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– 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ 及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類 等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2020/9/14 石油天然ガス開発推進本部:野神 隆之 原油市場他: 8 月は限られた範囲での変動であったものの、9 月に入り下落する原油価格 IEAOPEC、米国 DOE/EIA 他) 1. 米国では 7 月に新型コロナウイルス新規感染者数が史上最高水準に到達したことに伴う石油需要回 復ペース鈍化懸念の発生で石油製品価格と精製利幅が抑制された他、ハリケーン等の来襲もあり、 製油所の稼働は低下傾向となった。ただ、ガソリン需要はそれなりに発生した結果、ガソリン在庫は 減少傾向となった。他方、留出油は需要期ではなかったことから在庫は増加傾向となった。また、 OPEC プラス産油国減産措置等による原油輸入減少で原油在庫は減少傾向となった。しかしなが ら、ガソリン、留出油及び原油在庫はいずれも平年幅上限を超過する状態となっている。 2. 2020 8 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で は減少した他、欧州でも復興基金創設合意で経済回復期待が増大したこともあり石油製品価格が上 昇し精製利幅が改善したことにより製油所での原油精製処理が進んだこと等で、原油在庫は減少し た。日本においても、夏場のガソリン需要期到来で製油所の原油精製処理活動が上向いたこと等に より、原油在庫は減少した。結果として、OECD 諸国全体としても原油在庫は減少したが、平年幅上 限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国では、ガソリン在庫等の減少の影響 で石油製品全体の在庫も減少した。他方、欧州では軽油需要の持ち直し等が在庫を減少させるべく 作用したものの、製油所の稼働上昇による石油製品生産活発化で相殺されたことから、石油製品在 庫は若干ながら増加した。日本でも、新型コロナウイルス感染の影響でガソリン消費等が不振であっ たことなどにより、石油製品全体の在庫水準が上昇した。このようなことから、OECD 諸国全体でも石 油製品在庫は増加したうえ、平年幅上限を超過する量となっている。 3. 2020 8 月中旬から 9 月中旬にかけての原油市場では、8 月中旬から 9 月初頭においては、米国 による国連対イラン制裁全面復活のための手続き開始意向の表明等が原油相場に上方圧力を加え た反面、米国等での経済回復が減速しつつあることを示唆する指標類の発表等が原油相場に下方 圧力を加えたことから、原油価格(WTI )は概ね 1 バレル当たり 4144 ドルを中心とする範囲で変動 した。しかしながら、9 月初頭から 9 月中旬にかけては、サウジアラビアによる原油販売価格の引き下 げ等の要因により、原油価格は下落傾向となり、9 月中旬初頭時点では 1 バレル当たり 3638 ドル を中心とする領域で推移している。 4. 季節的に石油不需要期に突入したことが原油相場に下方圧力を加える一方、OPEC プラス産油国減 産措置による米国原油在庫の減少傾向による石油需給の引き締まり感の強まりや金融緩和政策を背 景とした投資資金流入が原油相場に上方圧力を加えるため、これらの面では今後原油相場は比較 的限られた範囲での変動となりやすいものと見られる。そのような中で、新型コロナウイルスの感染 拡大及びワクチン・治療薬開発状況、OPEC プラス産油国減産遵守状況や減産方針を巡る動向、米 国等の金融政策及び景気刺激策に対する米国トランプ政権及び金融当局等の姿勢、及びイラン等 地政学的リスク要因などが原油相場に影響するとともに、その影響の強さによっては、原油相場に上 昇もしくは下落傾向を創出する可能性があるものと考えられる。

IEA OPEC DOE/EIA 1. OPEC 2. 8 OECD 3. WTI 4. OPEC4. 季節的に石油不需要期に突入したことが原油相場に下方圧力を加える一方、OPECプラス産油国減

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  • – 1 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    更新日:2020/9/14

    石油天然ガス開発推進本部:野神 隆之

    原油市場他: 8 月は限られた範囲での変動であったものの、9 月に入り下落する原油価格

    (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

    1. 米国では 7 月に新型コロナウイルス新規感染者数が史上最高水準に到達したことに伴う石油需要回復ペース鈍化懸念の発生で石油製品価格と精製利幅が抑制された他、ハリケーン等の来襲もあり、

    製油所の稼働は低下傾向となった。ただ、ガソリン需要はそれなりに発生した結果、ガソリン在庫は

    減少傾向となった。他方、留出油は需要期ではなかったことから在庫は増加傾向となった。また、

    OPEC プラス産油国減産措置等による原油輸入減少で原油在庫は減少傾向となった。しかしなが

    ら、ガソリン、留出油及び原油在庫はいずれも平年幅上限を超過する状態となっている。

    2. 2020 年 8 月末の OECD 諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では減少した他、欧州でも復興基金創設合意で経済回復期待が増大したこともあり石油製品価格が上

    昇し精製利幅が改善したことにより製油所での原油精製処理が進んだこと等で、原油在庫は減少し

    た。日本においても、夏場のガソリン需要期到来で製油所の原油精製処理活動が上向いたこと等に

    より、原油在庫は減少した。結果として、OECD 諸国全体としても原油在庫は減少したが、平年幅上

    限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国では、ガソリン在庫等の減少の影響

    で石油製品全体の在庫も減少した。他方、欧州では軽油需要の持ち直し等が在庫を減少させるべく

    作用したものの、製油所の稼働上昇による石油製品生産活発化で相殺されたことから、石油製品在

    庫は若干ながら増加した。日本でも、新型コロナウイルス感染の影響でガソリン消費等が不振であっ

    たことなどにより、石油製品全体の在庫水準が上昇した。このようなことから、OECD 諸国全体でも石

    油製品在庫は増加したうえ、平年幅上限を超過する量となっている。

    3. 2020 年 8 月中旬から 9 月中旬にかけての原油市場では、8 月中旬から 9 月初頭においては、米国による国連対イラン制裁全面復活のための手続き開始意向の表明等が原油相場に上方圧力を加え

    た反面、米国等での経済回復が減速しつつあることを示唆する指標類の発表等が原油相場に下方

    圧力を加えたことから、原油価格(WTI)は概ね 1 バレル当たり 41~44 ドルを中心とする範囲で変動

    した。しかしながら、9月初頭から9月中旬にかけては、サウジアラビアによる原油販売価格の引き下

    げ等の要因により、原油価格は下落傾向となり、9 月中旬初頭時点では 1 バレル当たり 36~38 ドル

    を中心とする領域で推移している。

    4. 季節的に石油不需要期に突入したことが原油相場に下方圧力を加える一方、OPECプラス産油国減産措置による米国原油在庫の減少傾向による石油需給の引き締まり感の強まりや金融緩和政策を背

    景とした投資資金流入が原油相場に上方圧力を加えるため、これらの面では今後原油相場は比較

    的限られた範囲での変動となりやすいものと見られる。そのような中で、新型コロナウイルスの感染

    拡大及びワクチン・治療薬開発状況、OPEC プラス産油国減産遵守状況や減産方針を巡る動向、米

    国等の金融政策及び景気刺激策に対する米国トランプ政権及び金融当局等の姿勢、及びイラン等

    地政学的リスク要因などが原油相場に影響するとともに、その影響の強さによっては、原油相場に上

    昇もしくは下落傾向を創出する可能性があるものと考えられる。

  • – 2 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

    2020年 6月の米国ガソリン需要(確定値)は日量 829万バレルと前年同月比で 14.6%程度の減少と

    なり(図 1 参照)、速報値(前年同月比で 13.9%程度減少の日量 836 万バレル)から下方修正された。

    同月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量 42 万バレル程度と推定されるとこ

    ろ、確定値では同 47 万バレルへと上方修正されたことで、この分が同国ガソリン需要の速報値から確

    定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因になって

    いるものと見られる。また、4月16日に米国のトランプ大統領が自国民の外出規制緩和と経済活動再開

    への指針を発表したことで、同国では個人の外出規制と経済活動制限が緩和されつつある(5 月 20 日

    のコネチカット州を以て米国の全50州で部分的であれ個人の外出規制及び経済活動制限が緩和され

    た)ことにより個人の往来が相対的に活発化していることからガソリン需要が持ち直したものの、必ずし

    も個人の外出が新型コロナウイルス感染拡大に伴う規制導入以前のように完全に自由に行われるよう

    になったわけではなかった。このようなこともあり、6 月の米国自動車運転距離数は前年同月比で

    13.0%の減少と、4月の同40.2%の減少に比べれば減少幅は縮小しているものの、なお前年同月比で

    減少しており、これが6月の同国ガソリン需要に影響しているものと考えられる。他方、2020年8月の同

    国ガソリン需要(速報値)は日量880万バレル、前年同月比で10.5%程度の減少となっており、7月の当

    該需要(速報値)(前年同月比で9.1%程度減少の日量867万バレル)から前年同月比での減少率が拡

    大している。同国での新型コロナウイルス推定新規感染者数は 7月17日の 75,821人の史上最高水準

    に到達して以降鈍化傾向を示し、8 月 31 日には 31,658 人と概ね半減しているが、夏場のドライブシー

    ズンにも関わらず個人による外出の回復が鈍いことが覗われる他、8月下旬に米国メキシコ湾岸に来襲

    した熱帯性低気圧「マルコ(Marco)」及びハリケーン「ローラ(Laura)」により個人の外出が手控えられた

    ことがガソリン需要に影響している可能性がある。また、7月に米国の新型コロナウイルス新規感染者数

    が史上最高水準に到達したこともあり、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動

    制限の強化に伴うガソリン等石油製品需要に対する懸念が市場で増大したことにより、米国のガソリン

    価格がもたつくとともに製油所での精製利幅に影響を及ぼし始めたこともあり、8 月中旬及び下旬初頭

    頃までは製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理量も増加はしたものの、そのペースは非常に

    緩やかであった他、8 月下旬には熱帯性低気圧「マルコ」及びハリケーン「ローラ」が米国メキシコ湾岸

    に来襲した(このうち「ローラ」は 8 月 27 日午前 2 時頃(米国東部時間)にテキサス州とルイジアナ州の

    州境から50キロメートル程度東方に位置するキャメロン(Cameron)付近にカテゴリー4(風速時速209~

  • – 3 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    251 キロメートル、秒速 58~70 メートル)で上陸した)ことに伴い、ハリケーン通過経路周辺地域の製油

    所が操業を停止したことで同国製油所での原油精製処理量は一層減少した(図2参照)ため、この面で

    ガソリン混合基材を中心としてガソリン生産が抑制されたものと見られる。他方、8月の米国ガソリン需要

    の前年同月比の減少率は 7月のそれから拡大したものの、量としては 8月の需要は 7月のそれを上回

    っていたことから、それに併せてガソリン混合基材を原料とした最終製品の生産は比較的堅調であった

    (図3参照)が、この結果、8月上旬から9月上旬にかけガソリン混合基材の在庫が減少傾向になったこ

    とで、ガソリン全体の在庫水準も低下傾向となった。それでもガソリン在庫の平年幅上限を超過する状

    態は維持されている(図4参照)。

  • – 4 – Global Disclaimer(免責事項)

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    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    2020 年 6 月の同国留出油(軽油及び暖房油)需要(確定値)は日量 349 万バレルと前年同月比で

    12.6%程度の減少となったが、速報値である日量346万バレル(同13.3%程度の減少)からは若干なが

    ら上方修正された(図 5参照)他、5月の同 14.0%程度の減少からは減少率が縮小している。米国で新

    型コロナウイルス感染に伴う経済活動制限が緩和されつつあったこともあり、6 月の同国の鉱工業生産

    も前年同月比で 11.0%の減少と 5月の同15.8%の減少からそれなりに回復している(因みに 2019年6

    月の同国鉱工業生産は前年同月比で 1.0%程度の増加であった)他、同月の同国の物流活動も前年

    同月比で7.3%の減少と5月の同8.9%の減少から減少率はそれなりに縮小している(因みに2019年6

    月の同国物流活動は前年同月比で 1.2%の増加であった)ことが、留出油需要の減少率低下をもたら

    す一因となったものと見られる。また、2020 年 8 月の留出油需要(速報値)は日量 374 万バレルと前年

    同月比で 7.2%程度の減少となっており、7月の当該需要(速報値)の同354万バレル(同9.6%程度の

    減少)からは増加している。新型コロナウイルス感染に伴う米国での経済活動制限は4月後半以降緩和

    されつつあったことから、製造及び物流活動等の経済活動が持ち直してきていることが、当該需要を押

    し上げているものと見られる。他方、製油所での留出油の生産も熱帯性低気圧「マルコ」やハリケーン

  • – 5 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    「ローラ」の影響を受けつつも、ガソリン需要を満たすための当該製品生産に併せてそれなりに行われ

    た(図 6 参照)一方で、留出油は春(穀物等作付のための農機具稼働)、秋(穀物等収穫のための農機

    具稼働)及び冬(暖房)の各時期のようには夏場は需要が盛り上がらないこともあり、8月上旬から9月上

    旬にかけて同国の留出油在庫は増加傾向を示した他、平年幅の上限を超過する状態は続いている

    (図7参照)。

    2020年6月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で15.6%程度減少の日量1,744万バレルとな

    った(図8参照)。ガソリン、ジェット燃料及び留出油等幅広く石油製品の需要が前年同月の水準を下回

  • – 6 – Global Disclaimer(免責事項)

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    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    ったことが石油需要の前年同月比での減少に反映されている。また、ガソリンやジェット燃料に加えプ

    ロパン/プロピレン(同月の同国からのプロパン/プロピレン輸出量が速報値段階では日量 107 万バレ

    ル程度と推定されるところ、確定値では同 125 万バレルへと上方修正されたことで、この分が同国プロ

    パン/プロピレン需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、

    当該需要の下方修正の一因になっているものと見られる)等の需要の確定値が速報値から下方修正さ

    れたことにより、米国石油需要(確定値)は速報値(日量 1,773 万バレル、前年同月比 14.2%程度の減

    少)から下方修正されている。他方、2020 年 8 月の米国石油需要(速報値)は、日量 1,830 万バレルと

    前年同月比で 13.5%程度減少した。ガソリン需要、ジェット燃料、軽油及びその他の石油製品等の需

    要が前年同月を相当程度下回ったことから、8月の同国石油需要も前年同月比で減少となっている。他

    方、5 月 1 日以降の OPEC 及び一部非OPEC(OPEC プラス)産油国による日量 970 万バレル程度の

    減産措置実施の影響が米国にも及び始めたと見られることもあり、同国のサウジアラビアからの原油輸

    入が減少傾向を示した(7月3日の週には日量142万バレルであった米国のサウジアラビアからの原油

    輸入量は 9 月 4 日の週には同 10 万バレルへと減少している)ことを含め米国の原油輸入が伸び悩ん

    だことに加え、8月下旬には米国メキシコ湾沖合及びメキシコ湾岸に熱帯性低気圧「マルコ」及びハリケ

    ーン「ローラ」が来襲したことにより沖合の油田や湾岸地域の原油受入ターミナルの操業が停止したこと

    から、米国原油生産や輸入が減少した。この結果、8 月上旬から 9 月上旬にかけ米国の原油在庫は減

    少傾向となったが、平年幅上限を上回る状態は続いている(図 9 参照)。そして、原油、ガソリン及び留

    出油在庫が平年幅上限を上回っていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン

    及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図 10 及び 11 参

    照)。

  • – 7 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

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    2020年8月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、

    米国では減少した他、欧州でも 7 月 21 日未明(現地時間)に 7,500 億ユーロ(約 92 兆円)の復興基金

    の創設が欧州連合(EU)首脳会議で合意されたことで経済回復に対する期待が増大したこともあり域内

    の石油製品価格が上昇するとともに製油所での精製利幅が改善したことに加え、米国の夏場のドライ

    ブシーズン突入により、例年ほどではないにせよ季節的なガソリン需要がそれなりに発生したこともあり、

    欧州に比べ米国のガソリン価格が堅調になったことに伴う米国へのガソリン輸出に対する誘因が作用

    したことを受け、8 月の欧州での製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理が進んだ一方、OPEC

  • – 8 – Global Disclaimer(免責事項)

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    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    プラス産油国の減産措置実施に伴い欧州への原油供給が減少したことから、原油在庫水準は低下し

    た。他方、日本においては、梅雨明けとともに夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期到来により

    多少なりとも製油所の稼働とともに原油精製処理量が上向いたことに加え、OPEC プラス産油国による

    減産措置の実施に伴い原油輸入量が減少した結果、原油在庫が減少した。結果として、OECD 諸国全

    体としても原油在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図12参照)。石油製品

    については、米国では、ガソリンや留出油在庫の減少が影響したことで石油製品全体の在庫水準も低

    下した。他方、欧州においては、概ね7月は新型コロナウイルスの新規感染者数が安定していたことや

    復興基金が創設されたこと等もあり軽油需要が多少なりとも持ち直した流れを 8 月も引き継いだと見ら

    れることに加え、米国の夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に対応するためにガソリン輸出が

    行われたことが当該地域の石油製品在庫水準を引き下げる方向で作用したものの、製油所の稼働が

    上昇し石油製品生産活動が活発化したことで相殺されて余りあったことから、若干ではあるが石油製品

    在庫は増加した。また、日本では、例年8月は帰省や行楽等で個人の移動が活発化するが、2020年は

    新型コロナウイルス感染の影響でそのような移動が盛り上がりに欠けたことから、自動車向けガソリンや

    航空機向けジェット燃料の消費が不振であったことにより、それら石油製品の在庫が増加した他、夏場

    は暖房シーズンではなかったことにより灯油在庫の積み上げが進んだことから、同国の石油製品全体

    の在庫水準も上昇した。このようなことから、OECD 諸国全体としても石油製品在庫は増加したうえ、平

    年幅上限を超過する量となっている(図 13 参照)。そして、原油及び石油製品在庫が平年幅上限を上

    回っていることから、原油と石油製品を合計した在庫も平年幅上限を超過する状態となっている(図 14

    参照)。なお、2020年8月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は71.5日と 7月末の推定在庫日数

    (72.5日)から減少している。

  • – 9 – Global Disclaimer(免責事項)

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    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    8月12日に 1,500万バレル台後半程度の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在庫

    は、8月19日には 1,400万バレル台後半程度、8月26日には 1,300万バレル台後半程度の量へと、減

    少した。そして、9月2日には1,400万バレル強、9月9日には1,400万バレル台後半程度の量へと回復

    したものの、8 月 12 日の水準は下回っている。6 月上旬以降 8 月にかけ中国では各所で洪水が発生し

    たことで個人の外出が制限されたこともあり、自動車向けガソリン需要が抑制された結果、余剰となった

    ガソリンがシンガポールに輸出されたことにより、8 月中旬にかけシンガポールの中国からのガソリン輸

    入は増加傾向となったものの、その後中国からのガソリン輸入が落ち着いた他、アジア各国において多

    少なりとも夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要が発生したと見られることでシンガポールからのガ

    ソリン輸出が促進された格好となったことが、シンガポールでの軽質留分在庫の減少傾向の背景にある

    ものと考えられる。そして、このようなシンガポールでの軽質留分在庫減少がアジア市場でのガソリン価

    格を下支えした一方、季節的なガソリン需要はある程度発生していたと見られるものの新型コロナウイル

    ス感染に伴う個人の外出規制等により精彩を欠いたことで、8月中旬から 9月上旬半ば頃にかけガソリン

    価格はドバイ原油価格と概ね同水準近辺の比較的限られた範囲で推移した(因みに、例年夏場は概ね

    ガソリン価格がドバイ原油のそれを相当程度上回っている)。ただ、その後は、原油価格の下落にガソリ

    ンのそれが追い付かなかったことに加え、精製利幅の低迷によりこの先製油所の稼働低下とともにガソリ

  • – 10 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    ン供給が減少するとの観測が市場で発生したこともあり、若干ながらではあるが、ガソリン価格がドバイ原

    油のそれを上回る程度が拡大している。

    ナフサについては、暖房需要期ではなくなったことにより安価になった液化石油ガス(LPG)と石油化

    学部門向け原料の面で競合したことがナフサ価格を抑制する格好で作用したうえ、台湾プラスチック工

    業(台湾塑膠工業:Formosa Plastics)の台湾の麦寮(Mailiao)にあるナフサ分解装置三号機(エチレン生

    産能力年産 120万トン)が 8月 11日に 50日間の予定(終了予定時期は 9月末とされる)でメンテナンス

    作業を開始したことから、当該装置向けの原料となるナフサの需要が低下するとの観測が市場で発生し

    たことが、ナフサ価格に下方圧力を加えた反面、欧米諸国方面からのアジアへのナフサ供給が9月は当

    初見込みよりも少ない(米国のガソリン在庫減少とガソリン価格上昇から、米国市場向けガソリンに混入さ

    れるナフサの量が欧州等で上振れたことが背景にあると思われる)との見方が市場で発生したことが、ア

    ジア市場でのナフサ価格を下支えした結果、8月中旬から 9月上旬前半にかけ、ナフサ価格は概ねドバ

    イ原油価格と同水準近辺の比較的限定された領域で変動していた。しかしながら、その後はドバイ原油

    価格の下落にナフサのそれが追い付かなかったこともあり、ナフサ価格がドバイ原油のそれを上回る状

    態となっている。

    8 月 12 日には 1,400 万バレル台半ば前後の量であったシンガポールの中間留分在庫は、8 月 19 日

    及び 26日には 1,400万バレル台前半程度の水準へと低下したが、9月2日には 1,600万バレル強の量

    へと相当程度増加、9 月 9 日は減少したものの 1,500 万バレル強の量となり、8 月 12 日の水準を超過し

    ている。新型コロナウイルス感染の再拡大等によりアジアの一部諸国において経済活動のもたつき等に

    より軽油需要が伸び悩んだ他、中国及び韓国での大雨に伴う洪水の発生もあり輸送及び農業部門向け

    の軽油需要が影響を受けたうえ、インドで雨季(モンスーン)に入ったこともあり軽油需要が鈍化した(灌

    漑用に稼働させるポンプ向けのエネルギー源が、モンスーン到来前の軽油から水力発電由来の電力へ

    と切り替わることに加え、雨天に伴い道路や建設工事が進捗しなくなることなどで物流や製造業等での

    軽油の利用が不活発化することによる)ことにより、中国、韓国及びインド等からシンガポールへの軽油

    流入が促されたことや、シンガポールから他のアジア諸国向けの軽油流出が抑制されたことが、シンガ

    ポールでの中間留分在庫増加の背景にあると考えられる。このようにシンガポールで中間留分在庫が増

    加傾向を示したことが、例えばアジア市場での軽油価格に下方圧力を加えたことから、8月中旬から 9月

    中旬にかけ軽油とドバイ原油との価格差(この場合軽油価格がドバイ原油のそれを上回っている)は縮

    小傾向を示した。

  • – 11 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    8月12日に 2,300万バレル台後半程度の水準であったシンガポールの重油在庫(高硫黄のものが中

    心と見られる)は、8 月 19 日には 2,500 万バレル台半ばの量へと増加した。しかしながら、8 月 26 日は

    2,300万バレル台前半程度、9月2日には 2,200万バレル台前半程度、そして 9月9日には 2,000万バ

    レル台後半程度の水準へと低下した。夏場の空調用の発電部門向け重油需要が増加したことにより中

    東産油国からの重油輸出が低迷したことに加え、シンガポールでの船舶向け重油需要が堅調であった

    こと(9月上旬に台風 9号及び 10号が韓国に上陸した際、同国の港湾が閉鎖されたことに伴い、一部船

    舶が燃料補給のためにシンガポールに寄港した可能性が考えられる)が背景にあるものと見られる。そ

    して、このようなシンガポールでの重油在庫の減少傾向がアジアでの重油価格に上方圧力を加えたこと

    から、例えば、シンガポールでの高硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ

    原油のそれを下回っている)は縮小する傾向を示した。

    2. 2020 年 8 月中旬から 9 月中旬にかけての原油市場等の状況

    2020 年 8 月中旬から 9 月中旬にかけての原油市場では、8 月中旬から 9 月初頭においては、米国

    等の経済が回復しつつあることを示唆する指標類の発表、新型コロナウイルスワクチン開発の進展に

    関する報道、OPEC プラス産油国による減産措置の高遵守状況を示す情報、米国による国連対イラン

    制裁全面復活のための手続き開始意向の表明、米国原油在庫等の減少、及び米国メキシコ湾沖合の

    熱帯性低気圧及びハリケーンの通過に伴う油田の操業停止等が原油相場に上方圧力を加えた反面、

    米国等での経済回復が減速しつつあることを示唆する指標類の発表に加え、リビアでの停戦の発表、

    米国石油坑井掘削装置稼働数の増加、米国での暴風雨通過後の油田での操業再開の情報等が原油

    相場に下方圧力を加えたことから、原油価格(WTI)は概ね 1 バレル当たり 41~44 ドルを中心とする範

    囲で上下に変動した。しかしながら、9月初頭から 9月中旬にかけては、米国経済の回復がもたつき始

    めていることを示唆する指標類の発表に加え、米国トランプ政権と議会民主党との追加経済対策を巡る

    対立の継続、及びサウジアラビアによる原油販売価格の引き下げ等の要因により、原油価格は下落傾

    向となり、9 月中旬初頭時点では 1 バレル当たり 36~38 ドルを中心とする領域で推移している(図 15

    参照)。

  • – 12 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

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    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

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    8月17日は、この日中国人民銀行が1年物中期貸出制度(MLF: Medium-term Lending Facility)を活

    用し 7,000億元(約1,007.4億ドル)の資金を供給したことから、同国の景気が刺激されるとの期待が市場

    で増大したことに加え、8 月 17 日に全米住宅建設業者協会(NAHB: National Association of Home

    Builders)から発表された 8月の同国住宅建設業指数(50が当該部門好不況の分岐点)が 78と 7月の 72

    から上昇、1998 年 12 月(この時は 78)以来の過去最高水準に到達したうえ市場の事前予想(73~74)を

    上回ったこと、7月のOPECプラス産油国の減産措置の遵守率が 95~97%程度であると 8月17日に伝

    えられたことでこの先も OPEC プラス減産措置の高水準の遵守により世界石油需給が引き締まる方向に

    向かうとの期待が市場で増大したこと、イラン核合意で定められる対イラン武器禁輸措置が 2020年10月

    18日に失効することを控え当該措置を延長すべく米国が提案した決議案が国連安全保障理事会で否決

    されたことに対し8月15日に米国のトランプ大統領が国連による対イラン制裁を全面復活させるべく手続

    きを開始する意向である旨表明したことに加え、イランからベネズエラへガソリンを輸送するタンカー4 隻

    を米国が拿捕した旨 8 月 14 日に米国司法省が発表したこともあり米国とイランとの対立の先鋭化を含め

    中東情勢不安定化に伴う当該地域からの石油供給途絶に関する懸念が市場で増大したこと、8 月 15 日

    に開催予定であるとされた米国と中国の貿易紛争を巡る第一段階の合意の進捗状況を協議するための

    会合が無期限で延期された旨8月14日に報じられた(8月6日の米国トランプ大統領による中国一部企

    業に対する取引禁止の大統領令署名が一因であると中国外務省が 8 月 14 日に示唆した)ことに加え 8

    月 17 日に米国商務省が中国ファーウェイ・テクノロジーズ(華為技術)への半導体輸出規制を強化する

    旨発表したことで両国の対立の先鋭化による経済減速に対する懸念が発生したこともあり米ドルが下落

  • – 13 – Global Disclaimer(免責事項)

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    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

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    したことから、この日の原油価格は前週末終値比で 1バレル当たり 0.88ドル上昇し、終値は 42.89ドルと

    なった。ただ、8月18日には、前日の原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことに加

    え、この日時点で米国トランプ政権と議会民主党との間での同国追加経済対策についての協議が膠着

    したままであったことにより同国経済と石油需要回復に対する懸念が市場で増大したことが、原油相場に

    下方圧力を加えた一方で、8 月 19 日に米国エネルギー省(EIA)から発表される予定である同国石油統

    計(8月14日の週分)で原油、ガソリン及び留出油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したうえ、8

    月18日に米国商務省から発表された 7月の同国新築住宅着工件数が年率150万戸、前月比22.6%増

    加と 2016 年 10 月(この時は同 23.2%増加)以来の大幅な増加率となった他市場の事前予想(同 124~

    125 万戸)を上回ったこともあり米国株式相場が上昇したことが原油相場に上方圧力を加えた他、8 月 19

    日に開催される予定である OPEC プラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC)を控えた持ち高調整が市

    場で発生したことから、この日の原油価格の終値は 1バレル当たり 42.89ドルと前日終値から変わらなか

    った。8月 19日には、この日EIAから発表された米国石油統計で、ガソリン在庫が前週比で 332万バレ

    ルの減少と市場の事前予想(同100~200万バレル程度の減少)を上回って減少していた旨判明したうえ、

    サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が、早ければ世界石油需要は 2020 年第四四半期には

    新型コロナウイルス肺炎拡大前の約97%程度の水準に戻るであろう旨発言したと8月19日に報じられた

    ことで、石油需要の回復に伴う石油需給引き締まり期待が市場で増大したことが、原油相場に上方圧力

    を加えた一方で、8 月 19 日に開催中であった OPEC プラス産油国 JMMC において世界の石油需給均

    衡への回復が当初想定よりも緩やかである模様である旨声明案に記載されているとこの日報じられたこ

    とで世界石油需給引き締まり期待が市場で後退した他、8 月 19 日に明らかになった米国連邦公開市場

    委員会(FOMC)議事録(7月28~29日開催分)でFRB幹部が新型コロナウイルス感染拡大により米国の

    景気回復にかなりの不透明感が伴う旨不安視している一方、長短金利操作(イールドカーブコントロー

    ル)のようなより積極的な金融政策の実施には消極的である旨示唆されていたこともあり米国株式相場が

    下落したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当

    たり 0.04ドルの上昇にとどまり、終値は 42.93ドルとなった。しかしながら、8月 20日には、OPECプラス

    産油国の一部が 5~7月に発生した過剰生産を調整するために 8~9月において 1ヶ月当たり日量 231

    万バレル相当の減産が必要である旨OPECプラス産油国が認識していると 8月 20日にロイター通信が

    報じたことで、世界石油需給の緩和感を市場が意識したことに加え、8月 20日に発表された 8月の米国

    フィラデルフィア連邦準備銀行製造業景況感指数(ゼロが当該部門好不況の分岐点)が 17.2 と 7 月の

  • – 14 – Global Disclaimer(免責事項)

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    24.1から低下した他市場の事前予想(20.8~21.0)を下回ったこと、8月20日に米国労働省から発表され

    た同国新規失業保険申請件数(8 月 15 日の週分)が 110.6 万件と前週の 97.1 万件から増加した他市場

    の事前予想(92.0~92.5 万件)を上回ったことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 42.58 ド

    ルと前日終値比で 0.35 ドル下落した(なお、この日を以て NYMEX の 2020年 9 月渡し原油先物契約は

    取引を終了したが、2020年10月渡し原油先物価格のこの日の終値は1バレル当たり42.82ドル(前日終

    値比 0.29 ドルの下落)であった)。また、8 月 21 日も、この日英国金融情報サービス会社 IHS マークイッ

    トから発表された 8月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)(50が好不況の分岐点)(速報値)が 51.6と

    7 月(この時は 54.9)から低下した他市場の事前予想(54.9~55.0)を下回ったことに加え、リビアの首都ト

    リポリを拠点とする「国民合意政府(GNA)」(国連及びトルコが支援)と東部の都市トブルクを拠点とする

    「代表議会(HoR: House of Representatives)」(「暫定議会」とも言われる)が新型コロナウイルス感染拡

    大により 8 月 21 日に停戦を実施することで合意した旨発表したことにより同国からの原油輸出増加観測

    が市場で発生したこと、8月 21日に米国石油サービス会社ベーカー・ヒュージズ(Baker Hughes)から発

    表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で 183 基と前週比で 11 基増加(同国石油水平坑井

    掘削装置稼働数は同日時点で 172基と前週比で 10基増加)していた旨判明したことから、この日の原油

    価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.24 ドル下落し、終値は 42.34 ドルとなった。この結果原油価格は

    8月20~21日の 2日間で併せて 1バレル当たり 0.59ドル下落した。

    しかしながら、8 月 24 日には、熱帯性低気圧「マルコ」が米国メキシコ湾沖合を縦断した後同国メキシ

    コ湾岸地域をルイジアナ州からテキサス州にかけ西進しつつあるとともに、キューバ付近にある熱帯性

    低気圧「ローラ」が今後 8 月 24 日の週半ばにかけハリケーンへと勢力を強めるとともに北西方向に進み

    米国メキシコ湾沖合を縦断するとともに米国ルイジアナ州西部付近に上陸すると予想されることに伴い

    同日時点で米国メキシコ湾沖合の原油生産量の 82.4%を占める同 152 万バレルの生産が停止したり米

    国メキシコ湾岸地域の原油受入港湾等が操業を中断したりしたことで同国原油供給減少に伴う石油需給

    引き締まり感を市場が意識したことに加え、複数の暴風雨の米国メキシコ湾岸接近に伴い当該地域の製

    油所が操業を停止したことにより石油製品生産減少観測とともに米国ガソリン先物相場が上昇したこと、8

    月 23 日に米国食品医薬品局(FDA)が新型コロナウイルス感染症の血漿療法を承認したと発表した(トラ

    ンプ大統領も同日同趣の旨発表)他、米国トランプ政権が英国大手製薬会社アストラゼネカと英国オクス

    フォード大学が研究する新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可につき検討している旨8月24日に

    英国経済紙フィナンシャル・タイムスが報じたこともあり、米国株式相場が上昇したことから、この日の原

  • – 15 – Global Disclaimer(免責事項)

    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

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    油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.28ドル上昇し、終値は42.62ドルとなった。8月25日も、ハリ

    ケーン「ローラ」が勢力を強めつつ米国メキシコ湾沖合を北西に進みつつあることに伴い、当該地域の

    原油生産量の84.3%を占める日量156万バレルの生産が停止した他、米国ルイジアナ及びテキサス両州

    のメキシコ湾岸地域の製油所が操業を停止しつつあることから、米国石油需給引き締まり感が市場で発

    生したことに加え、8 月 24 日夜(米国東部時間)に米国のライトハイザー通商代表部(USTR)代表及びム

    ニューシン財務長官と中国の劉鶴副首相が両国の貿易紛争を巡る第一段階の合意の進捗状況に関し

    電話会議を実施し当該合意の履行が進展している旨確認したことにより両国の経済問題を巡る対立の先

    鋭化と両国等の経済成長減速及び石油需要の伸びの鈍化に対する市場の懸念が後退したこと、8 月 25

    日にドイツの公的研究機関 IFO 研究所が発表した 8 月の同国景況感指数(2005 年=100)が 92.6 と 7

    月の 90.4 から上昇した他、市場の事前予想(92.1~92.2)を上回ったことで、ユーロが上昇した反面米ド

    ルが下落したことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 43.35 ドルと前日終値比で 0.73 ドル

    上昇した。この結果原油価格は 8月24~25日の 2日間で併せて 1バレル当たり 1.01ドルの上昇となっ

    た。ただ、8月26日には、この日EIAから発表された米国石油統計(8月21日の週分)で原油在庫が前

    週比で 469万バレル、ガソリン在庫が同 458万バレルの、それぞれ減少と市場の事前予想(原油在庫前

    週比259~430万バレル程度、ガソリン在庫同150~270万バレル程度の、それぞれ減少)を上回って減

    少していた旨判明したことに加え、8 月 25 日夕方(米国東部時間)に発表された米国顧客管理ソフトウェ

    ア開発大手セールスフォースの 2020年 5~7月期売上高が市場の事前予想を上回ったうえ、8月 26日

    に米国バイオ医薬品開発会社モデルナが自社で開発中の新型コロナウイルスワクチンの治験で若年層

    同様高齢者においても新型コロナウイルスに対する免疫反応を示したことを確認した旨発表したこと、8

    月26日に米国商務省から発表された 7月の同国耐久財受注が前月比で 11.2%の増加と市場の事前予

    想(同 4.3~4.8%増加)を上回ったこともあり米国株式相場が上昇したことが、原油相場に上方圧力を加

    えた一方で、前日の価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、ハリケーン「ローラ」

    がカテゴリー4 のハリケーンへと勢力を強めたうえで米国ルイジアナ及びテキサス両州の州境付近に上

    陸しようとしていることもあり当該地域付近の製油所が操業を停止しつつあることで、この先これら製油所

    による原油需要が減少するのではないかとの観測が市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加

    えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり43.39ドルと前日終値比で0.04ドルの上昇にと

    どまった。8 月 27 日には、ハリケーン「ローラ」が 8 月 27 日午前 2 時頃(米国東部時間)に米国ルイジア

    ナ及びテキサス両州の州境から 50 キロメートル程度東部にある都市であるルイジアナ州キャメロン

  • – 16 – Global Disclaimer(免責事項)

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    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    (Cameron)付近に上陸した後熱帯性低気圧へと勢力を弱めるとともに米国メキシコ湾岸地域の製油所の

    一部で操業の再開作業が開始された旨8月27日に報じられたうえ、沿岸部での高潮の被害がそれほど

    大きくない可能性がある旨同日伝えられた他、米国メキシコ湾岸沖合の油・ガス田についても操業再開

    作業を開始しつつある旨明らかになったことで、米国ガソリン先物価格が下落するとともに、同国原油生

    産回復期待が市場で増大したことに加え、8月27日に開催された米国カンザスシティ連邦準備銀行主催

    の年次シンポジウムにおいて、市場の事前予想通りパウエル FRB 議長が最大限の雇用を確保すべく長

    期的に平均年率2%の物価上昇を目指すという新規の戦略を明らかにしたことで米国経済回復に対する

    期待が市場で発生するとともにこれまで売却が続いていた米ドルに対し利益確定の買戻しが発生したこ

    とで米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.35ドル下落し、終値

    は 43.04ドルとなった。8月28日には、ハリケーン「ローラ」通過後、米国メキシコ湾沖合の油田や湾岸地

    域の製油所が操業再開作業を実施しつつあることで、石油需給引き締まり観測が市場で後退したことが、

    原油相場に下方圧力を加えた一方で、8月 27日にパウエル FRB議長が長期的に平均年率 2%の物価

    上昇を目指す戦略を明らかにしたことで低金利状態が長期化するとの観測が発生した流れを 8 月 28 日

    の市場が引き継いだこともあり米ドルが下落したことに加え、8月28日にベーカー・ヒュージズから発表さ

    れた同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で180基と前週比で3基減少(同国石油水平坑井掘削装

    置稼働数は同日時点で 169基と前週比で 3基減少)していた旨判明したことが、原油相場に上方圧力を

    加えたことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 42.97 ドルと前日終値比で 0.07 ドルの下落

    にとどまった。

    8月31日には、ハリケーン「ローラ」の通過に伴う米国メキシコ湾沖合における油田での原油生産停止

    量が同日昼(米国東部時間)時点で日量 99 万バレル(通常時の原油生産量同 185 万バレル程度の約

    53%)と 8月30日時点の同129万バレル(同約70%)から減少したことで、米国石油需給引き締まり感が

    市場で後退したことに加え、8月 31日に EIAから発表された 6月の米国原油生産量(確定値)が前月比

    で日量42万バレル増加している旨判明(速報値ベースでは推定同52万バレルの減少)したこと、これま

    での上昇に対する利益確定の動きが発生したこともあり米国株式相場が下落したことから、この日の原油

    価格は前週末終値比で1バレル当たり0.36ドル下落し終値は42.61ドルとなった。ただ、9月1日には、

    9月2日にEIAから発表される予定である米国石油統計(8月28日の週分)で原油、ガソリン及び留出油

    在庫が減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことに加え、9月 1日に中国独立系報道機関

    財新伝媒から発表された 8 月の同国製造業購買担当者指数(PMI)(50 が当該部門好不況の分岐点)が

  • – 17 – Global Disclaimer(免責事項)

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    53.1と 7月の 52.8から上昇、2011年1月(この時は 54.5)以来の高水準に到達した他、市場の事前予想

    (52.5~52.6)を上回ったこと、9 月 1 日に米国供給管理協会(ISM)から発表された 8 月の同国製造業景

    況感指数(50が当該部門好不況の分岐点)が56.0と7月の54.2から上昇、2018年11月(この時は58.8)

    以来の高水準に到達した他、市場の事前予想(54.5~54.8)を上回ったこと、英国製薬大手アストラゼネ

    カが英国オクスフォード大学と共同で開発中の新型コロナウイルスワクチンにつき米国での最終的な臨

    床試験を開始したことで 10 月までに米国政府による当該ワクチン緊急使用の目途が立つ可能性がある

    旨8月31日に明らかにしたと同日夕方(米国東部時間)に報じられたことで新型コロナウイルス感染防止

    による経済成長及び石油需要の伸びの回復期待が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値

    は1バレル当たり42.76ドルと前日終値比で0.15ドル上昇した。しかしながら、9月2日には、この日EIA

    から発表された米国石油統計でガソリン需要が日量 879 万バレルと前週比で同 38 万バレル減少してい

    る旨判明したことに加え、同日米国企業給与計算サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング

    (ADP)から発表された 8 月の同国民間雇用者数が 7 月比で 42.8 万人の増加と市場の事前予想(同 95

    ~100万人程度の増加)を相当程度下回ったこと、欧州の金融政策にとってユーロ/ドル相場は重要であ

    る旨 9 月 1 日に欧州中央銀行(ECB)のレーン(Lane)専務理事兼主任エコノミストが明らかにしたことで

    ECB が今後金融緩和策を実施する可能性があるとの観測が市場で発生したことによりユーロが下落した

    ことに加え、これまでの下落に対する利益確定から米ドルを買い戻す動きが発生したこともあり、米ドル

    が上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 1.25 ドル下落し終値は 41.51 ド

    ルとなった。また、9 月 3 日も、9 月 2 日に EIA から発表された米国石油統計でガソリン需要が前週比で

    日量 38万バレル減少している旨判明した流れを引き継いだことに加え、8~9月の 2ヶ月間に既存の減

    産措置に加え日量 40 万バレルの追加減産を実施することで過去の減産目標未達分を充足する意向で

    あったイラクが、追加減産期間を 2ヶ月間延長するよう要請する可能性がある旨9月2日午後(米国東部

    時間)に声明で明らかにしたことから同国が減産推進に苦慮しているとの観測が市場で発生したこと、こ

    れまで米国株式相場の上昇を主導してきた IT業界株式に対し利益確定の動きが発生したこともあり米国

    株式相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.37ドルと前日終値比で0.14

    ドル下落した。さらに、9月4日も、この日米国労働省から発表された 8月の同国非農業部門雇用者数が

    前月比で 137.1万人の増加と 7月の同173.4万人の増加から相当程度増加ペースが鈍化した他市場の

    事前予想(同135~140万人程度の増加)の一部を下回ったこともあり米国政府による経済対策の効果低

    減で同国経済回復が減速しつつあるのではないかとの懸念が市場で広がったことに加え、9 月 5~7 日

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    本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータ

    及び情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のア

    ドバイスの提供を目的としたものではありません。従って、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類

    等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

    の米国レイバーデー(9 月 7 日)に伴う連休を控えた持ち高調整が発生したこともあり米国株式相場が下

    落したことから、この日の原油価格は前日終値比で 1バレル当たり1.60ドル下落し終値は39.77ドルとな

    った。この結果原油価格は 9月2~4日の 3日間で併せて 1バレル当たり 2.99ドル下落した。

    9 月 7 日には、米国レイバーデー(労働者の日)の休日に伴い通常取引は実施されなかったが、この

    日を以て米国の夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了するとともに秋場の製油所メンテナ

    ンス作業実施時期に突入することにより、この先製油所の原油購入意欲が減退するとの観測が市場で発

    生したことに加え、9月5日にサウジアラビアが10月積みのアジア及び米国向け原油価格を全油種につ

    き引き下げた旨明らかにした他北西欧州及び地中海向け軽質原油価格を引き下げたことで、これが新

    型コロナウイルス感染拡大で中国及びインドを含むアジア諸国等の石油需要が伸び悩んでいるとサウジ

    アラビアが認識している証左であると市場で受け取られたこと、9 月 7 日にトランプ大統領が今後米国の

    中国への依存を終結させるべく、中国等米国以外の国で雇用を創出する企業に課税する他、中国に業

    務を発注する企業に対し米国連邦政府の契約を禁止することも視野に入れる旨発言したことから、米国

    と中国との対立の先鋭化による両国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したこと、

    これまで株式相場の上昇を牽引してきた情報技術(IT)関連株式に対し利益確定の動きが発生したことも

    あり、米国株式相場が下落したこと、世界石油需要が新型コロナウイルス感染拡大前の状態に戻るまで

    には 3 年程度を要する旨米国大手金融機関バンク・オブ・アメリカが明らかにしたと 9 月 8 日に報じられ

    たこと、9 月 8 日にメドウズ米国トランプ大統領首席補佐官が、米国追加経済対策に関する議会民主党と

    の交渉は膠着したままとなっている旨示唆したことで米国経済回復に対する不安感が市場で増大したこ

    とから、9 月 8 日の原油価格は前週末終値比で 1 バレル当たり 3.01 ドル下落し終値は 36.76 ドルとなっ

    た。ただ、9月9日には、9月10日にEIAから発表される予定である米国石油統計(9月4日の週分)で

    原油在庫が減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことに加え、前日の大幅下落に対し値

    頃感から買戻しの動きが発生したこともあり米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格の終値

    は 1 バレル当たり 38.05 ドルと前日終値比で 1.29 ドル上昇した。しかしながら、9 月 10 日には、この日

    EIAから発表された米国石油統計で原油在庫が前週比で 203万バレルの増加と市場の事前予想(同 50

    ~300 万バレル程度の減少)に反し増加している旨判明したうえ、9 月 10 日に米国労働省から発表され

    た同国新規失業保険申請件数(9月5日の週分)が 88.4万件と前週並みの水準となり、市場の事前予想

    (84.6~85.0 万件)を上回ったことに加え、同日米国議会上院で共和党が提案する 3,000 億ドル程度の

    追加経済対策法案の審議入りに対する動議が否決されたこともあり、米国株式相場が下落したことから、

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    この日の原油価格は前日終値比で 1 バレル当たり 0.75 ドル下落し、終値は 37.30 ドルとなった。9 月 11

    日には、この日ベーカー・ヒュージズから発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で180基

    と前週比で 1 基減少(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は同日時点で 166 基と前週比で 3 基減少)し

    ていた旨判明したことが原油相場に上方圧力を加えものの、9月10日にEIAから発表された米国石油統

    計で原油在庫が市場の事前予想に反し増加していた旨判明した流れを引き継いだことが原油相場に下

    方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は 1 バレル当たり 37.33 ドルと前日終値比で 0.03 ド

    ルの上昇にとどまった。

    3. 原油市場における主な注目点等

    地政学的リスク要因面での注目点は、まず、イラン等の中東情勢であろう。8 月 13 日に米国のトランプ

    大統領の仲介により、イスラエルとUAEが国交回復に向け合意したが、それに対し 8月14日にはトルコ

    のエルドアン大統領が、パレスチナ人の感情を逆撫でするとして当該事象を非難、UAE との外交関係の

    停止等を検討している旨明らかにした他、8月15日にイランのロウハニ大統領が、中東湾岸地域にイスラ

    エルの拠点を設置されないようすべきである旨示唆したが、これに対し 8 月 16 日に UAE のガルガシュ

    (Gargash)外交担当国務相は、トルコはイスラエルと 2016年に国交を正常化しているとしてトルコのUAE

    批判を非難した他イスラエルとの国交回復にはイランは関係ないと発言した。ただ、9 月 1 日にイランの

    最高指導者ハメネイ師は、イスラエルと外交関係樹立等につき合意した UAE に対し、イスラム世界、アラ

    ブ諸国及びパレスチナ人民に対し背信行為を行ったとしてとして非難した。9 月 11 日にも、トランプ大統

    領の仲介により、イスラエルとバーレーンが国交を正常化することで合意した。9 月 15 日に米国ホワイト

    ハウスで実施されるイスラエルとUAEとの国交正常化合意調印式に併せネタニヤフ首相とバーレーンの

    ザヤーニ(Al Zayani)外相が両国の平和宣言に署名する予定である。9月11日にパレスチナ自治政府は

    イスラエルとバーレーンとの国交回復合意に対し背信行為であるとして非難した他、9月12日にはイラン

    外務省も当該合意を非難する旨の声明を発表している。他方、サウジアラビアのサルマン国王はトラン

    プ大統領との間で実施した電話会談において、2002 年 3 月 28 日にアラブ連盟により採択されたサウジ

    アラビアによる和平提案(パレスチナ国家の樹立と第三次中東戦争の際1967年にイスラエルが占領した

    パレスチナ地区からの全面撤退を、イスラエルとの国交回復の条件とする)に基づいたパレスチナ問題

    の解決を希望している旨明らかにしたと 9月 7日に伝えられる。

    8月17日には、ペルシャ湾でイラン当局が同国領海を違法に航行していたUAE船を拿捕した一方で、

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    同日UAE沿岸警備当局の船舶がイランの複数の漁船に対して発砲した(ペルシャ湾にあるシール・アブ

    ー・ヌアイル(Sir Abu Nu’ayr)島北西のUAE領海に侵入した 8隻のイラン漁船の制止をUAE警備当局

    が試みていた旨 8 月 17 日に UAE の WAM 国営通信が報じている)結果、イラン人 2 人が死亡したこと

    から、イランは駐テヘランUAE代理大使に抗議した旨(UAE側は遺憾の意と補償の用意を表明)8月20

    日にイラン外務省が発表した。また、8月20日にイランは新型国産弾道ミサイル(殉教者カセム・ソレイマ

    ニ)(飛行距離約1,400㎞)を公開した。

    8 月 30 日午後(現地時間)には、イエメンでイランが支援しているとされるフーシ派武装勢力と対立す

    る、ハディ暫定大統領派勢力を支援するサウジアラビア主導の有志連合軍が、紅海南部でテロ攻撃を実

    施するためにフーシ派武装勢力が爆発物を輸送していた船舶を拿捕したうえ、破壊したと、同日夜に有

    志連合軍のマリキ報道官が発表した。他方、フーシ派武装勢力は複数の無人攻撃機を利用してサウジ

    アラビアのアブハ国際空港を攻撃した旨表明したと 9月8日に伝えられる。

    8 月 24 日には国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が 2019 年 12 月 3 日の就任後初めてイラ

    ンを訪問し、8月25日にイランのサレヒ原子力庁長官、8月26日にはロウハニ大統領と会談、2003年に

    IAEAに申告をせずに秘密裏に核開発活動が実施されていたとの疑惑を持たれているイラン国内の 2ヶ

    所の施設への IAEAによる査察につき、両者が取り決めた場所以外では IAEAは査察実施を要求しない

    他質問もしないことを条件として、イランは協力することで合意した旨の共同声明を 8月26日に発表した

    (また、IAEAは該当するイランの核関連施設2ヶ所のうち 1ヶ所につきその後査察を実施、残る 1ヶ所に

    ついても 9月末までに査察を実施する予定である旨明らかにしたと 9 月 4日に伝えられる)。また 9月 8

    日にイランのサレヒ原子力庁長官は、7月2日の爆発で破壊された同国中部のナタンズの核関連施設の

    後継となる、ウラン濃縮のための遠心分離機を製造するための新施設を、近隣の山中に建設する方針で

    ある旨明らかにした。

    他方、8月19日に米国のトランプ大統領は国連の対イラン制裁を全面復活させる手続きを行うようポン

    ペオ国務長官に指示、ポンペオ国務長官は8月20日にイランが核合意で定められる規則に違反してい

    る旨の書簡を国連安全保障理事会(8 月の議長国であるインドネシアのジャニ国連大使)に提出した。米

    国は30日後(9月20日)には国連の制裁が全面復活すると主張した(イラン制裁解除の決議案が国連安

    全保障理事会で採択されればその限りではないが、米国は拒否権を行使することにより当該決議案の

    採択防止が可能であった)。しかし、核合意参加国(イラン、英国、ドイツ、フランス、ロシア及び中国)は、

    米国は一方的に核合意から離脱したため、国連制裁復活手続きを行う権限がないと主張した。それでも、

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    米国は国連安全保障理事会決議上核合意参加者となっていることから、手続きは有効であると主張する

    一方、制裁の全面再開のためには可能なことは何でも実行する旨ポンペオ氏が8月20日に表明した。8

    月 20 日には国連安全保障理事会理事国 15 ヶ国中米国とドミニカ共和国を除く 13 ヶ国は米国による手

    続きは無効であるとして国連のイラン制裁全面復活に反対する姿勢を示した。8月25日に、インドネシア

    のジャニ国連大使は、米国が国連の対イラン制裁の全面復活に関する手続きを開始したことに対し、15

    ヶ国中 13 ヶ国の理事国が反対している状況では、当該制裁の復活に向けた手続きを進める考えはない

    旨明らかにした。また、9 月の国連安保理議長国であるニジェールのアバリ国連大使も、国連対イラン制

    裁全面復活手続きを進める意向はない旨 9 月 1 日に明らかにしている。なお、イランのロウハニ大統領

    は、米国が核合意離脱を謝罪したうえで当該合意に復帰することが、イランの核開発に関連する新規の

    合意につき協議する前提となる旨8月25日に明らかにしている。

    このように、米国は国連の対イラン制裁の全面復活のための手続きを開始する旨宣言、国連安保理理

    事国の大半はその手続きに反対しているものの、今後米国が、国連の対イラン制裁の全面復活に反対

    する諸国等に向けどのような方策を実施するかによって、核合意の存続とペルシャ湾を含む中東情勢、

    及び当該地域からの石油供給に関する市場の懸念が増減する結果、原油相場にその影響が織り込まれ

    る可能性がある。対イラン国連制裁の復活に反対する諸国に対し米国が制裁を加えるという姿勢を明確

    にするようであれば、反対する諸国も米国の方針に従わざるを得なくなる結果、国連の対イラン制裁が全

    面復活する可能性も否定できくなる他、その場合、イランは(米国大統領選挙までは核合意にとどまる旨

    8月18日に伝えられるが)核合意にとどまる意味がなくなることにより、自国の核開発を全面復活させると

    ともに、イラン(及びイランが支援しているとされるイエメン)と米国、イスラエル及び中東湾岸産油国(サウ

    ジアラビアや、イスラエルとの外交関係回復の方向である UAE 等)などとの対立が先鋭化することを通じ、

    中東産油国からの石油供給が脅かされるとの不安感が市場で台頭することにより、原油相場に上方圧力

    が加わる可能性がある。

    リビアでは、西部の首都トリポリを拠点とする国民合意政府(GNA: Government of National Accord)

    (国連及びトルコ等が支援)と、東部トブルクを拠点とする代表議会(または暫定議会)(HoR:House of

    Representative)を支援する、ハフタル将軍を指導者とするリビア国民軍(LNA: Libya National Army)(エ

    ジプトやUAE 等が支援)との間で事実上の内戦状態が続いていたが、8月 21日にGNAとHoRが停戦

    実施で合意した。これに対し、LNAはGNAの軍が同国中部シルトへの進軍を中止していないとして、戦

    闘を継続する旨 8 月 24 日に明らかにしたが、その後ハフタル将軍は 9 月 12 日までに同国内のエネル

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    ギー部門の操業を完全に再開できるよう約束した旨在リビア米国大使館(現在はチュニジアのチュニス

    で臨時執務中)が9月12日に声明で発表した。ただ、同国では、停戦が実現し石油ターミナル等関連施

    設の操業が開始されても短期間で当該施設が再度封鎖されることにより原油生産が停止してしまう例が

    過去にも頻発していたことから、今後同国での原油生産が再開したとしても当該生産量が十分に回復し

    た(但し、NOCは油田関連施設等に必要な資金が十分に確保できないことを理由に 2022年においても

    原油生産量は日量 65 万バレルと 2019 年第四四半期の同国原油生産量である日量 120 万バレル弱の

    約半分にとどまる旨 7 月 7 日に明らかにしている)うえで、それがある程度の期間持続することにより、最

    早同国からの原油生産停止リスクが相当程度低下したと市場が確信するまでは、原油相場に下方圧力

    を加えるといった展開にはなりにくいものと考えられる。

    経済面では、まず新型コロナウイルス感染拡大状況であろう。新型コロナウイルス感染が拡大するよう

    であると、個人の外出規制及び経済活動制限が強化されることにより、ガソリン、ジェット燃料、軽油及び

    重油の需要が抑制される可能性が増大することから、石油需要の伸びの鈍化を市場が意識する結果、

    原油相場に下方圧力が加わる可能性がある。反対に、新型コロナウイルス感染拡大ペースが鈍化する

    傾向が見られるようであれば、個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されることから、ガソリン、ジェ

    ット燃料、軽油及び重油需要が盛り返すことにより石油需要回復期待が市場で増大する結果、原油相場

    に上方圧力を加える可能性がある。また、新型コロナウイルスワクチンや治療薬の開発進展具合(既に

    一部のワクチン候補は臨床試験の最終段階に差し掛かっているとされるものの、重大な副作用と思われ

    る事象が発生したことにより臨床試験が中断する例も見られる)に関する情報によっても、今後の個人の

    外出規制や経済活動制限に関する観測を市場で醸成する結果、原油相場に影響を及ぼすこともありうる。

    他方、7月31日に失効した米国失業保険の追加給付を含む経済対策につき、8月28日には、米国のメ

    ドウズ大統領首席補佐官は、1.3兆ドルの経済対策(議会上院共和党案の 1兆ドルに 0.3兆ドル追加)で

    あれば、妥協する余地があるとしているが、同国議会下院民主党のペロシ議長は 2.2 兆ドルの経済対策

    を主張し議論が平行線のままとなっている(2.2兆ドルの対策につき協議する意向でなければ、協議は再

    開させない旨ペロシ氏は明らかにしている)ことから、米国の経済対策が後手に回ることにより、米国の

    経済回復の減速及び石油需要の伸びの鈍化観測が市場で増大する結果、原油相場に下方圧力を加え

    る可能性もある。ただ、新型コロナウイルス感染に伴う外出規制と経済活動制限の実施に伴う同国経済

    成長鈍化の可能性に対処するために、3 月 15 日に米国連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をそれ

    までの 1.00~1.25%から 0.00~0.25%へと引き下げた。また、8月 27日に開催された米国カンザスシテ

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