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ISSN 1346-9029 研究レポート No.445 July 2017 ソーシャル・イノベーションの可能性と課題 -子育て分野の日中韓の事例研究に基づいて- 上級研究員 趙 瑋琳

No.445 July 2017 - FujitsuGoogle Scholar1で世界における“Social Innovation”(ソーシャル・イノベーション) というワードを含む学術論文数の推移を調べてみると、その数は2005年の1,000件以下か

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ISSN 1346-9029

研究レポート

No.445 July 2017

ソーシャル・イノベーションの可能性と課題

-子育て分野の日中韓の事例研究に基づいて-

上級研究員 趙 瑋琳

ソーシャル・イノベーションの可能性と課題

―子育て分野の日中韓の事例研究に基づいて―

上級研究員 趙 瑋琳

[email protected]

【要旨】

近年、社会課題に対して、革新的で、持続可能な手法で解決し、経済的価値のみならず

新たな社会的価値の創出を目指すソーシャル・イノベーションの重要性は広く認識される

ようになっており、それに関する研究も増えている。ソーシャル・イノベーションを推し

進める政策や先進事例の研究は、欧米が先行しているが、様々な社会課題が深刻化してい

るアジアでも、ソーシャル・イノベーションに対する関心が高まり、政策策定や事例支援

などが急速に進展している。

本研究は、東アジアの日本、中国、韓国を対象に、ソーシャル・エコシステムの形成に

おける制度や政策、支援の進展と動向を比較分析し、ソーシャル・エコシステムの状況と

形成のメカニズムを明らかにする。日中韓 3 カ国の共通課題の一つである少子高齢化に焦

点を当て、子育てを取り巻く環境を考察したうえで、小学校までの子どもを対象にサービ

スを提供している事業をケースとして取り上げる。日本の「放課後アフタースクール」は

地域資源の活用に注力し、地域社会との協働で成長を遂げている。「森のようちえん全国ネ

ットワーク」は自然教育のコンセプトを共有し、自発的につながることによって、活動の

拡大を図っている。中国の「億未来社区児童運動館」は社会的企業としての発展を目指し、

「社区」に根差したサービスを展開している。「自然の友ガイア自然学校」は先駆的な NGO

である自然の友から脱皮し、社会資本を豊かにしようとしている。「谷雨千千樹」は各地方

政府との連携をベースに、活動の範囲を広げている。韓国では、親達の共同意識のもとに、

共同育児の「ウリオリニジップ」、本質的な教育を求める「三角山ゼミナン学校」が設立さ

れたが、それを起点に、地域の住民たちが共同でニーズに応えることによって、生協やコ

ミュニティカフェなどの活動がどんどん生まれ、まちづくりとして有名なマウルまで発展

している。

経済社会を変える力としてソーシャル・イノベーションに期待が寄せられており、可能

性を秘めている。一方、ソーシャル・エコシステムの多様化や、社会的企業のフロンティ

ア的な存在からスケールアップとスケールアウトまでの昇華、ソーシャル・イノベーショ

ンを引き起こす新たな担い手の育成など、克服すべき課題も多くある。

キーワード:ソーシャル・イノベーション、ソーシャル・エコシステム、子育て、日本、

中国、韓国、マウル、社区

目 次

1. はじめに .......................................................................................................................... 1

2. 日中韓のソーシャル・エコシステムの状況と特徴 ........................................................ 3

2.1 日本の状況 ............................................................................................................... 4

2.2 中国の状況 ............................................................................................................... 5

2.3 韓国の状況 ............................................................................................................... 8

3. 子育てを取り巻く環境 .................................................................................................. 10

4. 事例研究 ........................................................................................................................ 12

4.1 事例の選定 ............................................................................................................. 12

4.2 日本の事例 ............................................................................................................. 14

4.3 中国の事例 ............................................................................................................. 16

4.4 韓国の事例 ............................................................................................................. 21

5. 考察と示唆 .................................................................................................................... 25

参考文献: ............................................................................................................................ 28

1

1. はじめに

Google Scholar1で世界における“Social Innovation”(ソーシャル・イノベーション)

というワードを含む学術論文数の推移を調べてみると、その数は 2005年の 1,000件以下か

ら 2014年には 6,710 件に達しており、ソーシャル・イノベーションに関する研究が急増し

ている。ソーシャル・イノベーションは、これまでの技術や経営に焦点を当てられたイノ

ベーションの含意だけでなく、とりわけ社会課題に対して、革新的で、持続可能な手法で

解決し、経済的価値のみならず新たな社会的価値の創出を目指すものである。近年、ソー

シャル・イノベーションの重要性は広く認識されているようになっている。

趙・李(2016)は、ソーシャル・イノベーションに関する先行調査研究2をレビューした

うえで、ソーシャル・イノベーションを「社会改良と社会変革の性質」と「特定のキャパ

シティを向上させる具体的なアイデア、組織、働き方」の二つの考えにまとめた。ソーシ

ャル・イノベーションの到達点として「納得のできる生活世界の構築」を提起し、ソーシ

ャル・イノベーションを引き起こすために、様々なプレーヤーの協働が必要で、協働を成

功させる仕組みづくりと新しい社会的価値の創出につながるプラットフォームづくりが不

可欠と提言している。特に、ソーシャル・イノベーションを生み出す理想的な仕組みは、

社会的事業による新しい社会的価値を顕在化させ、浸透させていく仕組みと主張している。

この仕組みの特徴として、「意識啓発に頼らない社会起業家の創出」、「社会起業家とそのス

テークホルダーとの関係性(ネットワーキング)の促進」および「多種多様な協働の契機

と場の提供および市場における継続性と社会における影響力の拡大の支援」の 3 点が挙げ

られる。広範な意味を持つソーシャル・イノベーションは、個別の起業家ないし特定のタ

イプの企業(社会的企業)の活性化だけではなく、ソーシャル・イノベーションに向かう

ために必要な社会的土壌とエコシステムの整備を追い求める必要がある。

ソーシャル・イノベーションに関する政策や先進事例の研究は、欧米が先行しているが、

様々な社会課題が深刻化しているアジアでも、ソーシャル・イノベーションに対する関心

が高まり、政策策定や事例支援などが急速に進展している。とりわけ、近年、少子高齢化

や、所得格差、地域間の発展のアンバランスなど共通的な社会課題の多い東アジアでは、

経済発展だけでなく、ソーシャル・イノベーションを通じた、より良い社会の実現に向け

た法律制定や政策緩和、取り組みなどに注目が集まっている3。

本研究レポートは、東アジアに位置する日本、中国及び韓国を研究対象として、制度や

社会課題、支援政策、社会的企業および社会起業家による事業展開の特徴などの比較を行

1 Googleの提供する検索サービスで、主に学術用途での検索を対象としており、論文、学術誌、出版物の

全文やメタデータにアクセスできる。

2 富士通総研研究レポート「ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の役割への模索―先行文

献・資料のレビューを中心に」、

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/2016/report-427.html

3 スタンフォードソーシャルイノベーションレビューが 2017年 3月に特集号「Social Innovation and

Social Transition in East Asia」を出している。

2

い、ソーシャル・エコシステムの形成メカニズムを探究することを目的としたものである。

さらに、日中韓 3 カ国の共通課題の一つである少子高齢化に注目し、子育て分野の具体的

な事例研究に基づいて、国別の特徴を明らかにしながら、ソーシャル・イノベーションの

可能性と課題を探ることとした。

3

2. 日中韓のソーシャル・エコシステムの状況と特徴

ソーシャル・イノベーションにおける重要なプレーヤーである社会的企業(ソーシャル・

エンタープライズ、社会課題の解決を目的とする収益事業を展開する事業体)、社会起業家

(ソーシャル・アントレプレナー、ソーシャル・イノベーションを引き起こす人、社会的

企業を興した人)をサポートするインフラは「ソーシャル・エコシステム」と呼ばれてお

り、その重要性が認識されている。Bloom と Dees(2008)は「社会起業家は、事業のイン

パクトに影響を及ぼすソーシャル・エコシステムの様々な要素(プレーヤーとしての個人

や組織、規範や、マーケット、法律などの外部要因)を認識しなければならない。」4と強調

している。ソーシャル・エコシステムの構成要素として、服部など(2010)は、社会起業

家に直接「人的資源」「資金的資源」「社会的資源」を供給するファクターと、社会起業家

の活動にとってプラスとなる外部要因(メディアの注目度、公共の周知、市民参加度、CSR

の進展、政治的動向)を挙げている。人的資源を提供するソーシャル・エコシステムとし

て、大学教育、マネジメント等経営手法の提供、研修・講座等プログラムによる知識の提

供が挙げられ、資金的資源を提供するソーシャル・エコシステムとして助成、融資、社会

的投資、投資が挙げられている。社会的資源を提供するソーシャル・エコシステムとして

情報の共有とネットワークの構築、場所・事務所の提供(インキュベーション施設)が挙

げられている(図表 1)。

図表 1.「ソーシャル・エコシステム」の整備に必要な三つの資源

資源 具体的なファクター

人的資源 大学教育、マネジメント等経営手法の提供、研修・講座等

プログラムによる知識の提供

資金的資源 助成、融資、社会的投資、投資

社会的資源 情報の共有とネットワークの構築、場所・事務所の提供

(出所)服部など(2010)を基に作成

本研究レポートでは、このような構成要素とは異なる視点を用いる。社会起業家を支援

するサポーターや仲間、政府のアクション、起業行動の前提となる制度的土台である政策

や支援の進展と動向について考察し、比較研究5を行う。今回の比較研究は、日中韓 3 カ国

4 social entrepreneurs must identify the various parts of their ecosystem, including the players

(individuals and organizations) and the environmental conditions (norms, markets, laws) that do

or potentially could influence their ability to create and sustain the organization’s intended

impact。

5 比較研究の必要性について、古屋野・山手(1995)は国際比較研究に関する論説や方法論をレビュー

し、国際比較研究が、複数の国を対象として、その共通性と特殊性を追究し、普遍性と独自性を明確にす

る必要な研究手法と強調している。

4

のそれぞれの経済発展の段階や、社会制度などの違いを考慮しながら、3カ国の共通性と特

殊性を分析し、それぞれ独自の特徴を明らかにする。

2.1 日本の状況

日本は、成熟社会でありながら、課題先進国として、様々な社会課題に直面している。

欧米先進国と比べると、日本における非営利組織(Nonprofit Organization、NPO)の発展

は遅れていたが、1998 年に特定非営利活動促進法(NPO法)が施行されて以降、NPO法人と

しての認証法人数は順調に増えてきている。その数は 2017年 2月末に 5万をも超え6、民間

セクターの発展における重要なプレーヤーとなっている。

日本では、2007 年頃から「ソーシャルビジネス」という言葉が使われるようになったと

いわれている。経産省が 2007年から中小企業や地域経済産業の政策の一貫として、ソー

シャルビジネスに関する議論を進めてきた。「ソーシャルビジネス研究会報告書」7では、ソ

ーシャルビジネスは社会性、事業性及び革新性の 3つの要件を満たす主体として定義され、

組織形態としては、株式会社、NPO 法人、中間法人など、多様なスタイルが想定されてい

る。

また、2007 年は日本では「社会的企業元年」と呼ばれており、ソーシャルビジネス研究

会報告書の公開以降、ソーシャル・イノベーションに関連する調査研究の報告書が多く公

表されるようになった。そして、社会的企業や社会起業家への支援、社会的投資などの動

きが注目を集めるようになったのが、2011年 3月に発生した東日本大震災である。

2014 年には、内閣府から「我が国における社会的企業の活動規模に関する調査」が刊行

されている。この報告書の中では、日本国内の社会的企業8の数は 20.5万社が存在し、それ

ら企業が生み出す付加価値額は 16兆円に及ぶと試算している(図表 2)。

図表 2. 日本における社会的企業の経済規模

企業数(万社) 付加価値額(兆円) 有給職員数(万人)

社会的企業 20.5 16 577.6

対経済全体 11.8% 3.3% 10.3%

(出所)内閣府「我が国における社会的企業の活動規模に関する調査」(2014)を基に作成

6 内閣府 NPOホームページ、https://www.npo-homepage.go.jp/about/toukei-info/ninshou-zyuri

7 経産省「ソーシャルビジネス研究会報告書(平成 20年 4月)」

http://www.meti.go.jp/policy/local_economy/sbcb/sbkenkyukai/sbkenkyukaihoukokusho.pdf

8 この報告書の中で、社会的企業の定義が広く、「社会的課題をビジネスで解決・改善しようとする活動

を行う事業者」としており、中小企業・社団法人・財団法人・特定非営利活動法人を調査対象としてい

る。

5

社会的企業や社会起業家の活動を支援する中間支援組織9も増えている。1993年に起業家

を目指す学生の勉強会としてスタートした ETIC(Entrepreneurial Training for Innovative

Communities、2000年に法人化)はベンチャー起業への支援から、現在では、社会の様々な

フィールドで新しい価値を創造する起業家型リーダーを育成し、社会のイノベーションに

貢献する NPOとして、そして中間支援組織として、様々な支援活動を行っている。

SVP(Social Venture Partners)東京は、アメリカのシアトルで 1997年に始まった活動

を 2001年に日本に持ち込んでスタートした10。SVP東京は、資金や人的資源、あるいは経営

における専門性を長期的に地域の NPOに提供し、NPOの組織能力と活動の継続性の向上に努

めてきたが、近年、ベンチャー・フィランソロピー11に注力している。また、2012年に日本

初の本格的なベンチャー・フィランソロピー組織として設立された SIP(Social Investment

Partners)12は、「社会的事業に対する資金面、経営面の支援を通じて、社会の課題を解決

し、社会的なインパクトの最大化を目指す」とのビジョンを掲げている。

ここ数年、日本では、社会的インパクト投資に関する議論や、ソーシャルインパクトボ

ンド13のパイロット事業、2016 年 12 月に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係

る資金の活用に関する法律」14の成立など、新たな政策策定と政策緩和が進んでいる。

2.2 中国の状況

中国では、2000 年代に入ってから、「社会組織」(社会団体15、民間非営利企業16、ファン

ド・チャリティ)の成長が顕著である。「社会組織」の数は 2001 年の 15.4 万から 2015 年

には 66.3万まで約 4.3倍に増えており(図表 3)、その中で、ファンド・チャリティの数も

9 一般的に必要な資源を仲介し、社会的企業の設立および設立後の事業展開を支援する各種“伴走型”組

織やサービスを指す。ソーシャルビジネス推進研究会の報告書(「平成 22年度地域新成長産業創出促進

事業」)によれば、中間支援組織の充実策として、資金調達、人材育成、事業支援、普及啓発、民間企業

との連携・協働支援といった項目をあげている。

10 2016年 9月 2日に SVP岡本氏へのインタビューに基づく。

11 日本ベンチャー・フィランソロピー基金によれば、ベンチャー・フィランソロピーとは成長性の高い NPO

や社会的企業に対し、中長期に亘り資金提供と経営支援を行うことで事業の成長を促し、社会課題解決

を加速させるモデルである。

12 http://sipartners.org/

13 Social Impact Bond、2010年にイギリスで始まり、ソーシャルインパクトの成果達成を重視する制度で

ある。

14 富士通総研ニューズレター「休眠預金活用法がもたらす影響と課題 -ソーシャル・イノベーションの加

速につながるか」http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/newsletter/2017/no17-002.html

15 ある共同の目標を達成するための会員制団体であり(国家機関以外の組織は組織会員として加入できる)、

主に四つの分野、学術性社会団体(学会や研究会など)、専門性社会団体(自然科学領域の促進会など)、

業界社会団体(協会など)、連合性社会団体(業界を超えた協会や同窓会など)が含まれる。基本は非

営利性である。

16 企業、社会団体あるいは個人が非国有資産を用いて、非営利的な活動でソーシャルサービスを提供する

社会組織である。

6

2004年の 902から 2015年には 4,784に達し、民間セクターの発展に大きな進歩が見られて

いる。団体活動が依然として危惧されている中国における「社会組織」の成長の裏には、

経済発展に伴って、社会貢献意識が萌芽し、社会課題の解決に対する関心の高まりがあり、

新たな法律の施行や規制緩和が後押しした側面もある。

図表 3.中国における「社会組織」の増加(2001 年~2015年)(単位:万)

(資料)中国民政部「民政事業発展統計公報(2001年~2009年)」、

「ソーシャルサービス発展統計公報(2010 年~2015年)」を基に作成

1998年 10月に「民間非営利企業登記管理条例」が施行され、民間非営利企業の数が順調

に増えるようになった。2007 年には「業界協会・商会改革と発展を促進する意見」が打ち

出され、海外の社会団体に関する登記規定が追加された。2008 年から中国のいくつかの都

市では、パイロットプロジェクトの形で「直接登記申請」17が実施されていた。従来は、「社

会組織」の登記については、「社会組織」の性質や活動分野によって、関係監督部門へ申請

する必要があったため、登記条件が厳しく、時間がかかった。「直接登記申請」制度の下で

は、「社会組織」は中国民政部(Ministry of Civil Affairs)に直接申請することができ

るようになっており、監督部門の一本化によって、登記のハードルも低下した。2013 年か

ら「直接登記申請」制度は全国で実施されるようになり、登記のハードルの低下が「社会

組織」の増加につながっていると考えられる。さらに、比較的経済発展の進んだ地域、例

えば、広東省広州市の場合、登記資金の低減や登録住所の制限の緩和18も実施されている。

中国では、ソーシャル・イノベーションの推進力となりうる資金源として、まず行政に

よる「政府購買(民間団体への事業委託)」が挙げられる。たとえば北京市政府では 2009

年から「社会建設専用資金」を設立し、社会サービス、ソーシャルガバナンス、社会参加

の動員、社会環境の改善、調和の取れた社会の構築、およびその他の住民ニーズに基づく

17 業界協会・商会、科学技術、公益・慈善、都市・農村コミュニティサービス関係の「社会組織」が対象

となる。

18 個人の住所や他組織との共有の住所でも登記できる。

15.4

24.426.6

28.832

35.438.7

41.443.1 44.5

46.249.9

54.7

60.6

66.3

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015

7

もの、共産党委員会や政府が重視する関連分野でプロジェクトを募集し、社会組織の応募

を推進している。毎年 2 億 5,000 万元(約 40 億円、1 元=16 円で換算)の基金のうち、1

億元が社会組織への事業委託に用いられてきたという。北京市の各区でも同様に基金を設

け、毎年合計 5,000万元以上が事業委託に用いられている。2010年から 2015年まで、北京

市で社会組織に事業委託を行ったプロジェクト数は 2,732個であり、資金は 4億元を超え、

参加した社会組織は 51,474社におよび、サービス提供の対象者が 2,500 万人に達した19。

2013 年に中国国務院が「国務院弁公庁関与政府向社会力量購買服務的指導意見(民間へ

の事業委託に関する指導意見)」を打ち出して、社会組織への事業委託を促進している。2017

年 1 月には、財政部と民政部がさらに「関与通過政府購買服務支持社会組織培育発展的指

導意見(政府による事業委託を通して社会組織の育成と発展を支援するための指導意見)」

を発表し、政府の委託事業によって、社会組織の育成を行う方向性が明確にされた20。

政府資金による事業委託は、分野、活動の形式、金額、評価の基準の全てにおいて、政

府が主導権を握るため、政府の意図によって左右される部分がある。今までの「政府購買」

の傾向を見れば、「サービス提供型」組織のみが対象とされ、権利擁護団体、純民間シンク

タンクなどが入り込めないこと、さらにはプロジェクトベースで事業資金が投入されるも

のの、組織づくりと人のエンパワーメントには投資されないことが今後改善余地の大きな

問題として挙げられる。

一方、近年、中国政府は公共資源の不足を意識し、社会的企業の発展を推し進めようと

している。社会的企業として活動する社会組織が増えてきており、社会的企業を目指して

いる社会起業家も多く出ている。政府の支援とともに、民間の中間支援組織や、草の根 NGO、

ベンチャー・フィランソロピーなど、社会的企業、社会起業家への支援・育成に力を入れ

ている。

ここで、2006 年に上海で設立された、中国で最も早くから社会起業家の育成に注力する

中間支援組織である NPI(Non Profit Incubator、恩派)を詳細に説明する。NPIは「ソー

シャル・イノベーションを助力し、公益人材を育てる」ことをミッションに掲げ、創業期

の草の根の「社会組織」と社会的企業の育成に努めてきた。「公益インキュベーター」とい

うモデルを最初に創り出したのも NPI であり、現在、中国の多くの都市に普及している。

2016 年までに 500 以上の公益組織を孵化しており、事業は貧困扶助、教育、環境保護、青

少年の健全育成、障害者支援、コミュニティサービス、ソーシャルワークなど多様な分野

に及ぶ。そのうち中国の公益領域を代表する組織に成長したところも少なくない。

スタートアップを主旨とする公益孵化モデルだけではなく、NPIはさらに「公益創投(社

会創造投資)」「政府購買入札プラットフォーム」「連合募金」「公益業界交流展示会」「企業

19 「政府による社会組織への事業委託の実践の探索と創造の研究―北京市社会建設専門資金による社会組

織への委託を事例に」http://www.cssn.cn/dzyx/dzyx_xyzs/201702/t20170228_3433862.shtml

20 http://www.mcprc.gov.cn/whzx/zxgz/shzzgl/shzzzcfg/201701/t20170111_477148.html

8

CSR コンサルティング」「コミュニティ総合発展事業モデル」など、一連のモデルとなりう

る模索を行っている。その結果、「社会組織」の能力向上と業績評価、コミュニティの公共

スペースの委託管理、ソーシャルインパクト投資、社会的起業メディアなどの分野におい

て、分厚い経験と理論の蓄積を獲得した。

NPI は孵化させるだけではなく、自らも立て続けに 20 以上もの社会サービス機構や基金

会、社会的企業を創業し、その業務範囲は全国 40以上の都市に広がっている。2016年まで、

NPI は数千を数える民間の公益組織の成長を支えるサービスを提供しており、80,000 平米

を超えるコミュニティ公共サービス空間の運営を担っている。現在、NPI の事業は社会起業

支援にとどまらず、コミュニティづくり、公益コンサルティング、社会的企業投資なども

含まれ、中国で最も影響力のある公益中間支援組織となっている。

2.3 韓国の状況

韓国は関係法律や政策の整備において先行している。2007 年に「社会的企業促進行動」

が打ち出され、同年 7月に、アジアでは唯一、社会的企業の活動を支援する法律である「社

会的企業育成法」が施行された。同法は社会的企業を支援することで、社会的課題解決の

ためのサービスの充実や雇用創出を実現し、社会統合と国民生活の質的向上に寄与するこ

とを目的としている。法律制定の背景には、増加する社会福祉・教育・保育等社会サービ

スに対応しつつ、就労の場を生み出す必要があった21。これに沿って、基本計画を 5年毎に

策定し、第一次基本計画(2008~2012 年)の下では、社会的企業数は 2007 年の 55 から、

2012 年には 774 までに増加し、社会的企業の従業員数も 2007 年の 1,403 人から 2012 年に

は 18,689人に増加している22(図表 4)。

第二次基本計画(2013~2017 年)では、ア)社会的企業の持続可能性の強化として、社

会的企業の市場開拓支援や財政的支援と投資拡大、公共調達の拡大、助成金制度の改善;

イ)オーダーメイド型支援制度の確立として、コンサルティング・サービスの拡大と効率

化、支援組織の能力およびインフラ強化、研修の拡大、継続的サービスの提供;ウ)社会

的企業の役割の拡大と成果普及として、社会的企業の役割の拡大、成功モデルの普及、社

会的企業の責任強化、社会的企業に関する合意の普及;エ)民間企業と地域社会の協力関

係強化として、民間企業の支援強化、民間部門の人的支援と社会的企業のつながりの強化、

社会的企業と関連地域社会や産業との交流推進、の四つの分野における主要政策課題を掲

げている23。2013 年、2014 年にはグローバル社会的経済フォーラムがソウルで開催され、

2015年 8月時点では 1,382社が社会的企業に認定される24など、社会的企業の育成支援が進

んでいる。

21 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_8/korea_01.html)

22 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2013_2/korea_01.html)

23 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2013_2/korea_01.html)

24 http://www.shukousha.com/column/hirota/4354/

9

図表 4.韓国における社会的企業の認証

年度 申請数 認証された数 活動中の数

2007 166 55 45

2008 285 166 148

2009 199 77 76

2010 408 216 209

2011 255 155 154

2012 386 142 142

合計 1,699 811 774

(出所)韓国社会的企業振興院の資料を基に作成

同時に、支援団体として、社会的企業の発掘と成長を促す「韓国社会的企業振興院」(Korea

Social Enterprise Promotion Agency)25や市民参加型シンクタンクとして、ソーシャル・

イノベーションに関する政策提言や公開セミナーを積極的に行うことで名高い「希望製作

所」(The Hope Institute)26がある。

韓国におけるソーシャル・イノベーションの推進において、ここで特筆したいのが、ソ

ウル市長である朴元淳(パク・ウォンスン)氏のけん引役である。2011 年にソウル市長と

なった朴元淳氏は、弁護士でありながら有名な社会運動家として、社会的企業や市民活動

を作り出したことから、2000 年にビジネスウィーク誌「社会変革を進めるアジアの指導者

50 人」にも選ばれた。朴元淳氏はソウル市長となってから、市民参加型の行政や社会福祉

の充実などに取り組み始めた。現在、ソウル市はソーシャル・イノベーションの推進複合

施設であるソウルイノベーションパーク(Seoul Innovation Park)の建設を大いに進めて

いる。ソウルイノベーションパークはすべての世代のニーズをカバーするために、フード

パーク(Food Park)、アートパーク(Art Park)、若者フィールド(Youth Field)、シアタ

ーパーク(Theater Park)、アップサイクルパーク(Upcycling Park)、コミュニティパー

ク(Community Park)などの個別エリアが設けられている。インフラ整備から始まったが、

法人格を持つ中間支援組織であるソウルイノベーションセンター(40 人の常勤スタッフ、

所在の区の公務員も常在)が運営し、市民の活動を中心とした支援サービスの提供などソ

フトな部分に力を入れている。現在、ソウルイノベーションパークには社会的企業など約

165 の団体27が入居しており、官民協働で、ソーシャル・イノベーションを推進する複合施

設だけでなく、新しい社会づくりの実験の場にもなっている28。

25 http://socialenterprise.or.kr/eng/index.do

26 The Hope Institute、http://eng.makehope.org/

27 家賃がマーケットより 3割安いため、一年ごとに第三者による評価の仕組みを導入し、評価の結果によ

って、パークへの入園が決定される。

28 2017年 2月 14日現地調査、関係者へのインタビューに基づく。

10

3. 子育てを取り巻く環境

本研究では、深刻化している少子高齢化が日中韓 3カ国の共通課題であることに着目し、

従来の枠組みでは課題解決が困難となっている子育て分野の事例を取り上げた。

日本では、90年代からの人口減から少子高齢化に関する様々な議論や改善策が展開され、

少子高齢化の進展に歯止めをかけようとしている。2015年の合計特殊出生率は 1.46(一人

の女性が一生に産む子どもの平均数)となり、1994 年の 1.50 以来の高い水準になった29。

また、2016年の高齢化率(総人口に占める 65 歳以上の人口の割合)は 26.7%となり、日本

は超高齢社会(高齢化率が 21%を超えた社会)になった。

一方、共働き世帯の増加に伴って、育児を取り巻く環境も大きく変わってきて、待機児

童の増加と解消や、父親の育児参加、母親・父親の育児休業(育休)取得などの問題がク

ローズアップされている。厚生労働省の調査では、2016年 10月時点の待機児童数4万 7,738

人のうち、東京都が1万 1975人と最多で、都市部では保育の受け皿の供給不足が続いてい

る30。また、内閣府の資料31によると、父親は長時間労働により育児に関わる時間が先進国

でも圧倒的に少ない。6歳未満の子どもをもつ父親の育児時間を見ると、ノルウェーやア

メリカ、イギリスなどの 1 日 1 時間超と比べると、日本は約 40 分程度にとどまっている。

さらに、男性と女性の育休取得率の開きが依然として大きい。厚生労働省の統計32では、女

性の育休取得率は 2002年の 49.1%から 2015年に 81.5%まで大幅に上昇しているが、男性の

育休取得率は 2002年の 0.12%から 2015年に 2.65%までわずかに上がっている。

日本においては、少子高齢化の課題に早くから取り組んできたため、それに関連する先

行研究が豊富である。とりわけ、アジアの中で、いち早く子育ての社会化(森田(2000)、

相馬(2004))が提唱され、育児ネットワークやそれを可能にする地域社会など「社会関係

資本」(social capital)(相馬(2007)、松田(2008、2010))の重要性が検証されている。

人口大国である中国では、1983 年に国の基本方針として「一人っ子」計画出産政策が導

入されたが、少子高齢化の進展や人口構造の歪みなどの問題が深刻化している。高齢化率

が 2015年に 10.5%に突入し、中国が十分に豊かになる前に、高齢化社会(高齢化率が 7%を

超えた社会)になってしまった33。そのため、33年間実施されてきた「一人っ子」政策はつ

いに見直され、2016 年 1月 1日から廃止することになり、「二人っ子」政策に舵を切った。

29 日本経済新聞、「出生率、2015年は 1.46に上昇 21年ぶり高水準

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO02656230T20C16A5I00000/

30 日本経済新聞、全国の待機児童、4.7万人に増加、

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF31H11_U7A400C1EE8000/

31 http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/ottonokyouryoku.html

32 厚生労働省、平成 27年度雇用均等基本調査、http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-03.pdf

33 中国語では「未富先老」と表現することが多い。

11

中国では「一人っ子」政策がすっかり定着していたため、昔のような「多子多福」34とい

う伝統的な考え方は変わりつつある。女性の教育水準や就職率の向上、子育て・教育コス

トの高騰などの要因で、実際に子供は一人で十分と考える家庭は多い。また、都市部では、

生活スタイルや価値観の変化によって、結婚しない人が出てきているし、結婚しても子供

を意識的に作らない夫婦も増え、出産意欲の低下が顕在化している。農村部では、「留守児

童」(親が出稼ぎで、農村に残されている子どものこと)や「流動児童」35(出稼ぎ労働者

の親と各地を転々とする子どものこと)の問題が深刻化している。

2015年に中国国家衛生計画出産委員会(2013 年に国家衛生部と国家計画出産委員会が統

合した組織)が実施した出産意欲に関する調査では、経済負担(74.5%)、過重な時間・労

力(61.1%)、面倒を見てくれる人がいないことが、二人目を考えない理由となっている。

また、保育サービスが極めて不足しており、0歳~3歳までの乳幼児のほとんどは祖父母が

面倒を見ている。保育園などに入園する割合はわずか 4%前後で、かなり低い水準となって

いる。

韓国も深刻な少子高齢化問題に直面している。2013 年の韓国の合計特殊出生率は 1.187

人で(ソウル市は 0.968 人、韓国の最低記録)、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、

一番低い数字となっている。この数字は現在の約 5,000 万の人口規模を維持するために必

要な合計特殊出生率の 2.1 人を大きく下回っており、韓国政府は少子高齢化と国力低下を

懸念して、少子化対策や子育て支援に力を入れているが、解決の糸口が見えていない。

韓国における女性の雇用や就業率に関しても日本と同様の問題を抱えている。結婚、出

産、育児のため、女性が労働市場から離れてしまう経歴断絶(キャリアブレーク)が起こ

り、これが女性の就業率を引き下げる核心的要因とみなされている36。女性の就業率を引き

上げるために、女性の負担を軽減し、育児と仕事の両立支援が最重要課題の一つとなって

いるが、韓国では、社会的経済的背景から祖父母が孫を育て、ベビーシッターの代わりと

なる「黄昏育児」が急増している。韓国統計庁によれば、2012 年に 510 万の共働き世帯の

うち、祖父母が孫の育児を担当しているところが 250 万と約半分を占めている。経済的な

側面からも祖父母世帯との同居が急増しており、孫の育児のために知識を増やす老人大学

や、孫と祖父母をねらったマーケティングも活発化している37。

34 子供が多いほど、福も多くなるという意味で、ここの福は主に老後の保障を指す。

35 2013年に中国婦人連合会が公表した「中国農村留守児童、流動児童の状況に関する研究報告」によれば、

中国には約 6,000万の「留守児童」がいる。

36 独立行政法人労働政策研究・研修機構 http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2014_8/korea_01.html

37 東洋経済オンライン(http://toyokeizai.net/articles/-/20265?page=1#)

12

4. 事例研究

バングラデシュ出身で、名高いソーシャル・アントレプレナーとして 2006年にノーベル

平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏は、かつて「大きく考えて、小さいことから始める」

と語った。経済社会のスケールから見れば、子育ては小さなことかもしれないが、経済社

会に対する影響は大きい。従来の枠組みでは解決できなかった子育て支援の課題に知恵と

実践が集まり、子育て分野では様々な形のソーシャル・イノベーションが起きている。

4.1 事例の選定

小学校までの子どもを対象にした子育て分野の事業活動から、成長している事業を選ん

だ。日本においては、病児保育に取り組んでいるフローレンス(2004 年設立)や子育てシ

ェアに力をいれている AsMaMa(2009年設立)が有名だが、本研究では、放課後の小学生を

対象に活動している「放課後アフタースクール」や自然体験・自然教育型子育て支援をし

ている「森のようちえん全国ネットワーク」を詳しく分析する(図表 5)。

図表 5.日本の事例

事例 主な活動と特徴

放課後アフタースクール

(2009年設立)

・放課後児童ケア

・地域資源の有効活用

・外部ソーシャルインベストメントの支援による成長

森のようちえん全国ネットワ

ーク(2008年に発足)

・自然体験・自然教育型子育て支援

・コンセプトを共有したネットワーク型

・自発的につながることから生まれた活動と拡大

(企業や財団からの支援有)

(出所)各事例の関係資料、インタビューを基に作成

中国の事例は、「社区」(コミュニティ)をベースに児童の早期教育に注力する「億未来

社区児童運動館」、子どもの自然教育に力を入れている「自然の友ガイア自然学校」、農村

地域の子どもや「留守児童」の教育を高める「谷雨千千樹」の三つを取り上げている(図

表 6)。

13

図表 6.中国の事例

事例 主な活動と特徴

億未来社区児童運動館

(2013年設立)

・「社区」に根差した児童早期教育の展開

・永真基金会が孵化したプロジェクトで、社会的企業志向

・政府、「社区」、億未来の三者の協働

自然の友ガイア自然学校

(2014年設立)

・環境 NGO「自然の友」から脱皮、自然教育プログラムの提供

・「自然の友」が持っている各種資源へのアクセス

・社会資本を豊かにする活動

谷雨千千樹

(2011年設立)

・「留守児童」と「流動児童」をサービスの対象に

・社会投資による孵化した社会的企業

・標準化されたプログラムの開発とその普及システムの構築

(出所)各事例の関係資料、インタビューを基に作成

韓国については、共同育児社会的協同組合からスタートし、共同育児を目指している「ウ

リオリニジップ」(私たち子どもの家)、マウル38型循環経済に取り組んでおり、マウルに根

差した「三角山ゼミナン学校」を考察する(図表 7)。

図表 7.韓国の事例

事例 主な活動と特徴

「ウリオリニジップ」

(私たち子どもの家)

(1994年に設立)

・地域の主婦たちが共同育児を目的として立ち上げた

・コミュニティ本屋さんの放課後スクール機能

三角山ゼミナン学校

(おもしろい学校)

・共同育児から暖かいケア、自由な遊びを目指す代案学校

・マウル学校、マウル住宅、マウルカフェなど地域内の経

済循環を目指す

(出所)各事例の関係資料、インタビューを基に作成

これらの具体的な事例において、ソーシャル・エコシステムがどのように反映されてい

るのかという視点に立ち、それぞれの事例で社会起業家あるいは組織体が、どのようなソ

ーシャル・エコシステムの資源に、どのようにアクセスしたのか、またそれが事業にどう

作用し、展開させたのかという動的な過程に注目する。さらに、アクセスを可能にしてい

る中間支援の機能を、誰がどのように果たしているのかにフォーカスし、それぞれの特徴

を見出したい。

38 韓国の言葉で、もともと村、集落の意味、現在は地域エリアを指す。

14

4.2 日本の事例

(1)放課後アフタースクール

全ての子どもたちに安心で楽しい「アフタースクール」をビジョンに掲げている放課後

アフタースクールは 2005年に設立された。社会全体で子どもを育てる仕組みづくりに注力

し、その取り組みが 2008 年と 2009 年のグッドデザイン賞を受賞した。2009 年に NPO 法人

として事業を広げ、小学校の施設を使って、「学童保育+多様な活動+市民先生」を特徴と

した活動を行っている。従来の学童保育機能(預りの機能)から、教育プログラムの提供、

学童への様々な体験の提供、さらに地域社会の市民先生との出会いまでに活動の幅を広げ

ている。とりわけ、学校の施設を使うため、費用が低く抑えられ、低所得世帯の子どもも

利用できる。地域社会の市民先生の参加を促すことで、子育ての社会化の実現を図ろうと

している。

近年、主な事業内容には、行政や学校からの業務委託としてのアフタースクール運営、

企業向けの CSR 支援や企業の子ども向けプログラムの開発支援および子どもを中心とした

コミュニティづくりの企画・運営といったコミュニティデザインが含まれている。

放課後アフタースクールはベンチャー・フィランソロピー基金や SIP など外部資金への

アクセスが良好な状態で、資金や経営ノウハウの支援を受けている。2013年 12月から 2016

年 12 月までの 3 年間、SIP から 2,000 万の助成金と経営支援(非常勤理事の派遣、人材採

用と組織基盤の確立、社会的インパクトの可視化など)39を受け、子どもの生きる力の向上、

保護者の生活の質の向上および学校と地域が統合した教育環境の実現という大きな社会的

インパクトを生み出している。

これまでは、34名の常勤スタッフで、15校の約 3,000の子どもにサービスを提供し続け

てきている。売上高は順調に伸びており、2016 年に約 2.1 億円に達した。学校からの業務

委託も増え、放課後アフタースクールは持続的成長を目指している。

(写真)放課後アフタースクールのホームページより

39 2016年 9月6日米州開発銀行アジア事務所コンファレンスルームで開催された米州開発銀行・富士通総

研コーポレート・ベンチャリングワークショップの SIP代表理事の白石智哉氏の講演資料に基づく

15

(2)森のようちえん全国ネットワーク

2005 年に森のようちえん初の全国交流フォーラムが開催され、2008 年に任意団体40とし

て、森のようちえん全国ネットワークが発足した。発足時の森のようちえん全国ネットワ

ークは、個人・団体会員がトータルで 68 だったが、2016 年 10 月時点では、個人・団体会

員が約 224となり、7 年間で約 4倍まで増えた。

「森」は森だけでなく、海や川や野山、里山、畑、都市公園など、広義にとらえた自然

体験を指し、「ようちえん」も広義で、乳児・幼少期の子どもたちを対象にした保育・教育

活動のことである41。森のようちえんは、1970年代に北欧で発祥したコンセプトであり、ヨ

ーロッパ各地に普及してから、日本、韓国にも広がった。日本では、自然環境を利用し、

従来の保育形態と異なった幼稚園や保育園、自主保育、野外保育、自然学校など多様なス

タイルで森のようちえんが開設されている。

森のようちえん全国交流フォーラムは、2005 年から年に 1 回、宮城県、北海道、東京、

長野県、愛知県、山梨県などで開催され、参加者の増加によるネットワークの拡大が実現

できた。森のようちえん全国ネットワークは、自然保育指導者養成プログラムを運営し、

人材育成にも注力する。今後は、養成講座を通して、資格認定制度も導入しようとしてい

る。また、運営資金は、助成金や、会費、事業収入・イベント収入(講座、フォーラム、

カフェ)、フォーラム開催時の企業や財団からの資金援助などから構成される。森のようち

えん全国ネットワークは、ネットワーク型の中間支援組織として、会員をサポートしなが

ら、積極的に活動を展開している。

菊田等(2016)は 2014 年と 2015 年に森のようちえん全国実態調査を実施し、日本全国

156施設から得られた調査結果の分析を行った。活動のコンセプトとしてあげられる「子ど

もが自ら育つ力を信じて支援する」、「子どもがおかれている環境を整える」、「自然との関

わりに価値をおいた活動を進める」、「子どもの生きる力を育む」、「子どもの成長を大人み

んなで見守る」および「大人が育ち合う中で子どもを育てる」の相違によって、求められ

る主体が変わると考察しながら、「森のようちえんは広く幼児教育へ貢献し、自然との交流

や、他世代との交流を通して、地域を変え、そして日本を変える、計り知れない可能性を

秘めている」と肯定的に主張している。実際、その可能性は日本にとどまらず、韓国や中

国にも影響を与えている。中国の事例である「自然の友ガイア自然学校」は森のようちえ

ん全国ネットワークとの交流が深く、日本からノウハウや経験を学んでいる。

40 2017年 4月に「NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟」として設立する予定である。

41 2016年 12月 2日のインタビューに基づく。

16

4.3 中国の事例

(1)億未来社区児童運動館

「億未来社区児童運動館」(以下、億未来)は北京永真公益基金会42が孵化し、運営に携

わるプロジェクトであり、社会的企業としての発展を目指している。発足の目的は、「社区」

(コミュニティ)をベースとし、0歳から 6歳までの子どもの早期教育の場づくりとサービ

ス提供をきっかけとして、子どもの成長だけではなく、親たちに対しても教育の場となり、

さらに、コミュニティ内のさまざまな立場、分野の人たちがつながる場としての機能を果

たすことである。活動の趣旨は、「子どもの成長をもって親の成長を促し、親の成長をもっ

て家庭の成長を促し、家庭の成長をもってコミュニティの成長を促す」である43。「社区に

おける親の教育を、政府による公共サービスの委託事業として位置づける」との政策的目

標を掲げている。

億未来は 2013 年に南京で初の開館を実現した。「社区」に根差した活動を行い、とりわ

け 0 歳から 6 歳までの幼児とその親を対象に、標準化されたサービスを提供している。同

時に幼児への読み聞かせや運動の習慣を手がかりに、ゲームや活動のやり方を親に伝え、

実践できるように指導できる専門的なソーシャルワーカーを育成している。そのサービス

内容と実施の方法には、親たちの参加を促進し、地域の多様な資源をつなげる工夫が多く

なされている。

活動する場所の多くは、地方政府の投資でつくられている「社区サービスセンター」で

ある。政府が必要な場所、設備、内装、物品、人件費を全て提供し、億未来の運営ノウハ

ウを購買する形で、億未来が運営を支えている。そのため、ハードなインフラより、億未

来が幼児の教育プログラムを提供し、それを実施できる人材(各地の NPO やボランティア

など)を育成する。現在、億未来が直接運営している児童運動館は北京の 1 箇所のみで、

ほかに全国 28 の都市の 60 の社区で、現地の NPO や NGO などの団体をサポートし、億未来

のモデルで児童運動館を運営してもらっている。

億未来によるソーシャル・イノベーションの取り組みは、北京永真基金会の十数名のメ

ンバーを中心に行っている。こどもに優しい「社区」づくり、都市づくりを意識し、これ

まで、28 の都市、68 の社区、3.4 万の家庭にサービスを提供し、年間 250 以上の「社区」

親子イベントを企画・開催している。億未来の取り組みは、標準化されたプログラムの普

及を、各地の小さな組織の発生と展開に載せて、政府による投資と政策の推進に「結合」

させるところに特徴がある。各地の社区で億未来モデルを展開する NPOや NGO、ソーシャル

ワーカーの個人は一方的に億未来から研修を受けるだけではなく、その相互学習と交流、

グループ形成が促進されている。相互学習の成果がまた億未来モデルにフィードバックさ

れている。

42 理事長の周惟彦氏は豊富なビジネス経験をベースに、社会問題の解決に取り組んでいる女性社会起業家

である。

43 2017年 1月 17日北京現地調査時のインタビューに基づく。

17

(写真)北京市内の東四「社区」にある億未来の活動拠点(現地調査中に撮影)

(2)自然の友ガイア自然学校

自然の友は 1994年に登録された中国初の草の根環境 NGOである。2016 年まで全国では 2

万人を超える会員を擁し、環境教育、環境保護活動、生態コミュニティ、法律に基づく権

利擁護および政策提言などのアドボカシー活動を通して、人と自然とのつながりの再生を

目指し、生態環境を守るだけではなく、「市民を育てる」ことをミッションとしている。そ

の最大の特徴は、どんな事業においても「公衆参与」(市民参加)を重要視し、あらゆる工

夫を行って市民参加を促進しようとしているところである。

自然の友ガイア自然学校(以下、ガイア自然学校)は、自然の友を母体として 2014年に

設立された環境教育・自然教育を専門とする社会的企業であり、数名の自然の友のスタッ

フとボランティアが協同で起業した組織である。それは自然の友の理念とスタイルに基づ

きながらも、自然の友ではできなかった事業を起こした「起業行動」であった。

かつて自然の友においては、環境教育は通常の NGO のように財団に助成を申請し、プロ

ジェクトとして運営してきたが、人々の行動を変えるための環境教育は「プロジェクト」

形式では実現できない。一方、子どもに対する環境教育の需要が高まっている。このこと

に気づいた自然の友のスタッフとボランティア数名が集まり、自然学校を創業するアイデ

アが生まれた。二十数名の仲間から支持を得られ、「北京ガイアコンサルティング有限会社」

を設立し、自然の友と 50%ずつ出資し、一緒に自然学校を開設した。2017年 1月時点では

7 名の常勤スタッフと 2名の非常勤スタッフが働いている。自然学校の運営は「自然学校管

理委員会」が行い、5 名の運営メンバーのうち自然の友から 2名、会社から 3名が参加して

いる。働くスタッフは全員会社の株主でもあるため、ワーカーズコレクティブの形式に類

似している44。

44 2017年 1月 16日に北京現地調査時のインタビューに基づく。

18

(写真)自然を意識した個性豊かなガイア自然学校の北京事務所(現地調査中に撮影)

ガイア自然学校の主な活動は、収益事業となる各種自然体験・環境教育プログラム(受

益者が参加費を支払う)のほかに、非収益プロジェクトの「自然体験先生(自然体験指導

者)」育成プログラムと「親子団」活動がある。2016年度の年間活動回数は 270回(内訳は

図表 8)を超えている。

図表 8. 2016年の自然の友ガイア自然学校の年間活動

活動項目 数

森のようちえん 70

自然を描く 52

公開レッスン・ガイアママ集まり 31

自然北京 23

北京の植物を知る 22

沃思ガーデン 22

自然体験先生 17

親子団 14

サロン 10

冬・夏休みイベント 9

(出所)自然の友ガイア自然学校の資料を基に作成

これらの活動はいずれも「公衆参与」という自然の友の理念を強く反映させたものであ

り、ガイア自然学校に、自らの使命への思いを「常に思い起こさせる」活動となっている。

「親子団」は「自組織」として親たちが自発的に運営し、ガイア自然学校はサポートする

立場を取っている。これまでに 150以上の家庭が参加しており、年間 10回以上活動を主催

している。自然体験先生育成プログラムは設立当初から行っており、すでに 500 名を超え

る卒業者を輩出している。実際、「自然教育という領域はまだ歩み出したばかりで、しっか

19

りとした理念に基づいて行動する仲間たちが必要」という思いから、収益に全くつながら

ず、場合によっては持ち出しも必要な自然体験指導者プログラムを続けている。

ガイア自然学校は非収益事業になぜこれほど多くのエネルギーを注ぎ込んでいるのだろ

うか。それは、「ソーシャル・イノベーションは、社会資本(ソーシャルキャピタル)を豊

かにすることなしには為し得ない」という信念をガイア自然学校が持っているからである。

「社会問題の直接的な解決よりも、社会資本の蓄積こそが、社会的価値をもたらす」と主

張している。親子団は「自組織」の展開を可能にし、自然体験先生の育成は、自然教育と

いう自分たちが起業する領域全般の「土壌づくり」につながる。新しい社会的価値の創出

には、確かに事業のスケールアップ(パフォーマンスの向上、規模拡大と更なる発展)の

が重要だが、それは一つの組織、一つのモデルが普及することによるスケールアップでは

ない。自然の友ガイア自然学校の取り組みは、日本の事例である森のようちえん全国ネッ

トワークと似ており、「多様な小さな自組織の抱き合いによって、スケールアップを図り、

社会資本を豊かにする」ことが特徴である。同じモデルを複製するのではなく、それぞれ

個性的な小さな事業体が連鎖式に展開し、抱き合う形でスケールアップを実現する。親子

団のような「自組織」はその試みの一つであり、その広がりがソーシャルキャピタルの蓄

積への貢献が大きい。

ガイア自然学校の事例において重要な支援機能を果たすのは、自然の友という先駆的な

NGOである。自然の友の長年にわたる活動展開において、数多くのボランティア、環境分野

の専門家や活動家のネットワークが蓄積されている。ガイア自然学校にとっては、自然の

友が提供している設立資金と事務所も大事だが、より大事なのは、自然の友が持っている

人的資源、ネットワーク、知的蓄積へのアクセスである。

(3)谷雨千千樹

谷雨千千樹は 2011 年 10 月に北京楽平公益基金会(Leping Social Entrepreneur

Foundation)45によって設立された社会的企業である。北京楽平基金会は、ソーシャル・イ

ノベーションを求める次のステップとして、直接的なサービス提供だけではなく、中間支

援機能を担うようになり、ソーシャル・イノベーションに関する「思想市場」と「人材市

場」を導くべき、「社会的投資者」となった。その一つの形として注力しているのが、谷雨

千千樹である。谷雨千千樹は、中国の農村部を中心に、「留守児童」や「流動児童」、低収

入家庭の児童に対して、入学前の教育を如何に実施するかという社会的課題の解決を目指

しており、中国における児童教育の平等性を追求することをミッションとしている。

谷雨千千樹は社会的資源(資金や専門家)を利用し、読書や音楽、数学、美術、識字、

科学、教師研修などの教育プログラムを開発する。モデル基地となる幼稚園でこれらの教

45 中国で最も代表的な社会的企業、北京富平学校(農村出身の女性を家政婦としての育成や農村部でのマ

イクロファイナンスなど、貧困問題や低所得者の支援を中心に活動)が母体となって設立した基金会で

ある。

20

育プログラムを実施し、同じ教育プログラムを習得する教師を育成している。同時に、教

育プログラムの普及システムを構築し、ネットを利用した普及や、農村幼稚園、「流動児童」

たちが集まる幼稚園、都市部の低収入層の子どもたちが集まる幼稚園での導入を推進して

いる。そして、実施状況について見回り、確認・評価をし、実施の質を保障していく取り

組みも行っている(図表 9)。

図表 9. 谷雨千千樹の事業運営モデル

(出所)谷雨千千樹公式資料を基に作成

谷雨千千樹はまず、SVPの投資により、教育プログラムの開発に必要な資金と教育分野の

専門家(5、6名)を確保できた。実際、農村部では、中国政府の「幼稚園 3 年建設行動

計画」のもと、インフラの整備が進んでいるが、「いくら立派な施設があっても、たくさん

の絵本が備え付けられても、先生が教え方を知らなければ何にもならない」との認識から、

課題解決の鍵は、幼稚園の先生の能力向上にあると考え、先生の研修を通して、開発した

教育プログラムの習得と活用を図った46。

研修は中国の県レベル(日本の農村部の「市」に相当)で行い、県の教育委員会の協力

を得て、県立幼稚園の教師を対象に教育プログラムのトレーニングを実施する。県レベル

で研修を受けた幼稚園の教師が、その下の鎮レベル(日本の町レベル)に教え、さらに鎮

レベルが村レベルに教えるという「三級研修」システムが構築されている。中国の内陸部

にある甘粛省、青海省、湖北省、貴州省で既に実施し、1000 を超える幼稚園が関わってい

る。しかし、地方政府の協力だけでは、実際の普及と浸透が大きな困難に直面することに

なる。うまく行くかどうかは、現地のパートナー次第になる。地方政府との連携をベース

に、谷雨千千樹からスタッフを派遣し、現地で幼稚園を周り、研修を受けた教師が「きち

んとプログラムを実施しているかどうか」をみてサポートしている。30 人を超えるスタッ

フのうち、半数近くがこのように現地を回っているというが、この方法では持続できない。

46 2017年 1月 16日に北京現地調査時のインタビューに基づく。

教育プロ

グラム

社会資源の投入

サービス対象 (留守児童、流動児童)

推進・普

モデル

基地

21

普及の新たなツールとして、谷雨千千樹は「オンライン」教育のシステムを開発中であり、

研修を受けた教師の WeChat47グループの運営も行っている。

谷雨千千樹の研修事業は無料で行うため、研修を実施する各地域の政府による投資を必

要とする。教育プログラムの開発や各地に行くための旅費など、必要な経費はすべて設立

に関わった北京楽平基金会から出資され、オフィスも北京楽平基金会の中にある。「社会的

投資者」としての北京楽平基金会が考えるソーシャル・イノベーションのスケールアップ

の方法は「スタンダードを作って、普及させる」ことである。しかし、普及のシステムに

おいて、正にガイア自然学校が問題を提起したように、「自組織」による豊かなソーシャル

キャピタルなしでは、困難であることが分かってきた。谷雨千千樹は試行錯誤しながら、

その課題に挑戦しようとしている。

4.4 韓国の事例

(1)ウリオリニジップ(私たち子どもの家)

1994年にソウル市麻浦区に移住した共働き夫婦 25世帯が、待機児童の問題を解決するた

めに、自ら共同育児施設「ウリオリニジップ(私たち子どもの家48)」をつくった。社団法人

「共同育児と共同体教育」(Cooperative Childcare and Education)49によれば、韓国におけ

る共同育児の定義は、日本が提唱している子育ての社会化と含意が一致している。子ども

の健全な成長を親だけの責任に押し付けるのではなく、育児に関わる全ての社会組織や集

団が、未来を担う子どもたちを養っていくことを自覚しなければならない。育児は自分一

人だけで成し遂げられることではなく、自分の子どもを預ける、あるいは人の子どもを預

かるという考え方を超え、「私たちの子どもを共に育てる」という意識の下で,近隣住民や

自分たちが住む地域社会、そして国家と力を合わせることが必要で、子どもたちを社会全

体で「身体的,精神的に健康に養育する過程に積極的に参加すること」が共同育児概念の

核心である50。

設立当時は場所を確保する資金が難題だったが、親達の共同出資で解決した。他の運営

支出については、親達の共同出資と国、ソウル市からの補助金でカバーしている。最初は

賃貸で転々したが、現在は不動産を所有し、安定的に自立的な運営を実現している。

そして、父母協同組合が主体となり、保育士の確保から給食の安全性まで、ウリオリニ

ジップの日常運営に積極的に関っている。ウリオリニジップには有名な「卵論争」(『まち

の起業がどんどん生まれるコミュニティーソンミサンマウルの実践から学ぶ』)の話がある。

47 中国の情報通信技術(ICT)大手会社テンセントが開発したインスタントメッセンジャーアプリで、グル

ープチャットなど機能が充実し、9.2億人超のユーザーを擁する。

48 韓国は、2005 年乳幼児保育法が改正されることによって、保護者 11 名が組合を結成し、設置・運営す

る子どもの家のことを合わせて「父母協同オリニジップ(子どもの家)」と称する。

49 2002年に「共同育児研究院」から改称された中間支援組織である。

50 2017年 2月 16日にソウル現地調査時の「(社)共同育児と共同体教育」(Cooperative Childcare and

Education)に対するインタビューに基づく。

22

25 人の子どもの中で、一人だけアトピーの子どもがいるため、卵を食事に出すか議論が続

いた。24 人の子どもに卵を出し、アトピーの子に出さないというのが、誰にでも考えられ

る一般的な解決方法だろう。しかし、ウリオリニジップの親達は議論を続け、鳥を放牧で

育てて、アトピーの子どもでも食べられる有精卵をとる場所まで見学した。有精卵をアト

ピーの子に食べさせてみて、アレルギーが起きないことを確認し、25 人の子どもに有精卵

を食べさせることでようやく卵論争に結着がついた。この話から、子どもを一緒に育てよ

うという親達の共同意識の強さが浮き彫りになっている。

当然、その共同意識は親達の間だけにとどまらなかった。子どもの成長に伴い、新たな

ニーズが生まれ、コミュニケーションが広がり、コミュニティカフェや、食堂、生協、学

校(代案学校)、劇場、本屋さんなども始まり、「ソンミサンマウル」(ウリオリニジップの

所在地、標高 60メートルのソンミサンという小山をとりまくエリアである)まで発展して

いる。ソンミサンマウルは、韓国国土海洋部の「住みたい都市づくり」のモデルマウルと

して選ばれ、カフェや生協など以外に、ソンミサンマウル祭りや、マウルラジオ放送局、

音楽会など様々な活動が展開されている。現在、ソンミサンマウルは子育てをしたいまち

だけでなく、まちづくりで有名なコミュニティとしても知られている。

共同育児のもう一つの形として、ソンミサンマウルにある本屋さんの放課後スクール機

能を挙げたい。ソウル市内にある出版社が場所を提供しているが、マウルの住民が厳選し

た本の推薦と販売を行い、自立的な運営をしているソンミサンマウルの本屋さんである。

同時に、放課後スクールとしての機能が整備され、放課後の小学生の読書や勉強、遊びの

場でもある。マウルの住民で、本屋さんのスタッフは絵本の読み聞かせやおやつの提供を

し、外遊びもリードするが、親はおやつ代だけを負担する。マウルの本屋さんは子育てと

地域社会とのつながりを意識し、マウルの住民達から信頼される存在であり、共同育児の

実践的な場となっている。

(写真)ウリオリニジップ(一番右はお母さん達の手作りおもちゃ)(現地調査中に撮影)

23

(2)三角山ゼミナン(おもしろい)学校

三角山ゼミナンマウルは行政範囲ではなく、ソウル北部にある三角山をとりまく地域で、

ソンミサンマウルと同様に、住民達のニーズに応えるための活動がどんどん生まれてきて、

住民間のつながりが強いマウルとして知られている。

1998 年に共同育児協同組合「夢見るオリニジップ」がスタートし、従来の共同育児のコ

ンセプト以外に、特に、子ども達を自然と一緒に暮らさせ、自由に遊ばせて、丈夫な体を

作ることが強調されている。子どもの成長につれ、親達は学びが学校という箱物のなかで

の教育で良いか、学びの主体が誰だろうか、従来のような先生と生徒の関係で良いかと既

存の学校に疑問を持ち始めた。そして、学校という枠組みから考え始め、本質的な教育を

求めるために、代案教育をしたく、代案学校51としての三角山ゼミナン学校が設立された。

三角山ゼミナン学校の教育理念は「あたたかいケア、自由な遊び」52である。子ども達に

とっては、親や教師、地域住民からのあたたかい愛情があれば、世界をあたたかく感じら

れ、生きてよかったと思わせることになる。自由な遊びを重視するのは、好奇心旺盛な子

ども、心身ともに健康な子どもを育てられるからである。さらに、遊びと授業の中のチー

ムワークや、地域とのつながりを通じ、他人との関係性を学ばせる。また、親達の学びも

重要で、子ども達の目と合わせ、同じ目線で問題を考えることが重要である。

2016年までに 48人の小学生を有する三角山ゼミナン学校は、父母会、学校の運営委員会、

教師及びマウル理事会が共同運営をしている。三角山ゼミナン学校は認可されていないた

め、最初は国やソウル市からの補助金など何もなかった。ソウル市長が朴元淳氏に変わっ

てから、運営費の 2割が補助されるようになっている。

三角山ゼミナン学校の校長先生は、マウル理事会の理事長も務め、韓国でいわゆる「386

世代」(社会参加の意識が高く、1990年代に 30 才代で、1980年代に大学生で学生運動に参

加した経験を持つ 1960年代に生まれた世代のことを指す)で、社会運動家として豊富な経

歴を持つ人物である。校長先生は学生運動や労働運動での経験をもとに、リーダーシップ

を発揮し、日常生活での関係性の構築を積極的に実践している。そして、その実践が、三

角山ゼミナン学校だけでなく、様々な活動の展開につながって、三角山ゼミナンマウルの

地域内の経済循環を目指している。

51 受験戦争の熾烈な韓国では、既存の学校教育から脱落してしまう子ども達が増えている。代案学校は子

どもの個性を伸ばし、自律的な教育を目指す公教育とは異なる「学校」である(『まちの起業がどんど

ん生まれるコミュニティーソンミサンマウルの実践から学ぶ』)。

52 2017年 2月 16日にソウル現地調査時のインタビューに基づく。

24

(写真)三角山ゼミナン学校(学校の建物、教室、学校の近くにある図書館)(現地調査中に撮影)

韓国における共同育児の実践と普及において、中間支援組織でありながら、会員組織、

運営組織でもある社団法人「共同育児と共同体教育」の役割が大きい。「共同育児と共同体

教育」の設立目的は、全ての子どもたちが望ましい育児の恩恵を受けることができるよう

に、共同育児制度とプログラムを研究、開発、実践し、子ども及び女性福祉、地域福祉の

増進に寄与することである。「子どもの家」という組織、教師および親が会員となり、その

数は 2,000を超えている。「共同育児と共同体教育」は、会員に対する支援事業や、教育活

動、研究活動などを積極的に行っている。主な事業は四つあり、①共同育児協同組合型「子

どもの家」の設立支援及び運営支援事業、②共同育児協同組合型「子どもの家」の教育課

程研究開発と教師トレーニング事業、③地域社会の親子の福祉の向上と障害をもった子ど

ものための統合教育課程の開発と研究事業、④生涯教育施設運営、関連団体との連帯事業、

定期刊行物の発行及び出版事業となっている53。現在、11名のスタッフで、政府からの補助

金はないが、運営費用は会員費や教育の実施費用、有料の支援プロジェクトから捻出し、

活動を展開している。

53 2017年 2月 15日のソウル現地調査時のインタビューに基づく。

25

5. 考察と示唆

本研究レポートは、日中韓 3 カ国の異なる経済発展の段階と社会問題の背景を意識した

うえで、3カ国の共通課題の一つである少子高齢化に着目し、ソーシャル・イノベーション

を生み出す土壌であるソーシャル・エコシステムの比較を試みた。日本と韓国は子育ての

社会化を提唱し、積極的に実践している。それとは対照的に、中国では社会全体で子育て

を支援する認識がまだ低い。子育て分野の取り組みに関する事例研究を通して、ソーシャ

ル・エコシステムが機能しているか、またより機能するために、そのあり方や具体的な展

開を支える資金、技術、場所、スキル、社会関係、さらにアイデンティティを形成させる

理念などの関係性がどうあるべきかを探ってみた。

日本は成熟社会であり、様々な社会課題の解決に挑戦し続けてきた。近年、ソーシャル・

イノベーションに関する議論や実践が増えており、政府や中間支援などの動向が注目を集

めている。日本の事例の取り組みから多様なステークホルダーによる協働意識の強さが見

えてくる。放課後アフタースクールは外部資金へのアクセスが良好で、地域の資源を活か

しながら、地域社会との協働で、大きな成長を遂げている。森のようちえん全国ネットワ

ークは自発的なネットワークの形成を通じて、ソーシャル・イノベーションが追求する新

しい「結びつき」が生まれ、会員の拡大とともに、より大きなソーシャルインパクトを実

現している。さらに、自然教育の育児理念においてリードしている部分がアジアのほかの

国にも影響を及ぼしている。一方、政府の取り組みやソーシャルインベストメント、自発

的なネットワークの形成などがバラバラに進められているため、ソーシャル・イノベーシ

ョンを促す先駆的な要素が見えにくい部分もある。

中国の場合、社会的企業として活動する「社会組織」が増えてきており、社会的企業を

目指している社会起業家も多く出ている。中国政府は公共サービスの不足に対する補完を

念頭に、社会起業家の育成に力をいれ、社会的企業の発展を支える事例が多い。現段階で

は、ソーシャル・イノベーションに関連する活動は、社会的価値の創出というより、政府

や市場の補完として位置づけられている。先駆的な NGO や社会的企業がソーシャル・エコ

システムの構成をより充実させ、場合によっては、中間支援の機能も果たしている。また、

ソーシャル・イノベーションに対するニーズが多くあるが、ニーズを満たすと同時に、ビ

ジョンを明確にした上で、社会的投資によるモデルを作り、モデルの普及を求めるケース

もある。近年、中国では、社会問題の解決にエリートたちが集まるという現象が起きて、

ソーシャル・イノベーションの社会的勢力が形成されつつあるように見えるが、比較的若

い有志者の場合、成功に向けての急進的な部分や「情懐」(思い)で語る部分があるため、

思い、アイデアから実現までの困難や課題に対する十分な意識と忍耐が不可欠になってく

る。

韓国では共同の意識が高く、協同組合54精神、市民運動精神をベースとする取り組みが行

54 2012年 12月に施行された「協同組合基本法」では、5名以上の組合員がいれば、協同組合法人の設立が

可能となり、設立のハードルはさらに低下している。

26

われている。ニーズ先導で、ニーズに基づき協同組合をも立ち上げ、価値観を共有できる

人たちを巻き込んで、共同育児からソンミサンマウル、共同育児から三角山ゼミナン学校

や三角山ゼミナンマウルまで成功できたと考えられる。また、韓国社会では、市民運動を

引き継いで、自分の声や力で社会を変える意識が高いことが韓国の人々の行動力につなが

っている。関係法律や政策の策定が進んでいる一方で、ソンミサンマウルのような成功事

例を全国に普及させようという政府の意図が政府の押し付けに対する懸念の高まりにつな

がっている側面もある。行政による強力な施策と現場での活動の結合が課題であり、行政

による拠点型或いは普及型支援のプラットフォームの作り方の工夫が必要になっている。

「はじめに」でも述べたように、ソーシャル・イノベーションに関する政策や先進事例

の研究においては、欧米が先行している。一方、共通的な社会課題の多い日本、中国と韓

国では、ソーシャル・イノベーションに対する関心の高まりから、政策推進や中間支援の

充実、事例支援など新たな展開を推し進めており、ソーシャル・イノベーションを通じた

より良き社会の実現に努めている。ソーシャルインベストメントが充実しつつある日本、

政策緩和が進み、先駆的な NGO や社会的企業が機能を果たしている中国、法制度の整備や

政策推進に先行している韓国、3カ国の異なる側面も見せている。

日本と韓国の取り組みから考察すると、協働意識と共同精神から新しい「結びつき」が

生まれ、強い相互関係性を持つことが共通する特徴である。中国では、公共サービスの補

完という切実な位置づけをもちながら、ビジョンが先導し、戦略的に普及を追い求めるこ

とが日本と韓国との違いである。一方、制度や政策、現場での取り組みなどを比較し、項

目別にあり/なしを分析して提言することより、日中韓が共通知を洗い出し、学び合うこと

が期待されている。日本はソーシャル・イノベーションをけん引するプレーヤーの育成が

重要であるが、中国は民間によるソーシャルインベストメントの充実に注力しなければな

らない。韓国の場合、社会的企業などが、中国の事例のように政府との連携のあり方を模

索したほうが良いと思われる。

日中韓 3 カ国における協働、共同および補完と特徴付けられるソーシャル・エコシステ

ムのメカニズムは、相違のあるソーシャル・イノベーションの取り組みを生み出した。今

後、3カ国におけるソーシャル・イノベーションの普及を可能にし、さらに加速させるため

に、ここでは特に重要視すべき課題として三つを挙げたい。

まず、ソーシャル・イノベーションの革新的なアイデイアや仕組みを積極的に広げてい

くために、関係機関や、各種資源、資金、インキュベーター、中間支援などソーシャル・

エコシステムの多様化と充実化がより一層求められ、多様なステークホルダーによる関与

が必要不可欠である。さらに、ステークホルダーの役割の分断ではなく、各セクターが持

つ資源やネットワークの相互活用やセクターを超えた連携が望まれている。中国の事例で

ある「谷雨千千樹」は各地方政府との連携をベースに、活動の範囲を広げられた。また、

韓国の「ウリオリニジップ」から考察したように、連携の成功を導く要素として、共有が

大事である。具体的には、ミッションと目的の共有、相互に必要なコミットメントの創出

27

と共有およびリスクの共有が大切である。

次に、社会的企業のフロンティア的な存在からスケールアップ(パフォーマンスの向上、

規模拡大と更なる発展)とスケールアウト(アイデアや事業、仕組みの水平展開、他の分

野への適用)までの昇華がいかに実現できるかである。スケールアップとスケールアウト

によって、ソーシャルインパクトが拡大し、継続性の確保につながると思われるが、スケ

ールアップとスケールアウトまでの道のりは相当険しい。はじめの一歩の踏み出しでは、

フロンティア的な存在である先進事例から、良い経験などを抽出し、ノウハウとして蓄積

されていくことが期待されている。そして、日本の「森のようちえん全国ネットワーク」

と中国の「自然の友ガイア自然学校」の取り組みから分析したように、「多様な小さな自組

織の抱き合いによってスケールアップを図り、社会資本を豊かにする」ことが有効な試み

だと思われる。

最後に、ソーシャル・イノベーションを引き起こす新たな担い手の育成である。この担

い手は、個人の社会起業家である場合もあれば、組織体の社会的企業や営利企業である場

合もあると広範に考えられる。社会起業家は個人と社会との関わりを深め、社会的企業は

社会的課題の解決を目的とする事業を行い、ソーシャル・イノベーションを促進する重要

なプレーヤーである。営利企業には社会にイノベーションをもたらす勢力を主導できる力

があると見られる。この三者がソーシャル・イノベーションを引き起こす重要な担い手と

なり、今後、この三者において、いかに多くの担い手を生み出せるかがソーシャル・イノ

ベーションを加速させる鍵となっている。

かつて米国の経営思想家であるドラッカー氏は「イノベーションを技術革新というより、

社会変革、社会全体に及ぼす影響力との視点から捉える必要があり、イノベーションは経

済や社会を変えるものでなければならない」と指摘している。経済社会を変える力として

のソーシャル・イノベーションは無限大の可能性を秘めていると思われる。今後の研究課

題としては、ソーシャル・イノベーションありきではなく、ソーシャル・イノベーション

の担い手に焦点を当て、とりわけ、スーパーヒーロー論より、社会起業家精神を発揮でき

る社会起業家あるいは組織体の育成とその価値観の形成に注目したい。

28

参考文献:

[1] 趙瑋琳・李妍焱(2016)「ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の役割

への模索―先行文献・資料のレビューを中心に―」富士通総研研究レポート

[2] 趙瑋琳・大内紀知・渡辺千仭(2016)「Social Innovation Activities in Japanese Firms:

A Pilot Study with Text Mining」IEEM2016国際会議論文集

[3] 「ケア労働を通してみた女性のエンパワメントーワーカーズ・コレクティブを事例に

して」(2011)、『生協総研レポート』、生協総合研究所

[4] 服部篤子・武藤清・渋澤健(2010)『ソーシャル・イノベーション営利と非営利を超

えて』日本経済評論社

[5] Paul N. Bloom & J. Gregory Dees (2008) 「Cultivate Your Ecosystem」『Stanford

Social Innovation Review』

[6] 山本隆(2014)『社会的企業論―もうひとつの経済』法律文化社

[7] 古屋野正伍・山手茂(1995)『国際比較社会学』学陽書房

[8] 吉川洋(2016)『人口と日本経済-長寿、イノベーション、経済成長』中公新書

[9] 我が国における社会的企業の活動規模に関する調査(平成 27年 3月)

https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/kigyou-chousa-houkoku.pdf

[10]菊田文夫・藁谷久雄・田中誉人・伊藤めぐみ(2016)「自然体験活動を基軸とする幼

児教育の現状とその展望―森のようちえん全国調査の結果からー」聖路加国際大学紀

[11]森田明美(2000)「子育ての社会化:今、これから」子ども家庭福祉情報 16、P50-54

[12]相馬直子(2004)「子育ての社会化のゆくえ:「保育ママ制度」をめぐる政策・保育

者の認識に着目して」『社会福祉学』45、P35-45

[13]相馬直子(2007)「子育てからワーク・ライフ・バランスを問い直す:世田谷区の子

育て支援から生まれる社会関係資本」『自治総研』350、P37-56

[14]松田茂樹(2008)『何が育児を支えるのか:中庸なネットワークの強さ』勁草書房

[15]松田茂樹(2008)「子育てを支える社会関係資本」『揺らぐ子育て基盤:少子化社会

の現状と困難』勁草書房、P91-113

[16]『まちの起業がどんどん生まれるコミュニティーソンミサンマウルの実践から学ぶ』

(2011)エンパブリック・日本希望製作所編著

[17]P・ドラッカー(1997)『イノベーションと企業家精神』ダイヤモンド社

研究レポート一覧

No.445 ソーシャル・イノベーションの可能性と課題 -子育て分野の日中韓の事例研究に基づいて-

趙 瑋琳 (2017年7月)

No.444 縮小まちづくりの戦略 -コンパクトシティ・プラス・ネットワークの先進事例-

米山 秀隆 (2017年6月)

No.443 ICTによる火災避難の最適化 -地域・市民による自律分散協調システム-

上田 遼 (2017年5月)

No.442 気候変動対策分野における新興国市場進出への企業支援-インドにおける蓄電ビジネスを例に-

加藤 望 (2017年5月)

No.441 シニアの社会参加としての子育て支援 -地域のシニアを子育て戦略として迎えるための一考察 森田麻記子 (2017年5月)

No.440 産業高度化を狙う「中国製造2025」を読む 金 堅敏 (2017年5月)

No.439 エビデンスに基づくインフラ整備政策の実現に向けて ~教育用コンピュータの整備をモデルケースとした考察~

蛯子 准吏 (2017年4月)

No.438 人口減少下の地域の持続性 -エリアマネジメントによる再生-

米山 秀隆 (2017年4月)

No.437 SDGs時代の企業戦略 生田 孝史 (2017年3月)

No.436 電子政府から見た土地所有者不明問題 -法的課題の解決とマイナンバー-

榎並 利博 (2017年1月)

No.435 森林減少抑制による気候変動対策 -企業による取り組みの意義-

加藤 望(2016年12月)

No.434 ICTによる津波避難の最適化 -社会安全の共創に関する試論-

上田 遼(2016年11月)

No.433 所有者不明の土地が提起する問題 -除却費用の事前徴収と利用権管理の必要性-

米山 秀隆(2016年10月)

No.432 ネット時代における中国の消費拡大の可能性について 金 堅敏 (2016年7月)No.431 包括的富指標の日本国内での応用(一) 人的資本の計測とその示唆 楊 珏 (2016年6月)

No.430 ユーザー・市民参加型共創活動としてのLiving Labの現状と課題

西尾 好司 (2016年5月)

No.429 限界マンション問題とマンション供給の新たな道 米山 秀隆 (2016年4月)

No.428 立法過程のオープン化に関する研究 -Open Legislationの提案-

榎並 利博 (2016年2月)

No.427 ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の 役割への模索-先行文献・資料のレビューを中心に-

趙 瑋琳李 妍焱

(2016年1月)

No.426 製造業の将来 -何が語られているのか?-

西尾 好司 (2015年6月)

No.425 ハードウエアとソフトウエアが融合する世界の展望 -新たな産業革命に関する考察- 湯川 抗 (2015年5月)

No.424 これからのシニア女性の社会的つながり -地域との関わり方に関する一考察-

倉重佳代子 (2015年3月)

No.423 Debt and Growth Crises in Ageing Societies: Japan and Italy Martin Schulz (2015年4月)

No.422 グローバル市場開拓におけるインクルーシブビジネスの活用 -ICT企業のインクルーシブビジネスモデルの構築-

生田 孝史大屋 智浩加藤 望

(2015年4月)

No.421 大都市における空き家問題 -木密、賃貸住宅、分譲マンションを中心として-

米山 秀隆 (2015年4月)

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/

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