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知能情報(第11回) 「考える機械はつくれるか?」 平成21年12月22日

知能情報(第11回) - Kobe Universityhampton/Lecture/CI/Lecture20091222.pdf · 近未来の知能情報処理技術(2) • 視覚情報処理 – 現在のコンピュータはカメラで撮った写真を見て、何が存

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知能情報(第11回)

「考える機械はつくれるか?」

平成21年12月22日

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知能情報講義録要約について

• 講義録の要約は下記ホームページでアップロードできます.

http://www2.kobe-u.ac.jp/~hampton/Lecture/CI

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情報処理の仕組み

• コンピュータは情報を処理する機械

• 情報を入力する(Input)• 内部で処理をする(process)• 結果を出力する(Output)• 手順:あらかじめプログラム(命令の系列)として与えておく

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情報の入力

キーボード、マウス

デイスプレイIBM26印刷穿孔機

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情報の出力

デイスプレイプリンター

写真で見るコンピュータの歴史

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情報の処理を行う場所

• コンピュータの中で、各装置の制御やデータの計算・加工を行なう中枢部分。メモリに記憶されたプログラムを実行する装置で、入力装置や記憶装置からデータを受け取り、演算・加工した上で、出力装置や記憶装置に出力する。 (IT用語辞典より抜粋)

CPU(central processing unit)

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現在のCPU:マイクロプロセッサ

• CPUの機能を一つのチップに集積されたマイクロプロセッサが利用され、Intel社のx86シリーズと各社の互換プロセッサが市場のほとんどを占めている。

• 1回の命令で同時に処理できるデータの量によって8ビット、16ビット、32ビットなどの種類があり、値が大きいものほど性能が高い。

• 1秒間に実行できる命令の回数(「Hz」であらわされる)や、バスと呼ばれる周辺装置とのデータ伝走路が一度に運べるデータの量(「ビット」であらわされる)、バスが1秒間に行える転送の回数(「Hz」であらわされる)などに違いがあり、これらの値が大きいものほど性能が高い。

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パーソナルコンピュータ(PC)

みんなで1台のコンピュータ(メインフレーム)から1人1台のコンピュータへ

マイクロプロセッサによるワンチップコンピュータ

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PCの箱の中

CPU(処理装置)外部記憶装置(HDD)

内部記憶装置(RAM)

入出力装置

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進化するコンピュータ

マイクロプロセッサは元々コンピュータに搭載されるものとして作られていたが、最近ではコンピュータだけでなく、家電製品や工業機器などの制御のためにも使われている。特に、高機能な携帯電話やPDAでは複雑な処理を行うことが多

く、パソコン並みの性能を誇るマイクロプロセッサを搭載した製品も出てきている。

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ユビキタス・コンピューティング

米ゼロックス パロアルト研究所のマーク・ワイザー(Mark Weiser)氏が、メインフレーム(みんなで1台のコンピュータを使用)、パーソナル・コンピュータ(1人で1台を使用)に続く第3世代のコンピュータ利用形態として、1988年に提唱したコンセプト。縮めて“UbiComp”ともいう。

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ユビキタスとは

ユビキタスとは、ラテン語の“ubique=あらゆ

るところで”という形容詞を基にした、「(神のごとく)遍在する」という意味で使われている英語で、ユ ビキタス・コンピューティングとはユー

ザーにとって目に見える形でコンピュータの筐体が存在せず、「人間の生活環境の中にコンピュータチップとネットワー クが組み込まれ、

ユーザーはその場所や存在を意識することなく利用できるコンピューティング環境」をいう。

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人間とコンピュータとの相互作用

HCI(human computer interaction)

キーボード、アイコンとマウスといった伝統 的な

ユーザー・インターフェイスに変わって、ペン入力や音声認識、そのほかのデバイスを活用したコンピュータ操作、さらにはコンピュータ・ネットワーク側

が個人や現実環境の状況を把握・判断し、アクティブに働きかけるコンピュータ。

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ユビキタスネットワーク

1990年代の終わりに なって、日本では携帯

電話を始めとした小型情報端末の進化・普及に伴い、「どこからでもコンピュータを利用できる」という意味で“ユビキタス”が使われるようになった。あらゆる情報端末、機器、(ICチップを搭載した)物品が、有線/無線の多様なネットワークによって接続され、いつでもどこからでもさまざまなサービスが利用できるようになるネットワーク環境、利用環境。

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コンピュータの進化

• メインフレーム(みんなで1台)

• パーソナルコンピュータ(1人1台のデスクトップ)

• ユビキタスコンピューテイング(いつでもどこでも)

• インフォメーション・ロボテイクス(ヒトとともだち)

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コンピュータが考えるということ

• 「人間が考える」という行為をコンピュータができるか?

• A. チューリングの抽象機械(1937, USA)• McCulloch-Pittsの神経回路網モデル(1943)• ダートマス会議で「人工知能」が提唱(1950)

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チューリング機械

• 計算とは何か

• 計算できることは何か

• プログラムを組んでも解けない問題がある

チューリングテスト

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コミュニケーションと知能

コンピュータによる知能

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会話抜粋> (eliza)ELIZA> hello thereHOW DO YOU DO. PLEASE STATE YOUR PROBLEM.ELIZA> i want to test this programWHAT WOULD IT MEAN IF YOU GOT TO TEST THIS PROGRAMELIZA> i could see if it worksDO YOU REALLY THINK ITS LIKELY THAT IT WORKSELIZA> no not reallyARE YOU SAYING "NO" JUST TO BE NEGATIVE?ELIZA> noARE YOU SAYING "NO" JUST TO BE NEGATIVE?ELIZA> forget it-- i was wondering how general the program isWHY DO YOU TELL ME YOU WERE WONDERING HOW GENERAL THE PROGRAM IS NOW?ELIZA> i felt like itWHAT OTHER FEELINGS DO YOU HAVE?ELIZA> i feel this is enoughDO YOU OFTEN FEEL THIS IS ENOUGH ?

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知能の判定

ELIZAの語るもの

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考える脳・考えるコンピュータ

ジェフ・ホーキンス

1982年にパームコンピューテイング社、1988年にハンドスプリング社を設

立、現在パームワン社のCTO(最高技術責任者)を務める。ハンドヘルドコンピュータ(Palm)やスマートホン(Treo)の生みの親として、シリコンバレーでもっとも成功したエンジニアのひとり。そのかたわらで、長年脳の研究を続け、2002年に記憶と認知に関するレッドウッド神経科学研究所をつくった。

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考えるコンピュータ(1)

• コンピュータは知能を持つことができるか?

– 人工知能の研究者は、コンピュータの性能があがれば知能を持たせられると何十年も主張してきた。わたしはそう思わない。脳とコンピュータの働きは、根本的に異なっている。

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考えるコンピュータ(2)

• ニューラルネットワークは知能を備えた機械に発展するか?

– もちろん、脳はニューロンのネットワークでできている。だがその機能を解明することなく、単純な構造のニューラルネットワークに頼っているのでは、コンピュータのプログラムと同じように、知能を備えた機械に発展する見込みはない。

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考えるコンピュータ(3)

• 脳がどのように働くかを解明することはなぜむづかしかったのか?– ほとんどの科学者は、脳はきわめて複雑なので、解明できるのはずっと先だと主張している。わたしの意見は違う。複雑なのは、混乱の結果であって原因ではない。むしろ、いくつかの直感的な仮定が間違っていたために、研究者が惑わされてきただけである。もっとも大きな誤りは、知能が知的な振る舞いによって定義されているという信念にある。

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考えるコンピュータ(4)

• 振る舞いで定義されないのなら、いったい知能とは何なのか?

– 脳は膨大な量の記憶を使い、現実世界のモデルを形成している。人間のあらゆる知識と認識は、このモデルの中に蓄えられている。脳は記憶にもとづくモデルを使い、将来の出来事を絶え間なく予測する。未来を予測する能力こそが知能の本質である。

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考えるコンピュータ(5)

• 知能を備えた機械をつくることは可能か?

– 実際につくられるであろう。この数十年のうちに考える機械の実用化が進み、面白い方向に発展していくはずである。知能を備えた機械はSFに登場するようなロボットよりははるかに作りやすい。

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知能を備えた機械の姿

• 知能を備えた機械

– 人間のように振る舞う、人間と同じレベルで対話する(SFの世界)、これらはたぶんむずかしい

– 人間型のロボットを開発し、維持するためのコストは膨大であり、少なくとも当面実用化は無理

– あくまでも人間の記憶のメカニズムの実現をはかることであり、実用化の目処はたっていない

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人間の記憶のメカニズムの実現

• 人間の脳の新皮質に匹敵する記憶システムの製作は可能か?

• 記憶容量(32兆個のシナプス)– 1個のシナプスが1ビットの状態変数を持つとすれば、必要な記憶容量は8兆バイト(=8000ギガバイト、200GBHDDX40個)、実現可能

• 接続方法– 1個の細胞に1万の接続、直接接続は不可能

– 電話回線のような通信網で回線を共有可能

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近未来の知能情報処理技術(1)

• 音声認識– 「日曜日の娘のバスケットボールの試合が朝10時に変更になった」という予定をPDAで入力

– 現状の音声認識ソフトはテンプレートによるマッチングしかしていないので文脈まで理解できない

– 娘の学校がどこにあるか?

– バスケットの試合とはどんなものか?

– ヒトの脳は文章や話されたときの状況を理解している。新しい機械は新しい記憶をつくって予測することが可能になるかもしれない。

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近未来の知能情報処理技術(2)

• 視覚情報処理

– 現在のコンピュータはカメラで撮った写真を見て、何が存在するかを理解しない。

– ヒトは部屋を眺め苦もなく座る場所をみつけるがコンピュータにこれをやらそうと考えてはいけない。

– 監視カメラの映像からヒトは贈り物を持ってきたヒトか釘抜きでドアを壊そうとしているかは容易に判断できるが、コンピュータでは区別できない。

– 新しい知能機械はこのような判断機能を記憶による予測と照らし合わせて簡単にできるようになるだろう。

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今後の講義予定

• 12月24日(木) 第3限(1月5日分の補講)

– ネットワークを使ったインテリジェント空間の構築

• データマイニングとクラウドコンピューテイング

• 12月24日(木) 第4限(11月10日分の補講)

– 機械学習を体験してみよう

• 1月5日(火) 休講

• 1月12日(火) 最終回

– サイバーワールドが描く近未来社会