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No.10-J-15 2010 12 長期金利変動のファクター分解 菊池健太郎* [email protected] 日本銀行 103-8660 郵便事業(株)日本橋支店私書箱第 30 * 金融市場局(現・金融研究所) 日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をと りまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴する ことを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見 解を示すものではありません。 なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関する お問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。 商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談下さい。 転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ

長期金利変動のファクター分解 - Bank of Japan...長期金利変動のファクター分解 kentarou.kikuchi No.10-J-15 2010 年12 月 菊池健太郎* @boj.or.jp 日本銀行

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No.10-J-15

2010 年 12 月

長期金利変動のファクター分解

菊池健太郎* [email protected]

日本銀行

〒103-8660 郵便事業(株)日本橋支店私書箱第 30 号

* 金融市場局(現・金融研究所)

日本銀行ワーキングペーパーシリーズは、日本銀行員および外部研究者の研究成果をと

りまとめたもので、内外の研究機関、研究者等の有識者から幅広くコメントを頂戴する

ことを意図しています。ただし、論文の中で示された内容や意見は、日本銀行の公式見

解を示すものではありません。

なお、ワーキングペーパーシリーズに対するご意見・ご質問や、掲載ファイルに関する

お問い合わせは、執筆者までお寄せ下さい。

商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行情報サービス局までご相談下さい。

転載・複製を行う場合は、出所を明記して下さい。

日本銀行ワーキングペーパーシリーズ

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長期金利変動のファクター分解∗

菊池健太郎†

【要旨】

本稿では、長期金利を構成する期待短期金利成分とタームプレミアム成

分のそれぞれを、主成分要因やマクロ経済変数要因に分解する方法を示す。

具体的には、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの下で、潜在変

数を推定し、それを長期金利の主成分に変数変換することにより、期待短

期金利成分とタームプレミアム成分それぞれを、各主成分の寄与に分解す

る。さらに、各主成分をマクロ経済変数の線形回帰モデルで表現すること

で、マクロ経済変数の期待短期金利成分やタームプレミアム成分に対する

寄与を、主成分を介して捉える。このような長期金利変動をファクターに

分解する方法を、1995年 1月から 2010年春までの約 15年間における日米

長期金利に対して適用することで、日米長期金利の特徴や過去の幾つかの

時期における長期金利変動の背景の理解を試みる。

分析の結果、(1)日米長期金利のタームプレミアム成分の変動に寄与

するイールドカーブの主成分要因が異なる点、(2)日本のタームプレミア

ム成分は、株価収益率の上昇(低下)に伴い上昇(低下)する傾向が幾つ

かの時期でみられる点、(3)米国の経済状況の強さを示す変数が改善(悪

化)する時に、当該変数は、米国長期金利のタームプレミアム成分の低下

圧力(上昇圧力)として作用する傾向が幾つかの時期でみられる点、等が

明らかになった。

キーワード: 期待仮説、期待短期金利、タームプレミアム、アフィン型ガ

ウシアン期間構造モデル、主成分、カルマン・フィルター

JEL分類番号: C13, E43, E44, G12

∗本稿の作成に当たっては、一橋大学・沖本竜義准教授、日本銀行のスタッフから有益なコメントを頂戴した。この場を借りて、深く感謝の意を表したい。ただし、あり得べき誤りは、全て筆者に帰属する。また、本稿の内容や意見は、筆者個人に属するものであり、日本銀行および金融市場局、金融研究所の公式見解を示すものではない。

†日本銀行金融市場局(現・金融研究所)Email:[email protected]

1

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1 はじめに

純粋期待仮説においては、長期金利は、将来の短期金利の期待値の期間平均値と一

致する1。しかし、この仮説が成立するならば、長期債で運用する場合の期待収益率と、

同じ期間を短期債で再投資して運用する場合の期待収益率が一致することになるが、こ

の仮説を実証的に支持する研究は多くはない。そこで、長期金利を、期待短期金利の

期間平均値(以降、これを期待短期金利成分と呼ぶ)に、将来の短期金利変動の不確

実性や期間中の流動性低下に対する期間のプレミアム(以降、これをタームプレミア

ム成分と呼ぶ)が上乗せされたものと解釈する考え方が支持されることが多い。本稿

でもこの考え方に基づき、長期金利を期待短期金利成分とタームプレミアム成分に分

解し、両成分を変動させる要因を捉えることを試みる。

長期金利を期待短期金利成分とタームプレミアム成分に分解して、長期金利の変動を

分析する試みは、先行研究でも数多くみられる。例えば、Kim and Wright (2005)は、

観測不能な状態変数(潜在変数)のみからなる 3ファクター無裁定アフィン型ガウシア

ン期間構造モデルを用いて、米国長期金利を期待短期金利成分とタームプレミアム成

分に分解し、米国長期金利の “conundrum”の説明を試みた2。また、Rudebusch et al.

(2006)は、Ang and Piazzessi (2003)で提唱された潜在変数とマクロ経済変数をモデル

に取り込んだ「マクロファイナンス・アプローチ」に基づく 2つのモデル(Bernanke

et al. (2005)とRudebusch and Wu (2008)3)を用いて、米国の長期金利を期待短期金

利成分とタームプレミアム成分に分解し、conundrumの要因解明を試みている。また、

日本の長期金利データを用いて、期待短期金利成分とタームプレミアム成分を計算し、

その変動の背景を捉えようとした先行研究としては、小田、鈴木 (2007)や Ichiue and

Ueno (2007)等がある。

本稿では、金融危機以降のデータも観測期間に加えて、日米長期金利の期待短期金

利成分とタームプレミアム成分を推定し、両国長期金利の変動要因の理解を目指す。マ

クロファイナンス・アプローチでみられるように、インフレ率やGDP成長率といった

マクロ経済変数をあらかじめモデルに取り込んで推定を行う実証分析も考えられるが、

Kim and Wright (2005)では、長期金利を決定するファクターを事前に特定しない潜

在変数のみによるアプローチが、モデルの誤った特定化に陥りにくい点を指摘してい

1本稿では、3か月金利のような満期までの期間が比較的短い年限の金利についても、瞬間スポットレートとは異なるという意味で、「長期金利」という用語を使用する場合がある。

2米国では、2004年半ばから 2006年頃まで、政策金利の引き上げにもかかわらず、長期ゾーンの金利が横ばい、時期によっては低下する場面がみられた。当時のグリンスパン FRB議長はこの現象をconundrum(謎)と呼んだ。

3Bernanke et al. (2005)はVARベースのモデルで、Rudebusch and Wu (2008)はDSGE(DynamicStochastic General Equilibrium)ベースのモデルである。両モデルとも、市場に裁定機会が存在しないことを仮定している。

2

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る。誤ったモデルにより長期金利の推定自体に大きな誤差が生じると、長期金利を構

成する期待短期金利成分やタームプレミアム成分の推定にも大きな誤差が生じる可能

性が高くなる。そこで本稿では、Kim and Wright (2005)で用いられた潜在変数のみに

よるアプローチを採用し、長期金利、および、その期待短期金利成分、タームプレミ

アム成分の推定を行う。なお、本稿では、モデルの潜在変数の数を 5変数とする。最

近の金利の期間構造モデルにおける一つのトピックとして、イールドカーブの決定に

おいて説明力の相対的に劣るファクターが、長期金利のタームプレミアムや期待超過

収益率の変動に説明力を有する可能性を検証するものがある(Cochrane and Piazzesi

(2008)、Duffee (2010)、Joslin et al. (2010))。そこで通常、イールドカーブを説明する

のに必要となる変数の数は 3つで十分といわれているが、本稿では、5つのファクター

を用いることによって、タームプレミアムの説明力の向上を試みる。

しかし、潜在変数のみによるモデルでは、推定される潜在変数の解釈が難しいとい

う問題に直面する4。そこで本稿では、Duffee (2010)で用いられている、主成分分析を

援用して潜在変数を主成分に変数変換するアプローチを採用する。当該アプローチに

よって、期待短期金利成分やタームプレミアム成分の変動が、どのような主成分の変

動に因るものなのかを特定することが可能となる。さらに、潜在変数の変数変換によ

り得られた主成分をマクロ経済変数で回帰することで、期待短期金利成分やタームプ

レミアム成分に対するマクロ経済変数の寄与を捉えることができるようになる。

本稿で提案する、長期金利の期待短期金利成分やタームプレミアム成分をイールド

カーブの主成分やマクロ経済変数の寄与に分解する手法を用いた分析の結果、以下の

点などが明らかになった。

� 日本の長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の変動は、いずれも

イールドカーブの第一主成分の変動の寄与が大きいが、米国については、期待短

期金利成分の変動はイールドカーブの第一主成分の寄与が大きい一方、タームプ

レミアム成分の変動に対しては、第二主成分や第四主成分の寄与が大きい。

� 日本の長期金利のタームプレミアム成分は、株価収益率の上昇(低下)に伴い、

上昇(低下)する傾向が幾つかの時期でみられる。

� 米国の経済状況の強さを示す変数が改善(悪化)すると、当該変数は米国長期金

利のタームプレミアム成分の低下圧力(上昇圧力)として作用する傾向が幾つか

の時期でみられる。

但し、上で示した最後の点については、04年半ばから 05年半ばにかけての conundrum

の時期には、経済状況の強さを示す変数が改善を示したものの、タームプレミアム成4この点については、Kim and Wright (2005)でも指摘されている。

3

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分低下における当該変数の説明力が、非常に弱いことも分かった。

本稿の構成をあらかじめ述べると次のようになる。まず、2節では、無裁定アフィン

型ガウシアン期間構造モデルの概要について復習する。3節では、はじめに、長期金利

を構成する期待短期金利成分とタームプレミアム成分を主成分要因に分解する方法を

説明する。次に、主成分をマクロ経済変数で線形回帰することによって、主成分を介

して、期待短期金利成分、タームプレミアム成分に対するマクロ経済変数の寄与を捉

える方法を説明する。4節では、3節で説明した手法の推定方法を説明する。5節では

推定結果を示し、日米長期金利変動を、主成分の寄与とマクロ経済変数の寄与のそれ

ぞれの観点から解釈する。6節ではまとめを行う。

2 無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデル

本節では、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの概要を述べる5。無裁定ア

フィン型ガウシアン期間構造モデルは、Duffie and Kan (1996)により導入されたもの

で、無リスクの瞬間スポットレートが、ガウシアン過程に従う複数の状態変数のアフィ

ン型関数により表現されるものである6。

まず、無リスクの瞬間スポットレート rtは、次のような状態変数Xtのアフィン型関

数として定まるとする。

rt = δ0 + δ′

1Xt  (1)

ここで、Xtは複数の状態変数をまとめたベクトルである。また、δ′1の右肩のカンマは、

δ1の転置を表す。以後、x′は xの転置を表すこととする。また、本稿では単位時間を

1か月としている。したがって、式 (1)で定義された rtは厳密な意味での「瞬間」の金

利ではなく、期間 1か月の金利を表す。

次に、状態変数Xtの変動をリスク中立測度Qと現実測度Pの双方で記述する。い

ずれも以下のようなガウシアン過程に従うとする。

Xt+1 = KQXt + ΣXεQt+1, εQ

t+1 ∼ i.i.d.N(0, I) (2)

Xt+1 = aP + KPXt + ΣXεPt+1, εP

t+1 ∼ i.i.d.N(0, I) (3)

ここでN(µ, σ2)は、期待値 µ、分散 σ2の正規分布を表し、Iは単位行列を表す。

式 (2)では状態変数Xtのリスク中立測度Q下での無条件期待値が 0と等しくなると

しているが、これは一般性を失わない仮定である。但し、リスク中立測度Q下での状

5本節で説明するモデルの日本語でのサーベイは、例えば、紅林 (2007)を参照。6Duffie and Kan (1996)では、状態変数の確率過程は連続形で記述されているが、本稿では、モデルの推定を行うことを踏まえて、離散形で議論を進める。

4

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態変数Xtの無条件期待値が 0でも、現実測度P下での期待値は一般的には0とはなら

ない。したがって、式 (3)には定数項 aPが存在するモデル設定となっている。

式 (2)と式 (3)を橋渡しするものは、リスクの市場価格である。リスクの市場価格と

は、不確実性を持つ資産価格や状態変数に対して、(リスク中立的な投資家ではなく)

リスク回避的な現実の投資家が要求する単位リスク当たりのプレミアムを表す。金利の

期間構造モデルにおけるリスクの市場価格のモデル化は、Fisher and Gilles (1996)や

Dai and Singleton (2000)により提唱された「コンプリート・アフィン型」と、Duffee

(2002)により提唱された「エッセンシャリー・アフィン型」の 2つの型が主に知られ

ているが、本稿ではエッセンシャリー・アフィン型を採用する。これは、リスクの市

場価格Λtが、Λt = λ0 + Λ1Xtと、状態変数のアフィン型関数の形で時間変動するよう

にモデル化されるものである。リスクの市場価格Λtは、εPt = εQ

t −Λtdtの関係式を満

たすので、エッセンシャリー・アフィン型におけるリスクの市場価格の仮定を式 (3)に

代入し、式 (2)と比べることで、

aP = ΣXλ0, KP = KQ + ΣXΛ1 (4)

が成立することが確かめられる。

さらに、式 (1)と式 (2)という、無リスク金利がガウシアン過程に従う状態変数のア

フィン型関数として記述されている状況の下では、割引債の対数価格は状態変数のア

フィン型関数の形で記述される。すなわち、t時点での残存期間mか月の割引債価格

p(m)t は以下のような形で記述される。

p(m)t = exp

(Am + B

mXt

)(5)

以下では、式 (5)の係数AmとBmが、mについての漸化式により逐次的に計算できる

ことを導こう。まず、市場に裁定機会が存在しないとの仮定の下、t時点での残存期間

mか月の割引債価格と、t + 1時点での残存期間m− 1か月の割引債価格の間に次の関

係が成立する。

p(m)t = EQ

t [exp(−rt) p(m−1)t+1 ]   (6)

式 (6)の右辺は以下のように具体的に計算できる。

EQt [exp(−rt) p

(m−1)t+1 ] = EQ

t [exp(−δ0 − δ′1Xt) exp(Am−1 + B

m−1Xt+1

)] (7)

= EQt [exp(−δ0 + Am−1 + (−δ′1 + B

m−1KQ)Xt + B

m−1ΣXεQt+1)]

= exp

(−δ0 + Am−1 +

1

2B

m−1ΣXΣ′XBm−1 + (B

m−1KQ − δ′1)Xt

)式 (5)と式 (7)の係数を比べると、AmとBmに関して次式が成立する。

Bm  = −δ1 + (KQ)′Bm−1, B0 = 0   (8)

5

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Am = Am−1 − δ0 +1

2B

mΣXΣ′

XBm, A0 = 0  (9)

なお、残存期間mか月のゼロ・クーポン・レート y(m)t は、式 (5)から、

y(m)t = − 1

mlog p

(m)t = − 1

mAm − 1

mB

mXt  (10)

となるので、式 (8)や式 (9)を用いて具体的に計算することができる。

3 期待短期金利成分とタームプレミアム成分のファクター

分解

前節では、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの概要を解説した。当該モデ

ルは状態変数Xtにより記述されるが、推定される状態変数の意味付けが判然としない

場合がある(本稿のモデルでは、Xtは観測不能なので、以降、Xtを潜在変数と呼ぶ)。

そこで本節では、潜在変数を主成分に変数変換することによって、潜在変数によるゼ

ロ・クーポン・レートのアフィン型関数表現を、イールドカーブの主成分を用いた表現

に変換する。これによって、長期金利を構成する期待短期金利成分とタームプレミア

ム成分の変動に対する各主成分の寄与度を計算することが可能となる。さらに本節で

は、主成分をマクロ経済変数で回帰することによって、主成分を介して、マクロ経済

変数と期待短期金利成分やタームプレミアム成分を関連付ける。この方法により、期

待短期金利成分やタームプレミアム成分に対するマクロ経済変数の寄与度を計算する

ことが可能となる。

3.1 アフィン型モデルの主成分ファクター表現

複数の残存期間に対応するゼロ・クーポン・レートの理論値を並べたベクトル(但

し、残存 jiか月のゼロ・クーポン・レート y(ji)t の無条件期待値 y(ji)との差として表し

ておく)に、ゼロ・クーポン・レートの理論値の分散共分散行列の正規直交固有ベクト

ルを並べた直交行列 P(すなわち、主成分の結合係数からなるローディング行列)を

乗じると、各主成分得点からなる縦ベクトル PCtが得られる。すなわち、

PCt =

PCt,1

PCt,2

PCt,3

... 

PCt,N

= P

y

(j1)t − y(j1)

y(j2)t − y(j2)

...

y(jm)t − y(jm)

(11)

6

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が成り立つ。ここでは、N 個の主成分得点を考えており、PCt,kは t時点での第 k主成

分得点を表している。式 (11)に式 (10)を代入すると、

PCt =

PCt,1

PCt,2

PCt,3

... 

PCt,N

= P

y

(j1)t − y(j1)

y(j2)t − y(j2)

...

y(jm)t − y(jm)

= P

− 1

j1B

′j1

− 1j2

B′j2

...

− 1jm

B′jm

(Xt − X)  (12)

が得られる(ここで、Xは潜在変数Xtの無条件期待値を表す)。ここで、

P

− 1

j1B

′j1

− 1j2

B′j2

...

− 1jm

B′jm

≡ P , P (Xt − X) ≡ Zt  (13)

と置くと、式 (12)と式 (13)から、Ztはイールドカーブの主成分得点であることが分か

る。したがって、式 (13)を用いて潜在変数XtをZtに変数変換することによって、主

成分得点が得られる(以下では、Ztを主成分ファクターと呼ぶ)。

ここで、期待短期金利成分とタームプレミアム成分を主成分ファクターで表現する

ために必要となる公式をあらかじめ用意しておく。そのために、式 (3)で設定した潜在

変数Xtの確率過程を、式 (13)を用いてZtに関する確率過程に書き直す。すると、

Zt+1 = PKPP−1Zt + PΣXεPt+1 (14)

が得られる。この式 (14)を用いると、次の 3.2節で、期待短期金利成分とタームプレ

ミアム成分の主成分表現の導出に頻繁に用いられる公式、

EPt [Zt+s] = P (KP)sP−1Zt (15)

が示される。

3.2 期待短期金利成分とタームプレミアム成分の主成分分解

長期債に投資する場合の期待収益は、短期債の再投資を繰り返す場合の期待収益に、

短期金利の不確実性に伴うプレミアム(タームプレミアム)が上乗せされたものであ

るとの考え方が支持されることが多い。この考え方に則れば、長期金利は期待短期金

利成分とプレミアム成分から構成されると解釈される。本節では、長期金利を構成す

るこれらの成分の変動要因を捉えるため、主成分ファクターにより両要素を表現する。

7

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まず、短期金利の期待値の期間mか月の平均値Exshort(m)t を、3.1節で導入した主

成分ファクターZtにより表してみよう。これは、式 (15)を用いて以下のように計算さ

れる。

Exshort(m)t =

1

m

m−1∑i=0

EPt [rt+i] = δ0 +

δ1

m

m−1∑i=0

EPt [Xt+i]

= δ0 + δ1X +δ1

mP−1

m−1∑i=0

EPt [Zt+i] (16)

= r +δ1

m

m−1∑i=0

(KP)iP−1Zt 

ここで、1行目 2番目の等式は式 (1)、2行目の等式は式 (13)、3行目の等式は式 (15) を

用いた。また、r = δ0 + δ1Xであり、短期金利 rtの無条件期待値を表す。

式 (16)を用いると、期待短期金利成分に対する各主成分ファクターの寄与度と分散分

解が計算できる。まず、式 (16)の期待短期金利成分における第 j主成分に関する項は、(δ1

m

m−1∑i=0

(KP)iP−1

)j

Zt,j ≡ Ψ(m)j Zt,j (17)

となる。上式各項の右下添え字 jは、それぞれのベクトルの第 j成分を表す。式 (17)

を、以下では簡単のために、期待短期金利成分に対する第 j主成分の寄与度と呼ぶ。ま

た、期待短期金利成分の主成分ファクターによる分散分解については次式が成立する。

V ar

(1

m

m−1∑i=0

EPt [rt+i]

)= V ar

(N∑

j=0

Ψ(m)j Zt,j

)=

N∑j=0

(Ψ(m)j )2V ar(Zt,j) (18)

ここで、V ar(Zt,j)は、第 j主成分ファクターZt,jの時系列から計算される分散を表す。

N は考慮している主成分ファクターの数である。また、式 (18)の 2番目の等号では、

異なる主成分ファクターの間の相関係数は 0であるとの事実を用いた。式 (18)から、

期待短期金利成分の変動に対する第 j主成分の変動の寄与は、

(Ψ(m)j )2V ar(Zt,j)∑N

l=1(Ψ(m)l )2V ar(Zt,l)

(19)

となる。

次に、タームプレミアム成分について、主成分ファクターによる表現を導出しよう。

まず、タームプレミアムには幾つか異なる定義が知られているが、本稿では、以下で

定義するイールドプレミアムと呼ばれるものを扱う7。t時点でのmか月のイールドプ7タームプレミアムとして、本稿で扱うイールドプレミアム以外には、将来の t + s時点スタートのフォワードレート(ft,t+s)と、t + s時点での P測度下での短期金利の期待値(EP

t [rt+s])との差として定義されるフォワードプレミアムが知られている(Kim and Orphanides (2007)参照)。

8

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レミアム yp(m)t は、次のように、観測される期間mか月の長期金利と将来の期待短期

金利の期間平均値(期待短期金利成分Exshort(m)t )の差として定義される。すなわち、

yp(m)t = y

(m)t − 1

m

m−1∑i=0

EPt [rt+i] + η

(m)t (20)

と定義される。ここで、y(m)t は理論イールド、η

(m)t は観測誤差である。このように定

義されるイールドプレミアム(以下、タームプレミアム)成分を主成分ファクターZt

で表現するため、理論イールドに対する関係式を以下で用意しておく。すなわち、式

(13)と式 (16)を用いると、

y(m)t = − 1

mAm − 1

mB

mXt = − 1

mAm − 1

mB

m(P−1Zt + X)

= (− 1

mAm − 1

mB

mX) − 1

mB

mP−1Zt  (21)

= y(m) − 1

mB

mP−1Zt

という、理論イールドに関する関係式が成り立つ。ここで、y(m)は y(m)t の無条件期待

値を表す。上の式 (21)と、式 (8)、式 (10)、式 (20)、を用いると、下式のようなターム

プレミアム yp(m)t の主成分ファクター表現が得られる。

yp(m)t = y(m) − r − δ1

m

m−1∑i=0

((KP)i − (KQ)i)P−1Zt + η(m)t (22)

したがって、タームプレミアム成分に対する第 j主成分の寄与度は、式 (22)から、(−δ1

m

m−1∑i=0

((KP)i − (KQ)i)P−1)

)j

Zt,j ≡ Φ(m)j Zt,j (23)

と定義できる。また、タームプレミアム成分の主成分ファクターによる分散分解は、式

(18)と同様の計算によって、

V ar(yp

(m)t

)= V ar

(N∑

j=0

Φ(m)j Zt,j + η

(m)t

)(24)

となるので、タームプレミアムの変動に対する第 j主成分の変動の寄与は、

(Φ(m)j )2V ar(Zt,j)

V ar(∑N

l=0 Φ(m)l Zt,l + η

(m)t

)  (25)

と計算される。

9

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3.3 期待短期金利成分とタームプレミアム成分のマクロ経済変数分解

3.2節では、長期金利を構成する期待短期金利成分とタームプレミアム成分を主成分

ファクターによって表現し、期待成分やプレミアム成分の変動に対する各主成分の寄

与を表す式を導出した。これにより、主成分ファクターの変動の観点から、期待短期

金利成分やタームプレミアム成分の変動を理解することが可能となった。さらに本節

では、仔細に長期金利の変動を理解するため、主成分ファクターの変動をマクロ経済

変数の変動で説明する。先行研究でも、イールドカーブの主成分の変動をマクロ経済

変数の変動で説明するものが幾つかみられている。例えば、Diebold et al. (2006)は、

イールドカーブの第一主成分である水準ファクターはインフレ率との相関が高く、第

二主成分である傾きファクターは、設備稼働率といった景気循環を表す変数と相関が

高いことを示した。また、Dewachter and Lyrio (2006)は、水準ファクターが長期のイ

ンフレ期待から影響を受ける一方、傾きファクターが短期の景気循環から影響を受け

ることを示した。藤井、高岡 (2008)は、Diebold et al. (2006)の手法を日本の長期金

利データに応用して主成分を推定し、各主成分とマクロ経済変数の関連について分析

した。彼らは、日本のイールドカーブの水準ファクターはインフレ率や公定歩合と正

の相関があり、傾きファクターは株価収益率や米国金利の長短金利差との相関が高い

こと等を示した。本稿でもこれらの先行研究を踏まえ、各主成分ファクターを被説明

変数とし、マクロ経済変数を説明変数とする線形回帰モデルを推定することによって、

主成分ファクターの変動をマクロ経済変数の変動で捉えることにする。さらに、長期

金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分が、主成分ファクターの関数として

表現されていたことに鑑みると、主成分ファクターをマクロ経済変数で回帰すること

で、長期金利を構成する両成分の変動を、主成分ファクターを介して、マクロ経済変

数の変動で捉えることも可能となる。

本稿では、第j主成分ファクターZt,jを被説明変数、M個のマクロ経済変数(macrot,i (i =

1, . . . ,M)とする)を説明変数とする線形回帰モデルを扱う。回帰係数の時間変化を捉

えるため、ここでは、推定に用いる期間を1か月ずつずらしながら回帰分析を繰り返

す8。具体的には、時点 tnの後方mか月の期間(すなわち、時点 tn−mから時点 tnまで

の期間)について以下の回帰式を推定する。

Zt,j = βj0 +

M∑i=1

βji macrot,i + uj

t , (26)

ujt = ρjuj

t−1 + ϵjt , ϵj

t ∼ i.i.d.N(0, σ2j ), t ∈ [tn−m, tn].

8ここでは、回帰係数を状態変数とする可変係数モデルによるモデル化も考えられる。しかし、可変係数モデルを用いた分析を別途行ったところ、オーバーフィッティングに陥っている可能性が高かったことから、本稿ではローリング回帰分析を採用した。なお、可変係数モデルの推定結果がオーバーフィッティングに陥り易い点は大屋 (1992)で指摘されている。

10

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式 (26)では、回帰式の残差 utが自己相関を有する可能性を考慮して、utがAR(1)過

程に従うモデルとした。

式 (26)の係数の推定値を、

βji ≡ βj

tn,i i = 0, 1, . . . ,M

ρj ≡ ρjtn

と置く。すると、Ztn,jの推定値 Ztn,jは、

Ztn,j = βjtn,0 +

M∑i=1

βjtn,imacrot,i (27)

となる。式 (27)から、時点 tにおける第 j 主成分ファクター Zt,j に対する説明変数

macrot,iの寄与度を、

βjt,imacrot,i (28)

と定義する。

ここで、期待短期金利成分とタームプレミアム成分が各主成分ファクターのアフィ

ン型関数として記述されていたこと(式 (17)、式 (23)参照)に鑑みると、主成分ファ

クターをマクロ経済変数によって説明する式 (26)を用いて、期待短期金利成分とター

ムプレミアム成分のそれぞれに対する、マクロ経済変数の寄与を表す式を導出できる。

まず、t時点での期間mか月の期待短期金利成分 Exshort(m)t については、式 (16)、

式 (17)、式 (26)から、

Exshort(m)t = r +

N∑j=1

Ψ(m)j Zt,j = r +

N∑j=1

Ψ(m)j (βj

t,0 +M∑i=1

βjt,imacrot,i + uj

t)

= r +N∑

j=1

Ψ(m)j βj

t,0 +M∑i=1

(N∑

j=1

Ψ(m)j βj

t,i

)macrot,i +

N∑j=1

Ψ(m)j uj

t (29)

が成立する。したがって、式 (29)から期待短期金利成分に対するマクロ経済変数macrot,i

の寄与度を、 (N∑

j=1

Ψ(m)j βj

t,i

)macrot,i ≡ β

(m)t,i macrot,i (30)

と定義できる。ここで、式 (30)の β(m)t,i を、期待短期金利成分のマクロ経済変数macrot,i

に対する感応度と呼ぶことにする。また、マクロ経済変数以外の「その他要因」につ

いては、式 (29)から、

N∑j=1

Ψ(m)j (βj

t,0 + ujt) =

N∑j=1

Ψ(m)j (βj

t,0 + Zt,j − Zt,j)

11

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と定義する。

一方、t時点での期間mか月のタームプレミアム成分 yp(m)t についても、式 (22)、式

(23)、式 (26)を用いて式 (29)と同様の式が導出可能である。すなわち、

yp(m)t = y(m) − r +

N∑j=1

Φ(m)j Zt,j + η

(m)t (31)

= y(m) − r +N∑

j=1

Φ(m)j βj

t,0 +M∑i=1

(N∑

j=1

Φ(m)j βj

t,i

)macrot,i +

N∑j=1

Φ(m)j uj

t + η(m)t

が成立する。ここで η(m)t はイールド y

(m)t の観測誤差を表す。式 (31)から、タームプレ

ミアム成分に対するマクロ経済変数macrot,iの寄与度を、(N∑

j=1

Φ(m)j βj

t,i

)macrot,i ≡ β

(m)t,i macrot,i (32)

と定義できる。ここで、式 (32)の β(m)t,i を、タームプレミアム成分のマクロ経済変数

macrot,iに対する感応度と呼ぶことにする。また、タームプレミアム成分に対するマク

ロ経済変数以外の「その他要因」については、

N∑j=1

Φ(m)j (βj

t,0 + ujt) =

N∑j=1

Φ(m)j (βj

t,0 + Zt,j − Zt,j)

と定義する。

4 モデルの推定

本節では、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの潜在変数とモデルパラメー

タの推定方法を示す。また、3.3節では、期待短期金利成分とタームプレミアム成分の

マクロ経済変数分解を示したが、本節では、マクロ経済変数分解に必要となる主成分

ファクターをマクロ経済変数によって回帰推定する方法を説明する。

4.1 無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの推定

無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルは、状態変数モデルの一種である。こ

のモデルにおける潜在変数とモデル・パラメータは、カルマン・フィルターと最尤法

により推定することができる。ここでは、その手法について説明する。

12

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4.1.1 カルマン・フィルター

無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルは、潜在変数の変動を表す遷移方程式と

潜在変数と観測値を関係づける観測方程式から構成される状態変数モデルである。遷

移方程式は式 (3)として記述され、潜在変数のファクター数は、1節でも述べたように、

イールドカーブの説明力が相対的に低いファクターが、タームプレミアム成分の決定

に影響を与える可能性を考慮して 5変数とする。観測方程式は式 (10)であり、6か月、

2年、5年、10年、20年のゼロ・クーポン・レートを観測値として用いる。但し、いず

れの年限のゼロ・クーポン・レートとも観測誤差を伴うと仮定する。観測方程式を具

体的に記述すると下式となる。

yt =

y(6)t

y(24)t

y(60)t

y(120)t

y(240)t

= −

16A6

124

A24

160

A60

1120

A120

1240

A240

16B′

6

124

B′24

160

B′60

1120

B′120

1240

B′240

Xt,1

Xt,2

...

Xt,5

+ ηt (33)

≡ A + B′Xt + ηt

ここで、観測誤差を表す項 ηt = (ηt,1, ηt,2, · · · , ηt,5)′は i.i.d.N(0, hI5)に従うとする(I5

は 5 × 5の単位行列を表す)。

次に、カルマン・フィルターのアルゴリズムを示す。時刻 tまでに得られる情報集合を

Itとし、Itを条件とする潜在変数の条件付期待値と条件付分散を考える。記号の簡略化の

ため、E[Xt|It−1] ≡ Xt|t−1、V ar[Xt|It−1] ≡ Pt|t−1、E[Xt|It] ≡ Xt|t、V ar[Xt|It] ≡ Pt|t

とあらかじめ記号を定義しておく(Xt|tはフィルター、Xt|t−1は予測値と呼ばれる)。

カルマン・フィルターを用いると、時刻 tについて、逐次的にXt|t−1、Pt|t−1、Xt|t、Pt|t

を推定することが可能となる。カルマン・フィルターは、以下で示すように、潜在変

数の条件付期待値と条件付分散共分散行列の初期化、予測、更新の 3つのプロセスか

らなる。

まず、初期化とはX0|0と P0|0を与えるものである。

X0|0 := X = (I − KP)−1aP, P0|0 := V ar(Xt)

と、無条件期待値と無条件分散を置く場合が一般的である9。

9Xtの無条件分散共分散行列 V ar(Xt)の具体的な計算方法については、例えば、Hamilton (1994)の第 13章を参照のこと。

13

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次に、時刻 t − 1から時刻 tへの予測を示す。Xt−1|t−1と Pt−1|t−1が与えられた下、

Xt|t−1 = aP + KPXt−1|t−1

Pt|t−1 = KPPt−1|t−1KP′

+ ΣXΣ′X

yt|t−1 := A + B′Xt−1|t−1

Ft := B′Pt|t−1B + H

と、Xt−1|t−1、Pt−1|t−1から、Xt|t−1、Pt|t−1を計算することができる。また、yt|t−1は、

It−1が与えられた下での ytの条件付期待値、Ftは条件付分散となっている。

さらに、時刻 tでの更新は次式で与えられる。

Kt = Σt|t−1BF−1t

Xt|t = Xt|t−1 + Kt(yt − yt|t−1)

Pt|t = Pt|t−1 − B′Pt|t−1

t = 0からデータ観測期間の最終時点 T まで、上述の予測と更新を繰り返す。このよ

うにして得られたXt|tは、時刻 tまでの情報 Itが与えられた下でのXtの最小分散推定

量となっている。

4.1.2 最尤法

カルマン・フィルターの議論を用いると、時刻 t− 1までの情報 It−1に基づく t時点

でのゼロ・クーポン・レート ytの条件付分布が、平均 yt|t−1、分散 Ftの正規分布に従

うことが証明される。したがって、It−1での ytの条件付密度関数 ft|t−1(yt)は、

  ft|t−1(yt) =((2π)5/2

√|Ft|

)−1

exp

(−1

2(yt − yt|t−1)

′F−1t (yt − yt|t−1)

)となる。さらに、パラメータΘが与えられた下では、対数尤度 log L(Θ)は、

log L(Θ) =T∑

t=1

log ft|t−1(yt)

= −5T

2log 2π − 1

2

T∑t=1

(log |Ft| + (yt − yt|t−1)

′F−1t (yt − yt|t−1)

)となる。最後に、モデルパラメータの推定値を求めるためには、対数尤度関数 log L(Θ)

を最大化するようなΘを探すことになる。すなわち、

Θ∗ = arg maxΘ

log(L(Θ))

が、最適なモデルパラメータとなる。

14

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4.1.3 モデルパラメータの設定

ここでは、本稿におけるモデルパラメータの設定について説明する。まず、全ての

モデルパラメータを自由パラメータとして扱うと、パラメータの過少識別を引き起こ

す点に注意する必要がある。Dai and Singleton (2000)では、同一の債券価格を導く状

態変数とモデルパラメータの組の間の変数変換(不変変換と呼ばれる)を用いて、過

剰識別にも過少識別にも陥らないパラメータ設定を示した。そこで本稿のモデルでも、

以下で示すような不変変換に基づくパラメータ設定とする。

まず、式 (3)の攪乱項のボラティリティ行列ΣXについては、不変変換により、5× 5

の単位行列 I5を用いて、

ΣX = 0.001I5

とする。

また、式 (3)のKPについては、不変変換により下三角行列とする。すなわち、

KP =

KP1,1 0 0 0 0

KP2,1 KP

2,2 0 0 0

KP3,1 KP

3,2 KP3,3 0 0

KP4,1 KP

4,2 KP4,3 KP

4,4 0

KP5,1 KP

5,2 KP5,3 KP

5,4 KP5,5

とする。さらに、潜在変数の確率過程が弱定常過程に従うことを保証するため、KPの

固有値がすべて単位円内に存在するような制約を加える。今、KPは下三角行列なの

で、当該行列の固有値は行列の対角成分と等しくなる。したがって、KPの全ての固有

値が単位円内に存在する十分条件は、KPi,iに対してある実数 κiが存在して、

KPi,i =

κ2i

1 + κ2i

が成立することとなる。そこで、KPi,iを上式のように κiの式で表しておく。

不変変換により、推定すべきパラメータの数は全てのモデルパラメータを自由パラ

メータとして扱う場合と比べて減少するが、それでも本稿のような潜在変数の数が 5つ

の場合には、推定すべきパラメータ数が多くなる。そこで、本稿の分析では、推定パ

ラメータ数を減らすため、リスクの市場価格に関するパラメータについて、式 (4) の

Λ1が対角行列との制約を置くことにする。すなわち、

Λ1 =

Λ1,1 0 0 0 0

0 Λ1,2 0 0 0

0 0 Λ1,3 0 0

0 0 0 Λ1,4 0

0 0 0 0 Λ1,5

15

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と仮定する。

以上、本稿で推定すべきモデルパラメータを列挙すると、

δ0, δ1,1, δ1,2, δ1,3, δ1,4, δ1,5, κ1, KP2,1, κ2, K

P3,1, K

P3,2, κ3,

KP4,1, K

P4,2, K

P4,3, κ4, K

P5,1, K

P5,2, K

P5,3, K

P5,4, κ5

Λ1,1, Λ1,2, Λ1,3, Λ1,4, Λ1,5, λ0,1, λ0,2, λ0,3, λ0,4, λ0,5, h

となり、計 32個のパラメータを推定することになる。

4.1.4 使用データ

無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの潜在変数とモデルパラメータの推定

は、日米のイールドカーブについて、1995年 1月から 2010年 4月までの月末データを

用いる。金利データは、ゼロ・クーポン・レートを使用する。使用するゼロ・クーポ

ン・レートの年限は、日米とも、0.5年、2年、5年、10年、20年とする。日本のゼロ・

クーポン・レートはマカロフの方法(McCulloch (1975))により推定したものを用い

る。一方、米国については、Gurkaynak et al. (2006)により計算されたゼロ・クーポ

ン・レートを使用する。

4.2 マクロ経済変数による主成分ファクターの線形回帰推定

3.3節ではイールドカーブの主成分ファクターを被説明変数とし、マクロ経済変数を

説明変数とする線形回帰を用いて、期待短期金利成分とタームプレミアム成分に対す

るマクロ経済変数の寄与度を計算する方法を示した。ここでは、3.3節で示した線形回

帰の推定方法を示す。線形回帰における説明変数が日米で異なることから、以下では、

推定方法を日米で別々に説明する。

4.2.1 日本のイールドカーブの主成分ファクターの線形回帰推定

日本のイールドカーブの主成分ファクターを線形回帰する際の説明変数は、国庫短

期証券 3か月物利回り(09年 1月以前は、政府短期証券 3か月物利回り。以下では、簡

単のため、短期国債利回りと呼ぶ)、CPIの前年同月比変化率、株価収益率(日経平均

16

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(月末値)の前年同月比変化率)の 3系列とする10。回帰式を示すと、

Zt,j = βj0 + βj

1TBt + βj2∆CPIt−1 + βj

3∆St + ujt

ujt = ρjuj

t−1 + ϵjt , ϵj

t ∼ i.i.d.N(0, σ2j ), j = 1, 2, . . . , 5 (34)

となる。ここで、Zt,jは日本のイールドカーブの第 j主成分ファクター、TBtは t時点

での短期国債利回り、∆CPIt−1は t − 1時点での CPIの前年同月比変化率、∆Stは、

t − 12から tの期間の日経平均株価月末値の変化率としている。なお、t時点における

主成分ファクターを説明するのに、t− 1時点でのCPI変化率を説明変数としている理

由は、CPIが 1か月のラグを伴って公表されることを考慮したものである。

説明変数の選択においては、イールドカーブの主成分ファクターに対するマクロ経

済変数のより本源的なショックを捉えるために、マクロ経済変数の主成分得点を説明変

数とすることも考えられる。実際、4.2.2節で後述する米国における線形回帰推定にお

いては、FF金利、CPI変化率、鉱工業生産指数変化率の主成分得点を説明変数として

いる。しかし、日本の場合には、上述の 3変数間の相関が米国ほど高くなかったこと

から、上述の 3変数をそのまま説明変数として採用することとした11。

既に 3.3節でも触れたが、式 (34)では、推定誤差 utがAR(1)過程に従うと仮定して

いる。このような、誤差項が AR過程に従う場合の推定方法として、本稿では、コク

ラン=オーカット法を用いることにする12。本稿では、回帰係数の時間変化を捉えるた

め、回帰推定における観測期間を 48か月とし、1998年 12月から 1か月ずつずらしなが

ら 2010年 4月までローリング回帰を行う。例えば、1998年 12月(1998年 12月を 1995

年 1月から 47か月後という意味で t47と置く)については、後方 48か月間(1995年 1

月~1998年 12月)について、式 (34) に則り回帰係数を推定する。得られた回帰係数

β = (β0, β1, β2, β3) について、改めて βt47 = (βt47,0, βt47,1, βt47,2, βt47,3) と置く。そして、

1999年 1月(すなわち、t48)以降についても、同様の推定を繰り返していく。これに

より、回帰係数の時系列 βtを求めることができ、結果として、式 (30)や式 (32)を用い

て、期待短期金利成分やタームプレミアム成分に対するマクロ経済変数の寄与度を計

算することが可能となる。

10日本の鉱工業生産指数の前年同月比変化率を説明変数に加えてモデルの推定を行ったところ、当該指標の回帰係数が有意となる時期が限られていた。また、鉱工業生産指数変化率は、時期によっては(例えば、リーマンショック以降)、株価収益率との相関係数が 70%近い高い相関を示した。以上を踏まえて、説明変数から鉱工業生産指数変化率を外すこととした。

111995年 1月から 2010年 4月までの期間における、短期国債利回りと CPI変化率の相関係数は 36.1%、短期国債利回りと株価収益率の相関係数は −16.3%、CPI変化率と株価収益率の相関係数は−20.1%だった。

12コクラン=オーカット法については、Hamilton (1994)等を参照のこと。

17

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4.2.2 米国のイールドカーブの主成分ファクターの線形回帰推定

米国のイールドカーブの主成分ファクターを線形回帰する際の説明変数を、FF金利、

CPIの前年同月比変化率、鉱工業生産指数の前年同月比変化率の主成分得点とする。

FF金利、CPI、鉱工業生産指数はお互い相関が高いと一般的にいわれており、多重共

線性の問題をあらかじめ回避するために、ここでは、3つのマクロ経済変数の主成分

得点を説明変数とすることとした13。3つのマクロ経済変数の主成分分析におけるロー

ディングと主成分得点は図 1のようになった。第一主成分(以下、マクロ第一主成分と

呼ぶ場合がある)は、FF金利、CPI変化率、鉱工業生産指数変化率の全てが同一方向

に変動することを表すファクターである。第二主成分(以下、マクロ第二主成分と呼

ぶ場合がある)は、CPI変化率の大きな変動と同時に、FF金利とCPI変化率が逆方向

に変動することを表すファクターである。第三主成分(マクロ第三主成分)は、鉱工業

生産指数変化率の大きな変動と同時に、FF金利と鉱工業生産指数が逆方向に変動する

ことを表すファクターである。それぞれの主成分の説明力を計算すると、マクロ第一

主成分は 67.3%、マクロ第二主成分は 22.3%、マクロ第三主成分は 10.4%となった。

これらのマクロ経済変数の主成分得点を説明変数として、イールドカーブの主成分

を線形回帰する。回帰式を示すと、

Zt,j = βj0 + βj

1PCmacrot,1 + βj2PCmacrot,2 + βj

3PCmacrot,3 + ujt

ujt = ρjuj

t−1 + ϵjt , ϵj

t ∼ i.i.d.N(0, σ2j ), j = 1, 2, . . . , 5 (35)

となる。ここで、PCmacrot,iはマクロ第 i主成分得点を表す。式 (35)の推定は、日本

の場合と同様にコクラン=オーカット法により行う。また、日本の場合と同様に、回

帰推定の観測期間を 48か月とし、1998年 12月から 1か月ずつずらしながら 2010年 4

月までローリング回帰を行う14。これにより、回帰係数の時系列 βtを求めることがで

き、期待短期金利成分やタームプレミアム成分に対するマクロ経済変数の寄与度を計

算することが可能となる。

5 分析結果

本節ではまず、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの推定結果と、マクロ経

済変数によるイールドカーブの主成分ファクターに対する線形回帰の推定結果を示す。

131995年 1月から 2010年 4月までの期間について FF金利、CPI、鉱工業生産指数の前年同月比変化率の相関係数を計算したところ、FF金利とCPI変化率の相関係数 36.6%、FF金利と鉱工業生産指数変化率の相関係数は 67.8%、CPIと鉱工業生産指数変化率については 46.7%となった。

14回帰推定における観測期間を日米とも 48か月としたが、幾つか観測期間を変えて推定しても、推 定結果が大きく変わることは無かった。

18

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そして、日米長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分のそれぞれに対し

て、主成分ファクター分解の観点から日米長期金利変動の特徴を明らかにする。さら

に、期待短期金利成分やタームプレミアム成分のマクロ経済変数分解の観点から、幾

つかの時期について、日米長期金利の変動要因を分析する。

5.1 無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの推定結果

日米長期金利の時系列データそれぞれに対して、無裁定アフィン型ガウシアン期間

構造モデルの推定を行った。表 1 は、日米長期金利に対するモデルパラメータの推定

値を示している。図 2と図 3は、日本の長期金利について、観測値とモデル推定値を

並べたグラフと推定誤差を示したグラフである。図 4と図 5は、米国についての同様

のグラフである。これらをみると、日米長期金利に対する推定精度は良好である。日

本については、どの年限においてもほとんどの時期で 4bp以内の誤差に収まっている。

米国については、概ね 8bp以内の範囲に収まる結果となった。

但し、図 3と図 5をみると、誤差に自己相関が生じており、観測誤差が独立、同分布

に従うとした仮定が成立していないことに注意する必要がある。そこで、式 (33)の観

測誤差 ηがAR過程に従うとあらかじめ仮定して推定することが対処法の一つとして

考えられるが、推定が複雑になるほか、本稿の推定でも観測誤差項が既に十分に小さ

く推定されており、誤差項が AR過程に従うとの修正を行って得られる観測誤差項と

大きな差異は生じないと考えられる。また、観測誤差が AR過程に従うという修正を

仮に行っても、その観測誤差項は状態変数の決定に影響を与えない。したがって、誤

差項の修正の有無によらず、誤差項は、期待短期金利成分ではなく、タームプレミア

ム成分として必ず認識されることになる。以上を踏まえると、本稿のモデルによる観

測誤差が自己相関を有することが、以下で示す期待短期金利成分とタームプレミアム

成分の分析に与える影響は限定的である可能性が高いといえる。

また、本稿のようなガウシアン過程をベースとするモデルの場合、短期ゾーンの金

利のモデルによる推定値がゼロを下回ってしまう可能性が懸念される。特に、日本の

ような、長期間低金利政策を採用してきた国については、この点が懸念される。実際、

推定された日本の瞬間スポットレート(1か月金利)rtをみると、日本銀行によるゼロ

金利政策、量的緩和政策期間中にゼロを下回るケースがみられた(図 6)。但し、推定

された rtはマイナス方向に最大で−0.1035%までの低下に留まり、大凡ゼロ近傍で推

移する推定結果を得た。また、後節で期待短期金利成分を計算するが、その際、本稿

のモデルでは、将来の短期金利がゼロを下回る可能性は排除されておらず、期待短期

金利成分が低め(すなわち、タームプレミアム成分が高め)に推定されている可能性

は否めない。この点については、本稿モデルの欠点といえ、後節で示す期待短期金利

19

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成分とタームプレミアム成分の推定値を用いた分析においては、留意しなければなら

ない点といえる。この点を克服するより精緻な分析のためには、金利の非負制約を考

慮した発展的なモデルによる分析が必要となる15。

5.2 マクロ経済変数による線形回帰モデルの推定結果

本節では、4.2節で推定方法を説明した、主成分ファクターを被説明変数、マクロ経

済変数を説明変数とする線形回帰モデルの推定結果を示す。

初めに、線形回帰モデルによる推定を行う前に、イールドカーブの主成分ファクター

を求めた。図 7は、変換に用いた日本のイールドカーブにおける主成分のローディン

グ行列を表し、図 8は、日本の主成分ファクターの推移を表している。また、図 9、図

10は、米国長期金利の主成分に関する同様の図である。図 7、図 9をみると、日米い

ずれにおいても、第一主成分はイールドカーブの水準、第二主成分は傾き、第三主成

分は曲率を表すことが確認できる。

計算された主成分ファクター(第一主成分~第五主成分)に対して、4.2節に則り、

線形回帰モデルを推定した。推定結果は、日本については表 2、米国については表 3に

示した。また、日米の 10年長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分のマ

クロ経済変数に対する感応度の推定結果を、日本については、表 4(感応度の推定値の

期間平均値等)、図 11(期待短期金利成分の感応度の推移)、図 12(タームプレミアム

成分の感応度の推移)に、米国については、表 5(感応度の推定値の期間平均値等)、

図 13(期待短期金利成分の感応度の推移)、図 14(タームプレミアム成分の感応度の

推移)に示した。

まず、日本の期待短期金利成分とタームプレミアム成分のマクロ経済変数に対する

感応度の推定結果をみると、表 4から、平均的には、株価収益率に対する両成分の感

応度が有意な結果となっていることが分かる。期待短期金利成分の株価収益率に対す

る感応度の推定値は、図 11から、05年半ばから 10年初にかけて有意となっているこ

とが確認できる。また、タームプレミアム成分の株価収益率に対する感応度の推定値

は、図 12から、殆どの時期で有意となっていることも分かる。短期国債利回りに対す

る期待短期金利成分、プレミアム成分の感応度についても、図 11、図 12 から、04年

半ばから 06年半ばまでの時期を除けば、有意となっている。CPI変化率に対する両成

15金利の非負制約を考慮した金利の期間構造モデルが幾つか知られている。例えば、Black (1995)、Gorovoi and Linetsky (2004)、Ichiue and Ueno (2007)では、短期金利を定める潜在変数として『シャドーレート』という概念を導入したモデル化を行っており、金利は必ずゼロ以上となる。また、Ahn et al. (2002)や Leippold and Wu (2003)などでは、短期金利を潜在変数の 2次関数としてモデル化することによって、金利が必ずゼロ以上となるモデル(2次期間構造モデル(Quadratic TermStructure Model)と呼ばれる)が扱われている。

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分の感応度の推定値については、99%信頼区間でみると、殆どの時期で有意にならな

かったが、90%信頼区間でみると、タームプレミアム成分の同変数に対する感応度は、

06年半ばから 10年初まで有意となった。

次に、米国長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分のマクロ経済変数

に対する感応度の推定結果をみてみる。表 5からは、平均的には、マクロ第一主成分

ファクターに対する期待短期金利成分の感応度の推定値が有意となっていることが分

かる。実際に、図 13で期待短期金利成分の感応度の推移をみると、マクロ第一主成分

ファクターに対する感応度の推定値は多くの時期で有意となっていることが確認でき

る。また、期待短期金利成分のマクロ第二主成分ファクターに対する感応度は、05年

半ば以降は有意となった。しかし、マクロ第三主成分ファクターに対する同成分の感応

度は、殆どの時期で有意とはならなかった。一方、タームプレミアム成分の感応度の

推移を図 14で確認すると、マクロ第一主成分ファクターに対する感応度の推定値は、

05年春頃から 07年末にかけて有意となった。マクロ第二主成分ファクターに対する同

成分の感応度は、05年夏以降の多くの時期で有意となった。マクロ第三主成分に対す

るタームプレミアム成分の感応度については、03年秋頃から 05年半ばにかけての時期

と、08年秋から 09年末にかけての時期に有意となった。

以上、日米長期金利の期待成分、プレミアム成分のマクロ経済変数に対する感応度

の推定結果をみてきたが、この結果を踏まえ、5.4.1節、5.4.2節では、幾つかの時期に

焦点を当て、長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の変動に対する各

マクロ経済変数の寄与を調べることで、長期金利変動の背景を解釈することを試みる。

5.3 主成分ファクター分解の観点からみた日米長期金利の特徴

本節では、3.2 節で説明した、長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分

に対する主成分ファクター分解の観点から、日米長期金利の特徴を明らかにする。

まず、図 15は、式 (16)と式 (22)を用いて、日本の長期金利を期待短期金利成分と

タームプレミアム成分に分解した結果を示したものである。また、表 6は、日米の期待

短期金利成分とタームプレミアム成分について、平均値と標準偏差、期待短期金利成

分とタームプレミアム成分の間の相関係数を年限毎に示したものである。表 6をみる

と、まず、日本の長期金利の期待短期金利成分は米国と比べて低く推定されているこ

とが分かる。例えば、10年の期待短期金利成分の 95年 1月~10年 4月までの期間平均

値は 0.348%であり、10年長期金利に占める割合は小さい。これは、日本の政策金利

が、ゼロ金利政策や量的緩和政策など、ゼロで推移していた期間が長かったことから、

短期金利の期待値が低水準で推定された結果と考えられる。また、表 6をみると、日

本の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の相関係数は 80%を超える高い値を示

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している。この理由については、以下で示すように、期待短期金利成分とタームプレ

ミアム成分を主成分ファクターで分散分解することによって明らかになる。まず、期

待短期金利成分の分散分解の結果を金利の年限を横軸にとってプロットしたのが図 16

である。これをみると、日本の期待短期金利成分については、金利の年限によらずに、

第一主成分ファクター、すなわち、イールドカーブの水準ファクターの変動が全体の

変動の 60%~80%を占めていることが分かる。一方、タームプレミアム成分の分散分

解については、いかなる年限においても、水準ファクターの寄与が一番大きいことが

分かる(図 17)。日本の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の相関係数が高い値

を示す点を上で指摘したが、これは水準ファクターの変動が期待短期金利成分とター

ムプレミアム成分双方の変動に大きく寄与している結果であることが分かった。

次に、米国の長期金利の特徴を主成分ファクター分解の観点から捉えてみる。図 18

では、米国の長期金利を期待短期金利成分とタームプレミアム成分に分解している。こ

れをみると、日本の場合(図 15)と比べて、米国の長期金利は期待短期金利成分の占

める割合が大きいことがみてとれる。これは上述のように、観測期間(95/1月~10/4

月)における平均的な日米政策金利の水準の差を反映した結果といえる。次に、期待

短期金利成分やタームプレミアム成分の変動を、主成分ファクター分解の観点から捉

えるため、主成分ファクターによる分散分解を行った。結果をみると、期待短期金利成

分については、年限によらず第一主成分ファクター(水準ファクター)の変動が全体の

9割を占めている(図 19)。一方、タームプレミアム成分については、1年までの短期

ゾーンは第四主成分の変動が比較的大きいが、1年以降の年限のタームプレミアムは、

第二主成分(傾きファクター)が大きなウェイトを占めることがみてとれる(図 20)。

表 6では、日米両国の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の間の相関係数を示

したが、米国の相関係数が日本の相関係数と比べて小さな値を示しているのは、米国

の期待短期金利成分とタームプレミアム成分を変動させる主成分ファクターが異なる

ことに起因していることが分かる。また、米国の第四主成分ファクターの変動が短期

ゾーンのタームプレミアム成分の変動に強い影響を及ぼす結果となっている。これは、

Duffee (2010)、Joslin et al. (2010)でも既に指摘されている、長期金利の決定には影響

力が小さくても、タームプレミアムや期待超過収益率の変動に説明力を有するファク

ターの存在を示唆する結果と整合的といえよう。

5.4 日米長期金利のマクロ経済変数分解

本節では、幾つかの時期における日米長期金利の変動について仔細にみるために、長

期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分をマクロ経済変数の寄与度に分解

し、その変動をみることにする。

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5.4.1 長期金利のマクロ経済変数分解:日本の例

5.3節では、日本の期待短期金利成分とタームプレミアム成分の変動がイールドカー

ブの第一主成分で概ね説明されることが分かった。ここでは、日本の長期金利の変動

をより詳しくみるため、2つの時期に焦点を当て、長期金利を構成する期待短期金利成

分とタームプレミアム成分が、短期国債利回り、CPI変化率、株価収益率による要因

とそれ以外の要因によってどのように変動していたのかをみることにする。

VaRショック前後(02年 9月~03年 9月)(図 21)  

 日本銀行による量的緩和政策下での低金利環境のなか、国内金融機関は運用難や余

剰資金の積み上がりを背景に、国債への投資を積極化させた。しかし、03年 6月中旬

の金利上昇をきっかけに、多くの金融機関では国債ポジションが内部管理上のリスク

リミットに抵触し、一斉にポジションを解消する動きをみせた。これによって、長期

金利は 03年 6月末~9月初にかけて急上昇した(いわゆる“VaRショック”)。例えば、

10年国債金利(単利)は、0.4%台から 1.6%台まで上昇した。

図 21は、VaRショックを挟む時期における、期待短期金利成分とタームプレミアム

成分のマクロ経済変数分解の結果を示したものである。これをみると、期待短期金利

成分の変動と比べて、タームプレミアム成分の変動が大きかったことが分かる。そこ

で、タームプレミアム成分の変動を以下では詳しくみていくことにする。

タームプレミアム成分は、02年中から 03年 5月にかけて低下した。これは、「その

他」の寄与度の低下が最大の要因で、株価収益率要因の低下も幾分寄与していたこと

が、図 21から確認できる。この株価収益率の寄与度の低下については、02年夏頃から

始まった株価下落を背景に、安全資産としての国債を選好する傾向が強まることで、国

債需給に関するプレミアムが徐々に剥落していったこと等を反映していると考えられ

る。タームプレミアム成分に対する株価収益率の寄与度は、03年 4月まで低下した後、

03年 5月に日経平均が上昇するとともに、上昇に転じた。これは、それまでの安全資

産選好の動きから、リスク資産に回帰する動きが今後急速に強まるのではないかとの

懸念が、国債市場参加者の一部に意識された可能性が考えられる。一方、「その他」の

寄与度については、03年 5月まで大きく低下していったが、これは、上述の国債選好

がファンダメンタルズから乖離した過熱気味な動きとなっていた可能性を示唆してい

る。そして、03年 6月~8月にかけて、「その他」の寄与度は大きく上昇し、タームプ

レミアム成分上昇の主因となったが、これは、それまでの過度な国債投資に対する巻

き戻しがこの時期一気に生じたことの現れであると考えられる。

リーマンショック以降の動き(08年 9月~10年 4月)(図 22)  

  08年 9月に米国証券会社リーマンブラザーズが破綻し、国際的に金融市場は混乱し

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た(いわゆる“リーマンショック”)。本邦国債市場でも、リーマンショック直後は、国

債レポ市場で取引が成立しにくい状況に陥ったことを受け、国債市場の流動性が低下

したとの声が市場から聞かれるなど、少なからず影響がみられた。ここでは、リーマ

ンショック以降の本邦長期金利変動の背景を、期待短期金利成分、タームプレミアム成

分に対するマクロ経済変数の寄与度の変動の観点から解釈する。

まず、期待短期金利成分のマクロ経済変数分解をみると、リーマンショック以降、利

下げが 08年 10月と 12月に実施されたこと等を背景に、短期国債利回りの寄与度が低

下方向に作用したものの、09年春以降の株価回復の下で、株価収益率寄与度が上昇方

向に作用したこと等から、期待短期金利成分に大きな変化は生じなかった。一方、ター

ムプレミアム成分については、08年 12月にかけて低下したが、これは主に、株価収益

率の寄与度の低下に起因するものであった。この点については、08年末にかけての株

価急落などにみられる景況感の急速な悪化によって、安全資産としての国債が選好さ

れ、国債需給に対するプレミアムが低下した可能性が考えられる。また、景況感の悪化

に伴い、緩和的な金融政策が長期化するとの見方を持つ市場参加者が増え、市場参加

者間の金融政策に対する見通しのばらつきが縮小した結果である可能性もある。09年

入り後のタームプレミアム成分の動きについては、09年 5月にかけて上昇した後、横

ばい圏内で推移した。この間、株価収益率の寄与度はタームプレミアム成分の上昇圧

力として作用した。日経平均株価が緩やかに上昇する中、国債からリスク資産へ回帰

する動きが、今後、急速に強まり、国債価格が下落するリスクが意識されたほか、株

価の回復とともに、緩和的な金融政策が継続される期間について、市場参加者間の今

後の金融政策に対する見方にばらつきが生じた可能性が考えられる。また、CPI変化

率の寄与度をみると、09年中に徐々にタームプレミアム成分の低下圧力として作用し

ていったことがみてとれる。これは、CPI前年同月比変化率が低下していく中で、将

来の物価水準が大きく下振れするリスクが意識された可能性がある16。また、09年 5

月と 7月には「その他」の寄与度がタームプレミアム成分を押し上げている。これは、

政府による大規模な経済対策を背景とした国債の増額発行について、09年 5月に増発

額が明らかになったことや、09年 7月から実際に増額発行が開始されたこと等を受け

て、国債需給に対する懸念が高まったことが背景にあると考えられる。

5.4.2 長期金利のマクロ経済変数分解:米国の例

5.3節では、米国の期待短期金利成分の変動が、イールドカーブの水準ファクターの

変動によって説明される一方、タームプレミアム成分の変動が、短期ゾーンが第四主

成分、中長期ゾーンが傾きファクターの変動によって説明されることを示した。ここ

162009年 11月、日本政府は月例経済報告の中で、「緩やかなデフレ状況にある」との認識を示した。

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では、米国長期金利の変動要因を仔細にみるため、2つの時期に焦点を当て、米国の長

期金利を構成する期待短期金利成分とタームプレミアム成分の変動が、マクロ経済変

数やその他の要因によってどのように説明されるのかをみることにする。

Conundrum(長期金利の謎)と呼ばれる時期(04年 4月~06年 3月)(図 23)  

  04年半ばから、Fedは政策金利を継続的に引き上げたが、長期ゾーンの金利は、低

下、もしくは、横ばい圏内での推移となった(図 4)。この現象を当時のグリンスパン

FRB議長は、「conundrum(長期金利の謎)」と呼んだ。この時期の米国長期金利の変

動を、期待短期金利成分とタームプレミアム成分に対するマクロ経済変数分解を用い

て調べてみる(図 23)。

まず、期待短期金利成分の動きをみると、05年 7月まで上昇し、その後は横ばい圏

内で推移した。マクロ第一主成分得点が、FF金利、CPI変化率、鉱工業生産指数変化

率の全てを上昇させる方向に推移する中、当該ファクターの寄与度が、期待短期金利

成分を押し上げる方向に作用した。

一方、タームプレミアム成分は 05年 6月にかけて低下した後、緩やかな上昇傾向を

示した。05年 6月にかけての低下は、マクロ第一主成分寄与度の若干の低下もあるが、

主たる要因は「その他」の寄与度の低下であることがみてとれる。すなわち、この時

期のタームプレミアム成分の低下は、本稿で用いた説明変数では十分に説明できてい

ないことになる。この点に関連して、この時期、年金基金や海外中銀による米国債運

用の拡大がみられていたと指摘する声があり、それが「その他」の寄与度の低下とし

てここに現れている可能性が考えられる。また、金融政策の不確実性の低下がターム

プレミアム低下の一因となった可能性があるとの指摘もある17。

05年 6月以降のタームプレミアム成分の緩やかな上昇については、マクロ第一主成

分寄与度の低下を、マクロ第二主成分寄与度や「その他」の寄与度の上昇が上回るこ

とによって引き起こされている。05年半ばから、マクロ第一主成分得点は、FF金利、

CPI変化率、鉱工業生産変化率全てを上昇させる方向に推移したが、この間、マクロ

第一主成分はタームプレミアム成分に低下圧力として作用していたことになる。この

点については、Stambaugh (1988)や Ludvigson and Ng (2009)を初めとする様々な既

存研究において、米国長期金利のタームプレミアムは、過去の多くの時期で、カウン

ターシクリカル(景気変動との逆相関性)な性質を有すると指摘されている点と関係

がある。Ludvigson and Ng (2009)は、タームプレミアムがカウンターシクリカルな性

17久田ら (2005)は、「金融政策の不確実性」を表す指標として、実現した政策金利とテイラー・ルールから求められる政策金利の予測値との二乗誤差を計測し、04年半ばから当該指標の値が小さくなっていることを確認することによって、金融政策の不確実性の低下が、長期金利のタームプレミアムの低下を引き起こしていた可能性を指摘している。

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質を有する理由として、景気後退局面では、国債の投資家は、リスク・アペタイトの

低下とともにリスクの対価をより大きく要求するためタームプレミアムが上昇し、景

気回復時には、投資家は、リスク・アペタイトの上昇とともにリスクの対価をそれほ

ど要求しないためタームプレミアムが低下する、としている。上でみたように、04年

半ばから 05年半ばの時期は、マクロ第一主成分得点の上昇がタームプレミアム成分の

低下を説明しておらず、米国の長期金利で通常いわれているタームプレミアムのカウ

ンターシクリカリティに反する結果となったが、05年半ば以降は、通常の関係に戻っ

たことが分かる。次に、05年半ば以降のタームプレミアム成分の緩やかな上昇におい

ては、マクロ第二主成分も相応に寄与している。特に、05年 10月に当該変数の寄与度

は大きな上昇を示している。これは、CPIの前年同月比変化率が 05年 10月に大幅に

上昇したことで、将来のインフレ率が上振れる懸念が市場に拡がった可能性を示唆し

ていると考えられる。

リーマンショック以降の動き(08年 9月~10年 4月)(図 24)  

 ここでは、リーマンショック以降の米国長期金利の変動要因をみていこう。

まず、リーマンショック以降の期待短期金利成分をみると、リーマンショック発生前

を下回る水準で推移した(図 24)。この間、期待短期金利成分の低下圧力として作用し

たのが、マクロ第一主成分の寄与度である。マクロ第一主成分得点は、リーマンショッ

ク以降 09年夏にかけて、FF金利、CPI変化率、鉱工業生産指数変化率を押し下げる

方向に推移したが、経済環境の悪化が低金利政策の期間を長期化させるとの見方が市

場で強まった結果、期待短期金利成分を低下させる方向に作用したと考えられる。マ

クロ第二主成分寄与度については、08年 12月以降 09年夏にかけて、期待短期金利成

分への上昇圧力を強めた。マクロ第二主成分得点は、09年夏にかけて、CPI変化率が

低下し政策金利が上昇する方向に推移したが、これは、同ファクターのインフレ率へ

の低下圧力よりも、政策金利への上昇圧力が将来の短期金利の上昇につながると、市

場で捉えられた可能性が考えられる。09年下期以降は、マクロ第一主成分得点、第二

主成分得点がともに、09年上期までの動きと逆方向の動きをみせたことから、それぞ

れの期待短期金利成分への寄与度が緩和される格好となった。

一方、タームプレミアム成分は、08年 10月に上昇した後、08年 12月にかけて大幅

に低下した。そして、09年入り後は横ばい圏内での動きとなった。08年 10月は、リー

マンショック後、投資家のリスクアペタイトの低下を背景とする安全資産選好の強ま

りから、短期国債を買って金利リスクが相対的に大きな長期ゾーンの国債を売却する

動きが一部でみられたといわれており、そのことに伴って、08年 10月に「その他」の

寄与度が上昇した可能性がある18。その後、08年 12月にタームプレミアム成分が大幅

18図 24をみると、08年 10月には、マクロ第一、第二、第三主成分の寄与度の上昇がタームプレミア

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に低下したが、これは「その他」の寄与度の低下に起因している。これは、08年 12月

開催の FOMCにおいて、Fedによる国債買入のメリットが議論されたことが明らかに

なったことで、国債需給に関するプレミアムが剥落した結果である可能性が考えられ

る19。09年上期中は、マクロ第三主成分の寄与度が徐々に上昇していった。このマク

ロ第三主成分寄与度の上昇は、同主成分得点が、政策金利が引き上げられ、鉱工業生

産指数変化率が低下する方向に推移するなかで生じたものである。これは、上述のよ

うに、タームプレミアムがカウンターシクリカルな性質を有することと矛盾しない動

きとなっている。また、09年上期中の動きとして、同年 3月に「その他」の寄与度が

タームプレミアム成分の大幅な低下を引き起こしている。これは、同月中旬に、Fedが

最大 3,000億ドルの国債買入を決定したことによって、再び需給プレミアムが低下した

可能性が背景にあると考えられる。09年下期以降の動きについては、まず、マクロ第

三主成分のタームプレミアム成分への寄与度が低下方向に作用した。これは、景況感

の悪化に歯止めがかかったことで、09年上期までのタームプレミアム成分上昇への寄

与が反転したことにより生じたと考えられる。09年下期には、マクロ第二主成分の寄

与度も上昇しているが、これは、CPI変化率がそれまでの低下傾向から上昇に転じる

ことで、将来のインフレ率が上振れする懸念が高まったことが背景にあると思われる。

また、09年 12月頃からは、「その他」の寄与度がプレミアムの上昇圧力として作用し

ているが、この時期、ギリシャの財政悪化を初めとするソブリン・リスクへの注目度

が市場で高まるなかで、大規模な経済対策を実施している米国についても、将来の財

政悪化に伴う金利上昇リスクが市場参加者に意識された可能性がある。

6 まとめと今後の課題

本稿のモデルではまず、無裁定アフィン型ガウシアン期間構造モデルの下で、マク

ロ経済変数を一切考慮しない潜在変数のみからなるアプローチによって長期金利の推

定を行った。その下で、潜在変数を主成分ファクターに変数変換することによって、期

待短期金利成分とタームプレミアム成分の変動に対する主成分ファクターの寄与度を

計算することが可能となり、長期金利の変動を、主成分ファクターの変動の観点からよ

り明確に捉えることができるようになった。さらに、主成分ファクターを被説明変数

とし、マクロ経済変数を説明変数とする線形回帰モデルを推定することで、主成分を

ムの上昇をもたらしていることが分かる。しかし、08年 8月、9月ともこれらに対するタームプレミアムの感応度の推定値は統計的に有意ではなかったことから、08年 10月のプレミアムの上昇をマクロ経済変数の寄与で説明することはしていない。

192008年 12月 15、16日の FOMCで、やや長めの政府債務を Fedが買入れるメリットが議論されたことが、声明により明らかになった。また、2009年 3月 17日、18日の FOMCにおいて、向こう6か月間で最大 3,000億ドルの長期国債を買い入れることが決定された。

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介して、マクロ経済変数の変動が期待短期金利成分やタームプレミアム成分の変動に

与える影響を捉えることを可能にした。これらの手法を用いて、日米長期金利の変動

の特徴を、期待短期金利成分とタームプレミアム成分の主成分ファクターの変動の観

点から説明しただけでなく、過去の幾つかの時期に焦点を当て、マクロ経済変数の期

待成分、プレミアム成分変動への寄与をみることによって、日米長期金利の変動の背

景を分析した。分析の結果、(1)日米長期金利のタームプレミアム成分の変動に寄与

するイールドカーブの主成分要因が異なる点、(2)日本のタームプレミアム成分は、

株価収益率の上昇(低下)に伴い上昇(低下)する傾向が幾つかの時期でみられる点、

(3)米国の経済状況の強さを示す変数が改善(悪化)する時に、当該変数は、米国長

期金利のタームプレミアム成分の低下圧力(上昇圧力)として作用する傾向が幾つか

の時期でみられる点、等が明らかになった。

本稿モデルの問題点は、本論中でも説明したように、将来の短期金利が負値となる

ことを許容するモデルとなっているため、低金利環境下では、長期金利の期待短期金

利成分を低く見積もってしまう可能性が高い点である。したがって、日米とも低金利

政策が採られている現状においては、金利がゼロを下回らないより現実的なモデルを

用いて、長期金利の期待短期金利成分とタームプレミアム成分を推定することが求め

られるだろう。また、マクロ経済変数と金利は、本来、相互依存関係が強いことが想像

されるが、本稿のモデルでは、マクロ経済変数を外生的に扱っており、両者の依存関係

をモデル化できていない問題を有している。この点を克服するため、マクロ経済変数

の動学をモデルに取り入れて、期待短期金利成分やタームプレミアム成分のマクロ経

済変数ショックに対する感応度分析を行うことなどが今後の課題として考えられよう。

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計表

表 1: モデルパラメータ推定値

日本の推定値δ0 δ1,1 δ1,2 δ1,3 δ1,4 δ1,5

-0.0070471 -0.00011941 0.00077606 0.00014054 0.0018855 -4.5953E-05

(0.00057390) (0.00011230) (5.1124E-06) (1.05271E-06) (5.2335E-06) (2.4288E-07)

κ1 KP2,1 κ2 KP

3,1 KP3,2 κ3

20.637 0.037883 3.5066 -0.0041422 0.016682 3.3152

(2.7741) (0.0028166) (0.00000) (0.0013709) (0.00011805) (2.4912E-05)

KP4,1 KP

4,2 KP4,3 κ4 KP

5,1 KP5,2

0.0093113 -0.24864 0.11370 4.0564 -0.61709 -15.491

(0.0030838) (0.0011830) (0.00074454) (0.00057361) (0.16183) (0.086637)

KP5,3 KP

5,4 κ5

7.3141 -1.3618 4.1725

(0.030279) (0.010021) (0.0089112)

Λ1,1 Λ1,2 Λ1,3 Λ1,4 Λ1,5

29.008 -113.22 -73.147 -36.292 -28.626

(0.93856) (1.9781E-07) (0.0040191) (0.056289) (0.19187)

λ0,1 λ0,2 λ0,3 λ0,4 λ0,5 h

-0.26119 110.80 129.50 182.06 3296.5 2.0366E-05

(0.98352) (6.6441) (5.4764) (10.284) (89.649) (9.8520E-07)

米国の推定値δ0 δ1,1 δ1,2 δ1,3 δ1,4 δ1,5

0.0077967 -0.0013875 -0.00071168 0.00033024 -0.00072807 0.0046882

(0.00025518) (0.00034105) (0.00037264) (9.5700E-07) (0.0000E-07) (4.0199E-05)

κ1 KP2,1 κ2 KP

3,1 KP3,2 κ3

3.2657 0.0042161 4.3844 -0.030534 -0.0033390 4.5974

(0.14252) (0.0026106) (0.016990) (0.022158) (0.0040604) (0.020632)

KP4,1 KP

4,2 KP4,3 κ4 KP

5,1 KP5,2

-25.890 -21.664 4.6256 0.047945 -3.5113 -3.2179

(2.3025) (1.6820) (0.0000) (0.00096832) (0.17706) (0.21621)

KP5,3 KP

5,4 κ5

0.66867 -0.14191 3.8215

(0.0000E-07) (0.00016071) (0.0041063)

Λ1,1 Λ1,2 Λ1,3 Λ1,4 Λ1,5

-8.1564 -44.944 -74.678 15.725 -29.792

(0.61460) (0.66655) (0.19692) (0.0000) (0.24113)

λ0,1 λ0,2 λ0,3 λ0,4 λ0,5 h

0.34698 17.139 13.335 -7.6236 -87.402 2.7413E-05

(0.0000) (2.4464) (3.8497) (1.5148) (9.0106) (1.8361E-06)

*日米の推定値とも括弧内は推定パラメータの標準誤差を表す。

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表 2: 主成分ファクターの線形回帰推定 日本

PC1 PC2 PC3 PC4 PC5短期国債利回り 1.959 -1.006 0.2003 -0.03584 0.02557

(4.010) (5.024) (1.012) (0.6859) (2.201)CPI変化率 0.1032 0.003901 0.02302 -0.001371 0.001355

(1.655) (0.9783) (1.086) (0.9159) (0.9981)株価収益率 1.260 0.1897 0.1543 -0.02074 0.03441

(3.776) (1.972) (1.878) (1.337) (3.074)定数項 -0.002558 0.0004522 -0.0001306 -4.348E-05 -2.001E-05

(24.19) (7.971) (3.786) (3.563) (4.258)ρ 0.6596 0.9107 0.7599 0.7889 0.7199

(6.138) (6.511) (8.198) (9.526) (7.907)ダービンワトソン統計量 1.597 1.524 1.617 1.536 1.386自由度調整済み決定係数 0.5455 0.3571 0.1604 0.03651 0.1928

* 98 年 12 月~10 年 4 月までの推定値を単純平均したもの。 **括弧内は t 値の絶対値の期間平均値を表す。

表 3: 主成分ファクターの線形回帰推定 米国

PC1 PC2 PC3 PC4 PC5マクロ第一主成分 -0.001692 -0.0006453 3.162E-06 -9.328E-06 3.162E-08

(5.557) (4.782) (1.316) (2.154) (1.379)マクロ第二主成分 0.0003750 0.0003411  -5.308E-05 2.327E-06 -1.257E-07

(2.881) (3.058) (1.159) (1.341) (1.166)マクロ第三主成分 0.0004582 0.0001382 -4.651E-05 3.735E-05 -9.798E-08

(3.076) (1.291) (1.643) (3.052) (0.9632)定数項 0.0001184 0.0002823 -1.605E-06 -2.841E-05 -2.417E-10

(2.532) (4.894) (1.000) (2.123) (1.094)ρ 0.6728 0.5347 0.6798 0.6047 -0.08028

(6.323) (4.296) (6.348) (5.336) (0.8487)ダービンワトソン統計量 1.568 1.575 1.587 1.505 1.973自由度調整済み決定係数 0.7659 0.6666 0.1608 0.4829 0.03667

* 98 年 12 月~10 年 4 月までの推定値を単純平均したもの。 **括弧内は t 値の絶対値の期間平均値を表す。

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表 4: 10年金利の期待成分・プレミアム成分に対するマクロ変数感応度 日本

期待短期金利成分 タームプレミアム成分

短期国債利回り 2.429 5.924

(1.764) (2.841)

CPI変化率 0.1981 0.14231

(1.054) (1.726)

株価収益率 1.613 6.150

(2.261) (4.288)

* 98 年 12 月~10 年 4 月までの推定値を単純平均したもの。 **括弧内は t 値の絶対値の期間平均値。

***実際の値を 10 倍して表示。

表 5: 10年金利の期待成分・プレミアム成分に対するマクロ変数感応度 米国

期待短期金利成分 タームプレミアム成分

マクロ第一主成分 -3.080 1.409

(4.145) (1.937)

マクロ第二主成分 0.5902 1.180

(2.265) (2.020)

マクロ第三主成分 0.03577 0.8480

(1.669) (1.738)

* 98 年 12 月~10 年 4 月までの推定値を単純平均したもの。 **括弧内は t 値の絶対値の期間平均値。

***実際の値を 10,000 倍して表示。

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表 6: 日米長期金利の期待短期金利とタームプレミアムの統計量

期待短期金利とタームプレミアムの期間平均と標準偏差

日本 米国

2年 期待短期金利 タームプレミアム 期待短期金利 タームプレミアム

平均値 0.205% 0.292% 3.370% 0.629%

標準偏差 0.240% 0.219% 1.687% 0.422%

5年 期待短期金利 タームプレミアム 期待短期金利 タームプレミアム

平均値 0.262% 0.835% 3.281% 1.246%

標準偏差 0.223% 0.484% 1.065% 0.609%

10年 期待短期金利 タームプレミアム 期待短期金利 タームプレミアム

平均値 0.348% 1.478% 3.238% 1.931%

標準偏差 0.236% 0.513% 0.584% 0.659%

期待短期金利とタームプレミアムの相関係数

相関 日本 米国

2年 84.9% 15.1%

5年 84.1% 28.3%

10年 86.1% 24.7%

*いずれの統計量も 95/1月~10/4月の期間の値を用いて計算されている。

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グラフ

図 1: 米国の政策金利、CPI変化率、鉱工業生産指数変化率の主成分分析マクロ経済変数の主成分分析のローディング

マクロ経済変数の主成分得点-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

FF CPI IIPマクロ第一主成分 マクロ第二主成分マクロ第三主成分0

0.005

0.01

0.015

-0.01

-0.005

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1マクロ第一主成分 マクロ第二主成分マクロ第三主成分36

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図 2: 日本の長期金利

20年

0.5年 2年

10年5年 012395/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月01

2395/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月

01234595/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月 0123

4595/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月20年

01234595/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月37

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図 3: 日本の長期金利のモデル誤差(観測値-推定値)

20年

5年 10年

2年0.5年

-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

% -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

%-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

%

%

20年-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

38

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図 4: 米国の長期金利

20年

0.5年 2年

10年5年 03695/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月024

6895/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月

0246895/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

観測イールド推定イールド%月 024

6895/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1観測イールド推定イールド%

0246895/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1観測イールド推定イールド%

月39

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図 5: 米国の長期金利のモデル誤差(観測値-推定値)

20年

5年 10年

2年0.5年

-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

% -0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

%-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

%

%

20年-0.08 -0.06 -0.04 -0.02 0.00 0.02 0.04 0.06 0.08

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

40

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図 6: 日本の無担保コール翌日物金利と推定瞬間スポット金利

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

99/1 00/1 01/1 02/1 03/1 04/1 05/1 06/1

推定瞬間スポット金利無担保コール翌日物月

%

図 7: 主成分のローディング(日本)

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

0.5年 2年 5年 10年 20年第一主成分 第二主成分 第三主成分第四主成分 第五主成分41

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図 8: 主成分ファクターの推移(日本)第一主成分得点 第二主成分得点

第三主成分得点 第四主成分得点

第五主成分得点

-6

-4

-2

0

2

4

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

月%

-1

-0.5

0

0.5

1

1.5

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

月%

-0.6

-0.3

0

0.3

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

月%

月%

月%

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月%

月%

月%

月%

-0.1

-0.05

0

0.05

0.1

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1月%

月%

月%

月%

42

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図 9: 主成分のローディング(米国)

-0.8-0.400.40.8

0.5年 2年 5年 10年 20年第一主成分 第二主成分 第三主成分第四主成分 第五主成分図 10: 主成分ファクターの推移(米国)第一主成分得点 第二主成分得点

第三主成分得点 第四主成分得点-9-6-3036995/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1%

月 -2-1012395/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

%月

-0.6-0.4-0.200.20.40.6

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1%

月 -0.200.20.40.6

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1%

月第五主成分得点-0.004-0.00200.0020.004

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1%

月43

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図 11: マクロ経済変数に対する 10年金利の期待短期金利成分の感応度推定値(日本)短期国債利回り CPI変化率

株価収益率-4

-2

0

2

4

6

8

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

0.6

0.8

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

*実線は推定値、点線は 90%信頼区間、一点鎖線は 99%信頼区間を表す。

44

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図 12: マクロ経済変数に対する10年金利のタームプレミアム成分の感応度推定値(日本)短期国債利回り CPI変化率

株価収益率-8

-4

0

4

8

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.4

-0.2

0

0.2

0.4

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.5

0

0.5

1

1.5

2

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

*実線は推定値、点線は 90%信頼区間、一点鎖線は 99%信頼区間を表す。

45

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図 13: マクロ経済変数に対する 10年金利の期待短期金利成分の感応度推定値(米国)マクロ第一主成分 マクロ第二主成分

マクロ第三主成分-0.001

-0.0005

0

0.0005

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.0005

-0.00025

0

0.00025

0.0005

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.0005

-0.00025

0

0.00025

0.0005

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

*実線は推定値、点線は 90%信頼区間、一点鎖線は 99%信頼区間を表す。

46

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図 14: マクロ経済変数に対する10年金利のタームプレミアム成分の感応度推定値(米国)マクロ第一主成分 マクロ第二主成分

マクロ第三主成分-0.002

-0.001

0

0.001

0.002

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.0012

-0.0008

-0.0004

0

0.0004

0.0008

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

-0.001

-0.0005

0

0.0005

0.001

98/12 99/12 00/12 01/12 02/12 03/12 04/12 05/12 06/12 07/12 08/12 09/12

*実線は推定値、点線は 90%信頼区間、一点鎖線は 99%信頼区間を表す。

47

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図 15: 日本の長期金利の分解2年金利

5年金利-10123

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利

(%)

345 タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利(%) 月

10年金利01295/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

012345

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利

(%)

月48

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図 16: 日本の期待短期金利成分の分散分解

0102030405060708090

100

0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240PC1 PC2 PC3 PC4 PC5

%

か月*ここで、PC1はイールドカーブの第一主成分、PC2は第二主成分、・・・(以下同様)

の寄与を表すとする。

図 17: 日本のタームプレミアム成分の分散分解

0102030405060708090100

0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240PC1 PC2 PC3 PC4 PC5 か月

%

*ここで、PC1はイールドカーブの第一主成分、PC2は第二主成分、・・・(以下同様)

の寄与を表すとする。

49

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図 18: 米国の長期金利の分解2年金利

5年金利-1012345678

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利(%)

45678 タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利(%) 月

10年金利-1012395/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1 月

012345678

95/1 97/1 99/1 01/1 03/1 05/1 07/1 09/1

タームプレミアム成分期待短期金利成分市場金利(%)

月50

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図 19: 米国の期待短期金利成分の分散分解

0102030405060708090

100

0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240PC1 PC2 PC3 PC4 PC5 か月

%

*ここで、PC1はイールドカーブの第一主成分、PC2は第二主成分、・・・(以下同様)

の寄与を表すとする。

図 20: 米国のタームプレミアム成分の分散分解

0102030405060708090100

0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240PC1 PC2 PC3 PC4 PC5 か月

%

*ここで、PC1はイールドカーブの第一主成分、PC2は第二主成分、・・・(以下同様)

の寄与を表すとする。

51

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図 21: VaRショック前後のマクロ経済変数分解10年期待短期金利

10年タームプレミアム0

0.2

0.4%%

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

02/9 02/10 02/11 02/12 03/1 03/2 03/3 03/4 03/5 03/6 03/7 03/8 03/9短期国債利回り CPI変化率 株価収益率 その他 期待短期金利

%%

-1

-0.8

-0.6

-0.4

-0.2

0

02/9 02/10 02/11 02/12 03/1 03/2 03/3 03/4 03/5 03/6 03/7 03/8 03/9短期国債利回り CPI変化率 株価収益率 その他 プレミアム* 02年 9月からの差分で表示している。

52

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図 22: リーマンショック以降のマクロ経済変数分解(日本)10年期待短期金利

10年タームプレミアム0.1

0.2

0.3

%-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

08/8 08/10 08/12 09/2 09/4 09/6 09/8 09/10 09/12 10/2 10/4短期国債利回り CPI変化率 株価収益率 その他 期待短期金利

%%

-0.4

-0.3

-0.2

-0.1

0

0.1

08/8 08/10 08/12 09/2 09/4 09/6 09/8 09/10 09/12 10/2 10/4短期国債利回り CPI変化率 株価収益率 その他 プレミアム* 08年 8月からの差分で表示している。

53

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図 23: Conundrum(長期金利の謎)期のマクロ経済変数分解10年期待短期金利

10年タームプレミアム-0.5

0

0.5

1

1.5

04/4 04/6 04/8 04/10 04/12 05/2 05/4 05/6 05/8 05/10 05/12 06/2マクロ第一主成分 マクロ第二主成分 マクロ第三主成分 その他 期待短期金利

0

0.5

1

-2.5

-2

-1.5

-1

-0.5

04/4 04/7 04/10 05/1 05/4 05/7 05/10 06/1マクロ第一主成分 マクロ第二主成分 マクロ第三主成分 その他 タームプレミアム* 04年 4月からの差分で表示している。

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図 24: リーマンショック以降のマクロ経済変数分解 (米国)10年期待短期金利

10年タームプレミアム-2

-1

0

1

2

08/8 08/10 08/12 09/2 09/4 09/6 09/8 09/10 09/12 10/2 10/4マクロ第一主成分 マクロ第二主成分 マクロ第三主成分 その他 タームプレミアム

%%

1

2

%%%%%%%%

-1

0

08/8 08/10 08/12 09/2 09/4 09/6 09/8 09/10 09/12 10/2 10/4マクロ第一主成分 マクロ第二主成分 マクロ第三主成分 その他 タームプレミアム* 08年 8月からの差分で表示している。

55