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environment Update 41 -海外環境関連情報誌- Vol.7 No.5 (2006.1) CONTENTS WEEERoHS 指令等の最新動向 RoHS 指令カテゴリー8 & 9 調査と対応/REACH 規則案、電池指令案にも動き 2 英国 RoHS 規則(仮訳) 6 講演録 EU のニューアプローチについて ユーエルエーペックス製品認証部 ITAV アソシエイトエンジニアリングスタッフ 岡崎 憲二氏 16 モニタリング 欧州 ・連載 欧州環境規制動向 在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42] 22 北米 ・連載 北米における環境関連動向 在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37] 44 中国23中国版 RoHS 法とその問題点/国家環境政策法の制定計画 52 組合員のページ ペンタックスの環境への取り組み ペンタックス株式会社 CSR・環境推進部 部長 岡山 63 環境・安全グループニュース 環境・安全グループ担当委員会の活動状況 67 既刊図書のご案内 『ニューアプローチ グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド(対訳版)』 (「上市」の定義等収録) 69 事務局便り 70

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environment Update 第 41 号 -海外環境関連情報誌- Vol.7 No.5 (2006.1)

CONTENTS

WEEE/RoHS 指令等の最新動向

RoHS 指令カテゴリー8 & 9 調査と対応/REACH 規則案、電池指令案にも動き 2

英国 RoHS 規則(仮訳) 6

講演録

EU のニューアプローチについて

ユーエルエーペックス製品認証部 ITAV 課 アソシエイトエンジニアリングスタッフ 岡崎 憲二氏 16

モニタリング

欧州 ・連載 欧州環境規制動向 ~ 在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42] 22

北米 ・連載 北米における環境関連動向 ~ 在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37] 44

中国〖23〗中国版 RoHS 法とその問題点/国家環境政策法の制定計画 52

組合員のページ

ペンタックスの環境への取り組み ペンタックス株式会社 CSR・環境推進部 部長 岡山 修 63

環境・安全グループニュース

環境・安全グループ担当委員会の活動状況 67

既刊図書のご案内

『ニューアプローチ グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド(対訳版)』

(「上市」の定義等収録) 69

事務局便り 70

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 2

環境・安全グループ WEEE & RoHS 指令に関する動向としては、現在 RoHS 指令の適用対象外であるカテゴリー8 および

9(医療機器および監視・制御機器)について、対象化に向けて検討するための調査が進められて

おり、また RoHS 指令の除外追加問題については、前回報告した第 2 パッケージ案件までの追加除

外決定に続き、第3パッケージが分割されてまず第1サブグループの6項目についての除外案がTACで採決される模様である。その他、REACH 規則案は 2005 年 12 月に理事会で「政治的合意」が採

択され、電池指令案は欧州議会本会議(第 2 読会)で修正案が採択されるなど節目となる動きがみ

られた。これらの動向について当組合ブラッセル事務所等からの情報に基づき報告する。

Ⅰ. WEEE & RoHS 指令関係の動向

1.RoHS 指令カテゴリー8 & 9 に関する調査と対応

(1) 経緯 ・ カテゴリー8,9 を RoHS 指令の対象とすることについて、欧州委員会は 2005 年 8 月、

英国のコンサルタント ERA 社に調査を依託した。ERA は調査に当たり、以前から協力

を申し入れていた JBCE(在欧日系ビジネス協議会、事務局:日本機械輸出組合ブラ

ッセル事務所内)に協力を要請してきたことから、JBCE は調査に協力し、情報提供、

提案等を行ってきている。

・ 本調査への対応においては、対象範囲をどこまでとすべきか、および適用除外用途と

してどのようなものが必要かという問題が重要であり、これらについてどのように決

められていくかが焦点となる。特に監視・制御機器は対象範囲が捕らえにくく、解釈

次第では産業用の機器も含めて極めて広範な機器が対象とされる可能性もあること

から、多方面の業界における検討が必要となっており、日本においても関係業界にお

いては情報交換および対応の検討を行っている。

(2) 調査日程 ・ 本調査は、およそ以下の予定で進められる。

2005 年 8 月末 調査(technical study)開始 2006 年 3 月末 ERA、中間報告書提出 2006 年 4 月頃? 欧州委員会、ワークショップ開催 2006 年 7 月末 ERA、最終報告書提出 その後、欧州委員会が影響調査(約 9 ヶ月間)の後、法案を提出

WEEE/RoHS 指令等の最新動向

RoHS 指令カテゴリー8 & 9 調査と対応

REACH 規則案、電池指令案にも動き

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RoHS 指令カテゴリー8 & 9 調査と対等・REACH 規則案、電池指令案にも動き

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 3

・ なお、法案審議は共同決定手続きにより行われる。つまり、WEEE & RoHS 指令のと

きと同様、欧州議会および理事会の審議を経ることとなり、法案提出から成立までに

は 1~2 年かかるものと見込まれる。

(3) 近況 ・ 本件について、JBCE はこれまで EU 関係当局との情報交換を行うほか欧米の関係団体、

企業と連携するための活動を行ってきているが、昨年 12 月に ERA、英国計測制御機

器工業会(GAMBICA)、英国貿易産業省(DTI)、米国企業を訪問した。その結果概要

は次のようになっている。(監視・制御機器の汎欧州団体は存在しない。汎欧州の機械・

金属の工業会連合体として ORGALIME があるが、ORGALIME が監視・制御機器の団体

としての役割を担えるとは現地では認識されていない。) ①適用範囲

制御機器、計測機器の扱いについて、ERA は WEEE 指令付属書ⅠA のカテゴリ

ー6 の例外事項(「据付型の大型産業用工具を除く。」)によって生産設備を除

外とする解釈をもっており、また欧州委員会は Fixed installation とカテゴリー

6 の例外事項は異なるものとの見解を持っていることから、カテゴリー6 の例

外事項によって大型産業設備を除外とし、それらに含まれる機器を WEEE 指令

2.1 項(指令の対象外の機器の一部をなす機器を対象外とする意味の規定)に

よって除外とする方法が有効であることおよび欧州委員会の FAQ を書き換え

る方針が有効であることが確認できた。 欧州の産業界は関心を持つものの方向性に差がある。ORGALIME が作成したガ

イダンス・ドキュメントは Fixed installation を広く解釈することによって制御

機器や大型産業用機器までも除こうとするものだが、ERA との見解に開きがあ

る。 米国の計測機器メーカーは適用範囲の問題に関心がないことが分かった。一方、

欧州メーカーは、ORGALIME が作成したガイダンス・ドキュメントのように

Fixed installation を広く解釈する方法を考えており、ERA とは異なる考え方を

持っている。 研究用機器や医療機器は ERA の解釈では除外できないため、これらの機器で大

型かつ対応が困難な機器についての対応は残る。

②適用除外 ERA は、欧州委員会が長いリストを望んでいないということもあり、適用除外

については大きな括りをしたいという考えである。例えば、日本側が主張をし

てきた検出器(Detector)という大きな括りで除外する提案に内諾したことは

大きな前進といえる。 当方からの提案についても関心が向けられた。大きな括りでの除外のために、

技術とそれに関係する光源などの発生源や検出器(Detector)を体系的に整理

し、提案する必要がある。また ERA からの要求もあり、包括除外を行いやすく

するために(放っておけばリストは長くなるという具体例を示す)、さらに個

別の適用除外の詳細を 1 月に準備して提案する必要がある。 米国メーカーは、鉛はんだの適用除外など、日本で対応が進んでいるものに対

しての適用除外申請を考えており、日本側に対しても足並みを揃えるよう要求

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RoHS 指令カテゴリー 8 & )調査と対等・REACH 規則案、電池指令案にも動き

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1)

4

があった。 欧州メーカーは据付型機器の適用除外等スコープの話をしている段階であり、

具体的な適用除外要求については準備が進んでいない模様である。 2. RoHS指令の追加適用除外(第 3パッケージ関連の動き)

第 3 パッケージ(2005 年 2 月締め切りのコンサルテーションに対して提出された除外要望項

目)の RoHS 指令追加適用除外に関して、本年 2 月 15 日に TAC(技術適応委員会)が開催さ

れることとなり、一部の項目(第 1 サブグループといわれている)について採決される模様で

ある。採決の対象となるのは、6 つの用途とされているが、このなかには日本業界が出した要

望項目は入っていない。日本業界が要望した PDP の中の鉛、SED の中の鉛および光アイソレー

タの中の鉛の 3 つの用途については、第 2 サブグループの中に入り、次回の TAC(現時点の予

定では 4 月)で採決されるとみられている。

Ⅱ.REACH 規則案の理事会「政治的合意」採択

・ REACH 規則案については、2005 年 11 月 17 日に欧州議会本会議(第 1 読会)で修正案が採

択され、理事会での審議に移されていたが、去る 12 月 13 日、臨時競争相理事会において「政

治的合意」が採択された。主要論点については欧州議会の修正案とほぼ同じ内容の修正案で

合意されたものであり、また議長国の英国が秋以降加盟国に提示してきた修正案を微修正し

たものとなっている。採択された主な内容を日本業界の関心事項を中心に以下に紹介する。 -成型品関係では、成型品に含まれる物質が意図せずに放出される場合にも届出を求める当

初案を、リストに掲載された有害性が高く環境・健康への悪影響が強く憂慮される物質が含

まれている場合に届出を求めるスキーム案に修正された(欧州議会と同じ修正)。また成型品

に含まれる物質が意図して放出される場合の登録期限を通常の登録期限と同じとするよう修

正された。 -欧州議会修正案との最大の相違は「認可」の基準である。「認可」の基準については、欧州

議会の修正案が「代替品がない物質の場合のみ認可を認め、5 年ごとに更新する。」となって

いたのを、「認可物質については代替品の可能性に関する分析を求める。更新の必要性もケー

スバイケースで判断する。」という内容に修正され、産業界にとって議会の修正案ほど厳しい

ものではなくなった。 ・ 今後の審議日程については、以下の予定とされている。

-2006 年 5 月 理事会「共通の立場」(「政治的合意」の正式文書)発表の見込み その後は、 -欧州議会(第 2 読会)で審議、理事会で審議(それぞれ修正案の相違点を中心に審議) -欧州議会案と理事会案とが同じ場合、規則成立

欧州議会案と理事会案とが異なる場合、双方の代表者からなる「調停委員会」で調整 -調停委員会で「共同草案」を承認の場合、同草案を欧州議会および理事会の双方で採択

すれば規則成立

・ 実施時期については、審議がスケジュールどおりに進めば、2007 年春頃に施行され、欧

州化学庁の設立準備に 1 年程度要した後、REACH システムが実質的に動き出すのは 2008年以降になるとみられている。

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RoHS 指令カテゴリー8 & 9 調査と対等・REACH 規則案、電池指令案にも動き

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 5

Ⅲ. 電池指令案の欧州議会本会議(第 2 読会)採択

・ 電池指令案は、理事会の「共通の立場」採択を経て、欧州議会(第 2 読会)において審議

が行われていたが、議会では環境委員会の審議、採決の後、2005 年 12 月 13 日の本会議

において修正案が採択された。今後、理事会で同修正案がそのままの形で承認されれば指

令は成立となるが、承認されない場合は欧州議会と理事会双方の代表者により調停委員会

が開催され、調整が行われることになる。調停委員会で調整が合意されれば、欧州議会お

よび理事会の承認の後、指令は成立し、合意に至らない場合は廃案となる。(因みにこれ

までは欧州議会と理事会で審議された指令案が途中で廃案となった例はあまりないとさ

れていることから、恐らく何らかの形で指令は成立することになると思われる。)

・ 以下に理事会採択の修正案(「共通の立場」)と今回議会で採択された修正案について主な

点を比較すると以下の通りとなる。電気電子機器メーカーにとっては、議会採択により機

器から電池の取り外しが容易にできることという条件が付いたことは製品設計の変更な

ど難しい問題に直面することから、このままの形で成立すると大きな影響が出るとの懸念

の声が上がっている。

理事会採択の修正案と議会(第 2 読会)採択の修正案の比較

理事会案(04 年 12 月) 議会第 2 読会案(05 年 12 月) 重金属規制 Pb ppm Cd Hg

規制なし 20(携帯型電池に適応)

5

同左 〃 〃

販売禁止 上記規制値以上の電池 〃 水銀重量比で 2%以下のボタン電池 〃 携帯型電池の Cd は以下を適用除外 非常用照明を含む緊急警報システム

〃 除外

医療用機器 コードレス電動工具(4 年後見直し)

同左 追)Hg,Cd,Pb 量の削減 or 代替

への開発および環境改善のこと

マーク表示義務 対象電池にクロスドアウトダストヒビンと含有重金

属化学記号 追)全電池への容量表示

機器内蔵電池 規制なし 廃棄時、消費者が容易に取り出し可

能なこと。Ⅱa(適用除外)を除く

回収 全電池対象/携帯型電池の適切な回収・処

理システム構築義務と目標達成度報告(毎年) 追)廃棄及び購入時、消費者からの

回収費用徴収はなし

回収目標 各国法制化 4 年以内に 25%、8 年以内に

45%を達成。対当該年及び前年 2 年まで

の年販売平均重量比 要実績報告(毎年)

本指令発行後 6 年以内に 25%、10年以内に 45%。

リサイクル率

各国法制化 3 年以内に鉛電池:65%、ニ

カド電池:75%、他:50%を達成のこと。

要実績報告(毎年)

本指令発行後 5 年以内に鉛電池

65%,ニカド電池 75%,他電池:

55%。 鉛、カドミはクローズドループ。 全電池の新リサイクル技術開発の促進

携帯型電池

① シールされていること ② 手で持ち運びできること ③ 産業用でも自動車用でもないもの

追)ボタンセルと電池パックを含む

(資料)電池工業会

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 6

命令集

2005 年 No.2748 環境保護

2005 年電気電子機器特定有害物質使用制限規則

2005 年 9 月 25 日 制定 2005 年 10 月 7 日 議会に提出 2006 年 7 月 1 日 発効

「電気電子機器中の特定有害物質使用制限」関連の措置に関して「1972 年 EC 法(the European Communities Act 1972 )1」の第 2(2)条のために指名された大臣2である国務大臣は、同条に

より付与された権限の行使にあたり、下記の規則をここに制定する。

名称および発効日

1. 当該規則は、「2005 年電気電子機器特定有害物質使用制限規則」と称され、2006 年 7 月 1日に発効するものとする。

解釈

2. 当該規則において、 「電気電子機器」とは、適切に機能するために電流あるいは電磁場に依存する機器、およびか

かる電流および電磁場の発生・伝送・計測のための機器で、分類上は、「廃電気電子機器指令

2002/96/EC3」の付属文書 1A に規定されているものに該当し、交流電流の場合は 1,000 ボル

ト、直流電流の場合は 1,500 ボルトを超えない定格電圧で使用するように設計されているも

のをいう。

「施行当局」とは、規則 10 に基づき解釈される。

「有害物質」とは、下記に示す最大濃度値を超える量の鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、

ポリ臭化ビフェニールあるいはポリ臭化ジフェニール・エーテルをいう。

鉛 均質材料において重量比で 0.1% 六価クロム 均質材料において重量比で 0.1% 水銀 均質材料において重量比で 0.1% ポリ臭化ビフェニール 均質材料において重量比で 0.1%

1 1972 c.68

(編集注:原文では、脚注はページごとに(a),(b)…が繰り返し使われているが、本文では訳文に登場する順序にて通し番

号を使用した。) 2 S.I. 2004/706 および S.I. 2003/2901 3 EU 官報 L137, 2003 年 2 月 13 日, P.24

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 7

ポリ臭化ジフェニール・エーテル 均質材料において重量比で 0.1% カドミウム 均質材料において重量比 0.01%

「生産者」とは、「遠隔地契約に関する消費者保護指令 97/7/EC4」に基づく遠隔地通信方法も

含め、使用する販売テクニックに関わりなく、下記の者とする。

(ⅰ)自社ブランドとして、電気電子機器を製造および販売する者。

(ⅱ) 他の供給業者によって生産された機器を、自社ブランドとして再販売する者。しかし、

かかる場合に、(ⅰ)に規定されているように、生産者のブランドが機器上に表示され

ている場合は、再販業者は生産者とは見なされない。

(ⅲ)電気電子機器を、EU 加盟国、ノルウェー、アイスランドまたはリヒテンシュタイン5へ

職業的に輸入または輸出する者。

当該規則が適用される電気電子機器

3. 当該規則が適用されるのは、別表 1 に規定されている分類に属する電気電子機器、および電

球ならびに家庭用の照明装置である。

当該規則が適用されない電気電子機器

4. (1) 当該規則は、2006 年 7 月 1 日より前に上市された電気電子機器の、修理用のスペアパー

ツまたはかかる機器の再使用には適用されない。

(2) 当該規則は、別表 2 に記載されている鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの用途には、

適用されない。 [編者注:2005 年 10 月の欧州委員会決定に基づき、ポリ臭化ジフェニール・エーテルも

追記される予定]

5. 当該規則は、電気電子に含まれる有害物質の使用のうち、2006 年 7 月 1 日より前に英国で

合法的に上市するために、遵守が義務付けられている他の法令・規則を遵守しているものに

は、適用しない。

現行法

6. 当該規則は、下記に関する現行の共同体制定法および国家制定法の適用には、一切影響を与

4 EU 官報 L144,1997 年 6 月 4 日, p.19、指令 2002/65/EC で修正済み(EU 官報 L271, 2002 年 10 月 9 日, p.16)。 5 「電気電子機器に含まれる特定有害物質に関する最大許容濃度値を規定する委員会決定 2005/618/EC」(EU 官報 L214/65

2005 年 8 月 19 日)で修正された、「電気電子機器に含まれる特定有害物質使用制限に関する欧州議会および欧州理事会

指令 2002/95/EC」(EU 官報 L37, 2003 年 2 月 13 日, p.19)の適用は、「EEA 共同委員会の決定 147/2003」に基づき、2003年 11 月 8 日から欧州経済領域(EEA)へ拡大された。

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 8

えない。

(a) 安全および健康に関する要件

(b) 廃棄物管理

有害物質に関する禁止

7.生産者は、2006 年 7 月 1 日以降に上市される新しい電気電子機器には、有害物質が含まれ

ないようにしなければならない。

技術文書に関する要求事項

8.生産者は、自らが上市した電気電子機器が規則 7 の要件を遵守していることを示す技術文

書またはその他の情報を準備し、国務大臣の要請があった場合、要請の日から 28 日以内に

国務大臣に提出しなければならない。

技術文書の保持

9.生産者は、規則 8 に述べられている電気電子機器に関する技術文書またはその他の情報を

当該の機器の上市の日から 4 年間保持しなければならない。

施行当局

10.(1)当該規則の施行は、国務大臣の責務であり、国務大臣は、代理としてその責務を遂行

する第三者を指名することができる。

(2)国務大臣は、スコットランドにおける違法行為に対する訴訟手続きをするものではな

い。

遵守通告

11.(1)国務大臣は、下記の規則の要件のうち、そのいずれかまたはそのすべてが遵守されて

いないという疑念を抱く合理的根拠がある場合は、生産者に通告を行うことができる。

(a) 規則 7

(b) 規則 8 および

(c) 規則 9

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 9

(2)第(1)項に基づく通告は、 (a) 当該規則の要件に対する違反が行われたという疑念を国務大臣が抱いている

旨を述べ、

(b) 当該規則の要件に対する違反が行われたという疑念の根拠を具体的に述べ、

(c) 通告を行った相手の生産者に対して、下記のことを求め、

(ⅰ)当該規則の要件の遵守、または

(ⅱ)当該規則の要件が遵守されていることを具体的に示す証拠を国務大臣

に提出する。

(d) 国務大臣によって発行された通告への生産者の遵守の期限を具体的に示し、か

(e) 通告で指定された期限内に要件の遵守が行われない場合または証拠の提出が

ない場合は、規則 13 に基づき生産者が告訴されうることを生産者に対して警

告する。

検査用購入

12.(1)国務大臣は、規則 7 の要件が満たされていることを確認するために、国務大臣配下の

官吏に電気電子機器の購入を行わせる、または購入を許可することができる。

(2)下記のような場合、すなわち、

(a)本規則に基づき、国務大臣または国務大臣の代理の者が購入した電気電子機器

が検査に供され、かつ

(b)当該検査が、結果として規則 13 に定める違反行為に対する訴訟手続きに至り、

かつ

(c)国務大臣に当該手続きを行うような要請が行われ、国務大臣がその要請に応じる

ことが現実的である場合、

国務大臣は、電気電子機器の購入者、訴訟の当事者または通告の対象となっている電

気電子機器に利害関係を有する者に対して、電気電子機器の検査を行うことを許可す

る。

違反行為

13.下記の規則の要求事項に違反する者または遵守しない者は、違反を犯したとみなされる。

(a) 規則 7

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 10

(b) 規則 8

(c) 規則 9

罰則

14.(1)規則 13(a)に定める違反を犯した者は、下記の罰則を課せられる。

(a) 即決裁判による有罪判決を受けた場合は、法定最高額を超えない罰金

(b) 起訴され有罪判決を受けた場合は、罰金

(2)規則 13(b)または(c)に定める違反を犯した者は、即決裁判による有罪判決を受

けた場合、標準等級第 5 を超えることのない罰金を課せられる。

訴訟手続きの開始

15.当該規則の下で違反が行われた時から 12 ヶ月以内に告発または告訴がなされた場合、イ

ングランドおよびウェールズにおいては、治安判事裁判所が略式起訴の裁判を、北アイル

ランドにおいては、治安判事裁判所が民事告訴の裁判を行うことができる。スコットラン

ドにおいては、かかる違反の簡易裁判は、違反が行われた時から 12 ヶ月以内であれば、

いつでも開始することができる。

相当な注意の抗弁

16.(1)当該規則の下記の規定に従い、当該規則に基づく違反のために審理を受ける者は、か

かる違反を回避するための妥当な方策をすべて講じ、精励したことを示し、抗弁する

ことができる。

(2)いかなる者に対する違反審理においても、第(1)項で規定された抗弁が、違反行為

は下記のことに起因したという申し立てを伴う場合、審理を受ける者は、裁判所の許

可を得ることなく、それを抗弁とすることはできない。

(a) 他者の行為もしくは不履行、または

(b) 他者により提供された情報に対する信頼

ただし、審理(スコットランドにおいては公判)の正味日数 7 日前までに、訴訟を起

こしている人物に、(3)項に基づき通知を行っている場合はこの限りではない。

(3)本項で規定する通知は、上記の行為者・不履行者、上記の情報の提供者を特定する、

または特定を支援する情報を提供するもので、その情報は、通知者が通知を行う時点

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 11

で所有しているものとする。

(4)他者から提供された情報に対する自分の信頼を理由として、第(1)項で規定されてい

る抗弁を行うことはできない。ただし、その者が、上記の情報を信頼したのはすべて

の状況から妥当であったことを示す場合はこの限りではないが、その際に、特に下記

のことを考慮する。

(a) 上 記 の 情 報 を 検 証 す る た め に そ の 者 が 講 じ た 措 置 、 お よ び 仮 に 講 じ た

としても妥当と考えられる措置

(b) 上記の情報を疑う何らかの理由を、その者が持っていたかどうか。

主犯以外の者の責任

17.(1)いかなる者の当該規則に定める違反であれ、それが他者の職務における行為または不

履行に起因する場合、前者に対する訴訟手続きの有無に拘らず、その他の者は、本項

に照らして、かかる違反行為を行ったとみなされ、告訴され、罰せられうる。

(2)法人の取締役、管理者、秘書役、その他の同種の幹部職、またはかかる立場で職務を

行っていると主張する者の同意もしくは黙認により行われたこと、もしくはかかる者

たちの側の怠慢に起因することが明らかにされている行為もしくは不履行に関して、

当該規則に基づき、その法人が違反行為を行ったとみなされた場合(第(1)項に照

らして有罪となる場合も含めて)、法人同様に、かかる人物も違反行為を行ったとみな

され、起訴の対象となり、しかるべく処罰されることになる。

(3)法人の社員が法人の業務を運営している場合、社員はかかる法人の取締役扱いとなり、

第(2)項は、かかる社員の運営職務に関連して、社員の行為もしくは不履行に関し

て適用される。

(4)本規則において、「法人」を指すときは、スコットランドにおいてはパートナーシッ

プ(共同経営)を指し、さらに、かかるパートナーシップに関しては、法人の取締役、

管理者、秘書役、またはその他同種の幹部職を指す場合は、パートナーを指す。

書類の送達など

18.(1)これら規則に基づき、ある者への通知の送達が義務付けられているまたは許可されて

いる書類は、下記のように送達される。すなわち、

(a) その者へ届ける、またはその者の正式な住所に置いてくる、もしくはその者

宛てにその住所へ郵送する。または、

(b) その者が法人の場合は、小項(a)に従い、その法人の秘書または事務員に送

達する。または、

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 12

(c) その者がパートナーシップの場合は、上記の小項に従い、パートナーに送達

するか、パートナーシップ事業の管理・経営管理を行っている者に通達する。

(2)第(1)項において、さらに、「1978 年解釈法6」(郵送による文書送達に関するもの)

の第 7 条を第(1)項へ適用する場合において、文書を送達する相手の正式な住所と

は、当該規則に基づき、下記の場合を除き、その者の最新の既知の住所とする。

(a) 法人または法人の秘書・事務員への送達の場合、かかる法人の登録事務所ま

たは本社とする。

(b) パートナーシップ、パートナーまたはパートナーシップ事業の管理・経営管理

を行っている者への送達の場合、かかるパートナーシップの本社とする。

本項において、英国外に登録している企業または英国外で事業を行っているパートナ

ーシップの本社とは、英国内の本社とする。

「2002 年企業法(パート 9 情報開示に関する制限)(詳説)命令 2004」の修正

19.「2002 年企業法(パート 9 情報開示に関する制限)(詳説)命令 20047」 の別表 1 の末

尾に、下記の追加記入を行い修正する。

「2005 年電気電子機器特定有害物質使用制限規則」

2005 年 9 月 25 日 英国貿易産業省

エネルギー担当国務大臣 マルコム ウィックス(Malcolm Wicks)

6 1978.c.30 7 S.I. 2004/693

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 13

別表 1 規則 3

電気電子機器のカテゴリー

1. 大型家庭用電気製品

2. 小型家庭用電気製品

3. IT および遠隔通信機器

4. 民生用機器

5. 照明装置

6. 電動工具(据え付け型の大型産業用工具を除く)

7. 玩具、レジャーおよびスポーツ機器

8. 自動販売機類

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006.1) 14

別表 2 規則 4(2)

除外用途

1. ランプ 1 本あたり 5mg を超えない範囲のコンパクト型蛍光灯に含まれる水銀

2. 一般目的用直管形蛍光灯に含まれる以下のものを超えない水銀

(a) ハロ蛍光体タイプ 10mg

(b) 平均的寿命の 3 波長タイプ 5mg

(c) 長寿命の 3 波長タイプ 8mg

3. 特別な目的用の直管形蛍光灯に含まれる水銀

4. 本別表に特に定められていないその他のランプに含まれる水銀

5. 陰極線管、電子部品および蛍光管のガラスの中に含まれる鉛

6. 合金成分として、鋼材に含まれる 0.35wt%までの鉛、アルミニウム材に含まれる 0.4wt%

までの鉛、および銅材に含まれる 4wt%までの鉛

7. 下記のものに含まれている鉛

(a) 高融点ハンダに含まれるもの(すなわち鉛含有率が 85%を超える錫/鉛ハンダ合

金)

[編者注:2005 年 10 月の欧州委員会決定に基づき、以下に修正される予定]

高融点ハンダに含まれる鉛(すなわち鉛含有率が重量で 85%以上の鉛ベースの合

金)

(b) サーバー、ストレージおよびストレージ・アレイ・システム用のハンダに含まれる

もの

(c) スイッチ/シグナル/電送用ネットワーク基地局装置および通信管理ネットワー

クのハンダに含まれるもの

[編者注:(b)と(c)は、2005 年 10 月の欧州委員会決定に基づき統合され、以下に修

正される予定]

サーバー、ストレージおよびストレージ・アレイ・システム、スイッチ/シグナル

/電送用ネットワーク基地局装置および通信管理ネットワークのハンダに含まれ

る鉛

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英国 RoHS 規則(仮訳)

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 15

(d) 電子セラミック部品に含まれるもの(例 ピエゾエレクトロニック・デバイス)

8. 危 険 物 質 お よ び 調 剤 の 上 市 と 使 用 の 制 限 に 関 す る 指 令 76/769/EEC 8 の 改 正 指 令

91/338/EEC9に基づき禁止された用途を除くカドミウム表面処理

[編集注:2005 年 10 月の欧州委員会決定に基づき以下に修正される予定]

危険物質および調剤の上市と使用の制限に関する指令 76/769/EEC の改正指令 91/338/EEC

に基づき禁止された用途を除く電気接点中のカドミウムとその化合物およびカドミウム表

面処理

9. 吸収型冷蔵庫中のカーボン・スチール冷却システムの防錆用としての六価クロム

[編者注:2005 年 10 月の欧州委員会決定に基づき、以下の用途が追記される予定]

10.ポリマー用途中の Deca-BDE

11.鉛・青銅ベアリングシェル及びブッシュの中の鉛

12.コンプライアント・ピン・コネクター・システムに使用される鉛

13.熱伝導モジュール C-リングのコーティング材として使用される鉛

14.光学・フィルターガラスの中の鉛とカドミウム

15.マイクロプロセッサのピンとパッケージの結合用で 2 種類超の成分を含有するハンダの中

の鉛で鉛含有率が重量ベース 80%超で 85%未満のもの

16.IC フリップチップ・パッケージ内の半導体金型とキャリアーの電気結合用に使用されるハ

ンダの中の鉛

8 EU 官報 L 262,1976 年 9 月 27 日, p.201 9 EU 官報 L 186,1991 年 7 月 12 日,p.59

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 16

講 演

㈱ユーエルエーベックス製品認証部 ITAV 課 アソシエイトエンジニアリングスタッフ 岡崎 憲二(当組合「基準認証委員会」前委員長)

本稿は、去る2005 年12 月20 日の合同環境専門委員会における㈱ユーエルエーベックスの岡崎 憲二氏

の講演を取り纏め、同氏のご校閲を得て掲載するものです。

本日は「欧州統合のためのアプローチ」についてお話しするのですが、その背景を知っていただ

くために、1.欧州統合の歩み、2.欧州統合/単一市場へのアプローチ、3.ニューアプローチ指

令、の順に説明させていただきます。

1.欧州統合の歩み

まず「欧州統合の歩み」を振り返ると、第 2次世界大戦の後にフランスが「欧州石炭鉄鋼共

同体」を設立し、フランス、ドイツ、その他の

ヨーロッパ諸国の石炭及び鉄鋼の生産を共同で

管理することを提案しております。当時、石炭・

鉄鋼産業は基幹産業であったので、これを共同

で開発・運営することで経済を復興して行こう

ということと、第 2 次世界大戦が勃発したそも

そもの原因の 1 つに資源を巡る領土紛争があっ

たので、基幹産業等を共同で管理することによ

り領土紛争を回避していこうということで、

「共同体」を設立することが提案されました。 実際には 1951 年に「欧州石炭鉄鋼共同体

(ECSC)」が設立されました。この条約は一般

的に「パリ条約」といわれています。当時の加

盟国はドイツ、フランス、イタリア、ベルギー、

オランダ、ルクセンブルグの 6 ヵ国でした。 「欧州石炭鉄鋼共同体」の成功を受けて 1958年に「欧州経済共同体(EEC)」、それから「原

子力共同体(EAEC‐Euratom)」の設立が提案

され、EEC 条約が締結されましたが、これは 12年 間 の 過 渡 期 の 間 に 段 階 的 に 共 同 市 場

(Common Market)を設立していくことを目的

にしたものです。この後 1965 年 4 月 8 日に「欧

州 3 共同体(ECSC、EEC、Euratom)の理事会」

及び「執行機関を統合する条約(ブリュッセル

条約)」が調印され、1967年7月1日に「ブリュッ

セル条約」が発効しています。これによって、

それまで別々だった理事会・委員会が統一され、

1 つの閣僚理事会、1 つの委員会いわゆる EC 委

員会が発足し、これ以降この 3 つの共同体は「欧

州共同体(EC=European Communities)」と称

されます。この後 1973 年にイギリス、デンマー

ク、アイルランドが加盟し、1981 年にはギリ

シャが加盟しています。 当初は、12 年の間に欧州市場を統合していこ

うということでしたが、なかなか統合が進まな

い状況があり、1985 年 6 月、EC 委員会が『域

内市場統合白書』を発表しています。この内容

は、1992 年末までに「単一市場」を実現しよう

とするものです。そのために、①物品の移動に

係る制限の撤廃、②人、サービス、資本の自由

移動に対する障壁の撤廃、③域内での競争を歪

曲しないように保証する制度の創設、④市場統

合に必要な各国の法制の整合、⑤各国間接税の

近似化、といったことが骨子となっています。 1986 年には、スペイン、ポルトガルが加盟し、

加盟国が 12 ヵ国となりました。 『単一欧州議定書』というのが『欧州市場統

合白書』を受けて出ており、1986 年 2 月に調印

EU のニューアプローチについて

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EU のニューアプローチについて

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 17

されています。1987 年 7 月 1 日、この『単一

欧州議定書』が発効し、その内容は、①EC 条約

の改正、②1992 年末までの域内市場の完成、③

欧州議会の権限の強化、④理事会における議決

制度の柔軟化、というものです。 1992 年 2 月、欧州連合(EU: European Union)

条約(マーストリヒト条約)が調印され、1993年 1 月 1 日に「単一市場が始動」し始めました。 1993 年 11 月 1 日、欧州連合(EU)が創設さ

れ、「EU 条約」が発効しました。

EU の 3 本柱 欧州連合は、①「超国家的共同体」、いわゆる

European Communities、それから「政府間協力」

中の 2 つで②「共通外交・安全保障政策」、お

よび③「司法・内政分野における協力」という

3 本柱から成っています。しかし「欧州連合」

というのは設立しましたが、欧州共同体

(European Communities)というのは依然残っ

ております。 いろいろな欧州の文書を見るときに紛らわし

いのですが、たとえば『官報』に EC と付く指

令が出てきますが、以前はEECだったのが1993年 11 月 1 日に EC に改称されております。指令

等で『官報』に載る場合は、最初に年号、次に

その文章のシリアルの通し番号、それからその

後に EC というのが付いています。

欧州石炭鉄鋼共同体は2000 年7 月22 日に消

滅しており、管轄権は EC に移っています。

2.欧州統合/単一市場へのアプローチ

~ニューアプローチの背景~ 1992 年末までに欧州統合/単一市場を実現

しようということで白書や議定書が出ましたが、

その統合、単一市場を実現するためには、①加

盟国毎に異なった法律、②加盟国毎に異なった

技術基準、③指令の採択には閣僚理事会での全

会一致が必要、④法律が高度に技術化し、その

作成改訂に時間が必要、等の障害がありました。 これら障害を新しい方法で撤廃して欧州市場

統合を加速、達成させようとするのがニューア

プローチであり、ニューアプローチでどのよう

に対応したかをみると、①加盟国毎に異なった

法律については「加盟国の法律の近似化」を目

指し、この後、様々なニューアプローチの指令

が出てきます。②加盟国毎に異なった技術基準

については「技術障壁の撤廃」、③指令の採択方

法については「加重方式の多数決に変更」、いわ

ゆ る 国 の 実 力 に 応 じ て ウ ェ イ テ ィ ン グ

(weighting)をかけて行く方式です。④法律が

高度に技術化し作成/改訂に時間がかかると

いった問題には「法律の中での個別要求事項の

規定化を廃止する」ことで障害を取り除こうと

しました。

~ニューアプローチのコンセプト~ ニューアプローチのコンセプトは、1985 年に

「技術的整合化及び標準化のためのニューアプ

ローチに関する閣僚理事会決議」が出され、こ

の決議の中で規定されています。この「ニュー

アプローチの原則」では、①法的整合化は必須

要求事項のみに限定する、②必須要求事項への

適合に係る製品の技術仕様は、整合規格で規定

する、③整合規格、その他の規格の適用は強制

ではなく、あくまでも任意である、④「見なし

規定の導入」により整合規格に適合する製品は

必須要求事項に適合していると見なす、以上の

ような原則が打ち出されています。

~ニューアプローチ:法規の中の技術規定~ 次に、法律の中で技術規定を定めることにつ

いて若干説明をして行きたいと思います。

法律の中で技術規定については、「仕様規定」

と「性能規定」があります。「仕様規定」は、法

律の中で対象製品、技術基準、測定法等を具体

的に規定をしていくものです。これは日本の電

気用品安全法の第 1 項とか、アメリカの FCC(連

邦通信委員会)の規定が「仕様規定」になって

います。 一方「性能規定」は、法規の中では「最低限

必要な要求事項」のみを規定するというもので

す。実際にはこの「性能規定」が「ニューアプ

ローチ指令:必須要求事項」というわけです。

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EU のニューアプローチについて

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 18

~ニューアプローチ:「仕様規定」と「性能規

定」のメリット、デメリット~ 「仕様規定」は、適用技術基準及び適用機器

が明確であるというメリットがありますが、製

品の技術革新に基準が追いつかないということ

で、法改訂に時間がかかるというデメリットが

あります。 一方「性能規定」は、法律は必須要求事項を

決めて、具体的な技術基準は標準化機関が作成

する規格をリファーするという形になるので、

スピーディーな基準策定ができます。また、国

際規格や地域規格を採用することができます。

デメリットは、適用基準、適用機器が時として

不明確ということがあります。

往々にして日本のメンタリティーとしては非

常に「細かいところまではっきりさせたい」と

いうところがあり、適用基準、適用機器が判ら

ないといった疑問が出てくる場合があります。

欧州の方の考え方は、不明な部分というのは製

造者が判断してフレキシブルに運用して行って

いくというものです。そのようなところで、若

干、日本とヨーロッパの違いはありますが、「性

能規定」の方はフレキシブルな対応が可能であ

るというメリットもあります。 ~グローバルアプローチ:適合性評価に関する

アプローチ~ グローバルアプローチという言葉は、欧州の

適合性評価に関するアプローチであり、以下の

点が骨子となっています。 ① 適合性評価手順のモジュール化、モ

ジュールの適用基準、適合性評価機関の

指定基準、CE マークの仕様基準を EC法の中で規定

② 品質保証に関する欧州規格(EN ISO

9000 シリーズ)及び品質保証を行う適

合性評価機関への要求に関する欧州規

格(EN 45000 シリーズ)の一般化

③ 共同体レベルでの認定システムの構築

及び相互比較技術の使用の促進

④ 非強制分野における試験及び認証に関

する相互承認協定(MRA)の促進

⑤ 加盟国間の品質インフラ(校正、度量衡

システム、試験所、認証・検査機関、認

定機関)等の格差の最小化

⑥ MRA、協力、技術支援計画による欧州

共同体と第 3 国間の国際貿易の促進

~グローバルアプローチ:適合性評価手順~ グローバルアプローチの適合性評価手順は、

「設計段階の評価」と「生産段階の評価」とに

分けられ、モジュールが「A」から「H」まで決

まっています。 「A」 は内部生産管理で、内部設計・生産管

理をカバーして、この場合は Notified Body(注:加盟国の領域で設立され、

指令で定める要求事項を満たす機関の

中から加盟国が指定した第三者適合性

評価機関。以下NB)の関与は不要です。 「B」 は EC 型式試験というモジュールで、設

計段階をカバーして生産段階のモ

ジュールと併せて適用します。この場

合は、NB が EC 型式証明書を発行しま

す。 「C」 は型式への適合というモジュールで、

これは生産段階をカバーして、モ

ジュール「B」と組み合わせて適用しま

す。この場合は、NB の関与は不要にな

ります。 「D」 は製造の品質保証ということで、同じ

く生産段階をカバーしてモジュール

「B」と組み合わせて適用します。この

場合は、NB による EN 9002 に基づく品

質システムの監査・認可が必要になり

ます。 「E」 は製品の品質保証ということで、同じ

く生産段階をカバーするけれど、モ

ジュール「B」と組み合わせて適用しま

す。この場合は、NB による EN 9003 に

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EU のニューアプローチについて

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 19

基づく品質システムの監査・認可が必

要になります。 「F」 は製品検証モジュールで、これも生産

段階をカバーしてモジュール「B」と組

み合わせて適用されます。この場合は、

型式認可された製品と同一であること

を NB が検証して、適合証明書を発行し

ます。 「G」 はユニット検証で、内部設計・生産管

理の両方をカバーします。この場合 NBが個々の製品の評価を実施して、適合

証明書を発行します。 「H」 は総合品質保証モジュールで、これも

内部設計・生産管理をカバーします。

この場合 NB による EN 9001 に基づく

品質システムの監査・認可が必要にな

ります。 以上のようにモジュールはいろいろあります

が、どのモジュールを使用するかは対象製品の

危険性を考慮して指令ごとに規定されています。

3. ニューアプローチ指令

~ニューアプローチ指令とは~ ニューアプローチ指令が意味するところは、

①CE マーキングを規定する指令、②該当する場

合は、複数の指令が同時に適用、③CE マークは、

該当する全ての指令への適合を表す、④EU 市場

に初めて出す(英語では placing on the marketと表現されており、日本機械輸出組合の基準認

証委員会では以前から「上市」という言葉を使っ

ています。)こと、あるいは EU 市場で初めて使

用することが意図された製品に適用されます。

「EU 市場で初めて使用する」という言葉は英語

ではput into serviceになっています。この場合、

第 3 国から輸入される中古の製品も対象になり

ます。⑤指令への適合責任は、製造者が負う、

といった内容になります。

~「上市」(placing on the market)~ 以前の指令、低電圧指令(LVD)、EMC 指令、

R&TTE 指令などでは place on the market の定

義はされておりませんでした。したがって、

ニューアプローチ指令の中で最初に EMC 指令

が発行されておりますけれど、この EMC 指令が

発効になった 1996 年前後には、この解釈に混

乱が見られました。

このために低電圧ガイドライン、EMC ガイド

ライン、ニューアプローチ・グローバルアプロー

チに基づく指令の実施ガイドの中で「上市

(placing on the market)」の定義について説明

が行われました。 環境分野のニューアプローチ指令である EuP指令の中では最初から指令の中で規定されてお

り、第 2 条第 4 項で「上市とは、有償又は無償、

及び販売方法にかかわりなく、共同体での流通

又は使用の観点から、最初に共同体市場で EuPを利用可能な状態にすることをいう」と定義さ

れています。したがって、法的裏付けも取れて

おりますし、これが施行されても混乱は起こら

ないのではないかと思います。

~「上市」となる時点~ placing on the market となるのはどの時点な

のか、具体的にご説明したいと思います。

まず、EU 域外、例えば日本で製造をして船積

みします。その後、EU 域内に入るときに通関手

続きが行われますが、この通関手続きの後に、

その製品がダイレクトに「販売業者」に渡るよ

うな場合には、通関が終わった時点で「上市」と

見なされます。つまり、通関が終わった時点で

流通段階(supply chain)に入ったと見なされま

す。この「販売業者」は日系の販売店、販売会

社も含まれます。 2 番目の例として、通関の後に「欧州の認定

代理人」に製品が移る場合は、「認定代理人に

移った後に、認定代理人が販売業者に製品を出

した時点」が「上市」となります。 「認定代理人」は日本の欧州現地会社が認定

代理人と見なされるわけではなく、必ず契約を

結び、日本の会社が「欧州の当該会社を認定代

理人と指定します」という契約書を作っておく

必要があります。そうしないと「認定代理人」

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EU のニューアプローチについて

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 20

とは見なされません。 3 番目の例として、通関の後にその製品の組

立て、梱包、加工等を行うために欧州の中の倉

庫とか工場にいったん製品を持ち込み、そこで

組立て、梱包、加工等をする場合は、その組立

て、梱包、加工が終った後、その製品が出荷さ

れた時点で「上市」となります。 一方、欧州域内にある工場の場合には、工場

から販売業者に製品が移動する時点、つまりト

ラックに乗った時点で「上市」ということになり

ます。 物理的な製品の移動の代わりに、書類上で所

有権の移転を行った場合は、所有権の移転を

行った時点が「上市」となります。

~「上市」と見なされる例~ 「上市」と見なされる例として以下があげられ

ます。

① ディラーに販売促進用として試作品を

渡した場合 ② 日本から調整用の電動治具を送って

EEA(欧州経済領域:EU 加盟国+ノル

ウェー、アイスランド、リヒテンシュタ

イン)内の自社工場で使用した場合

(注:ニューアプローチの規制地域は

EEA)

③ 日本の工場で使用していた中古のロ

ボットを EEA 内の自社工場で使用した

場合 ④ 製品の販売前に製品に係るソフト制作

するために、日本仕様のモデルを改造し

て現地ソフト制作会社に貸し出した場

~「上市」と見なされない例~ 「上市」と見なされない例としては、以下があ

げられます。

① ダイレクトメール販売を目的としてメー

ルを送付 ② 見本市のため試作品を現地販売会社に送

り、現地販売会社が出展 ~「見なし規定」~ ニューアプローチ指令の 1 つの特徴として

「見なし規定」というのがあります。規格

(standard)はあくまでも任意となっています

が、EU の『Official Journal』で公示されている

「整合規格」に適合した製品については、その

指令が規定する必須要求事項に合致していると

見なすというのが「見なし規定」です。 「EuP 指令」の場合は、第 9 条第 2 項でこれ

が規定されており、内容は「加盟国は、EU の

『Official Journal』で公示されている整合規格を

適用した EuP は、それら規格が関係する適用可

能な実施規則(Implementing measure)の全て

の関連要求事項に合致していると見なさなけれ

ばならない」と規定しています。つまり、「整合

規格の適用」というのは非強制であり、他の規

格・基準を使用して指令への適合の立証が可能

になっています。

欧州委員会や CENELEC 等と会議をすると、

「整合規格というのは非強制であり、いろいろ

な指令の適合の立証手段が製造者にあります。

製造者には幅広い選択肢を与えています。」と、

これまでに何度も言われています。 しかしながら製造者にとって、特に日本の場

合に、「幅広い選択肢を与えられている」とは言

われても、整合規格を使用しない場合の指令へ

の適合立証が非常に難しいということで、「実

質的には整合規格は強制」というふうに受け止

められています。実際に殆どのケースで整合規

格を使用していることになります。

~「整合規格」~ 「整合(EN)規格」は、欧州委員会からのマ

ンデートに基づいて欧州標準化機関(CEN、

CENELEC、ETSI)が作成した EN 規格で、一般

的には IEC規格をENに置き換えたものですが、

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EU のニューアプローチについて

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 21

IEC での規格化作業がない場合や遅れている場

合、欧州が先行して規格を作成する場合もあり

ます。例えば、EMC 指令の中の EMC の EN 規格

とか、EMF(電磁波人体暴露)規格といったも

のが IEC より先行して、これまでに幾つか出て

きています。

「整合規格」の『Official Journal』での公示は、

最近は通常年 1 回になっていましたが、2005年は年 2 回出ています。 問題となる例の 1 つは、EMC の場合、規格の

修正・改訂が頻繁にあるのですが、CENELEC 規

格として発行されていても『Official Journal』で

公示されていない EN 規格の使用は Competent Body(適合性評価をする資格のある機関のこと。

EMC 指令でのみ使用され、新 EMC 指令では

Competent Body が廃止され、Notified Body と

なる)の証明書または技術レポートが必要と指

令で規定されています。従って年1 回の『Official Journal』での公示というのは非常に間隔が長過

ぎて、製造者にとっては不便であるという問題、

あるいは新旧規格の移行期間が通常 3 年と設定

されているので、短すぎる場合があるといった

問題がこれまで出ています。

ただし、Competent Body の証明書または技

術レポートにつきましては、新 EMC 指令が

2007 年 7 月より施行されれば、この問題は解消

されます。

問題となる例の 2 つ目は、EMF 規格は低電圧

指令でカバーされており、必須要求事項の 1 つ

として規定されていますが、当初、EMF に係る

「整合規格」は存在しておりませんでした。し

かし、2002 年に急に共通 EMF 規格ということ

で『Official Journal』で公示されて、その日から

「整合規格」への適合が(半)強制になってし

まった、猶予期間もなしに公示日以降(半)強

制になったという事例もあります。 「整合規格」への日本からの意見反映は、一

般的には IEC 規格と整合していますし、投票等

も parallel voting が行われるので、IEC 標準化

活動を通じて反映が可能です。

CENELEC が先行して規格を作成するとか、作

成している場合には、JISC-CENELEC 情報交換

会議が年 1 回開催されていますので、この会議

を通じた意見提案が可能です。また、2005 年

10 月に JISC-CENELEC の間で MoU(注:双方

の標準化活動に関する情報交換の促進、技術委

員会への相互参加等を通じた包括的な協力関係

の強化を目的とする覚書)が締結され、この

MoU に基づき、CENELEC の TC(Technical Committee)関連委員会に直接参加して意見反

映を行うことが可能になりました。 ~ニューアプローチ指令施行後の変化~ これまで EMC 指令とか、低電圧指令、R&TTE指令等の経験をした感想ですが、ニューアプ

ローチ指令によって各国毎の認可取得が不要に

なり、例えば、安全については、以前は国別に

DEMKO、SEMKO、VDE などの認可を取ってい

ましたが、これが voluntary になりました。こ

のことにより、欧州向け単一モデルが可能にな

り、北欧とか欧州大陸の各地域向けというよう

に、細かくモデルを切り替える必要がなくなり

ました。

当初、ニューアプローチ指令が出た時点では、

域内メーカーを保護して日本メーカーを集中的

に取り締まるのではないかという予測もありま

したが、結果的には杞憂に終わっています。 マーケット・コントロールについては各国の

機関が行っていますが、これまでは日本メー

カーだけではなく、平等に取り締まられている

と思います。ただ、ニューアプローチ指令、特

にEMC 指令が強制になったのは1996 年ですが、

この当時適合性評価を全く行っておらず、ただ

「CE マーク」を貼付したのみの製品が出回り問

題になったことはあります。 以上、ニューアプローチに関して説明させて

いただきましたが、ニューアプローチ指令に

よって製造者の責任の自覚化が出てきたのでは

ないかと感じております。

(編者注:69 ページに当組合の既刊図書

『ニューアプローチ グローバルアプローチに

基づく指令の実施ガイド』の紹介があります。)

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 22

連載

欧州環境規制動向

~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

I. EU

1. EPP-ED、欧州議会本会議(第一読会)で

採択の REACH 規則案を批判

REACH 規則案については、2005 年 11 月 17日に欧州議会本会議(第一読会)において修

正案を採択し、12 月 13 日には臨時競争担当

閣僚理事会で理事会としての修正案を基本合

意した(政治的合意)。今後、理事会の修正案

は「共通の立場」として正式に発表され、そ

の後、欧州議会第二読会の審議が行われるこ

とになっているところ、第二読会での審議を

占う上で参考になると思われるので、第一読

会終了後の主要な政党グループおよび議員の

意見を以下に紹介する。 欧州議会の最大政治勢力である欧州人民党・

欧州民主党グループ(EPP-ED:the European People’s Party-European Democrats)は、ス

トラスブールで開催された本会議後、本会議

における認可問題の扱い方を激しく批判し、

欧州議会第二読会において本会議の採決を覆

すと誓った。

同グループの REACH 規則案担当広報官を務

めるオランダ出身議員 Ria Oomen-Ruijten 氏

は、採決の後、次のように述べた。「残念なが

ら、緑の党、社会党および自由党議員が手を

組み、同規制案の認可制度を実行不可能かつ

極めて官僚的なものにしてしまった。従って、

私は、欧州議会の第二読会に期待している。

第二読会では、予期される理事会の立場に沿

って、我々はこのような異例の内容を本文か

ら排除するつもりである。」

EPP-ED の声明文によると、欧州議会は、5 年

毎の更新すなわち「化学物質に関する全手続

きが繰り返される」という「複雑な制度」の

支持を決議した。EPP-ED は、リスクに基づ

く科学的なアプローチによる制度を提案して

いた。つまり、当該化学物質のリスクが適切

に管理されている場合には、期限を設けずに

認可を与える制度である。また、見直しの時

期については、初認可の時に案件毎に定める

というものであった。

採決の後、同案に関する欧州議会の意見を起

草した Guido Sacconi 議員(イタリア-社会

党)は、記者会見で次のように述べた。「我々

は、一方において環境および労働者を保護し、

他方において EU として欧州産業界の競争力

を阻害することがないように、適切な均衡を

図ることができる条件を整備した。」同議員は、

「より良い均衡が得られた」として、欧州議

会はそれに成功したとの自信を示した。

同議員は、採決の 2 日前、欧州議会の討論の

中で次のように指摘した。「特に主要な章に関

して、理事会が欧州議会の立場にかなり歩み

寄ってきていることを理解することになるで

あろう。」同議員はまた、欧州委員会も欧州議

会の立場を承認すると思われるとの見解を示

し、「原則に関わる部分において各組織間に歩

み寄りができないほどの意見の違いはない」

ことを強調した。

同議員は、あらゆる利害関係者が「必ずしも

今回の合意内容を歓迎する訳ではないであろ

うが、我々が妥協の結果、REACH 実現に向け

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 23

て実際的な合意に達したことを認め、受け入

れてくれるであろう」との認識を示した。同

氏はまた、今回の合意を取り付ける作業は容

易なことではなかったと述べた。「楽な仕事で

はなかった。困難を極めたが、結果的には報

いられた。」

EPP-ED が第二読会で今回の決議を覆すと脅

しをかけているのに対して、同議員は「第二

読会はそれほど困難ではないと思う」との見

通しを示した。同議員は、歩み寄りの一環と

して登録制度に適用除外を導入したことにつ

いて「必ずしも大喜びしているわけではない」

ことを認めた。「私は必ずしも賛成しているわ

けではないが、大騒ぎするつもりもない。」

Sacconi 議員は次の点を強調した。「少量生産

化学物質の登録に関して妥協したが、実際に

は、企業が情報を作成または提供する方法を

変更しただけであり、化学庁のデータベース

に格納される化学物質に関する情報量は減っ

ていない。情報量が欧州委員会の予想を下回

る場合もあるが、そうでない場合もある。我々

は、本質的な部分すなわち証明責任負担問題

の基本的原則を保持するよう努力した。」同議

員は、ある質問への回答の中で、「登録後の同

制度全体の中枢部分に関する」欧州化学庁の

権限が強化されたことを認めた。「我々は、い

わゆる評価段階を化学庁の権限の中枢に置い

た」と述べた。

欧州自由民主連盟(the Alliance of Liberals and Democrats)は、「化学物質の安全性に関

する新制度案を骨抜きにしようとする化学物

質業界ロビー団体の試みは、ストラスブール

の欧州議会議員によって阻止された」との声

明を発表した。

同グループの REACH 担当広報官を務める英

国出身自由党議員 Chris Davies 氏は次のよう

に補足した。「あまりにも長い間、我々は地球

を巨大な化学実験セットのように扱ってきた。

ようやく欧州は、この状況を管理し、世界的

な安全基準を定めようと対策を講じていると

ころである。科学的知見によって新たなスキ

ャンダルが明るみに出るまで待つのではなく、

今後、化学企業は製品を上市する前に安全性

を証明しなければならない。」

同議員は、「同案を阻害しようとあらゆる策を

駆使してきた業界ロビー団体」を強く非難し

た。しかし、「欧州議会議員は、安全性の証明

に要求される試験の数を減らすことによって、

産業界の実施コストを引き下げるための策を

講じたが、健康や環境に脅威を及ぼす可能性

のある化学物質の 99%は特定できる」と強調

した。

しかしながら、緑の党/欧州自由同盟(EFA:

European Free Alliance)は、「本日欧州議会

によって採択された有害化学物質の規制を意

図した新 EU ルールでは、人間の健康や環境

を守ることはほとんどできないであろう」と

警告した。

英国出身の緑の党の Caroline Lucas 議員は、

次のように主張した。「社会党議員と保守党議

員との間の合意によって、この法案の至る所

に業界の強い影響力が反映される結果になっ

た。この法案は、欧州市民の健康を犠牲にし

て、コスト削減および自己利益の追求のため

に書き直されている。」また、同案は、2 年に

及ぶ論争と、最も激しいロビー活動が展開さ

れた後に採択されたが、「すっかり骨抜きにさ

れ、健康や環境へのメリットはほとんど得ら

れないであろう」との声明が発表された。

同 議 員 は 、「 本 日 採 択 さ れ た い わ ゆ る

『Nassauer 妥協案』は、同指令の適用対象と

なる化学物質の数を削減している-生産量が

1~10トンの範囲内にある化学物質は90%も

削減されており、業界に大きな抜け道を与え

ている」と述べた。「また、同案は 10 キロ~

1 トンの範囲内にある化学物質を適用対象か

ら除外しており、新しい化学物質を規制する

現行法の効果を弱める結果になっている。」

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 24

2. 欧州司法裁判所、英国の排出量取引制度

に関する訴えを支持

欧州第一審裁判所(the European Court of First Instance)は、欧州排出量取引制度に基

づく国別排出枠割当計画(NAP:National Allocation Plan)は変更できないとする決定を

不服とする英国政府の訴えを支持した。

欧州委員会は、2004 年 4 月に英国政府が NAPを同委員会に提出する際に当該割当は暫定的

なものと強調していたにもかかわらず、排出

企業間で排出量を割り当てできるようにする

英国案の変更を認めなかった。英国が裁判所

に訴えたのに対して、2005 年 11 月 23 日、

裁判所は、英国案の変更を認めることはでき

ないとする欧州委員会の決定に関して、特に

英国政府が NAP は暫定的なものであること

を明確にしていたことを理由に、無効との判

断を示した。2003 年排出量取引指令に基づき、

各国は、NAP の中で加盟国が割当予定の総排

出枠と、企業間における割当方法を明確にし

なければならない。2005 年 1 月 1 日にスタ

ートした当初 3 年間の排出量取引期間に関し

て、加盟国は 2004 年 3 月 31 日までに計画案

を欧州委員会に提出しなければならなかった。

その後、NAP が指令に定められた基準を満た

さなかった場合、欧州委員会は 3 ヶ月以内に

その全部または一部を拒否することができた。

また、国家計画を変更する場合にも委員会の

承認を必要とした。さらに、加盟国は、委員

会が 2004 年 10 月 1 日以前に承認した NAPに基づき、市民と協議の上、最終決定を下さ

なければならない、と指令では定められてい

る。

2004 年 4 月 30 日に英国は欧州委員会に NAPを提出しているが、2005 年から 2007 年まで

に総排出枠 7 億 3,600 万トンの二酸化炭素

(CO2 換算トン)を割り当てる計画であるが、

この計画は現在進められている作業の結果を

待って変更される可能性があることを強調し

ている。2004 年 6 月 9 日、委員会は、英国

に NAP の不備を英国に伝え、抜けている情報

を提供するとともに「修正」がある場合には

委員会に報告するよう求めた。英国は、作業

文書に関するパブリックコメントを求めてい

る最中であり、修正する場合にはできる限り

早急に委員会に伝えると回答した。

2004 年 7 月 7 日、委員会は、英国の計画に

は指令との整合性に欠ける部分があるとの決

定を採択し、2004 年 9 月 30 日までに矛盾す

る箇所を訂正するよう英国に求めた。特に重

要な点として、この時の決定には、英国がす

でに要求済みの 7 億 3,600 万 CO2 換算トンを

超過する NAP の策定は不可能であることも

明記された。

英国はこの期限を守ることはできないと委員

会に伝え、2004 年 11 月に NAP 修正案を提出

した。それには 7 億 5,600 万 CO2 換算トンま

で排出枠を増加するという内容が含まれてい

た。その後、2005 年 4 月 12 日、委員会は、

英国には委員会が発見した誤りを訂正する以

外に NAP を修正する権利はなく、2004 年 7月の決定で排出枠の増加は認められていない

ので、英国の修正を認めることはできないと

の決定を採択し、議論を呼ぶことになった。

1 ヶ月後、英国は、欧州第一審裁判所に、迅

速手続き(fast track procedure)により 2005年 4 月 12 日の決定を無効とするよう求めた。

2005 年 11 月 23 日、裁判所は、欧州委員会

はどのような修正提案も認めているとして、

国家計画に関する最終決定は加盟国に委ねら

れているとの英国を支持する判断を示した。

また、裁判所は、指令によって義務づけられ

ている公開協議の有効性が失われるとして、

委員会が加盟国の修正提案権を制限すること

はできないとの判断を示した。裁判所は、「提

案される可能性のある NAP 修正事項が委員

会の想定範囲内に制限されるなら、パブリッ

クコメントは純粋に学術的な内容になってし

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 25

まうであろう」との見解を示し、コメントに

よって必要な排出枠が増加する場合もあり、

また、指令には委員会が増加を阻止するよう

求める規定は「存在しない」と指摘している。

裁判所は、指令の主要目標である排出量削減

に言及し、計画の根拠となる特定セクターま

たは施設の排出量に関する情報が誤っている

場合、当該加盟国には「欧州経済のニーズを

尊重しながらも、総排出枠の増加など、かか

る問題に対処するための修正を提案する権利

が与えられなければならない」と述べた。し

かし、裁判所は、提案内容が指令に準拠して

いない場合、委員会は事に応じてこれを拒否

することができると強調した。

このような判断に基づき、裁判所は、英国に

は最終決定を採択するまで NAP 修正案を提

案する権利があると述べた。「委員会には英国

がその権利を執行することを妨げる権利はな

い」との判断を示した。

また、英国が最初の計画は暫定的なものであ

ることを強調していたことから、裁判所は、

英国の排出量増加案が排出枠の不足を招くと

いう深刻な影響を及ぼし、排出量取引市場を

不安定化させる可能性があるとする委員会の

主張も退けた。「提案されている増加分は英国

の排出枠の 2.7%に過ぎない。特に、英国が

修正を提案した日に、委員会が 9 加盟国の

NAP に関する決定を採択していなかったこと

を考慮すると、市場の開始 7 週間前に発表さ

れた当該増分によって、どのように市場を不

安定にさせたかについての委員会の説明は不

十分であると裁判所は判断する。」

このような判断が示された後、委員会は当該

決定を不服として控訴するかどうかについて

は明言を避けた。「当然の事ながら、委員会と

しては、判決が出されてから数時間以内に控

訴するかどうかの決定を下すことはできな

い」と、広報官は記者会見で述べた。控訴す

る場合には 2 ヶ月以内に行わなければならな

いので、控訴するにしてもいくつかの法的観

点に絞られるであろう。」

さらに、広報官から次のような補足があった。

今後、委員会は判決の内容を検討するが、「現

段階で何かを予測または予断することは余り

にも時期尚早である。」同氏は、英国の排出枠

が 7 億 3,600 万 CO2 換算トンとなるか 7 億

5,600 万 CO2 換算トンとなるかについても明

言を避け、今後、委員会は英国の提示案を検

討し、指令の基準に従って評価すると述べる

にとどまった。

委員会は今後ポーランドからの排出枠増大を

求める同様の要求にどう対処していくのかと

の質問に対して、同広報官は、関係当局によ

る当該案件の検討が必要であると回答した。

3. CDM によるクレジット利用規則を成立さ

せたのは一部の加盟国のみ

EU 排出量取引制度(ETS: the Emissions Trading Scheme)に定められた目標を達成す

るために海外で取得した排出削減クレジット

の利用を企業に認める規則を、2005 年 11 月

13 日の期限までに定めた加盟国は一部にと

どまった。

アナリストによると、多くの加盟国がまだ EUリンク指令(2004/101/EC)を国内法化し

ていないという事実は、クリーン開発メカニ

ズム(CDM:Clean Development Mechanism)

プロジェクトへの多くの潜在投資家の意欲を

そぐ結果になるという。それにもかかわらず、

排出削減を義務づけられる多くの企業は積極

的に CDM プロジェクトに参加している。

京都議定書に定められた CDM 規定によると、

発展途上国における温室効果ガス排出削減プ

ロジェクトによって獲得したクレジットは、

先進国の排出目標達成のために組み入れるこ

とができる。

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 26

一部の欧州諸国の政府機関および民間企業は

すでに世界中の途上国における CDM プロジ

ェクトに積極的に参加している。しかしなが

ら、一部の EU 加盟国の企業は、認証排出削

減量(CER:Certified Emission Reduction)と

して知られる CDM クレジットの EU 目標への

組み入れに関する明確なルールがないことか

ら二の足を踏んでいると、Evolution Markets LLC の環境市場部門のブローカーである

Gilles Corre 氏は述べている。リンク指令の実

施方法に関して加盟国に相当の自由裁量が与

えられているので多少の差異が予想されると、

同氏は記者会見で述べた。

リンク指令は、ETS 参加企業が ETS に参加し

ていない国で獲得したクレジットを国内排出

目標の達成のために使用する方法を定める規

則を公布するよう加盟国に義務づけている。

同指令は、当該取引制度を定める排出量取引

指令(2003/87/EC)の修正指令である。

リンク指令が定める代表的な 2 種類の排出削

減クレジットは、CER と、共同実施(JI:Joint Implementation)によるクレジットである。

JI クレジットは、京都議定書に定められた目

標が自らにも適用される先進国で発生するの

に対して、CDM プロジェクトは発展途上国で

しか実施できない。しかしながら、JI クレジ

ットは、京都議定書に定められた「第一約束

期間」すなわち 2008 年から 2012 年でなけれ

ば蓄積できない。一方、CDM クレジットはす

でに蓄積が開始されており、EU の ETS の第

一期において取引可能となっている。第一期

は 2005 年 1 月に開始しており、2007 年末ま

でを期間とする。

欧州委員会が定めた期限までに、オーストリ

ア、デンマーク、フランス、ドイツおよびア

イルランドはリンク指令を国内法に置き換え

る規則を公布しており、オランダと英国は議

会に法案を提出済みである。

4. ディマス委員、EU 気候変動政策に対する

熱意を表明

最近モントリオールで気候変動に関する国際

会議が開かれた。その開幕の数日前に、ブラ

ッセルで、ディマス環境担当委員は、国際社

会はこの機会を捉えて、気候変動枠組み条約

のすべての締約国を全面的かつ建設的に参加

させて、2012 年以降の気候変動を制限するた

めのグローバルな対策について交渉を開始す

べきだと警告を発した。

また、ディマス委員は、ブラッセルで開かれ

た会合において、カナダがモントリオールで

5 ヵ年適合化作業計画に関する合意を取り付

けようと努力していることに対して、これを

支持するメッセージを発表した。さらに、同

委員は、モントリオールにおいて CDM 理事

会(Executive Board)の運用規定の修正を EUの優先議題とするよう提案した。また、欧州

はマラケシュですでに結論に達した議論(遵

守メカニズム)を再び開始させようとする動

きを阻止するよう警戒を怠ってはならないと

警告を発した。

同委員の発言の多くは、前日の英国議員の会

合での発言を反映したものであった。前日の

会合で、ディマス委員は、開放的かつ建設的

な討議を通じて、2012 年以降の体制に関する

交渉の開始に合意を取り付けることを誓った。

その内容は、先進国には強制的な排出削減目

標を定めるものの、インドや中国など主要な

発展途上経済も含めた発展途上国には柔軟性

を与えるものとなる。

「我々は、発展途上国も先進工業国と同じコ

ミットメントを引き受けるべきであるとか、

また実際に引き受けることが可能であるとは

考えていない」とディマス委員は言明した。

「発展途上国の 1 人当たりの排出量は依然と

して先進国の排出量に比べて少ない。しかし、

我々は、様々な形で参加できる制度を構築で

きる。すなわち共通ではあるが差を設けた責

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 27

任を原則として、発展途上国がそれぞれの経

済発展の度合いに応じたコミットメントを引

き受けるような制度である。」

そのような制度では、すべての温室効果ガス

と、航空産業、海運業、林業など、すべての

業界を対象とする必要があると、ディマス委

員は主張した。同様に、低炭素社会への移行

には新技術の開発が必要不可欠であるため、

エネルギー分野の研究開発への投資を増大す

る必要があり、できる限り迅速に新技術を採

用できるよう優遇措置を導入しなければなら

ないという。

また、ロンドンで開かれた記者会見の場で、

ディマス委員は、米国の非妥協的態度に関し

て議長国である英国の楽観的な見解を繰り返

し、米国は最終的には目標値を掲げた何らか

の国際的排出削減制度を約束するであろうと

述べた。

同委員は、京都議定書によって EU が少なく

とも 100 万人の雇用を失うとする米国流の議

論を否定し、最近の欧州委員会の評価を例に

出し、EU の排出量を年間約 1.5%ずつ徐々に

削減していくと、BAU(business as usual)ケースすなわち無対策の場合に比べて EU 経

済の生産規模は2025年までに0.5%程度しか

縮小しないとの試算を示した。

さらに同委員は、EU25 加盟国の温室効果ガ

ス排出量は 1990 年比で 5.5%減少しており、

順調に行けば 2012 年までに全体で 7%減少

すると強調した。その一方で、同委員は、危

険かつ不可逆的な気候変動を防止するために

は、2020 年までに 15-30%程度のさらなる

排出削減が先進国には必要であると付言した。

また、最近スタートした欧州気候変動プログ

ラ ム ( the European Climate Change Programme)の第二段階に言及して、同委員

は、今後、欧州委員会は新しい部門および技

術を重視し、(運輸部門および炭素固定化/貯

留などにおいて)革新的かつコスト効果の高

い温室効果ガス排出削減策が可能と確信でき

る場合には、新法案の提案を積極的に行って

いくことを強調した。

さらに、同委員は EU 排出量取引制度の将来

に触れ、欧州委員会は長期的な気候変動対策

を成功させるには市場メカニズムを中核に据

えなければならないと確信していること、ま

た欧州排出量取引制度が核となって長期的に

国際炭素市場を発展させていくことができる

と、英国の議員に訴えた。

一方、ブラッセルでは、EU が環境団体の世界

自然保護基金(WWF)と協力して「気候変動

の証人運動」を立ち上げ、EU のメッセージを

発信している。ブラッセルで気候変動の事例

について証言するための代表団に参加した 5人の証人は、スコットランドに雪が降らなく

なったこと、イタリアで蜂が減少しているこ

と、スペインで穀物の不作が起きていること、

ドイツで森林が失われていること、英国の沿

岸の水位が上昇していることなど、いずれも

EU が今後とも地球規模の気候変動防止対策

を率先して推進していかなければならない理

由を想起させる衝撃的な事例であると主張し

た。

5. 欧州議会議員、廃棄物輸送に合意

10 月 25 日に行われた欧州議会本会議におけ

る Hans Blokland 議員(オランダ-独立・民

主主義グループ)の報告の採択を受けて、EU域内外への廃棄物輸送に関する規制強化への

道が開かれることになった。

第二読会の採決において、欧州議会議員の大

多数が妥協修正案を支持する決議を行った。

これは、理事会も受け入れることのできる内

容であるため、同法案はまもなく成立するは

ずである。妥協案には、環境保護(EU 条約 第

175 条)を同法の最も重要な法的根拠とする

こと、執行策を増やすこと、各国に輸送に反

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 28

対する機会をさらに与えること、通知・報告

義務を増やすことなどが盛り込まれ、特に家

庭ゴミの処分については各国が国内処理

(self sufficient)しなければならないことが

強調されている。

Blokland 議員は、EU から環境配慮型の処理が

できない途上国への廃棄物輸送が急増してい

ることを重視し、検査によって欧州からの総

輸送の 75%までもが違法であることが判明

したと発言した。同議員は、このような状況

に照らして、欧州議会と理事会との間で合意

が成立して、法律を速やかに施行できること

は喜ばしいと述べている。旧法は「効果がな

かった」ため、2001 年に採択された OECD基準およびバーゼル条約改定内容を盛り込む

修正が必要とされていた。

欧州議会の過半数が、欧州委員会の原提案に

あった貿易保護(EU 条約 第 133 条)と環境

保護(EU 条約 第 175 条)の 2 つの基準では

なく、環境保護(175 条)を同法の法的根拠

とすることに賛成した。すなわち、廃棄物取

引のためよりも環境保護への配慮が最優先事

項とされる。

欧州議会の修正により、欧州各国間の協力強

化およびモニタリングや検査を調整する常設

チーム設置に関する規定が設けられるなど、

執行策がさらに強化されるはずである。最終

文書には、輸送全体の 3%を検査する義務が

加えられている。

Blokland 議員の報告には次のように述べられ

ている。「当該法にとって一番重要な問題は、

適正な執行がなされるかどうかである。だか

らこそ、文言を強化する必要がある。」

最終文書には、再生を目的とする廃棄物輸送

において、近接性、国内処理および再使用の

原則を優先することが盛り込まれた。受け入

れ国側の当局は、特に一般家庭から回収され

た市町村の混合廃棄物などに関する輸入に反

対できるようになる。

今後、未分類の廃棄物は、分類されるまで「グ

リーン」廃棄物(すなわち輸出可能な安全廃

棄物)ではなく、むしろ有害廃棄物と見なさ

れなければならない。記録や、廃棄物輸送情

報を市民が知る権利に関する要件も厳しくな

る。

少量廃棄物越境輸送ルールには例外が設けら

れ、製造業者がプリンター・カートリッジな

どの製品を回収するために設ける自主的引取

リサイクルシステムなどのシステムが認めら

れる。

また、同レポートでは、解体目的に輸出され

る船舶その他の輸送機器に関して、環境基準

の緩やかな国に輸出されないように規制強化

が求められている。

欧州議会の緑の党/EFA(欧州自由同盟)グ

ループは、これらの妥協案を受け入れず、最

終案に盛り込まれた環境保護のレベルには失

望したと表明している。

緑の党/EFA の同案件担当広報官を務める英

国出身欧州議会議員 Caroline Lucas 氏は、法

案全体に失望したとし、「廃棄物は絶対に避け

られない場合を除いて輸送すべきではない」

と、採決前の討議の中で主張した上で、緑の

党は棄権すると言明した。

一方、中道右派の EPP-ED(欧州人民党・欧

州民主党)グループの広報官を務める Maria del Pilar Ayuso Gonzalez 議員は、二重法的根

拠の方を支持すると発言した。

第二読会で採択された妥協修正案は理事会に

承認される見込みであるため、2007 年初頭ま

で に は 新 法 の 施 行 が 可 能 と 思 わ れ る 。

Blokland 議員は、同法案は問題なく理事会を

通過するであろうと自信をのぞかせ、違法な

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 29

廃棄物輸送問題に対処するために迅速な施行

を求めた。

しかしながら、欧州委員会が依然として単一

法的根拠に反対していることから、同法の採

択には理事会の全会一致が必要となるであろ

う。Blokland 議員は、全会一致による採択が

行われるであろうとの自信を示し、この点に

関して欧州司法裁判所に訴えることを考えて

いるならば、過去の判例からルクセンブルグ

の裁判官は 2 つの法的根拠が争われる場合に

環境を優先する傾向があることを考慮すべき

であると警告を発した。

6. 産業界、WEEE 情報要件に関する指針を

発表

電気機器製造業者およびリサイクル業者は、

WEEE 指令に定められた情報要件の実施方法

に関して合意に達した。

電子機器業界を代表する複数の欧州業界団体

とリサイクル業者が協力して、製造業者から

リサイクル業者への製品技術情報の提供方法

に関する指針をまとめた。この指針は、欧州

情報通信技術製造業者協会(EICTA)、欧州家

電工業会(CECED)、在欧米国電子工業会

(AEA:the American Electronics Association in Europe)および欧州電子機器リサイクル業

者 協 会 ( EERA : the European Electronics Recyclers Association)がお互いに協力するた

めの自主的イニシアティブである。

WEEE 指令第 11 条は、電子機器製造業者に上

市する新製品の解体・再生に関する情報提供

を義務づけている。しかしながら、どのよう

な情報が必要とされるのか、どのように情報

を提供しなければならないのかが不明瞭であ

り、また製品詳細情報の機密性に関する懸念

もあった。このような懸念を和らげるため、

この指針文書は公知情報にはならない。

想定されている制度は、リサイクル業者が「請

求すれば」製品の詳細情報を得ることができ

るというものである。製造業者は、インター

ネットのサイトまたは生産者責任義務を担当

する部署のうちいずれかを情報アクセスポイ

ントとして提供しなければならない。

CECED の Pascal Leroy 氏は、同制度により情

報の機密性が確実に保つことができる上に、

これは柔軟性が組み込まれた制度であると発

言した。情報の提供方法は各社が決定するこ

とになる。

同氏は、企業が提供しなければならない情報

は必要に応じて請求されるとしている。企業

は製品に含まれる素材およびコンポーネント

をすべて掲載する必要はなく、特定素材の詳

細だけ提供すればよい。「製造業者が明らかに

しなければならないのは懸念素材を含有する

機器の一部だけである。どの製造業者も製品

に含有される全素材の一覧を提供する必要は

ない。」

懸念素材とは、水銀などの有毒化学物質や、

隠しスプリングなど健康や安全性に危険を及

ぼす可能性のあるコンポーネントなどである。

また、これらの業界団体は、製造業者と処理

業者との間で「さらに緊密かつ継続的な」対

話をもつことに合意したと発表した。定期的

に過去および将来の製品に関する技術動向お

よび処理業務の技術的進歩について協議する

という。

今回の合意が法的拘束力をもたないことから、

同制度の実施状況および EU 法が定める要件

を十分に満たすものかどうかの評価がなされ

るのは時間の問題と思われる。

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 30

7. 廃棄物輸送法が WEEE に及ぼす影響に関

する懸念

廃棄物輸送法は、廃電気電子機器のリサイク

ルを根底から大きく揺るがす可能性がある。

これは電子機器製造業者およびリサイクル業

者の見解である。両者は 2005 年 10 月に欧州

議会で採択された廃棄物輸送法に極めて批判

的である。

業界は、同法は不当に重い事務処理負担およ

びコスト負担を企業および関係当局にもたら

すものであり、環境基準の低下すら招く可能

性があると発言している。

業界は、環境に優しい WEEE 処理を確実にす

るために、WEEE 指令により厳格な規則がす

でに定められていると主張している。

廃棄物輸送法および輸送の通知義務の強化は、

欧州産業界の競争力に壊滅的な影響を及ぼし、

さらに膨大な事務処理を発生させるにすぎな

いという。

欧州家電工業会(CECED)の Leroy 氏は、同

法は企業の事務負担を増大させるだけである

とし、「各企業はその影響を実感するであろう

し、当局も同様である。」と述べている。

さらに、「影響を受けるセクターの各種業界が

連合して同法に対する懸念を表明するに至っ

たのに、欧州議会は聴く耳をもたなかった。

妥協修正案の内容は理不尽であり、保護主義

的である。一般(非有害)廃棄物の取引は良

いことなのである。」と主張している。

欧州議会での最終採決の前に、同法の影響を

受ける業界の 6 団体が共同声明という形で懸

念を表明していた。この 6 団体は、WEEE 指

令により欧州における廃棄物越境輸送は明確

に認められているとして「製造業者は同指令

に定められた高い環境基準を規模の経済に基

づくコスト効果の高い方法で達成することが

認められている」と主張した。

また、同氏は、欧州議会が採択した規則では、

環境保護の低下を招く場合もありうるとし、

次のように指摘している。「同規則は、オラン

ダなど先端技術を駆使した工場を有し、国内

の廃電子機器を処理できる国々にとっては問

題にならないが、ポーランド、ラトビアまた

はエストニアなど他の国々にはそのような施

設がない。国内処理するための施設をもたな

いこのような国々では大規模な電気製品の投

棄が生じる可能性がある。」

さらに同氏は、WEEE 指令によりすでに厳格

な処理基準が定められていることを指摘し、

「企業は WEEE 指令を遵守しているのに、な

ぜ廃棄物法が必要なのか」と問題を提起した。

欧州電子機器リサイクル業者協会(EERA)の

Norbert Zonneveld 氏も同じ意見で、欧州にお

ける WEEE の輸送に関する規則が強化される

と欧州域外への WEEE 輸出が増加する可能性

があるとの問題を指摘した。欧州域外では処

理基準の管理がさらに困難になるという。

「 欧 州 に は 厳 格 な 規 制 が あ る が 、 域 外

(OECD)諸国に輸送されると、そこには有

毒物質の規制はない」と、同氏は発言した。

同氏の推定によると、現在、WEEE の約 40%

は規制のない第三国に輸出されているという。

「我々はこのような輸出の増加を大いに懸念

している。処理基準を管理する方法がなくな

ると、不公平な競争が生じる。」

しかしながら、同氏は、欧州議会が採決した

最終修正案は以前の案を「若干」改善してお

り、多少は企業の事務負担を軽減する場合も

あると述べた。

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 31

8. 最新の廃棄物枠組み指令案で再生を再定

EU 廃 棄 物 枠 組 み 指 令 ( WFD : Waste Framework Directive)の最新改定案では、再

生業務に「有用な目的(useful purpose)」が

必要となる。

2005 年 10 月末、欧州委員会は同案を「部署

間」すなわち内部協議に付し、2005 年 12 月

21 日に廃棄物防止リサイクルに関するテー

マ別戦略と一緒に採択する計画であった。

しかしながら、環境総局の某職員は、同文書

が廃棄物防止戦略同様に委員会の許可なく漏

洩したが、今後、同案は変更される可能性も

あることを強調した。

「再生(recovery)」は、「最終的に工場内ま

たは広域経済の如何を問わず、当該機能を果

たすため、または当該用途のために廃棄物を

準備するのに使用されたであろう他の資源を

代替することで有用な目的を果たす廃棄物に

転換される作業」と定義されている。

「処分(disposal)」は、埋立て処分、陸上ま

たは海上焼却、何らかの処分作業によって捨

てられる最終化合物や混合物を生み出す生物

学的または物理化学的処理など、同指令の付

属書Ⅰ(処分作業)に記載されている作業を

含め、再生を除くすべての作業と定義されて

いる。

また、同案は、一般廃棄物処理における再使

用という作業および廃棄物化した素材または

製品の再使用が果たす役割を明確化するため

に、再使用の定義を指令に追加すべきである

としている。「再使用(reuse)」作業は、廃棄

物化した製品またはコンポーネントを再使用

できるようにする作業であると言われている。

この定義はそもそも廃棄物化しなかった製品

の再使用には影響しない。

委員会手続き 欧州委員会環境総局も廃棄物枠組み指令の特

定側面をいわゆる委員会手続きであるコミト

ロジー方式によって定義しようとして、欧州

環 境 ビ ュ ー ロ ー ( EEB : the European Environmental Bureau)などの環境保護団体

の怒りをかっている。

特に、欧州委員会には、この手続きに基づき、

再生と処分を区別するための効率基準を定義

する権限が与えられることになる。また、同

案には、この手続きを利用して、特定の廃棄

物ストリームおよび素材に関して「廃棄物の

終わり(end of waste)」を定義することが提

案されている。

最終的に、欧州委員会はこの委員会手続きを

使用して、許可を義務づけられていない廃棄

物回収業者、取り扱い業者およびブローカー

に対する最低限の基準を採択しようとしてい

る。

また、同案には以下の内容が含まれている。

・ 加盟国は廃棄物管理計画および廃棄物防

止プログラムを導入すること。

・ 加盟国レベルで域内市場をスムーズに機

能させるための経済的手段を調整するこ

と。

・ 外部要因を考慮の上、処理に要する総額

を廃棄物処理コストに反映させなければ

ならないこと。また、リサイクル戦略に

従って、製品および素材に関して、ライ

フサイクルに基づいたアプローチを考慮

に入れること。

全面的見直しではなく改善 同案には、「提案されている内容は、指令を全

面的に見直したものではなく、一層の改善を

図ったものである」と述べられている。しか

しながら、大きな変更がなされている。それ

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 32

は、特定の定義を明確化する必要性、新リサ

イクル戦略への廃棄物枠組み指令の適合化、

欧 州 委 員 会 の 「 よ り 良 い 規 制 ( better regulation)」イニシアティブという枠組みの

中での現行法の簡素化などである。例えば、

特に「他の法律」の対象となっている廃棄物

の除外に関して、廃棄物枠組み指令の適用範

囲の定義がさらに明確化され、今後は、掘削

によって発生した汚染土が含まれることにな

る。

同案により有害廃棄物規定が廃棄物枠組み指

令に統合され、有害廃棄物指令の廃止が可能

となり、廃油指令も廃止される。

9.デカ BDE の RoHS 適用除外に対する反響

欧州委員会は、欧州議会議員を怒らせ、訴訟

に持ち込まれる可能性を知りながらも、臭素

系難燃剤のデカブロモジフェニールエーテル

(デカ BDE)を電気電子機器への危険な化学

物質の使用を禁止する措置の適用対象から除

外する決定を採択した。

2005 年 10 月 13 日、同委員会は、欧州議会

および一部の加盟国の激しい反対にもかかわ

らず、デカ BDE の適用除外を認める決定を採

択した。その後、2005 年 10 月 15 日、同決

定は EU 官報で公表された1。

欧州議会および一部の加盟国を怒らせたのは、

欧州委員会が適用除外を採択するためにコミ

トロジー手続き(各国代表および欧州委員会

が構成する規制委員会)を利用したことであ

る。コミトロジー手続きが取られると、欧州

議会との協議はあるものの、欧州議会議員に

は実質的な発言権がなく、提案を阻止するこ

とができない。

1 同決定の本文は以下のサイトを参照すること。

http://europa.eu.int/eur-lex/LexUriServ/site/en/oj/2005/

1_271/1_27120051015en00480050.pdf

2005 年 7 月、欧州議会は、同案件に関する決

議を採択し、EU 加盟国に当該適用除外案を拒

否するよう求めた。また、同決議では、欧州

議会議員にとって欧州委員会の越権行為とも

思える行為に異議を申し立てるため、欧州議

会は欧州司法裁判所への提訴を検討するべき

であるとする英国保守党の Caroline Jackson議員の要求を支持している。

欧州委員会は、越権行為という主張を否定し

ている。逆に、同委員会は、欧州議会と理事

会が共同手続きに従って共同で採択した

RoHS 指令に定められているコミトロジー手

続きに従ったにすぎないという。

環境保護団体、適用除外を批判 欧州公衆衛生連盟環境ネットワーク(EPHA Environment Network:the European Public Health Alliance Environment Network)および

害 の な い 医 療 を 目 指 す 会 ヨ ー ロ ッ パ

(Healthcare Without Harm Europe)は直ち

に共同声明を発表し、欧州委員会の決定を非

難した。両組織は、欧州委員会の決定は英国

の不完全なリスク評価を根拠としていると指

摘した。このリスク評価には消費者に関わる

部分しか含まれておらず、環境に関わる部分

が含まれていないとしている。

同声明によると、環境に関わる部分は、「著し

く懸念される新たな知見が次々と明らかにな

っていることに照らして」修正中であり、こ

れについて各国当局者は 2005 年 12 月の会合

で討議しなければならないであろうとしてい

る。まさに欧州委員会が適用除外を承認した

前日、英国の規制当局は EU に、この新たな

情報が得られるまでリスク評価が遅れる旨を

書面で伝えているという。

「なぜ欧州委員会が欧州議会および多くの加

盟国の助言や、さらにはデカ BDE に関するリ

スク軽減措置の必要性を強く提言している科

学委員会の意見すら無視するのか我々には理

解できない。」と、害のない医療を目指す会ヨ

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 33

ーロッパの Karolina Ruzickova 氏は述べてい

る。

「デカ BDE は、それ自体でも、その分解生成

物においても、難分解性、生体蓄積性、有害

性のある物質であり、かなり前に全面禁止さ

れるべきであった。」ところが、ディマス環境

委員は、デカ BDE が上位捕食動物や北極地方

に広く存在するだけではなく、ヒトの母乳中

にも発見されていることを承知しながら、現

行禁止措置を強引に廃止しようとした。

「このようなことから分かる現欧州委員会の

企業に対する新たな姿勢は、非常に残念であ

る。最も悪質な汚染企業の短期的利益さえも

守ろうとするものであり、長期的観点から人

間の健康および環境を保護しようとする意識

がない。」

また、同声明では、効果的な代替物質が入手

可能であると主張している。EPHA 環境ネッ

トワークの Christian Farrar-Hockley 氏は、「本

来、当該物質は禁止されていたのに、これを

覆すということは、代替物質に投資してきた

デル、アップル、ソニーなど大手企業が、対

応の遅れている企業や、この有害難燃剤を引

き続き使用することを選べる輸入業者に対し

て、競争上不利な立場に置かれるということ

である。このような場合、規制の不確かさは

電子メーカーにとっても我々の健康にとって

も望ましいことではない。」

産業界、適用除外を歓迎 製 造 者 団 体 の 欧 州 臭 素 系 難 燃 剤 工 業 会

(EBFRIP:the European Brominated Flame Retardant Industry Panel)は、当然のことな

がら、デカ BDE は「その使用により生命を救

い、火災関連の負傷を減少させる効果の高い

難燃剤である」と擁護し、異なる見解を示し

た。

さらに、EBFRIP は、適用除外を裏付ける科学

的知見に対しても異なる見方を示した。

EBFRIP の声明には、次のように述べられてい

る。「今回の決定は 10 年に及ぶ EU リスク評

価の結果に基づくものである。当該評価では、

588 件の研究を評価し、デカ BDE の使用は健

康または環境に危険を及ぼすものではないと

の結論に達している。」

EBFRIP はさらに 9 月 2 日に加盟国の多数決

により適用除外が決定されたことを強調し、

賛成票が反対票の 2 倍以上あったことを指摘

した。

「今回の決定は科学的知見によって十分に裏

付けられている」と、EBFRIP 会長の Dr. Dieter Drohmann 氏は述べている。「デカ BDE を最

適の難燃剤として使用している世界の電子メ

ーカーにとって心強いニュースである。今後

は、欧州市場向けに、最も多く試験された難

燃剤として、自信をもってデカ BDE を使用し

続けることができる。この決定によって、予

測可能なビジネス環境が生まれ、また欧州そ

の他における競争力がさらに向上する。」

10. EU、5 月まで独デポジット法に対する法

的措置を講じる可能性なし

2006 年 5 月までに、欧州委員会がドイツの強

制的ワンウェイ容器のデポジット制度に対す

る法的措置を講じる可能性はない。

同委員会が法的措置を講じる時期を遅らせる

と発表したのは、先月末に開かれた会合で、

産業界代表が、独引き取り制度に関して企業

が 直 面 す る 問 題 お よ び Deutsches Pfandsystem GmbH(DPH)の「全国規模」

の制度の進捗状況について詳しく説明した後

のことであった。

「この制度がどのように機能するのか見る必

要がある。現状に変更はなく、従って我々の

立場にも変更はない。すなわち静観するとい

うことである。」と、環境総局の某織員は述べ

ている。

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 34

環境総局には、2004 年 12 月に欧州司法裁判

所が下した判断をドイツに実施させる責任が

ある。ドイツは 2006 年 5 月までに全国規模

の飲料水容器デポジット制度を導入しなけれ

ばならない。また、企業総局は、現在の域内

市場に関する違反行為(2004 年 10 月 20 日、

欧州委員会はドイツのデポジット制度は貿易

障壁であるとして裁判に訴えることを決定し

た)に関する主たる管轄機関である。

しかしながら、産業界は、いずれの機関(企

業総局および環境総局)も本案件を静観する

だけで何もしていないに等しいと指摘してい

る。「企業総局は何の声明も発表していない。

できるだけ経済に関する情報が得られれば良

いだけなのである」と、ある代表は発言して

いる。

産業界は会合を持てたことには歓迎の意を表

したが、委員会側の対応については、コミッ

トメントが感じられないとして高い評価はし

ていない。「会合をもてたことは良かった」と

して、ヨーロッパスチール容器製造者協会

( APEAL: : the European Association for Producers of Steel for Packaging)の Renaud Batier 氏は次のように述べた。「我々は、委員

会に対して、ドイツの状況に関する十分なデ

ータを提供して、全国規模の制度の構築がい

かに困難であるかを説明できる。」

「最も重要なメッセージは、現在の法的枠組

みでは 2006 年 5 月 1 日以降、島方式(island solutions)が継続されないという保証がない

ことである。追加条項に定められた禁止措置

を延期させようとする圧力がある。さらに、

法律には、例えばスチールなどの一種類の素

材しか扱わない島方式を廃止しなければなら

ないという規定はない。これは現実的な脅威

である。」

現在、島方式は、容器の種類、形状またはサ

イズ毎に区別がある。5 月以降、このような

制度は廃止されなければならない。産業界は、

全国規模の制度がそれまでに整備されなけれ

ば、小売業者は例えば飲料水用紙容器やアル

ミ缶など一種類の容器素材だけの制度を設け、

他の飲料水容器の引取を拒否する可能性があ

る。「小売業者に他の選択肢がなければ政府は

どうするつもりなのか」と Batier 氏は述べて

いる。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ⅱ. ドイツ

1.ドイツに配慮して REACH 決議の延期に同

意した英国

本レポートは、理事会での政治的合意採択

(2005 年 12 月 13 日)以前のものであるが、

記事中の議長国案は基本的には政治的合意に

反映されている。

ドイツは新政権にコメントの時間が与えられ

るように、11 月 28-29 日の競争理事会で予

定されていた REACH 規則案に関する決議を

延期するよう当時現議長国の英国に求めてい

たが、英国はドイツの要請に同意した。

しかしながら、議長国英国は依然として、理

事会の議長国をオーストリアに引き継ぐ 1 月

1 日までに同案件の審議を進めたいと計画し

ている。第一段階の正式な共通の立場に関す

る政治的合意の形成を目的として、理事会の

特別会合が予定されている。但し、欧州議会

が 11 月 17 日に採択した認可(authorization)

に関する修正については 2005 年末までに閣

僚レベルの合意が形成される。

メルケル氏率いるキリスト教民主党が 2005年 9 月の選挙において得票数で上回り、同氏

が社会民主党との連立による新政権の首相に

就任する見込みであることから、ドイツは予

定されている REACH 規則案の決議を延期す

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 35

るよう要請したのは、2005 年 10 月初旬のこ

とであった。ドイツは EU 最大の加盟国であ

り、また最大の化学産業を有していることか

ら、メルケル氏率いる新政権はすでに REACH規則案に修正を加えたいと示唆している。

また、2005 年 10 月に、議長国英国は 9 月の

議長国による REACH 妥協案の改定版を配布

した。議長国によると、それは前月の環境理

事会および競争理事会における閣僚レベルの

討議を反映した修正を導入したものであると

いう。改訂版には、欧州議会が立法手続きの

各段階で当該規則案に導入した事項も含まれ

ている。

英国案に加えられた修正の大半は、企業、特

に中小企業による新規制の実施を容易にする

ためのものである。

特に、議長国は、英国とハンガリーが提案し

た「1 物質 1 登録(OSOR:one substance, one registration)」という登録方式を維持する一方

で、オプトアウト(離脱)条項を提案し、企

業秘密の開示を恐れて他の企業とともに化学

物質情報を登録したくないという企業にも対

応しようとしている。かかる離脱企業は、

OSOR に参加すると「不当に高い」コストを

払う結果になること、機密漏洩になること、

また化学物質の下流ユーザーに関して潜在的

共同登録企業間に意見の相違があることを

「実証」しなければならない。

しかし、共同登録企業は、動物試験の結果を

すべて共有しなければならない。他の試験デ

ータは、当該登録企業の内の一社が要求した

場合に共有が必要となる。これが中小企業

(SME:small and medium-sized enterprises)に対する譲歩であることは明白である。EU域内の中小企業の業界団体は、大手化学企業

には試験を実施する資源があり、かかる資源

のない中小企業に試験結果を共有させるべき

であると主張してきた。

英国は中小企業を対象とする緩和策をさらに

導入している。EU 域内ですでに生産されてい

る比較的生産量の少ない化学物質や、EU 域内

にすでに輸入されている比較的輸入量の少な

い化学物質の登録に関するものである。当該

量が 1-10 トンの範囲内にある化学物質で、

すでに「ハイリスクと特定されている」物質

の場合、企業は当該化学物質に関する情報を

提出するだけでいい。しかしながら、新規化

学物質および実質的にハイリスクと特定され

ている化学物質は、登録手続きを経る必要が

あり、2003 年 10 月付規則案と比較してさら

に 3 種類もテストが増える。

また、英国は 10-100 トンの範囲内の化学物

質に関して、ある重要な試験の廃止を提案し

ており、このトン数の範囲内の化学物質を扱

う企業は約 8,000 万ユーロを節減できると主

張している。英国は REACH 制度に OSOR 方

式を導入することによって総額 6 億 600 万ユ

ーロの節減を見込んでいるが、それに加えて、

これだけの節減が見込まれるという。

さらに、議長国の改定版によると、18 ヶ月間

という長期間に及ぶ「事前登録」段階を一回

だけ設け、その間に企業は域内で販売予定の

化学物質を示す事が求められている。また、

議長国の文書によると、加盟国は廃棄物や防

衛目的に使用される化学物質を明確に同制度

の適用範囲から除外するよう望んでいること

が述べられている。議長国によると、鉱物お

よび原石も REACH 制度に基づく登録を必要

としない。これはまさにアフリカ諸国および

太平洋諸国が声高に主張してきたこととであ

る。

民生用製品に含まれる化学物質について、議

長国の英国は、製品から放出されることが意

図されている化学物質に限り、REACH のトン

数分類に従って登録手続きを取らなければな

らないと極めてシンプルな提案をしている。

製品に極めて高く懸念される化学物質が含ま

れていても、当該製品の機能として放出され

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 36

ることが意図されていない場合、製造業者お

よび輸入業者は当局に届け出るだけでよい。

また、英国の改定版では、REACH の評価・認

可段階にも一部変更が加えられている。計画

されている欧州化学庁の役割はさらに強化さ

れているが、「中核的な科学的作業」すなわち

登録案件の評価を実施する責任は、依然とし

て「必要な専門知識を有する」EU 加盟国に残

されていることを英国は認めている。

認可は期限を設けてレビューが行われるが、

期限は物質毎に個別に設定される。また、英

国の改訂版によると、当該代替物質が存在す

る場合および特に企業が化学物質を「適切に

管理している」という証拠が不足している場

合には、認可よりも危険な化学物質をより安

全な化学物質に代替させていくとしている。

さらに、化学物質に対する「適切な管理」が

なされているという主張は、最も危険な化学

物質すなわち「極めて懸念の高い」化学物質

である残留性生体蓄積性有害物質(PBT:

persistent, bio-accumulative and toxic)、難分

解性・生物蓄積性の高い化学物質(vPvB:very persistent, very bio-accumulative)、一部の発

癌性、変異原性または生殖毒性物質(CMR:

carcinogenic, mutagenic and reprotoxic)を市

販する認可を得るための容認可能な基準では

ないことを「明確化」している。他の物質も

案件毎に「極めて懸念の高い」物質として追

加される可能性がある。

改訂版には、化学物質情報に対する市民のア

クセスを改善するための変更も加えられてい

る。

2. 独政党、環境政策の方向性で一致

「大連立」を形成するドイツの中道左派 SPD(社会民主党)と中道右派 CDU(ドイツキリ

スト教民主連盟)/CSU(キリスト教社会同

盟)は、SPD/緑の党による旧連立政権の環

境政策に実質的に類似した環境政策で合意に

達した(2005 年 11 月 11 日に最終文書に合

意)。

原子力に関して、CDU/CSU 連立政権は、原

子炉の運用年数を延長することにより、ドイ

ツの段階的廃止を遅らせる要求を却下した。

SPD/緑の党による環境税・エネルギー税制

度は維持される。また、連立政権は、2020年までに電力消費の 20%を再生可能エネル

ギーで調達する目標も維持する。

ドイツの再生可能エネルギー法(EEG)は、

企業が同法によるコスト負担に苦情を訴えて

いるのを受けて、2007 年に見直される予定で

ある。再生エネルギー技術毎の支援条件が一

段と明確化され、エネルギー集約型企業の場

合、電力料金の値上がりに対応して補償金が

増える可能性がある。

大連立政権は、EU 炭素排出量取引制度の第二

段階(2008 年~2012 年)に関して、産業界

に一段と配慮したアプローチを公約している。

ドイツの国家配分計画によりEU法に基づき、

可能な場合には小規模施設を除外対象にする

としている。

ディーゼル車に粒子除去フィルターを装備す

るための助成金は継続されるが、古い車に限

定される。一方、フィルターを装備していな

いディーゼル新車には税制上のペナルティー

が課せられる。この政策転換には、政府の逼

迫した予算に対する要求を制約する意図があ

る。

連立政権の交渉を詳細にフォローしてきた環

境 NGO の BUND は、同政権の環境に関する

方針を「建設的」と評価している。同 NGOは、今回の結果を独の新環境大臣 Sigmar Gabriel 氏の功績としている。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 37

Ⅲ. 英国 1. 英国、「協力的産業規制」を開始

イングランドおよびウェールズの主要産業部

門は、イングランド・ウェールズ環境庁が

2005 年 11 月 2 日に開始した革新的な規制方

式に基づく長期的環境改善目標に合意するよ

う求められている。

これは規制と自主的イニシアティブを組み合

わせることにより「従来の規制の限界を超え

る」方式であると、同庁は述べている。

同庁は、まず、セメント、化学物質および原

子力産業を対象とする 3 業界政策を開始した。

今後何ヶ月間かのうちには、電力生産会社、

食品・飲料業界、廃棄物管理、水道会社およ

び酪農生産を対象として、新たな政策が導入

される予定である。

イングランド・ウェールズ環境庁によると、

この業界別アプローチは、最も環境リスクが

高い分野に資源を投入するのに有効であると

いう。この方式は、業界を関与させ、長期的

投資決定および経営行動に影響を与えること

により、規制だけで達成できる環境メリット

を上回る効果を上げるはずであるという。

*セメント業界を対象とする政策では、2006年および 2010 年について、9 つの目標および

34 の定量的パフォーマンス指標が設定され

ている。具体的な達成目標としては、炉の燃

料および原材料として廃棄物の活用を促進す

ることや、セメント生産量 1 トン当たりの二

酸化炭素の放出量、汚染および天然資源の消

費量を削減することなどが含まれる。

*化学物質業界を対象とする政策では、ライ

フサイクルを通しての影響を重視することが

求められている。10 の目標が設定され、定量

化されてはいないが一連の達成目標も設けら

れている。目標には、資源消費量の削減、廃

棄物および排出量の最小化、製品管理の促進

などが含まれている。

*原子力産業を対象とする政策では、8 つの

目標に加えて、パフォーマンス指標が設定さ

れている。その一部は個別事業体に関連する

指標である。原子力エネルギー企業だけでは

なく、防衛・研究、医療および放射性廃棄物

事業者も対象とされている。2002 年国家戦略

に定められた達成目標に基づき、放射能放出

の削減に重点が置かれている。

2. 英国、包装廃棄物に関する新たな目標を

発表

2005 年 11 月 23 日、英国環境・食糧・農村

地 域 省 ( DEFRA : UK Department for Environment, Food and Rural Affairs)は、包

装廃棄物に関する新たな目標を発表した。ウ

ェールズ議会とスコットランド行政部は、今

後 5 年間でさらに包装廃棄物のリサイクルが

進展することを期待している。

包装廃棄物規制に定められた 2010 年までの

新年間目標により、企業がリサイクルおよび

再生する紙、ガラス、アルミ、スチール、プ

ラスチックおよび木製包装廃棄物がさらに増

加する。

DEFRA は、新目標の発表と同時に、規則にい

くつかの追加修正を加えたことを認めた。こ

れにより各企業の負担が修正前に比べて軽減

されるという。

修正には、フランチャイザー、ライセンサー

およびパブ経営者に対する新たな義務が含ま

れている。

地域環境の質担当大臣(Local Environmental Quality Minister)Ben Bradshaw 氏は、本日発

表された施策は、英国が 2008 年までに法的

拘束力をもつ EU 加盟国としての義務を達成

するのに役立つと発言した。

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 38

「1997 年に同規則が導入されてから、企業が

実施したリサイクル量は著しく増大した。包

装廃棄物のリサイクルは導入時のほぼ二倍に

達した。我々は、現在のような、包装廃棄物

のリサイクルおよび再生の拡大基調を維持し

たい。」

Bradshaw 大臣は、さらに多くの企業を参加

させることにより、すべての関係企業間で一

段と公平にコストが負担され、各企業の再生

およびリサイクル目標も現状より低く維持さ

れると強調した。

なお、発表された修正は、今後、議会の承認

を必要とする。

3. 英国、CDM に関する規則および指針を発

英国政府は、2005 年 10 月 19 日、議会に法

案を提出した。英国が提出した同法案は、他

の EU 加盟国が起草した法案と大筋において

類似している2。

EU 指令の規定に沿って、英国の規則では、国

内企業が排出量取引制度(ETS:the Emissions Trading Scheme)の第一段階である 2005 年

から 2007 年までの期間に購入できる海外ク

レジットに制限を設けていない。

DEFRA は、声明の中で次のように述べている。

「政府はプロジェクト・メカニズムの活用は、

補完原則として知られているように、依然と

して国内排出削減対策を補完するものでなけ

ればならないと考えている。」

さらに、同声明で、EU の ETS 第二段階であ

る2008 年から2012 年までの期間すなわち京

都議定書に定められた第一期と同時期から、

2 同規則および指針は以下のサイトを参照すること。 http://www.defra.gov.uk/environment/climatechange/ trading/eu/kyoto/index.htm

「政府は補完原則に従って事業者によるプロ

ジェクト・クレジットの利用に制限を課さな

ければならない」と述べている。

同声明によると、2008 年から 2012 年までの

期間の CDM(クリーン開発メカニズム)およ

び JI(共同実施)によるクレジットの制限は、

英国の当該期間の国家割当計画に定められる

という。「当該計画は現在策定中であり、2006年 6 月までに欧州委員会に提出される予定で

ある」という。

リンク指令には海外クレジットに関する明確

な制限は含まれていないが、同委員会は、ETSにおける使用を目的として初回 EU 配分の

6%に達する海外クレジットが転換された場

合、「委員会は見直しを実施し、例えば 8%と

いう定量的制限を導入すべきかどうか検討し

なければならない」と述べている。

英国の当該規則とともに、DEFRA は、CDMプロジェクトへの参加を希望する英国企業向

けの指針案も発表した。この「説明的指針」

に関するコメントは 2006 年 1 月 31 日まで受

け付けられる。

英国当局はすでに、世界の 15 件の CDM プロ

ジェクトに関して、英国企業に 20 通の「承

認レター」を発行している。その内訳は、イ

ンド 7 件、ブラジル 3 件、中国 2 件、ホンジ

ュラス 1 件、ベトナム 1 件およびフィジー1件である。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ⅳ. フランス

1. フランス、EU 環境指令を国内法制化

2005 年 10 月 26 日、仏議会は、一連の EU 環

境指令を国内法制化するための法律を採択し

た。

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 39

当該指令は以下の項目に関するものである。

化学物質の安全性、廃棄物管理、騒音公害、

二酸化炭素排出量取引および環境情報への市

民のアクセス(環境分野における共同体法へ

の各種適合規定に関する法律第2005-1319号、

2005 年 10 月 26 日)

当該法案は、エコロジー・持続可能開発担当

大臣 Nelly Olin 氏の提案によるものである。

同大臣は、2005 年 6 月に、すべての EU 環境

指令を 2006 年末までに仏国内法制化するた

めの法律を成立させると公約した。

Olin大臣の公約からわずか数日後の2005年7月、欧州委員会は、EU 環境指令を適正に実施

してないとして訴えた EU 加盟 18 ヶ国が関与

する 70 件を超える訴訟案件を進めていくと

発表した。

同委員会の法的措置には、EU 指令を国内法制

化していないとしてフランスを訴えた案件が

10 件含まれている。

2. フランス、2007 年までにレジ袋の使用を

半減させる計画

仏環境省は、2006 年末までに 1 年間に使用さ

れる 15 億枚のレジ袋を半減させたいとして

いる。

この目標は、2003 年の消費水準を基準に定め

られたものであるが、2005 年 10 月末に発表

された同省の廃棄物削減対策に含まれている。

同省によると、レジ袋は「廃棄物削減におけ

る象徴的分野の一つ」であるという。

さらに、同省の声明には、これは買い物をす

るときに消費者に廃棄物防止について考えて

もらうための一歩であると述べられている。

同省の構想の背景には、レジ袋による視覚公

害、レジ袋が海洋生物に及ぼすリスクおよび

再使用できない資源の利用に関する懸念があ

る。2003 年、フランスで配布されたレジ袋は

85,000 トンに達した。同省によると、再使用

できる袋の推進および地域イニシアティブの

発展によって、この目標を達成するとしてい

る。

同省は、使い捨ての袋を使用するのであれば、

生分解可能な袋に移行させたいとしている。

そのような袋用にエコラベルを作成するとい

う。

2003 年 11 月、大手小売業者は、レジ袋の消

費量を削減するために、一連の対策を発表し

た。2004 年末までに、これらの対策の結果、

袋の使用量は 15%削減された。

2005 年初頭、当時の環境大臣 Serge Lepeltier氏は、今回の対策の基盤となる行動計画を策

定するためのワーキンググループを立ち上げ

た。

2005 年 10 月に仏国民議会(議会)が承認し

た提案によると、2010 年以降、フランスでは

生分解性プラスチック以外の販売または配布

が禁止される。同案には、従来のプラスチッ

ク包装およびレジ袋の禁止が提案されている。

生分解性に関する試験手順、罰金および生分

解性が疑われる包装容器の証明方法に関する

条件など正確な詳細については、今後の法令

で規定される。

当該禁止措置は農業に関する法律の修正事項

として、ほぼ全会一致で承認された。当該法

案はまだ最終的に採択されたわけではない。

仏議会上院で議論が行われている間、仏農業

大臣は、政府は国民議会の見識に従うと発言

し、当該禁止措置に関する立場を表明しなか

った。環境大臣は驚愕したと言われている。

当該提案に対する反応は多様であった。包装

容器製造業者連盟(CSEMP:the Chambre Syndicale des Emballages)など製造業者は、

当該案は非現実的であると発言している。流

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 40

通業者も全く歓迎していない。業界団体のプ

ラスチック・ヨーロッパは同案に反対するロ

ビー活動を展開している。研究機関のフラン

ス環境エネルギー管理庁(ADEME)は、業界

全体を危うくする案であるとして、その実現

可能性に疑問を抱いているといわれている。

一方、国立廃棄物独立情報センター(CNIID:

the Centre National d ’ Information Indépendante sur les Déchets)などの環境団

体は、生分解性素材の方がより安全なため、

環境を保護する方法であるとして同案に歓迎

の意を表した。

CSEMP は、「興味深い」案であるが、未解決

の問題が多いことから、時期尚早の感がある

と発言している。当該規則は、貿易障壁とし

て包装廃棄物指令に違反する可能性があると

いう。現行の家庭用・産業用包装容器の再生

システムが優れた成果を挙げているのに、当

該制度を完全に編成し直し、コンポスト市場

を見つける必要があるだろうとしている。

さらに、当該禁止措置を導入するまでの期間

が短すぎると、同連盟は指摘している。利用

可能な生分解性包装容器素材は、医療用包装

容器として使用するためには、承認取得が間

に合わない可能性があり、また食品用として

は長期保存が難しい。生分解性包装容器は

「徐々に受け入れられていくだろうが、無理

な要求をすると、すぐに見向きもされなくな

るであろう。」

CNIID は、プラスチックによる影響を長期的

な視点で捉えた決定であり、喜ばしいと述べ

ている。また、プラスチックが石油を原料と

しているのに対して、生分解性プラスチック

は再生可能な植物性資源に由来する点を指摘

している。しかしながら、CNIID は、このよ

うな一段と好ましい素材への移行により、廃

棄物の排出を減らすこと、包装容器の不必要

な使用をやめること、また消費者の習慣を変

えることに対する関心が薄れるようなことが

あってはならないと警告した。

フランスにおける禁止措置の背景には、アイ

ルランドが課税措置の導入によりレジ袋の使

用削減に大成功を収めていることや、またベ

ルギーやルクセンブルグがスーパーマーケッ

トで再利用可能な袋の利用を推進するイニシ

アティブを導入していることなどがある。ス

コットランドもまた、レジ袋対策を検討中で

ある。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ⅴ. デンマーク 1. デンマーク、HFC に関して挑戦的な姿勢

を維持

2005 年 10 月 31 日、デンマークの環境大臣

Connie Hedegaard 氏は、F ガス規制をめぐり

現在も続く EU 論争において、同国政府は業

界を対象とする「冷蔵の脱 HFC 化に関する助

言センター」を設置すると発表した。

この声明が発表された翌日には、欧州議会環

境委員会において、議論を呼んでいる、二件

の F ガスに関する EU 法の決議が予定されて

いた。一つは、冷蔵用 HFC の封じ込めを改善

する対策を義務づけるものである。但し、欧

州議会のラポーターは家庭用小型冷蔵庫への

HFC 使用禁止を提案している。

デンマークは、最も徹底した F ガス代替プロ

グラムを導入している。オーストリアに加え

て、F ガス法案に関する EU 加盟国間の妥協案

に反対票を投じたのはデンマークだけであっ

た。また、デンマークは欧州委員会から規制

が厳しすぎるとの警告も受けている。

同大臣は、「実際に HFC 代替物質を創出する

こと」を目的とする 1,200 万デンマーク・ク

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 41

ローネ(160 万ユーロ)規模の 3 ヵ年計画の

一環として、このセンターを設立すると説明

し、このイニシアティブにより「デンマーク

は環境に優しい技術開発の分野における主導

的立場を確固たるものにできる」と自信を覗

かせた。

デンマーク環境保護庁の広報官によると、こ

れは幅広く使用されている HFC を段階的に

廃止しようとするデンマーク政府の意図が軟

化したことを示すものではないと発言した。

この点は、欧州委員会に宛てた何通かの書面

による回答の中でも明らかにされている通り

である。

2. デンマーク、化学物質規則の改善を目的

とする各種イニシアティブを発表

2005 年 10 月 28 日、デンマーク環境省は、

化学物質規則の執行改善と消費者および産業

界の意識向上を目的とする新イニシアティブ

の財源として、6,200 万デンマーク・クロー

ネ(830 万ユーロ)を計上すると発表した。

イニシアティブの内容は、農場検査の強化、

民間研究施設に対する管理の強化、殺虫剤な

ど特定製品グループに対する監視の強化、消

費者および産業界向けの「知識バンク」の設

立、企業に現行および将来の規則に関する豊

富な情報を提供するための「ヘルプデスク」

の設置などである。

さらに、フタレート類に関して、認識されて

いる危険性に基づく追加税も提案されている。

その他に EU 化学物質規則案すなわち REACH案に向けた企業の準備を支援するために、

2007 年末まで 2,200 万デンマーク・クローネ

(300 万ユーロ)の予算が計上されている。

知識バンクの一つには代替問題に関する情報

が蓄積される。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ⅵ. スウェーデン 1. スウェーデン、2006 年予算案において環

境支出および環境税を変更

スウェーデンの財務大臣 Par Nuder 氏が発表

した 2006 年予算案によると、環境支出が 100万スウェーデン・クローナ(1 億 800 万ユー

ロ)を上回り、また各種環境税が再構成され

るという。

同予算案によると、電力、原子エネルギー、

トラック、バス、ゴミ埋め立て、廃棄物焼却

および飛行機旅行に対する税金の引き上げが

要求されている。税金を変更する提案には環

境への影響を軽減する意図があり、また歳入

増も見込まれる。しかしながら、同予算案に

よると、一部の環境税の率の引き下げおよび

廃止も要求されている。特に、EU 排出量取引

制度に本格的に参加している工場については、

現行の二酸化炭素排出税が廃止される。

EU 取引制度により、従来の二酸化炭素税は不

要になると、スウェーデン持続可能開発省の

政治アナリスト Maja Fjaestad 氏は述べてい

る。同氏によると、他の加盟国にはかかる税

が導入されていないため、二酸化炭素税はス

ウェーデン産業の競争力を損なうという。

また、同予算案によると、エネルギー研究に

も新たな予算が計上される。さらに、風力発

電のパイロット・プロジェクトにも 5 年間

(2006 年~2010 年)の支援が提供され、暴

風雨により倒された森林の再植林にも引き続

き予算が計上される。

同予算案には、消費者が電力や石油による暖

房から環境に優しいエネルギー源へと移行す

るための優遇策も含まれている。すなわち、

2010 年まで年間数百万ユーロ規模の減税措

置や投資支援などが提供される。

それにもかかわらず、財務省の政治顧問

Joakim Kellner 氏は、スウェーデン政府は新

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JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 42

廃棄物税が企業に及ぼす影響についての試算

はないと記者会見で発言した。しかしながら、

同氏は、家計の支出は平均で 1 週間当たり 2.1ユーロ強になると述べた。また、同氏は、天

然の砂利の採取税率を引き上げる提案には自

然景観を維持し、大きな石から砂利を生産す

ることを奨励する意図があると付言した。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

Ⅶ. オランダ 1. オランダ、包装容器政策を抜本的見直し

オランダは 2006 年に包装容器政策を抜本的

に改定する見込みである。同年には、達成目

標を伴う契約方式から法的拘束力を有する

EU 指令要件への移行が行われる。

最重要事項は、生産者責任およびゴミ捨て対

策の導入が必要になることであろう。詳細情

報は、オランダ議会における新政策に関する

審議の後に明らかになるであろう。

強制的リサイクル目標を達成するためにユー

ザーが家庭から出される包装容器の引取/回

収/再生の費用を負担するという新責任の実

施方法について、産業界と市町村との間で交

渉が続いている。2006 年 1 月 1 日以降、法

律の定めにより、現行の契約方式に替わって

生産者責任を導入することが義務づけられて

いる。

その後 3 ヶ月以内に、企業はどんな制度を利

用するのか決定し、それを実施しなければな

らない。現行制度において実施されている包

装容器のモニタリングだけは 2006 年も継続

される。産業界は、EU 包装廃棄物指令に定め

られている目標の達成に必要な額まで財源を

拠出するよう義務づけられるが、それ以上の

支出は必要ない。目標を達成できない場合、

産業界は義務を果たせるよう支援してもらう

ために、追加的資金およびイニシアティブ/

対策を要求することができる。

「我々はこれを実施する過程にある。最終的

な結果がどうなるかはまだはっきりしていな

い」と、産業界を代表する某広報官は述べて

いる。「グリーンドット制度とは言わないが、

何らかの産業界主導の制度になる。」

業界団体 SVM-Pact の Robert Jan Ter Morsche氏は、当該制度は、紙用回収箱に入れられた

紙包装、ガラス容器および産業用木製パレッ

トまたはワイン用ボックスなどの回収と再生

を負担するものになると発言した。料金体系

は決定されていないという。フランスやベル

ギーのように、プラスチック製のボトルとフ

ラスコ瓶だけは回収される。プラスチックの

回収に最適なインフラは何か調査が行われて

いるという。「家庭から出るプラスチックを回

収するか、自動分類施設を設けるかのいずれ

かになるであろう。」

他の生産者責任またはグリーンドット制度と

は対照的に、オランダは、金属や飲料用カー

トンの分別回収は行わない。「これに関する目

標はない。金属については廃棄物焼却前に再

生用の分別を行う。」としている。

企業はこれまでも包装容器契約の締結費用を

支払わなければならなかったが、今後の包装

容器再生機構に参加するための料金は若干高

くなると、Ter Morsche 氏は述べている。ま

た、包装容器の素材毎に料金が設定されると

いう。「交渉は継続中であるが、ドイツよりベ

ルギーに近いコストになると考えている。」し

かしながら、同氏は、料金が最大の相違点で

はないと述べた。「最大の変化は、防止、再利

用、分別回収への取り組みが必要になるとい

うことであろう。」

オランダ環境省の某職員は、議会はモニタリ

ングを基に決定を下さなければならないが、

結果は曖昧であったと発言した。「好きなよう

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欧州環境規制動向 ~在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [42]

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 43

に結果を解釈することができ、ゴミ捨ては減

ったとも増えたとも言える。このような状況

は科学的に証明されているとは言えない。ゴ

ミや缶の 80%が消滅したのか、半分なのか、

それともほんのわずかしか減っていないのか、

議会は判断しなければならない。」

「論理的には、ごみの量は減っていないと言

えるが、だからといって、デポジット制度は

導入されないということになるのか。」議会お

よび国務大臣は、この点についてコメントす

る責任がある。ごみの量が減っていないので

あれば、他の対策が取られるであろう。廃棄

物を取り除くための産業界の負担は多大なも

のになるであろう。

「ゴミ捨てに対する生産者責任の導入は、論

理的な帰結である。オランダは、廃棄物回収

に関して当該責任を導入する国の中では、最 も遅い国の一つである。欧州ではほぼ最後の

国といっていい。」

SVM-Pact の Ter Morsche 氏は、産業界はゴミ

捨て問題を検討しているが、デポジットと関

連づけた検討はなされていないと発言した。

現在のところ、当該法の関連条項に関する議

論を強く求める者が誰もいないからであると

いう。「我々は、まず、包装容器に関わる部分

を討議し、効果的な包装容器制度を確立した

い。食品産業のように、他にもゴミ捨てに対

する責任を有する関係者が存在する。ガムや

タバコなど他のセクターも関係しているのに、

ゴミ捨てと包装容器契約を関連づけるのは奇

妙な話である。」

オランダはすでに 2010 年までの 1.5 リット

ル瓶のデポジット制度を導入している。それ

より小さい瓶のデポジット制度はないと、同

氏は述べた。「1 月には、新しい状況や、産業

界と市町村との合意の内容が明らかになる。」

<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>

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北米における環境関連動向 ~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37]

JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006.1) 44

【今月号のまとめ】

米国同様、カナダは全国レベルでの統一法が存在せず、法規制は州・準州がそれぞれ行っている。

このため、現在施行あるいは構築段階にある 3 州の廃電子機器リサイクルの仕組みも、各州の考

えが色濃く反映されている。全国に先駆けて廃電子機器リサイクルの仕組みを 2004 年 10 月に導

入したアルバータ州は、州政府が設置した州内 100 箇所以上の回収施設に消費者が廃電子機器を

持参し、その後のリサイクルの運営は非営利団体に委託している。これら回収・リサイクル・運

営費用はすべて、消費者から電子機器購入時に徴収する ARF(Advanced Recovery/Recycle Fee,最大 45 カナダドル)にて賄われている。また、ブリティッシュ・コロンビア州は、2007 年を目

処に「プロダクト・スチュワードシップ」(利害関係者全員が責任を負う考え)を基盤に廃電子

機器リサイクルの仕組みづくりに取り掛かっている。その他、オンタリオ州が現在、廃電子機器

リサイクルの仕組み作りに着手している等、州レベルでの取組が主体である。 米国では、政府説明責任局(GAO)が 2005 年 12 月、米国の廃電子機器リサイクルの現状と課題

をまとめた調査報告書を公表した。この報告書は、主に NEPSI に参加していた廃電子機器リサイ

クル利害関係者を対象に行ったアンケート結果によって作成されている。報告書は、現在の課題

として廃電子機器のリサイクル・再利用を促進するような連邦政府によりインセンティブを与え

る制度が欠如している点を指摘し、環境保護庁に対して、廃電子機器リサイクルの連邦法作成に

向けて連邦議会に働きかけるよう推奨した。一方で、環境保護庁は連邦主導の廃電子機器リサイ

クルの仕組み作りに消極的な姿勢を崩さず、政府説明責任局と環境保護庁との意見は平行線のま

まとなった。

Ⅰ. カナダにおける廃電子機器リサイクル規制動向

米国同様、カナダは 10 の州、3 つの準州がそれぞれ

立法責任を有しており、全国統一の廃電子機器リサ

イクル法は存在していない。また各州・準州は、廃

電子機器関連問題への対処方法に関する考え方も異

なっている。カナダでは現在のところ、3 つの州が

廃電子機器リサイクルの規制化に取り組んでいる。

まず、アルバータ州が先行して 2004 年 10 月に ARFの仕組みを施行した。ブリティッシュ・コロンビア

州では、国内最初のプロダクトスチュワーデスシッ

プの仕組み構築を目指した利害関係者(ステークホ

ルダー)を対象とした調査が終了し、現在は最終的

な法案作りが開始されている。また、オンタリオ州

では廃電子機器リサイクルの仕組み構築が法律で義

務付けられた。このような背景を踏まえ、本項目では上記 3 州それぞれの廃電子機器リサイクルへ

連載 北米における環境関連動向 ~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37]

出典:canadafan(ワシントン・コアにて加工)

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北米における環境関連動向 ~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37]

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 45

のアプローチをまとめる。

1. アルバータ州

アルバータ州(州都:エドモントン)は、カナダ国内でも環境保護に熱心な州として知られており、

1971 年には大気・土壌・水質保護を規定する『アルバータ州環境保護・促進法(Environmental Protection and Enhancement Act)』を制定し、1972 年からは飲料ボトルのリサイクルに国内で初め

て取り組んでいる。アルバータ州では従来、電子機器を埋立て処理しており、2004 年のみでも同州

内で TV19 万台、デスクトップ PC 9 万台が廃棄・埋立て処理されると予測されていた。しかし、埋

立て処理方法は、これら電子機器が含有する有害物質による土壌汚染などの環境への影響が懸念さ

れていた。このような環境保全の観点から同州政府は、電子機器を含む全ての年間埋立て処理量を、

既存の一人あたり年間 750Kg から 2010 年までには年間 500Kg へと削減することを目標とするイニ

シアティブを導入した。この一環として 2004 年 10 月 1 日より、カナダで最初の『電子機器リサイ

クルプログラム(Electronics Recycling Program)』1を開始している。以下に、同プログラムの概要

をまとめる。

リサイクルの対象・料金

アルバータ州『電子機器リサイクルプログラム』の対象は、当面は TV・コンピュータのモニターお

よび CPU、ノート型パソコン、プリンターとなる。リサイクルに係る費用は、消費者がこれら対象

機器を購入する際に小売店が徴収する『環境料(an environmental fee)』(いわゆる ARF:Advanced Recovery/Recycle Fee)にて賄われる。『環境料』の徴収は、2005 年 2 月 1 日より開始している。

図表 1 アルバータ州『電子機器リサイクルプログラム』対象機器と『環境料』

(*) 1カナダドル=100.52 円(2006 年 1 月 3 日)

対象機器 『環境料(environmental fee)』

TV モニター(サイズ)

18 インチ以下 15 カナダドル

19 インチ~29 インチ 25 カナダドル

30 インチ~45 インチ 30 カナダドル

46 インチ以上 45 カナダドル

PC および周辺機器

ノート型 PC/電子手帳 5 カナダドル

プリンター/プリンターセット 8 カナダドル

CPU・周辺機器(マウス、キーボード、ケーブルも含む) 10 カナダドル

モニター 12 カナダドル

出典:アルバータ州政府情報をもとにワシントン・コア作成

1 電子機器リサイクルプログラムは、『アルバータ州環境保護・促進法(Environmental Protection and Enhancement Act)』の改正

として、後に同法に盛り込まれた。http://www.qp.gov.ab.ca/documents/Acts/E12.cfm?frm_isbn=0779718771

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JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006.1) 46

『環境料』は、対象電子機器の回収、運搬、リサイクル、

および運営費用を賄う。州によると、TV モニター(19 イン

チ)の『環境料』25 カナダドルの内訳の一例として右表が示

されている。

『環境料』は、最少額で 5 カナダドル(ノート型パソコン)、

最大で 45 カナダドル(46 インチ以上の TV モニター)と幅

広い。これは、電子機器の回収やリサイクルは、サイズ・重

量によってその費用が異なることに由来している。例えば TVモニターの場合、PC モニターに比較してサイズ・重量ともに

大きいため回収費や運搬費が高く、また TV の解体費用も PC に比較して高い。このため、結果的に

PC モニターの『環境料』12 カナダドルに比較して、TV モニターの『環境料』が 15 ドルから 45 ド

ルと高額に設定されている。 アルバータ州によると、『環境料』の額は、リサイクルプログラムが起動に乗り全体の仕組みが効率

化されてくれば、徐々に減額していく方針であるという。同州はまた、対象機器についても、将来

的に携帯電話、ステレオ、ビデオ再生機器(VCR)、DVD プレイヤー、電子ゲーム、FAX 機などへ拡

大する方針である。

リサイクル運営体制

アルバータ州政府は、小売店が徴収した『環境料』の取りまとめや、『電子機器リサイクルプログラ

ム』の運営そのものを、非営利団体のリサイクル管理公社(ARMA: Alberta Recycling Management Authority)2に委託している。同プログラムの運営は ARMA の電子機器リサイクリング・アルバータ

部門(ERA: Electronics Recycling Alberta)が担当し、プログラムの運営、年間予算編成、事業計画、

および年次報告書の作成を行っている。ERA は、電子機器リサイクルに関連する助言を得ることを

目的として、産業界から構成される評議会(ERAIC: ERA Industry Council)も設置している。現在、

ERAIC のメンバーとして、電子機器メーカや環境保護団体、小売店などから合計 6 名が参加してい

る。

図表 2 ERAIC メンバー一覧

メンバー 所属組織・企業名(英語標記) 業界

Nick Aubry ソニーカナダ社(Sony Canada) 電子機器製造

Christine Della Costa アルバータ州環境局(Alberta Environment) 州政府

Frances Edmonds HP 社(Hewlett Packard) 電子機器製造

Grant Pisko(ERAIC 会長) モナーキ社(The Monarch Corporation) 機械製造・組立て

Mike Saley カルガリー市役所(City of Calgary) 地方自治体

Scott Zacharias ベストバイ・フューチャーショップ社

(Best Buy/Future Shop)

小売業

出典:ERA

2 http://www.albertarecycling.ca/

回収費 4.50 カナダドル

運搬費 10.00 カナダドル

リサイクル費 7.50 カナダドル

運営費 3.00 カナダドル

合計 25.00 カナダドル

(*) 1 カナダドル=100.52 円(2006 年 1 月 3 日)

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 47

対象となる廃電子機器は、アルバータ州政府が州内に設置した 100 以上の回収所に、市民が直接持

参する。回収所はこれら廃電子機器を無料で受け付け、回収・リサイクルに係った費用は追って『環

境料』から還元される。 ERA によると、廃電子機器の回収を開始した 2004 年 10 月から 2005 年 8 月にかけて、アルバータ

州は累計 2,100 トンの廃電子機器を回収した。内訳は、TV モニター2 万 2,000 台、CPU・周辺機器・

ノート型 PC4 万 6,879 台、PC モニター4 万 9,914 台、プリンター2 万 6,301 台となっている。 以下に、アルバータ州の『電子機器リサイクルプログラム』の現在までの動きを時系列にまとめる。

図表 3 アルバータ州『電子機器リサイクルプログラム』の現在までの動き

2004 年 10 月 『電子機器リサイクルプログラム』を導入 対象となる廃電子機器の回収開始

2005 年 2 月 1 日 小売店が消費者から『環境料』徴収開始

2005 年 8 月 廃電子機器を累計で 2,100 トン回収

2010 年(目標) 電子機器を含む全ての年間埋立て処理量を、既存の一人あたり年間750Kgから 2010 年までに年間 500Kg までに削減する

出典:ワシントン・コア

2. オンタリオ州

オンタリオ州(州都:トロント)では、『2002 年廃棄物転換法(Waste Diversion Act)』にて廃棄物

の再利用・リサイクルが定められている。2004 年 12 月 14 日、廃電子機器(WEEE)が同法の対象

になることが決定したため、オンタリオ州環境大臣の指令により、オンタリオ州廃棄物転換局(WDO: Waste Division Ontario)に対し廃電子機器リサイクルの仕組みを構築することが義務付けられた。

同州は現在、2006 年後半の承認、2007 年の施行を目指して、廃電子機器リサイクルの仕組み作り

に取り掛かっている。 2006 年にオンタリオ州議会選挙を控えていることなどから、廃電子機器リサイクルの仕組み作りは

混沌としている。このような中での、2006 年 1 月時点での仕組みの大枠は以下のとおり3。

リサイクルの仕組みは、製造者または消費者が責任を持ってリサイクルをする「プロダク

ト・スチュワードシップ」とする。

対象機器は、情報技術機器(PC、PC モニター、コピー機など)、通信機器(FAX、携帯電

話、ポケットベルなど)、AV 機器(オーディオ、カメラ、TV など)が候補に挙がってい

る。その他、家電(エアコン、洗濯機・乾燥機、皿洗機、冷蔵庫、オーブン)も対象にな

る可能性もある。

リサイクル費用は、地方自治体、小売業者、製造業者のいずれかが負担する可能性もある。

3 Appliance Design 紙、2005 年 4 月 1 日。

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JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006.1) 48

3. ブリティッシュ・コロンビア州

ブリティッシュ・コロンビア州(州都:ビクトリア)でも、2005 年以降、廃電子機器リサイクルの

仕組み構築が急速に現実化している。同州政府は、既存のリサイクル関連規制に廃電子機器もその

対象として加える方向で検討している。同州の廃電子機器リサイクルの仕組みは、アルバータ州の

ような ARF(電子機器購入時に消費者が将来的なリサイクル関連費用を負担)ではなく、製造業者

側に回収・リサイクル責任を義務付ける「プロダクト・スチュワードシップ」(市民から製造業者ま

ですべてが循環型社会への責任を負担)4となる。ブリティッシュ・コロンビア州では、既に 2004年 10 月より使用済みペンキ、医薬品、農薬、飲料缶・ボトル、使用済み油などについては「プロ

ダクト・スチュワードシップによる焼却処理の禁止や再利用の促進などの対象としており、廃電子

機器についても同様に、このような州政府のノウハウを生かしたリサイクルの仕組みを構築する考

えである。 ブリティッシュ・コロンビア州のぺナー環境大臣(Barry Penner)によると、同州内では現在、毎

年 1 万 9,500 トンの廃電子機器が埋立て処理されているが、これら廃電子機器の約 7 割はリサイク

ル・再使用が可能であるという。環境局は既に 2005 年 10 月より 1 ヶ月間、廃電子機器の利害関係

者(ステークホルダー)からの意見を受け付けており、現在はこれら意見を検討中である。起案段

階にある同州廃電子機器リサイクルの仕組みは、対象機器を PC、PC モニター、PC 周辺機器(マウ

ス、キーボード、ケーブルなど)、プリンター、TV としているが、利害関係者からの意見書の内容

によっては対象機器を拡大することも考慮しているとしている。ブリティッシュ・コロンビア州環

境局は、2007 年半ばの廃電子機器リサイクル規制の施行を目処としている5。 米国同様、カナダにおいても廃電子機器は概ね埋立て処理されているのが現状である。リサイクル

の仕組みについても、州・準州それぞれの見解の相違が色濃く出ており、またカナダ全国での統一

モデルの構築に向けた動きもない。一方で、アルバータ州によると、最大 45 カナダドルにもなる

高額な『環境料』について、州市民は「電子機器のリサイクルに使用するのであれば支払う」と回

答しており(2003 年時点)6、米国に比較して環境保護に対する市民の意識が高いことがわかる7。

カナダでは、2006 年から 2007 年にかけてオンタリオ州とブリティッシュ・コロンビア州にて新規

制が施行される可能性があり、今後の動きが注目される。

Ⅱ. 政府説明責任局が全米統一の廃電子機器リサイクルの仕組み構築を推奨

政府説明責任局(GAO: General Accountability Office)は 2005 年 12 月 12 日、米国における廃電子

機器リサイクルの現状に関する調査結果を公表した8。『廃電子機器:リサイクル・再使用の促進に

おける連邦政府役割強化(ELECTRONIC WASTE: Strengthening the Role of the Federal Government

4 「プロダクト・スチュワードシップ」:製品のライフサイクル全体の関係者(製造者、小売業者、消費者、処分業者)すべてが製

品による環境影響を削減する責任を負うという考え方。 5 M2 Presswire 紙、2005 年 10 月 31 日;Raymond Communication’s State Recycling Laws Update 紙、2005 年 11 月 23 日。 6 ARMA/ERA 7 一方、同様に ARF の仕組みを採用している米国カリフォルニア州では、現行の ARF(最大 10 ドル)では回収・リサイクルの費

用が賄えていない点が指摘されているが、ARF の引き上げは検討されていない。 8 2005 年 7 月 26 日に上院環境・公共事業委員会(Committee on Environment & Public Works)スーパーファンド・廃棄物管理小

委員会(Subcommittee on Superfund and Waste Management)が開催した廃電子機器リサイクルに関する公聴会において、同

報告書の公表予定について触れられたものである。本誌 Vol.7 No.3『米国の環境関連動向報告書』P. 80 参照。

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 49

in Encouraging Recycling and Reuse)』9と題されたこの報

告書(左)は、廃電子機器リサイクルの利害関係者 49 社

(団体)に対して行った調査10をもとに作成されている。

政府説明責任局が米国における廃電子機器リサイクル問題

について大掛かりな調査を実施したのは今回が初めてであ

り、環境保護庁主導のもとでの全米レベルのリサイクル・

再利用の仕組み構築を強く推奨した内容となっている。

1. 報告書概要

政府説明責任局の報告書は、上院公共事業委員会スーパー

ファンド・廃棄物管理小委員会の要請に基づき、以下 3 つ

の調査目標に沿って調査・報告を実施している。

① 廃電子機器の数と関連課題について現状を調査する

② 廃電子機器のリサイクル・再使用に向けた課題を洗い出す

③ 廃電子機器のリサイクル・再使用促進を目的とした連邦施策を調査する

以下に、調査目的ごとに、政府説明責任局による調査結果をまとめる。

① 廃電子機器の量と関連課題について現状を調査する

政府説明責任局の調査によると、米国における使用済みの PC、モニター、TV は年間 1 億台以上に

上っているが、これらの殆どが家庭内にそのまま保管11されている場合が多い。したがって、米国

の廃電子機器については、リサイクル・再使用に回るのは限られている。別の問題として、もし廃

電子機器を埋立て処理した場合、銅、金、アルミニウムといった貴重な資源が再使用されることな

くそのまま失われることになる。廃電子機器に含有されるとされる有害物質(鉛など)による土壌

汚染については、人体への危険性を指摘する調査がある一方で、米国の近代的な埋立て施設では有

害物質の浸出などは起こらないとの専門家の指摘もある。しかし、廃電子機器の多くが海外へ輸出

されており、これらの国々の多くが近代的な埋立て施設を持たず、また環境規制も米国に比較して

柔軟であるためこれら国々での環境への影響が懸念される。

② 廃電子機器のリサイクル・再使用に向けた課題を洗い出す

家庭内・社内に保管されたままの廃電子機器をリサイクル・再使用が進まない背景として、特に以

下 3 つの障害が挙げられる。

9 『廃電子機器:リサイクル・再利用の促進における連邦政府役割強化(ELECTRONIC WASTE: Strengthening the Role of the Federal

Government in Encouraging Recycling and Reuse)』:http://www.gao.gov/new.items/d0647.pdf 10 調査は、NEPSI に参加していた 48 の利害関係者のうちコンタクトの取れた 44 社(団体)のうち、NEPSI に積極的に参加しな

かった 4 社(団体)を除いた 40 社(団体)と、コンタクトがとれなかった NEPSI 利害関係者に代替する 3 社(団体)、ならび

に NEPSI に参加していない 7 社(団体)、最後に NEPSI 活動終了後に他の団体に移動した個人の、合計 51 利害関係者を対象に、

廃電子機器リサイクルの現状に関するアンケートを送付して行われた。 11 個人宅の場合は地下室や車庫、法人の場合は社内の倉庫にそのまま保管されている場合が多い。

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JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006.1) 50

消費者にとってリサイクルが高額且つ不便――多くの場合消費者が、時には 1 台につ

き 20 ドルを越す高額なリサイクル料を負担している。また回収・リサイクル施設の数

が少なく、中には車で 1 時間以上かけて消費者が持参しなければならない場所もある。

連邦政府による埋立て処理抑止へのインセンティブ規制がない――廃電子機器の中に

は、資源保全回復法(RCRA: Resource Conservation and Recovery Act)の対象となり

埋立てが禁止される場合もあるが、その対象は毎月 220 ポンド(約 99.88Kg)を超え

る量を埋立てる場合のみとなっている。すなわち一般家庭からの廃電子機器は含まれ

ておらず、廃電子機器の埋立て処理削減に向けたインセンティブ規制が存在しない。

また海外へ輸出された廃電子機器の追跡も行っていない。

全米統一のリサイクル法が存在しない――廃電子機器リサイクルの連邦法が存在しな

いため、リサイクル料を賄うための全米レベルでの統一見解も存在しない。このため、

州ごとにアプローチが異なっており、消費者にとって利用しやすいリサイクルの仕組

みも構築され難い。

③ 廃電子機器のリサイクル・再使用促進を目的とした連邦施策を調査する

環境保護庁(EPA: Environmental Protection Agency)はすでに、総額 200 万ドルを費やして数千の

連邦省庁を対象にした複数の廃電子機器リサイクル施策を展開してきた。しかし、これら施策への

参加が強制ではないため、結果的に廃電子機器リサイクル施策(例えば環境にやさしい電子機器を

調達する『連邦電子機器チャレンジ』など)に参加した省庁は、既存の連邦省庁数千機関のうちわ

ずか 61 機関に留まっている。 上記 3 点の調査結果を踏まえ、政府説明責任局は環境保護庁に対し「連邦レベルの廃電子機器リサ

イクル法構築に向けた経済的・規制面での障害を低減するために働きかける」よう求め、そのため

に以下 2 つの具体的な推奨策を提示した。

(1) 環境保護庁が運営する廃電子機器リサイクル施策へ連邦政府省庁の参加を増加させる

(2) 再使用目的で海外に輸出された廃電子機器が、不適切に投棄されないことを保証する

2. 環境保護庁による異議

政府説明責任局から廃電子機器リサイクル施策の運用状況を指摘され、更には連邦レベルの仕組み

構築の責任を担うよう名指しされた環境保護庁は、同報告書の指摘する現状については概ねその事

実を認めたものの、一方で推奨策については実現が難しいとして異議を唱えている。しかし、環境

保護庁からの異議に対しても政府説明責任局はその都度反論しており(図表 4)、両者の意見は平

行線となっている。以下に、環境保護庁と政府説明責任局による廃電子機器リサイクルに関する見

解の相違をまとめる。

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北米における環境関連動向 ~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報 [37]

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 51

調査委託先: ワシントン・コア

Website: http://www.wcore.com <本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>

図表 4 環境保護庁と政府説明責任局による廃電子機器リサイクルに関する見解の相違

論点(政府説明責任局 からの指摘・推奨)

報告書に対する 環境保護庁の異議

環境保護庁からの異議に対する 政府説明責任局の反論

環境保護庁主導で連邦レ

ベルの廃電子機器リサイ

クル法構築に向けて連邦

議会に働きかける

電子機器製造業者の間で「最

適なリサイクルの仕組みにつ

いての統一意見」が未だにな

いため、環境保護庁(すなわ

ち連邦政府)が統一法作りを

提唱することは適切でない。

過去の環境問題における複雑な仕組みづ

くりについて環境保護庁がリードしてき

た先例はある。また、連邦レベルでの廃

電子機器リサイクル法(あるいは仕組み)

が必要との声は多い。

推奨案(1)廃電子機器リ

サイクル施策への連邦省

庁参加を増加させる

環境保護庁の『連邦電子機器

チャレンジ』施策に参加する

12 省庁の調達額は、全連邦省

庁の 8 割以上にのぼっている

ため、「環境にやさしい電子機

器を調達する」という施策目

的は達成している。

例えば『連邦電子機器チャレンジ』の場

合、「環境にやさしい電子機器の調達目標」

はあっても、「調達目標達成義務」はない。

このため、同施策に参加する 61 省庁のう

ち調達目標に達成したのは 5 省庁のみで

ある。このように結果を評価する仕組み

が存在しないことが問題である。 出典:ワシントン・コア

政府説明責任局が、廃電子機器リサイクルについて調査・報告したことは、連邦政府が同問題を重

要な政策課題のひとつとして認めたことになる。更に、同局の報告書では、環境保護庁による廃電

子機器リサイクルの仕組み主導を推奨しており、これは調査を依頼した上院スーパーファンド・廃

棄物管理小委員会(環境・公共事業委員会)の公聴会でも多く聞かれた「連邦政府主導の廃電子機

器リサイクル仕組みづくり」の考えを後押しするものでもある。 連邦レベルの廃電子機器リサイクルの仕組みづくりについては、環境保護庁は長年及び腰であった。

しかし、今回の報告書により政府説明責任局と上院議員との間で環境保護庁の主導を強く推奨する

という意見が一致したことから、今後の動きに影響を与える可能性も考えられる。

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 52

中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点/国家環境政策法の

制定計画

I.「電子情報製品汚染防止管理弁法」を公布へ

2005 年 12 月 17 日、中国情報産業部は同部ウェブサイトで、「電子情報製品汚染防止管理弁法」(以

下「管理弁法」と略称)の WTO 通報原稿を公布した。同部では、「管理弁法」の WTO への通報作

業はすでに完了しており、WTO 加盟国からの質問に回答した後(回答期間は 12 月 17 日より 30 日

間)、それを正式に公表すると表明した。「管理弁法」の実施開始時期は、当初 2006 年 7 月 1 日と

の情報もあるが、直近の報道では、「管理弁法」公表日より 1 年後とすると変更される可能性が大

きい。 電子情報製品による公害規制に着眼点を置いたこの「管理弁法」は、中国版 RoHS ともいわれ、制

定の準備から公布まで 4 年もかかった。その制定過程中、「管理弁法」のドラフトは関連当局、内

外企業および関連業界の意見や提案を取り入れ、比較的大きな修正だけでも 10 数回に及んだとい

われる。 中国政府が「管理弁法」を制定した目的は、2006 年 7 月 1 日からの EU RoHS 指令の実施にあわせ

て、中国電子情報製品製造業界において、有毒有害物質の代替使用または削減のために、廃棄電子

情報製品の回収、再利用を通じて、資源節約および環境保護を推進することにある。同時に EU RoHS指令実施の背景として、環境基準をクリアできない外国電子情報製品が中国市場に流入することを

防ぐことも、「管理弁法」制定のもう一つの目的である。 「管理弁法」は、電子情報製品に鉛など 6 種類の有毒有害物質の使用を禁止する点で、両者の基本

方針はかなり近い。その一方で、両者は多くの点において依然相違している。 報道関係者のインタビューに対し、「管理弁法」制定の主要担当者の 1 人である情報産業部経済運

行司市場処処長の黄建忠氏は、RoHS 指令と「管理弁法」の主な相違について、以下のようにコメ

ントをした。 RoHS 指令発効後、基準に合格しない製品は、マーケットから排除されたり、輸入制限などの処置

を受けたりする可能性がある。「管理弁法」は国内業界がおかれている状況を勘案して、地場企業に

対応するための時間的猶予を与える方法をとっている。EU のように大量製品を規制し、個別に除外

するやり方と異なり、中国では規制、制限可能なものを重点規制項目に掲載し、それを CCC 認証の

対象としている(注:情報産業部の関係者の発言として、CCC 認証の対象は重点規制品目のみと示

唆しているとの報道もあるが、「管理弁法」WTO 通報ドラフトでは、CCC 認証対象は「重点規制品

目リスト」のみとの記述はない)。 また「管理弁法」は、有毒有害物質制限の実施時期を RoHS 指令と同時期にするかどうか依然不明

である。「管理弁法」の規定が打ち出されたこと以外には、関連基準、重点規制製品項目、および有

毒有害物質代替の実施時期についてもまだ決定されておらず、全ては産業発展状況や技術発展水準

から勘案して決定するとしている。中国の「管理弁法」は、EU のような消費者本位ではなく、メー

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 53

カーの対応能力を相当考慮し、実行可能な内容のみを重点規制対象としているという批判もある。 1.「管理弁法」と EU RoHS との主な相違点

中国 EU

規制対象

電子レーダー製品、電子通信製品、放送・テレビ

製品、コンピューター製品、家庭用電子製品、電

子計測機器製品、電子専用製品、電子部品・ユニ

ット、電子応用製品、電子材料製品、ソフトウェ

ア製品など電子情報製品、およびそれらの部品。

家電、IT、通信設備、照明設

備、電気電子工具など 10 種類

除外項目 汚染防止重点製品項目の制定を通じて、重点規制

製品を決定。重点規制製品の選定は、技術面の可

能性および経済面の採算性を考慮する。

あり

標識義務 企業は有毒有害物質、回収の可否、安全使用期限

の情報提供(標識で明示)の義務あり。 なし。企業は自らの判断にも

とづいて適宜行う。 強制認証要求 重点規制対象製品に対し CCC 認証を実施 なし 実施開始時期 「管理弁法」公表日から 1 年後 2006 年 7 月 1 日 2.「管理弁法」と 2003 年 8 月公布の「意見徴収ドラフト」との主な相違点

「管理弁法」意見徴収ドラフト 「管理弁法」

規制対象の 範囲

電子レーダー製品、電子通信製品、ラジオ・テ

レビ製品、コンピューター製品、家庭用電子製

品、電子計測機器製品、電子専用製品、電子部

品・ユニット、電子応用製品、電子材料製品

「ソフトウェア製品などの製品

およびそれらの部品」を追加。

電子情報製品

生産者の定義 生産者は、国内で電子情報製品を生産、販売、

輸入する全ての組織または個人を指す。 生産者、販売者、輸入者の概念

と用語の使用を区別する。

有毒有害物質

の定義

①鉛;②水銀;③カドミウム;④六価クロム;

⑤ポリ臭化ビフェニール(PBB);⑥ポリ臭化ジ

フェニールエーテル(PBDE)およびその他有毒

有害物質

6 種物質以外に、「国家が規定す

るその他有毒有害物質または元

素」と変更。

生産者の安全

使用期限の 届出義務

生産者は、製品の安全使用期限を情報産業部に

届出を行い、情報産業部はそれを公開する。

生産者、輸入者は、製品に安全

使用期限を注記し、かつそれを

説明書で詳細に説明する。メー

カーによる情報産業部への届出

義務なし。

電子情報製品

安全使用期限

の定義 なし

製品に含有される有毒有害物資

の漏れや突変することにより、

環境に深刻な汚染または人々の

健康に、深刻な損害を与えるこ

とのない期限。 生産者の製品

回収処理義務

に関する記述

生産者は、その製品廃棄後の回収、処理、再利

用の関連責任を負う。 なし

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 54

有毒有害物質

含有量の 規制基準

国家関連基準 国家関連基準または業界基準

強制的製品認

証実施の規定 なし

電子情報製品に対する強制的認

証実施の規定を追加。

輸入品検査の

規定 なし

入国時の検査および貨物到着時

検査を実施し、税関は検査証明

書にもとづいて通関を認める。

電子情報製品

淘汰期限 の規定

情報産業部は他の政府部局と協議し、電子情報

製品の淘汰期限を制定する。

電子情報製品汚染防止重点管理

項目(管理対象製品種類、制限

有毒有害物質種類および使用制

限期限)で管理する。 3.「管理弁法」実施後、電子情報製品製造、販売業者は、以下のような作業が発生するとみられる。

1)取り扱う製品が電子情報製品の範囲または規制重点管理品目リストの範囲に属するかを確認

する。

2)製品、部品の有毒有害物質(現時点において、主として規制対象の 6 種有害物質のみとみら

れる)の含有量を測るため、国家が認可した測定機関で測定を行う(外国からの輸入製品の

場合、外国測定機関の測定結果を中国当局が認めるかどうかについては、まだ不明)。

3)6 種有毒有害物質を含有する製品の本体、包装物または説明書に、有毒有害物質の名称、含

有量、回収の可否、製品の安全使用期限(生産日から計算、年単位とするとみられる)、原産

地(輸入品の場合)の情報などを記載、表記する。

4)重点規制品の出荷、販売の前に、中国で CCC 認証を受けると要求される。

5)製品の設計、原材料の調達、製造過程において、有毒有害物質制限の国家基準または業界基

準の要求に従う(「管理弁法」が正式公布の際またはその後に、重点管理品目リスト、有毒有

害物質制限の国家基準・業界基準が公表されるとみられる)。 4.「管理弁法」の実施に関するいくつかの問題点

1)「管理弁法」は、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電製品を規制対象とすると明確に規

定していない。黄建忠氏は、「管理弁法」の規制対象に属する家電製品は、カラーテレビ、

DVD、音響などの製品であり、洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの白物家電は含まれていない

と、コメントしたことがある(電子情報製品以外の製品は、他の部門の管轄に属することが

主な背景とみられる)。これに対し、中国家用電器協会副理事長の劉福中氏は、家電がデジタ

ル化、情報化の方向に進んでいることから、多くの家電製品は制御基盤など情報化された部

品・ユニットなどと切り離すことは不可能である。そのため「管理弁法」の実施は、家電へ

の影響もかなり大きいとコメントした。

広東省の某エアコン大手メーカーは、「エアコン、冷蔵庫に使用する部品の多くは、『管理弁

法』規制の対象に属する。仮に部品メーカーが「管理弁法」規定をクリアする証明を提出で

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 55

きなければ、われわれ完成品メーカーの責任が問われるのか」との懸念を表している。

黄建忠氏は、「管理弁法」公布時に、電子情報製品類製品の詳細項目およびその説明を同時に

公布し、それでも判断することが困難なものについては、製品に使用する電子情報技術部品

が、製品本体の価値の 60%を超過するかどうかで決定するとコメントした。また劉福中氏は、

将来「管理弁法」は家電製品も規制対象として包括する可能性があることを示唆した。

2)「管理条例」の実施可能性がカギ 「管理弁法」では重点規制対象項目製品は強制的に CCC 認証を受けるが、それ以外の製品で

は、有毒有害物質の名称、含有量、回収可否、安全使用期限などの情報については、企業が

自己申告方式で製品、包装物、説明書に標記するとしている。このような制度の遵守状況は、

企業自身の責任に負うところが大きいため、「管理弁法」の規定が有効に実施されるかどうか

は疑問であると、業界関係者からの指摘もあった。山東省某家電大手メーカーの関係筋は、

「主管当局が毅然とした態度で規定を実施するかどうかが重要である。規定を本格的に実施

すれば、業界への衝撃は大きいものとなろうが、実施を徹底することができなければ、業界

を規範する効果に期待できない」とコメントした。

3)「管理弁法」に関連する汚染防止重点管理製品項目および関連の有毒有害物質制限基準を策

定中 「管理弁法」に関連する重点管理製品項目および有毒有害物質の制限基準について、現在当

局はその制定を進めている(重点規制製品項目は 2006 年 3 月頃、公布されるとの説あり)。

重点管理項目および関連基準が公表された後に、企業は製品を国家認定実験室で測定すれば

よいと、情報産業部の関係者による説明が報道された。

4)廃棄製品の生産者回収義務に関する規定 2003 年 8 月に公布された「管理弁法」の「意見徴求ドラフト」では、「生産者は、その製品

廃棄後の回収、処理、再利用にかかわる関連責任を負うべきである」との規定があった。し

かし「管理弁法」では、この規定は削除された。製品のライフサイクルにおけるメーカー側

の環境責任については、国家発展改革委員会が中心となって制定された「廃旧家電および電

子製品回収管理処理管理条例」(中国版 WEEE 指令といわれる)で規制するとみられる。

「管理弁法」では、製品の設計・生産段階で、有毒有害物質使用の制限、回収処理に有効な

設計、生産を要求することを通じて、生産者に対し製品のライフサイクルにおける責任を明

確化している。その基本骨子は、「廃旧家電および電子製品回収管理処理管理条例」で規定す

る「生産者責任」原則と一致している。 5.電子情報製品汚染防止管理弁法(WTO/TBT 通報ドラフト、日本語参考訳)

第1章 総則 第1条 電子情報製品廃棄後の環境に対する汚染を規制あるいは削減し、低汚染電子情報製品の

製造、販売を促進し、製品の清潔生産を実現し、資源利用効率を高め、環境を保護し、

人体への悪影響を防ぎ、産業界の持続的発展を推進するため、「中華人民共和国清潔生産

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 56

促進法」(以下「清潔生産促進法」と略称)、「中華人民共和国固体廃棄物環境汚染防治法」

(以下「固体廃棄物環境汚染防治法」と略称)、「中華人民共和国製品品質法」(以下「製

品品質法」と略称)およびその他の法律、行政法規の関連規定にもとづき、本弁法を制

定する。 第2条 本弁法は、中華人民共和国の国境内で電子情報製品の生産、販売および輸入過程におい

て、電子情報製品による環境汚染およびその他公害を規制あるいは削減する行為に対し

適用する。ただし輸出用製品の生産行為には適用しない。 第3条 本弁法で以下に使用される用語の意味

(1) 電子情報製品は、電子情報技術を使用して製造された電子レーダー製品、電子通

信製品、ラジオ・テレビ製品、コンピューター製品、家庭用電子製品、電子計測

機器製品、電子専用製品、電子部品・ユニット、電子応用製品、電子材料製品、

ソフトウェア製品などの製品およびそれらの部品を指す。

(2) 電子情報製品汚染は、電子情報製品自体が有毒有害物質・元素を含有し、あるい

は電子情報製品のなかに含有される有毒有害物質・元素が、国家基準または業界

基準を超過したことから、電子情報製品が環境、資源および人体の健康、および

財産の保全に対し破壊、損害、浪費またはその他の悪影響をもたらすことを指す。

(3) 電子情報製品汚染防止は、電子情報製品のなかに含有される有毒有害物質・元素

の削減、除去のために、以下の措置をとることを指す。

① 設計・生産過程において、研究開発方法の変更、関連技術や製造方法・工

程の調整、使用材料の交換、製造方法の改善などを講じた技術的措置; ② 設計、生産、輸入および販売過程において、有毒有害物質・元素名、含有

量および電子情報製品安全使用期限を標記するなどの措置; ③ 販売過程において搬入ルートを明確にし、有毒有害物質・元素を含有する、

または有毒有害物質・元素が電子情報製品有毒有害物質規制の国家基準ま

たは業界基準を達成しない電子情報製品を販売しないなどの措置; ④ 電子情報製品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満たさない電

子情報製品の輸入を禁止する措置。 ⑤ 本弁法が規定するその他の汚染防止措置。

(4)有毒有害物質・元素は、電子情報製品に含まれる以下の物質または元素を指す。

① 鉛; ② 水銀; ③ カドミウム; ④ 六価クロム; ⑤ ポリ臭化ビフェニール(PBB); ⑥ ポリ臭化ジフェニールエーテル(PBDE) ⑦ 国家が規定するその他有毒有害物質・元素

(5)電子情報製品安全使用期限は、電子情報製品のなかに含有する有毒有害物質・

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 57

元素が外部に漏れたり、あるいは突然変化したり、電子情報製品ユーザーが当

該電子情報製品の使用などにより、環境の深刻な汚染または人身、財産に深刻

な損害を与えたりしない期限を指す。 第4条 情報産業部、発展改革委員会、商務部、税関総署、工商行政管理総局、質量検験検疫総

局、環境保護などの行政管理部門は各責務の範囲内で、電子情報製品汚染を防ぐため、

管理および監督機能を行使する。また必要に応じ、業務上協力体制を設け、電子情報製

品汚染防止に関わる重大事項・問題の解決に努める。

第5条 情報産業部は、関連部署と協力して各責務の範囲内で、電子情報製品汚染防止に有効な

政策を制定する;電子情報製品汚染防止および資源の総合利用技術などを推進する;電

子情報製品汚染防止の科学的研究、技術開発および国際協力を奨励、支援する;電子情

報製品規制に関する各関連事業の進捗に責任を持つ。

第6条 情報産業部は、新しい環境保護に有利な電子情報製品を積極的に研究、開発する組織ま

たは個人に対し、必要な政策面での支援を与えることができる。

第7条 各省、自治区、直轄市の情報産業、発展改革、商務、税関、工商管理、質量検験検疫、環

境保護などの行政管理部門は、各責務の範囲内で電子情報製品の生産、輸入、販売分野に

おける汚染防止に対する管理、監督業務を履行する。必要に応じて、地域の電子情報製品

汚染防止に関する協力体制を設立し、包括的協力の下で事業、責任を分担する。

第8条 各省、自治区、直轄市の情報産業主管部門は、電子情報製品汚染防止事業および関連活動

において、顕著な実績をあげた組織・個人に対し、表彰、奨励を行う。 第2章 電子情報製品汚染の規制

第9条 電子情報製品の設計者が電子情報製品を設計する場合、電子情報製品有毒有害物質規制

に関する国家基準または業界基準にもとづいて、製造方法の条件を満足することを前提

に、無毒、無害または低毒、低害、分解容易、回収などに有効な方法を採用すべきであ

る。

第10条 電子情報製品生産者が電子情報製品を製造する場合、電子情報製品有毒有害物質規制の

国家基準または業界基準にもとづいて、資源利用効率が高い、回収処理がしやすい、環

境保護に有効な材料、技術および製造方法を採用すべきである。

第11条 電子情報製品生産者および輸入者は、その生産、輸入する電子情報製品に安全使用期限

を明示し、かつ製品説明書にその詳細な説明をすべきである。

安全使用期限標識の様式および方式は、情報産業部が国家関連部と共同で統一的に規定

する。

電子情報製品の安全使用期限は、電子情報製品の生産者または輸入者が自ら確定する。

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 58

関連業界は技術発展水準の状況にもとづいて、電子情報製品安全使用期限の指導意見を

策定することができる。

第12条 情報産業部は、関連業界組織がその制定した電子情報製品安全使用年限の指導意見を情

報産業部に報告および届出をすることを奨励する。

第13条 電子情報製品輸入者が輸入する電子情報製品は、電子情報製品有毒有害物質規制の国家

基準または業界基準を満たすべきである。 電子情報製品生産者が生産用に輸入する電子情報製品は、電子情報製品有毒有害物質規

制の国家基準または業界基準を満たすべきであり、かつその輸入する電子情報製品の上

に、当該電子情報製品の原産地を明記すべきである。体積、機能の制約などから直接標

記が困難な場合、製品包装物または説明書に、原産地関連の明細を記載すべきである。 第14条 電子情報製品生産者、輸入者は、その市場に投入した電子情報製品に含有される有毒有

害物質の部品・ユニットに標識をつけ、有毒有害物質の名称、含有量および回収・再利

用の可否などを明記すべきである。製品の体積、機能の制約などから製品に標記できな

い場合、製品包装物あるいは説明書に記載すべきである。 標識の様式および方法は、情報産業部がその他の国家関連部門と共同で制定した後、そ

れを公布する。 第15条 電子情報製品生産者、輸入者が電子情報製品包装物を製作、使用する場合、電子情報製

品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準にもとづいて、無毒、無害、分解容易お

よび回収・再利用に有効な材料を使用すべきである。電子情報製品生産者、輸入者は、

その電子情報製品包装物に、材料の名称を明記すべきである。製品の体積または外部表

面の制約などから標記ができない場合、説明書に記載すべきである。

第16条 電子情報製品販売者はその搬入ルートを明確にし、有毒有害物質含有量が電子情報製品

有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満足しない電子情報製品を販売してはい

けない。

第17条 情報産業部は国家環境保護総局と共同で、電子情報製品有毒有害物質規制の業界基準を

制定する。情報産業部は国家標準化管理委員会と協議し、電子情報製品有毒有害物質規

制の国家基準を起草する。

第18条 工場出荷、販売、輸入またはその他の事業活動で使用される電子情報製品に対し、国家

認証認可監督管理部門は法にもとづいて、強制的に製品認証管理を実施する。

輸入された電子情報製品について、輸出入検験検疫機関は法にもとづいて、輸入品の検査

および貨物到着検査を実施する。税関は輸出入検験検疫機関が発行する貨物通関証明書に

もとづいて、通関を許可する。

第19条 情報産業部は国家発展改革委員会、商務部、税関総署、工商行政管理局、質量検験検疫

総局、環境保護総局などと協力して、電子情報製品汚染防止重点管理目録を制定、調整

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 59

する。 電子情報製品汚染防止重点管理目録は、電子情報製品類目、使用制限のある有毒有害物

質の種類およびその使用制限期限から成り、かつ実情および科学技術水準にもとづいて、

毎年調整する。

第20条 電子情報製品汚染防止重点管理目録に属する電子情報製品は、本弁法の電子情報製品汚

染防止の規定を満たすと同時に、電子情報製品汚染防止重点管理目録に明記された重点

汚染防止の要求を満たさなければならない。 電子情報製品汚染防止重点管理目録に属しない電子情報製品は、本弁法の電子情報製品

汚染防止の規定を満たすべきである。

第21条 産業発展の実情にもとづいて、情報産業部は国家発展改革委員会、商務部、税関総署、

工商行政管理局、質量検験検疫総局、環境保護総局と協力して、電子情報製品汚染防止

重点管理目録に属する電子情報製品に対し、有毒有害物質含有制限の実施期限を公布す

る。 第 3 章 罰則 第 22 条 電子情報製品設計者、生産者、輸入者および販売者が本弁法に違反し、以下の一つに該

当したものに対し、税関、工商管理、質量検験検疫、環境保護などの部門は、各責務の

範囲内で罰則を課す。

(1)電子情報製品設計者が本弁法第 9 条に違反し、採用した設計方法が電子情報製品有

毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満たさない;

(2)電子情報製品生産者が本弁法第 10 条に違反し、使用する材料、技術および製造方

法が電子情報製品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満たさない;

(3)電子情報製品輸入者が本弁法第 13 条に違反し、輸入する電子情報製品が電子情報

製品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満たさない;

(4)電子情報製品生産者および輸入者が本弁法第 15 条第 1 項に違反し、その製造また

は使用する包装物が電子情報製品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満

たさない;

(5)電子情報製品販売者が本弁法第 16 条に違反し、販売する電子情報製品が電子情報

製品有毒有害物質規制の国家基準または業界基準を満たさない;

(6)電子情報製品設計者、生産者、輸入者および販売者が本弁法第 21 条に違反し、設

計、生産、輸入または販売する電子情報製品に、有毒有害物質・元素を含有したり、

あるいはその含有の有毒有害物質が電子情報製品有毒有害物質規制の国家基準また

は業界基準を超過したりしたもの。

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 60

第 23 条 電子情報製品設計者、生産者、輸入者および販売者が本弁法に違反し、以下の一つに該

当した場合、税関、工商管理、質量検験検疫、環境保護などの部門は、各責務の範囲内

で罰則を課す。

(1) 電子情報製品生産者または輸入者が本弁法第 11 条に違反し、記載内容に電子情

報製品安全使用期限を標記していない; (2) 電子情報製品生産者または輸入者が本弁法第 14 条に違反し、記載内容に電子情

報製品有毒有害物質の名称、含有量および回収・再利用の可否などを標記してい

ない;

(3) 電子情報製品生産者または輸入者が本弁法第 15 条第 2 項に違反し、記載内容に

電子情報製品包装物材料の成分を標記していない。

第 24 条 政府職員が職権乱用、私的権益獲得のため不正行為を行い、本規定違反の行為を黙認し

たり、あるいは本弁法規定に違反した当事者が検査・処罰から逃れることを助けたりし

た者に対し、法にもとづいて警告、違法行為の記録、あるいは公職追放などの行政処分

を課す。刑事事件を犯した者に対しては、法にもとづいてその刑事責任を追及する。

第4章 附則 第 25 条 あらゆる自然人、法人またはその他の組織は、電子情報製品による汚染をもたらした設

計者、生産者、輸入者および販売者に関し、情報産業部または省、自治区、直轄市の情

報産業主管部門に対し、検挙、訴訟を行う権利がある。 第 26 条 本弁法は、情報産業部が発展改革委員会、商務部、税関総署、工商行政管理総局、質量

検験検疫総局、環境保護総局と協力して、その解釈に責任を持つ。 第 27 条 本弁法は 年 月 日より施行する。

出所:中国情報産業部ウェブサイト 参考: 1)中国「製品品質法」罰則の要旨

製品検査で品質不合格の場合、品質検査を実施した品質監督部門は生産者、販売者に対し、期限

までに是正することを命令し、期限を過ぎても是正しないものについては、省レベル以上の人民

政府製品品質監督部門がそれを告示する。告示後に再度検査を行い、依然不合格のものに対し、

その営業停止、期限までの改善を勧告する。改善期限の後、製品の品質が依然不合格のものに対

し、その営業許可書を強制的に回収する。

製品品質に対する監督検査で、製品に深刻な品質問題が生じた場合、生産、販売の停止を命令し、

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 61

違法に生産、販売した製品、違法所得を没収、違法に生産、販売した製品と同価値以上、3 倍以

下の罰金を課す。違法行為が悪質な場合、営業許可書を強制的に回収する。また犯罪を構成した

ものに対し、法にもとづいて刑事責任を追及する。 2)中国「清潔生産促進法」罰則の要旨

関連規定に違反したものに対し、関連当局は期限までの是正を命令し、是正を拒否したものに対

し、10 万元以下の罰金を課す。有毒有害物質が国家基準を超過した建築・内装用材料を生産、

販売したものに対し、関係者に対し行政、民事、刑事責任を追及する。 3)中国「固体廃棄物環境汚染防止法」罰則の要旨

50 万元以下の罰金、期限までの是正を命令、営業停止命令、あるいは当事者に対し行政・民事・

刑事責任を追及する。

II. 国家環境政策法の制定を計画

報道によれば、中国国家環境保護総局は、同局が制定した「十一五計画期間(2006~2010 年)全

国環境保護法律法規制定計画」のなかで、環境保護に関する基本法律として位置づけられる国家環

境政策法の制定を明確にした。国家環境保護総局は、中国社会経済の発展に伴い、既存の各専門分

野の環境保護法律法規が逐次整備されているなかで、全国人民代表大会により、一層格の高い「国

家環境政策法」を通過させる必要性があると強調した。 国家環境政策法制定の意義について、国家環境保護総局は以下のように指摘している。1979 年以降

20 数年間、中国の環境分野における法律は、主として専門分野のみカバーする単一項目での立法措

置で進められてきた。いわゆる単項法律は専門分野を規制対象とするものである。ところがこれら

単項法律法規は、長年の制定または改訂を経るにつれ、単項法律法規間で相互に整合性がないケー

スが起きている。個別管理制度・措置に関する規定について、異なる法律法規間で整合性がない以

上、環境基本法を通じて、効果的かつ整合性のある措置をとる必要がある。 国家環境政策法が規定する主要事項について、国家環境保護総局は以下のように説明している。

1) 国家環境保護の目標、原則および基本政策 2) 環境保護の基本制度 3) 環境保護業務およびその他経済社会発展業務との協調メカニズム 4) 政府、企業、大衆など異なる主体の基本的な環境に関する権利と義務、とりわけ各レベル

の政府における環境責任および関連監督審査メカニズム 5) 環境管理の基本的職権および法律の具体的実施手段 6) 基本法とその他環境保護単項法との関係およびその他関連事項

中国は 1979 年に「環境保護法(試行)」を制定し、その後改訂を経て 1989 年 12 月 26 日、現行の

「環境保護法」が公布、施行された。現行の「環境保護法」は、全国人民代表大会常務委員会で認

可された法律であり、全国人民代表大会が制定する国家基本法に属していない。(中国の立法法では、

刑事、民事および国家その他基本法の制定、改訂などの権限は全国人民代表大会にあり、全国人民

代表大会常務委員会は、全国人民代表大会が制定、改訂すべき法律以外の法律を制定、改訂する。)

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中国【23】中国版 RoHS 法とその問題点・国家環境政策法の制定計画

JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 62

中国が社会主義的市場経済を推進し、社会経済が急速に発展しているなか、公害の防止、環境・天

然資源の保護にさらに力を入れる必要性が顕在化してきた。現状では、公害防止および環境保護に

おいて、先に公害を発生させ、その後に対処を行えばよいという認識であること、地方政府が地方

経済発展のため、環境を犠牲にする行為がよくみられること、法律上、環境保護を担当する行政当

局では、環境保護法違反に対する処分の権限が限られていることなどから、環境・資源破壊の事故

が各地で多発している。 中国の環境問題の深刻さについて、中国国務院は2005 年12 月に公布した「科学的発展観を徹底し、

環境保護を強化することに関する決定」のなかで、環境保護推進事業の実績を認めると同時に、中

国環境問題の深刻さについて、以下のように指摘した。「主要汚染物排出量は自然回収能力を超過し

ており、都市を通過する河川は普遍的に汚染されている。また多くの都市の大気汚染は深刻であり、

酸性雨汚染が進み、恒常的に有機汚染物の弊害が顕在化してきた。さらに土壌汚染面積が拡大し、

沿海の汚染が深刻化し、核および輻射環境にも潜在的問題が存在している。生態破壊が急速に拡大

し、土砂流失が増加かつ広範囲にわたり、砂漠化、草原の荒地化が進み、多くの生物が減少し、生

態環境の機能が荒廃しつつある。先進国では 100 年以上におよぶ工業化過程において、段階的に現

れた環境問題は、わが国においてはわずか 20 年あまりで集中的に表れており、かつそれは構造的、

複合的、圧縮化された特徴を呈している。」 中国は初期の段階で、すでに環境保護を国策の一つとして取り入れてきた。中国が今後「環境保護

法」を改訂する上で、これを国家環境政策法のレベルまで引き上げることで、環境保護の法的措置

を強化する方針である。国家環境政策法制定のほかに、国家環境保護総局は「十一五計画」期間中、

現在も立法化措置が手つかずの状態になっている化学品の環境管理規制、土壌汚染防止、核安全管

理、生態保護、生物安全性などの分野で、法律を制定する計画がある。また西部開発生態保護監督

条例、農村部環境保護条例などの法規や部門規定の制定も計画されている。

調査委託先: Thrace Investments Limited(華南投資顧問有限公司) HP: http://chinasouth.info/(日本語・English)

<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>

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JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006. 1) 63

ペンタックスの環境への取り組み

ペンタックス株式会社 CSR 推進部 部長 岡山 修

1. はじめに

ペンタックスグループの事業内容は、カメラ等デジタル製品をはじめ、医療、インダストリアル製

品、そしてバイオテクノロジーと、さまざまな分野における先進技術と製品の開発・製造及び販売を

行っております。

本稿では、当社グループの環境活動組織及び環境保全活動の内容について紹介させていただきます。

2. ペンタックスグループ環境活動組織

当社グループの「環境理念」において地球環境との共存共栄を掲げ、その理念に基づき環境負荷低

減を考慮した製品をお客様に提供することを目指しております。

そして、環境保全活動の取り組みは、リオサミットが行われた翌年の 1993 年に「環境保全推進室」

を設置し、同年に「旭光学地球環境憲章」(現ペンタックスグループ環境理念)が制定されたときに始

まります。 また、1996 年 ISO14001 が発行された翌年に、ペンタックス(株)(本社、益子事業所)、及び関連

会社の一部がその認証を取得し、事業所毎の本格的な環境活動がスタートしました。 そして、事業活動の海外展開に伴い当社グループとして環境保全活動の統一を図り、事業所全体に

情報がより迅速に展開されるように活動組織を見直すとともに、海外関連会社を含めた環境活動体制

を構築して、年 2 回「ペンタックスグループ環境会議」を開催し、環境保全に関する課題と情報の共

有化を図っています。

寄寄 稿稿

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ペンタックスの環境への取り組み

JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006. 1) 64

3. 環境活動の重点項目の具体的取り組み

当社グループで定めた環境活動の重点項目を、各事業所で設定する目的・目標、マネジメントサイ

クルに取り込んで環境活動を推進しています。 (1) CO2排出量の削減 2004 年度のエネルギー使用に伴う CO2の排出量は 25,700 トンで前年比 5.5%削減できました。売

上高原単位では、目標値 1990 年度比 10%以上に対し、14.6%削減して目標を達成しました。

(2) 廃棄物の削減 環境活動の開始時期にあわせ、本社、国内関連会社、海外生産関連会社に対するゼロエミッション

達成時期をそれぞれ設定し推進しています。 ペンタックス(株)及びペンタックスオプトテック(株)につきましては 2005 年度にゼロエミッ

ションを達成することを目標に掲げて推進しています。

図 1 環境体制

図 2 CO2 排出量

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ペンタックスの環境への取り組み

JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006. 1) 65

(3) グリーン調達の推進 EUのRoHS指令対応を

第一義として、製品含有

有害化学物質の排除のた

めサプライヤーからの協

力のもと、同化学物質非

含有物品の調達納入を推

進しています。

この項目は、調達を行

う本社の業務であり、設

計部門とともに調達部門

が環境目的・目標として

取り組んでいます。

(4) 製品含有有害物質の排除 Pb フリー半田への切り替えをはじめとし、表面処理の六価クロム、材料に含まれるカドミウム、樹

脂の中の臭素系難燃剤など、納入物品の検査を行い、2006 年 3 月までに廃除することを目標として推

進しています。 (5) 省資源化の推進 省資源化については、これまでもレンズ輸送梱包用トレーのリユース等の取組みを行ってきました

が、今年度は梱包資材の省資源化も進めております。梱包材は一度ユーザーの手に製品が渡ったとき

から廃棄物に変わります。このため梱包材を樹脂素材から紙素材へ切替え、省資源化を進めています。

また同時に必要強度を保ちながら素材の軽量化も図っています。

図 3 廃棄物とリサイクル

図 4 生産材グリーン調達の考え方

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ペンタックスの環境への取り組み

JMC environment Update Vol. 7 No. 5 (2006. 1) 66

4. 土壌浄化

当社グループでは、1997 年から自主的に土壌・地下水汚染の調査と、浄化対策を実施しています。

対策にあたっては、「汚染地下水を敷地外に流出させない」「浄化工事については、安全かつ効果の高

い方法で実施する」を基本的な考えとしています。

(1) 汚染調査 「土壌汚染対策法」では、対象 25 物質を使用していた場合、工場、事業所を廃止するときなどは

土壌汚染調査が義務づけられました。 当社グループでは、同法が施行される以前から環境改善活動の一環として自主的に土壌汚染調査を

実施しており、測定値が環境基準値を超えた場合には行政に報告するとともに、近隣住民への説明会

開催並びにホームページなどによる社外公表をしております。 (2) 旧小川事業所の土壌汚染調査及び土壌浄化工事 旧小川事業所(現ペンタックスオプトテック(株)小川)は、2001 年 6 月環境活動の定期調査にお

いて、鉛の測定値が環境基準値を超えたため、調査機関に詳細調査を依頼して土壌・地下水の調査を

実施しました。 調査の結果、敷地内から揮発性有機化合物のテトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレンと重金属の鉛が確認されました。 これらの化学物質に対する土壌浄化に際しては、行政と緊密な

連携を取りながら、また近隣住民の方々へ情報開示を行い、周辺

住民に迷惑がかからないよう細心の注意を払いながら実施してい

ます。 土壌浄化工事は清水建設(株)に依頼して稼働中の工場建屋の

下の浄化も可能な、バイオスクリーン処理やバイオショックロー

ド処理などにより現在 5 ヵ年計画で進めているところです。

5. 今後の展開

企業の社会的責任への関心が高まる中、その大きな柱である環境保全活動はリスク予防につながり、

またビジネスチャンスにもなります。 当社グループとしては、製品に含まれる有害化学物質の低減及び廃除は今後の大きな課題と捉えて、

グリーン調達活動をはじめとした本質的な環境に配慮した製品への取り組みが重要になると考えてい

ます。 当社グループは、今後とも企業の社会的責任を果たし、持続可能な社会づくりに貢献してまいる所

存です。 □

[当組合 貿易関連環境問題対策委員会 委員]

図 5 土壌浄化工事

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 67

環境・安全グループ担当委員会の活動状況

1. 貿易関連環境問題対策委員会

<平成 17 年度 第 4 回委員会(12/21:組合会議室)>

「気候変動を巡る最近の国際動向」 ―― 経済産業省 産業技術環境局 地球環境対策室室長 坂本 敏幸氏より、2005 年 11 月

~12 月に開催された気候変動枠組条約第 11 回締約国会議(COP11)及び京都議定書

第一回締約国会合(COP/MOP1)の開催結果を中心に最近の気候変動を巡る国際動

向について報告があり、その後質疑応答・意見交換を行った。

(社)電子情報技術産業協会、(社)電池工業会、(社)日本冷凍空調工業会の3団体から、環境

への取り組み状況について報告があった。

2. 貿易と環境専門委員会 <平成 17 年度 第 8 回委員会(12/20:組合会議室)>

最近の環境関連動向(WEEE & RoHS、REACH 等)および環境配慮設計規格検討状況につい

て情報交換、意見交換を行った。

<平成 17 年度 第 9 回委員会(1/20:組合会議室)>

最近の環境規制動向(WEEE & RoHS、REACH 等)および IEC における環境関連規格動向に

ついて情報交換、意見交換を行った。

3. 環境法規専門委員会

<平成 17 年度 第 7 回委員会(12/2:組合会議室)>

最近の環境規制動向(欧州:EU WEEE&RoHS 関連、英国 RoHS 規則関連、EU 電池指令、 ELV指令 等、米国:バーモント州水銀規制、マサチューセッツ州省エネ規制関連 等、中国:

RoHS 規則案、省エネ規制 等)について情報交換、意見交換を行った。

<平成 17 年度 第 8 回委員会(1/17:組合会議室)>

欧州(WEEE & RoHS、RoHS 除外、カテゴリー8&9 関連等)、アジア(中国 RoHS、フロン

ガス関連、台湾 RoHS 関連等)の環境関連情報交換・意見交換を行った。

4. 合同専門委員会 <2005/12/20:組合会議室>

「TBT 協定について」 ―― 経済産業省 産業技術環境局 基準認証国際室室長補佐 林 勇樹氏より、WTO の TBT

協定について講演があり、その後意見交換・質疑応答を行った。

「ニューアプローチについて」

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環境・安全グループ担当委員会の活動状況

JMC environment Update Vol. 7 No.5 (2006. 1) 68

―― ㈱ユーエルエーペックス 製品認証部 ITAV 課 アソシエイトエンジニアリングスタッフ 岡崎 憲二氏より、ニューアプ

ローチ指令について講演があり、その後意見交換・質疑応答を行った。

5. 環境問題関西委員会

<平成 17 年度 第 7 回委員会(12/1:大阪支部会議室)>

当組合ブラッセル事務所 平塚 敦之次長(JBCE 事務局長)より、「EU 環境規制の最新動

向(RoHS 問題を中心に)」について報告があり、意見交換を行った。

<平成 17 年度 第 8 回委員会(1/27:大阪支部会議室)>

海外の環境規制(EU の WEEE&RoHS、REACH、中国 RoHS 等)に関する最近の動向について

情報交換を行った。

6. 環境関連講演会 <2006/1/26:組合会議室>

在ロンドン法律事務所 Allen & Overy LLP の Owen Lomas 弁護士および Justin Pavry 弁護士

より、「欧州主要国における WEEE & RoHS 指令実施状況」について講演があり、その後質

疑応答、意見交換を行った。

7. 基準認証委員会

<平成 17 年度 第 6 回委員会(12/16:組合会議室>

経済産業省 産業技術環境局 相互承認推進室課長補佐 永井 裕司氏より「MRA 及び基準認

証を巡る最近の動向」について報告があり、その後質疑応答、意見交換を行った。

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006. 1) 69

既刊図書のご案内

ニューアプローチ・グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド〔対訳版〕

欧州では、2000 年に「Guide to the implementation of directives based on New Approach and the Global Approach」が公表され、CEマーキング、省エネ、環境等の指令の実施についてわかり易く

解説がされているため、当組合は欧州委員会から翻訳に関するライセンスを得た上で、CEマーキ

ング対策委員会・「ニューアプローチ指令WG」を設置し、翻訳及び編集作業を行ったものです。

発行年月日 2001 年 12 月 20 日

体 裁 A4 判 180 ページ

目 次 : 本文:

1. 序文 2. 指令の適用範囲 3. 責任 4. 指令への適合 5. 適合性評価手順 6. ノーティファイド・ボディ(NB) 7. CE マーキング 8. 市場監視 9. 対外的観点

付属書:

1. 本ガイドで引用される欧州共同体法令 2. 欧州共同体設立条約(EC 条約)の特定条項に関する追加情報 3. 追加ガイダンス文書 4. 欧州委員会連絡先 5. 有用な web アドレス 6. ニューアプローチ指令対象製品 7. 適合性評価手順の内容 8. 指令で規定される適合性評価手順のフローチャート

販 売 価 格 : 10,000 円(組合員割引価格 5,000 円)(消費税込み、送料別)

お申し込みは以下のサイトからお願いいたします。 http://www.jmcti.org/publication/select2.php3?id=307&ccode=1291047130060123

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JMC environment Update Vol.7 No.5 (2006.1) 70

事務局便り ◇ WEEE & RoHS指令については、RoHS指令カテゴリー8&9 の対象化に関する調査が実施中であ

り、日本業界としても同調査に対して提言等を行うべく動いております。本号において本件調

査の動向、今後の予定とあわせJBCEの動きなどを紹介し、現状把握に供しました。RoHS追加

除外問題については、第 3 パッケージ案件が分割され、まず第一サブグループについての除外

案が 2 月 15 日に開催となったTACにおいて採決される予定で、日本業界が要望している項目に

ついてはその後となっております。これらの問題については、今後も注視し、本誌において報

告していきたいと考えております。

◇ REACH規則案については、昨年 12 月に理事会において「政治的合意」が採択され、今後、「共

通の立場」の発表後、欧州議会第 2 読会での審議に進むということになりました。本号では理

事会で採択された内容の骨子を紹介しました。また電池指令案についても欧州議会本会議(第

2 読会)において修正案が採択されましたが、製品からの電池取り外し容易性の条件が入り、

電気電子機器メーカーから懸念の声があがっております。今後、どのように推移するか注目す

べき問題となっております。

◇ 環境分野における最初のニューアプローチ指令としてEuP指令が既に成立しており、またWEEE & RoHS指令においても欧州委員会が「上市」の定義をニューアプローチと同様としていること

などから、ニューアプローチについて、この分野の専門家である㈱ユーエルエーペックスの岡

崎憲二氏(当組合「基準認証委員会」前委員長)からその基本概念、上市の定義の解釈等につ

いてご講演いただきましたので、その講演録を掲載しました。各位の参考になれば幸いです。

◇ モニタリング情報としては、欧州については REACH 規則案の第 1 読会結果に対する欧州議会

議員の批判、気候変動政策・排出量取引制度に関する動き、廃棄物輸送法関連の動向等、北米

についてはカナダの廃電子機器リサイクル規制に関する動きおよび全米レベルの廃電子機器

リサイクルの仕組み構築に関する議論、また中国については中国版 RoHS に関する問題等につ

いて報告しております。

◇ 組合員のページとしては、「ペンタックス」の環境への取り組みをご紹介します。「貿易関連環

境問題対策委員会」委員としてご活躍の岡山様からご寄稿いただきました。同社では早くから

「地球環境憲章」(現ペンタックスグループ環境理念)を制定して環境保全の取り組みを開始

し、現在では CO2 排出量の削減、グリーン調達の推進等グループで定めた重点項目を推進し、

また土壌汚染調査と浄化対策も実施するなど、社会的責任を果たすべく様々な取り組みを行っ

ていることが分かり易く紹介されております。

◇ ニューアプローチにおける「上市」の定義が注目されております。そこで欧州委員会の「ニュ

ーアプローチ・グローバルアプローチに基づく指令の実施ガイド」(いわゆる”ブルーガイド”)を当組合にて翻訳し、英和文を左右対比で見やすく整理した刊行物をご紹介しました。ご関心

の向きは、当組合のホームページからお申し込みできます。

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本レポートの全部または一部の無断転載を、翻訳、原文の如何を問わず禁ず。

environment Update ― 海外環境関連情報誌 ―

第 41 号 2006 年 1 月(Vol.7 No.5)

発行: 日 本 機 械 輸 出 組 合

環境・安全グループ TEL: 03-3431-9230 FAX: 03-3436-6455 HP: http://www.jmcti.org/

〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 401 号

印刷:株式会社 伸榮

〒158-0096 東京都世田谷区玉川台 2-3-10

本誌バックナンバーの詳細は、

当環境・安全グループのサイト http://www.jmcti.org/kankyo/index.htm →

環境関連のページ → 海外関連情報誌-environment Update → 既刊号の目次 をご参照下さい。

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