姫 路 赤 十 字 病 院は、この度 、呼 吸 器センターを開 設いたしました。これまで岡 山 大 学 協 力のもと、平 成 2 7 年 呼 吸 器 内科を、平成28年には呼吸器外科を開設し、地域の方々に高度な医療を提供してまいりました。いま呼吸器診療は新た な段階に入っており、より質の高い医療を提供する目的で、空間的にも、時間的にもシームレスにする必要があり、呼吸器 センターを開 設し、 内 科・外 科が密な連 携をとる体 制を整えました。これにより呼 吸 器 疾 患の診 療 機 能をさらに充 実する ことができました。 新たな機能を加え、地域医療支援病院として、また地域の皆様のおかげでDPC特定病院群(大学病院に準じる機能 を持った病 院 )として引き続き評 価を受け、これからもさらなる総 合 力を活かして、 地 域 医 療に貢 献しますので、これまで 同様にご指導ご鞭撻宜しくお願いします。 病院長 佐藤 四三 写真2. CTで発見された転 移性肺腫瘍(右、赤 矢 印 )。やや深い位 置に存 在 するが、3 -Dシミュレーターに よりS6区 域 切 除で 十分に切除可能と 判 断された( 左、青 矢印)。 写 真1. 右側肺の手術例。最大の創が3センチ、 残り2箇所は2センチ。 地域医療関係者の皆様へ 呼吸器センター開設お知らせ ①肺癌の薬物療法:分子標的(EGFRm、ALK、ROS-1、BRAF)が増えると共にその阻害薬の種類も増えています。また、新た な作用機 序である免 疫チェックポイント阻 害 薬によって奏効される方も増加しています。 ②肺癌の手術療法:創の小さく低侵襲の完全鏡視下胸腔鏡手術を導入し、早期の退院を実現しています。 ③ 気 管 支 喘 息の治 療:喘 息 治 療ステップに基 づく基 本 治 療を行うとともに、 重 症・難 治 性 喘 息につきましては分 子 標 的 薬 剤の使 用、内 視 鏡 的 治 療である気 管 支サーモプラスティ療法を行っています。 ④ 自 然 気 胸 の 治 療:携 帯 型ドレナージキットによる外 来 治 療 や 、 C O P D による続 発 性 気 胸 などには 気 管 支 鏡 によるE W S (Endoscopic Watanabe Spigot)気管支充填術も施行しています。手術療法では若い患者さんの整容性と痛みに配慮し、胸 腔 内 傍 脊 椎 神 経ブロックを併用した“同一 肋 間 2 孔式手術”を開発し提供しています。 呼吸器センター診療のトピックス ゲノム医 療に代 表されるように肺 癌を始めとする呼 吸 器 診 療は、まさにパラダイムシフトが進んでいます。この潮 流 への対応として診療科横断的且つ時間的にもつなぎ目の無い診療が求められ、当院は呼吸器内科・外科の密な連 携を軸とした“ 呼 吸 器センター”を設 立しました。 院 内のスタッフのみならず、 地 域の医 療 関 係の皆 様のご協 力もいた だいた“チーム医療”での総合診療体制で良質な呼吸器診療の提供を目指します。 (呼吸器センター長 水谷尚雄、副センター長 岸野大蔵) 呼吸器センター開設のお知らせ 施設認定  日本呼吸器学会関連施設、呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設 施設認定  日本呼吸器学会関連施設、呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設 専 門 医  日本呼吸器学会呼吸器専門医、呼吸器外科専門医 専 門 医  日本呼吸器学会呼吸器専門医、呼吸器外科専門医 写真1 写真1 写真2 写真2 2018年4月より、呼吸器外科勤務となりました。よろしくお願い申し上げます。大学卒業後は、中国・四国 地 方の病 院を中 心に勤務して参りましたが、出身は神戸市であり、地元に戻ってきた喜びを日々感じています。 我々が担当する最も多い疾患は肺癌です。比較的早期の肺癌に対する胸腔鏡を用いた低侵襲手術の導入は世界的に 拡大し、何らかの形で胸腔鏡を使用する手術は全体の6~7割に達します。この手術を支える機器の進歩も目覚ましく、この 流れはますます発展すると考えます。我々もこれに乗り遅れぬよう取り組み、現 在では2~3センチの創を3~4 箇所 設け、モニ ター視のみで手 術を行う完 全 鏡 視 下 手 術が安 定して出来るようになっています( 写 真 1 )。またC Tの普 及により小 型 病 変が 発見される機会が増え、それらに対し肺切除の中では比較的難易度の高い区域切除の症例も増えています。区域切除は 術前の評価・立案が非常に重要です。当院ではほとんどの電子カルテ上で3-Dシミュレーターを使用できる環境にあり、安 全で正確な区域切除を行うために大変役立っています(写真2)。もちろん、肺を温存できる低侵襲の意 味も大きい区 域 切 除 も完全鏡視下に行います。ただし、低侵襲を追求する余りに安全性や根治性を損なってはいけないので、スタッフ間で十分 に協議し、創の大きさや切除範囲を拡げることを躊躇しないよう、常に気をつけています。 最近は、高齢で併存疾患を有する方が増えており、上記のような治療を呼吸器外科単独で完遂する事が難しい場合が あります。当院は呼吸器センターで内科・外科で緊密な連携が取れること、多数の常勤麻酔医による術前・術後管理が可 能であること、循環器内科や脳外科など他科の診療を要する場合も速やかに対応可能であるなど、多くの利点を有していま す。地域の皆様に信頼して頂ける診療科を目指して努力していきますので、よろしくお願い致します。 呼吸器外科副部長  田尾 裕之 日本外科学会専門医・指導医 呼吸器外科専門医 日本呼吸器外科学会評議員 がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了

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 姫路赤十字病院は、この度、呼吸器センターを開設いたしました。これまで岡山大学協力のもと、平成27年呼吸器内科を、平成28年には呼吸器外科を開設し、地域の方々に高度な医療を提供してまいりました。いま呼吸器診療は新たな段階に入っており、より質の高い医療を提供する目的で、空間的にも、時間的にもシームレスにする必要があり、呼吸器センターを開設し、内科・外科が密な連携をとる体制を整えました。これにより呼吸器疾患の診療機能をさらに充実することができました。 新たな機能を加え、地域医療支援病院として、また地域の皆様のおかげでDPC特定病院群(大学病院に準じる機能を持った病院)として引き続き評価を受け、これからもさらなる総合力を活かして、地域医療に貢献しますので、これまで同様にご指導ご鞭撻宜しくお願いします。

病院長 佐藤 四三

写真2. CTで発見された転移性肺腫瘍(右、赤矢印)。やや深い位置に存在するが、3-DシミュレーターによりS6区域切除で十分に切除可能と判断された(左、青矢印)。

写真1. 右側肺の手術例。最大の創が3センチ、残り2箇所は2センチ。

地 域 医 療 関 係 者 の 皆 様 へ

呼吸器センター開設のお知らせ

①肺癌の薬物療法:分子標的(EGFRm、ALK、ROS-1、BRAF)が増えると共にその阻害薬の種類も増えています。また、新たな作用機序である免疫チェックポイント阻害薬によって奏効される方も増加しています。

②肺癌の手術療法:創の小さく低侵襲の完全鏡視下胸腔鏡手術を導入し、早期の退院を実現しています。③気管支喘息の治療:喘息治療ステップに基づく基本治療を行うとともに、重症・難治性喘息につきましては分子標的薬剤の使

用、内視鏡的治療である気管支サーモプラスティ療法を行っています。④自然 気 胸の治 療:携 帯 型ドレナージキットによる外 来 治 療や、 C O P Dによる続 発 性 気 胸などには気 管 支 鏡によるE W S(Endoscopic Watanabe Spigot)気管支充填術も施行しています。手術療法では若い患者さんの整容性と痛みに配慮し、胸腔内傍脊椎神経ブロックを併用した“同一肋間2孔式手術”を開発し提供しています。

呼吸器センター診療のトピックス

 ゲノム医療に代表されるように肺癌を始めとする呼吸器診療は、まさにパラダイムシフトが進んでいます。この潮流への対応として診療科横断的且つ時間的にもつなぎ目の無い診療が求められ、当院は呼吸器内科・外科の密な連携を軸とした“呼吸器センター”を設立しました。院内のスタッフのみならず、地域の医療関係の皆様のご協力もいただいた“チーム医療”での総合診療体制で良質な呼吸器診療の提供を目指します。

(呼吸器センター長 水谷尚雄、副センター長 岸野大蔵)

呼吸器センター開設のお知らせ

施設認定 日本呼吸器学会関連施設、呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設施設認定 日本呼吸器学会関連施設、呼吸器外科専門医合同委員会認定修練施設専 門 医 日本呼吸器学会呼吸器専門医、呼吸器外科専門医専 門 医 日本呼吸器学会呼吸器専門医、呼吸器外科専門医 写真1写真1 写真2写真2

 2018年4月より、呼吸器外科勤務となりました。よろしくお願い申し上げます。大学卒業後は、中国・四国地方の病院を中心に勤務して参りましたが、出身は神戸市であり、地元に戻ってきた喜びを日々感じています。 我々が担当する最も多い疾患は肺癌です。比較的早期の肺癌に対する胸腔鏡を用いた低侵襲手術の導入は世界的に拡大し、何らかの形で胸腔鏡を使用する手術は全体の6~7割に達します。この手術を支える機器の進歩も目覚ましく、この流れはますます発展すると考えます。我 も々これに乗り遅れぬよう取り組み、現在では2~3センチの創を3~4箇所設け、モニター視のみで手術を行う完全鏡視下手術が安定して出来るようになっています(写真1)。またCTの普及により小型病変が発見される機会が増え、それらに対し肺切除の中では比較的難易度の高い区域切除の症例も増えています。区域切除は術前の評価・立案が非常に重要です。当院ではほとんどの電子カルテ上で3-Dシミュレーターを使用できる環境にあり、安全で正確な区域切除を行うために大変役立っています(写真2)。もちろん、肺を温存できる低侵襲の意味も大きい区域切除も完全鏡視下に行います。ただし、低侵襲を追求する余りに安全性や根治性を損なってはいけないので、スタッフ間で十分に協議し、創の大きさや切除範囲を拡げることを躊躇しないよう、常に気をつけています。 最近は、高齢で併存疾患を有する方が増えており、上記のような治療を呼吸器外科単独で完遂する事が難しい場合があります。当院は呼吸器センターで内科・外科で緊密な連携が取れること、多数の常勤麻酔医による術前・術後管理が可能であること、循環器内科や脳外科など他科の診療を要する場合も速やかに対応可能であるなど、多くの利点を有しています。地域の皆様に信頼して頂ける診療科を目指して努力していきますので、よろしくお願い致します。

呼吸器外科副部長 田 尾 裕 之日本外科学会専門医・指導医呼吸器外科専門医日本呼吸器外科学会評議員がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会修了