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62 企業と人材 2017年3月号
し合うことが必須となります。英語を共通のツー ルとすることで、英語を母国語とする人はもちろ んのこと、11 億 2,500 万人もの非英語圏の方との 会話、ひいては取引、連携、協調が可能になります。 このような時代を背景に、日本でも幼稚園や小 学校から英語教育が導入されつつありますが、留 学でもしないかぎりは、日常的に実践する機会に は恵まれません。そのため、社会人になってはじめ て、本当の意味で英語でのコミュニケーション力 が試されるということが起きているのが実情です。
企業の英語研修が抱える課題
先ほど、多くの日本企業が英語研修を実施して いると述べましたが、実施している企業からはさ まざまな課題もあげられています。この課題は、 大きく「低予算化」、「費用対効果が低い、わかり づらい」、「マス層の英語力強化が難しい」の3つ に集約されます。
低予算化
2008 年のリーマンショック後、研修費用が大幅 に削減され、その後、なかなか元の水準には戻ら ない状況にありました。そのうえ、英語研修が必 要な人数が増えて1人あたりの研修費用を下げな ければならない、あるいは、英語以外の研修を強
日本企業の海外売上比率は年々伸びており、 70%を海外売上比率が占めるという企業も増えま した。売上げに限らず、開発、製造、販売、サー ビスの提供など、ビジネスプロセスの一部を海外 で行っているという企業も数多く存在します。こ のようななかで、多くの日本企業が英語研修を導 入しています。グローバルビジネスにおける最も 主流のコミュニケーション言語は英語ですから、 理にかなった選択です。 英語は世界で最も多くの人に話されている言語 です。米国の統計会社 Statista 社が行った調査に よると、世界における英語話者人口は 15 億人お り(図表1)、世界総人口 70 憶3千万人の 21%に あたります(図表2)。ビジネスに従事する年齢層 に限れば、この割合はもっと高まります。 15 億人のうち、英語を母国語とする話者は 25%(3億 7,500 万人)に過ぎず、残りの 75%(11 億 2,500 万人)はノンネイティブスピーカーです。 これは、英語に次いで話されている、中国語の話 者の89%がネイティブスピーカーであることと対 照的です。 多様化した社会で新しいモノ・サービスを出す ためには、多様性のなかで意見をぶつけ合う、出
ベルリッツ・ジャパン 営業・マーケティング本部 法人・学校営業部 部長 清水高明
グローバル人材育成のポイント ビジネスの基礎となる英語力のつくり方
第 7回
連載
変わり続けるDNAを強化する
英語力必須の時代
63企業と人材 2017年3月号
化するために英語研修の予算を削減したいなど、 さまざまな背景から、ROI の分母となる予算に関 する課題意識が高まっています。
費用対効果が低い、わかりづらい
ROI の分子である成果に対する関心と課題意識 も高まっています。多くの場合、講師の講評、受 講者の所感、テストの点数の推移などから成果を 評価していますが、仕事のための研修なので、本 来、仕事での成果で評価できれば最良です。 しかし、すべての研修対象者が、研修を受けて すぐに業務で英会話実践の機会を与えられるわけ ではありません。また、以前、ベルリッツがある 企業にて実施した調査によれば、英語研修を受け て海外赴任させた、現地滞在歴5年未満の社員の 過半数が、「英語会議であまり発言できない」、あ るいは「発言した経験がない」と回答していまし た。 実践の場以外での評価への不信感や、話す機会 が与えられず、あるいは、与えられても活用でき ず、効果=成果を出せない社員がいます。その存 在が、費用対効果が低い、わかりづらいという印 象につながっています。
マス層の英語力強化が難しい
海外に赴く少数選抜者の英語力を上げればよ かった昔とは異なり、現在はビジネスのさまざま な局面において英語力の必要性が高まっていま す。そして、中長期的なキャリア・パスに配慮して、 早い段階で全社員に英語力を身につけさせておき たいと考える企業が増えています。 しかし、英語研修の対象者を拡大したいのに予 算が増やせなかったり、全体セミナーを行ったが 成果が不明瞭であったり、自己啓発補助金を導入 したものの利用者が少なかったりといった、目的 意識が希薄なマス層向けの研修ならではの難しさ も顕在化しています。
3つの課題に対応するヒント
低予算化という課題に対しては、各社、対象者 を選抜により絞ったり、研修の内製化に踏み切っ たりといった手段を試されています。しかし、先 ほどあげた費用対効果の低迷、またマス層を伸ば しきれないという課題は根強いようです。低予算で 高い成果を出し、マス層のモチベーションまで高
変わり続けるDNAを強化する グローバル人材育成のポイント
世界総人口における英語話者人口図表2
英語話者 21%
非英語話者 79%
世界で最も話されている言語TOP3図表1
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600
話者総数母語話者数
Hindi
Chinese
English 375(話者総数の25%)
1,500
982(話者総数の89%) 1,100
460(話者総数の71%) 650
(百万人)
64 企業と人材 2017年3月号
める ROI が高い英語研修は、どのようにしたら つくれるのでしょうか。 すべての課題を解決する鍵となるのが「モチ ベーション」です。提供する側も受ける側もモチ ベーションが低い状態で行われる研修は、受講生 の身につかない、もったいないものになります。 しかし、これは逆もまたしかりなりです。立場ご とにわけて、いくつかヒントをご紹介します。
①研修提供者のモチベーション
人材育成を担当する部門に海外赴任経験のある 事業部出身の方がいて、英語研修を主導している ケースがあります。だいたいはご自身が英語力の 必要性を強く認識されていて、英語研修に対して 意欲的で、学習方法についての知見もあり、積極 的に学習のサポートをされています。 外部の研修会社を使うにせよ、内製するにせよ、 研修を提供する側の熱意やメッセージは、研修を 受ける側に確実に伝わります。このような方がい る場合、研修は成果を生みやすくなります。 人材育成部門にそのような方がいない場合は、 英語が不得手なメンバーを英語研修担当にして、 外国籍の社員と会話させる、または、人事部に1 人外国籍社員を入れ、業務の会話を英語でする経 験をさせるというのも有効です。英語が不得手な 状態で英会話を経験すれば、英語を学ぶインセン ティブは高まります。自らの学習意欲が高まった 研修担当者は、英語研修の目的や意義を自分の言 葉で発信できるようになるでしょう。
②マス層のモチベーション
英語をいますぐ使うわけではないという社員を 対象に英語力を高めたいという場合、いくら「将 来のために」といわれたところで、受講生のモチ ベーションはなかなか上がらないものです。なぜ なら、英語を話して活躍するロールモデルが身近
にはなく、英語を話すことで何かを達成したとい う成功体験もないためです。 このような層が英語と聞かれて想起する定番 は、学校英語、あるいは「TOEIC® テスト○○ 点」といった指標です。業務に直結しない机上の 勉強でモチベーションを保つのは難しいですし、 TOEIC® テストなどでは妙に高い点数を目標に設 定して、自ら学習のハードルを高めてしまってい る方を目にします。旧来の学校英語、受験対策の 学習スタイルの弊害ともいえるでしょう。 この層のモチベーションを高めるうえで有効な 手段は、否が応でも英語に触れる機会、必然的に 英語を話さなければならない状況をつくり、英語 を話して通じたという成功体験を与えることです。 1つの案は、①でもあげましたが、対象者のい る部門に外国籍の社員を1人入れるというもので す。業務の会話だけでなくスモールトークなどを 通じて、海外事情・文化への興味を高められれば、 一時しのぎで