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NTT技術ジャーナル 2016.2 50 180 ネット配信講義で 日本の教育に改革を ◆貴社の設立の経緯をお聞かせください. gaccoは,NTTドコモと,元々は別の有料の「eラーニ ングサービス」を運営していたNTTナレッジ ・ スクウェア との共同プロジェクトとして,2014年2月にサービスを開 始しました.その新たな学び方が支持され,順調に会員数 が伸びてきたことから,2015年8月,NTTナレッジ ・ ス クウェアをドコモの子会社とし,商号をドコモgaccoに変 更しました. ◆gaccoの概要について教えてください. gaccoは2014年4月 に 開 講 し た 日 本 初 のMOOCの プ ラットフォームで,世代や地域を超えて誰もが無料で学び 集うことができます. 学び方はいたって簡単で,PC,スマートフォン,タブレッ トを用い,毎日10分程度の講義を見て,週の終わりに理解 度確認のためのテストに答えます.それを平均的には4週間 程度続けて,最終課題としてのレポートなどが課され,テ ストとレポートの合計点が合格点に達していれば,修了証 を受け取ることができる,というものです.レポートは相 互採点の仕組みを用意しており,自分以外の受講者のレポー トを採点することで,学びが深まるよう工夫されています. また,掲示板機能も用意されており,学習者どうし,日々 活発な議論が繰り広げられています. 2016年3月時点では,東京大学,京都大学iPS細胞研究 所,大阪大学,慶應義塾大学など第一線の教授陣が講義 ・ 監修する講座が約100にものぼります.それらの講座の半 数近くを担当教授から直接指導が有料で受けられる対面授 業もあり,大変好評をいただいています.つまり,オンラ インで学ぶだけでなく,オフラインでの学びを組み合わせ ることで,学びをより定着させることができるプラット フォームなのです. gaccoの会員数は2015年12月現在,約17万人,延べ の受講登録者数としては,約50万人となります.一定の条 件を満たした受講者には修了証を発行しています.修了率 は,gaccoの場合平均10〜20%で,これは米国のMOOC サービスの平均修了率が5%であるのと比較して高い水準で す. ◆なぜこのような無料配信講座が始まったのでしょうか. もともとMOOCは2012年ころから米国のスタンフォー ドやMITといった名門大学で始まった取り組みです.米国 の一流大学の学費は年間数千万円と高額ですから,表向き は,就学の機会平等という理念がありますが,実は世界の 英知を米国に集積させるという国策に近いねらいがあると 考えています.実際,近年,世界中の10代の優秀な子ども たちが続々と米国の大学に入学しているという事実もあり ます. そうした米国の動きに各国も追随する中,日本版MOOC の必要性を強く感じました. MOOCという世界的な潮流の中でインターネット上に日 本の優れた知や文化をオープンにして日本語で世界に向け て発信することで,場所による教育格差をなくし,誰でも 等しく高等教育を受けられるようにするだけでなく,日本 に興味を持ってくれる人を増やすことも目指しています. 加えて,オンラインでの学習に対面で行う授業すなわち,「ア クティブ ・ ラーニング」を組み合わせることで,グローバ ルに活躍できる日本人を増やしていくこともねらっていま す.知識のインプットはオンラインで,発展的な議論や実 践というアウトプットは対面授業で,という流れをつくる ことで将来的には学校教育のあり方にも変革をもたらして いけたらと考えています. http://gacco.co.jp/ 無料で大学レベルの オンライン講義を提供 大学レベルの講義を無料で受講できる大規模オープンオンライン 講座(MOOC: Massive Open Online Courses)が注目されてい る.米国で始まった取り組みだが,国内においては,gaccoが 2014年よりサービスを開始している.どのような特徴を持ってい るのか,その概要や展望について,gaccoを提供するドコモgacco 伊能(いよく)美和子社長に話を伺った. ドコモgacco 伊能美和子社長 株式会社ドコモgacco

無料で大学レベルの オンライン講義を提供 - NTTMOOCという世界的な潮流の中でインターネット上に日 本の優れた知や文化をオープンにして日本語で世界に向け

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Page 1: 無料で大学レベルの オンライン講義を提供 - NTTMOOCという世界的な潮流の中でインターネット上に日 本の優れた知や文化をオープンにして日本語で世界に向け

NTT技術ジャーナル 2016.250

180180

ネット配信講義で 日本の教育に改革を

◆貴社の設立の経緯をお聞かせください.gaccoは,NTTドコモと,元々は別の有料の「eラーニ

ングサービス」を運営していたNTTナレッジ ・ スクウェアとの共同プロジェクトとして,2014年2月にサービスを開始しました.その新たな学び方が支持され,順調に会員数が伸びてきたことから,2015年8月,NTTナレッジ ・ スクウェアをドコモの子会社とし,商号をドコモgaccoに変更しました.◆gaccoの概要について教えてください.

gaccoは2014年4月に開講した日本初のMOOCのプラットフォームで,世代や地域を超えて誰もが無料で学び集うことができます.

学び方はいたって簡単で,PC,スマートフォン,タブレットを用い,毎日10分程度の講義を見て,週の終わりに理解度確認のためのテストに答えます.それを平均的には4週間程度続けて,最終課題としてのレポートなどが課され,テストとレポートの合計点が合格点に達していれば,修了証を受け取ることができる,というものです.レポートは相互採点の仕組みを用意しており,自分以外の受講者のレポートを採点することで,学びが深まるよう工夫されています.また,掲示板機能も用意されており,学習者どうし,日々活発な議論が繰り広げられています.

2016年3月時点では,東京大学,京都大学iPS細胞研究所,大阪大学,慶應義塾大学など第一線の教授陣が講義 ・監修する講座が約100にものぼります.それらの講座の半数近くを担当教授から直接指導が有料で受けられる対面授業もあり,大変好評をいただいています.つまり,オンラインで学ぶだけでなく,オフラインでの学びを組み合わせ

ることで,学びをより定着させることができるプラットフォームなのです.

gaccoの会員数は2015年12月現在,約17万人,延べの受講登録者数としては,約50万人となります.一定の条件を満たした受講者には修了証を発行しています.修了率は,gaccoの場合平均10〜20%で,これは米国のMOOCサービスの平均修了率が5%であるのと比較して高い水準です.◆なぜこのような無料配信講座が始まったのでしょうか.

もともとMOOCは2012年ころから米国のスタンフォードやMITといった名門大学で始まった取り組みです.米国の一流大学の学費は年間数千万円と高額ですから,表向きは,就学の機会平等という理念がありますが,実は世界の英知を米国に集積させるという国策に近いねらいがあると考えています.実際,近年,世界中の10代の優秀な子どもたちが続々と米国の大学に入学しているという事実もあります.

そうした米国の動きに各国も追随する中,日本版MOOCの必要性を強く感じました.

MOOCという世界的な潮流の中でインターネット上に日本の優れた知や文化をオープンにして日本語で世界に向けて発信することで,場所による教育格差をなくし,誰でも等しく高等教育を受けられるようにするだけでなく,日本に興味を持ってくれる人を増やすことも目指しています.加えて,オンラインでの学習に対面で行う授業すなわち,「アクティブ ・ ラーニング」を組み合わせることで,グローバルに活躍できる日本人を増やしていくこともねらっています.知識のインプットはオンラインで,発展的な議論や実践というアウトプットは対面授業で,という流れをつくることで将来的には学校教育のあり方にも変革をもたらしていけたらと考えています.

http://gacco.co.jp/

無料で大学レベルのオンライン講義を提供

大学レベルの講義を無料で受講できる大規模オープンオンライン講座(MOOC: Massive Open Online Courses)が注目されている.米国で始まった取り組みだが,国内においては, gaccoが2014年よりサービスを開始している.どのような特徴を持っているのか,その概要や展望について,gaccoを提供するドコモgacco伊能(いよく)美和子社長に話を伺った.

ドコモgacco 伊能美和子社長

株式会社ドコモgacco

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◆無料で講座を提供するのでは,大学としてメリットが得られないのではありませんか.確かに,すぐには利益に結び付かないかもしれません.

しかし,大学にとっては,まず,インターネットを介して,受講者がその大学の講義を受けることで,大学自体に興味や関心を抱くことで,その後の学生募集につながるという効果を考えているでしょう.少子化や大学の再編,また,国から支給される交付金の減少といった環境下において,大学経営は厳しさを増していますから,留学生や社会人など,より多くの方にその存在を認知してもらうことができれば,長い目でみて,大学にとってはメリットも大きいのではないでしょうか.

反転学習でコミュニティ& コミュニケーションビルディングを実現

◆先ごろ米国発のオンライン学習プラットフォームも日本で始まりました.gaccoはそれらとどう差異化を図っていますか.gaccoの最大の特徴は反転学習です.反転学習とは,先

に申し上げたように知識のインプットは,教室での座学で,応用的な問題は宿題として自宅でという従来の学びのあり方を反転させ,知識習得は好きな時間に好きな場所で,好きなデバイスを使ってオンラインで事前学習し,次にオフラインで,一定の知識を得た受講者が集まり,それぞれに思っていること,分からなかったことをインタラクティブに解決したり学び合ったりすることで,アウトプットを重視しながら知識をより深めていく方法です.

gaccoでは,オンラインでの学びに加えて,教授や講師によるリアル講義により,さらに発展的な学びを提供する,有料の「対面学習コース」も提供していますが,まさにこれが,反転学習です.それ以外にも受講者が自主的に集まって相互に学ぶ「ミートアップ」が頻繁に行われています.掲示板でのコミュニケーションのみならず,対面授業やミートアップでは,同好の仲間と直接コミュニケーションを図ることができます.こうしたコミュニティ形成までも視野に入れた学びのスタイルのことを我々は「gacco Style」と呼び,推奨しています.◆1科目の学習期間はどれくらいですか.

先ほども簡単にご紹介しましたが,学習期間は基本的に1カ月〜1カ月半程度で, 1日当り10分程度の講義動画を週に5〜10本視聴し,それが4〜6週間継続するというようなかたちです.講義内容に不明な点があるような場合には,受講者どうしが掲示板内で質問や議論をすることもできます.週ごとに学んだ内容の理解度を確認するための小テストを行います.最後に総合テストあるいは,レポートを提出して,一定基準を満たしていれば修了証が発行される仕組みです.

レポートを課す講座の場合は,受講者どうしが相互採点を行う仕組みを構築しています.可能な限り定量的に評価

できるよう,ルーブリック(課題や学習の成果を評価する基準や尺度)という評価軸を用意し,レポートの全体文字数の中で必要なキーワードが盛り込まれているか,自分の考えが述べられているか,といったチェック項目を設け,それらを基準に採点します.先生からの指摘ではなく,受講生の視点で採点ができるため,受講生どうしがお互いの考え方に触発されたり,刺激を受けたりできるという利点もあります.

修了証を取ることを自分の目標として学習を継続されている方も多くいらっしゃいます.◆ビジネスとしてどのように課金をするのですか.

gaccoのプラットフォームをお貸しする場合には,ASP(Application Service Provider)使用料をいただいています.また,期間限定で公開されるgaccoの講座を,無料の公開期間後に,企業などが再利用される場合には研修として個別のカスタマイズをして課金させていただく等,法人向けにはさまざまなメニューをご用意しています.

また,先ほどお話しした「対面学習コース」は有料となります.ドコモgaccoはどういう会社かと問われれば,私は迷うことなく,「コミュニティビルディング」をしている会社だと答えています.「歴史や物理が好きな人が,周りにはいないが,gaccoに行ったら会える」.人々の「好き」や「知識」を媒介とした出会いの場,すなわち,コミュニティをつくるお手伝いをすることが我々のビジネスというわけです.

gacco Styleを発展させオンラインでの ワークショップの実現を目指す

◆今後について,どのような展望をお持ちですか.大きく2つあります.1つは,スマートフォンやタブレッ

トでの受講のために,使い勝手を良くし,より洗練されたサービスに仕上げるということです.

もう1つは,2016年春から開始予定の有料サービス「gaccatz(ガッカツ:gacco active talking zone)」の立ち上げ準備を進めます.gaccatzは,オンラインで実現できるワークショップスタイルの学習プラットフォームです.集まらなければできないことを遠隔でできるよう,現在仕組みを構築中です.

昨今活況を呈している,ハッカソンやアイディアソン等ですが,オンラインでの参加が可能になればもっと多くの方による集合知が生まれることでしょう.また海外駐在の家族の中には,日本人学校や現地校に通っている子どもたちがいますが,海外にいながら,日本の学校への進学の準備ができるようなプログラムの提供や日本語の補習校として使えるようになるかもしれません.gaccatzの仕組みがあれば,ネット上で,知らない人どうしが語り合うことでインタラクティブでソーシャルな学びが実現します.そのようなプラットフォームをつくり,自社でのサービスを提供していくほか,法人向けにもご提供し,こうした学び方をさらに普及させたいと考えています.

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NTT技術ジャーナル 2016.252

担当者に聞く

テクノロジでつながる新たな学び舎 多彩な授業で受講者層の広がりを

◆竹内さんの業務内容についてお聞かせください.私は広報を担当してい

ま す が, 所 属 は マ ー ケティング部で,その中でもプロモーションに力を入 れ て い ま す. 第 一 のミ ッ シ ョ ン は,gaccoの会員を増やすことです.

TwitterやFacebook な ど のSNSで は, 東 大の講義や通常であれば何百万円も授業料を払わなくてはいけない講座が無料で受講できることに驚きのコメントを発信される方が多くいらっしゃいます.まずは,さまざまなメディアの方に情報を発信し,そういった受講者の声を積極的に広めなければなりません.

また,さらなるサービスの普及のためには,若い年代や女性にもアピールする仕組みがこれからは必要だと考えています.◆金さんは「gaccatz」

の開発を担当されていますね.gaccatzは, 従 来 オ

フラインでしか体験できなかった仲間との共同作業等ができるようになる,大規模なオンライングループワークシステムのことです.現在最終トライアルを進めながら,UI(User Interface)の改善を図っているところです.

gaccatzには3つのカテゴリがあります.1つは,従来のように講師から一斉に配信されるリアルタイムの講義.

2番目は,4〜5名程度の少人数のグループに分かれて1つの成果を出す,1つの物をつくり上げるといったグループモードです.そして3番目は,そのグループを3〜5グループずつ束ねて,お互いに成果発表等を行うことのできるルームワークモードというタイプです.これらを活用することにより,それぞれ特徴のあるワークショップスタイルでの授業を行うことが可能になります.

従来の教育では,対面でしか実現できなかったことがオンラインでできるようになります.遠隔地間での授業のやり取りにも最適ですし,何よりもライブ感が増すことで,学習意欲も一層高まるのではないかと期待しています.

世界でも初めての仕組みなので,特許も申請中です.gaccatzが導入されることにより,さらに講座の幅も広がるのではないかと考えています.◆gaccatzはオンラインでありながら,多様な学び方を

提供できるプラットフォームというわけですね.これまであまりオンライン学習に取り込めなかった若年層にもアピールできるのではありませんか.gaccatzの特長は,ライブに近いかたちで他の受講生

とワークショップを行い,多様なコミュニケーションをとることができるようになるという点にあります.若い方も楽しみながら受講できるようになるのではないでしょうか.

gaccoは海外やシニア層からも高評価 会員数100万人を目指す

◆課題はどのようなことが挙げられますか.gaccatzの前に,まずgaccoの認知度を高めなくては

なりません.受講者の方々からは,多くの好評価を得られていますが,それらの声を世の中に伝えきれていないというのが現状です.例えば,受講者の方から「学びの概念が変わった」,また,中国の方から「日本に留学予定だが,gaccoで事前に日本の大学の講義を受講できてとても役に立った」,あるいは高齢者の方は,ご主人の介護が大変な中で,「gaccoに出会い,学ぶこと,掲示板の中で若者と触れ合えることで生き甲斐ができた」というような声もいただいています.そのような感動の声をもっと外部に発信 ・ 拡散させ,多くの方々が「勉強してみようか」という気持ちになるよう,触発できるような仕組みをつくることが必要なのではないかと考えています.

現在提供されているのは,クオリティの高い講座です.当社としても,それを求める方,本格的な講座で学びたいと思われている方がコアなターゲット層です.例えば,gaccoの主な受講者層は,講義の内容が,大学の授業や

若年層向けの講座の開発とSNSでの積極的な情報の発信をマーケティング部 マネージャー 竹内 祐介さんコンテンツ開発部 マネージャー 金 順暎さん

竹内祐介マネージャー

金順暎マネージャー

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ビジネス系であるということから,30〜40代のビジネスパーソンで,7対3の割合で圧倒的に男性が多く受講しています.

その一方で,「思考力を養いたい」とか,シニア層では,「学ぶこと自体が楽しい」といった意見もあります.また,中にはもっと気軽に学びたいと思われる方がいらっしゃるのも事実です.30分程度で修了できるようなライトコンテンツで良いという方も多いでしょう.まずは気軽に取り

組むことのできるライトなコンテンツをつくり,それを足掛かりとして本格的に学べるような土壌に多様な層を取り込めるよう,アピールすることも課題だと思います.◆今後の取り組みを教えてください.

まずは会員数を100万人にすることを目指しています.そのためにも講座のカテゴリを増やすことはもちろんですが,2016年春にスタートするgaccatzを事業の柱にできるよう,しっかりと準備を進めていきます.

■着物を着こなす社長の心意気取材当日,粋な着物姿で現れた伊能社長.「1カ月に1〜2日は着物出社をしようと決めています.もともと着物が好きだということもあり,着物文化を広めたいと思っています(写真 1, 2).長い歴史の中で培われてきた文化や生活の知恵を日本の知見として後世に継承していく,これは私の役割でもありますし,このことは,gaccoの仕事にも通じるものだと考えています」と社長はおっしゃいます.その言葉どおり,gaccoには,歌舞伎を題材に学ぶ経済学や江戸文化に関する講座等も提供されています.多くの人にgaccoを普及させるべく,堂々と,かつ,しなやかに立ち振る舞われる社長の姿が,まぶしく映りました.

■全員がオープンイノベータドコモgaccoの従業員は20名.それぞれの出資企業からの出向と派遣,それに業務委託というメンバです.1人ひとりがオープンイノベータであり,社内もオープンでありたいという理念のもと,相互に議論し,意見を出し合うことで,新しい価値,新しい企業文化の醸成を目指しています.「当社は新体制になってまだ3カ月(2015年11月現在)ですから,企業文化も現在進行形で創られつつあります.風通しの良い企業風土を目指していますが,その先頭に立っているのが社長だと思います.他の会社ではできないことでも,ドコモgaccoであれば実現できるということを率先して示してくれています」(竹内さん).さて,企業文化を創る一環として同社が取り組んでいるのは,全員参加のプレゼン大会です.「それぞれの担当者が日々の業務から気付く考えや意見を吸い上げ,それらを事業化のヒントにします」(伊能社長).プレゼンでは,1人5分の持ち時間でビジネスアイデアを発表.その中から具体的に検討されている案もあるそうです.アイデア採用の可否は問題ではなく,とにかく自分の意見を述べることが求められるのだといいます.■お洒落な街の意外な落とし穴会社は東京都港区の麻布にあります.この辺りは大使館が多く,お洒落なイメージがあります.そんな街で,さぞかし優雅なランチタイムを満喫しているのでは,と思いきや,社内では「牛丼屋がない!」「ラーメン屋がない!」という切実な叫び声が聞こえるそうです.駅から会社までは徒歩5分程度ですが,その間,サラリーマンの懐の味方となるような店も見当たりませんでした.「毎日,仕出し弁当を配達してもらっています」(竹内さん)とのことです.

ドコモgacco ア・ラ・カルトア・ラ・カルト

写真 1 写真 2