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金丸 文一 仲間といっても、研究仲間、ハイキング仲間、山 登りクラブ、など仲間にはいろいろありますが、そ れぞれの仲間の間には目的を持ち、それを向上させ ようとか、新しい現象を見いだそうとか、お互い力 や気持ちを集中する。特に団体で事を運ぶ時は、互 いへの信頼と尊重が基礎となりましょう。 此処では、私の産研における研究仲間について述 べさせて頂きたいと思いますが、当時の無機系3研 究グループ以外に1年間滞在のペンシルヴァニヤ州 立大材料研究所も含めて 4 つの研究グループで研究 する機会を持ち、それぞれの研究室やグループの場 で多くの優れた仲間と知り合う事が出来ました。 産研で最初に所属したのは桐山研でした。60 年代 は、固体物理学の花が開いたとでも云いましょうか、 半導体べースの電子機器の成長が目覚ましい時期で した。その中で、エレクトロセラミックスは磁性体、 誘電体など重要な役割を果たしていましたが、私が 松下電器の研グループで体験したことを、桐山先生 自ら結晶化学の立場から種々指導して頂きました。 (後々微量添加元素の役割に興味を持つことになり ました)。6年後やはり産研の小泉研に移ることにな りました。当時超高圧力(~5GPa)技術の材料科 学への応用が始まった時期でしたが、研究室では、 島田昌彦氏、小平紘平氏などと協力し、新しい遷移 金属酸化物の合成、物性評価を行うことが出来まし た。さらに、宮本大樹氏、芝崎靖雄氏の参加を得て、 超高圧発生装置を利用して、2GPa、1000℃までの 高酸素圧下での物質合成(高原子価化合物など)に も成功することが出来ました。また、留学先で身に 付けたインターカレーションの研究を、山中昭司氏、 吉川信一氏などと協力して発展させ、層状を形成し 会投 稿 ている各無機物層の表面に有機分子を枝継した化合 物などの層間合成、また、いずれも絶縁体である FeOCl 層の層間にピリジンを層間吸着させると 0.1 オーム以下の電気良導体に変化するなど、今で云う ナノ物質のはしりを行うことが出来ました。 その後、4 年あまり岡山大学非結晶研究施設でガ ラス科学に堪能な吉尾哲夫氏、小田喜一氏と協力し て、非晶質固体から形状を制御した微結晶の析出過 程を研究すること事が出来ました。その後再び産研 で研究生活を送る機会を得、その部門名は不定比結 晶材料でした。床次正安氏、小藤吉郎氏、堀内 弘 氏など構造解析の専門家集団で組成の不定比に伴う 格子欠陥の解析のため EXSAFS の解析手法を取り入 れていました。岡山大学での実験的な経験、松下電 器で経験した不純物添加による有用な機能の発現を 理解・展開するには恵まれた環境でした。さらに高 橋昌男氏、吉朝 朗氏の参加を得て、添加された微 量の元素が、母結晶の中でもそれぞれ固有の構造を 取ろうとし、nm オーダの局所構造を形成し、母結 晶の物性に影響する。私の産研の最後のテーマは金 属窒化物の合成と評価でした。吉川信一氏、院生の 田渕氏、山本氏、森賀氏などの協力で研究を進める ことが出来、さらに新潟大学の戸田健司氏、坂井俊 彦氏の協力で 20 年来問題にされた Fe12N2 のバルク 化粧の合成と構造、磁性を決定出来たのは幸せでし た。以上の様に、私の研究生活において、多くの仲 間に支えられたこと、まさしく、人、時、場(研究 室など)の恵まれたことは誠に幸せでした。 研究以外でも、産研の仲間と過ごした思い出が沢 山ありますが、その中で産研の改組は最も心に残る ものでした(レクリエーションについては省略しま 「仲間への感謝」 Fumikazu Kanamaru Lorem Ipsum Dolor episode.4 1/2 June. 2009

Lorem Ipsum Dolor episode.4 「仲間への感謝」Lorem Ipsum Dolor episode.4 1/2 June. 2009 す)。改組の基本は、「材料、生体、情報を総合的に融合・研究し、次世代産業の基礎を構築する」ことで、その為に、

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Page 1: Lorem Ipsum Dolor episode.4 「仲間への感謝」Lorem Ipsum Dolor episode.4 1/2 June. 2009 す)。改組の基本は、「材料、生体、情報を総合的に融合・研究し、次世代産業の基礎を構築する」ことで、その為に、

 金丸 文一

研産

仲間といっても、研究仲間、ハイキング仲間、山

登りクラブ、など仲間にはいろいろありますが、そ

れぞれの仲間の間には目的を持ち、それを向上させ

ようとか、新しい現象を見いだそうとか、お互い力

や気持ちを集中する。 特に団体で事を運ぶ時は、互

いへの信頼と尊重が基礎となりましょう。

 此処では、私の産研における研究仲間について述

べさせて頂きたいと思いますが、当時の無機系3研

究グループ以外に1年間滞在のペンシルヴァニヤ州

立大材料研究所も含めて 4つの研究グループで研究

する機会を持ち、それぞれの研究室やグループの場

で多くの優れた仲間と知り合う事が出来ました。

 産研で最初に所属したのは桐山研でした。60 年代

は、固体物理学の花が開いたとでも云いましょうか、

半導体べースの電子機器の成長が目覚ましい時期で

した。 その中で、エレクトロセラミックスは磁性体、

誘電体など重要な役割を果たしていましたが、私が

松下電器の研グループで体験したことを、桐山先生

自ら結晶化学の立場から種々指導して頂きました。

(後々微量添加元素の役割に興味を持つことになり

ました)。6年後やはり産研の小泉研に移ることにな

りました。当時超高圧力(~5GPa)技術の材料科

学への応用が始まった時期でしたが、研究室では、

島田昌彦氏、小平紘平氏などと協力し、新しい遷移

金属酸化物の合成、物性評価を行うことが出来まし

た。さらに、宮本大樹氏、芝崎靖雄氏の参加を得て、

超高圧発生装置を利用して、2GPa、1000℃までの

高酸素圧下での物質合成(高原子価化合物など)に

も成功することが出来ました。また、留学先で身に

付けたインターカレーションの研究を、山中昭司氏、

吉川信一氏などと協力して発展させ、層状を形成し

窓同 レ ー会 投 リ稿

ている各無機物層の表面に有機分子を枝継した化合

物などの層間合成、また、いずれも絶縁体である

FeOCl 層の層間にピリジンを層間吸着させると 0.1

オーム以下の電気良導体に変化するなど、今で云う

ナノ物質のはしりを行うことが出来ました。

 その後、4年あまり岡山大学非結晶研究施設でガ

ラス科学に堪能な吉尾哲夫氏、小田喜一氏と協力し

て、非晶質固体から形状を制御した微結晶の析出過

程を研究すること事が出来ました。その後再び産研

で研究生活を送る機会を得、その部門名は不定比結

晶材料でした。床次正安氏、小藤吉郎氏、堀内 弘

氏など構造解析の専門家集団で組成の不定比に伴う

格子欠陥の解析のため EXSAFS の解析手法を取り入

れていました。岡山大学での実験的な経験、松下電

器で経験した不純物添加による有用な機能の発現を

理解・展開するには恵まれた環境でした。さらに高

橋昌男氏、吉朝 朗氏の参加を得て、 添加された微

量の元素が、母結晶の中でもそれぞれ固有の構造を

取ろうとし、nm オーダの局所構造を形成し、母結

晶の物性に影響する。私の産研の最後のテーマは金

属窒化物の合成と評価でした。吉川信一氏、院生の

田渕氏、山本氏、森賀氏などの協力で研究を進める

ことが出来、さらに新潟大学の戸田健司氏、坂井俊

彦氏の協力で 20 年来問題にされた Fe12N2 のバルク

化粧の合成と構造、磁性を決定出来たのは幸せでし

た。以上の様に、私の研究生活において、多くの仲

間に支えられたこと、まさしく、人、時、場(研究

室など)の恵まれたことは誠に幸せでした。

 研究以外でも、産研の仲間と過ごした思い出が沢

山ありますが、その中で産研の改組は最も心に残る

ものでした(レクリエーションについては省略しま

「仲間への感謝」

Fumikazu Kanamaru

Lorem Ipsum Dolor

episode.4

1/2

June. 2009

Page 2: Lorem Ipsum Dolor episode.4 「仲間への感謝」Lorem Ipsum Dolor episode.4 1/2 June. 2009 す)。改組の基本は、「材料、生体、情報を総合的に融合・研究し、次世代産業の基礎を構築する」ことで、その為に、

す)。改組の基本は、「材料、生体、情報を総合的に融合・研究し、次世代産業の基礎を構築する」ことで、その為に、

教務職員職15名全員を助手(当時の名称)に振り替えて、部門構成の編成の組み替えと充実、産業界との競っ

ての役目を担う付属研究センター の設置を目指しました。文部省からは大体 17 時以降に説明資料の作成が

ファクスされてくるのですが、若手職員で構成した改組実行委員会や、事務や院生の方々の献身的な協力を

得て無事改組を成し遂げることが出来ました。この時の産研の一体感の強さは今も忘れる事がなく、当時の

産研の仲間達に心から深く感謝しています。

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episode.4

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