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FX Monthly | 令和 2 年(2020 年)10 30 1 Table of contents 1 為替相場の見通し 2 予想レンジ 3 マーケットカレンダー 4 為替相場推移表 1. 為替相場の見通し 1)ドル円(内田) 構造的ドル安の背景 ................................................. 2 ドル円は 105 円を割り込んだまま月末を迎えるなど、軟調に推 移している。米国の経常赤字は拡大傾向にあり、低金利も長期化 が見込まれる。その上、コロナ対応としてのドル資金の供給拡大 により、例年みられる秋口のドル高も影を潜めたままだ。本邦勢 の円売り圧力もさほど強くはないと考えられる。無論、米大統領 および連邦議会選挙は重要。仮に、トリプルブルーとなれば、一 旦はリスク選好的となり、ドル円の浮上も見込める。しかし、新 型コロナウイルスの感染再拡大が経済への脅威となりつつある上、 構造的なドル安要因も根強く残ると懸念される。ドル円のリスク は下を向いたままとみられ、依然、続落に警戒を要そう。 2)ユーロ(平松) 再びロックダウン、短期的に弱含み ........................ 7 3)英ポンド(亀井) 貿易交渉合意の可能性は高まるも上値は重い ........ 12 4)豪ドル(井野) 追加緩和より米大統領選への警戒必要か ............... 15 5)カナダドル(栗田) 23 年までの下限金利継続を示唆 ............................ 17 6)人民元(栗田) 元高抑制策への警戒感が強まる ............................. 18 GLOBAL MARKETS RESEARCH チーフアナリスト 内田 シニアアナリスト 亀井 純野、井野 鉄兵 アナリスト 平松 誠基 リサーチアシスタント 栗田 大地 令和 2 年(2020 年)10 30 FX Monthly 三菱 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group

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FX Monthly | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 1

Table of contents

1 為替相場の見通し

2 予想レンジ

3 マーケットカレンダー

4 為替相場推移表

1. 為替相場の見通し

(1)ドル円(内田) 構造的ドル安の背景 ................................................. 2

ドル円は 105 円を割り込んだまま月末を迎えるなど、軟調に推

移している。米国の経常赤字は拡大傾向にあり、低金利も長期化

が見込まれる。その上、コロナ対応としてのドル資金の供給拡大

により、例年みられる秋口のドル高も影を潜めたままだ。本邦勢

の円売り圧力もさほど強くはないと考えられる。無論、米大統領

および連邦議会選挙は重要。仮に、トリプルブルーとなれば、一

旦はリスク選好的となり、ドル円の浮上も見込める。しかし、新

型コロナウイルスの感染再拡大が経済への脅威となりつつある上、

構造的なドル安要因も根強く残ると懸念される。ドル円のリスク

は下を向いたままとみられ、依然、続落に警戒を要そう。

(2)ユーロ(平松)

再びロックダウン、短期的に弱含み ........................ 7

(3)英ポンド(亀井)

貿易交渉合意の可能性は高まるも上値は重い ........ 12

(4)豪ドル(井野)

追加緩和より米大統領選への警戒必要か ............... 15

(5)カナダドル(栗田)

23 年までの下限金利継続を示唆 ............................ 17

(6)人民元(栗田)

元高抑制策への警戒感が強まる ............................. 18

GLOBAL MARKETS RESEARCH

チーフアナリスト 内田 稔

シニアアナリスト 亀井 純野、井野 鉄兵

アナリスト 平松 誠基

リサーチアシスタント 栗田 大地

令和 2 年(2020 年)10 月 30 日

FX Monthly

三菱 UFJ 銀行 A member of MUFG, a global financial group

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 2

構造的ドル安の背景

10月のドル円は105.45で寄り付いた後、翌日104.95まで下落した。

トランプ大統領の新型コロナウイルス感染が判明し、先行きへの不

透明感から市場がリスク回避的となった為だ。しかし、翌週には同

大統領が公務に復帰する見込みとなり、市場のセンチメントも好転。

105 円割れの堅さを確認したドル円も 106 円台を回復した。この間、

市場はバイデン前副大統領が大統領選を制し、上下両院の過半数議

席も民主党が確保するトリプルブルーのシナリオを有力視。財政出

動を念頭に、株式相場は堅調に推移し、長期金利も上昇した。もっ

とも、2 営業日続けて高値を 106.11 で抑えられたドル円は次第に軟

化。米議会における経済対策合意のめどが立たないことや新型コロ

ナウイルスの感染拡大が欧州を中心に経済活動の制限に波及しつつ

あること、依然として英国とEUのFTA交渉が難航したことなどが、

徐々に市場心理に冷や水を浴びせた。加えて、バイデン・トランプ

両氏の支持率の差も縮まると選挙結果も予断を許さないとの見方が

台頭。捻じれ議会の発生に伴う政策の停滞や郵便投票の拡大による

選挙結果確定の後ずれリスクへの警戒から、月末にかけて米国を起

点に株式相場が値崩れを起こした。この間もドル円はじり安に推移

し、21 日には 1 カ月ぶりに 104 円台まで下落。辛うじて 105 円台を

回復した 26 日を挟み、ここまで 105 円割れが 6 営業日中 5 営業日も

続いた。これほど 105 円割れが続くのは、2016 年 10 月以来約 4 年ぶ

りのこと(第 1 図)。これまで、リスク回避の場面ではドルも選好

されることが多かったが、今月は堅調な円やスイスフランとは対照

的にドルは下位に位置している(第 2 図)。これまで散見された短

期的な 105 円割れとは異なる様相を呈している。

第 1 図:2013 年以降のドル円とサポート、レジスタンス 第 2 図: G10 通貨の対ドル変化率(9/30 vs 10/30 正午)

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

こうしたドル安の背景に、経常赤字をファイナンスするには不十

分な金利水準(の低さ)を指摘できよう。世界的な経済成長の鈍化

を受け、米国の輸出は急減。サービス収支の黒字縮小と相まって、8月の貿易赤字は約 671 億ドルと過去 大(2006 年 8 月の約 683 億ド

ル)に迫る。第 1 次所得収支の黒字幅も縮小しており、今年の経常

85

90

95

100

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13 14 15 16 17 18 19 20

(円/㌦)

(年)

125.86

99.00

長期レジスタンス

サポート

短期レジスタンス

-2.5

-2.0

-1.5

-1.0

-0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

JPY CHF SEK NZD CAD GBP USD EUR AUD NOK

(%)

見逃せない構造的な

ドル安要因

10 月のレビュー 4 年ぶりの軟調さ

Page 3: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 3

赤字の対GDP比は 3%を上回る可能性が高い(昨年は約 2.2%)。一

方、FRBがインフレ目標を「平均して 2%」に変更した為、現在の

低金利政策はかなりの長期間に及ぶ見通しだ。コロナ禍の終息(或

いは収束)が見通せない限り、潜在成長率やインフレ期待の上昇も

見込みづらく、長期金利も低迷を余儀なくされよう。今月、米国の

長期金利が多少上がったものの、2002 年以降の経常収支と長期金利

との関係に照らせば、その低さは依然として際立っている(第3図)。

このように、金利水準が低い場合、経常赤字をファイナンスすべき

対内証券投資の誘引に必要なのはドル安となる。ドル建資産の割安

感によって、対内証券投資を訴える必要性に迫られよう。 加えて、コロナショックへの対応としてFRBが資産買い入れを拡

大した。この結果、FRBの資産規模もマネタリーベースも過去 大

となっており、市場に出回るドル資金の原資は潤沢だ(第 4 図)。

極端に市場の緊張が高まるケースを除き、これも為替市場における

ドル安要因となり得よう。

第 3 図:米国の経常収支と長期金利(2002~2019 年) 第 4 図: FRB の資産規模と政策金利

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作

(2020 年第 3 四半期の経常収支は当方の予想)

y=▲25.0x(▲8.0)-47.8(2.3) (R2=0.483、カッコは t 値、02~19 年データ)

(資料)FRB、Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

米国では、11 月 3 日に大統領選および連邦議会選挙が行われる。

現在、大統領選に関しては、トランプ氏が劣勢を挽回しつつあるが、

それでもバイデン氏が優位を保っている。また、下院もほぼ民主党

の過半数維持が濃厚とされる。一方、上院では接戦が見込まれてお

り、市場が一時織り込みかけたトリプルブルー実現の不確実性は高

い。大統領選の勝者と議会との捻じれの有無に的を絞ると 4 通りの

シナリオに集約される。以下、各シナリオでのドル円の値動きに関

する予想を 新の動向も踏まえて改めて示す。 トランプ大統領が再選を決め、上下両院の過半数議席を共和党が

勝ち取れば、政策の進展が見込まれ、いくらかリスクオンとなるだ

ろう。ただ、議会共和党には、財政支出拡大に難色を示す議員が少

なくない。大掛かりな景気対策は期待しづらい上、新型コロナウイ

ルスの感染も拡大傾向にあり、リスクオンの程度や持続性は限られ

-250

-200

-150

-100

-50

00 1 2 3 4 5 6

(10億ドル)

(%)

四半期末の長期金利

20年Q1

Q2

Q3

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

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4.5

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07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

(%、兆㌦)

(年)

政策金利

資産規模

シナリオ A トリプルレッド、リス

クオンも程度は限定的

米選挙の行方とドル円

相場への影響

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 4

よう。尚、2016 年のトランプラリーにおけるドル円急騰を招いた一

因であるドル資金のひっ迫感は、現在さほどみられていない。 トリプルブルーの場合、増税方針が示されているものの、インフ

ラ投資などの支出拡大と差し引きすれば財政は拡張的だ。景気への

追い風となることが期待され、市場もリスク選好的になるだろう。

米国の株式相場が上昇し、ドル円も長期金利の上昇に連れ、 大 107~108 円まで上昇すると予想する。但し、リスクオンの下ではドル

も売られやすい上、新型コロナウイルスの感染が広がりを見せてい

る。次第に増税も嫌気されそうだ。200 日移動平均線である 107.10付近を超えた辺りから上値も重くなりそうだ。構造的なドル安要因

はそのまま残る為、選挙後の熱気が冷めた後はドル円も反落。年末

にかけて再び 105 円を割り込むと予想する。 大統領選をどちらが制した場合も、上下両院のいずれかでも過半

数議席を野党側に奪われてしまうと、財政支出を伴う政策の実現は

困難となる。この為、シナリオB、Dでは政策の停滞が懸念され、株

式相場が下落する危険性が高い。政府の財政支援が不十分となるリ

スクを警戒するFRBが、追加緩和を迫られる可能性も高まる。長期

金利には低下圧力が加わろう。リスク回避色が強まる結果、ドル、

円ともに選好され、値幅を伴うクロス円の円高に要注意だ。また、

10 月終盤のドル円の下落は、リスク回避の場面で円に軍配が上がる

可能性を示唆した。この為、ドル円でも下値不安が高まると考えら

れ、100 円に迫る場面も有り得よう。結果判明までの期間が長期化

する場合も概ね同様の値動きとなるのではないか。

第 1 表:米大統領および連邦議会選挙のシナリオ別相場

(資料)筆者予想

シナリオ A B C D

1 大統領 トランプ トランプ バイデン バイデン

2 議会の過半数政党 上下両院とも共和党 ⽚⽅または両⽅とも⺠主党 上下両院とも⺠主党 ⽚⽅または両⽅とも共和党

3

4 15% 25% 35% 25%

5 政策 進展しやすい 停滞のおそれ 進展しやすい 停滞のおそれ

6 財政出動 規模は限定的 可能性低い10年で約7兆ドル

(但し増税が約4兆ドル)可能性低い

7 追加(金融)緩和 景況感次第 財政出動なく可能性高い 景況感次第 財政出動なく可能性高い

8 米中関係

9 リスクオン・オフリスクオン

(コロナ拡大中、持続性弱い)リスクオフ

(政策停滞を嫌気)リスクオン

(コロナ拡大中、持続性弱い)リスクオフ

(政策停滞を嫌気)

10選挙後のドル円

(11月のイメージ)大108円まで反発後、年末に向けて反落

ドル安円高大108円まで反発後、年末に向けて反落

ドル安円高

11 年末のドル円予想 103~106円 99円~102円 103~106円 99円~102円

蓋然性

40% 60%

エスカレートやや緩和も程度は限定的

(関税引き下げ期待も民主党の対中強硬姿勢も強い)

シナリオ C トリプルブルー、リス

クオンだがやはり程度

は限られそう

シナリオ B、D および結

果確定まで長期化なら

市場はリスクオフ、ド

ル安円高加速も

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 5

発足して間もない菅政権は、円高への警戒を強めよう。日銀の緩

和不足が円高とデフレを招いたとするアベノミクスを受け継いでい

る為だ。実際、日銀短観(9 月調査)によると事業計画の前提となっ

ている今年度下期の想定為替レート(全規模・全産業)は 107.30(ユー

ロ円は 120.49)と実勢よりも円安水準だ。財務省や日銀、金融庁に

よる 3 者協議が頻繁に行われる可能性が高く、経済界からも円高抑

制を求める声は高まろう。為替介入は、G7 やG20 において原則とし

て回避する方針が共有されているが、何も介入を含む為替政策の自

由度を奪われているわけではない。それでも、現実的には為替介入

実施のハードルは相当に高いだろう。まず、円は歴史的にみれば、

安値圏にあり、実際に購買力平価よりも円安水準を維持している(第5図、第 6 図)。また、ドル円下落の一因はドル安であって、介入の

正当性に対する疑義も抱かれやすい。緩やかに下落していることか

ら、投機的な動きを封じるとの説明も説得力を欠く。さらに言えば、

トランプ政権は経常収支不均衡の是正にドル安が効くと明言してお

り、民主党も保護主義色とドル安志向が強い。為替介入は、米政権

との摩擦を覚悟する必要もあり、当面本邦の当局も静観するのでは

ないか。

第 5 図:円の実質実効相場 第 6 図:ドル円の相対的購買力平価(PPP)と実績

(資料)BIS より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

実効相場は貿易の比重に応じて加重平均した円の総合的な値動き。この内、イン

フレ格差を勘案したものが実質実効相場で輸出競争力の強弱も示す。

(資料)OECD、Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

17 年末の PPP は 176 ヵ国が参加し、幅広い財とサービス価格を対象とした国際比

較プログラム(ICP)に基づく数値。これに基づく昨年末の PPP は 101.474。

構造的なドル安は、特にG101かつ経常黒字、非資源国通貨である

円、ユーロ、スイスフラン、スウェーデンクローナに対し、このま

ま残る可能性が高い。これに対し、本邦の対外投資の内、直接投資

は世界経済の先行き不透明感を反映してやや手控えられよう。証券

投資も、為替ヘッジコストの低下を受け、オープン外債が活発化す

る地合いではないようだ。これまでのサポートである「105 円」が

今後、上値抵抗線としてドル円の上昇を阻む公算が大きい。以上を

踏まえ、従来同様にドル円が四半期毎に 1 円程度の緩やかなペース

で下落する可能性が高いと予想する。また、EUと英国とのFTA交渉

1 G10 通貨は USD のほか AUD、NZD、JPY、EUR、SEK、NOK、CHF、GBP、CAD を指す。

65

70

75

80

85

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140

145

150

94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 20 (年)

(円高)

(円安)

77.9

(9月末)

90.6

(過去20年平均)

(2010年=100)

60

80

100

120

140

160

180

200

220

240

260

280

300

320

73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19 21

(円/㌦)

(年)

ドル円(年末値)

購買力平価

世界銀行算出の

105.379(17年末)

プラザ合意

日本の当局対応、極め

て低い為替介入の可能

ドル円相場の見通し 標準シナリオ

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 6

が難航する場合、ECBの追加緩和観測と相まって、年内はドル安の

受け皿としてユーロが機能しなくなる恐れもある。その際、ドル安

の矛先が円に向かうとみられ、 大で 101 円までの下落を見込む。

第 2 表:予想レンジおよび各四半期末の予想値(標準シナリオ) 11 月~12 月 21 年 1 月~3 月 4 月~6 月 7 月~9 月

予想レンジ 101.0~108.0 99.0~106.0 98.0~105.0 97.0~105.0

期末予想値 103.0 102.0 101.0 100.0

(予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想。期末予想値は各四半期末のニューヨーク 17 時時点の予想)

一方、標準シナリオを上回るペースや値幅によって、円高が進む

とすれば、それは米国の景気後退と日本のデフレ本格回帰への警戒

が揃って高まる場合だ。前者は、FRBによる一段の金融緩和観測を

高める。ドルの中長期金利に低下圧力が加わる結果、一段とドルが

下押しされそうだ。また、後者の場合、デフレまたはその観測の台

頭によってインフレ期待が低下。実質金利の上昇と円高を招くとみ

られる。実効性ある日銀の追加緩和策は乏しいとみられる中、日本

でも新型コロナウイルスの感染拡大が、経済活動の制限に波及すれ

ば、このシナリオの蓋然性が高まる。 反対に標準シナリオより、ドル高円安が進むとすれば、市場がリ

スク選好的となって、過剰流動性も支えにリスク資産が堅調に推移

する場合だろう。このとき、為替市場では円も全面安に近い値動き

をたどるとみられる。無論、コロナ禍の終息を見通せない限り、い

かなるリスクオンも持続性には乏しい。また、リスクオンの場面で

は、円と同様にドルも弱含むことを踏まえれば、このシナリオでも、

ドル円の 110 円大台はかなり遠いだろう。

チーフアナリスト 内田 稔

リスクシナリオに関す

る留意点

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 7

(2)ユーロ 再びロックダウン、短期的に弱含み

10 月のユーロドル相場は横ばい圏での推移となった(第 1 図)。

10 月 1 日にユーロドルは 1.1725 で寄り付いた。月初は、米追加経済

対策協議をめぐり楽観的な見方が優勢となり、リスク選好姿勢が強

まった。その結果、ドルが売られ、ユーロドルは 9 日に 1.18 台前半

まで回復した。しかし、月央にかけては、コロナワクチンの治験中

断や米追加経済対策への期待後退により、リスク回避姿勢が強まり、

ドルが買い戻された。加えて、フランスの主要都市で夜間外出禁止

令が発令されたことを嫌気し、ユーロが売られ、ユーロドルは 15 日

に 1.17 を割り込んだ。その後、英国とEUの通商交渉が継続されたこ

とで、交渉決裂への警戒感が和らぎ、ユーロが買い戻された他、米

追加経済対策への期待も高まり、リスク選好姿勢が強まったことで、

ドルが売られ、ユーロドルは 21 日に高値 1.1880 まで上昇する場面

もみられた。もっとも、月末にかけては、フランスやドイツ政府が

行動規制を強化したことを嫌気し、ユーロドルは 1.17 台前半まで下

落している。 ユーロ円相場は月初に 123.71 で寄り付いた。月初は、米追加経済

対策協議に対する楽観的な見方から、円が軟調に推移し、ユーロ円

は 9 日に高値 125.09 まで上昇した。しかし月央にかけては、フラン

スの主要都市での夜間外出禁止令を受け、ユーロが売られ、ユーロ

円は 15 日に 123 円台前半まで下落した。その後、ユーロドルの上昇

に連れて、ユーロ円も 125 円ちょうどまで戻す場面もみられたが、

月末にかけて域内の行動規制強化が嫌気され、ユーロ円は 122 円台

前半まで下落している。(第 2 図)。

第 1 図 : ユーロドルの推移 第 2 図 : ユーロ円の推移

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

10 月のユーロ圏総合PMI(速報値)は 49.4 と、前月(50.4)から

鈍化し、4 か月ぶりに好不況の分かれ目となる 50 を下回った(第 3図)。業種別にみると、製造業PMIは 54.4 と前月(53.7)から改善

した一方、サービス業PMIは 46.2 と前月(48.0)から悪化した。サー

ビス業PMIが悪化している背景には、ユーロ圏でのコロナ感染再拡

大が挙げられる。10 月 26 日には、ユーロ圏の新規感染者数は過去

1.1600

1.1700

1.1800

1.1900

1.2000

1.2100

20/08 20/09 20/10

(ドル)

(年/月)

↑ユーロ高

↓ユーロ安

121.00

122.00

123.00

124.00

125.00

126.00

127.00

128.00

20/08 20/09 20/10

(円)

(年/月)

↑円安

↓円高

コロナ感染再拡大が続く

10 月のレビュー

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 8

多となる 19 万 8 千人を超えた(第 4 図)。国別では、フランスと

スペインの感染者の増加が際立つが、その他の地域でも軒並み感染

者が増加傾向にあり、その勢いは日を追うごとに増している(第 5図)。感染拡大に歯止めをかけるため、14 日にフランス政府は非常

事態を宣言し、パリやリヨンなどの主要都市で夜間(午後 9 時から

翌朝 6 時まで)の外出禁止令を出した。それでも感染の勢いが止ま

らなかったため、29 日には規制を一段と強化し、フランス全土を対

象に、都市封鎖(ロックダウン)を再び導入した。期間は 10 月 30日から 12月 1日までとし、終日移動が制限される。またドイツでも、

28 日にメルケル首相と各州首相の協議の結果、行動規制が強化され

た。具体的には、飲食店の閉鎖(デリバリーや持ち帰りは除く)や

映画館などのレジャー施設の閉鎖などが決定された。期間は 11 月 2日から 11 月末までとなっている。 なお、英オックスフォード大学が算出している各国政府の対応厳

格度(コロナへの規制)指数によれば、これまでユーロ圏主要国(ド

イツ、フランス、イタリア、スペイン)の規制厳格度は米国と比較

すると依然として緩和的だ。ただし、上述したフランスの都市封鎖

やドイツの規制強化が反映されれば、ユーロ圏と米国が逆転する可

能性もある。ユーロ圏でロックダウンが解除された 5 月以降、ユー

ロ圏と米国の厳格規制の差がユーロドルと相関してきただけに、ユー

ロ圏の規制強化はユーロドルの重石となろう(第 6 図)。今後の動

向に要注目だ。

第 3 図 :ユーロ圏 PMI 第 4 図 :ユーロ圏のコロナ新規感染者数・死者数

(資料)マークイット、Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

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70

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

ユーロ圏総合PMI ユーロ圏製造業PMI ユーロ圏サービス業PMI

(年)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

10,000

11,000

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

22

3月1日 4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日

ユーロ圏の感染者数前日比 ユーロ圏の死者数前日比(右軸)

(人)(万人)

Page 9: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 9

第 5 図 : ドイツ・フランス・イタリア・スペインの感染者数 第 6 図 : ユーロ圏・米国・日本のコロナ対応厳格度

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (注)ここでは、ユーロ圏主要国をドイツ、フランス、イタリア、スペイン 4 か国としてい

る。コロナ対応厳格度とは、新型コロナウイルスに対する各国の政策を 9 項目で比

較したもの。9 項目は休校、休業、イベント中止、イベント人数制限、公共交通機関

運休、自宅待機、啓蒙、国内移動制限、海外旅行制限となっている。1が も規制

が緩和されており、100 が も厳格な対策となっている。

(資料)英オックスフォード大学より三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成

景気を下支えるため、ECBも年内に追加緩和に踏み切るようだ。

10 月のECB理事会(10 月 29 日)では、ECBは現行の金融政策を据

え置いたが、ラガルド総裁の発言1を受け、12 月の追加緩和は既定路

線となった。また、ラガルド総裁が 12 月の理事会ではあらゆる手段

を検討するとの見解を示したことで、パンデミック緊急購入プログ

ラム(PEPP)など資産買入の増額・延長のみならず、預金ファシリ

ティー金利の引き下げも講じるとの見方が強まっている。 実際、先物市場における金利織り込みを確認すると、1 年以内の

10bpの利下げを完全に織り込んだ(第 7 図)。ECBが利下げに動い

た場合、独米の実質金利差(両国の10年国債利回りからブレークイー

ブンインフレ率を差し引いて算出)は幾分拡大しそうだ(第 8 図)。

米国債利回りが今年大幅に低下したことで、ドル建て資産よりユー

ロ建て資産への投資妙味が増している状況に変わりないが、その効

果は幾分抑制されよう。 また、これまでPEPPが増額された場合、独伊スプレッドの縮小が

好感され、ユーロは上昇してきた。しかし、足元で独伊スプレッド

がコロナショック前の水準まで縮小していることから、以前に比べ

ユーロ高の余地は乏しいと当方は予想している。むしろ、ECBのバ

ランスシート拡大や利下げが材料視され、ユーロの上値は抑えられ

るだろう。

1 ラガルド総裁は記者会見で「12 月の理事会(12 月 10 日)で行動する必要性について全員が賛成している」「12 月に行動す

ることに殆ど疑いはない」と発言している。

0

20

40

60

80

100

120

140

2020年3月 2020年4月 2020年5月 2020年6月 2020年7月 2020年8月 2020年9月 2020年10月

ドイツ感染者数 フランス感染者数 イタリア感染者数 スペイン感染者数

(万人)

1.03

1.06

1.09

1.12

1.15

1.18

1.21

1.24

-40

-30

-20

-10

0

10

20

30

2月1日 3月1日 4月1日 5月1日 6月1日 7月1日 8月1日 9月1日 10月1日

コロナ対応厳格度指数(米国ーユーロ圏主要国平均) ユーロドル(右軸)

(↑ 米国の厳格度>ユーロ圏主要国厳格度)

(↓ 米国の厳格度<ユーロ圏主要国厳格度)

ECB、12 月に追加緩和へ

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 10

第 7 図:EONIA 金利 第 8 図: ドイツと周辺国の金利差(10 年国債利回り)

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

一方、ドルも決して強いわけではない。G10 通貨の年初からの変

化率を並べてみると、ドルは 10 通貨中 6 位となっている(第 9 図)。

コロナショック以降、ドルは頑健な条件を揃えた通貨(G10 かつ経

常黒字かつ非資源国、CHF/SEK/EUR/JPY)に対して下落している。

先々に関しても、コロナ感染の終息が見通せず、引き続きドルは頑

健な通貨に対し弱含みそうだ。加えて、米国も景気下支えのため、

FEDは強い緩和を続けるとみられる。米国の経常赤字と低金利の組

み合わせが続くことから、今後とも対ユーロでは緩やかなドル安の

継続が見込まれる。

第 9 図 : 年初来以降の G10 通貨の対ドル変化率 (10 月 30 日執筆時点)

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

以上を踏まえるとユーロ相場をめぐっては、①コロナショックを

踏まえた景気要因、②ECBの利下げ観測により、下振れ懸念が高まっ

ている。そのほか、英国との通商交渉が難航していることから(詳

細はP.12 英ポンドの見通しご参照)、ユーロは目先弱含みそうだ。

ただし、米国の経常赤字と低金利の組み合わせを背景としたドル安

は続くとみられ、来年前半にはユーロドルも持ち直し始めるとみて

-0.7%

-0.6%

-0.5%

-0.4%

-0.3%

20/11 21/05 21/11 22/05 22/11

EONIA FWD EONIA翌日物

(年/月)

-2.0%

-1.5%

-1.0%

-0.5%

0.0%

0.5%

1.0%

1.5%

2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年

日本 米国 ドイツ

5.7%5.1%

4.2% 4.0%

0.4%0.0%

-1.6%-2.3% -2.5%

-7.7%

-10.0%

-8.0%

-6.0%

-4.0%

-2.0%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

CHF SEK EUR JPY AUD USD NZD CAD GBP NOK

ドルも軟調な推移が続く

ユーロ相場の見通し

Page 11: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 11

いる。一方、ドルもユーロも目先軟調な推移が見込まれることから、

そのしわ寄せが円に向かいやすい。そのため、ユーロ円は軟調な値

動きが見込まれる。

予想レンジ 11 月~12 月 21 年 1 月~3 月 4 月~6 月 7 月~9 月

EUR/USD 1.13~1.21 1.14~1.22 1.15~1.24 1.16~1.26

EUR/JPY 119.0~126.0 118.0~126.0 117.0~125.0 116.0~125.0

予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想

アナリスト 平松 誠基

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 12

(3)英ポンド 貿易交渉合意の可能性は高まるも上値は重い

10 月のポンドの対ドル相場は、月初 1.29 台前半で寄り付いた。EUとの貿易交渉をめぐる先行き不透明感が強いなか、交渉に関する要

人発言に一喜一憂する形で、1.30を挟んだ推移が続いた。21日には、

バルニエEU首席交渉官が欧州議会での演説で「英国との通商合意は

手の届くところにある」と言及したことで、合意への期待が高まり、

高値 1.31 台後半まで上昇する場面がみられた。だが、交渉をめぐる

先行き不透明感は根強く、新型コロナの感染再拡大も重なり、ポン

ドは上値を抑えられた。足元では 1.29 台前半にて推移している。 ポンドは対円では 136 円台後半で寄り付くと、一時高値 137 円台

後半まで上昇した。だが、貿易交渉をめぐる不透明感の高まりに新

型コロナの感染再拡大が重なるなか、月末にかけて 134 円台後半ま

で値を下げ、足元では 135 円台前半にて推移している。 10 月のポンド相場はEUとの貿易交渉の進展期待で揺れる展開と

なった。ポンドの実効相場及び対ドル相場は小幅に上昇したものの、

ポンドは対円では下落した。 10 月 2 日まで行われた交渉ラウンドでは交渉に十分な進展がみら

れず、交渉継続可否の判断は 10 月 15-16 日開催の欧州理事会と、そ

れを踏まえたジョンソン英首相の判断にゆだねられた。EUは英国を

けん制しつつも交渉継続姿勢を示したのに対し、ジョンソン首相は

交渉再開のめどは立っておらず、EUの動き次第と、再開にあたりEU側の歩み寄りを求めた。双方の首席交渉官による協議が続いた後、

21 日には英国が 22 日からの交渉再開を発表。当初 25 日期限とされ

た交渉は 28 日まで期限を延長して行われたものの、これまでのとこ

ろ、成果について特段の発表は行われていない。一部では早ければ

11 月上旬にも合意の可能性ありと報じられているが、交渉再開にあ

たって発表された原則では、10 月 22 日からの初回フェーズを皮切

りに、今後数週間にわたり、集中協議が続くとされている(第 1 表)。

そのため、交渉の次の目途は 11 月中旬ごろとみられ、それまでは交

渉の進展を見守る時間帯が続きそうだ。

第 1 表:EU 離脱及び英国国内の当面の主なスケジュール

(注)青字は英国国内イベントスケジュール

(資料)各種資料、報道より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

日付 内容

20年10月22日~28日 英国・EUの集中協議 第1フェーズ(ロンドン)

20年10月下旬~ 英国・EUの集中協議継続(ロンドン・ブリュッセル)

20年11月5日 BOE四半期金融政策報告、金融政策発表、議事要旨公表、ベイリー総裁記者会見

20年11月中旬 臨時欧州理事会開催?

20年11月26日 EUの考える年内批准に向けた欧州議会への貿易協定案の提示期限

20年12月10日~11日 欧州理事会

20年12月17日 BOE金融政策発表、議事要旨公表

20年12月31日 移行期間の終了予定日

21年1月1日 (英国とEUが合意できていれば)貿易協定が発効

10 月は EU との貿易交

渉の進展期待が支えに

交渉の次の目途は 11月

中旬あたりか

10 月のレビュー

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 13

英国・EUは双方ともに引き続き貿易協定の合意は可能との姿勢を

維持している。だが、先行きは依然不透明であり、早期に貿易協定

の合意に至るとみるのは時期尚早だろう。そのため、当方では引き

続き、年末にかけて交渉が続き、年内に限定的な合意に至るシナリ

オをメインシナリオと想定している。 ポンド下押し要因としては、新型コロナウイルスの感染再拡大を

受けた景気悪化リスクの高まりも挙げられる。10 月 21 日には一日

の感染者数が 26,707 人に達するなど、感染が再拡大している(第 1図、第 2 図)。国内では経済に大きな影響を及ぼす全土での厳しい

行動制限措置の導入に関して、賛否が分かれている。だが、感染再

拡大を受けて、既に各地で地域的な行動制限措置は引き上げられて

いる。今後、英国も再度全土に行動制限措置を導入するかは不透明

ながら、経済の回復ペースはさらに緩やかなものにとどまると見込

まれ、先行きの景気への懸念は一層増している。

第 1 図:主要国の人口 10 万人当たりの感染者数 第 2 図:英国の新規感染者数推移

(資料)Bloomberg、Johns Hopkins より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ

作成

(資料)Bloomberg、Johns Hopkins より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ

作成

こうしたなか、11 月 5 日のBOE金融政策発表の際には、併せて四

半期金融政策報告が公表される。BOEはEUとの貿易交渉に関して、

予てより前提条件を「2021 年 1 月 1 日からEUとの間で包括的な貿易

協定が発効する場合」としているため、今回も貿易交渉の現状を踏

まえた見通し変更は見込みづらい。だが、足元の新型コロナの感染

再拡大を受け、GDP成長率見通しが幾分下方修正される公算が大き

い。これに伴い、従来、年末近くに購入額が目標上限近くに達する

見込みとしていた量的緩和の拡大(資産買入プログラムの目標残高

の増額)を決定する可能性が高いとみている。実際に、10 月にはラ

ムスデン副総裁やブリハ委員からも量的緩和拡大を示唆するような

発言が聞かれた(第 2 表)。 なお、マイナス金利に関しては、 近のBOEメンバーの発言をみ

ても、依然として「検証中であり、導入も選択肢ながら、近いうち

の導入は検討していない」との姿勢は不変である(第 2 表)。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

03/10 04/10 05/10 06/10 07/10 08/10 09/10 10/10

(人)

(月/日)

ドイツ 中国 スペイン フランス 英国 イタリア 米国

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

03/1 04/1 05/1 06/1 07/1 08/1 09/1 10/1

(人)

(月/日)

年内の限定的な合意を

見込むも、交渉の先行

きに関して楽観するの

は時期尚早

新型コロナの感染拡大

を受けた景気悪化が重

石に

BOE は量的緩和の拡大

を決定か

Page 14: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 14

第 2 表: 近の BOE 委員の発言

(資料)各種報道より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

足元ではEUと貿易交渉で合意に至る可能性が高まっているものの、

交渉をめぐる先行き不透明感は依然として高い。EU離脱後の移行期

間終了が近づくなか、貿易交渉の先行きへの懸念が高まる場面では

値幅を伴ったポンドの下落に警戒が必要とみており、11 月~12 月期

の予想レンジは下ぶれ方向に広めに設定している。また、10 月には

貿易交渉の進展期待が高まる場面でもポンドの上値は重かった。こ

の理由のひとつとして、仮に合意に至った場合も限定的な合意にと

どまり、来年以降に交渉が持ち越される分野が多く残り、先行き不

透明感が高い状況が続く可能性を市場が見込み始めたことが挙げら

れよう。加えて、新型コロナウイルスの感染再拡大により、先行き

の景気回復は緩やかにとどまるとみられることや、マイナス金利導

入観測が引き続きポンドの下押し要因である状況も不変である。こ

のため、貿易交渉が進展した場合もポンドの上昇は短期的で、当面

ポンドの軟調推移が続くとみている。

シニアアナリスト 亀井 純野

日付 発言者 役職 内容 スタンス

2020/10/5 Haskel MPC委員引き続き、取りうる政策手段の幅を検証している。ECBによるマイナス金利の検証はプラスの効果を示唆している。

リスクは下振れ方向に傾いている。

ハト派

2020/10/8 Andrew Bailey 総裁

新型コロナの感染拡大第2波は第1波ほど悪くならないだろう。

英国の第3四半期の活動はおそらく、新型コロナ問題以前の水準を7~10%下回

るだろう。

中立

2020/10/13 Andrew Bailey 総裁

BOEはマイナス金利導入の準備ができていない。

先行きのV字回復を見込んでいない。

失業の持続性は経済の傷み具合を見るうえでの重要な尺度。BOEは金融政策の引き締めを待つ用意がある。

中立

2020/10/18 Andrew Bailey 総裁マイナス金利は景気の好転局面でより効果的であるようだ。まだらな景気回復には政策への示唆が含まれる。新型コロナ問題への対応において、中銀の独立性は「極めて重要」

中立

2020/10/20 Gertjan Vlieghe MPC委員

政策余地を拡大する方法を考える必要がある。

雇用のリスクは、経済のたるみが拡大する可能性を示唆。一時帰休の労働者がすべて元に戻るとは見込みづらい。現時点では、量的緩和が主要な政策手段である。

ややハト派

2020/10/21 Ramsden 副総裁 BOEにはさらなる債券購入を行う余地が十分にある。 中立

2020/10/22 Haldane MPC委員

BOEがマイナス金利を研究していることは、導入を意味するわけではない。

我々は道具箱に取りうる政策手段が入っていることを確認するために作業を行っている。そのことは、その手段を使うということとは同義ではない。(使うかどうかは)利益とその対価のバランス次第である。

ややタカ派

ポンドは引き続き下落

リスクを警戒

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 15

(4)豪ドル 追加緩和より米大統領選への警戒必要か

豪ドルの対ドル相場は 0.72 ちょうど近辺で取引開始した。米大統

領選を 11 月に控えて神経質な値動きが続いた。9 日にはトランプ大

統領が修正後の景気対策案承認との報道があり、リスク回避ムード

が和らいだため、豪ドルは月中高値 0.7243 まで上昇した。しかし、

豪国内では11月の準備銀理事会での追加緩和がコンセンサスとなる

なか、豪ドルの上値も重く、それ以降は弱含みに推移。15 日のロウ

総裁講演や 9 月の豪雇用統計発表を経て、20 日にかけて 0.7021 まで

下落している。月末にかけては 0.71 台まで持ち直したものの、金融

市場のリスク回避ムードが強まるなかで、29 日には 0.7002 まで押さ

れている。 11 月 3 日は内外で大きなイベントが控える。国内では、準備銀が

定例の理事会、同深夜には米大統領選の投開票が予定されている。 今回の準備銀理事会では、諸政策金利の引き下げと資産買い入れ

増強が打ち出されよう。具体的には、翌日物キャッシュレートをは

じめ、資産買入策にかかる 3 年物国債利回りのターゲットや、金融

機関に対するターム物貸出(TFF)金利をそれぞれ現行の 0.25%から

0.10%に引き下げると予想される。また、準備銀預金(ESA:日本で

いう日銀当座預金)金利も現行の0.10%から数bp引き下げられよう。

実際に利下げとなれば 3 月以来だ。一方、資産買い入れ増強につい

ては、長期金利の押し下げを志向し、具体的な購入目標額を示す量

的緩和(QE)に踏み切るとの期待もあるようだが、ロウ総裁は直近

の講演質疑でも実体経済への波及効果という点で利下げに比べて慎

重な物言いに終始していた。この点も踏まえると、巷間期待されて

いるような 5年から 10年といったゾーンの国債等資産買入増強は明

言するものの、購入目標額等の明確なターゲットは示さず、一定の

自由度を確保すると考えている。 準備銀はこの数か月、9 月理事会に於けるTFF拡充を含め、追加利

下げ、資産買入増強に向けて地均しを進めてきた。このため、すで

に短期から中期ゾーンを中心に豪国債利回り曲線は押し下げられて

いる。また、結果的に豪米金利は短期から中期ゾーンにかけては再

び米優位となったことで、このところの米大統領選を控えたドル安

にも関わらず豪ドルはドルに対しても弱含みに推移した(第 1 図)。

すでに今回の追加緩和は相当程度織り込まれているとみてよいだろ

う。したがって、明確かつ大幅な資産買入といった予想を超える積

極的な追加緩和に踏み切ることがなければ、市場の関心は同日深夜

の米大統領選に移ることになりそうだ。 その米大統領選を巡っては、投票日直後の初期反応としての急変

動を含めた豪ドル安進行に注意したい。9 月以降、「追加緩和を見

据えた豪ドル安」と「大統領選を控えたドル安」が拮抗するなか、

豪ドル安がやや優勢となった一方、0.70 大台が短期的な底値として

意識されてきた。今回の大統領選が波乱含みであることは議論を待

米大統領選を受けた急

変に注意

10 月のレビュー

追加緩和は相当程度織

り込まれている

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 16

たない。すでに金融市場は大統領選前の手控えムードとなっている

が、当日以降は刻々と伝えられる情報に大きく動揺が広がる可能性

もみておく必要があろう。そうなれば、0.70 の大台防衛ライン割れ

も十分に想定される。参考までに前回 2016 年の米大統領選当時の豪

ドル相場を振り返ると、トランプ氏勝利の情勢となった大統領選翌

日の値幅は 2.5%程度、その後 9 営業日かけて合計 6%程度下落して

いる(第 2 図)。仮に、本稿執筆時点から 6%程度下落すると、当方

予想レンジの下限 0.67 をやや割り込む水準となる。なおこの際、対

円相場は 1 日で 6%強の値幅(豪ドル安方向)を記録したが、急速な

円安転換により、その後上昇基調となっている。 もっとも、当方は中期的に大統領選後のドル安を予想している(ド

ル円の項ご参照)。したがって、準備銀が追加緩和に踏み切るもの

の、ドル安圧力の前では豪ドル安基調復活には至らないだろうと考

える。懸念されていたビクトリア州を中心とする新型コロナ感染症

拡大第 2 波もほぼ終息した状況となり、これからの夏場の景気回復

に期待を持てる状況となったこと、また、すでに経常黒字国に転換

していることも踏まえ、大統領選後、ほどなくすると再び緩やかな

豪ドル高基調となるとの見方を継続する。

第 1 図: 豪・米国債利回り差と豪ドル対ドル相場 第 2 図: 2016 年 10 月以降年末までの豪ドル対ドル相場

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

シニアアナリスト 井野 鉄兵

0.55

0.6

0.65

0.7

0.75

0.8

‐1.2

‐1

‐0.8

‐0.6

‐0.4

‐0.2

0

0.2

0.4

Jan‐20 Mar‐20 May‐20 Jul‐20 Sep‐20

(%pts)

2年物(左軸) 10年物(左軸) 豪ドル対ドル相場(右軸)

↑ 豪>米

0.71

0.72

0.73

0.74

0.75

0.76

0.77

0.78

10/3 10/13 10/23 11/2 11/12 11/22 12/2 12/12 12/22

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為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 17

23 年までの下限金利継続を示唆

10 月のカナダドル(対米ドル)相場は月前半、原油価格の上昇を

受け 1.31 付近まで上昇した。もっとも、月後半にかけては、欧州を

中心としたコロナ感染拡大や、米追加経済対策を巡る動向に振らさ

れ、原油価格の下落も相まって、一転下落する展開となった。カナ

ダ銀行(中銀)は 28日の会合で政策金利を 0.25%で据え置いた一方、

資産買入に関し、「少なくとも週 50 億カナダドル」としていた国債

購入の枠組みを、40 億カナダドルに縮小することを発表している。 欧州中心にコロナ感染拡大と防疫のための規制強化が図られる中、

米追加経済対策の早期成立期待の剥落もあり、カナダドル(対米ド

ル)相場は足もとで弱含む展開となっている。また、カナダ国内を

みても、コロナ感染第2波は新規感染者の増加ペースを速めており、

すでに第 1 波を上回るペースとなっている(第 1 図)。もっとも、

第 1 波の時とは異なり、死者数の増加は抑え込まれており、大規模

なロックダウン措置の可能性は低いとみる。 目先、グローバルにコロナ感染の再拡大が懸念される中、来週に

は米大統領選挙も控えており、市場のセンチメントに振らされる可

能性はあるものの、カナダ国内経済は当初の見込みを上回る堅調な

回復をみせている。回復基調が維持されれば、カナダドル相場は底

堅く推移しよう。もっとも、今月の中銀会合では、2020 年の成長率

見通しが上方修正された一方、マイナスの需給ギャップが 2022 年ま

で残存することが指摘され、インフレ率が中銀目標の 2%まで回復す

るのは 2023 年以降となるとの見通しが示されている(第 1 表)。こ

れを受けて、市場では、2023 年までの間、現行の緩和政策が維持さ

れるとの見込みが強まっている。足もとでは資産買入プログラムに

調整の動きがみられたものの、金融緩和姿勢継続は、金利低下圧力

の上昇を通じてカナダドル相場の重石となることが想定される。そ

のため、対米ドルでの上昇は緩やかなものにとどまろう。

第 1 図: カナダ国内の新型コロナ感染状況 第 1 表: 中銀の経済見通し

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (注)各項目の上段は今回 2020 年 10 月改定分、下段は前回 2020 年 7 月改定分。

(資料)カナダ銀行より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

リサーチアシスタント 栗田 大地

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4,500

3 4 5 6 7 8 9 10

新規感染者数新規感染者数(7日間移動平均)死者増加数(右目盛)

(人)

(月)

(人)2019年 2020年 2019年 2020年 2021年 2022年

10-12月 1-3月 4-6月 7-9月

0.1 -2.1 -11.5 10.2 - - - -

0.1 -2.1 -13.1 7.1 - - - -

1.5 -0.9 -13.0 -4.4 1.7 -5.7 4.2 3.7

1.5 -0.9 -14.6 -8.8 1.7 -7.8 5.1 3.7

2.1 1.8 0.0 0.2 1.9 0.6 1.0 1.7

2.1 1.8 -0.1 0.4 1.9 0.6 1.2 1.7

通年

実質GDP(前年比、%)

CPI(前年比、%)

実質GDP(前期比、%)

経済は回復基調維持も、

コロナ感染第2波は拡大

10 月のレビュー

デフレギャップ残存か

らインフレ率は2023年まで中銀目標を下回る

見込み

Page 18: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 18

(6)人民元 元高抑制策への警戒感が強まる

10月の人民元相場は当局の元高抑制策への警戒感から上げ渋る展

開となった。中国本土市場は 10 月 1 日から 8 日まで、国慶節と中秋

節に伴う大型連休のため休場だった。連休明け 9 日、人民元(対ド

ル相場)は 6.7264 で寄り付くと、年初来高値を更新する上昇をみせ

た。だが、10 日に中国人民銀行が金融機関による一部フォワード取

引の際に義務付けていた法定準備金の撤廃を発表すると、当局によ

る元高抑制策への警戒感が強まり、人民元相場はやや軟調となった。

もっとも、その後当局が積極的な元安誘導を打ち出さなかったこと

から、人民元相場は再び上昇に転じ、21 日には 2 年 3 ヵ月ぶりとな

る高値 6.6414 まで上昇する場面がみられた(第 2 図)。しかし、22日に当局が適格国内機関投資家(QDII)に対し、100 億ドルの外国

証券投資の追加枠を付与する方針が報じられると人民元相場は反落

し、緩やかな元安方向の値動きとなった。27 日には中国外貨取引セ

ンター(CFETS)が人民元基準値の設定基準からのカウンター・シ

クリカル・ファクターの利用停止を公表したこともあり、月末にか

けても人民元はやや軟調な推移となっている。

第 1 図: 人民元対ドル相場(日足、9 月 1 日~) 第 2 図:人民元対ドル相場(月足、18 年 1 月~)

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

今月に入り、当局は元高に対する調整の動きを見せている(第 3

図)。中国人民銀行は 10 日、為替フォワード取引を通じた顧客向け

の外貨購入の際、金融機関に義務付けていた決済額の 20%相当の準

備金預け入れのルール撤廃を発表した。準備金のルールは、2018 年

の人民元下落局面に際し、人民元対ドル相場が節目の 1 ドル=7 人民

元に接近したことを受け、人民元安抑制のために導入された。今回

の措置により、人民元ショートのコストが実質的に低下することか

ら、当面、人民元の先高観が一定程度後退し、人民元相場が元安方

向に振れやすくなるとみられる。他方、人民銀行は声明で、為替相

場の柔軟性を維持しつつ、人民元相場を適正かつバランスの取れた

水準で安定させることを目指すと表明している。そのため、当局が

大幅な人民元安誘導へと舵を切ったとまではみられていない。多少

6.62

6.64

6.66

6.68

6.70

6.72

6.74

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6.80

6.82

6.84

6.86

6.88

9/1 9/11 9/21 10/1 10/11 10/21 10/31

(USD/CNY)

(月/日)

↓人民元高

↑人民元安

6.1

6.2

6.3

6.4

6.5

6.6

6.7

6.8

6.9

7.0

7.1

7.2

7.3

18/1 18/7 19/1 19/7 20/1 20/7

(USD/CNY)

(年/月)

↑人民元安

↓人民元高

10 月のレビュー

当局はフォワード取引

に関する規制を変更

Page 19: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 19

人民元安に振れやすくなるにせよ、急激に人民元安が進行すること

は見込みにくい。 また 27 日には、中国人民銀行傘下のCFETSが毎営業日公表される

人民元基準値の報告銀行の一部に関し、 近、基準値設定のモデル

を変更し、調整措置として組み込まれているカウンター・シクリカ

ル・ファクター(CCF)の利用を停止していることを公表した。CCFは 2017年 5月の元安進行時に元安と資本流出を抑制するために導入

された経緯がある。その後、人民元相場の反発を受け 2018 年 1 月に

利用が停止されたものの、米中対立を背景に同年 8 月に再び導入さ

れていた。CCFは通貨安圧力を緩和するための措置となっていたこ

とから、今回の設定モデル変更は人民元の下落容認につながると受

け止められ、人民元相場はやや元安方向に振れる展開となった。もっ

とも、今回の変更は、ここもとの人民元高へのけん制の意味合いは

あるにせよ、当局が強力に人民元安誘導に傾斜したというより、人

民元相場の上下双方への変動余地を許容する方向の動きとしてとら

えられる。当局による動きは、元高けん制の意図が窺われるものの、

人民元国際化を促すための為替市場の自由化に向けた大きな流れの

一環として位置づけられるとみる。

第 3 図: 当局による元安・元高抑制策と人民元対ドル相場の推移

(資料)Bloomberg、各種報道より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

一方、経済指標をみると、中国経済は引き続き堅調な回復基調を

維持していることが示唆されている。注目された 7-9 月期GDP成長

率は、前年同期比+4.9%となり、4-6 期の同+3.2%から経済の回復が

加速した形となった(第 4 図)。コロナ危機による経済悪化後、当

局による財政支援もあり、輸出がけん引役となって中国経済は回復

基調が継続している。もっとも、回復のペースは業種ごとにまだら

模様となっており、例えば第 3 次産業は回復が鈍い(第 5 図)。消

費回復ペースの行方など、懸念材料は燻るものの、今月公表のIMF経済見通し(WEO)でも、中国の 2020 年成長率を前年比+1.9%に上

方修正しており、主要国の中で唯一のプラス成長を見込んでいる。

中国人民銀行の易綱総裁も 18 日のG30 主催オンライン会議で、今年

(15/9)リスク準備金制度導入

(17/5)人民元基準値にCCF追加

(17/9)準備金比率変更(0%)

(18/1)人民元基準値からCCF停止 (18/8)人民元基準値にCCF追加

(18/8)準備金比率変更(20%)

(20/10)準備金比率変更(0%)

(20/10)人民元基準値からCCF停止

6.1

6.2

6.3

6.4

6.5

6.6

6.7

6.8

6.9

7.0

7.1

7.2

7.3

15/1 16/1 17/1 18/1 19/1 20/1

(USD/CNY)

(年/月)

↑人民元安

日次の人民元基準値設

定モデルを変更

第 3 四半期 GDP: 経済の回復が加速

Page 20: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 20

のGDP成長率が 2%前後に達すると述べており、年末にかけても回復

継続が見込まれる。

第 4 図: 中国 GDP 成長率の推移(四半期) 第 5 図:中国 GDP 成長率の推移(産業別)

(資料)国家統計局より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)国家統計局より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

また、9 月分の経済指標では、生産、消費の両面で中国経済の堅

調な回復が確認されている。9 月の鉱工業生産は、前年比+6.9%と前

月(同+5.6%)から一段の回復を示した(第 6 図)。鉱工業生産は 4月以降、前年比のプラス幅が拡大傾向にあり、新型コロナ感染拡大

による落ち込みからの回復が鮮明となっている。部門別には、鉱業

が同+2.2%とやや伸び悩んでいるものの、製造業は同+7.6%と回復を

けん引したほか、電力も同+4.5%と各部門とも回復基調が継続して

いる。生産サイドについては、積極的な財政策による効果もあり、

引き続き堅調さを維持していると評価できよう。 一方、消費サイドをみると、9 月の小売売上高は、前年比+3.3%と

前月の同+0.5%に続いて前年比プラス圏を維持した(第 7 図)。もっ

とも、コロナ感染防止策の影響もあり、消費の回復ペースは生産サ

イドに比べ鈍い状況が続いている。品目別には、外食が同▲2.9%と

依然マイナス圏ながら前月の同▲7.0%から大きく改善したほか、自

動車が同+11.2%と引き続き小売売上高の改善をけん引している形だ。

一方、外出規制の緩和を受け、これまで巣篭もり需要から大幅な上

昇を見せていた通信機器は同▲4.6%と前月(同+25.1%)から大きく

落ち込んでいるほか、逆にオフィス用品は同+12.2%と大きく伸ばし

ている。コロナ感染の再拡大に対する警戒感が依然残るものの、経

済活動再開を受けて、消費サイドもやや持ち直しの動きを強めはじ

めている。公共投資への期待感から商用車の販売台数が伸びている

ほか、地方政府による購入補助金もあり、今後も自動車販売の堅調

さが続くとみられることに加え、制限緩和を受け娯楽施設や大型の

商用施設も活況を取り戻している。年末にかけて、一段と改善基調

が強まるか注目される。

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

15 16 17 18 19 20

純輸出 総資本形成

終消費支出 実質GDP

(前年比、%)

(年)-10

-8

-6

-4

-2

0

2

4

6

8

10

16 17 18 19 20

第1次産業

第2次産業

第3次産業

(前年比、%)

(年)

9 月鉱工業生産: 堅調な回復基調を維持

9 月小売売上高: 消費の回復ペースはや

や鈍い

Page 21: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 21

第 6 図: 中国鉱工業生産の推移 第 7 図: 中国小売売上高の推移

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

1-9 月の累計固定資産投資は前年同期比+0.8%とコロナ危機に伴う

落ち込み以降、初めて前年比プラス圏へと浮上した(第 8 図)。主

体別にみると、国有企業が同+4%と堅調な改善基調を辿る一方、民

間企業は同▲1.5%と依然マイナス圏で冴えない状況が続いており、

改善が国有企業主導となっていることが特筆されよう。産業別には、

自動車が同▲16.7%となるなど、製造業の設備投資は同▲6.5%と依

然低水準となっている一方、不動産開発投資が同+5.6 %と大きく回

復しており、投資のけん引役となっていることがみてとれる。 また、9 月貿易収支をみると、370 億ドルの黒字となり、輸出は前

年比+9.9%と 4 ヵ月連続で増加、輸入も同+13.2%と 10%を超える伸

びとなっている(第 9 図)。輸入の大幅な増加からは、内需の堅調

な回復が示唆される。また、対米輸出は同+20.5%、対米輸入は同

+25.0%となり、対米貿易収支は 308 億ドルの黒字を記録している。

輸出が堅調さを維持する一方、足もとで輸入も急速な改善を示して

いる。このところの経済指標では、おおむね堅調な中国経済の回復

が示唆されており、中国景気の先行き懸念後退を通じて人民元相場

の支えとなっている。

第 8 図: 中国固定資産投資の推移 第 9 図: 中国貿易収支の推移

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

-4

-2

0

2

4

6

8

10

19/1 19/4 19/7 19/10 20/1 20/4 20/7

鉱工業生産

製造業

鉱業

電力

(前年比、%)

(年/月)-25

-20

-15

-10

-5

0

5

10

15

19/1 19/4 19/7 19/10 20/1 20/4 20/7

その他

自動車

外食

小売売上高

(前年比、%)

(年/月)

-30

-20

-10

0

10

20

30

16 17 18 19 20 (年)

固定資産投資(総合)

(内)国有企業

(内)民間企業

(年初来累計/前年比、%)

-30

-20

-10

0

10

20

30

40

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-450

-300

-150

0

150

300

450

600

750

18/1 18/7 19/1 19/7 20/1 20/7

貿易収支(対米以外) 貿易収支(対米)

輸出(右目盛) 輸入(右目盛)

(億ドル)

(年/月)

(前年比、%)

9 月固定資産投資: 前年比プラスに転じる

9 月貿易収支: 輸出入ともに堅調

Page 22: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

為替相場の見通し | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 22

注目された第 3 四半期GDPがやや市場予想を下回ったものの、中

国経済は引き続き堅調な回復基調を維持している。また、五中全会

では、2025 年までの 5 ヵ年計画で、より質の高い成長に重点をおき

つつ、持続的な発展を達成する方針が示されたほか、2035 年までに

1 人当たりGDPを準先進国並みの水準まで押し上げることを目指す

と報じられている。人民元相場については、通貨バスケットベース

でみても 95 前後まで上昇しており、相当程度元高が進んでいる格好

だ(第 10 図)。そうした中、特に大型連休明け以降、市場では当局

による政策変更に敏感に反応する傾向がみられ、足もとで人民元相

場はやや元安方向に振れる展開となっている。来週 11 月 3 日には米

大統領選挙を控えるほか、欧米中心にコロナ感染の再拡大が続く中、

政治情勢や外部環境の悪化も意識されやすく、来月も市場のリスク

回避姿勢が強まりやすい展開が想定されよう。また、人民元基準値

の設定を見る限りでは、当局による強力な元安誘導スタンスは窺わ

れていないものの(第 11 図)、人民元相場は引き続き高値圏での値

動きとなっていることから、当局による元高抑制策強化への警戒感

が強まる場面では、人民元相場は上値の重い展開を余儀なくされる

と見込む。

第 10 図: CFETS 人民元指数と人民元対ドル相場 第 11 図: 人民元基準値と前日終値との差

(注)CFETS 人民元指数は人民元の名目実効為替レートを示す。 図表は CFETS

が公表する各通貨基準レートと通貨バスケット構成ウェイトに基づき日次で作成。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

(注)誘導方向は前日終値と基準値との乖離を示す。

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

予想レンジ

11 月~12 月 21 年 1 月~3 月 4 月~6 月 7 月~9 月

USD/CNY 6.50~6.90 6.50~6.85 6.45~6.80 6.45~6.80

CNY/JPY 14.9~15.8 14.7~15.7 14.5~15.6 14.3~15.5

予想レンジは四半期中を通じた高値と安値の予想

リサーチアシスタント 栗田 大地

90

91

92

93

94

95

96

976.6

6.7

6.8

6.9

7.0

7.1

7.2

7.3

19/1 19/4 19/7 19/10 20/1 20/4 20/7 20/10

(指数)(USD/CNY)

(年/月)

↑人民元安人民元対ドル相場(左目盛)

CFETS人民元指数(右逆目盛)

↓人民元高-0.6

-0.5

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0.0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

6.60

6.65

6.70

6.75

6.80

6.85

6.90

6.95

7.00

7.05

7.10

7.15

7.20

20/5 20/6 20/7 20/8 20/9 20/10

誘導方向(右目盛)

終値

基準値

(対ドル相場、人民元)

(年/月)

(乖離幅、%)

11 月の見通し: 目先、人民元相場は上

値の重い展開を見込む

Page 23: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

予想レンジ | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 23

予想レンジ

11 月~12 月 21 年 1 月~3 月 4 月~6 月 7 月~9 月

USD/JPY 101.0~108.0 99.0~106.0 98.0~105.0 97.0~105.0

EUR/USD 1.13~1.21 1.14~1.22 1.15~1.24 1.16~1.26

EUR/JPY 119.0~126.0 118.0~126.0 117.0~125.0 116.0~125.0

GBP/USD 1.200~1.350 1.240~1.370 1.230~1.380 1.220~1.400

EUR/GBP 0.885~0.950 0.880~0.935 0.875~0.945 0.870~0.950

GBP/JPY 125.0~140.0 129.0~141.0 128.0~141.5 127.0~142.0

AUD/USD 0.67~0.74 0.68~0.75 0.69~0.76 0.70~0.77

AUD/JPY 70.0~78.0 71.0~78.0 70.5~77.5 70.0~77.0

USD/CAD 1.30~1.37 1.29~1.36 1.28~1.35 1.27~1.34

CAD/JPY 77.0~82.0 76.5~81.6 76.0~81.2 75.5~80.8

USD/CNY 6.50~6.90 6.50~6.85 6.45~6.80 6.45~6.80

CNY/JPY 14.9~15.8 14.7~15.7 14.5~15.6 14.3~15.5

(1)ドル円

(2)ユーロ

90

100

110

120

130

16 17 18 19 20 21(年)

1.00

1.05

1.10

1.15

1.20

1.25

1.30

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

100

110

120

130

140

150

16 17 18 19 20 21(年)

対円

Page 24: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

予想レンジ | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 24

(3)英ポンド

(4)豪ドル

(5)カナダドル

(6)人民元

(注) 網掛け部分は当面の予想レンジ

(資料)Bloomberg より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

100

120

140

160

180

200

16 17 18 19 20 21(年)

対円

1.00

1.10

1.20

1.30

1.40

1.50

1.60

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

50

60

70

80

90

100

16 17 18 19 20 21(年)

対円

0.50

0.55

0.60

0.65

0.70

0.75

0.80

0.85

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

65

70

75

80

85

90

95

16 17 18 19 20 21(年)

対円

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

13

14

15

16

17

18

19

16 17 18 19 20 21(年)

対円

6.0

6.2

6.4

6.6

6.8

7.0

7.2

7.4

16 17 18 19 20 21(年)

対ドル

Page 25: FX Monthly · (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成 (資料)Bloomberg より三菱UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

マーケットカレンダー | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 25

マーケットカレンダー 月 火 水 木 金

2020/11/2 3 4 5 6 米/ISM 製造業景気指数(10 月) 米/製造業受注(9 月) 米/FOMC(~5 日) 米/FOMC 米/雇用統計(10 月)

建設支出(9 月) 自動車販売(10 月)* ADP 雇用統計(10 月) FRB 議長定例記者会見 消費者信用残高(9 月)

豪/RBA 理事会 貿易収支(9 月) 労働生産性速報(3Q) 独/鉱工業生産(9 月)

ISM 非製造業景気指数 ユーロ圏/小売売上高(9 月) 中/貿易収支(10 月)[7 日]

(10 月) 英/MPC(BOE 金融政策委員会) 日/家計調査(9 月)

ユーロ圏/生産者物価指数 MPC 議事要旨

(9 月) 金融政策レポート

英/MPC(BOE 金融政策委員会、

~5 日)

日/日銀金融政策決定会合

議事要旨(9/16, 17 分)

米・大統領/連邦上下院選挙

ユーロ圏財務相会合

米夏時間終了[11/1] 日市場休場 EU 経済・財務相理事会

9 10 11 12 13 独/貿易収支(9 月) 米/求人労働異動調査(9 月) 米/消費者物価指数(10 月) 米/生産者物価指数(10 月)

日/金融政策決定会合 独/ZEW 景況指数(11 月) 財政収支(10 月) ミシガン大消費者信頼感

主な意見(10/28, 29 分) 中/消費者物価指数(10 月) ユーロ圏/鉱工業生産(9 月) 指数速報(11 月)

景気動向指数速報(9 月) 生産者物価指数(10 月) 日/機械受注(9 月) ユーロ圏/貿易収支(9 月)

マネーサプライ M2(10 月)*

日/国際収支速報(9 月)

対外対内証券売買契約等

の状況(10 月)

景気ウォッチャー調査(10 月)

米・クオールズ FRB 副議長 ECB フォーラム(~12 日)

米・クリーブランド連銀総裁講演 議会証言 欧州議会本会議(~12 日) 米・パウエル FRB 議長講演

米・3 年債入札 米・10 年債入札 米一部市場休場 米・30 年債入札 EU 経済・財務相理事会

16 17 18 19 20 米/NY 連銀景況指数(11 月) 米/小売売上高(10 月) 米/住宅着工件数(10 月) 米/フィラデルフィア連銀景況指数 ユーロ圏/消費者信頼感指数

中/鉱工業生産(10 月) 輸出入物価指数(10 月) 建設許可件数(10 月) (11 月) 速報(11 月)

小売売上高(10 月) 鉱工業生産(10 月) ユーロ圏/EU 新車登録台数 中古住宅販売(10 月) 日/消費者物価指数

都市部固定資産投資(10 月) 設備稼働率(10 月) (10 月) 景気先行指数(10 月) (全国、10 月)

日/GDP 速報(3Q) 企業在庫(9 月) 日/貿易収支速報(10 月) ユーロ圏/経常収支(9 月)

証券投資収支(9 月)

米・ダラス連銀総裁討論会 G20 財務相会議

米・20 年債入札 米・10 年 TIPS 債入札 G20 首脳会議[21~22 日]

23 24 25 26 27 ユーロ圏/製造業 PMI 速報 米/ケース・シラー住宅価格指数 米/FOMC 議事要旨(11/4, 5 分) ユーロ圏/ECB 理事会議事録 ユーロ圏/欧州委員会景況指数

(11 月) (9 月) GDP 改定(3Q) マネーサプライ M3(10 月) (11 月)

サービス業 PMI 速報(11 月) FHFA 住宅価格指数(9 月) 耐久財受注速報(10 月) 独/小売売上高(10 月)*

CB 消費者信頼感指数 個人所得・消費支出(10 月) 日/消費者物価指数

(11 月) 新築住宅販売(10 月) (都区部、11 月)

独/ifo 景況指数(11 月) 卸売在庫速報(10 月)

米・シカゴ連銀総裁講演

米・2 年債/5 年債入札

欧州議会本会議(~26 日)

日市場休場 米・7 年債入札 米市場休場

30 米/シカゴ PM 景気指数(11 月)

独/消費車物価指数速報(11 月)

中/製造業 PMI(11 月)

日/鉱工業生産速報(10 月)

住宅着工戸数(10 月)

ユーロ圏財務相会合

*印は作成日(10/30)現在で日程が未確定のもの

(資料)各種報道等より三菱 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成

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為替相場推移表 | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 26

為替相場推移表 2020年 10月

U$/円 U$/円 EUR/円 SF/円 £/円 A$/円 日付 寄付 高値 安値 終値 公表相場 公表相場 公表相場 公表相場 公表相場

10 月 1 日 105.45 105.73 105.42 105.56 105.55 123.68 114.55 136.38 75.62 10 月 2 日 105.57 105.66 104.95 105.37 105.56 123.86 114.79 135.94 75.67 10 月 5 日 105.54 105.79 105.50 105.73 105.59 123.81 115.06 136.65 75.82 10 月 6 日 105.71 105.74 105.48 105.64 105.66 124.57 115.50 137.27 75.95 10 月 7 日 105.64 106.11 105.64 105.98 105.68 123.97 115.08 136.09 75.06 10 月 8 日 105.98 106.11 105.93 106.03 106.07 124.79 115.68 137.07 75.63 10 月 9 日 106.02 106.03 105.59 105.60 105.98 124.63 115.60 137.15 76.02

10 月 12 日 105.63 105.66 105.25 105.34 105.66 124.78 116.02 137.63 76.23 10 月 13 日 105.35 105.62 105.29 105.48 105.36 124.31 115.79 137.45 75.65 10 月 14 日 105.48 105.51 105.04 105.16 105.43 123.85 115.22 136.43 75.59 10 月 15 日 105.14 105.49 105.12 105.42 105.26 123.64 115.23 137.06 75.08 10 月 16 日 105.37 105.44 105.19 105.39 105.36 123.38 115.22 135.92 74.61 10 月 19 日 105.43 105.50 105.30 105.42 105.40 123.54 115.19 136.38 74.81 10 月 20 日 105.45 105.75 105.42 105.51 105.59 124.33 116.05 136.79 74.49 10 月 21 日 105.48 105.49 104.35 104.59 105.41 124.73 116.28 136.63 74.47 10 月 22 日 104.67 104.92 104.48 104.91 104.64 123.93 115.42 137.49 74.32 10 月 23 日 104.91 104.91 104.55 104.74 104.70 123.50 115.32 136.85 74.54 10 月 26 日 104.70 105.05 104.66 104.83 104.70 124.02 115.74 136.65 74.65 10 月 27 日 104.83 104.83 104.39 104.42 104.81 123.90 115.53 136.43 74.69 10 月 28 日 104.55 104.55 104.12 104.31 104.45 123.05 114.91 136.19 74.40 10 月 29 日 104.31 104.73 104.03 104.61 104.40 122.69 114.69 135.69 73.72 10 月 30 日 104.56 104.74 104.13 104.67 104.60 122.14 114.29 135.25 73.57

月間平均 105.26 105.43 104.99 105.21 105.27 123.87 115.33 136.61 75.03

(注)四本値の出所:弊行 4 本値

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FX Monthly | 令和 2 年(2020 年)10 月 30 日 27

照会先:三菱UFJ銀行 グローバルマーケットリサーチ

チーフアナリスト 内田 稔 当資料は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定のお客様のニーズ、財務状況又は投資対象に対応することを意図しておりません。

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ん。 (株式会社三菱UFJ銀行ロンドン支店のみに適用される情報開示) 株式会社三菱UFJ銀行(以下「MUFG Bank」)は、日本で設立され、東京法務局(会社法人等番号 0100-01-008846)において登記された有限責任の株式会社で

す。 MUFG Bankの本店は、東京都千代田区丸の内二丁目 7 番 1 号(郵便番号 100-8388)に所在しています。 MUFG Bankロンドン支店は、英国会社登録所において、英国支店として登録されています(登録番号BR002013)。 MUFG Bankは、日本の金融庁によって認可及び規制されています。MUFG Bankロンドン支店は、英国プルーデンス規制機構より認可を受けており(FCA/PRA番号 139189)、英国金融行為監督機構の規制とプルーデンス規制機構の限定された規制の対象となっています。英国プルーデンス規制機構によるMUFG Bankロンドン支店の規制の範囲の詳細は、ご請求いただいた方にお渡ししております。