に対しては全く効果を示さない。

(3)全年齢における名目リスク係数は 33 である。就労年齢集団(18~

64 歳)では9となる。一方、18 歳未満では 100 となることから、若

年者ほど甲状腺がんなりやすいといえる。

1 良性

2 摂取される前

3 外部被ばく

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26.眼の影響

(1)水晶体は光学的に透明な( 1)組織である。水晶体は薄い透明な膜で

覆われ、その内部には透明な蛋白質が入っている。透明な膜を水晶体

嚢といい、前方(角膜側)の部分を前 嚢、後 方を(2)と呼ばれてい

る。

(2)水晶体の主要な症状は混濁である。特に水晶体嚢の内部にある蛋 白

質の混濁が進行したものを白内障という。白内障の原因には①老化、②

糖尿病、③紫外線、④その他(外傷、炎症、先天的など)がある。この

うち、放射線被ばくでは( 2)下領域での混 濁が進み、( 2)下白内障と

なる特徴を持っている。これは、水晶体の前面で被ばくした後、白濁し

た( 3) が( 2)下に移動し集積することで発 症する。( 2)下白内障は

年齢に関係なく発症の割合が小さいが、放射線 被ばくでは(2)におけ

る混濁が起こりやすい。なお、日光、紫外線、赤外線の被ばくによる白

内障は前嚢の混濁による表在性皮質混濁となる。

(3)眼の水晶体は放射線感受性が( 4)組織の 1 つである。検出可能な

水晶体の変化は 0.2~(5)Gy で認められる。水晶体混濁の初期段階

では視力障害にならないが、線量の増加および被ばく後の経過時間に

よって症状が少しずつ進行していく。なお、潜伏期間と線量の間には

逆相関が成立する。そのため、被ばく線量の増加に伴って潜伏期間は

(6)される。また、(7)が低いほど、しきい線量値は高くなり、潜

伏期間は(8)なる。

(4)同一吸収線量では高 LET 放射線で発生しやすい。

1 無血管

2 後嚢

3 水晶体上皮細胞

4 高い

5 0.5

6 短縮

7 線量率

8 長く

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27.肺・乳房の影響

(1)肺

1)呼吸困難 ,咳 ,発熱を伴う放射線肺炎のしきい値は、急性被ばくの場

合の値は(1)Gy、 多分割照射による被ばくの場合の値は 18Gy と

なる。9.5Gy の被ばくがあると、肺炎の発生が(2) %を超えると

される。

2)6Gy を超えた被ばくになると放射線肺炎のほかに 1~3 か月の潜

伏期間経て(3)が出現する。

3)肺は( 4)や腎臓と同じように( 5) 臓器である。そのため、肺の

一部が照射されても肺全体に症状が現れることはない。

4)被ばく (6)~24 ヶ月後に( 7)に進行する可能性があり、線維化

が進行するにつれて肺機能が低下する。

(2)乳房

1)原爆被爆者の追跡調査では、乳癌の増加は被ばく後(8) 年以上経

過してから認められている。そのリスクは被 ば く時年齢が 40 歳以

上の女性に比べ,若年であるほど(9),特に 10 歳未満でのリスク

が最も高いことが示されている。

2)放射線誘発乳癌の( 10)については、自然発生での乳癌との違い

はない。

3)結核に対する気胸術後の頻回の X 線検査,乳腺炎,良性乳腺疾

患,乳児期の胸腺肥大,皮膚血管腫に対する放射線照射などにおい

て乳癌のリスク増加が認められている。

1 6

2 50

3 肺浮腫

4 肝臓

5 並列

6 6

7 放射線肺線維症

8 10

9 高く

10 組織型

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28.胎内被ばく

基 本

母親の胎内で放射線被ばくを受けた結果、胎児が被ばくすることを胎内被ばくという。胚

(胎芽)及び胎児に対する放射線の影響は、動物実験の結果並びに原爆胎内被ばく者の疫学調

査の結果により評価されている。

(1)放射線影響の観点から、受精から出生までの間は 3 つに区分されて

いる。

(1)は、ヒトでは受精後 8 日までの期間である。この時期の主な放

射線影響は(2)である。しきい線量は、マウスでは (3)Gy である。

(2)に至らなかったものは、成長を正常に続け影響は残らないと考

えられている。

(2)( 4)は、ヒトでは着床後から受精後 ~ (5)週までの期間であ

る。この時期の主な放射線影響は(6)である。しきい線量は、ヒト

では(7)Gy 程度と考えられている。

(3)器官形成期の後、出生までが( 8)期 (8 週~出生)である。この

時期では、(9)や発育遅延が観察されている。

(4)動物実験では多様な奇形が生じることが報告されているが、原爆胎內

被ばく者で認められた主な奇形は(10)である。四肢の奇形は確認さ

れていない。

(5)原爆胎内被ばく者では被ばくの影響として (9)が 観察されている。

重度知的障害が起こる可能性のある時期は 受 精 後 8~ 25 週、特に大脳

皮質の発達時期である(11)が起こりやすい時期とされている。25 週

を過ぎると大脳皮質の発達がほぼ終わり、放射線被ばくによる精神発

達の遅延は認められなくなる。

(6)小児がんのリスクは、幼児期と胎内被ばくで有意な差は認められて

(12)。成 人と比較して 2~ 3 倍のリスクがある。

1 着床前期

2 胚死亡

3 0.1

4 器官形成期

5 8

6 奇形

7 0.1

8 胎児

9 精神発達遅滞

10 小頭症

11 8~ 15

12 いない

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29.内部被ばく

基 本

体内に取り込まれた放射性物質は、主に肝臓や腎臓で代謝された後に体外に排泄される。排

泄など生物学的要因により体内量が半分になる時間を生物学的半減期 Tb という。放射性物質

は物理的半減期 Tp により壊変するため、体内に残留している放射性物質の放射能が取り込み

時の半分になる時間は、 により与えられる有効半減期で表される。

(1)摂取された放射性物質は(1)に入ると全身性に循環し、物質によっ

ては特定の臓器に (2)してその臓器の障害を起こすこともある。内

部被ばくでは( 3)の短い放射線の影響も問題となる。

(2)ヒ卜における内部被ばくによる誘発腫瘍として、造影剤と使用し

た卜ロト ラス卜注入患者における(4)や、時計のラジウム夜光塗

料文字盤工に起こった( 5)が歴史的に知られており、いずれの発

がんも( 6)線の寄与が大きいと考えられている。

(3)アルカリ土類金属に属する(7)と化学的性質が似ている 89Sr は

(8)に集積するので、悪性腫瘍の骨転移によって起こる疼痛緩和に

有効である。また、ヨウ素が甲状腺ホルモンの成分であることを利用

して、甲状腺機能亢進症の治療に(9)が経 口 剤として用いられる。

(4)核種ごとに集積部位が異なる。特に骨に集積する核 種を( 10)核種

という。

1 血中

2 集積

3 飛程

4 肝臓がん

5 骨腫瘍

6 α

7 カルシウム

8 骨

9 131I

10 向骨性

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(5)内部被ばくの特徴

1)体内に取り込まれた核種は一般に排泄しにくい。少量であっても

長期間の被ばくを受ける。また、飛程の短いα線はγ線より内部被ば

く線量が(11)なる。

2)食物から摂取された放射性同位元素は( 12)で吸収される。これ

を経口摂取という。水溶性や脂溶性の性質をもつものは(12)で吸

収されやすい。

3)気体状および RI が付着した粉塵が( 13)に伴って体内に取り込

まれる。これを吸入摂取という。(13)によって RI が( 14)に入

り,その後、一部が( 15)中に移 行する。

4)皮膚や粘膜から RI が体内に吸 収される。特に傷口面から摂取され

る。これらを( 16)摂取という。

(6)有効半減期(Teff)

1)生物学的半減期(Tb)は排泄機構(糞便,呼吸,汗など)により

体内の放射能が半分に減少するまでの時間を示す。

2)物理的半減期(Tp)は放射性壊変で放射能が 1/2 になるまでの時

間を示す。

3)有効半減期と生物学的半減 期および物理的半減期の関係は以下の

通りである。

1/Teff= 1/Tb+1/Tp

Teff=Tb×Tp/(17)

4)物理的半減期(Tp)が生物学的半減期(Tb)と比較して極めて長

い場合、有効半減期は短い方の生物学的半減期の値とほぼ同じとな

る。

5)体内にある RI に対して排泄を促進する薬剤の投与で生物学的半減

期を短くすることができる。

6)有効半減期は「時間」で決定される。RBE や(18)などは有効半

減期に影響を与えない。

11 多く

12 消化管

13 呼吸

14 肺

15 血液

16 経皮

17 Tb+Tp

18 LET

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(7)預託実効線量(実務編も参照)

1)内部被ばく線量は RI を摂取した時点からの積分値 で算出する。

2)内部被ばく線量は、一般・子供は( 19)歳、放射線業務従事者

(職業人)は( 20)年間における被ばく線量で算出する。

3)(20)年 間の( 21)に放射線加重係数を掛けると(22)線 量が

算出される。単位は( 23)である。

4)体内に存在する RI 量は、ホールボディカウンタを用いた

(24)、対象者の排泄・分泌物を測定する(25)法がある。その

他、体内摂取した施設、取り扱っていた RI 量などから計算によっ

て求める方法もある。

5)預託実効線量は( 22) 線量とその臓器又は組織の( 26)との積の

総和として求められる。

6)放射線加重係数および(26)の数値は(27)影響から求められて

いる。そのため、預託実効線量は(27) 影響のリクス評価に用いら

れる。

7)算出のプロセスは以下の通り。

19 70

20 50

21 吸収線量

22 預託等価

23 Sv

24 体外計測法

25 バイオアッセイ

26 組織加重係数

27 確率的

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(8)集団実効線量預託

1)居住する集団における年集団線量率を無限時間まで集計して得ら

れる線量である。ある線源が人の生活環境を汚染することで生じ

る。単位は man・ Sv で表される。

2)過去の大気圏核実験によるフォールアウトでの集団実効線量預託

では、放出された量が多く、半減期が長い核種の寄与が大きくな

る。線量に寄与する核種として 14C、 137Cs 、 90Sr、 104Ru、

144Ce、 3H とされている。この中で 14C は半減期が長く、集団実効

線量預託に最も大きく寄与する核種である。

(9)放射性ヨウ素の体内摂取

体内に摂取された放射性ヨウ素は(28)で吸 収される。(28)か

らの吸収率 100%である。その後、( 29)に入り 10~ 30%は 24

時間以内に(30)に蓄積される。残りは腎臓から(31)に排泄され

る。

28 消化管

29 血中

30 甲状腺

31 尿中

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30.自然放射線・人工放射線による被ばく

(1)1 年間の平均被ばく

世界平均は(1)ⅿSv、日本平 均は( 2)ⅿ Sv である。

(2)ラドン・トロン

1)世界平均は( 3)mSv、日本は 0.46m Sv である。

2)世界平均( 1)m Sv のうち、約半数は( 4)による被ばくであ

る。

3)日本はラドンによる被ばくが少ない。日本家屋が通気性の良く

木造構造であることに起因している。

4)我が国 のラドンによる被ばくは( 5)m Sv、トロン による被ばく

は 0.09m Sv である。

(3)カリウムとポロニウム

1) 40K、 210Po、 210Pb は(6) 中に含まれる。

2)体重 60kg の成人では体 内に常に( 7)Bq の 40kが存在する。

3)ポロニウムによる被ばくは(8) mSv、カリウムでは(9)mSv

とされる。

4)我が国の年間被ばく線量( 2)のうち、約半数が食品に含まれる

40K、 210Po、 210Pb からである。

1 2.4

2 2.1

3 1.26

4 ラドン

5 0.37

6 食品

7 3000~ 4000

8 0.8

9 0.18

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(3)医療被ばく

1)人工放射線による被ばくのうち、( 10)に占める割合が極めて高

い。

2)日本の医療被ばくは(11)mSv、世界では 0.6mSv とされて

いる。他国と比較して( 12)の普及台数 が高いことが原因であ

り、医療被ばくは 自然放射線より高い 値となっている。

3)検査手技別の線量は以下の通り。

4)評価対象とする集団における 1 人当たりに被ばく線量を合計し

た(13)は医療被ばくより自然放射線被ばくに方が高い値とな

る。なお、集団実効線量を算出する際には放射線治療によるもの

を含めない。

(4)日本国民 1 名当たりの被ばく線量(自然と人工の合計)

(5)宇宙線

地球上には(14)が到達し、そのうち、98%が原子核、残りの

2%は電子である。原子核のうち、87%が( 15)(水素原子核)、

12%がヘリウム、残りは重い原子核である。これらが大気を構成する

原子核と衝突して(16)反 応を起こし、その過程で陽子、中性子、電

子、γ 線、ミューオンが発生する。これを(17)宇宙線という。

10 医療被ばく

11 3.87

12 x線 CT

13 集団実効線量

14 銀河宇宙線

15 陽子

16 核破砕

17 二次

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(6)高 度

高度が高くなるほど空気が薄くなる。遮蔽効果が少なくなるため、

高度が( 18)ほど宇宙線による被ばくが多くなる。高 度 11000ⅿで

は地上の 約(19) 倍になる。東京―ニューヨーク間を往復すると約

0.2mSvの被ばくとなる。

(7)緯度

(20)の影響があり(21)ほど宇宙線は強くなる。太陽の活動によ

って宇宙線の強さは変化する。

(8)大地の構造

1)西日本の地下 岩盤は花崗岩で作られている。一方、東日本は玄武

岩である。花崗岩は自然 放射性核種を玄武岩より多く含むことから

(22)の方が大地からの外部被ばくが多くなる。

2)大地からの被ばくは(23)ⅿ Sv/年である。(24)による被ばく

とほぼ同 じ線量となる。

18 高い

19 100

20 地磁気

21 高緯度

22 西日本

23 0.33

24 宇宙線

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31.高 LET 放射線の生物作用

基 本

放射線の飛跡の単位長さ当たりのエネルギー付与を LET という。細胞の吸収線量が同じでも、

照射する放射線の LET が異なると、生物効果が大きく異なる場合がある。

高い LET を持つ放射線として、α線、重イオン線などがある。これらの放射線では生物学的効

果比が高い。また、低い LET の放射線と比べて直接作用の割合が高いと考えられる。

(1)放射線の単位飛跡当たりのエネルギー付与は(1)で表される。細胞

の高(1)放射線に対する致死感受性は、一般に低(1)放射線に比べて

(2)。また、高(1)放射線を照射した細胞の生存率曲線の(3)は

小さい。

(2)高 LET 放射線の細胞致死作用は(4) 作用の寄与が大きい。

(3)高 LET 放射線の培養細胞致死感受性に関する(5)は低 LET 放射線

に比べて小さい。

(4)低 LET 放射線では、培養液中の酸素分圧が 50mmHg の場合、

(5)は約( 6)程 度とななる。

(5)高 LET 放射線で分割照射しても細胞の致死率はほとんど変化しな

い。

(6)一般に放射線の LET が高くなるにつれ、致死効果に関する( 7) は大

きくなるが、100~200keV・μm- 1 程度で最大値となり、それ以上

では LET の増加とともに( 8)なる。

(7)(9)keV・μm- 1 程度まで RBE が増加する。X 線などに比べて修 復

しにくい DNA 損傷の収率が高くなるためと考えられている。

(8)LET が高くなりすぎると電離が密になりすぎ、RBE は( 10)する。

1 LET

2 高い

3 肩

4 直接

5 0ER

6 3

7 RBE

8 小さく

9 100~200

10 低下

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32.生物学的効果比(RBE)

基 本

RBE は基準放射線となる 200~250kV の X 線又は 60Coγ線によるある生物効果を示す吸収

線量を、対象となる放射線が同じ生物効果を示すのに要した吸収線量で除した値を示してい

る。最小値は 1 となる。

(1)ある効果を起こすのに必要な標準となる放射線の吸収線量と、ある放

射線でその反応を起こすのに必要な吸収線量 と の比を(1)とい

う。

(2)一般に LET が高くなるにつれ、致死効果に関する RBE は (2) なる

が、100~ 200keV・μm- 1 程度で (3)となり、それ以上では LET

の増加とともに( 4)する。

(3)生存率曲線から算出できる。

(4)RBE は、指標とする事象によって値が異なる。例えば、ヒト正常線

維芽細胞の細胞致死に着目した場合、200kV の X 線を基準放射線と

したときの高 LET 放射線の RBE は、生存率が 50%のときのほうが

10%のときより大きくなる。これは横軸に吸収線量を線形目盛りで、

縦軸に生存率を対数目盛でプロットした線量 -生存率曲線が、X 線では

上に凸の曲線になるのに対し、 LET の高い放射線ではほぼ直線となる

ためである。

1 RBE

2 大きく

3 最大値

4 低下

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33.放射線加重係数・組織加重係数

基 本

ICRP2007 年勧告では放射線防護で用いられる放射線加重係数は RBE に基づいてはいるが、

致死効果を指標とした研究では RBE は 1 から 3 までの値が多いのに対し、放射線加重係数は

確率的影響を評価することを目的とし、さらに安全を見込んでいるために、例えばアルファ粒

子に対しては 20 と大きな値に決められている。

(1)放射線の種類 (線 質)やエネルギーによって生物効果の大きさに違いが

あるため、放射線防護では吸収線量に (1) を乗じた等価線量が用い

られる。等価線量の単位は Sv で表される。

(2)中性子を除き、(1)は( 2)で変化しない。また、線量率が変わっ

てもは(1)の値は変化しない。

(3)β線と電子線の(1)は同じである。

(4)中性子の(1)は( 2)の連続関数として与えられている。エネルギー

が 1MeV のとき、最大値をとる。

(5)(3)影響を評価するための係数である。

(6)等価線量が同一でも、身体の組織や臓器によって( 3)影 響のリスク

が異なる。また、全身が均等に被ばくする場合と身体の一部が部分的

に被ばくする場合でもリスクは異なる。

(7)どの臓器が被ばくするかなど、被ばくの様式によって異なるリスクを

比較するために、放射線防護では、各組織・臓器の(4)に各組織・

臓器によって異なる( 5)を乗じたものの総和である実効線量が用い

られる。

1 放射線加重係数

2 エネルギー

3 確率的

4 等価線量

5 組織加重係数

父、12 の恋 、はち

ょう(0.12)

乳房 12 骨髄

胃 肺 結腸

こうかんしようぼう

し(0.04)

甲状腺 肝臓 食 道

膀胱 4

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34.放射線治療

基 本

酸 素 効 果 は 、 放 射 線 治 療 の 効 果 を 左 右 す る 重 要 な 因 子である。が ん 細 胞 は 増 殖 が 速 いた

め、腫 瘍 内に正 常 組 織 の 酸 素 分 圧 20~ 100mmHg と 異 な る 酸 素 分 圧 に お か れ て い る 細 胞

が 存 在する。この細胞は正 常 組 織 に 比 べ 放 射 線 低 感 受 性で、放 射 線 治 療 効 果 が 低 い 要 因の

一つと考えられている。このことから放射線治療においては、酸 素 分 圧 の 低 い 環 境 下 の 細

胞に対し放 射 線 増 感 効 果 を 示 し 、 酸 素 分 圧 の 高 い 細 胞 に は 放 射 線 増 感 効 果 を 示 さ な い 薬 剤

が求められている。

(1)一般に固 形 腫 瘍 の 内 部 に は ( 酸 素 分 圧 ) が 低 い 領 域 が 存 在し、その部位の腫 瘍 細 胞 は 放 射

線 抵 抗 性になる。これは放射線治療の効 果 を 減 弱 さ せ る 重 要 な 要 素であると考えられる。

重 イ オ ン 線 で は ( 酸 素 効 果 ) が 小 さ いため、が ん 細 胞 で 細 胞 致 死 効 果 が 髙 いと期待され

る。

(2)α/β値

1)早 期 反 応 型 組 織 ( 皮 膚 、 粘 膜 、 小 腸 )のし き い 値は低 い。

→一 過 性で( 1)しやすい( = 可 逆 的 )

→低 線 量 で 放 射 線 障 害が起こる。

→( 2) 組 織は早 期 反 応 型 組 織に分 類される。

→( 3) 組 織の回 復 力の方が( 2) 組 織の回 復 力 よ り 大 き い 。

→α/β値は( 4) Gy 程度

2)晩 発 反 応 型 組 織 ( 脊 髄 、 肺 、 脳 、 腎 な ど )では、血 管 の 破 壊によ

る二 次 的 な 障 害が起こり、実質組織が失われたり、結合組織が発

達したりする。その結果、( 5) や 狭 窄 、 線 維 化などが起こる。

→し き い 値 は 高 いが障害は( 6)であり回 復 は 困 難である。

→α/β値は( 7) Gy 程度

→1 回 線 量 の 大 き さ に 関 係し、 1 回線量が多いと晩発性障害の

原因となりやすい。

→晩 期 反 応 の 原 因 は 微 小 血 管 の 障 害である。臓器・組織の機能障

害や組織障害(壊 死 、 萎 縮 、 線 維 化)が晩期反応として現れ

る。

1 回 復

2 腫 瘍

3 正 常

4 10

5 萎 縮

6 不 可 逆 的

7 3

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(3)4 つ の R

1)修 復

放射線により生じた亜 致 死 損 傷 が 一 定 時 間 置 く こ と で 修 復され回

復する現象。腫 瘍 よ り 正 常 組 織 の 方 が 亜 致 死 か ら の 回 復 が 大 き い 。

放射線治療が分 割 照 射 で 実 施 さ れ る 理 由の 1 つである。

2)再 酸 素 化

①腫 瘍 細 胞には( 1)をあまり含まない低 ( 1) 細 胞がある。

②( 1) に 富 ん だ 細 胞は放 射 線 感 受 性が( 2)、放 射 線 照 射 に よ

り 先 に 死 滅する。その結果、腫 瘍 全 体 の 径 が 縮 小する。

③最 初 の 照 射 時に( 3) か ら 遠 い 位 置にあり、 (4)が 低 か っ た

細 胞 が 血 管 に 近 づ き 、 酸 素 が 供 給されるようになる。これによ

って放射線感受性が上がる。こ れ を ( 5) と い う 。

④( 5)は腫 瘍 細 胞 に 特 徴 的 な 現 象。正 常 な 細 胞には低 酸 素 状 態

が な く、( 5) は 起 き な い 。

3)再 増 殖

①( 6) 組 織 の 方 が ( 7) 組 織よりも回 復 ( repair) が 大 き い。

( 6) 組 織 が 回 復し、( 7) 組 織 が 回 復 し き れ て な い 状 態 で 次

の 照 射を行う。これにより、腫 瘍 組 織 に さ ら な る 損 傷 を 与 え 、

同 時 に 正 常 組 織 へ の 影 響 を 軽 減することができる。

②放 射 線 照 射 に よ り 死 滅 し た 細 胞 は 除 去されるが、それに至らな

かった細胞については修 復 機 能 が 働 く。

③照 射 と 照 射 の 間に DNA 損 傷 が 回 復し、休 止 し て い た ( 8) が

再 開される。これを再 増 殖という。

④( 7) 細 胞 は ( 6) 細 胞 よ り 再 増 殖(=細胞分裂の再開)が遅

く、その速 度 も 遅 い。

⑤治 療 期 間 が 延 長すると、治療後半期にが ん 細 胞 の 再 増 殖 が 加 速

され、が ん の 制 御 率が低 下する。これを( 9)という。

3)再 分 布 ( 同 調 )

①( 10) 照 射を実施すると、放 射 線 抵 抗 性であった S 期 後 期

の 細 胞が、時間の経過とともに放 射 線 感 受 性 の 高 い M 期に

分 布するようになる。

②( 10) 照 射により 1 回 目 の 照 射 で 生 き 残 っ た S 期 に あ っ た

細 胞が放 射 線 感 受 性 の 高 い 細 胞 周 期 に 移 行する。次 の 照 射 時

に感 受 性 の 高 い 周 期 に あ る 状 態 で 照 射されることになり、治

療 効 果 の 向 上 が 期 待できるようになる。

1 酸 素

2 高 く

3 血 管

4 酸 素 分 圧

5 再 酸 素 化

6 正 常

7 腫 瘍

8 細 胞 分 裂

9 加 速 再 増 殖

10 分 割

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(4)電 子 線 に よ る 治 療

1)皮 膚 面 か ら 2~ 6cm の 腫 瘍 の 治 療に適している。

2)水又は組織中の実 用 飛 程はエ ネ ル ギ ー ( MeV)の( 1) cm の距

離となる。

3)治 療 有 効 深 ( 80% 等 線 量 曲 線 )はエ ネ ル ギ ー ( MeV)の約 ( 2)

cm 程 度となる。

4)エ ネ ル ギ ー で 決 ま る 一 定 の 深 さ ま で ほ ぼ 均 等 に 照 射できる。

5)治 療 対 象 部 位 の 背 後 に あ る 正 常 組 織 へ の 照 射 が 少 な い 。

標的より深い位置にあるリスク臓器を避けたい場合に電子治療は

有効である。

6)骨 や 肺 な ど 密 度 が 異 な る 部 位 を 通 過する場合には、深 部 線 量が変

化する。

7)高 エ ネ ル ギ ー X 線と異 な り、( 3) 効 果 が な いため、皮 膚 障 害が

大 き い 。

8)X 線と異なり MLC で照射野形状を作ることはできない。

1 1/2 又 は 0.5

2 1/3 又 は 0.33

3 ビ ル ド ア ッ プ

(5)近年、陽 子 線 や 重 イ オ ン 線 を 用 い た が ん 治 療が盛んになってきた。

これらの放射線では、現在放射線治療における外部照射で一般的に使

用されている放射線と比べて、生 体 に 照 射 さ れ た と き の 線 量 分 布 が 特

徴 的である。入 射 部 位 の 皮 膚 で は 線 量 が 低 く 、 深 さ が 増 す に つ れ て 高

く な り 、 ( 4) の 終 端 近 く で 最 大 に な る よ う な 線 量 分 布になる。この

飛 程 終 端 近 く で の 最 大 部 分 を ( 5)という。生 体 の 深 部 に あ る 腫 瘍 の

治 療を考えた場合、腫 瘍 部 分 に ( 5) を 合 わ せ る こ と に よ り 腫 瘍 に 線

量 を 集 中することができる。

4 飛 程

5 ブ ラ ッ グ ピ

ー ク

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(6)ホ ウ 素 中 性 子 捕 捉 療 法 ( BNCT)

1)が ん 細 胞 に 選 択 的 に 取 り 込 ま れ や す い 薬 剤を事前に投 与する。

薬 剤にはホ ウ 素 10( 1 0B) が 標 識されている

2)投与後、体 外 か らエネルギーの低い中 性 子 ( 熱 外 中 性 子 )を病 巣

部 に 照 射する。

3)細胞内にある 1 0B と 熱 中 性 子 が 10B( 1) 7Li の中 性 子 捕 獲 反 応

を起こし、 (2)放 射 線であるα粒 子 と リ チ ウ ム の 反 跳 原 子が生 成

される。

4)放 出 さ れ た 粒 子の飛 程は( 3) μm 程度と短く,が ん 細 胞 を 破 壊

して停止する。

5)細胞内で生成された粒 子 の 飛 程 が 短 いため、隣 の 細 胞 に 影 響 を 与

え な い 。

6)ホ ウ 素 を 取 り 込 ん で い な い 正 常 細 胞 へ 影 響 を 抑 え つ つ 、 が ん 細 胞

を 選 択 的 に 破 壊することができる。

7)悪性脳腫瘍のような境 界 が 不 明 瞭 な 浸 潤 性 が んや放 射 線 治 療 抵 抗

性 の が ん等に対して高 い 治 療 効 果が期 待できる。

8)BNCT の 実 質 治 療 期 間は( 4) 日である。

9)中 性 子 は 原 子 炉から得る。近年は、 (5)で 陽 子 を 30MeV 程 度 に

加 速 し 、 (6)や ベ リ リ ウ ム と の 核 反 応 で 中 性 子 を 生 成する。

1 (n,α)

2 高 LET

3 10

4 1

5 サ イ ク ロ ト ロ ン

6 リ チ ウ ム

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35.放射性標識化合物の利用

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36.核医学

(1)放射性医薬品と検査部位

(2)アイソトープ内用療法で使用される放射性医薬品

1)甲状腺がん・甲状腺機能亢進症→(1)カプセル

2)( 2)の徐痛→(3)塩化ストロンチウム、

(4)塩化ラジウム

(3)PET 検査

1)脳神経系

①脳循環酸素代謝測定( 15O ガ ス)

②脳ブドウ糖代謝測定( 18F-FDG)

③アミノ酸代謝

④神経伝達機能

2)循環器系

①心筋血流( 13NH3、H215O、 82Rb)

②心筋代謝( 18F-FDG)

3)(5)系

18F-FDG

1 131I

2 骨転移

3 89SrCl2

4 223Ra

5 腫瘍

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