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S P E C I A L F E A T U R E
総特集
“子どもの暮らし”と地域包括ケア
多様な場で生活を支える看護
子どもと養育者を支える看護職の役割の重要性が増してい
ます。日本看護協会は「看護の将来ビジョン」(2015 年)で全
世代型の地域包括ケアシステムの必要性を明記した上で健や
かに生まれ育つことへの支援を掲げており、2018 年度には切
れ目のない妊娠・出産・育児環境と周産期医療体制の整備に
取り組みました。産前から始まる、子育てや子どもの成長・
発達に関するニーズ・課題に対し、地域で切れ目なく対応し
ていくために、看護職の連携もこれまで以上に必要とされて
います。
本臨時増刊号では、多様な場で子どもの暮らしと成長・発
達を支援している保健師・助産師・看護師・訪問看護師など
の実践報告を中心に紹介します。それぞれの場で活動してい
る看護職同士や多職種・多機関で連携していくためにも、ぜひ、
お役立てください。
目
次
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1章 [解説]子ども・子育て世代にかかわる政策等と看護職への期待1-1 妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援と看護職への期待 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中根恵美子 006
1-2 切れ目のない支援に向けた看護職の必要性 モデル事業の取り組みから ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 鎌田久美子 013
1-3 小児在宅移行支援指導者育成研修プログラムについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 井本寛子 022
2章 [報告①]先駆的・特徴的な取り組み2-1 妊娠期・出産期を支える 〈1〉「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 常盤洋子 028
〈2〉気がかりな妊婦・親子を支援するための看護職間の連携システム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新谷明子・内田一美 033
〈3〉妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援に向けた産後ケアセンターの役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 永森久美子 039
“子どもの暮らし”と地域包括ケア多様な場で生活を支える看護
臨時増刊号2019年3月 第71巻 第 4号
総特集
日本看護協会機関誌Journal of the Japanese Nursing Association March 2019 Volume 71 / Number 4
2-2 乳幼児期を支える 〈1〉稲美町「すくすく子育てサポートセンター」における保健師の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 藤原美輪 044
〈2〉小児専門病院における在宅移行支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・渡部玲子・小沢道子 051
2-3 学童期を支える 〈1〉医療的ケア児の通園・通学を支える訪問看護 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 林 恵・上田礼子 058
〈2〉特別支援学校への看護師の出向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 石川眞理子・杉浦幸恵 063
〈3〉医療的ケア児の放課後等デイサービス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 伊東祥子 069
〈4〉多職種協働による「食物アレルギー対応子ども食堂」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 笹畑美佐子 074
2-4 乳幼児期~青年期を支える 〈1〉医療型障害児入所施設における超重症児の在宅移行支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 滝澤幸子 081
〈2〉“第二の家”としてのこどもホスピス病棟 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 羽鳥裕子 087
3章 [報告②]子どもを虐待から守る3-1 医療と地域のネットワーク「こどもかんふぁ」を基盤とした 特定妊婦等の周産期支援体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 波多腰秀美 094
3-2 院内「小児虐待対応チーム」の活動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 近藤美和子 099
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4章 [報告③]地域でつながり、子どもを支える4-1 東京子ども等支援連絡協議会多摩「のびのび育ちの会」 多職種・異業種のネットワークで「伴走型支援」をつくる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 梶原厚子・新井朋子・白木きよみ 104
4-2 札幌市における医療的ケア児支援のための看護職ネットワークづくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 北海道看護協会モデル事業プロジェクトチーム 111
4-3 「チームやちよキッズ」の活動を通して考える訪問看護師の役割 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 福田裕子 117
4-4 小児看護を多機関・多職種で学ぶネットワークづくり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 入江千恵 123
5章 [報告④]日ごろから備えて、災害時の支援につなげる5-1 在宅療養児への災害時支援の実際 熊本地震を経験して ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 中本さおり 128
5-2 災害ボランティアサークルによる子ども向け防災教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 武山雅志・曽根志穂・金谷雅代 134
5-3 病院の防災対策と災害時の母子支援 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 八木橋香津代 139
5-4 医療機能停止時の周産期の対応と地域のネットワーク構築 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 森美乃・桑原美保・吉村圭子 146
5-5 災害時ストレスを抱えた子どもや養育者のこころのケア 子どものための心理的応急処置 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 赤坂美幸・河嶌 讓 153
本誌を無断で複写複製 ・転載すると著作権 ・出版権の侵害となることがありますのでご注意ください。
028 看護 2019. 3月臨時増刊号
2−1 妊娠期・出産期を支える〈1〉2章 [報告①]先駆的・特徴的な取り組み
群馬大学医学部附属病院の概要(2018 年 4 月 1 日現在)
所在地 群馬県前橋市昭和町 3-39-15診療科数 27 科病床数 731 床看護職員数 790 人(看護師 763 人、助産師 27 人)1日外来患者数 約 2000 人年間分娩数 345 件 帝王切開率 47.8%(2016 年度)
護外来」は、助産師が妊娠・出産・子育てにかか
わるメンタルヘルスケアを提供する看護専門外来
として、2004 年 5 月に開設しました。
その目的は、「身体的・心理的・社会的問題を
抱える女性と家族のメンタルヘルスケアを行い、
女性のQOL 向上に貢献する」ことです。なんら
かの心理的不健康感を抱えている女性に寄り添
い、心理的健康を支援するというビジョンを基に、
母親の思うようにならなかった出産体験、子育て
に関する戸惑いや不安、子どもを亡くしたことに
よる喪失体験など、母性に関するメンタルヘルス
について、助産師が看護カウンセリングにより支
援します。助産師が持つ“母性に寄り添う力”を
発揮するため「母性看護外来」(以下:本外来)と
名付けました。
本外来の活動
1.「病棟ラウンド」によるメンタルヘルスケア 病棟ラウンドは、大学で母性看護学・助産学を
「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア
常盤 洋子
群馬大学大学院保健学研究科看護学講座(母性看護学・助産学) 教授
群馬大学医学部附属病院の「母性看護外来」で
は、妊娠・出産・育児に関連した不安や悩みを、
助産師が傾聴するメンタルヘルスケアを行ってい
ます。同外来での実践内容を紹介します。
母性看護外来開設の背景
群馬大学医学部附属病院(以下:当院)は、地
域周産期母子医療センターの認定を受け周産期医
療を担っています。当院では臨床(看護部)と教
育(保健科学研究科)の連携事業として、2003 年
から看護専門外来を開設しており、2018 年度は
13 部門★ 1が活動しています。このうち「母性看
★1 「がん相談・がん看護外来」「リンパ浮腫外来」など。詳細は、看護部ホームページを参照�(https://nurse.dept.showA.gunmA-u.Ac.jp/outpAtient/outpAtient)
Vol. 71 No. 4 029
2-1 妊娠期・出産期を支える〈1〉「母性看護外来」における助産師によるメンタルヘルスケア
ス」でした。「育児のイライラ」は少数ですが、「こ
んな私が母親でいいのか?」「上の子が赤ちゃん
返りをしたのは自分の頑張りが足りないからだと
思う。もう、頑張れない、死にたい、ここが最後
の砦だと思って来た」など、子育ての戸惑いや母
親としての自尊感情の低下が見られます。また、
「子どもがかわいいと思えない」「お産のことを思
い出して涙が止まらない」「眠れない」など、う
つ傾向をうかがわせる発言が多くありました。
相談申し込み後に、面接の担当者・場所を連絡
し、インテーク面接を経て面接開始、面接終結・
事後カンファレンスという流れで実施していま
す。産婦人科病棟を申込窓口としているので希望
者はいつでも申し込みできます。ただし、電話で
の相談は受けていません。これは、病棟のオープ
ンスペースであるナースステーションで相談を受
けることを避けるためと、相談者の表情や態度を
観察できず、心理的アセスメントが不十分になる
ことが懸念されるためです。
インテーク面接では、相談者の主訴の確認とう
つ状態の有無を確認する目的で「Whooley の 2 項
目質問票」1)による質問を行っています。インテーク
面接で得た情報を基にアセスメントをして看護カウ
ンセリングの目標を設定し、面接を開始します。
本外来では、相談者が他の医療者に相談内容を
知られる心配をせず、安心して自分の思いや感情
を表出できる場を提供する目的で、面接内容は電
子カルテには記録せず、紙カルテを使用していま
す。面接の終結時には面接担当者が中心になって
カンファレンスを開催して事例検討を行い、アセ
スメントや対象理解、面接技術に関する知識を共
有しています。
担当している、助産師資格を持つ教員が毎週火曜
日に病棟へ出向き、入院中の妊産褥婦のメンタル
ヘルスケアを実践するものです。①入院中の妊婦、
褥婦のメンタルヘルスケアを行うこと、②本外来
の担当者と活動内容を周知し、外来活用に対する
心理的ハードルを下げることが目的です。
2009 年度から開始し、2017 年度までに延べ
702 人にメンタルヘルスケアを実施しました。主
に、「妊娠継続に関する意思決定」「出産体験の語
りと意味づけ」「ペリネイタル・ロスに関する喪
失体験」など、母親意識の形成過程における心理
的苦痛やゆらぎに関する母性相談に、30 分~ 1
時間かけて対応します。ベッドサイドで話を聴く
場合もありますが、多くは相談室など、ほかの人
に話を聞かれる心配がない場所で行っています。
2.外来者のメンタルヘルスケア 外来者のメンタルヘルスケアは、全診療科共
通の相談室で看護カウンセリングとして行って
います。完全予約制・有料(自由診療)です(初回
3240 円、2回目以降は 2700 円)。
2004 ~ 2017 年の外来者数は延べ 411 人、1人
当たりの相談回数は 1~ 58 回(平均 7~ 8 回)で
した。相談者本人からの申し込みが約半数を占め
ており、退院時に母子手帳とともに手渡された
リーフレットを見て申し込まれている状況です。
ほかには「産科・NICU医師からの紹介」17%、「病
棟助産師からの紹介」15%、「母乳外来や産科外
来のスタッフからの紹介」18%で、メンタルヘル
スケアを受ける意思決定には医師やスタッフから
の後押しがあると効果的だと思います。主な相談
内容★ 2で、最も多かったのは「ペリネイタル・ロ
★2 「ペリネイタル・ロス」65%、「不妊症・不育症」10%、「出産トラウマ」9%、「異常新生児(染色体異常、超低出生体重)」8%、「育児のイライラ」「婦人科疾患の受容」各3%、「パニック障害」2%
発行・発売 2019 年 3 月 15 日
発 行 所 株式会社日本看護協会出版会
東京都渋谷区神宮前 5-8-2 日本看護協会ビル 4 階
Tel. 0436-23-3271(コールセンター:ご注文)
振替 00190-8-168557
東京都文京区関口 2-3-1
Tel. 03 -5319 -8017(編集直通)
発 行 人 井部俊子
編集委員 勝又浜子/和田幸恵/森本一美/長田晋一/伊藤雄介(日本看護協会)
アドバイザー委員
(五十音順) 角田直枝(茨城県立中央病院)・佐藤美子(川崎市立多摩病院)・
塩田美佐代(NTT 東日本伊豆病院)・杉原幸子(君津中央病院)・
鈴木恵美子(横浜メディカルグループ本部)・田巻宏之(医療法人社団碧水会長谷川病院)・
中島美津子(東京医療保健大学/大学院看護学研究科)・東めぐみ(東京都済生会中央病院)
編 集 米丸未央子
編集協力 石川奈々子・株式会社自由工房
表紙イラスト 酒井奈穂
表紙デザイン 新井田清輝
印 刷 三報社印刷株式会社
定 価 本体 2,000 円+税
March3 2019Volume 71 Number 4