4
74 ———————— PerfectBOAT JAN. 2020 75 SEA TRIAL New Entertainment Outboard! GREENLINE 33 NEO C OUPE スロベニア生まれのエコクルーザーでおなじみの「GREENLINE (グリーンライン)」から、新たなラインナップ「NEO 」シリーズが登場した。 同社初のアウトボード仕様のパフォーマンスクルーザー、それでいてエレクトリックアウトボードを搭載できるのは「GREENLINE 」らしい。 そんなNEO1艇が日本に初上陸を果たした。 300馬力アウトボードを2基掛けした「GREENLINE 33 NEO Coupe 」だ。 素晴らしい加速感、強烈ながらも安定した旋回マニューバ、特徴的なフロントウィンドウと充実した室内空間。 GREENLINE 」の新たなチャレンジとも言えるモデルに東京湾奥でシートライアル。 text: Atsushi Nomura photo: Makoto Yamada special thanks: OKAZAKI YACHTS http://okazaki.yachts.co.jp

SEA TRIAL New Entertainment 同社初のアウトボード仕様の ......「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

  • Upload
    others

  • View
    0

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: SEA TRIAL New Entertainment 同社初のアウトボード仕様の ......「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

74 ———————— PerfectBOAT JAN. 2020 75

SEA TRIAL

New Entertainment Outboard!

GREENLINE 33 NEO COupE

スロベニア生まれのエコクルーザーでおなじみの「GREENLINE(グリーンライン)」から、新たなラインナップ「NEO」シリーズが登場した。同社初のアウトボード仕様のパフォーマンスクルーザー、それでいてエレクトリックアウトボードを搭載できるのは「GREENLINE」らしい。

そんなNEOの1艇が日本に初上陸を果たした。300馬力アウトボードを2基掛けした「GREENLINE 33 NEO Coupe」だ。素晴らしい加速感、強烈ながらも安定した旋回マニューバ、特徴的なフロントウィンドウと充実した室内空間。

「GREENLINE」の新たなチャレンジとも言えるモデルに東京湾奥でシートライアル。

text: Atsushi Nomura photo: Makoto Yamada

special thanks: OKAZAKI YACHTS http://okazaki.yachts.co.jp

Page 2: SEA TRIAL New Entertainment 同社初のアウトボード仕様の ......「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

76 ———————— PerfectBOAT JAN. 2020 77

 スロベニア生まれの「GREENLINE(グリーンライン)」は、これま

でにも日本に輸入されてきたが、従来はフライブリッジクルーザーや

ファストトローラーモデルを多く建造してき

たボートビルダーである。最大の特徴は採用

するパワートレイン。従来のラインナップは

いずれもディーゼルエンジンだけでなく、ハ

イブリッド、電動モーターによる駆動システ

ムもチョイスできる。GREENLINEには33~

48フィートのレンジに6モデル、その他65フィートの「OCEAN CLASS

65」もラインナップする。

 この従来のシリーズに、新たに加わったのが「NEO」というシリーズだ。

NEOを冠したGREENLINEのパワートレインは、従来採用してきたディー

ゼルからガソリンアウトボードに変更された。ハ

イブリッド仕様はないが、NEOでもTORQEEDO

製エレクトリックアウトボード仕様はチョイスで

きる。すべてのモデルで既存のエンジン仕様と、

電動モーター仕様が用意されているのは、さす

がGREENLINEならではと言ったところだ。現

在、NEOには33フィート艇のみ3タイプがエントリーしている。その中の

1艇、「GREENLINE 33 NEO Coupe」が日本初上陸を果たした。

 東京夢の島マリーナの桟橋に係留されている「GREENLINE 33 NEO

Coupe」、そのファーストインプレッションは、ずいぶんと幅広に見える

なぁというものだった。特に真っ正面から眺めると33フィートには見えな

い。それはサイドデッキのない特徴的なレイアウトと、ほぼ全幅いっぱい

に拡がるフロントウィンドウによるところが大きい。全幅は3.49m。全長

10.99mに対してはややワイドビームな艇体と言えるだろう。サロンに入る

と全面に拡がるフロントウィンドウの効果で室内が非常に大きく見える。

それもそのはず、約3.5m幅のブリッジでサイドデッキのあるボートとなれ

ば、60フィート前後のボートでもおかしくない。33フィート艇のサロンが

60フィート艇並みのワイドさというのだから素晴らしい。それは、ちょっと

不思議な感覚でもある。

 パワートレインはV8、4.6リッター、出力300馬力、ホワイトカバーの

「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。

もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

動させることも可能。さらに定点を保持するSkyhook機能も搭載してい

るため、使い勝手は良い。

 NEOシリーズには「33 NEO Coupe」の他に、「33 NEO Open」と「33

NEO Hard Top」の2タイプがある。当然、「Open」や「Hard Top」の方が

軽いため、速度的には速いようだが、やはり天候の変わりやすい日本のコ

サイドデッキのないフルビームのサロンは 33フッターとは思えない脅威の広さそして最速42ノットのアグレッシブな走りを見せてくれた、GREENLINEのニューカマー

驚きの発電能力を有する太陽光パネル。晴天の撮影当日は1系統あたり1.3A、合計2.6A以上を供給。発電機がなくともエアコンなどを稼働させられる。

メインサロンの天井部分には大型太陽光パネルが配置されている。サイドデッキを廃した特徴的なデッキレイアウトで、フルビームのワイドなサロンに。そしてフォアデッキには、左舷のウィンドウハッチを開けてアクセスする。

Page 3: SEA TRIAL New Entertainment 同社初のアウトボード仕様の ......「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

サロン後部はL字型シートとテーブルがセットされており、ここもベッドにアレンジできる。左舷側のカウンター内にはシンク&コンロが備わる。アフトデッキのL字型シートは、エンジンをチルトアップする場合にはシート自体を前にずらすことが可能。さらにその状態で背もたれを倒せば広々としたサンベッドが出現する。

U字型シートを配置したフォアデッキ。驚くことに40ノットでの走行中もドライだった。サロンのヘルムステーションには3人掛けシートが並ぶ。人間工学的にオフセットされたスロットルとジョイスティックが並び、離着岸時の操作も楽。

サロンのアフトドアを全開にした状態。メインサロンとアフトデッキは一体のパーティースペースとなる。大型冷蔵庫がサロンの最後尾にある意味がよく分かる。

ヘルムステーション左手のドアを開けるとフォアキャビンにアクセスできる。V字型バースとテーブルが備わった心地よい空間。個室ヘッドルームも用意されている。

78 ———————— PerfectBOAT JAN. 2020 79

ンディションや使用環境を考えると、操船席が密閉される「Coupe」タイプ

にメリットがあるだろう。実際、公式データを見てもトップスピードの差は

最大で3ノット程度に過ぎない。

 基本のデッキレイアウトはフォアデッキ、サロン、アフトデッキに分か

れ、フォアデッキの真下にあたる位置にフォアキャビンが配置されている。

トランサムは両サイドにスイミングプラットフォームが伸び、中央にアウト

ボードがセットされている。そして、「Coupe」および「Hard Top」のサロン

天井には、4面2系統の大型の太陽光パネルが配置されている。その供

給電力はすさまじく、晴天時であれば1系統あたり1.3A、合計2.6A以上

の供給能力を有している。なんと、発電機なしでもエアコンや各種電装品

が賄えてしまうレベルだ。

 サロンからフォアデッキへは左舷のウォークスルーからアクセス。フロ

ントウィンドウの一部が開閉するようになっている。フォアデッキにはU字

型シートとテーブルをセット。非常に快適な空間で、走行中にここにいて

も驚くほどドライ。ほぼスプレーが掛かることはない。サロンの右舷寄りに

ヘルムステーション、ヘルムスの左手のドアはフォアキャビンへのコンパ

ニオンウェイとなる。フォアキャビンはVバースタイプで、フラットまたテー

ブルセットのキャビンとして使用可能。またこのフロアに個室ヘッドルーム

を備えている。

 ヘルムステーションの後ろには独立した3連シートが並ぶ。ボルス

タータイプにも可変、ドライバーは立った状態でも操船できる。ヘルムス

テーションの右手にハニカム形状のコースターのようなものが装着され

ているが、これはスマートフォン用ワイヤレス充電器だ。プレジャーボー

トに装備として取り付けられている例は初めて見たが、電気系統に強い

Page 4: SEA TRIAL New Entertainment 同社初のアウトボード仕様の ......「MERCURY VERADO 300」アウトボードエンジンを2基搭載している。もちろんジョイスティックを装備しており、離着岸時には左右方向へ横移

80 ———————— PerfectBOAT JAN. 2020 81

GREENLINEらしい意匠であり、今後は当たり前の装備となりそうだ。

 サロン後部は左舷にシンク&コンロを備えたカウンターギャレー、さら

に家庭用サイズの大型冷蔵庫を擁す。右舷側はL字型シートと大型テー

ブルがあり、テーブルを下げることでベッドにアレンジ可能。フォアキャビ

ンと合わせて2名ずつ、合計4名分のオーバーナイトスペースが確保され

ている。なかなか素敵なアイディアが後部ドア。冷蔵庫の脇にすっぽり収

まる形で全開する。そのためサロンのL字型シートはアフトデッキのL字

型シートとほぼ一体化する。アフトデッキのL字型シートは短辺と長辺が

セパレートされており、横方向のシートの背もたれはフラットに倒せる。そ

のまま位置で倒すと船外機にぶつかってしまうが、シート全体を前よりに

ずらすことで、シートがサンベッドに早変わりする。こういったアイディア

も、ボート文化の盛んなヨーロッパならではだ。

* マリーナの桟橋を離れる。当日は風3~ 4m/s程のコンディション。直

前に関東地方を襲った台風の影響で、荒川河口はゴミや流木が見受けら

れたため、ゲートブリッジ近くの水域まで走り、荒川と運河の潮流がぶつ

かるチョッピーなエリアでシートライアルを実施した。トライアルエリアま

で高速で向かったが、「33 NEO Coupe」のハイパフォーマンスぶりがさっ

そく発揮される。スロットルを軽く押し込むだけですぐに40ノットに到達。

それでいて非常に安定している。カタログスペックでは「Coupe」は最高

40ノットとのことだったが、この日は42ノット近くまで伸びた。

 トライアルエリアに着き、80%程度に出力を落とし、旋回マニューバを

テストする。一気に世界が変わる。まるでパフォーマンスボートのように自

在な旋回。高速スラロームや急旋回で波を受けても、思い描いたラインを

正確に走る。船底形状を見ると両サイドにかなり大きくチャインが張り出

しているが、これが非常に効果的。ボートが傾いた際の安定感に寄与し

ている。ZipWakeのオートフラップを解除するとバンクが少し緩やかにな

るため、高速でスラロームをするような場合は一時的にスイッチを切って

おいてもよいだろう。いずれにせよ、操船が愉しくなってしまう非常にアグ

レッシブな走りを見せてくれる。

GREENLINE 33 NEO Coupe全長 10.99 m全幅 3.39 m喫水 0.85 m重量 5.75 tonエンジン 2 × MERCURY VERADO 300最高出力 2 × 300 HP燃料タンク 350 L清水タンク 200 L問い合わせ先 問い合わせ先 オカザキヨットTEL: 西宮 0798-32-0202、横浜 045-770-0502 http://okazaki.yachts.co.jp

40ノットオーバーの、非常にアグレッシブな走りを見せるMERCURY VERADO 300を2基掛 け し たGREENLINE 33 NEO Coupe。素晴らしいマニューバビリティで、走らせて抜群に愉しいモデルだった。

 そして驚かされたのは、これだけアグレッシブな走りをしても、フロント

ウィンドウにまったく飛沫が掛かってこないこと。さらにマリーナに戻って

驚いたのが、フォアデッキが完全にドライだったこと。波のコンディション

や風向きを考えても、信じられない状況だった。GREENLINEの公式ホー

ムページには「33 NEO」の走行シーン動画が載っているが、フォアデッキ

に人を乗せながら急旋回するシーンがあった。なるほどこれなら濡れない

と妙に納得させられた。

 従来のエコクルーザーというイメージを崩さずに、アウトボードを

インストール、そしてボートを走らせる愉しさまで体現してしまった

「GREENLINE NEO」シリーズ。日本での利用を考えるとやはり「Coupe」

がおすすめだ。広さと走りで驚かされる「GREENLINE 33 NEO Coupe」、

是非とも実際に海で体感してみて欲しいモデルである。 P.B.