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1 www.keysight.co.jp WHITE PAPER 電子負荷の基礎 電源の極性に関する約束事の概要 電子負荷について詳しく学ぶ前に、電源の極性に関する約束事について見てみましょう。 この基本原則を知ることで、電子負荷の動作が理解しやすくなります。図1は、電源(2子デバイス)のダイアグラムです。この電源は電圧と電流に関して標準的な極性を持ってい ます。標準的な電源は、一般的にパワーを供給します。パワーを供給するには、電流が正 の電圧端子から流れ出る必要があります。ほとんどの電源は、正の出力電圧と正の出力電 流を供給することでエネルギーを供給します。極性は一般的に電圧の極性を指し、電流の 方向ではありません。電流が正の電圧端子に流れ込む場合、電源は電流をシンクしており、 電子負荷として動作しています。パワーを供給するのではなく、吸収して消費しているの です。 電源と電子負荷 電流が正の電圧端子に 流れ込む場合、電源は 電流をシンクしており、 電子負荷として動作して います。パワーを供給 するのではなく、吸収して 消費しているのです 1. 電源の極性に関する約束事 電源 V I + -

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W H I T E P A P E R

電子負荷の基礎電源の極性に関する約束事の概要電子負荷について詳しく学ぶ前に、電源の極性に関する約束事について見てみましょう。

この基本原則を知ることで、電子負荷の動作が理解しやすくなります。図1は、電源(2端

子デバイス)のダイアグラムです。この電源は電圧と電流に関して標準的な極性を持ってい

ます。標準的な電源は、一般的にパワーを供給します。パワーを供給するには、電流が正

の電圧端子から流れ出る必要があります。ほとんどの電源は、正の出力電圧と正の出力電

流を供給することでエネルギーを供給します。極性は一般的に電圧の極性を指し、電流の

方向ではありません。電流が正の電圧端子に流れ込む場合、電源は電流をシンクしており、

電子負荷として動作しています。パワーを供給するのではなく、吸収して消費しているの

です。

電源と電子負荷

電流が正の電圧端子に 流れ込む場合、電源は 電流をシンクしており、電子負荷として動作しています。パワーを供給 するのではなく、吸収して 消費しているのです

図1. 電源の極性に関する約束事

電源 +V

+I+

-

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図2. 直交座標系

バイポーラー電源は、4つの象限すべてで動作します。第1象限と第3象限では、バイポーラー電

源はパワーを供給しており、電流は正の電圧端子から流れ出します。第2象限と第4象限では、バ

イポーラー電源はパワーを消費しており、電流は正の電圧端子に流れ込みます(図2を参照)。

DC電子負荷が必要な理由前の段落で、電源がシンクしている(パワーを消費している)場合には、電子負荷として動作して

いると述べました。電子負荷のデザインは、パワーを消費するデバイスを模倣しています。電源

に負荷を与えることで、電源からDUT(アプリケーションと環境)の負荷が「見える」ようにする

ことができます。電子負荷はプログラム可能なので、さまざまな種類の負荷を実現できます。負

荷のパターンには静的なものと動的なものがあります。実際の負荷はもっと複雑で予測不能です

が、電子負荷を使えば安定した秩序ある負荷パターンを実現できます。

DC電子負荷は、DC電源(バッテリー、コンバーター、インバーター)のデザイン、製造、評価に

不可欠です。その他のアプリケーションとしては、燃料電池や太陽電池のテストが挙げられます。

DC電子負荷には、パワーをシンク(吸収)するために、パワートランジスタまたはMOSFET(金属

酸化物半導体電界効果トランジスタ)のバンクが含まれています。これらのトランジスタは、電子

負荷の入力電流を調整するため、電流増幅器によってオン/オフされます。

+I-I

+V

-V

第2象限(2)• 電圧: 正• 電流: 負(電流シンク)• パワー: 消費

第1象限(1)• 電圧: 正• 電流: 正• パワー: 供給

「負荷」

「負荷」

「電源」

「電源」

V

+I

-

V

+I

-

V

+I

-

V

+I

-

第3象限(3)• 電圧: 負• 電流: 負• パワー: 供給

第4象限(4)• 電圧: 負 • 電流: 正(電流シンク)• パワー: 消費

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電子負荷のアプリケーションテクノロジーの進歩とともに、従来の機械的駆動エネルギーの電化によって、電力の利用が大

幅に増加しました。電力需要の大幅な増加に伴って、省エネルギーの意識が高まっています。

デザイナーの間では、製品のエネルギー効率を巡る競争が起きています。電源やパワー消費デ

バイスのテストが厳格化するにつれて、DC電子負荷のアプリケーション領域は広がっています。

以下に、代表的なアプリケーションと、それぞれの測定における電子負荷の役割を示します。

無停電電源(UPS) – 完全なテストには、AC電源、DC電源、DC負荷、AC負荷が

必要です。DC負荷は、UPS内部のバックアップバッテリーと充電器をテストす

るために用いられます。AC負荷は、UPSシステム全体のテストに用いられます。

負荷バンクテストは、さまざまな負荷条件で、UPSが必要なパワー、電圧安定度、

制御システムの効率を実現できるかどうかを示します。

パワーコンバーター/インバーターのテスト – DC-DC、AC-DC、DC-ACコンバー

ターをテストする高速な方法です。出力につながれた電子負荷は、電源投入プロ

セス中のデバイスをシミュレートします。さまざまな負荷レベルで、最小/最大

入力ターンオン電圧レベルをテストできます。リップル/ノイズの測定、負荷変

動/電源変動、過電圧/過電流保護テストが、電子負荷を使用して行われます。

バッテリー/燃料電池 – 一定の負荷を実現し、抵抗ロードバンクに比べてテス

ト時間を短縮できます。容量をテストするには、CPモードを使用して、バッテ

リー電圧が時間とともに低下する間に、一定のパワードレインを供給します。さ

まざまな負荷プロファイルをプログラムして高速に遷移させる電子負荷の機能に

より、バッテリーの充放電サイクルのプロファイルテストが可能になります。

太陽電池パネル – ハイパワー太陽電池テストのための優れたソリューションで

す。低コストで大電流のシンクが可能です。CVモードを使用して、I-V曲線と増

分電圧を収集することにより、電流を測定します。

ポータブルデバイス – 電子負荷をプログラムして、スリープ、省電力、フル・

パワー・モードなどのデバイスのさまざまなパワー状態をシミュレートすること

により、消費電力テストを実行します。

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代表的な電子負荷は次のものを備えています。

• 測定機能 – 電圧、電流、パワー、ピーク値、平均値、最小値、最大値

• 入力値と測定値を表示するパネルディスプレイ

• 独立チャネル動作

• 連続、パルス型、切り替え型の過渡動作を実現する内蔵パルスジェネレーター

• 並列構成での同期測定のためのトリガ入力

• SCPIコマンド言語によるリモートプログラミング

DC電子負荷の動作モードDUTの負荷テストの種類を決めたら、負荷のモードを選択する必要があります。電子負荷の一般

的な動作モードとしては、定電流(CC)、定電圧(CV)、定パワー (CP)、定抵抗(CR)があります。

電子負荷をあるモードにプログラムすると、モードを変更するまでそのモードで動作し続けます。

あるいは、過電力や過熱などの障害条件が発生したときにもモードが切り替わります。

以下に示す電流、抵抗、電圧、パワーのモードパラメータは、モードを選択した後でプログラム

可能になります。フロントパネルからモードを選択するか、バスを通じてプログラムした場合、

関連するパラメータのほとんどは入力で有効になります(例外についてはモードの説明の中で述べ

ます)。

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太い縦の実線は、入力電流の関数としての可能な動作点の位置を示します。定電流(CC)ステータ

スフラグは、出力電流が指定された設定にあることを示します。

CC動作では、電圧制限値はプログラムできないことに注意してください。ただし、指定された電

流範囲の許容電圧を超える電圧がDUTによって要求された場合、過電圧保護が起動し、入力はオ

フになります。

電流は、ローレンジとハイレンジの2つの重なり合う範囲内でプログラム可能です。ローレンジは、

小電流設定で高い分解能を実現します。負荷はプログラムしたレンジ値に対応するレンジを選択

します。レンジ値がレンジの重なり合う領域に入る場合、負荷はローレンジを選択します。現在

の電流設定がローレンジの範囲外にある場合、ローレンジで得られる最大値に入力が自動的に調

整されます。その後にローレンジの範囲外の入力値をプログラムした場合、OUT OF RANGEエラー

がフロント・パネル・ディスプレイに表示されます。

定電流動作(CC)このモードでは、負荷モジュールは、入力電圧にかかわらず、プログラムされた値で電流をシン

クします。

入力電圧パワーのシンクプログラム可能

+OV

負荷電流

最大パワー等高線

I set

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定電圧動作(CV)このモードでは、負荷モジュールは、電源電圧をプログラムされた値に制御するのに十分な電流

をシンクしようとします。

太い縦の実線は、入力電圧の関数としての可能な動作点の位置を示します。

CV(定電圧)動作では、電流制限値が設定されます。線の水平部分に示されているように、負荷電

流が電流制限値設定の範囲内にあれば、出力電圧は常にプログラムされた設定値に調整されます。

CVステータスフラグは、出力電流が制限値設定の範囲内にあることを示します。

出力電流が電流制限値に達すると、ユニットは定電圧モードの動作を中止し、出力電圧は一定に

保たれなくなります。この場合、電子負荷は出力電流を電流制限値設定に調整します。電流制限

値に達したことを示すため、負の電流制限値ステータスフラグがセットされます。電圧が引き続

き増加して、指定された電流範囲の許容電圧または最大パワー等高線を超えた場合、過電圧保護

が起動し、入力はオフになります。

入力電圧パワーのシンクプログラム可能

+OV

負荷電流

最大パワー等高線

V set

I limit

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定抵抗動作(CR)このモードでは、負荷モジュールは、プログラムされた抵抗値に従って、入力電圧に比例した電

流をシンクします。

太い縦の実線は、抵抗設定の関数としての可能な動作点の位置を示します。抵抗スロープの線がR

min(点線)まで下がることで、大電流を流しながら低い電圧を発生します。

抵抗は、低、中、高の3つの重なり合う抵抗レンジのどれかにプログラムできます。負荷は、ユー

ザーがプログラムした抵抗値に対応するレンジを選択します。抵抗値がレンジの重なり合う領域

に入る場合、負荷は分解能が高い方のレンジを選択します。現在の入力設定が選択したレンジの

範囲外にある場合、新しく選択されたレンジ内で実現可能な最も近い値に、入力設定が自動的に

調整されます。その後に新しく選択されたレンジの範囲外の入力値をプログラムした場合、OUT

OF RANGEエラーがフロント・パネル・ディスプレイに表示されます。

入力電圧パワーのシンクプログラム可能

負荷電流

最大パワー等高線

R set

R max

R min

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定パワー動作(CP)定パワー動作では、負荷モジュールは、プログラムされた一定のパワー値に基づいて、DUTから

引き出されるパワーを調整します。

負荷モジュールは、入力の電圧と電流を測定し、測定ADCから送られるデータに基づいて消費電

力を調整します。CPモードでは、対応するプログラミングレンジによって、電圧と電流の測定レ

ンジの選択がオーバーライドされます。電子負荷は、分解能と確度を高めるために、使用可能な

最低のレンジを自動的に選択します。

負荷モジュールには過電力保護機能が組み込まれており、負荷モジュールの出力パワー定格(最大

パワー等高線)を2 %より多く超過することはできません。

入力電圧パワーのシンクプログラム可能

負荷電流

最大パワー等高線

CPset

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適切な電子負荷の選択市販のDC電子負荷には、さまざまな種類があります。アプリケーションのニーズに応える適切な

電子負荷の選択は、かなり手間のかかる作業です。以下に、適切な電子負荷を選択するための基

本的な考慮要因を示します。

• 容量定格

- 最大電圧、電流、パワー定格には、電子負荷が電源の容量を処理できることを確認するためにアプリケーションで必要な情報が含まれています。

• 動的テスト

- 一部の負荷は動的であり、電子負荷の任意波形機能によって、パルス、ステップ、ランプなどのさまざまな機能を実現できます。

• 動作モード ̶ CR、CC、CV、CP

- CC:消費電力テスト

- CR:抵抗の直接の置き換え

- CV:電流源のテスト

- CP:貯蔵容量のテスト

• コンピューター制御 複雑なテストプログラムで、フロントパネルからパラメータを設定できない場合には、 RS-232C、GPIB、またはUSBを使用します。

• 形状 将来の拡張が可能な柔軟性を持つ形状を使用します。

DC電子負荷の形状DC電子負荷には、電源に関連するいくつかの形状が存在します。電子負荷の一般的な3種類の形

状を以下に示します。

1. ベンチトップ

ベンチトップは、ラボ環境で最も一般的な測定器です。この低コストの測定器は、基本的な機能

を備え、設定はフロントパネルから行います。電子負荷には、リモートプログラミング用にGPIB

やRS-232Cなどの基本的なインタフェースが備わっています。新しいモデルの中にはUSB機能を

持つものもあります。

ベンチトップシングル入力電子負荷は、基本的な機能を備えた低コストの測定器です

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2. システム電子負荷

これらは一般的にラックシステムに収容され、主に自動テストシステム(ATE)で用いられます。こ

のシステムは、製造環境に統合され、高いスループットとハイパワー能力(5 kW超)によって、複

数のデバイスを同時にテストします。システムにはLANなどの高度なインタフェースが備わって

います。

3. モジュラー電子負荷

モジュラー電子負荷は、一般的にメインフレームとコンピューティングプロセッサから構成され、

電源ユニットと同じメインフレーム内で連携して動作します。アプリケーションの要件に応じて

さまざまなモジュールを切り替えて使用することで、スケールの拡大縮小が可能な柔軟性を備え

ています。モジュラー電子負荷には一般的に大型のディスプレイが備わっており、基本的な解析

をトレンドチャートに表示できます。下の図に示すN6705Cは、USBおよびLANインタフェース

を備えています。

モジュラー電子負荷は、製造環境で多く用いられます。この測定器は高さ1Uのメインフレームに

容易に追加できます。ほとんどのテストシステムにはすでに電源があるため、負荷を容易に追加

できます。メインフレームではフロントツーバック冷却が使用されているため、1Uのラックスペー

スしか必要としません。上の図に示すN6700Cには、LANとUSBが備わっています。

ラック構成に使用されるシステム電子負荷(主にATEテスト用)

モジュラー電子負荷は、製造環境でのテストに便利です

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11本書の情報は、予告なしに変更されることがあります。© Keysight Technologies, 2019, Published in Japan, January 18, 2019, 5992-3625JAJP

詳細情報:www.keysight.co.jpキーサイト・テクノロジー株式会社本社〒192-8550 東京都八王子市高倉町9-1

計測お客様窓口受付時間 9:00-12:00 / 13:00-18:00(土・日・祭日を除く)

TEL:0120-421-345 (042-656-7832) | Email:[email protected]

まとめ電子負荷は電源から電流をシンクする測定器であり、直交座標系の第2象限と第4象限で動作し

ます。パワーエレクトロニクスやエネルギーの分野で用いられます。高品質の電子負荷は、複

雑なダイナミック負荷を、安定した信頼性の高い入力でシミュレートします。一般的な動作モー

ドには、CC、CV、CP、CRの4種類があります。電子負荷にはさまざまな種類があり、アプリケー

ションのニーズに応じて選択できます。

詳細については、Keysight.comのDC電子負荷をご覧ください。