6
25(OH)D血中濃度 (ng/ml) 症例数 % 15> 15~20 20~25 25~30 30≦ 107 329 584 584 260 5.74% 17.65% 31.33% 31.33% 13.95% 欠乏:23.4% 不足:62.7% Ohta H ,Shiraki M et al Clin Therap 2014 改変 充足:14.0% まいました。この原因は特にカルシウムに対す る意識が強かった閉経後女性において、過剰な やせ願望がでてきたためと考えられています。 たしかに過剰な体重を抑制することは健康な生 活を維持する上で重要なことでありますが、そ のためにカルシウムが犠牲になることは大変に 困ります。カルシウムとともに重要なビタミン Dは骨粗鬆症に限っていいますと、20〜40%の 患者において不足していると言われています。 表1はJOINT-02に参加していただいた患者さ んたちの血清25(OH)Dの濃度分布を示したも のです。30ng/ml以上を確実な充足例とします と、ほとんどすべての骨粗鬆症例が程度の差は あれビタミンDが不足がちです。 ビタミンD不足はそれ自体で骨折や転倒のリ スクですし、ひいては死亡率も高まることが知 られています。一方、もしもカルシウム摂取量 が充足していれば、ビタミンD不足の各種の異 常が代償されることが知られています。図1 は、ビタミンD抵抗性くる病患者にカルシウム を点滴で補ったところALPの低下がみられ、く A-TOP研究会ニュース Vol.6 No.1 2015年1月 発行人:A-TOP研究会 実行委員会 会長 折茂 肇 連絡先:公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター 骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局 〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-1-7 TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634 Adequate Treatment of Osteoporosis A-TOP NEWS A-TOP NEWS みなさん、あけまし ておめでとうございま す。今年もまたA-TOP 研究会のJOINT projectに多大なるご 支援を賜りたく、お願 い申し上げます。 さて骨粗鬆症治療薬も各種の薬物療法が市販 され、先生方がお使いになる薬物のオプション も広がりをみせています。我が国における大腿 骨近位端骨折の発生率は今まで増加の一途をた どってまいりましたが、ここにきて初めて70歳 代女性のこの骨折発生率が減少に転じました。 まだ日本国全体として明らかな減少がみられる というほどではありませんが、いままでは増加 する一方でしたから、前向きにとらえていい所 見ではないかと考えております。 このトレンドをさらに確かなものとするた め、私どもはいくつかの目標を定めて、これを 達成するために努力しなければなりません。 第一の目標は骨粗鬆症の発症と進展予防のた め、もう一度食生活習慣を見直してみ ようということであります。もともと 我が国では和食という条件下でカルシ ウム摂取量が欧米に比べ少なく、目標 値である800mg/日には遠くおよばない 550mg/日程度で上げ止まっていまし た。しかし驚いたことに平成24年度の 国民栄養調査では1日のカルシウム摂取 量が480mg/日と、500mgを下回ってし Vol. 6 公益財団法人骨粗鬆症財団 理事長 折茂 肇 骨粗鬆症診療の基本にもどる 表1 骨粗鬆症患者のビタミンD不足(JOINT-02 症例) 1

JOINT-05 AA--TOPTOP NEWSNEWS94N1%8C%8E.vol.6.No.1.pdf · か使用されておりませんので、このエビデンス の創出は我が国の責務とも言えます。 以上のように今年もまた会員諸兄のご協力の

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Page 1: JOINT-05 AA--TOPTOP NEWSNEWS94N1%8C%8E.vol.6.No.1.pdf · か使用されておりませんので、このエビデンス の創出は我が国の責務とも言えます。 以上のように今年もまた会員諸兄のご協力の

25(OH)D血中濃度(ng/ml)

症例数 %

15>

15~20

20~25

25~30

30≦

107

329

584

584

260

5.74%

17.65%

31.33%

31.33%

13.95%

欠乏:23.4%

不足:62.7%

Ohta H ,Shiraki M et al Clin Therap 2014 改変

充足:14.0%

研究の概要JOINT-05

への参加についてJOINT-05

骨折リスクの高い原発性骨粗鬆症患者に対する骨粗鬆症治療薬の骨折抑制効果検証試験- 週1回テリパラチド製剤とアレンドロネート製剤の群間比較試験 -

2014年10月~2019年6月(57ヶ月)症例登録期間:2014年10月~2017年3月(30ヶ月)、観察期間:120週(約28ヶ月)

「週1テリパラチド(72週)+アレンドロネート(48週)」投与群、「アレンドロネート(120週)」投与群

 

1,800例/2群(各群900例)

新規椎体(形態)骨折発生率(72週時点)新規椎体(形態)骨折発生率および非椎体(臨床)骨折発生率(120週時点)

非椎体(臨床)骨折発生率(72週時点)、新規椎体(臨床)骨折発生率、増悪椎体骨折発生率、骨密度、変化率、QOL(EQ-5D など)変化率、骨構造解析 など

臨床研究参加の文書同意が得られ、以下の基準を全て満たす患者を対象とする。① 日本骨代謝学会 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)に基づき原発性骨粗鬆症と診断された患者

② 同意取得時の年齢が満年齢75歳以上の日本人患者③ 閉経後女性④ 自立歩行(独歩および一本杖歩行、歩行器歩行)が可能な患者⑤ 以下のいずれかを満たす患者  ・骨密度が、YAMの60%未満または-3.3SD未満の患者  ・登録時点で第4胸椎(Th4)~第4腰椎(L4)に2個以上の椎体骨折を有する患者  ・Grade 3の骨折を有する患者  ・大腿骨近位部骨折の既往を有する患者

JOINT-05は、COIを明確とした契約臨床研究となるため、すべての参加施設と公益財団とで、受委託研究契約を締結します。この契約により、明確なCOI管理が実現され、医師主導臨床研究として、国内に誇れる研究実施システムを構築して運用します。 JOINT-05では、セキュリティ向上のため、データ収集にEDC(Electronic Data Capture)を導入します。そのため、被験者登録、割付等は、原則Web上で実施しますので、インターネット環境が必要です。Web上での症例登録となる事で、24時間登録が可能となります。 JOINT-04までのJOINT-studyとは、参加施設条件、研究実施システム、協力業者等が異なっております。A-TOP研究会のホームページのJOINT-05の内容をよくご確認ください。

JOINT-05参加医師募集中

JONT-04に参加している施設でも改めて、参加申請手続きが必要となります。A-TOP研究会のホームページの「JOINT-05 参加申請」より、手続きをしてください。Web上の参加申請画面で、必要事項を記入した後、プリントアウトし、署名(自署)捺印したものを、事務局へ送付してください。

JOINT-05に参加するには

〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目1番7号公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター 骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634 E-MAIL:[email protected]研究会のホームページ(http://www.a-top.jp/)

週1回テリパラチド 72週

アレンドロネート(ALN) 120週

ALN 48週高骨折リスク骨粗鬆症

0 24 48 72 96 120

研 究 課 題

研 究 期 間

治  療  群

目 標 症 例 数

主要評価項目

副次評価項目

資料の請求

適 格 基 準

まいました。この原因は特にカルシウムに対す

る意識が強かった閉経後女性において、過剰な

やせ願望がでてきたためと考えられています。

たしかに過剰な体重を抑制することは健康な生

活を維持する上で重要なことでありますが、そ

のためにカルシウムが犠牲になることは大変に

困ります。カルシウムとともに重要なビタミン

Dは骨粗鬆症に限っていいますと、20〜40%の

患者において不足していると言われています。

表1はJOINT-02に参加していただいた患者さ

んたちの血清25(OH)Dの濃度分布を示したも

のです。30ng/ml以上を確実な充足例とします

と、ほとんどすべての骨粗鬆症例が程度の差は

あれビタミンDが不足がちです。

 ビタミンD不足はそれ自体で骨折や転倒のリ

スクですし、ひいては死亡率も高まることが知

られています。一方、もしもカルシウム摂取量

が充足していれば、ビタミンD不足の各種の異

常が代償されることが知られています。図1

は、ビタミンD抵抗性くる病患者にカルシウム

を点滴で補ったところALPの低下がみられ、く

A-TOP研究会ニュース Vol.6 No.1 2015年1月 発行人:A-TOP研究会実行委員会会長折茂 肇 連絡先:公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター 骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局 〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-1-7 TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634

Adequate Treatment of OsteoporosisA-TOP NEWSA-TOP NEWS

 みなさん、あけまし

ておめでとうございま

す。今年もまたA-TOP

研 究 会 の J O I N T

projectに多大なるご

支援を賜りたく、お願

い申し上げます。

 さて骨粗鬆症治療薬も各種の薬物療法が市販

され、先生方がお使いになる薬物のオプション

も広がりをみせています。我が国における大腿

骨近位端骨折の発生率は今まで増加の一途をた

どってまいりましたが、ここにきて初めて70歳

代女性のこの骨折発生率が減少に転じました。

まだ日本国全体として明らかな減少がみられる

というほどではありませんが、いままでは増加

する一方でしたから、前向きにとらえていい所

見ではないかと考えております。

 このトレンドをさらに確かなものとするた

め、私どもはいくつかの目標を定めて、これを

達成するために努力しなければなりません。

 第一の目標は骨粗鬆症の発症と進展予防のた

め、もう一度食生活習慣を見直してみ

ようということであります。もともと

我が国では和食という条件下でカルシ

ウム摂取量が欧米に比べ少なく、目標

値である800mg/日には遠くおよばない

550mg/日程度で上げ止まっていまし

た。しかし驚いたことに平成24年度の

国民栄養調査では1日のカルシウム摂取

量が480mg/日と、500mgを下回ってし

Vol. 6

公益財団法人骨粗鬆症財団 理事長 折茂 肇骨粗鬆症診療の基本にもどる

ということと、「併用により荷重長管骨骨折が

有意に抑制された。」という二つのエビデンス

(エビデンスレベルIb, 推奨度B)でありまし

た。一方リセドロネートに対するビタミンK2の

併用効果につきましては、残念ながら骨折の予

防効果は検証されませんでした。しかしQOLの

改善効果は併用群でより強かったことが判明し

ました。このことをエビデンスとするため現在

論文化作業が行われています。

 3,800例の登録という骨粗鬆症治療の検討にお

いては最大規模であるJOINT-04はおかげさまで

昨年8月に登録を締め切り、全対象例が観察期に

入っています。来年の8月にはいよいよ待望の使

い分け情報が取得できる体制が整いました。

 本年はまた新たにアレンドロネートとテリパ

ラチド(weekly製剤)の直接比較試験が本格化

します。週一回製剤のテリパラチドは本邦にし

か使用されておりませんので、このエビデンス

の創出は我が国の責務とも言えます。

 以上のように今年もまた会員諸兄のご協力の

もと、ご一緒に臨床現場に役立つエビデンスの

創出に向けて邁進したいと考えております。何

卒よろしくお願い申し上げます。

ており、この現象を指して、骨折の連鎖と言い

表します。日本骨粗鬆症学会ではこのような患

者さんの管理を主たる業務とする、骨粗鬆症マ

ネージャー制度を作り、最近学会認定のマネー

ジャーの第一回認定試験が行われ、栄えある合

格者が600名余認定されました。マネージャーを

中心として患者管理を行っていくこの制度は骨

粗鬆症リエゾンサービスと名付けられ、今後こ

の制度の活用により、患者さんの管理を綿密に

行っていきたいものだと考えています。

 第三の問題は臨床エビデンスの供給不足で

す。現在の我が国ではお薬の開発試験を除い

ては臨床的エビデンスが供給されていませんで

した。私たちのA-TOP研究会はまさにこのエ

ビデンスをみなさまに供給するために各種の無

作為化試験を行っております。すでにアレンド

ロネート単独と活性型ビタミンD3を併用した場

合の比較試験が終了し、論文を発表することが

できました。会員諸兄のご協力の賜物と深謝申

し上げます。ここで明確に示されたエビデンス

は「より重症な椎体骨折をすでにもっている例

ではアレンドロネートと活性型ビタミンD3の併

用がさらなる骨折発生の抑制に有効である。」

表1 骨粗鬆症患者のビタミンD不足(JOINT-02 症例)

13

1. 日時:2015年3月14日(土)16:00~20:00 受付開始15:30~ 

2. 場所:東京スクエアガーデン 5階 東京コンベンションホール 大ホール 〒104-0031 東京都中央区京橋三丁目1-1 TEL:03-5542-1995 JR「東京駅」八重洲南中央口より徒歩10分または東京メトロ銀座線「京橋駅」直結  

3. プログラム: opening remark 骨粗鬆症財団 折茂 肇 先生

  【第一部 学術講演】16:00~16:40 司会 国立国際医療研究センター 中村利孝 先生

日本における最近のカルシウム摂取量とビタミンD栄養状態について 国際医療福祉大学 太田博明 先生

  【第二部 JOINT研究のトピックス】16:40~18:00(各20分) 

               司会 鳥取大学 萩野 浩 先生/島根大学 杉本利嗣 先生

1)顎骨壊死に関する緊急アンケート結果について 松本歯科大学 田口 明 先生

2)ucOCとQOLについて 堀病院 五來逸雄 先生

3)骨折抑制効果に関する骨密度の役割をPTE解析で推察する 東京大学 上村夕香理 先生

4)テリパラチドによる骨粗鬆症治療up date 東京大学 田中 栄 先生

  【第三部 表彰式/意見交換会】18:00~20:00  

4. 連絡先:(公財)パブリックヘルスリサーチセンター骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局  〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-1-7 TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634

5. 参加申し込み(必須):

別途、各施設の責任医師宛に案内状をお送りしますので、所定の方法でお申込み願います。なお、1施設

につき2名様まで(2015年1月5日時点でA-TOP研究会に氏名登録されている方)がご参加出来ます。

2014年度 A-TOP研究会 年会開催のご案内

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 表2はEUにおける骨粗鬆症治療率を

示しています。本当にギリシャで70%

の患者が治療されているかは疑問です

が、EU全体としては43%の患者が治療

されています。一方我が国のそれはい

まだに40%には達していません。

 EUの状況をみてみますと、予想さ

れる全患者に対し、40%以上の人々が

治療されればなんとか大腿骨近位端骨

折の発生率を減少に転じさせることが

できるようです。我が国ではつい10年

ほど前までは治療参加率は20%程度で

した。しかし最近のように治療薬のオ

プションが広がるにつれ、治療参加率

は30%まで増加したと考えられていま

す。しかしまだ足りていません。なん

とかあと10%の積み上げを達成しなけ

ればなりません。特に一度大腿骨近位

端骨折を起こされた患者さんが、手術後放置さ

れている問題は重大な懸念材料です。一回この

骨折を起こしますと次に反対側にもう一度骨折

を起こすリスクは3~7倍に増加するといわれ

る病が改善しています。すなわちカルシウムの

十分な補給は、ビタミンD欠乏をレスキューで

きるということです。

 したがって、我々は声を大にしてカルシウム

とビタミンDの必要性を言わねば

なりません。

 第二の問題は骨粗鬆症の治療率

の低さです。骨粗鬆症がありなが

ら骨粗鬆症の治療を受けていない

状況をtreatment gapと呼んでい

ます。最近では治療目標を定めた

計画的な治療が推奨されており、

これをtarget to treatと申します。

例えば骨密度の目標値を定めた

り、代謝マーカーの低下の目標を

定めるなどといった診療行為を指

します。最近イギリスのJ.Kanis先

生は論文のなかで、患者捕捉率の

低さを嘆かれて、これではまるで

Treat to targetつまり、まだ治療

することこそが目標であると言っ

ておられます。

生化学検査結果 Ca点滴前の血清Ca濃度、血清P値、ALP、i-PTH濃度(●)

Ca点滴量は12時間当たりの基礎Ca量を正確に注入した

各検査値の正常域は   で表示

Ca infusion(g/12h)

血清Ca濃度(mmol/l)

Pi (mmol/l)

Alk Pase(nkat×10-3/l)

i-PTH (pg/ml)

1

0

2.72.52.32.1

21020

10

5

0

100500

-15 1500 30 60 90 120 180 210 250Days

daily 3/wk

Balsan S etal, JClin Invest77:1661-1667, 1986

図1 Ca点滴はビタミンD抵抗性くる病症例の電解質異常を改善した

Kanis J et al Osteoporosis Int 2014 September

日本

国治療中の

患者数(A)千人潜在的な

患者数(B)千人B-A千人

治療gap%

1 .ブルガリア

2 .エストニア

3 .ラトビア

----

10 .フィンランド

11 .オランダ

12 .イタリア

-----

20 .ルクセンブルグ

21 .ポルトガル

22 .ギリシャ

-----

EU全体

日本

13

7

12

----

53

242

1,069

----

9

269

333

----

7,881

4,700

240

48

80

----

172

605

2,635

----

16

425

482

----

18,441

13,000

227

41

68

----

119

363

1,566

----

7

156

149

----

10,560

9,300

95

86

85

----

69

60

59

----

43

37

31

----

57

64

表2 Target to treat どころではない 今はまだTreat to targetの段階!!

2

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ということと、「併用により荷重長管骨骨折が

有意に抑制された。」という二つのエビデンス

(エビデンスレベルIb, 推奨度B)でありまし

た。一方リセドロネートに対するビタミンK2の

併用効果につきましては、残念ながら骨折の予

防効果は検証されませんでした。しかしQOLの

改善効果は併用群でより強かったことが判明し

ました。このことをエビデンスとするため現在

論文化作業が行われています。

 3,800例の登録という骨粗鬆症治療の検討にお

いては最大規模であるJOINT-04はおかげさまで

昨年8月に登録を締め切り、全対象例が観察期に

入っています。来年の8月にはいよいよ待望の使

い分け情報が取得できる体制が整いました。

 本年はまた新たにアレンドロネートとテリパ

ラチド(weekly製剤)の直接比較試験が本格化

します。週一回製剤のテリパラチドは本邦にし

か使用されておりませんので、このエビデンス

の創出は我が国の責務とも言えます。

 以上のように今年もまた会員諸兄のご協力の

もと、ご一緒に臨床現場に役立つエビデンスの

創出に向けて邁進したいと考えております。何

卒よろしくお願い申し上げます。

ており、この現象を指して、骨折の連鎖と言い

表します。日本骨粗鬆症学会ではこのような患

者さんの管理を主たる業務とする、骨粗鬆症マ

ネージャー制度を作り、最近学会認定のマネー

ジャーの第一回認定試験が行われ、栄えある合

格者が600名余認定されました。マネージャーを

中心として患者管理を行っていくこの制度は骨

粗鬆症リエゾンサービスと名付けられ、今後こ

の制度の活用により、患者さんの管理を綿密に

行っていきたいものだと考えています。

 第三の問題は臨床エビデンスの供給不足で

す。現在の我が国ではお薬の開発試験を除い

ては臨床的エビデンスが供給されていませんで

した。私たちのA-TOP研究会はまさにこのエ

ビデンスをみなさまに供給するために各種の無

作為化試験を行っております。すでにアレンド

ロネート単独と活性型ビタミンD3を併用した場

合の比較試験が終了し、論文を発表することが

できました。会員諸兄のご協力の賜物と深謝申

し上げます。ここで明確に示されたエビデンス

は「より重症な椎体骨折をすでにもっている例

ではアレンドロネートと活性型ビタミンD3の併

用がさらなる骨折発生の抑制に有効である。」

3

1. 日時:2015年3月14日(土)16:00~20:00 受付開始15:30~ 2. 場所:東京スクエアガーデン 5階 東京コンベンションホール 大ホール 〒104-0031 東京都中央区京橋三丁目1-1 TEL:03-5542-1995 JR「東京駅」八重洲南中央口より徒歩10分または東京メトロ銀座線「京橋駅」直結  

3. プログラム: opening remark 骨粗鬆症財団 折茂 肇 先生

  【第一部 学術講演】16:00~16:40 司会 国立国際医療研究センター 中村利孝 先生

日本における最近のカルシウム摂取量とビタミンD栄養状態について 国際医療福祉大学 太田博明 先生

  【第二部 JOINT研究のトピックス】16:40~18:00(各20分) 

               司会 鳥取大学 萩野 浩 先生/島根大学 杉本利嗣 先生

1)顎骨壊死に関する緊急アンケート結果について 松本歯科大学 田口 明 先生

2)ucOCとQOLについて 堀病院 五來逸雄 先生

3)骨折抑制効果に関する骨密度の役割をPTE解析で推察する 東京大学 上村夕香理 先生

4)テリパラチドによる骨粗鬆症治療up date 東京大学 田中 栄 先生

  【第三部 表彰式/意見交換会】18:00~20:00  

4. 連絡先:(公財)パブリックヘルスリサーチセンター骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局  〒169-0051東京都新宿区西早稲田1-1-7 TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634

5. 参加申し込み(必須):

別途、各施設の責任医師宛に案内状をお送りしますので、所定の方法でお申込み願います。なお、1施設

につき2名様まで(2015年1月5日時点でA-TOP研究会に氏名登録されている方)がご参加出来ます。

2014年度 A-TOP研究会 年会開催のご案内

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当院の紹介

 当院は九州で唯一、鮭が遡上する一級河川で

ある遠賀川が流れる水と緑にかこまれた福岡県

北九州市の西部に位置する遠賀郡に平成3年10月

に開院された病床数80床の病院です。さらに、

病院に隣接して介護保険施設も併設しており、

医療と介護の連携をはかりつつ地域に根ざした

医療を行っています。当院の常勤医は外科医2

名、小児科医1名、脳外科医1名、そして整形

外科医は2名です。整形外科患者は年々増え続

け、手術に関しては脊椎や人工関節を主として

年間200例以上行っている状況です。近隣の救急

病院の影響か骨折患者の手術症例の割合が少な

く、慢性疾患の手術の割合が高いのが特徴です。

当院での骨粗鬆症治療に対する取り組み

 骨粗鬆症の治療に関しては、私が産業医科大

学の大学院で骨粗鬆症の研究に携わっていた

こともあり、平成15年6月就任時より積極的

に取り組んでいます。一般診療はもちろんのこ

と、大学勤務時代に骨粗鬆症の治験に携わっ

ていたので当院でも骨粗鬆症の治験を開始し

ました。当院では過去に治験を行ったことがな

く、まさしくゼロからの出発だったので、「治

験とは何たるものか」を院長や事務職員に理解

してもらうことから始まり、事務局の設置や院

内の部署への理解と説明など数えればきりがな

いですが、とにかく治験体制作りには苦労しま

した。しかしながら、多くの方の協力を得てこ

れまでに多くの治験をこなし、いくつもの治療

薬が今日上市され臨床の場で使用可能となり、

非常に感慨深いものがあります。さらには、

骨粗鬆症治療に関心の高い産業医科大学整形

外科同門の医師を中心にKOTU(Kitakyusyu

Osteoporosis Trial Unit)なる組織を作り、骨

粗鬆症に関連した多施設共同研究を行い、学会

発表や雑誌投稿も行っています。こういうなか

で、A-TOP研究会参加のお話もいただき、迷

わずJOINT-02から参加しています。治験と平

行して行っていたため多くの患者を登録するこ

とは出来ませんでしたが、いくらかはお力には

なれたのではないかと思っています。

当院でのA-TOP研究に対する取り組み

 当院が初めてA-TOP研究に参加

したのはJOINT-02(脊椎椎体圧迫

骨折予防効果を指標とするアレンド

ロネートと活性型ビタミンD3の併用

効果)でした。当時は2001年に上市

されたアレンドロネート製剤が骨粗

鬆症治療の主流でした。しかしなが

ら、使用していてもなかなか骨密度

の増加しない症例や骨吸収マーカー

(尿中NTXが頻用されていました)

が下がりきらない症例もあり、色々

論議されていたように思います。そ

の一因としてビタミンD不足が指摘

され、アレンドロネート単独と活性

A-TOP研究会骨粗鬆症リエゾンサービス(OLS)はA-TOP研究でも重要

医療法人 健愛会 健愛記念病院 副院長 池田 聡

前列中央が筆者

4

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5

型ビタミンD3製剤(アルファカルシド

ール)併用とで効果を比較検証するとい

う研究でした。当時折茂先生が「海外の

研究者から日本では大規模臨床試験のデ

ータが少なく、日本人のEBMは十分で

はない!と言われる。だから、A-TOP

研究をやるんだ!」と話されていたのを

記憶しています。臨床研究をご経験さ

れた先生方はご承知のことと思います

が、エビデンスレベルを高めるために

はやはり優れた研究デザインと仮説検

証の数が必要です。それだけに、医師

主導型臨床研究であるA-TOP研究への

期待は大きいものがあると思います。

JOINT-03(リセドロネートに対するビ

タミンK2の併用効果の検証)は症例登録

には至りませんでしたが、JOINT-04(ミノド

ロン酸水和物とラロキシフェン塩酸塩の比較に

よる有効性・安全性の検討)は20例近く登録し

ました。JOINT-03までは併用効果の検証でし

たが、JOINT-04からは薬剤の使い分け情報取

得を目的とした比較試験となりました。さらに

JOINT-04からは、運動機能評価も加わり、口

腔内問診調査、転倒回数、転倒スコアなどの調

査票も加わり、外来の忙しい間に医師だけでは

これらを実施することは不可能に近いものとな

りました。当院では治験を通して他職種との連

携が比較的構築できていたため、運動機能評価

は理学療法士、口腔内問診調査などの調査は事

務職員(治験コーディネーター)の協力を得て

行っています。もはや医師のみではA-TOP研究

は行いにくく、一般臨床の場と同様にA-TOP研

究の場でも重要となってくるのが「骨粗鬆症リ

エゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service

: OLS)」の構築です。OLSとは世界中で展開さ

れているFLS(Fracture Liaison Service)を参

考に日本骨粗鬆症学会が行っている事業です。

OLSはメディカルスタッフが骨粗鬆症性骨折患

者や骨折リスクの高い方や高齢者を対象に行う

骨粗鬆症診療支援サービスです。当院でも試行

錯誤を重ねながらOLSを展開しています。その

経験から、病院であれ医院であれOLSが構築さ

れているとA-TOP研究もスムースに導入できる

と思います。

これからのA-TOP研究に対する展望と期待

 JOINT-05(週1回テリパラチド製剤とアレン

ドロネート製剤の群間比較試験)も始まり、

JOINT-04同様、JOINT-05も身体機能評価や多く

の質問票があるようです。一方、平成26年10月

に第1回「骨粗鬆症マネージャー」認定試験が

行われ、平成27年4月より日本骨粗鬆症学会で

認定されます。これからは、OLSの機運が高ま

ることが期待されると同時に成果も求められま

す。学会挙げての新事業ですが、実際には「骨

粗鬆症マネージャー」のいる施設で何から着手

してよいのかわからない場合も多いと予想され

ます。そういう施設では、是非JOINT-05に参

加してOLSを実践されてみるのもよいと思いま

す。A-TOP研究の質を高めるためには、多くの

患者登録はもちろんのこと治療の継続も非常に

重要です。そのためには「骨粗鬆症マネージャ

ー」によるOLSは重要なものとなると考えます。

医療法人 健愛会 健愛記念病院〒811-4313 福岡県遠賀郡遠賀町木守1191 TEL.093-293-7090

Page 6: JOINT-05 AA--TOPTOP NEWSNEWS94N1%8C%8E.vol.6.No.1.pdf · か使用されておりませんので、このエビデンス の創出は我が国の責務とも言えます。 以上のように今年もまた会員諸兄のご協力の

研究の概要JOINT-05

への参加についてJOINT-05

骨折リスクの高い原発性骨粗鬆症患者に対する骨粗鬆症治療薬の骨折抑制効果検証試験- 週1回テリパラチド製剤とアレンドロネート製剤の群間比較試験 -

2014年10月~2019年6月(57ヶ月)症例登録期間:2014年10月~2017年3月(30ヶ月)、観察期間:120週(約28ヶ月)

「週1テリパラチド(72週)+アレンドロネート(48週)」投与群、「アレンドロネート(120週)」投与群

 

1,800例/2群(各群900例)

新規椎体(形態)骨折発生率(72週時点)新規椎体(形態)骨折発生率および非椎体(臨床)骨折発生率(120週時点)

非椎体(臨床)骨折発生率(72週時点)、新規椎体(臨床)骨折発生率、増悪椎体骨折発生率、骨密度、変化率、QOL(EQ-5D など)変化率、骨構造解析 など

臨床研究参加の文書同意が得られ、以下の基準を全て満たす患者を対象とする。① 日本骨代謝学会 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012年度改訂版)に基づき原発性骨粗鬆症と診断された患者

② 同意取得時の年齢が満年齢75歳以上の日本人患者③ 閉経後女性④ 自立歩行(独歩および一本杖歩行、歩行器歩行)が可能な患者⑤ 以下のいずれかを満たす患者  ・骨密度が、YAMの60%未満または-3.3SD未満の患者  ・登録時点で第4胸椎(Th4)~第4腰椎(L4)に2個以上の椎体骨折を有する患者  ・Grade 3の骨折を有する患者  ・大腿骨近位部骨折の既往を有する患者

JOINT-05は、COIを明確とした契約臨床研究となるため、すべての参加施設と公益財団とで、受委託研究契約を締結します。この契約により、明確なCOI管理が実現され、医師主導臨床研究として、国内に誇れる研究実施システムを構築して運用します。 JOINT-05では、セキュリティ向上のため、データ収集にEDC(Electronic Data Capture)を導入します。そのため、被験者登録、割付等は、原則Web上で実施しますので、インターネット環境が必要です。Web上での症例登録となる事で、24時間登録が可能となります。 JOINT-04までのJOINT-studyとは、参加施設条件、研究実施システム、協力業者等が異なっております。A-TOP研究会のホームページのJOINT-05の内容をよくご確認ください。

JOINT-05参加医師募集中

JONT-04に参加している施設でも改めて、参加申請手続きが必要となります。A-TOP研究会のホームページの「JOINT-05 参加申請」より、手続きをしてください。Web上の参加申請画面で、必要事項を記入した後、プリントアウトし、署名(自署)捺印したものを、事務局へ送付してください。

JOINT-05に参加するには

〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1丁目1番7号公益財団法人パブリックヘルスリサーチセンター 骨粗鬆症至適療法研究支援事業事務局TEL:03-5287-2638 FAX:03-5287-2634 E-MAIL:[email protected]研究会のホームページ(http://www.a-top.jp/)

週1回テリパラチド 72週

アレンドロネート(ALN) 120週

ALN 48週高骨折リスク骨粗鬆症

0 24 48 72 96 120

研 究 課 題

研 究 期 間

治  療  群

目 標 症 例 数

主要評価項目

副次評価項目

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適 格 基 準