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S P E C I A L F E A T U R E 総特集 子どもの暮らし 地域包括ケア 多様な場で生活を支える看護 子どもと養育者を支える看護職の役割の重要性が増してい ます。日本看護協会は「看護の将来ビジョン」(2015年)で全 世代型の地域包括ケアシステムの必要性を明記した上で健や かに生まれ育つことへの支援を掲げており、2018 年度には切 れ目のない妊娠・出産・育児環境と周産期医療体制の整備に 取り組みました。産前から始まる、子育てや子どもの成長・ 発達に関するニーズ・課題に対し、地域で切れ目なく対応し ていくために、看護職の連携もこれまで以上に必要とされて います。 本臨時増刊号では、多様な場で子どもの暮らしと成長・発 達を支援している保健師・助産師・看護師・訪問看護師など の実践報告を中心に紹介します。それぞれの場で活動してい る看護職同士や多職種・多機関で連携していくためにも、ぜひ、 お役立てください。

SPECIAL FEATURE · 2019. 3. 13. · special feature 総特集 “子どもの暮らし”と 地域包括ケア 多様な場で生活を支える看護 子どもと養育者を支える看護職の役割の重要性が増してい

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  • S P E C I A L F E A T U R E

    総特集

    “子どもの暮らし”と地域包括ケア

    多様な場で生活を支える看護

     子どもと養育者を支える看護職の役割の重要性が増してい

    ます。日本看護協会は「看護の将来ビジョン」(2015 年)で全

    世代型の地域包括ケアシステムの必要性を明記した上で健や

    かに生まれ育つことへの支援を掲げており、2018 年度には切

    れ目のない妊娠・出産・育児環境と周産期医療体制の整備に

    取り組みました。産前から始まる、子育てや子どもの成長・

    発達に関するニーズ・課題に対し、地域で切れ目なく対応し

    ていくために、看護職の連携もこれまで以上に必要とされて

    います。

     本臨時増刊号では、多様な場で子どもの暮らしと成長・発

    達を支援している保健師・助産師・看護師・訪問看護師など

    の実践報告を中心に紹介します。それぞれの場で活動してい

    る看護職同士や多職種・多機関で連携していくためにも、ぜひ、

    お役立てください。

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    1章 [解説]子ども・子育て世代にかかわる政策等と看護職への期待1-1 妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援と看護職への期待 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中根恵美子 006

    1-2 切れ目のない支援に向けた看護職の必要性 モデル事業の取り組みから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鎌田久美子 013

    1-3 小児在宅移行支援指導者育成研修プログラムについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 井本寛子 022

    2章 [報告①]先駆的・特徴的な取り組み2-1 妊娠期・出産期を支える 〈1〉「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 常盤洋子 028

    〈2〉気がかりな妊婦・親子を支援するための看護職間の連携システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新谷明子・内田一美 033

    〈3〉妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援に向けた産後ケアセンターの役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 永森久美子 039

    “子どもの暮らし”と地域包括ケア多様な場で生活を支える看護

    臨時増刊号2019年3月 第71巻 第 4号

    総特集

    日本看護協会機関誌Journal of the Japanese Nursing Association March 2019 Volume 71 / Number 4

  • 2-2 乳幼児期を支える 〈1〉稲美町「すくすく子育てサポートセンター」における保健師の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 藤原美輪 044

    〈2〉小児専門病院における在宅移行支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡部玲子・小沢道子 051

    2-3 学童期を支える 〈1〉医療的ケア児の通園・通学を支える訪問看護 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 林 恵・上田礼子 058

    〈2〉特別支援学校への看護師の出向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 石川眞理子・杉浦幸恵 063

    〈3〉医療的ケア児の放課後等デイサービス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 伊東祥子 069

    〈4〉多職種協働による「食物アレルギー対応子ども食堂」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 笹畑美佐子 074

    2-4 乳幼児期~青年期を支える 〈1〉医療型障害児入所施設における超重症児の在宅移行支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 滝澤幸子 081

    〈2〉“第二の家”としてのこどもホスピス病棟 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 羽鳥裕子 087

    3章 [報告②]子どもを虐待から守る3-1 医療と地域のネットワーク「こどもかんふぁ」を基盤とした 特定妊婦等の周産期支援体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 波多腰秀美 094

    3-2 院内「小児虐待対応チーム」の活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 近藤美和子 099

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    4章 [報告③]地域でつながり、子どもを支える4-1 東京子ども等支援連絡協議会多摩「のびのび育ちの会」 多職種・異業種のネットワークで「伴走型支援」をつくる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 梶原厚子・新井朋子・白木きよみ 104

    4-2 札幌市における医療的ケア児支援のための看護職ネットワークづくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 北海道看護協会モデル事業プロジェクトチーム 111

    4-3 「チームやちよキッズ」の活動を通して考える訪問看護師の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 福田裕子 117

    4-4 小児看護を多機関・多職種で学ぶネットワークづくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 入江千恵 123

    5章 [報告④]日ごろから備えて、災害時の支援につなげる5-1 在宅療養児への災害時支援の実際 熊本地震を経験して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中本さおり 128

    5-2 災害ボランティアサークルによる子ども向け防災教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 武山雅志・曽根志穂・金谷雅代 134

    5-3 病院の防災対策と災害時の母子支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 八木橋香津代 139

    5-4 医療機能停止時の周産期の対応と地域のネットワーク構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 森美乃・桑原美保・吉村圭子 146

    5-5 災害時ストレスを抱えた子どもや養育者のこころのケア 子どものための心理的応急処置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 赤坂美幸・河嶌 讓 153

    本誌を無断で複写複製 ・転載すると著作権 ・出版権の侵害となることがありますのでご注意ください。

  • 028 看護 2019. 3月臨時増刊号

    2−1 妊娠期・出産期を支える〈1〉2章 [報告①]先駆的・特徴的な取り組み

    群馬大学医学部附属病院の概要(2018 年 4 月 1 日現在)

    所在地 群馬県前橋市昭和町 3-39-15診療科数 27 科病床数 731 床看護職員数 790 人(看護師 763 人、助産師 27 人)1日外来患者数 約 2000 人年間分娩数 345 件 帝王切開率 47.8%(2016 年度)

    護外来」は、助産師が妊娠・出産・子育てにかか

    わるメンタルヘルスケアを提供する看護専門外来

    として、2004 年 5 月に開設しました。

     その目的は、「身体的・心理的・社会的問題を

    抱える女性と家族のメンタルヘルスケアを行い、

    女性のQOL 向上に貢献する」ことです。なんら

    かの心理的不健康感を抱えている女性に寄り添

    い、心理的健康を支援するというビジョンを基に、

    母親の思うようにならなかった出産体験、子育て

    に関する戸惑いや不安、子どもを亡くしたことに

    よる喪失体験など、母性に関するメンタルヘルス

    について、助産師が看護カウンセリングにより支

    援します。助産師が持つ“母性に寄り添う力”を

    発揮するため「母性看護外来」(以下:本外来)と

    名付けました。

    本外来の活動

    1.「病棟ラウンド」によるメンタルヘルスケア 病棟ラウンドは、大学で母性看護学・助産学を

    「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア

    常盤 洋子

    群馬大学大学院保健学研究科看護学講座(母性看護学・助産学) 教授

     群馬大学医学部附属病院の「母性看護外来」で

    は、妊娠・出産・育児に関連した不安や悩みを、

    助産師が傾聴するメンタルヘルスケアを行ってい

    ます。同外来での実践内容を紹介します。

    母性看護外来開設の背景

     群馬大学医学部附属病院(以下:当院)は、地

    域周産期母子医療センターの認定を受け周産期医

    療を担っています。当院では臨床(看護部)と教

    育(保健科学研究科)の連携事業として、2003 年

    から看護専門外来を開設しており、2018 年度は

    13 部門★ 1が活動しています。このうち「母性看

    ★1 「がん相談・がん看護外来」「リンパ浮腫外来」など。詳細は、看護部ホームページを参照�(https://nurse.dept.showA.gunmA-u.Ac.jp/outpAtient/outpAtient)

  • Vol. 71 No. 4 029

    2-1 妊娠期・出産期を支える〈1〉「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア

    ス」でした。「育児のイライラ」は少数ですが、「こ

    んな私が母親でいいのか?」「上の子が赤ちゃん

    返りをしたのは自分の頑張りが足りないからだと

    思う。もう、頑張れない、死にたい、ここが最後

    の砦だと思って来た」など、子育ての戸惑いや母

    親としての自尊感情の低下が見られます。また、

    「子どもがかわいいと思えない」「お産のことを思

    い出して涙が止まらない」「眠れない」など、う

    つ傾向をうかがわせる発言が多くありました。

     相談申し込み後に、面接の担当者・場所を連絡

    し、インテーク面接を経て面接開始、面接終結・

    事後カンファレンスという流れで実施していま

    す。産婦人科病棟を申込窓口としているので希望

    者はいつでも申し込みできます。ただし、電話で

    の相談は受けていません。これは、病棟のオープ

    ンスペースであるナースステーションで相談を受

    けることを避けるためと、相談者の表情や態度を

    観察できず、心理的アセスメントが不十分になる

    ことが懸念されるためです。

     インテーク面接では、相談者の主訴の確認とう

    つ状態の有無を確認する目的で「Whooley の 2 項

    目質問票」1)による質問を行っています。インテーク

    面接で得た情報を基にアセスメントをして看護カウ

    ンセリングの目標を設定し、面接を開始します。

     本外来では、相談者が他の医療者に相談内容を

    知られる心配をせず、安心して自分の思いや感情

    を表出できる場を提供する目的で、面接内容は電

    子カルテには記録せず、紙カルテを使用していま

    す。面接の終結時には面接担当者が中心になって

    カンファレンスを開催して事例検討を行い、アセ

    スメントや対象理解、面接技術に関する知識を共

    有しています。

    担当している、助産師資格を持つ教員が毎週火曜

    日に病棟へ出向き、入院中の妊産褥婦のメンタル

    ヘルスケアを実践するものです。①入院中の妊婦、

    褥婦のメンタルヘルスケアを行うこと、②本外来

    の担当者と活動内容を周知し、外来活用に対する

    心理的ハードルを下げることが目的です。

     2009 年度から開始し、2017 年度までに延べ

    702 人にメンタルヘルスケアを実施しました。主

    に、「妊娠継続に関する意思決定」「出産体験の語

    りと意味づけ」「ペリネイタル・ロスに関する喪

    失体験」など、母親意識の形成過程における心理

    的苦痛やゆらぎに関する母性相談に、30 分~ 1

    時間かけて対応します。ベッドサイドで話を聴く

    場合もありますが、多くは相談室など、ほかの人

    に話を聞かれる心配がない場所で行っています。

    2.外来者のメンタルヘルスケア 外来者のメンタルヘルスケアは、全診療科共

    通の相談室で看護カウンセリングとして行って

    います。完全予約制・有料(自由診療)です(初回

    3240 円、2回目以降は 2700 円)。

     2004 ~ 2017 年の外来者数は延べ 411 人、1人

    当たりの相談回数は 1~ 58 回(平均 7~ 8 回)で

    した。相談者本人からの申し込みが約半数を占め

    ており、退院時に母子手帳とともに手渡された

    リーフレットを見て申し込まれている状況です。

    ほかには「産科・NICU医師からの紹介」17%、「病

    棟助産師からの紹介」15%、「母乳外来や産科外

    来のスタッフからの紹介」18%で、メンタルヘル

    スケアを受ける意思決定には医師やスタッフから

    の後押しがあると効果的だと思います。主な相談

    内容★ 2で、最も多かったのは「ペリネイタル・ロ

    ★2 「ペリネイタル・ロス」65%、「不妊症・不育症」10%、「出産トラウマ」9%、「異常新生児(染色体異常、超低出生体重)」8%、「育児のイライラ」「婦人科疾患の受容」各3%、「パニック障害」2%

  • 発行・発売 2019 年 3 月 15 日

    発 行 所 株式会社日本看護協会出版会

    東京都渋谷区神宮前 5-8-2 日本看護協会ビル 4 階

    Tel. 0436-23-3271(コールセンター:ご注文)

    振替 00190-8-168557

    東京都文京区関口 2-3-1

    Tel. 03 -5319 -8017(編集直通)

    発 行 人 井部俊子

    編集委員 勝又浜子/和田幸恵/森本一美/長田晋一/伊藤雄介(日本看護協会)

    アドバイザー委員

    (五十音順) 角田直枝(茨城県立中央病院)・佐藤美子(川崎市立多摩病院)・

    塩田美佐代(NTT 東日本伊豆病院)・杉原幸子(君津中央病院)・

    鈴木恵美子(横浜メディカルグループ本部)・田巻宏之(医療法人社団碧水会長谷川病院)・

    中島美津子(東京医療保健大学/大学院看護学研究科)・東めぐみ(東京都済生会中央病院)

    編   集 米丸未央子

    編集協力 石川奈々子・株式会社自由工房

    表紙イラスト 酒井奈穂

    表紙デザイン 新井田清輝

    印  刷 三報社印刷株式会社

    定  価 本体 2,000 円+税

    March3 2019Volume 71 Number 4