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25 フォルメンに関する一考察(2) - (1986年10月15日 受理) A Study on the Rudolf Steiner School's " Kazuji Mogi 1.はじめに 本稿は,ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861-1925)の創設した 学校(Freie Waldolfschle, 1919-)で行われている「フォルメン線描」 ( フォルメン)の考察を通して,美術教育学あるいは芸術教育学に形態教育的視座を導入しようと試 みるものである。 本研究は,シュタイナー教育が色彩と形態の教育をそれぞれ別のものとして捉えている点に注目 し,従来両者の区別を不明瞭に行ってきたことが,造形教育全体の混迷の要因となってきたという 観点から,フォルムはフォルムによってのみ教育されるという形態教育論をシュタイナー学校のフォ ルメンをモチーフに考察する。シュタイナーにとって,精神(Geist)とは客観界としての精神世 界に存在するが,そこに踏み込んだ時,はじめて教育を含むすべての学問は現状の硬直を打開する ことができる。拙論は,シュタイナーが「フォルムは精神から様々に語る1)」,つまり形として残 存するものはすべて精神的なものを留めるという点を取り上げる。すなわち,造形教育の本鰹とは, 色彩世界への浸透とともに,フォルムそのもので思惟すること,いわば造形教育-フォルム思考と する教育論を目論む。 前稿2)では, 「フォルメン線描の実際」と題し,フォルメンの実例を分析・分類し,その裡「a. フォルメン0-教育はフォルムから始まる(書くための準備)-」, 「b.フォルメン1一直線と曲 線-」, 「C.フォルメン2一文字への導入として-」の3項目に触れたが,今回はフォルメソの中 で量的にも質的にも最も重要と思われる対称形いわゆる「シンメトリー(系)」について詳述する。 以下に掲載する図版は,シュタイナー自身の示したものを除き, Anke-Usche Clauser Riedel著: Zeichnen-Sehen lerner/'(J. Ch. Mellinger書 2.フォルメン線描の実際 d.フォルメン4-シンメトリー系- d・1シンメトリー(Symmetrie)系 シュタイナーは,教育講習会において,フォルメンに関しては三度言及している。 「直線と曲線` の意味」および「気質教育の手段」として示した『教育芸術一方法論と教授法』 (1919)-, 『教育 芸術一演習とカリキュラム』 (1919)5)のはか,北イングランドのイルクレイで行われた『現代の精

フォルメンに関する一考察(2)Riedel著: Zeichnen-Sehen lerner/'(J. Ch. Mellinger書店1968)3)のものを用いた。 2.フォルメン線描の実際 d.フォルメン4-シンメトリー系-d・1シンメトリー(Symmetrie)系

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Page 1: フォルメンに関する一考察(2)Riedel著: Zeichnen-Sehen lerner/'(J. Ch. Mellinger書店1968)3)のものを用いた。 2.フォルメン線描の実際 d.フォルメン4-シンメトリー系-d・1シンメトリー(Symmetrie)系

25

フォルメンに関する一考察(2)

茂 木 - 司

(1986年10月15日 受理)

A Study on the Rudolf Steiner School's "Formenzeichnen" (2)

Kazuji Mogi

1.はじめに

本稿は,ルドルフ・シュタイナー(Rudolf Steiner, 1861-1925)の創設した自由ヴァルドルフ

学校(Freie Waldolfschle, 1919-)で行われている「フォルメン線描」 (Formenzeichnen,通称

フォルメン)の考察を通して,美術教育学あるいは芸術教育学に形態教育的視座を導入しようと試

みるものである。

本研究は,シュタイナー教育が色彩と形態の教育をそれぞれ別のものとして捉えている点に注目

し,従来両者の区別を不明瞭に行ってきたことが,造形教育全体の混迷の要因となってきたという● ● ● ● ● ● ● ● ■ ● ■ ● ● ● ● ■ ● ● ● ●

観点から,フォルムはフォルムによってのみ教育されるという形態教育論をシュタイナー学校のフォ

ルメンをモチーフに考察する。シュタイナーにとって,精神(Geist)とは客観界としての精神世

界に存在するが,そこに踏み込んだ時,はじめて教育を含むすべての学問は現状の硬直を打開する

ことができる。拙論は,シュタイナーが「フォルムは精神から様々に語る1)」,つまり形として残

存するものはすべて精神的なものを留めるという点を取り上げる。すなわち,造形教育の本鰹とは,

色彩世界への浸透とともに,フォルムそのもので思惟すること,いわば造形教育-フォルム思考と

する教育論を目論む。

前稿2)では, 「フォルメン線描の実際」と題し,フォルメンの実例を分析・分類し,その裡「a.

フォルメン0-教育はフォルムから始まる(書くための準備)-」, 「b.フォルメン1一直線と曲

線-」, 「C.フォルメン2一文字への導入として-」の3項目に触れたが,今回はフォルメソの中

で量的にも質的にも最も重要と思われる対称形いわゆる「シンメトリー(系)」について詳述する。

以下に掲載する図版は,シュタイナー自身の示したものを除き, Anke-Usche ClauserとMartin

Riedel著: Zeichnen-Sehen lerner/'(J. Ch. Mellinger書店1968)3)のものを用いた。

2.フォルメン線描の実際

d.フォルメン4-シンメトリー系-

d・1シンメトリー(Symmetrie)系

シュタイナーは,教育講習会において,フォルメンに関しては三度言及している。 「直線と曲線`

の意味」および「気質教育の手段」として示した『教育芸術一方法論と教授法』 (1919)-, 『教育

芸術一演習とカリキュラム』 (1919)5)のはか,北イングランドのイルクレイで行われた『現代の精

Page 2: フォルメンに関する一考察(2)Riedel著: Zeichnen-Sehen lerner/'(J. Ch. Mellinger書店1968)3)のものを用いた。 2.フォルメン線描の実際 d.フォルメン4-シンメトリー系-d・1シンメトリー(Symmetrie)系

26 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

神生活と教育』 (1923)6)とト-ケイの『人間本性の理解からの教授法』 (1924)7)であり,この裡後

の2者はシンメトリー図形に関し言及している。すなわち,シュタイナー自身が直接示唆したフォ

ルメンの大部分は,シンメトリーに類するものということである。これは,形の世界の中心がシン

メトリーであることを示す事柄のように思われ,フォルメンつまり形態教育に占めるシンメトリー

の重みが理解される。

シンメトリーの練習で形態的に最も単純で基本的なものを,シュタイナーはA 1 (Ilkley講習)クリスマス

とA2 (Weihnachtstangung講習, 1921)8)に示している。 A lは形の誕生のような形, A2では

植物の葉のような形が示され,ともにいわゆる左右の線対象である。ここで,シュタイナーはシン■ ●

メトリー・フォルメンの教授の意義をェ-テル体(Atherisher Leib,生命体または形成力体)と

の関係において,次のように説明している。

「私達が為すべきことは,エーテル体っまり形成力体が,教えられた事柄を,一層完全なものとすること

を可能ならしめるようにしてやることであります。

したがいまして,たとえば幾何におきましては,通常幾何学習の初歩と考えられている抽象的な事柄や

知的な形態から学習を始めてはならないのでありまして,外面的な知覚ではなく,まず内面的な知覚から

始めることが必要で,たとえば対称に対する感覚を強く喚起する必要があるのであります。9)」

シュタイナーによれば,最初の超感覚組織であり,主に生命活動を司るエーテル体は,覚醒時に

教えられたものを睡眠中「独自の震動によって,自然に完全にし,練り上げる傾向を常に有してい

る10)1のである。そして,このエーテル体の活動

はフォルメンを通して指示され,それによって

エーテル体は調和され,刺激され,活発にされ

るという。

*

では,何故エーテル体への働きかけが必要な

のであろうか。考察に際し,通常はあまり耳慣

れない言葉「ェ-テル体」について,その機能

と教育的意味を補足しておこう。前稿でシュタ

イナーの『神智学』 (1904)'-に示された,人間

を霊・魂・体の観点から7つのヒエラルキーに

分けた人間の定義について触れたが,そこでエー

テル体とは肉体の上位に位置する「生命界を司

る植物以上の生物のもっ体」と定義した。ここ

に云う「エーテル」とは物理学用語とは無関係● ●

である。まず, 「人体は思考にふさわしい構造を

もって12)」おり,これは「鉱物界にも存在する

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茂木:フォルメンに関する一考察(2)

素材と力13)」に対応する「鉱物的構造14)1をもち,● ●

「肉体15)5J (Physisher Leib)と呼ばれる。そして,

「人間の中心の座としての脳に向けて組織されて● ● ● ●

いるこの鉱物的構造は,生殖を通して生じ,成長

を通して,完成された形態を獲得する。161っまり,● ●

生あるものは生あるものから生じ,それは「生命●

力17)|によってなされるという。 「人間は鉱物のカ

を体的諸感覚(五感等一筆者註)を通して知覚す

る18)1が,この生命力は通常の感覚では知覚され

ない。しかし,この存在は否定できず,シュタイ

ナーは次のように説明している。

「このような器官が開かれたとき,ひとっのまっ

たく新しい世界が彼の前に出現する。彼は生物の● ● ● ● ● ●

色,匂い等を知覚するだけでなく,生物の生命そ● ● ●

のものをも知覚する。すべての植物,動物の中に,● ● ● ● ● ● ● ●

物質的形態以外に,生命に充ちた霊姿をも感知す●

る。このことを表現するために,この霊姿はエ二● ● ● ● ■ ●

テル体もしくは生命体と名づけられる。19)1

そこでは, 「エーテル体は物体の素材や力の単

なる所産ではなく,物質的な素材と力とを生ある

ものに変えるところの独立した現実的本性である。

20)1っまり,オカルティストにとってエーテル体

は有機体内の有機体を有機的に把捉した客観的本

性なのである。

エーテル体は,シュタイナーの発達観によると

通常7歳で臨月を迎えるという21)。肉体の誕生か

ら約7歳までは,エーテル体はまだ保護膜のなか

で積極的に活動している。つまり,ヒトはエーテ

ル体の作業によって人間になっていくのであり,

それは歯牙交代期(人間のなかで最も硬いものを

自力で作りだす時)に完了する。そして,外界に

出たエーテル体はそこでメタモルフォーゼし,記

憶力を司るようになると云う。ゆえに,第1 ・7

年期(0-7歳)では,身体の発育と五感による

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28 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻

環境の模倣を教育の目標とし,ここでは「意志」

が子どもの内的な基礎となるのである。そのこと

は,第2 ・ 7年期での「感情」-「アストラル体」

と第3 ・ 7年期での「思考」-「自我」の教育を正

しくおこなうための基礎となるのである22)。

ところで,フォルメンは第2・7年期の問にお

こなわれるのであるが,この期間はアストラル体

(Astralisher Leib,感情体)の健全な育成を教

育の課題とする。 「快・不快に代表される感情・

意識を司る動物界と対応する」この体は,未分化

でおおまかな状態にある感情を,豊かで微妙なニュ

アンスが識別できるように活動し,それはやがて

抽象概念を使って,ものごとを論理的に構築して

いく力,思考力となる。ゆえに,アストラル体の

健全な育成は,いわゆる知的早期教育によって防

害・破壊されるのである。フォルメンの教育は,

このような死滅・冷却のプロセスを再びよみがえ

らせる。それは,知性教育の通常のプロセス,頭

部(思考)-胸部(感情)-四肢(意志)を逆さにし

た四肢から頭部へという流れをたどり,知的教育

で硬直化する傾向を柔軟にし,調和的に作用する

のである。

*

さて,シンメトリーにもどるが,例えばAlの

練習は次のようになされる。

「黒板にある図形(青色)を描きそれに線(オレ

ンジ色)を加えて対象図形であることを示し,こ

れが完全なものでないので完成させなければなら

ないことを教え,可能な限りの手段を駆使して,

子どもが自ら欠けた部分を補うようにしてやるの

であります。このようにして私達は,不完全なも

のを完全なものを補完しようとする積極的な内面Drang

的衝動を子どもに覚醒させ,子どもが真に実在的

なイメージを形成するように導くのであります23)。」

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) 29

すなわち,シンメトリー・フォルメンの教授の意義は,日常生活の不完全な事柄を,夜眠ってい

る問に無意識の中で完全な形にするというエーテル体の活動を活性させることであると云える。た

とえば,シュタイナーは, 「夕方に解けぬまま思案していた問題が,朝になると解けた24)」という

例を示しているが,これは私たちが日頃体験することである。シュタイナーは,睡眠中人間の心の

働きは完全に眠り込んでいるのではなく,無意識界で非常に活発な働きをしていると述べている。

ゆえに,シンメトリーの練習は不完全なものを完全にしようとする力を支える,いわばェ-テル体

の養分となるのである。高橋巌氏は,シュタイナーのシンメトリー練習を「形態が調和的に体験さ

れる」こと,つまり直観的対象としての形態と思考をともなう判断の問題としての調和がそこで完

全に結合しているという点で, 「実に見事な教授法」であると述べている。

「シンメトリーですから,縦に線を引き,一方の側に対して対象的な形態を反対側に線で描かなければな

りません。それを子供たちに描かせるのです。これは子供たちにとってもそれほど容易なことではありま

せん。これも子供たちに黒板に描かせたり,他の子供たちは自分のノートに描いたりします。これを描く

ことは子供の心の中にある種の調和の感覚を呼びおこします。それがとても重要なことです。形態が調和

的に体験されるということです。形態そのものは直観の対象ですけれども,調和というのは判断の問題で

す。それは思考の働きを必要とします。ですから,形態が調和と結びっく時に,先に述べた直観的判断力,

あるいは直観的な思考力がすでに働いているということになります。この点でシュタイナーのフォルメン

線描は実に見事な教授法だといえます。これを通して直観と思考という人間の判断力の両輪のようなもの

が,小学二年生においてすでに見事に結びっくのですから25)。」

実際のシンメトリーの練習は,以上のような原

則に従って,複雑なヴァリエーションに展開され

る。ここで重要なのは,フォルメンが固定的に考

えられないこと,つまりその方法はすべて個々の

教師の独創的で柔軟な考えによって,一定時間お

こなわれることである。 (A3, A4参照)

d・2 補う(Erganzungs)練習

シュタイナーは, Torquay講習でB lの図を

示した。シンメトリーの練習との相違は対称軸の

欠落である。 (シンメトリーの軸は初めのうちは,

紙を折ることによって示されるが,後にはほとん

どすべてのシンメトリーの練習は補う練習として

使える。)

「『ごらんなさい。左側はこれだけ下に延びていま

すが,右側はここまでしかありません。しかし,

右側が下まで延びて,もう一方(の左側)もその

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30 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻

点まで延びないと美しくみえません。』このように,

子どもは,図が完全でないので完成させねばなら

ないことを心から感じます。子どもは結局,図に

線を加えます。私はその線を赤で描きます。子ど

もは,もちろん白色で同様に上手に描きます。私

はまた別の色で加えていきます。子どもははじめ

のうちはまだ非常に不器用な態度を示すでしょう。

けれども次第に,思考する直観(ein denkendes

Auschauen)を直観する思考(ein anschauen

des Denken)との均衝をはかりながら発展させ

ていくでしょう。思考が全体のイメージを残して

成長するのです26)。」

対称軸のないシンメトリーの練習は,小さな子

どもにとってはより難しい。補うという方法によっ

て,バランスと調和の感覚はより以上に発達する。

小さな子どもの場合,魂の中で働く知性もしくは

悟性は,まだ未成熟である。むしろ思考はすべて

直観として,具象的形態において発達させられる

べきなのである。心理学者ドンディス(Donis A.

Dondis)が述べるように,人間にとって「知覚

に対するもっとも重要な心理的および物理的影響

がバランスの追求27)」であることはごく当然のこ

となのであろう。 (B2は応用例)

d・3 対応関係(Sichentsprechen)の練習

シュタイナーは,さらに別の線描(Cl-1をraumhaftes Vorstel】en

例示し, 「子どもがこの形態を内なる空間表象と

して心の中に呼びおこすことができるように28)」

と述べている。ここに示される図形は,シンメト

リーの練習の葉の形に対して,花あるいは茎の断

面のような形である。シュタイナーはこの空間表

象を重視し,幾何の教授の場合にも,知的要素が

一方的に求められる三角形などの作図からはじめ

るべきではなく, CMのような「直観しうる空

間表象29)」からはじめるべきだと述べている。彼

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茂木:フォルメンに関する一考察(2)

はCMに続けてCl-2のような外形のメタモル

フォーゼを示す。

「-次に外形の(黄色)を変化させて,子どもがそ

れに応じて内側の形を変えて描くことを悟るよう

にしてやるのであります。この第-の図形の場合

には外側の図形の線は単純でありますが,こちら

第二の図形の場合にはでこぼこになっております。

第-の図形の場合,外の単純な線には内も単純な

線が対応しますが,第二の図形の場合には外のでっ

ぼりには内のへこみが対応するのでありまして,

第二の図形の場合,内の図形を描くときには,人

間の内面的対称知覚によって外側の図形がでっぼっ

ているところでは,内側の図形はへこまさなけれ

ばならないのであります。30)」

また, Torquay講習でもC 2の図を示している。

「私たちは,たとえばこの形を支配する内的・直

観的な法則性の感情を子ども達に呼びおこすこと

ができます。子ども達はきっとこの線がここでひ

とっになり,そしてまた,この線がここで分かれ

るという感覚を持っでしょう。この収束と拡散は,

私が子どもに簡単に体験させることができるもの

です。

次の図では,私たちは曲線を直線にし,そして

子どもは内側の線を調和させなければなりません。

これは8歳の子どもにとってはとても難しい作業

ですが,特にこの年齢においてなされるべきすぼ

らしい仕事です。子ども達がこの種の図形すべて

において,この作業ができましたならば,それが

たとえ子ども達に事前に示されたとしても,すぼ

らしい達成です。皆さんは,子ども達に独力で内

側の線を作りださせるべきです。 -・-これが子ど

も達に形態感覚(Formgefiihl),調和感覚,シン

メトリー感覚,対応関係の感覚等々を教える方法

なのです。31)」

対応関係の練習では,シュタイナーは空間的な

内側・外側の区別を重視している。たとえば,外

側の図形が建物の壁であるなら,この内側の図形

Ia 水平なものHo rizonta l

〔iz^ :?-2補う練習とシンメトリーの練習

垂直または水平の

3b 交 換 ,㍗('/

Jb単純な形

.「)し.=了.

″召ー

1

 

-

 

1

1

-

-

-

 

l

 

 

 

 

一一

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-

_ヽ

 

l

 

 

 

 

 

 

● ■

B^^c.'S^^Bi'v^

Spiegelung

点上

持氏5a 三弁の形,とがったもの

(中点は見えない)5b 角ぼったもの

In Dreier-Form

三^-6 四弁の形

In Vierer-Form

7b

㍍\IJ>

<x.

β∂.βC内側と外側の形を入れかえたもの∂で丸みをおぴていたところがCでは角ぼっている。

8b.8d bで丸みをおびていたところがdでは角ぼっている。

7Cて ∵12+7日b内側と外側を入れかえたもの

∂で丸みをおぴていたところがbでは角ぼっている。

7cJd dで丸みをおびているところがCでは角ぼっている。

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) 33

は内部空間を散歩するときの軌跡のように表現できる。

また,目に見えない中点から, 3つあるいは4つの方向に向かって,フォルメンとそれに対応す

るフォルメンを描くのは易しいことではない。つまり,頭部の作業だけではけっして達成されるも

のではなく,手がスムーズに動くようになるような大変な練習を必要とするであろう。それがフォ

ルメンが意志の訓練になるということなのである。 (牀3, C4は応用練習。むずかしいものは単

純な形であらかじめ練習する。)         ′

d・4 鏡映(Spiegelungs)の練習

Torquayの講習において,シュタイナーは8,

9歳のためのより複雑な上下のシンメトリー図形

を与えている。

「そして,このような事柄から,子どもに物がど

んな風に鏡映するかということについて,イメー

ジを浮かべさせるというところへ移行していけま

す。もしも,ここが水面でここに何か物があると

したら,と子どもにイメージを与えて,それがど

んな風に鏡映するかを示すのです。

このようにして,しだいに子どもを宇宙を支配

している調和の世界に導きいれることができるの

です。32)」

垂直の対称軸をもった左右対称図形を描くこと

と,水平の対称軸をはさんだ反射図形を措くこと

の問にどれほど大きな相違があるのかというのは

ごく当然な疑問であるが,その違いを実習を通し

て体験するところにフォルメンの教育的意義があ

る。ニーダーホイザ-(Hans Rudolf Niederhauser,

1914-1983)ち,シュタイナーの示した初歩的な′

シンメトリーのフォルメンが一見簡単そうに見え

るが, 「外側から眺めただけでは,その教育的効

果は全然評価でき33)」ないこと,そして「それら

の図形がどんなに強く,深く魂に働きかけるのか

を自分で感じとり,読みとるためには,その練習

を何度でも繰り返して描きつづけなければならな

い34)」ことを指摘している。 (D3は応用練習。

7 -13は高学年のための複雑な練習。)

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鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻

l)a

-i-I I

:・':' :':I ...・・ ・・・・・ t.J' ''

†建築学的な練習。シンメトリー,アシンメトリー,

逮旦垂旦2舟の予備練習。鏡映による。

莞責三年3 メタモルフォーゼ。鏡映または

補完で,または相応など。

-m L辞儀4交差のヴァリエーション。鏡映,

対応関係

^v

s*まヾ

5 対立する動き(交換)鏡映で

「芸㌢ ∠宗ヒ~ヽへ*J)--'へ・や/

6 対角線の鏡映。角ぼったもの,丸みのあるもの,

/^ ・ s′<

7 軌道と目標の練習。

L

ll

●●

-

 

 

 

 

 

7

β シンメトリーな形を鏡映させる。

9 シンメトリーな形を鏡映させる。(タテ軸と横軸があるもの)

70鏡映の形全体を裏返す.

(シンメトリー)

11シンメトl/-な形を裏返したものの鏡映。

72対角線の鏡映。

73対角線様のシンメトリーの鏡映。

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) 35

d・5 アシンメトリーなシンメトリー(非対称的

な対称図形�"Asymmetrishe Symmetrie)

または図形の調和(Figuren-Harmonie)

Ilkley講習で示したC lにつづき,シュタイナー

は非対称的な対称図形(E l )を示した。

「まずこのような図形(内部)を描いてやり,こ

れに対応して図形が全体として調和するように外

側の線を描いてやるのであります。さて次に私達

はこの外側の各図形を収欽させずに,むしろ無限

に拡散させるようにするのであります。そう致し

ますと子どもは,この点が逃げ出したがっている

ので線でもって跡を追わなければならないが,飛

び去ってしまっているので跡を追えない,したがっ

て外側の図形が逃げている,つまり拡散している

がゆえに,内側の図形は,これに対応して収縮す

るよう配列して描かれなければならない,という

イメージを獲得するのであります。35)」

EMは外側の穏やかなモチーフが,活発に外

へ向かおうとする内側のモチーフに対して,均衝を保っている。 Elォ2はEMの芸術力・力動的

な反転の図形であり,外側の形態は双曲線状に不定なものの中に拡散してゆき,内側の形態は反転

力の結果,種子状に集中し,再び調和が生みだされる。

ところで,このアシンメトリーなシンメトリーという概念はいろいろな意味で重要である。たと

えば,美術においては, 『シンメトリー』の著者ヴァイルも指摘するように,シンメトリーを意識

したうえで,むしろ故意に一部を破壊しようとした作品を数多く生みだしていることは歴史的事実

である。マグリット(Rene Magritte, 1898-1967)やマレーヴィチ(Kasimir Severinovich

Malevich, 1878-1935)の作品(図3 * 4)に見られるように,絵画・彫刻では具象的・抽象的

作品にかかわらず厳密なシンメトリーは避けられる傾向にある。これは,シンメトロフォビア

(Symmetrophobia)と云われ,人間の視覚の源流にはシンメトリーを欲求すると同時に,それを

完全・絶対的なものとして忌避し,恐怖する傾向を有することと関係すると思われる36)。

また,はじまりに関することすべてが,マクロにおいてもミクロにおいても,対称性に関わると● ● ● ■ ● ●

いうことも興味深い。ビックバンの爆発によりはじまる宇宙の誕生が対称性の破れによって進化す

る。あるいは,陽子・中性子等の素粒子の存在様式の中にみられる秩序,規則性が対称性に根拠づ

けられているなど。このようなことへの興味は尽きないが,そもそも宇宙の始源つまり物質から生

ある命の誕生が対称性を根元とする事実は,私たちにおおいにロマンを与えてくれる。 『遊びと人La dissyんtrie

間』等の作品によって日本でも広く知られるカイヨワ(Roger Caillois)は, 『反対象37)』の著作

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36 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

の中でこれを「反対称の進化論」と題し,対称の賓定性と硬直性を述べている。

「対称は平衝であると同時に首かせであり,安定の要因であるが同時に関節硬直の原因でもあることがわ

かります。持続の欠くことのできない条件ですが,他方,発展を防げ,時が来れば緊急にうち壊さねばな

らない障害物となるものなのです。

対称は,この複雑化の過程のなかに,あらゆる進化を停止させる締め金として周期的に現われます。

対称は,組織がある与えられた状態からより豊かで同時により柔軟な他の状態に移行するのを,禁止

する働きをもっています。対称と進化を問題とするに当たっては,進化とともに対称が現われしかも対

称が進化を停止させるという,対称のこの根本的な矛盾を解決しなくてはなりません。この解決は,対

称の定義の根定からの見直しによってのみ可能となります。すなわち,明確で秩序立った対称が常に

存在しているのではありません。対称もまたあいまいな性質をもち,ほとんど不安定で動揺しているので

す38)。」

カイヨワはこの研究を「対角線の科学」とし,最近流行の学際的3g)研究より広く,学問の縦横無

尽の横断,直接対話をめざす。それゆえ,厳密な意味で証明ができるか否かということよりも本質アシンメトリ

を重視し, 「無対称と無限の対称とを同一のものと考える40)」ことを提案する。つまり, 「どちらも,

組織の全面的な欠如と無秩序の統計学的な平等性とによって完全に無定形で均質である物質の状態

杏,違った角度から名付けたものにすぎ41)」ず, 「この物質はすべて対称を欠いた状態にあるとも,

無限の対称をもつ状態にある42)」と述べる。これは,カイヨワが無秩序を存在の極限の姿とするこシンメトリアシンメトリデシンメトリ

とに起因するが,その最終形のいかんにかかわらず,筆者は対称・非対称・反対称の三者を宇宙が

ひとっの統一体であるというアナロジーと柔軟に融合させたく考える。これについて,訳者塚崎氏

は, 「対称と反対称の弁証法」として,次のように説明している。

「均質で等方性の媒質のなかに,安定に自然に向かう原理によって対象が生まれる。この対称は強固なも

のだが,突如として部分的な破壊が起こり,破壊をうけた構造あるいは組織体は新しい特性を獲得してよ

り高度の水準に移行する。無対称的媒質が安定に自然に向かう原理とは熱力学の第二法則であり,対称に

部分的破壊を生じさせる原理とは反対称的力の原理,負のエントロピー(カイヨワの命名では逆エントロ

ピー)の原理である。これら二つの原理の矛盾・対立がより高次元での総合を生む契機となる。これがカ

イヨワが新たに提唱する弁証法である43)。」

一般に弁証法とは,はじまりとしての正-発展の契機としての矛盾・対立-実現される真理とし

ての総合というプロセスを経るが,カイヨワはシンメトリーの破れ,つまり反を(当然であるが)

規制する。 「すなわち,この反が一定の持続性をもって同一の方向に働く力による正の一部の破壊

であるときに,実りの多い総合が実現される44)」という。

カイヨワの指摘する弁証法的思考は,いわばシュタイナー教育全体の理念と一致する。シュタイ

ナー教育は「自由への教育」 (Erziehung der Freiheit)と呼ばれるが,その自由とは手放しの自

由放任教育ではない。それはある時は自由に見え,またある時は画一的に見えるものである。無限

に伸びる自由(な意志)はそのままでは小さな世界にとどまるが,それはある抵抗にさらされるこ

とによって,より大きな世界へ発展してゆける。その抵抗となるのは,社会性であり,道徳性であ

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茂木:フォルメンに関する一考察(2)

り,そして物理的なものなどである。それは,大

きくは東洋が西洋を体験することによって,あい

まいであったものが正確さを増し認識されるよう

に,意志が認識(思考)の間をくぐりぬけてはじ

めてリアリティーを持っ,そのことなのである。

シュタイナー教育でより高次な人間(認識)が求

められていくというのは,ふたっの対極性,その

対極を往復し,克服し,均衡をはかり,そして新

しい何かを生むということなのである。この学校

の授業は常にそれが第-に配慮されているのだが,

その対極性とは本質的には「目に見える世界」と

「目に見えない世界」の対極性とまとめることが

できる。

アシンメトリーなシンメトリーの練習は,この

ような対極性を頭部からではなく,四肢・胸部か

ら獲得させるという点で重要である。思考のみに

よる認識では真の弁証法的生成は果たされず,そ

れは実際に身体全体を使った経験によってのみエー

テルをゆさぶり,高いヒエラルキーに総合される。

こうした練習に関して,シュタイナーはその教

育的意義を次のようにまとめている。

「--このような作業を通して,私達は子どもに

『非対称の対称』の観念を与えることができ,この

ことによってエーテル体-形成力体が眠りの間に

も震動を持続し,しかもこの震動の持続において,

覚醒時に吸収したものを完成する態勢を覚醒時に

整えてやるのであります。かくして子どもは,朝,

形成力体が内面的・有機的に活動する-肉体も

又そうでありますが-中で目覚めるのであり,

これによって極めて大きな活力が人間に張るので

あります45)。」

低学年のフォルメンで重要なのは,線そのもの

に子どもの精神を集中させ,それによって子ども

の意志の働きが線の運動の中で表現されるように

なることである。つまり,子どもの意志の働きに

E2

4y

Ja 内側への湾曲

二2∂ 外側への湾曲

ル3a 回転.シンメトリー

アシンメトリー

丸み,角(三弁,四弁,五弁の形で。)

4a

壬二

4b r>ノ

∠ksf%

5a ヴァリエーション

外側を変化

≡_l三一

Tb シンメトリー

三十2b アシンメトリー

3b

-=1- I__ ;

_::; -S=4C 対立する動きを

ともなう内側の形二弁,三弁の形。

5b 内側を変化

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m 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

Ea

こぞ'/

ノ(づ17 2つまたは幾つかの形の接合

組み合わせ(構成)のグループ

6 空間のフォルメン

R aum-Fo rmen

円形卵型

四角形楕円形 などの中で,

(幾何学的に理解されるべきでない。)

iFH*>首T)で\仲秋ノVJソ'V-ノ                     外側をj

中ほど弓

⊥∵   ≡-i ≡

2 メタモルフォーゼ水平,垂直。

(:紅〕 〔訂c> 二三二

3 丸いもの,角ぼったものシンメトリー,アシンメトリー

痴(議)4 シンメトリー:丸いもの,

角ぼったもの上下を補完する

三 冠5 鏡映様のもの

右と左を補完する。

β 外側の形とその内側の形,それに1つか2つかまたは

幾つかの形を補う。

まん中の部分が与えられている。

それに1つまたは幾つかの形を補う。

7 シンメトリー

アシンメトリー

外側を最初に中ほどを最初に

内側を最初に(丸みのあるもの,角ばっ

三≡

-:I享10対立する動き一適合させる

丸みのあるものと角ぼったものの組み合わせ

対比の練習とがったものと丸みのあるもの

9 形の補完-内側に描かれたものに外側を,または外側に内側を(丸み,角など。)さかさまにする:適合させる。内から外へ,外から内へ,

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) m

形を与えるということである。高橋氏は,これについて, 「線の運動は運動感覚によって捉えられ」,

「運動感覚を活発にさせる。」 「最初が意志,次に運動感覚,それから形態への関心,この三つがい

つも生き生きと働いていなければならない46)」と説明している。

クラウゼンの示す図で, E2は線的なアシンメトリーなシンメトリーの応用練習であるが, E3

は面的・空間的な形で, 「図形の調和の練習」と名づけられている。 E3で特に前半の図形は,ア●

メ-バあるいは動物の集合のようにより有機的な形態の調和がみられる。これらは,クラウゼンが

示すように,人間や動物の表現を調和よく配置するための基礎となる。つまり,幾何というよりも

絵画へ発展していく素材であろう。

3.ま と め

シンメトリーを厳密な意味で定義することは難しいが,おおまかに, (a)平行移動(translation),

(b)回転対称(radial symmetry), (c)線対称(bilateral symmetry,鏡映・反射)の3つがあげら

れる。 (a)は規則正しい間隔において,同じ要素が繰り返し現われる場合, (b)は与えられた図形が,

定められた点のまわりを-回転するあいだに,規則正しく配置された一つまたはいくつかの位置で,

次々に自分自身と重なる場合, (c)は上下,左右などの軸を中心とする鏡による物体と像の反射の場

合である。これらに「拡大」が加わり,各々の操作の複合使用によって, 14個の基本形式が指摘さ

れている47)。今日シンメトリーの概念は,ある図形の内部で,一つの軸,平面または点を中心に対

応する部分の,形と大きさと位置とが正確に一致していること,あるいは,理論上無限な場のなか

に,同じ図形が正しく配列されていることを指している。宇宙の誕生に示されるように,物理学と

現代数学においては,特に抽象化され,対象の概念を空間的に捉えることを放棄し,一つの集合あ

るいは実験室での一連の変化のなかに,不変の要素が永続的に出現することを指している。

しかしながら,シンメトリーのフォルメンの捉え方は,厳密性でも抽象性でもない。重要なのは,

(シュタイナー教育のすべての場合と同様,)全体的・本質的に捉えることである。したがって,こ

の場合,やはりゲーテの原型の概念,原植物が双子葉植物であるごとく,最も基本的な対称,左右

の対称が中心になるであろう。カイヨワも,他の対称と左右の対称を区別し,人間がこの対称のみ

を期待すること,はかの対称が存在しても,この対称が欠けていると,人間が落ち着かないことを

指摘している。そして,それは人間の視覚の優位がもたらす事実かもしれない。

この意味において,私たちにとってのこの言葉の受容は,幾何学的・空間的以上のものではない。

それは,このシンメトリーのフォルメンにおいてもあてはまるであろう。子どもは,シンメトリー

をはじめは空間的に体験し,それが繰り返しおこなわれる裡に,しだいに生きた概念として血肉化

させていくのである。つまり,幾何学的・空間的な「目に見える世界」でひき起こされる現象を,

フォルメン教育の意識化の過程によって,人間は無意識の裡に「目に見えない世界」のリアリティー

として取り込むのである。それは,シンメトリーに限らず,すべてのフォルメンにおいて可能な事● ■ ● ● ● ● ●

柄であろうが,とりわけシンメトリーが調和を魂とすることによって,よりスムーズに達成される

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40 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

ように思われる。

シンメトリーのフォルメンで獲得されるものは,もちろん描かれることによって「外的なもの」

として視覚化され,提示されるが,シュタイナーがIlkleyやTorquayで与えた,内と外,外と内● ●

の対応の練習に顕著のように,この内-外の緊張関係が問題となる場合は, 「内的」シンメトリー

と呼ばれる。ニーダーホイザ-が指摘するように,ここで問題となるのは, 「内側と外側で平行に■ ● ● ■ ● ● ● ■

運動する同じ円形48)」ではなく, 「特定の円の周りで自由に引かれる対立運動の緊張力(傍点筆者)

49'」なのであり,ちょうどゲーテ的な「高まり50'」であるという。唐突であるが,この中から造形

教育の理念めいたものを探しだすのは,比較的容易に思える。それは,一言でまとめると,形態教

青としてのフォルメンにおいて,形が心ときれいに融和さ● ●

れた状態とでもいえようか。

シンメトリーは古くから芸術とともに歩み,美の問題とシンメトリ

関わってきた。ギリシアにおける古い意味での対称は,

S血nmetros-symCともに)+metron(測る)っまり「部分

と全体とのあいだの節度,つり合い,調和,見事な均衡と

いう観点に一致する言葉51)」であった。ヴァイルも,シン

メトリーを考案するに際し,まず美学的観点からはじめて

いる。

「シンメトリーとは,釣合がとれ調和のあることを意味し,

おのおのの部分が調和して,択つの全体に融合しているさ7品志 望8*6タログダルムシュタットまを表している。 『美』はシンメトリーと結びついている。-

-それは,ある特殊な外観やその応用された物すべての背後

にある,いわゆるプラトン的なイデアにあるものといっても

よい。 ・・-・自然を支配する数学的法則が自然におけるシンメ

トリーの根元であり,また創造的な芸術家の精神の中にその

観念が直観的に実現されるものが,芸術における根源である

と考えたい52)。」

人間という存在は対称性からのがれることはできない。

すなわち,それは(マクロとミクロのコスモスとしての)

人間のなせることすべての部分(教育も当然含まれるが)

に対称性が入り込んでいることの証明なのであろう。

ところで,最近,形に関する研究が目につきはじめた53)。

この要因には,たとえばコンピュータのC.G.機能の拡大

によって,物が容易に視覚表現されることなども直接の要

因にあげられようが,何よりも既成の学が従来の抽象的思

考方法ではゆきづまりを禁じえず,形(視覚化されたもの 2 レオナルド・ダヴィンチ人体のプロポーション

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茂木:フォルメンに関する一考察(2)

3ルネ・マグリット秩序の友

5実際のシンメトリーの練習

41

4カジミール・マレーヴィチ青い三角形と黒い長方形

6実際のシンメトリーの練習

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鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

7実際のシンメトリーの練習

9実際の対応関係の練習

β実際のシンメトリーの練習

10実際の対応関係の練習

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) 43

のみを意味するものではないが)として捉えようという思考方法に解決を求めようとしているよう

に筆者には思われる。現に本年西独ダルムシュタットにおいて,数年がかりで企画・構成されたと

いう「シンメトリー展」が大規模に開催されたことなどは注目すべきことである。そこでは,屋外

の鏡面の反射を利用した視覚の遊び場,対称性をもっ彫刻群が並び,主会場と別館の2会場で,宗

教・民族学・芸術・遊びの領域に及ぶテーマの展示物が約6,000点,多様な文脈のもとで並べられ

ていたという。この展覧会の構成者であるベルント・クレンメルによると, 「単に対象の網羅的な

紹介に意味があるのではなく,じつはもっと深く,対称性が時間・空間の構造から,人間の存在の

すべての背後に働いている基本原理であることを理解することに,現代的な意味があるから54)」と

意図を述べている。

ものの背後に存在するシンメトリー性,そしてそれによる世界(宇宙)の調和。私たち美術教育

に関わるものは,少なくとも美との関連において,意識的にしていく必要があるように思われる。

それは,対称性が美術の教育(形態教育)のひとっの柱となりえるものと思われるからであり,

「目に見える世界」と「目に見えない世界」の両方に貢献できるからである。つまり,形態教育と

して,表現としての美術に,調和・安定という理念が必然的に教育全体の核となるという構造であ

る。私たちは,人間がこの対称性を特別価値あるものとしてきたということをもっと大切にしても

よいのではなかろうか。それは,

「人間自身が同じ対称形に作られているのだから--55)」

1 ) Rudolf Steiner (以下, RSと略記) 'Wege zu einen neuen Baustil, Verlag Freies Geistesleben

Stattgart, 1957 『新しい建築様式への道』 (上松佑二訳 相模書房1978 126頁)

2)拙稿「フォルメンに関する一考察(1)」 (『鹿児島大学教育学部研究紀要』第35巻1984 149-174頁)

3)この本の図版は,シュタイナー学校の生徒とClauserによる絵である。

4 ) RS : Erziehungskunst. Methodisch-Didaktisches, RudoIf Steiner Verlag (以下, RSVと略記)

1974 『ルドルフ・シュタイナー教育講座第Ⅱ巻 教育芸術1 方法論と教授法』 (高橋巌訳 創林杜

1985)

5 ) RS�"Erziehungskunst. Seminarbesprechungen und Lehrplanvort畠ge, RSV 1977 『同上第Ⅲ

巻 教育芸術2 演習とゼミナール』(高橋巌訳 創林社1986)

6) RS : Gegenwartiges Geisteslebeh und Erziehung, RSV 1973 『現代の教育はどうあるべきか

-現代の精神生活と教育-』 (佐々木正昭訳 人智学出版社1985)

7) RS : Die Kunst des Erziehens・aus dem Erfassen der Menschenwesenheit, RSV 1979

8) RS�"Die gesunde Entwickelung des Leiblich-Physischen als Grundlage der freien Entfalt-

ung des Seelish-Geistigew, RSV 1978

9)前掲書6) 236頁

10)同上 235頁

ll) RS�"Theosophie. Einflihrung in ubersinnliche Welterkenntnis und Menschenbestimmung,

Rudolf Steiner-Nachlassverwaltung, Dornnach/Schmeiz 1955 (高橋巌訳 イザラ書房1977)

12)-16)前掲書11) 40頁

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44 鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

17)-18)前掲書11) 41頁

19)前掲書11) 42貢

20)前掲書11) 43頁

21)子安美知子氏はシュタイナーの7年周期発達説を人間が存在した瞬間から四つの構成体(肉体,エーテ

ル体,アストラル体,自我)を持っているが,最初はすべて保護膜におおわれており,それらは7年を● ● ● ●

周期にその保護膜から誕生すると説明している。肉体に対する保護膜,母体以外は,目には見えないが,

それぞれは一定の時期に実在として外に出て活動するという。

22)誕生した感情体は思考力になり,最後の自我が誕生すると判断力となり,個性ある一個の人間が完成す

るとい-ぅ。教育(学校教育)とは,この時期(約21歳)までを担当するという意味で重要である。特に,

第2 ・ 7年期(小学校時代)では,メタモルフォーゼしたエーテル体の作用である記憶力に無理やり大

量の仕事をさせると,感情表現の乏しい人間を育ててしまうことになる。ゆえに,この時期の教育課題

は芸術体験によって,世界を美的に感じとらせるという方法をとるのである。それぞれの時期にはそれ

に適した教育の課題があり,それが適切に通過されていくことこそ重要なのである。

23)前掲書6) 236-237頁

24)前掲書6) 239頁。 「多くの観点からみまして,覚醒時の生活は完成の過程ではなく妨害の過程であり● ● ●

ます。肉体とェーテル体を一定期間そのままにしておいて,アストラル体および自我によってまぬけに

されぬようにすることが私達には必要なのであり,このことを現実の多くの事例が示しております。た

とえば先程のように,夕べにはいくら考えても問題が解けない人の場合であります。朝起きますとその

人は夜のうちに意識せぬままその問題が解けてしまっていることに気が付くのであります。このような

事柄は,決して作り話ではなく実際に起こるのであり,他の実験同様はっきりと証明されてきているの

であります。この事例の場合には一体何が起こっているのでありましょうか。ここではエーテル体が夜

も働き続けており,その間人間は眠っているのであります。もっともこれは常時起こることではなく,

又人間の意志によって生起せしめ得る事柄でもないのであります。」 (240頁)

25)ハンス・ルドルフ・ニーダーホイザー+高橋巌『シュタイナー学校のフォルメン線描』創林社1983

112頁(この本の前半部1-74頁は, Hans Rudolf Niederhauser�"Formenzeichnen, ein padag0-

gisch-klinstlerischer Impuls Rudolf Steiners, Zbinden Verlag Basel 1971の訳である。)

26) ibid.7), SS.72-73.

27) Dondis, D. : A Primer of Visual Literacy, The Massachusetts Institute of Technology

1973 『形は語る一視覚言語の構造と分析』 (金子隆芳訳 サイエンス社1979 28貢)

28) ibid.6), S.176.

29)前掲書25) 21頁

30)前掲書6) 237-238頁

31) ibid.7), S.74.

32) ibid.7), SS.74-75.

33)-34)前掲書25) 33頁

35)前掲書6) 238頁

36)真鍋一男『デザイン技法講座1 ベーシックデザイン-平面構成』美術出版社1965 122-123頁

37) Roger Caillos : La Dissy血trie, Editions Gallimard, 1973 (塚崎幹夫訳 思索社1976)

38)前掲書37) 36頁

39)学際的とは近接学問の接近を云う。

40)-42)前掲書37) 36頁

43)前掲書37) 139頁

44)前掲書37) 140頁

45)前掲書6) 239頁

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茂木:フォルメンに関する一考察(2) 45

46)前掲書25) 116頁

47)シンメトリーの基本形式/1左右対称(鏡映・反射) 2放射対称(回転) 3平行移動 4拡大,二つ

の組み合わせ/5反射回転 6回転移動 7移動拡大 8拡大反射 9反射移動10回転拡大,三つの

組み合わせ/11反射回転移動12回転移動拡大13移動拡大反射14拡大反射回転(真鍋,前掲書36)

119頁)

48)-50)前掲書25) 36頁

51)前掲書37) 25頁

52) Herman Weyl : Symmetry, Prinston University Press,U.S.A., 1952 『シンメトリー』 (遠山啓

訳 紀伊国屋書店1970 3-8頁)

53)後述の参考文献にあげる研究等は皆最近の出版である。これは,坂根厳夫氏が主張するように,最近の

科学が芸術と非常に密接な関連をもちはじめたことなどによるのであろう。

54)坂根厳夫「拡張された次元 欧米・芸術と科学の族12」 (「朝日新聞」 1986.8.26.所収)

55)前掲書37) 29頁。図2のL.ダ・ヴィンチの人体図は,円ないし正方形に内接する四肢を広げた人体のクラヴィス・

ヴィトルヴィウス的人間像を図解している。人体(-シンメトリー)は宇宙の調和と同調した「普遍ウニヴェルサリース

の鍵」の鍵穴であることを示す。

図版/出典

Al シンメトリー(Symmetrie)の練習/RS, ibid.6)

A2 同上/RS, ibid.8)

A 3 同上/Anke-Usche Clauser, Martin Riedel : Zeichnen-Selen lernen/- (以下, z.s.と略記),

J. Ch. Mellinger Verlag GmbH Stuttgart 1968

A4 同上/z.s.

B l 補う(Erganzungs)練習/R.S., ibid.7)

B2 同上/z.s.

C l 対応関係(Sichentsprechen)の練習'R.S., ibid.6)

C2 同上/R.S., ibid.7)

C3 同上/z.s.

C4 同上/z.s.

D l 鏡映(Spiegelungs)の練習/R.S., ibid.7)

D 2 同上/Niederh畠user, ibid.25)

D3 同上/z.s.

El アシンメトリーなシンメトリー(Asymmetrishe Symmetriej/R.S., ibid.6)

E2 同上/z.s.

E 3 図形の調和(Figuren-Harmonie)/Z.S.

E4 同上/z.s.

図1 『シンメトリー展』のカタログ表紙,ダルムシュタット市文化センター1986/坂根,前掲54)

図2 レオナルド・ダ・ヴィンチ「人体のプロポーション」1485-90年ころ 紙,ペンとインク 34.2×22.3cm

ヴェネツィア,アカデミア蔵/裾分一弘編集解説『レオナルド・ダ・ヴィンチの素描』岩崎美術社1986

図3 ルネ・マグリット「秩序の友」 1964 99×81cm/ルネ・パスロン『シュルレアリズムと画家叢書-1

ルネ・マグリット』 (巌谷国士訳 河出書房新社1973)

図4 カシミール・マレーヴィッチ「青い三角形と黒い長方形」 1915年ころ カンヴァスに油彩66.5×57cm

アムステルダム,市立美術館/『現代の絵画16 モンドリアンと抽象絵画』ファブリ/平凡社1975

図5 実際のシンメトリーの練習/前掲書25)

図6 同上/前掲書25)

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鹿児島大学教育学部研究紀要 教育科学編 第38巻(1986)

図7 同上/前掲書25)

図8 同上/前掲書25)

図9 実際の対応関係の練習/「ルドルフ・シュタイナー教育講演会一知性の教育について-」 新宿厚生年

金会館1980. 7.5-6.講師ホルデ・ベスナ-

図10 同上/同上

参考文献

1 ) RS : Allgemine Menschenkunde als Grundlage der Padagogik, Rudolf Steiner-Nachla^ver-

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