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2013 8 回マニフェスト大賞 「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成 26 年度 Vol.11 (通算 138 号) 直接請求について 平成 26 12 横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当) 編集・発行

26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

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Page 1: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

2013第8回マニフェスト大賞

「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞

平成 26年度 Vol11 (通算 138号)

直接請求について

平成26 年12 月

横浜市会 議会局政策調査課(法制等担当)

編集発行

第Ⅰ章 はじめに P1

第Ⅱ章 直接請求制度

1 直接請求制度の特徴 P1

2 直接請求制度の種類 P2

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求P3

(1)概要 P3

(2)請求の手続 P4

(3)横浜市における事例について P11

(4)他の自治体における事例について P13

諸外国における住民発案制度P15

2 監査の請求 P17

(1)概要 P17

(2)請求の手続 P17

(3)他の自治体における事例について P19

3 議会の解散の請求 P19

(1)概要 P19

(2)請求の手続 P20

(3)他の自治体における事例について P22

4 議員長及び主要公務員の解職の請求 P26

(1)議員及び長の解職の請求 P26

(2)主要公務員の解職の請求 P30

<参考>横浜市において直接請求に必要な有権者数 P33

諸外国における解職請求制度 P33

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求 P35

2 住居表示に関する変更の請求 P36

(1)概要 P36

(2)横浜市における事例について P36

3 合併協議会設置の請求P37

山梨県道志村からの合併の申入P38

資料(総務省「地方自治月報第 56 号」(P39))

目 次

コラム

コラム

コラム

1

「地方自治は民主主義の学校」という言葉をご存じでしょうかイギリスの政治家

であるジェームズブライスの言葉ですこの言葉の意味は「規模の大きくない地

方政治は直接民主制が実現しやすく一般の人々が民主主義を学ぶには最高の場で

ある」ということと理解されていますしかし現代では地方公共団体といえども

規模が大きく組織も複雑化しています現在の日本の地方自治制度では有権者が知

事や市長などの首長や地方議会の議員を選挙で選び選挙で選ばれた人が地方政治を

行うという間接民主主義が原則となっています

しかしこのような間接民主主義では時として地方自治が機能しないことが起き

うる場合がありますこのような場合に備えて法律で有権者が直接権利を行使し住

民の意思を直接に地方行政に反映させる制度が用意されていますこのような制度を

「直接請求」制度といいますこの制度は国には見られない地方自治制度特有の

ものです

最近では名古屋市の議会の解散の請求や東京都や大阪市の原発住民投票条例の制

定の請求等住民の政治参加意識の向上から地方公共団体に地方自治法(以下「法」

といいます)等に基づく直接請求がなされるケースが増えています

直接請求の制度は議会と密接な関わりもあることから本号では直接請求の制

度の概要について横浜市や他都市の事例と共に御紹介します

第Ⅰ章で記載したとおり今日の日本の地方自治制度では選挙によって議会の議

員及び長を選ぶことによって地方行政に参加する間接民主制が原則となっています

がその例外として直接請求の制度が設けられていますとはいえもともと住民自

らが地方議会の議員及び地方公共団体の長を代表として選挙したものでありそのほ

かの主要公務員もまた代表者によって選任されたものである以上選挙の結果に基

づく地方行政の運営の良否は住民自身の責任であるともいえますこの点から直

接請求権の行使は無条件に許されるものではなく一定の制約が設けられています

(1)一定数以上の住民の参加

個々の住民の単独の権利としては認められていません多数の住民の意思をもっ

て初めて請求することができるため署名簿による住民の連署が必要となります

第Ⅰ章 はじめに

第Ⅱ章 直接請求制度

1 直接請求制度の特徴

2

(2)時期の制限

住民の選挙によって成立した議会就任した議会の議員又は長代表者によって

選任された主要公務員が成立就任又は選任直後に解散や解職を請求されること

はむしろ住民自治の濫用ともいえるので選挙又は就任後の一定期間後に初めて

請求権の行使が認められています

法が規定する直接請求は地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者が

一定の連署をもってその代表者から請求するものであり次のものがあります

(1)条例の制定又は改廃の請求

(2)監査の請求

(3)議会の解散の請求

(4)議会の議員及び長の解職の請求

(5)主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 12条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び

手数料の徴収に関するものを除く)の制定又は改廃を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する

第 13条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の議会の議員長副知事若しくは副市町村長選挙管理

委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有する

3 日本国民たる普通地方公共団体の住民は法律の定めるところによりその属す

る普通地方公共団体の教育委員会の委員の解職を請求する権利を有する

また法以外の法律で定められた同種の制度として

(6)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(7)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律)

(8)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法)

(9)土地改良区総代の解職請求(土地改良法)

2 直接請求制度の種類

3

さらに有権者の一定の連署をもって行う住民発議ともいえるものとして次のも

の等があります

(10)住居表示に関する変更の請求(住居表示に関する法律)

(11)合併協議会設置の請求(市町村の合併の特例に関する法律)

(1)概要

普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権を有

する者」といいます)はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の長に対して条例の制定又は改廃の請求をす

ることができます(法第 12 条第1項及び第 74 条第1項)

本来条例の制定又は改廃は地方公共団体の議会の議決事項でありその提案

権は長及び議会にあります(法第 96 条第 1 項)

この機能が適切に果たされない事態が生じている場合住民に条例の議会に対

する提案権を与えていますしかしながらこの権利は住民が自ら発案して

投票に付し住民自ら決するいわゆる発案権(イニシアティブ)そのものではなく

住民は自らの意思によって条例の制定又は改廃について議会に議決を請求する

にとどまります長は議会を招集し住民の請求に係る条例案を議会の審議に委

ねることになるので最終的な決定権は議会が持つこととなります

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求

地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関する条例

条例のうち地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものは直接請求の対象から除外されています(法第 74 条第 1 項)

これはこれらの条例の改正に対して住民の同意が得られやすく財政に与え

る影響が十分考慮されないまま容易に請求が成立してしまう恐れがあるためで

しかしこのように地方税等に関する条例のみ除外することについては受益

地方自治法

第 74 条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下本編

において「選挙権を有する者」という)は政令の定めるところによりその総数の

50 分の1以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の長に

対し条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものを除く)の制定又は改廃の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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Page 2: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

第Ⅰ章 はじめに P1

第Ⅱ章 直接請求制度

1 直接請求制度の特徴 P1

2 直接請求制度の種類 P2

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求P3

(1)概要 P3

(2)請求の手続 P4

(3)横浜市における事例について P11

(4)他の自治体における事例について P13

諸外国における住民発案制度P15

2 監査の請求 P17

(1)概要 P17

(2)請求の手続 P17

(3)他の自治体における事例について P19

3 議会の解散の請求 P19

(1)概要 P19

(2)請求の手続 P20

(3)他の自治体における事例について P22

4 議員長及び主要公務員の解職の請求 P26

(1)議員及び長の解職の請求 P26

(2)主要公務員の解職の請求 P30

<参考>横浜市において直接請求に必要な有権者数 P33

諸外国における解職請求制度 P33

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求 P35

2 住居表示に関する変更の請求 P36

(1)概要 P36

(2)横浜市における事例について P36

3 合併協議会設置の請求P37

山梨県道志村からの合併の申入P38

資料(総務省「地方自治月報第 56 号」(P39))

目 次

コラム

コラム

コラム

1

「地方自治は民主主義の学校」という言葉をご存じでしょうかイギリスの政治家

であるジェームズブライスの言葉ですこの言葉の意味は「規模の大きくない地

方政治は直接民主制が実現しやすく一般の人々が民主主義を学ぶには最高の場で

ある」ということと理解されていますしかし現代では地方公共団体といえども

規模が大きく組織も複雑化しています現在の日本の地方自治制度では有権者が知

事や市長などの首長や地方議会の議員を選挙で選び選挙で選ばれた人が地方政治を

行うという間接民主主義が原則となっています

しかしこのような間接民主主義では時として地方自治が機能しないことが起き

うる場合がありますこのような場合に備えて法律で有権者が直接権利を行使し住

民の意思を直接に地方行政に反映させる制度が用意されていますこのような制度を

「直接請求」制度といいますこの制度は国には見られない地方自治制度特有の

ものです

最近では名古屋市の議会の解散の請求や東京都や大阪市の原発住民投票条例の制

定の請求等住民の政治参加意識の向上から地方公共団体に地方自治法(以下「法」

といいます)等に基づく直接請求がなされるケースが増えています

直接請求の制度は議会と密接な関わりもあることから本号では直接請求の制

度の概要について横浜市や他都市の事例と共に御紹介します

第Ⅰ章で記載したとおり今日の日本の地方自治制度では選挙によって議会の議

員及び長を選ぶことによって地方行政に参加する間接民主制が原則となっています

がその例外として直接請求の制度が設けられていますとはいえもともと住民自

らが地方議会の議員及び地方公共団体の長を代表として選挙したものでありそのほ

かの主要公務員もまた代表者によって選任されたものである以上選挙の結果に基

づく地方行政の運営の良否は住民自身の責任であるともいえますこの点から直

接請求権の行使は無条件に許されるものではなく一定の制約が設けられています

(1)一定数以上の住民の参加

個々の住民の単独の権利としては認められていません多数の住民の意思をもっ

て初めて請求することができるため署名簿による住民の連署が必要となります

第Ⅰ章 はじめに

第Ⅱ章 直接請求制度

1 直接請求制度の特徴

2

(2)時期の制限

住民の選挙によって成立した議会就任した議会の議員又は長代表者によって

選任された主要公務員が成立就任又は選任直後に解散や解職を請求されること

はむしろ住民自治の濫用ともいえるので選挙又は就任後の一定期間後に初めて

請求権の行使が認められています

法が規定する直接請求は地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者が

一定の連署をもってその代表者から請求するものであり次のものがあります

(1)条例の制定又は改廃の請求

(2)監査の請求

(3)議会の解散の請求

(4)議会の議員及び長の解職の請求

(5)主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 12条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び

手数料の徴収に関するものを除く)の制定又は改廃を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する

第 13条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の議会の議員長副知事若しくは副市町村長選挙管理

委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有する

3 日本国民たる普通地方公共団体の住民は法律の定めるところによりその属す

る普通地方公共団体の教育委員会の委員の解職を請求する権利を有する

また法以外の法律で定められた同種の制度として

(6)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(7)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律)

(8)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法)

(9)土地改良区総代の解職請求(土地改良法)

2 直接請求制度の種類

3

さらに有権者の一定の連署をもって行う住民発議ともいえるものとして次のも

の等があります

(10)住居表示に関する変更の請求(住居表示に関する法律)

(11)合併協議会設置の請求(市町村の合併の特例に関する法律)

(1)概要

普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権を有

する者」といいます)はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の長に対して条例の制定又は改廃の請求をす

ることができます(法第 12 条第1項及び第 74 条第1項)

本来条例の制定又は改廃は地方公共団体の議会の議決事項でありその提案

権は長及び議会にあります(法第 96 条第 1 項)

この機能が適切に果たされない事態が生じている場合住民に条例の議会に対

する提案権を与えていますしかしながらこの権利は住民が自ら発案して

投票に付し住民自ら決するいわゆる発案権(イニシアティブ)そのものではなく

住民は自らの意思によって条例の制定又は改廃について議会に議決を請求する

にとどまります長は議会を招集し住民の請求に係る条例案を議会の審議に委

ねることになるので最終的な決定権は議会が持つこととなります

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求

地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関する条例

条例のうち地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものは直接請求の対象から除外されています(法第 74 条第 1 項)

これはこれらの条例の改正に対して住民の同意が得られやすく財政に与え

る影響が十分考慮されないまま容易に請求が成立してしまう恐れがあるためで

しかしこのように地方税等に関する条例のみ除外することについては受益

地方自治法

第 74 条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下本編

において「選挙権を有する者」という)は政令の定めるところによりその総数の

50 分の1以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の長に

対し条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものを除く)の制定又は改廃の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 3: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

1

「地方自治は民主主義の学校」という言葉をご存じでしょうかイギリスの政治家

であるジェームズブライスの言葉ですこの言葉の意味は「規模の大きくない地

方政治は直接民主制が実現しやすく一般の人々が民主主義を学ぶには最高の場で

ある」ということと理解されていますしかし現代では地方公共団体といえども

規模が大きく組織も複雑化しています現在の日本の地方自治制度では有権者が知

事や市長などの首長や地方議会の議員を選挙で選び選挙で選ばれた人が地方政治を

行うという間接民主主義が原則となっています

しかしこのような間接民主主義では時として地方自治が機能しないことが起き

うる場合がありますこのような場合に備えて法律で有権者が直接権利を行使し住

民の意思を直接に地方行政に反映させる制度が用意されていますこのような制度を

「直接請求」制度といいますこの制度は国には見られない地方自治制度特有の

ものです

最近では名古屋市の議会の解散の請求や東京都や大阪市の原発住民投票条例の制

定の請求等住民の政治参加意識の向上から地方公共団体に地方自治法(以下「法」

といいます)等に基づく直接請求がなされるケースが増えています

直接請求の制度は議会と密接な関わりもあることから本号では直接請求の制

度の概要について横浜市や他都市の事例と共に御紹介します

第Ⅰ章で記載したとおり今日の日本の地方自治制度では選挙によって議会の議

員及び長を選ぶことによって地方行政に参加する間接民主制が原則となっています

がその例外として直接請求の制度が設けられていますとはいえもともと住民自

らが地方議会の議員及び地方公共団体の長を代表として選挙したものでありそのほ

かの主要公務員もまた代表者によって選任されたものである以上選挙の結果に基

づく地方行政の運営の良否は住民自身の責任であるともいえますこの点から直

接請求権の行使は無条件に許されるものではなく一定の制約が設けられています

(1)一定数以上の住民の参加

個々の住民の単独の権利としては認められていません多数の住民の意思をもっ

て初めて請求することができるため署名簿による住民の連署が必要となります

第Ⅰ章 はじめに

第Ⅱ章 直接請求制度

1 直接請求制度の特徴

2

(2)時期の制限

住民の選挙によって成立した議会就任した議会の議員又は長代表者によって

選任された主要公務員が成立就任又は選任直後に解散や解職を請求されること

はむしろ住民自治の濫用ともいえるので選挙又は就任後の一定期間後に初めて

請求権の行使が認められています

法が規定する直接請求は地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者が

一定の連署をもってその代表者から請求するものであり次のものがあります

(1)条例の制定又は改廃の請求

(2)監査の請求

(3)議会の解散の請求

(4)議会の議員及び長の解職の請求

(5)主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 12条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び

手数料の徴収に関するものを除く)の制定又は改廃を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する

第 13条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の議会の議員長副知事若しくは副市町村長選挙管理

委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有する

3 日本国民たる普通地方公共団体の住民は法律の定めるところによりその属す

る普通地方公共団体の教育委員会の委員の解職を請求する権利を有する

また法以外の法律で定められた同種の制度として

(6)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(7)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律)

(8)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法)

(9)土地改良区総代の解職請求(土地改良法)

2 直接請求制度の種類

3

さらに有権者の一定の連署をもって行う住民発議ともいえるものとして次のも

の等があります

(10)住居表示に関する変更の請求(住居表示に関する法律)

(11)合併協議会設置の請求(市町村の合併の特例に関する法律)

(1)概要

普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権を有

する者」といいます)はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の長に対して条例の制定又は改廃の請求をす

ることができます(法第 12 条第1項及び第 74 条第1項)

本来条例の制定又は改廃は地方公共団体の議会の議決事項でありその提案

権は長及び議会にあります(法第 96 条第 1 項)

この機能が適切に果たされない事態が生じている場合住民に条例の議会に対

する提案権を与えていますしかしながらこの権利は住民が自ら発案して

投票に付し住民自ら決するいわゆる発案権(イニシアティブ)そのものではなく

住民は自らの意思によって条例の制定又は改廃について議会に議決を請求する

にとどまります長は議会を招集し住民の請求に係る条例案を議会の審議に委

ねることになるので最終的な決定権は議会が持つこととなります

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求

地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関する条例

条例のうち地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものは直接請求の対象から除外されています(法第 74 条第 1 項)

これはこれらの条例の改正に対して住民の同意が得られやすく財政に与え

る影響が十分考慮されないまま容易に請求が成立してしまう恐れがあるためで

しかしこのように地方税等に関する条例のみ除外することについては受益

地方自治法

第 74 条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下本編

において「選挙権を有する者」という)は政令の定めるところによりその総数の

50 分の1以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の長に

対し条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものを除く)の制定又は改廃の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 4: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

2

(2)時期の制限

住民の選挙によって成立した議会就任した議会の議員又は長代表者によって

選任された主要公務員が成立就任又は選任直後に解散や解職を請求されること

はむしろ住民自治の濫用ともいえるので選挙又は就任後の一定期間後に初めて

請求権の行使が認められています

法が規定する直接請求は地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者が

一定の連署をもってその代表者から請求するものであり次のものがあります

(1)条例の制定又は改廃の請求

(2)監査の請求

(3)議会の解散の請求

(4)議会の議員及び長の解職の請求

(5)主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 12条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び

手数料の徴収に関するものを除く)の制定又は改廃を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の事務の監査を請求する権利を有する

第 13条 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところにより

その属する普通地方公共団体の議会の解散を請求する権利を有する

2 日本国民たる普通地方公共団体の住民はこの法律の定めるところによりその

属する普通地方公共団体の議会の議員長副知事若しくは副市町村長選挙管理

委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請求する権利を有する

3 日本国民たる普通地方公共団体の住民は法律の定めるところによりその属す

る普通地方公共団体の教育委員会の委員の解職を請求する権利を有する

また法以外の法律で定められた同種の制度として

(6)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(7)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律)

(8)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法)

(9)土地改良区総代の解職請求(土地改良法)

2 直接請求制度の種類

3

さらに有権者の一定の連署をもって行う住民発議ともいえるものとして次のも

の等があります

(10)住居表示に関する変更の請求(住居表示に関する法律)

(11)合併協議会設置の請求(市町村の合併の特例に関する法律)

(1)概要

普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権を有

する者」といいます)はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の長に対して条例の制定又は改廃の請求をす

ることができます(法第 12 条第1項及び第 74 条第1項)

本来条例の制定又は改廃は地方公共団体の議会の議決事項でありその提案

権は長及び議会にあります(法第 96 条第 1 項)

この機能が適切に果たされない事態が生じている場合住民に条例の議会に対

する提案権を与えていますしかしながらこの権利は住民が自ら発案して

投票に付し住民自ら決するいわゆる発案権(イニシアティブ)そのものではなく

住民は自らの意思によって条例の制定又は改廃について議会に議決を請求する

にとどまります長は議会を招集し住民の請求に係る条例案を議会の審議に委

ねることになるので最終的な決定権は議会が持つこととなります

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求

地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関する条例

条例のうち地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものは直接請求の対象から除外されています(法第 74 条第 1 項)

これはこれらの条例の改正に対して住民の同意が得られやすく財政に与え

る影響が十分考慮されないまま容易に請求が成立してしまう恐れがあるためで

しかしこのように地方税等に関する条例のみ除外することについては受益

地方自治法

第 74 条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下本編

において「選挙権を有する者」という)は政令の定めるところによりその総数の

50 分の1以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の長に

対し条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものを除く)の制定又は改廃の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 5: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

3

さらに有権者の一定の連署をもって行う住民発議ともいえるものとして次のも

の等があります

(10)住居表示に関する変更の請求(住居表示に関する法律)

(11)合併協議会設置の請求(市町村の合併の特例に関する法律)

(1)概要

普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下「選挙権を有

する者」といいます)はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の長に対して条例の制定又は改廃の請求をす

ることができます(法第 12 条第1項及び第 74 条第1項)

本来条例の制定又は改廃は地方公共団体の議会の議決事項でありその提案

権は長及び議会にあります(法第 96 条第 1 項)

この機能が適切に果たされない事態が生じている場合住民に条例の議会に対

する提案権を与えていますしかしながらこの権利は住民が自ら発案して

投票に付し住民自ら決するいわゆる発案権(イニシアティブ)そのものではなく

住民は自らの意思によって条例の制定又は改廃について議会に議決を請求する

にとどまります長は議会を招集し住民の請求に係る条例案を議会の審議に委

ねることになるので最終的な決定権は議会が持つこととなります

第Ⅲ章 直接請求の概要

1 条例の制定又は改廃の請求

地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関する条例

条例のうち地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものは直接請求の対象から除外されています(法第 74 条第 1 項)

これはこれらの条例の改正に対して住民の同意が得られやすく財政に与え

る影響が十分考慮されないまま容易に請求が成立してしまう恐れがあるためで

しかしこのように地方税等に関する条例のみ除外することについては受益

地方自治法

第 74 条 普通地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権を有する者(以下本編

において「選挙権を有する者」という)は政令の定めるところによりその総数の

50 分の1以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の長に

対し条例(地方税の賦課徴収並びに分担金使用料及び手数料の徴収に関す

るものを除く)の制定又は改廃の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 6: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

4

(2)請求の手続

ア 請求代表者証明書の交付申請

条例の制定又は改廃の請求をしようとする代表者(以下「請求代表者」とい

います)は請求の要旨(1000 字以内)その他必要事項を記載した条例制

定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に対して文書(条例制

定(改廃)請求代表者証明書交付申請書)をもって条例の制定又は改廃請求代

表者証明書(以下「請求代表者証明書」といいます)の交付を申請します

(地方自治法施行令(以下「令」といいます)第 91 条第 1 項)

イ 請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付

アの申請があったとき普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対して申請人が選挙人名簿に登録された者(法第 74 条第 6 項の

該当の有無)であるかどうかの確認を求め確認がとれたときは請求代表者

証明書を交付しかつその旨を告示しなければなりません(令第 91 条第

2項)

ウ 署名の収集

請求代表者は法定の様式に基づく条例の制定又は改廃請求者署名簿(以下

「署名簿」といいます)に条例制定又は改廃請求書及び請求者代表者証明

書を添付の上で選挙権を有する者の 50 分の1以上の署名を求めることにな

ります(令第 92 条第 1 項)この際の署名の収集期間は請求代表者証明書

交付の告示の日から都道府県及び指定都市については2か月以内指定都市

以外の市町村については1か月以内となっています(同条第 3 項)

また請求代表者は選挙権を有する者に委任することで署名及び押印の収

集をさせることができます(同条第2項)

と負担の均衡等の観点から批判もあり見直すべきとの意見もあります

このことについては第 30 次地方制度調査会の『地方自治法改正案に関する

意見』(平成 23 年 12 月)において「地方税等に関する事項を条例制定改廃

請求の対象とすることを基本とすべき」であるが「制度化にあたっては地方公

共団体の財政運営に与える影響や地方財政の極めて厳しい現状等への考慮も必要

である」としています

ちなみに使用料には学校の授業料も含まれると解されています(昭 238

18 自発第 652 号 岡山県知事宛自治課長回答)が国民健康保険料については

地方税分担金使用料及び手数料のいずれにも含まれず直接請求の対象とな

り得ると解されています(昭 41528 行政課決定)

5

エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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Page 7: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

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エ 署名簿の提出

署名数が法定数以上集まったときは署名簿を市町村の選挙管理委員会に提

出し署名し押印した者が選挙人名簿に登録された者であることの証明を求め

ます(法第 74 条の2第 1 項前段)

署名簿の提出は署名の収集期間の満了の日の翌日から都道府県及び指定都

市では 10 日以内指定都市以外の市町村については 5 日以内にしなければ

なりません(令第 94 条第1項)

オ 署名簿の審査

市町村の選挙管理委員会は署名簿を受理したときはその日から 20 日以

内に署名簿について審査し署名の有効無効の決定をしかつその旨を証

明します(法第 74 条の2第1項後段)

市町村の選挙管理委員会は署名の証明が終了したときは署名し押印した

者の総数及び有効署名の総数を告示しかつ公衆の見やすい方法によって掲

示します(令第 95 条の2)

≪公務員に対する制約≫

国家公務員及び地方公務員はそれぞれ国家公務員法地方公務員法等による政治

的行為の制限として請求代表者に就くことについて制約がありますしかしながら

これらの制約は公務員の服務上の義務を課しているだけであって請求代表者にな

る要件を規定したものではありませんそのためこれに違反した場合公務員法等

の服務規律違反となるものの単にそれのみをもってしては違反を犯して収集した

署名自体が無効になるものではありません

無効となる署名

署名活動によって集められた署名ですが必ずしも全て有効とはなりません無

効となるのは次のような場合があります

(1)署名簿の記載事項を欠く署名

署名簿には署名印のほか署名年月日住所生年月日等の記載が必要で

すが署名年月日住所生年月日のうちのいずれか 1 つの記載を全く欠くこ

とがあればその記載は無効となります(昭和 28 年 6 月 22 日福島地裁判決)

(2)選挙人名簿に登録されていない者の署名

(3)自署でない署名

(4)押印のない署名

(5)署名収集の権限のない者が収集した署名

(6)法定の収集期間方法が守られてない署名

(7)何人であるか確認しがたい署名(判読できないものなど)

(8)詐欺や脅迫による署名

第Ⅲ章 直接請求の概要

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

sysmente
テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 8: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

6

カ 署名簿の縦覧異議の申出及び決定

市町村の選挙管理委員会は署名簿の証明が終了したときはその翌日から

7日間その指定した場所で関係人の縦覧に供します(法第 74 条の2第

2項)

署名に関して異議のある関係人は縦覧期間中に市町村の選挙管理委員会に

異議を申し立てることができます(同条第4項)

異議の申出を受けた市町村の選挙管理委員会は申出を受けた日から 14 日

以内にその申出が正当であるかどうかを判断し修正通知等の所要の措置を

することとなります(同条第5項)

キ 署名簿の返付

市町村の選挙管理員会は異議の申出が全くないとき又は全ての異議につい

て決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を告示するとともに署名簿

を代表者に返付します(法第 74 条の2第6項)

ク 署名の効力に関する審査の申立て訴訟

市町村の選挙管理委員会が行った署名簿の効力に関して異議の申出に対す

る決定に不服がある者は審査の申立て及び訴訟が認められています(法第

74 条の2第 7 項から第 10 項まで)

ケ 本請求及び受理

法第 74 条第 1 項で規定された正式な直接請求(以下「本請求」といいま

す)は請求代表者が返付を受けた署名簿の効力の決定について不服がな

いとき又は争訟が確定したときは署名簿の返付を受けた日又はその効力が確

定した日から都道府県又は指定都市では 10 日以内その他の市町村では5

日以内に条例制定又は改廃請求書に 50 分の1以上の有効署名があること証

明する書面及び署名簿を添えて当該普通地方公共団体の長に対して条例の制

定又は改廃の請求をすることになります(令第 96 条第1項)

当該普通地方公共団体の長は本請求があったときは署名簿の署名数が法

定署名数以上か請求が法定期間内に提出されたかを審査し受理するか決定

します(令第 97 条第1項)

請求を受理したときは当該普通地方公共団体の長は直ちにその旨を請求

代表者に通知しかつその者の住所氏名及び請求の要旨を告示しかつ公衆

の見やすいその他の方法で公表します(法第 74 条第3項及び令第 98 条第

1項)

コ 本請求受理後の措置

普通地方公共団体の長は請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し

()自らの意見を付けて議会に付議します議会は審議を行うに当たっ

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 9: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

7

て請求代表者に意見を述べる機会を与えなければなりません(法第 74 条

第4項)

議会の審議が終わったら普通地方公共団体の長は審議の結果を請求代表者

に通知し告示しかつ公衆の見やすい方法で公表しなければなりません(令

第 98 条第 2 項)

議会に付議されるのは請求に係る条例案であって条例制定又は改廃請求

書ではありませんまた長が付ける意見とは条例案に対する執行機関とし

ての賛否の意見であり意見は必ず付けなくてなりません

20 日以内の招集は法律上の義務ではなくいわゆる訓示的な規定と解さ

れています

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求に至るまで) (図1)

②選挙人名簿登録の有無の照会

③照会の回答

①請求代表者証明書の交付申請

⑤委任 ⑥

④請求代表者証明書の交付

(証明書の交付の告示)

⑥署名収集

⑦署名簿の提出

⑪署名簿の返付

⑩異議の申出 ⑧署名簿の審査

(出訴等) ⑨署名簿の縦覧

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9図1をもとに作成)

受任者

受任者

受任者

関 係 人

第Ⅲ章 直接請求の概要

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 10: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

8

条例の制定又は改廃の請求の流れ(本請求以後) (図2)

①条例制定(改廃)の請求

②受理の通知(請求要旨等の告示公表)

③付議(意見を付する) ④議決

⑤結果の通知(結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p9 図1をもとに作成)

地方自治法

第 74条

3 普通地方公共団体の長は第1項の請求を受理した日から 20 日以内に議会を招集し意見を附け

てこれを議会に付議しその結果を同項の代表者に通知するとともにこれを公表しなければならな

4 議会は前項の規定により付議された事件の審議を行うに当たつては政令の定めるところにより

第1項の代表者に意見を述べる機会を与えなければならない

6 選挙権を有する者のうち次に掲げるものは第1項の代表者(以下この項において「代表者」という)

となり又は代表者であることができない

(1)公職選挙法第 27条第1項の規定により選挙人名簿に同項の表示をされている者(都道府県に係

る請求にあつては当該市町村の区域内に住所を有しなくなつた旨の表示をされている者のうち

当該市町村の区域内から引き続き同一都道府県の区域内の他の市町村の区域内に住所を移し

かつ当該他の市町村の区域内に住所を有しているものを除く)

(2)前項の選挙人名簿の登録が行われた日以後に公職選挙法第 28 条の規定により選挙人名簿か

ら抹消された者

(3)第1項の請求に係る普通地方公共団体(当該普通地方公共団体が都道府県である場合には

当該都道府県の区域内の市町村及び第 252条の 19第1項に規定する指定都市(以下この号にお

いて「指定都市」という)の区を含み指定都市である場合には当該市の区を含む)の選挙管理

委員会の委員又は職員である者

第 74 条の2 条例の制定又は改廃の請求者の代表者は条例の制定又は改廃の請求者の署名簿を

市町村の選挙管理委員会に提出してこれに署名し印をおした者が選挙人名簿に登録された者であ

ることの証明を求めなければならないこの場合においては当該市町村の選挙管理委員会はそ

の日から 20 日以内に審査を行い署名の効力を決定しその旨を証明しなければならない

2 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による署名簿の署名の証明が終了したときはその日か

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 11: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

9

ら7日間その指定した場所において署名簿を関係人の縦覧に供さなければならない

4 署名簿の署名に関し異議があるときは関係人は第2項の規定による縦覧期間内に当該市町村

の選挙管理委員会にこれを申し出ることができる

5 市町村の選挙管理委員会は前項の規定による異議の申出を受けた場合においてはその申出を

受けた日から 14 日以内にこれを決定しなければならないこの場合においてその申出を正当であ

ると決定したときは直ちに第1項の規定による証明を修正しその旨を申出人及び関係人に通知

し併せてこれを告示しその申出を正当でないと決定したときは直ちにその旨を申出人に通知し

なければならない

6 市町村の選挙管理委員会は第2項の規定による縦覧期間内に関係人の異議の申出がないとき

又は前項の規定によるすべての異議についての決定をしたときはその旨及び有効署名の総数を

告示するとともに署名簿を条例の制定又は改廃の請求者の代表者に返付しなければならない

7 都道府県の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服

がある者はその決定のあつた日から 10 日以内に都道府県の選挙管理委員会に審査を申し立てる

ことができる

8 市町村の条例の制定又は改廃の請求者の署名簿の署名に関し第5項の規定による決定に不服が

ある者はその決定のあつた日から 14 日以内に地方裁判所に出訴することができるその判決に不

服がある者は控訴することはできないが最高裁判所に上告することができる

9 第7項の規定による審査の申立てに対する裁決に不服がある者はその裁決書の交付を受けた日

から 14 日以内に高等裁判所に出訴することができる

10 審査の申立てに対する裁決又は判決が確定したときは当該都道府県の選挙管理委員会又は当

該裁判所は直ちに裁決書又は判決書の写を関係市町村の選挙管理委員会に送付しなければな

らないこの場合においては送付を受けた当該市町村の選挙管理委員会は直ちに条例の制定

又は改廃の請求者の代表者にその旨を通知しなければならない

地方自治法施行令

第 91条 地方自治法第 74 条第1項の規定により普通地方公共団体の条例の制定又は改廃の請求を

しようとする代表者(以下「条例制定又は改廃請求代表者」という)はその請求の要旨(1000 字以

内)その他必要な事項を記載した条例制定又は改廃請求書を添え当該普通地方公共団体の長に

対し文書をもつて条例制定又は改廃請求代表者証明書の交付を申請しなければならない

2 前項の規定による申請があつたときは当該普通地方公共団体の長は直ちに市町村の選挙管理

委員会に対し条例制定又は改廃請求代表者が選挙人名簿に登録された者であるかどうかの確認

を求めその確認があつたときはこれに同項の証明書を交付しかつその旨を告示しなければな

らない

第 92 条 条例制定又は改廃請求代表者は条例制定又は改廃請求者署名簿に条例制定若しくは改

廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請求代表者証明書又はその写しを付して地方自

治法第 74 条第5項に規定する選挙権を有する者(以下「選挙権を有する者」という)に対し署名

(盲人が公職選挙法施行令 (昭和25年政令第89号)別表第1に定める点字で自己の氏名を記載す

ることを含む以下同じ)をし印を押すことを求めなければならない

2 条例制定又は改廃請求代表者は選挙権を有する者に委任してその者の属する市町村の選挙

権を有する者について前項の規定により署名し印を押すことを求めることができるこの場合におい

第Ⅲ章 直接請求の概要

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 12: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

10

ては委任を受けた者は条例制定若しくは改廃請求書又はその写し及び条例制定若しくは改廃請

求代表者証明書又はその写し並びに署名し印を押すことを求めるための条例制定又は改廃請求代

表者の委任状を付した条例制定又は改廃請求者署名簿を用いなければならない

3 前2項の署名及び印は前条第2項の規定による告示があつた日から都道府県及び地方自治法第

252条の 19 第1項の指定都市(以下「指定都市」という)にあつては2箇月以内指定都市以外の市

町村にあつては1箇月以内でなければこれを求めることができない(略)

第 94 条 条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印を押した者の数が地方自治法第 74 条第5項

の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の数となつたときは条例制定又

は改廃請求代表者は第 92 条第3項の規定による期間満了の日(同項ただし書の規定が適用される

場合には当該請求に係る区域の全部について同項に規定する期間が満了する日をいう)の翌日

から都道府県又は指定都市に関する請求にあつては 10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求者署名簿(署名簿が2冊以上に分れているときは

これらを一括したもの)を市町村の選挙管理委員会に提出しなければならない

第 95条の2 市町村の選挙管理委員会は地方自治法第 74条の2第1項の規定による署名簿の署名

の証明が終了したときは直ちに条例制定又は改廃請求者署名簿に署名し印をおした者の総数及

び有効署名の総数を告示し且つ公衆の見易い方法により掲示しなければならない

第 96 条 地方自治法第 74 条第1項の規定による請求は同法第 74 条の2第6項の規定により返付を

受けた条例制定又は改廃請求者署名簿の署名の効力の決定に関し条例制定若しくは改廃請求代

表者において不服がないとき又は条例制定若しくは改廃請求代表者においてした審査の申立て若

しくは訴訟の裁決若しくは判決が確定したときはその返付を受けた日又はその効力の確定した日か

ら都道府県又は指定都市に関する請求にあつては10日以内指定都市以外の市町村に関する請

求にあつては5日以内に条例制定又は改廃請求書に同法第 74 条第5項の規定により告示された

選挙権を有する者の総数の 50 分の1以上の者の有効署名があることを証明する書面及び条例制定

又は改廃請求者署名簿を添えてこれをしなければならない

第 97条 前条第1項の請求があつた場合において条例制定又は改廃請求者署名簿の有効署名

の総数が地方自治法第 74 条第5項の規定により告示された選挙権を有する者の総数の 50 分

の1の数に達しないとき又は前条第1項の規定による期間を経過しているときは普通地方

公共団体の長はこれを却下しなければならない 第 98条 第 96条の請求を受理したときは普通地方公共団体の長は直ちにその旨を条例制定又は

改廃請求代表者に通知するとともにその者の住所氏名及び請求の要旨を告示し且つ公衆の見

易いその他の方法により公表しなければならない

2 普通地方公共団体の長は地方自治法第 74 条第3項の規定による議会の審議の結果を条例制

定又は改廃請求代表者に通知するとともにこれを告示しかつ公衆の見やすいその他の方

法により公表しなければならない

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 13: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

11

(3)横浜市における事例について

本市では昭和 55 年に条例の制定を求めた直接請求がなされた事例があり

ます

事例1 横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例の制定を求め

た直接請求

【概要】

昭和 40 年代より普及が進み日本各地で環境問題が指摘されていた合成洗剤

の使用をめぐって市民団体が合成洗剤追放及び対策のための委員会の設置運

営に関する条例の制定を求め昭和 55 年 6 月に法定署名数を大幅に超える9万

534 人の署名をもって横浜市長に対し直接請求がなされました

これに対し市長は次のような意見を付して議会に付議しました

議会では第二委員会(民生衛生公害対策)に付託され議論及び調査が

進められたものの

横浜市合成洗剤追放対策委員会の設置および運営に関する条例案の概要 ①人の健康の破壊と生活環境の汚染の原因となっている合成洗剤の市内における販売お

よび使用を禁止する条例の制定をはかることを責務とする合成洗剤追放対策委員会(以

下「委員会」という)の設置および運営の基本を定めることを目的とする ②委員会は議会の同意を得て市長が任命する 18 名の委員をもって構成する ③委員会はこの条例の発効の日から 2 年以内に市内における合成洗剤の販売および使

用の禁止する条例案を作成し市長に議会に提案するように勧告する ④委員会の責務として市の諸施設及び公共施設において合成洗剤の使用を暫次とりや

め石けん使用するように関係機関に勧告しその実現のために諸施策を立案し推進

する ⑤市長は委員会が求めるときは委員会の会議に出席しなければならない

横浜市長意見 昭和 55 年横浜市会会議録抜粋 本市は安全で快適な環境づくりを市政の基本理念として推進しているところであるが

今回合成洗剤に関する条例制定の直接請求をもって消費者の立場からこの問題について

あらためて強い関心を喚起されたことは意義のあることと考える 合成洗剤の規制等については先に本市会議において全会一致をもって国の関係行政

機関へ提出された意見書の趣旨をふまえて全国的な立場で慎重に対応することが適当と

考える なお本市としても水質環境への影響を考慮して既に有リン合成洗剤の市の施設から

の追放市民への使用自粛等必要な措置をとつているが今後さらに合成洗剤に係る諸問

題について慎重に検討したい

第Ⅲ章 直接請求の概要

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 14: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

12

といった法制面において条例が法になじまない点を指摘して反対する立場を

とり(この点については市長も議会での答弁で法になじまないと発言して

います)議会では委員会の結果をふまえ当該請求について否決しました

しかしながら議会では直接請求に係る条例案は否決したものの約 10 万

人の市民による署名が集まったことや全国的に多くの自治体でも合成洗剤によ

る環境問題が議論されているなど市民の関心が非常に高いことまた環境への

影響など専門技術的側面などさらに検討が必要だとして横浜市公害対策審議

会に専門部門を設置すべきとし合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議が可決

されました

【経過】

昭和 55 年 3月 26 日 条例制定請求代表者証明書の交付

4月 30 日 署名収集期間が終了し署名簿が提出された

5月 20 日 署名簿の審査が終わり署名の効力が決定

6月 2 日 請求代表者から本請求

6月 6 日 請求を正式受理し併せて告示された

6月 26 日 昭和 55 年第 1 回臨時会において上程第二委員会に

付託

10 月 2 日 昭和55年第3回定例会で委員会の審議報告採決

により否決

①条例案では当該委員会に条例の作成施策の立案等直接行政を行う権限

が付与されているところ地方公共団体が条例で設置することができる合議

体組織として位置づけることが適当ではない

②委員の任命に対する議会の同意や市長の委員会への出席義務等の規定に問

題がある

合成洗剤に係る諸問題解明に関する決議 合成洗剤の使用をめぐって現在環境汚染あるいは安全性の問題について市民の

間に大きな関心を引き起こしているところである また本市会においても住民の直接請求に係る議案審査の過程で各界の参考意見

を聴取する等慎重な審議を重ね一応の解明はされてきたが安全性等について一部危

惧の念が表明された経緯もありさらに専門技術的な面からの検討が必要であると思

われる よって市長及び当局はこれらの状況を勘案の上合成洗剤に係る諸問題について

横浜市公害対策審議会に専門部会を設置して調査審議させるなど対策に万全を期す

るよう努めるべきである 昭和 55 年 10 月2日

横浜市会

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

sysmente
テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

66

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ノート注釈
sysmente Marked
sysmente
ノート注釈
sysmente Marked

参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 15: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

13

(4)他の自治体における事例について

他の自治体における条例の制定又は改廃の直接請求がなされた事例について

は総務省が「地方自治月報 56 号」(巻末資料参照)でまとめています

平成 21 年4月1日から平成 24 年3月 31日までの間に都道府県では1件

市町村では 70 件条例の制定又は改廃に係る請求代表者証明書の交付がなされ

ました

ここでは他の自治体での条例の制定又は改廃の直接請求について事例を2

件御紹介します

事例2 原子力発電所の稼働の是非を問う住民投票条例の制定を求めた直接請

求(東京都)

【概要】

東京電力福島第一原子力発電所事故により原子力発電所の危険性が明確にな

ったのでその稼動の是非を住民投票で問うべきであるとして「東京電力管内

の原子力発電所の稼動に関する東京都民投票条例」(以下「原発住民投票条例」

といいます)の制定を求め平成 23 年 12 月に市民グループが署名の収集を

開始したところ法定署名収集期間中に 34 万 5491 人分の署名が集まりまし

市民グループは収集した署名を都内各市区町村の選挙管理委員会に提出し

選挙管理委員会における審査の結果最終的な有効署名数は32 万 3076 人

分となり直接請求に必要な法定数(有権者の 50 分の1)21 万 4236 人を

上回ることとなりましたそこで署名の縦覧を経た後市民グループから東京

都知事に対し原発住民投票条例の制定を求める直接請求がなされました

請求を受けた知事はこの条例の制定に対して反対意見を付して議会に付議し

ました

原発住民投票条例案の概要 ①東京電力管内の原子力発電所の稼働の是非に関する都民の意思を明らかにするた

めの手続を定めることを目的とする ②投票資格者を満 16 歳以上の日本国籍を有する者満 16 歳以上の永住外国人とす

る ③投票の方法について原子力発電所の稼働について賛成あるいは反対の欄のいず

れかに丸の印を記載して投票するものとする ④有効投票総数の過半数が投票資格者総数の4分の1以上に達した時は知事及び

都議会は投票結果を尊重し東京電力国等と協議して原子力発電所の稼働に

関する都民の意思が正しく反映されるよう努めなければならない ⑤罰則について投票運動に関し日本国憲法の改正手続に関する法律における罰

則規定等を準用し投票運動に関し公務員の政治的行為を制限する地方公務員

法の規定を適用除外にする

第Ⅲ章 直接請求の概要

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

66

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 16: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

14

議会においては請求代表者の意見陳述がなされ総務委員会における質疑に

おいては賛否様々な意見が述べられました原発住民投票条例の案については

複数会派から修正案も提出されるなどしましたが最終的には総務委員会で否決

され本会議においても否決されました

議会における反対の理由としては知事の意見と同じく原子力発電所の稼働

の是非については安全保障も含めた国のエネルギー戦略電力の安定供給電

気料金への影響立地地域への配慮地球温暖化対策など多様で複合的に考慮す

べき事項であり国が決めるものであるという意見が主なものでした

【経過】

平成 23 年 12 月 10 日 署名収集開始

平成 24 年 2月 10 日 署名収集期間終了(八王子市小金井市及び三宅村

では期間中に選挙が行われたため最終的な署名期

間終了日は平成 24 年3月 24 日)

5月 10 日 都知事へ直接請求

6月 5日 議会へ付議

6月 14 日 総務委員会で請求代表者による意見陳述

6月 18 日 総務委員会において否決

6月 20 日 本会議において否決

事例3 新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例の制定を求めた直接請求

(長野県安曇野市)

【概要】

将来の市財政の悪化を招きかねない新庁舎建設計画が広く市民に支持されて

いるとはいい難い状況にあるので新庁舎建設のあり方を市民自ら選択すべきと

して「安曇野市新本庁舎建設のあり方を問う住民投票条例」(以下「新本庁舎住

民投票条例」といいます)の制定を求め平成 23 年 10 月に住民グループ「『新

庁舎』住民投票の会」が署名の収集を開始したところ1か月間の法定署名収集

期間に 4396 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は 4186 人となり

東京都知事の反対理由 ①原子力発電所の稼働の是非は国が責任を持って判断すべきである ②立地地域やその住民の多岐にわたる問題を考慮すべきである ③条例案の投票資格者などに疑義がある ④条例案に地方自治法に抵触する規定がある ⑤以上の問題点があるにもかかわらず条例案は投票結果を尊重して行動するこ

とを知事及び都議会に義務づけており都の政策判断に大きな影響を与えるもので

ある

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 17: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

15

直接請求に必要な法定数 1592 人をはるかに超える署名数が集まったこととな

りました

そこで平成 23 年 12 月6日住民グループから市長に対し新本庁舎住民

投票条例の制定を求めて直接請求がなされました

請求を受けた安曇野市長は「広く市民に情報を公表説明し極めて民主的

手順を踏んでいろいろな御意見をお聞きするとともに二元代表制である議会と

の協議を重ね御理解をいただきながら丁寧に手続を重ね積極的な情報公開と

時間をかけて議論を進めるなど開かれた市政の中で市民への説明責任を果た

し議会制民主主義に基づいたプロセスを踏んで」きたことを理由にこの条例

の制定に反対意見を付して議会に付議しました

議会では賛成反対様々な意見が述べられました「二元代表制のもとで間

接民主主義を補う住民投票制度として議会は認めていくべきであり制定に賛成

であるもしこの条例案が不備としたら修正案をもって成立させればいいと思

う」といった住民の声を無視できないといった意見もありましたが最終的に

は「今まで議会では慎重に審議を重ね民意は反映されている」との意見が多

数を占め新本庁舎住民投票条例は否決されました

【経過】

平成 23 年 10 月 7日 署名収集開始

11 月 7日 署名収集期間終了

12 月 6日 市長へ直接請求

12 月 16 日 議会へ付議

12 月 20 日 本会議にて請求代表者による意見陳述

総務委員会へ付託

12 月 21 日 本会議において否決

住民による直接請求制度は日本のみならず海外でも制度化されています

ここではアメリカと韓国の住民発案について御紹介します

① アメリカ合衆国

2000年現在24州で「州全域の住民発案」すなわち州政府レベルの住民発案が公認され

ています

この24州における住民発案は「間接的住民発案」を採用している州「直接的住民発案」

を採用している州双方を認める州とそれぞれ州によって制度が異なっています

コラム 諸外国における住民発案制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
sysmente Marked
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 18: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

16

住民発案の例として1978 年にカリフォルニア州内の地方政府による財産税の引上げを厳

しく制限することを求めた提案が承認されたものがありますまた同年にはカリフォルニ

ア州に続きオハイオ州ニュージャージー州テネシー州の納税者が「住民発案」によっ

て州政府と地方政府の歳出に様々な制限を課す条項を成立させた例があります

カリフォルニア州における州民発案の案件の分野(1911 年~1998 年)

② 韓国

地方自治団体の 19 歳以上の住民(以下ここでは「住民」といいます)は

特別広域市道と人口 50 万人以上の大都市には住民総数の 100 分の1以上 70 分の1

以下

市郡及び自治区では住民総数の 50 分の1以上 20 分の1以下

の範囲で住民の連署をもって当該地方自治団体の長に対して条例の制定改廃を請求す

ることができます

なお次の事項は請求対象から除外されています

(1)地方税使用料手数料負担金の賦課徴収又は減免に関する事項

(2)行政機構の設置変更に関する事項又は公共施設の設置に反対する事項

地方行財政検討会議 第一分科会(第7回)資料2 p78をもとに作成

案 件 提起され

た件数

必要な署名数を

得た件数

州民投票により

採択された件数

計 1308 332 106

提起件数

上位5件

税制 191 45 10

統治機構 113 21 6

教育 93 21 8

健康医療科学 92 29 5

裁判所法秩序 90 18 10

直接的住民発案請願によって提案され州議会の議決を経ずに直接有権者の票決に

付される方式

間接的住民発案請願によって提案され一定の期日前に州議会の定例会に付託され

る方式提案案件が一定の期間内に州議会によって可決されない場

合あるいは当初提案者の受け入れがたい修正が州議会によって行

われた場合提案者がさらに必要な署名を集め当初提案を有権者

の票決に付すことができる

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 19: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

17

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代

表者から普通地方公共団体の監査委員に対して当該普通地方公共団体の事務

の執行に関して監査の請求をすることができます(法第 12 条第2項及び第

75 条第1項)

法では監査委員の職権による一般監査(法第 199 条 1 項)のほか所轄行

政庁又は普通地方公共団体の議会若しくは長の要求により臨時に監査を行うこ

ととしていますがこれらの監査が機能しなかった事態が生じた場合に対応する

ために住民による監査の請求を求める機会を与えています

この権利は住民自らが監査を実施する権利を認めたものではなく住民は

地方公共団体の事務の監査の権限を持つ監査委員の監査を請求する権利を持つ

にとどまります

(2)請求の手続

監査の請求方法は請求先が監査委員であるなど若干の違いがあるものの本

請求に至るまでは条例の制定(改廃)の請求と同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の監査委員に

対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該普通地

方公共団体の監査委員が行います本請求は監査委員に対して行い本請求の受

理の決定及び受理後の通知等も監査委員が行います

本請求が正式に受理された場合監査委員は直ちに請求に係る事項について

監査を実施しその結果を請求代表者に通知し告示かつ公表するとともに当

該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委員会

人事委員会若しくは公平委員会労働委員会農業委員会その他法律に基づく委

員会又は委員に報告します(法第 75 条第 3 項)

監査を行うべき期間は別段定められてはいないものの速やかに監査を行うこ

とが必要であるとされています(昭 271225 自行行発第 184 号 石川県

総務部長宛 行政課長回答)

2 監査の請求

地方自治法

第 75条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会については当該方面公安委

員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有する者)は政令

の定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもつてその

代表者から普通地方公共団体の監査委員に対し当該普通地方公共団体の

事務の執行に関し監査の請求をすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 20: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

18

監査の請求の流れ(本請求以後) (図3)

①監査の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③監査の執行

④監査結果の報告

④監査結果の通知

(監査結果の告示公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p12 図2をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とある部分を「監査委員」と読み替え

て御参照ください

住民監査請求との違い

法第 75 条に規定する監査の請求と類似する制度として法第 242 条の「住民監

査請求」があります

その目的とするところは異なりますすなわち

監査の請求住民が行政運営上生ずる諸問題に対してその責任の所在や行

政の適否を明らかにすることを目的とします

住民監査請求地方公共団体の職員による違法不当な行為等によって納

税者としての住民が損失を被ることを防止するため職員の

違法不当な行為等の予防是正を図ることを目的とします

以上の目的の違いから「監査の請求」は多数の住民の参加が必要とし有権者

の 50 分の 1 の連署をもって請求ができるのに対して「住民監査請求」は1人

の住民による請求ができるものとされています

また請求の対象もその目的から「監査の請求」では地方公共団体の事務

全般とされている一方で「住民監査請求」では具体的な機関又は職員の具体的

な財務会計上の行為についてと限定されています

議会

対象となった関係

機関

19

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 21: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

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(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年 4 月から平成 24 年3

月までの間市町村で5件の請求がなされました

(1)概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもってそ

の代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団

体の議会の解散の請求をすることができます(法第 13 条第1項及び第 76 条

第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 76 条第

1 項)

旧憲法下での地方制度では内務大臣が地方公共団体に対する監督権の1つと

して議会の解散権を持っていましたが法ではこのような中央政府からの監督権

を排除するとともに議会が住民の意思からかい離した事態には全く新しい住

民を代表とする議会の成立を図ろうとすることを定めています

議会の解散請求ではその可否が当該地方公共団体の議会の議決に委ねられる

ものではなく解散の可否を住民の投票に付し(法第 76 条第 3 項)解散の是

非を住民の決定に委ねることとなります投票の結果過半数の同意が得られれ

ば議会は解散することとなります(法第 78 条)

3 議会の解散の請求

地方自治法

第 76 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3分の

1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を超える数

に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得

た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の

1を乗じて得た数と40万に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から普

通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該普通地方公共団体の議会の解散

の請求をすることができる

地方自治法

第 75条

3 監査委員は第1項の請求に係る事項につき監査し監査の結果に関する報

告を決定しこれを同項の代表者に送付しかつ公表するとともにこれを

当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会選挙管理委

員会人事委員会若しくは公平委員会公安委員会労働委員会農業委員会

その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない

第Ⅲ章 直接請求の概要

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

sysmente
テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 22: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

20

条例の制定(改廃)や監査の請求と異なり署名その他要件が整うことで実

際に住民投票に付することが可能となるので請求の期間に制限が設けられ法

定署名数の要件が高められています

請求期間の制限

解散の請求は要件を満たすことによって実際に住民投票を実施することが

可能となる権利ですそのため住民の責任ある参政権の行使の確保を図るととも

に権利の濫用を防ぐために請求に一定期間の制限を設けています(法第 79

条)

(2)請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干の

点を除き同じです(本請求は長でなく選挙管理委員会に対して行う点等)

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理委

員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は当該

普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は選挙管理委員会に対し

て行い本請求の受理の決定及び受理後の通知等も選挙管理委員会が行います

選挙管理委員会は本請求を受理したときは解散投票に先立ち20 日以内

に議会からの弁明書(1000 字以内)を徴し(令第 104 条第 1 項)請求の要

旨及び弁明書の要旨を解散投票の投票日の告示に併せて告示し投票所の入口

等に掲示します(同条第 2 項)

解散投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内(令第 100 条の2第 1

項)に原則として公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過

半数の同意があった場合には議会は解散することになります(法第 78 条)

選挙管理委員会は投票の結果を請求代表者及び議会の議長に通知するととも

に公表し併せて地方公共団体の長に報告することになります(法第 77条)

さらに解散の日から 40 日以内に公職選挙法第 33 条第 2 項の規定により

一般選挙を行うこととなります

地方自治法

第 76条

3 第1項の請求があつたとき委員会はこれを選挙人の投票に付さなければなら

第 78条 普通地方公共団体の議会は第 76 条第3項の規定による解散の投票にお

いて過半数の同意があつたときは解散するものとする

地方自治法

第 79条 第 76条第1項の規定による普通地方公共団体の議会の解散の請求は

その議会の議員の一般選挙のあつた日から1年間及び同条第3項の規定によ

る解散の投票のあつた日から1年間はこれをすることができない

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 23: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

21

議会の解散請求の流れ(本請求以後) (図4)

①議会の解散請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③弁明書の要求

④弁明書の提出

⑦投票結果の通知

(⑤解散投票の告示請求弁明要旨の告示)

(⑥解散投票)

⑦投票結果の通知

(投票結果の公表)

⑦投票結果の報告

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p14図3をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」と読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 77 条 解散の投票の結果が判明したときは選挙管理委員会は直ちにこれを前

条第1項の代表者及び当該普通地方公共団体の議会の議長に通知しかつこれ

を公表するとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町

村長に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様とす

第 85 条 政令で特別の定をするものを除く外公職選挙法中普通地方公共団体

の選挙に関する規定は第 76 条第3項の規定による解散の投票並びに第 80

条第3項及び第 81条第2項の規定による解職の投票にこれを準用する

2 前項の投票は政令の定めるところにより普通地方公共団体の選挙と同時

にこれを行うことができる 地方自治法施行令

第 100条の2 普通地方公共団体の議会の解散の投票は前条において準用する

第98条第1項の規定による告示の日から60日以内においてすみやかに行わな

第Ⅲ章 直接請求の概要

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

sysmente
テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 24: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

22

(3)他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報 56 号」によれば平成 21 年4月から平成 24 年3月

までの間市町村で3件の議会の解職請求がなされました

ここでは他の自治体での議会の解散の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例4 市長と対立する議会の解散を求めた直接請求(名古屋市)

【概要】

市民税の恒久減税など河村たかし名古屋市長の公約実現をめぐって対立す

る議会を解散させるため平成 22 年8月議会の解散を求めて市長の支援団

体が署名の収集を開始したところ1か月の法定署名収集期間(当時)に解

散の請求に必要な署名 35 万 5795 人分を大幅に上回る 46 万 5594 人(後

に 46 万 5602 人に訂正)分の署名が集まりました

署名の審査に当たった市の選挙管理委員会は「回覧板など対面以外で署名を

集めている」など指摘が相次ぎ実際に約 11 万人分の署名が記載された署

名簿が署名集めを担ったはずの「受任者」名の欄が空欄で提出されたことか

ら署名を集めることのできる請求代表者及び受任者以外の者が署名を集めた

可能性も否定できないとして慎重な審査をすべく 20 日間という法定の審査

期間を延長しましたそして「氏名や住所に一部でも誤りがある署名は無効」

とする厳格な審査基準による審査により11 万 1811 人分もの署名が無効と

された結果有効署名数が 35 万 3791 人分となり解散の請求は不可能と

なったと思われました

しかし約3万4千人分もの異議申立てがなされ不適切な収集方法により

無効とされた署名でも署名者自らが署名した事実を証明すれば有効な署名と

して扱う方針で再審査がされた結果1万 5217 人分有効な署名が増え最

終的には36 万 9008 人分の有効署名をもって議会の解散を求める直接請

求が可能となりました

ければならない

第 104 条 普通地方公共団体の選挙管理委員会は第 100 条において準用する

第 96条の規定による議会の解散請求書を受理したときは20日以内に議会か

ら弁明の要旨(1000字以内)その他必要な事項を記載した弁明書を徴さなけ

ればならない

2 前項の解散請求書に記載した請求の要旨及び同項の弁明書に記載した弁明

の要旨は第 100条の2第2項又は地方自治法第 85条第1項において準用す

る公職選挙法第 119 条第3項の告示の際併せてこれを告示するとともに投

票所の入口その他公衆の見やすい場所を選び原文のままこれを掲示しなけ

ればならないただし前項の弁明書の提出がないときは弁明の要旨につ

いてはこの限りでない

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

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員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

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山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 25: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

23

この結果平成 22 年 12 月 17 日署名の収集に当たった市長の支援団体

から市選挙管理委員会に対し議会の解散を求めて直接請求がなされました

これを受け令第 104 条の規定のとおり議会から弁明書が徴され平成

23 年2月6日指定都市としては初めて議会の解散の是非を問う住民投票

が実施されました

住民投票の実施の告示に際して公開された請求及び弁明書の要旨は次のと

おりです

名古屋市会弁明書の要旨 私たち名古屋市会は多くの市民の皆様が議会の解散を求める署名に応じたことを

大変重く受け止めております 私たちはこれまで二元代表制及び議会制民主主義を尊重する立場からも市民の

皆様の生活を守ることを第一に考えて議論をしまた市長からの提案事項について

も真摯に議論を行ってまいりました今後さらに市民生活第一に議会改革に取り

組んでまいる決意です しかしながらこの時期における議会の解散には

① 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがある ② 3億2千万円もの税金を使うことになる 等の懸念があります

従いまして市長主導によるこの時期の議会の解散には「反対」です 4月以降の市民生活に重大な影響を及ぼすおそれがあります 来る2月21日からは平成23年度予算の使い道を審議する2月定例会が予定され

ております

解散請求の要旨 庶民革命の為には名古屋市議会を変えねばなりません河村たかし市長選挙一丁目

一番地公約と政策は議会によって実現を阻まれています 〈1〉市民税10減税継続―日本初の市民税10減税は名古屋の金看板景気回

復の牽引車減税財源はすべて行財政改革で起債はあてられていません減税額の

一部を寄付し市民の選択(税金か寄付か)で地域社会を作ります 〈2〉地域委員会継続―選挙で選ばれたボランティア委員が地域予算を決定し地域

社会を作りますこれこそ本当の住民主権です 〈3〉市会議員報酬年1630万円(制度値)を800万円に―議員の家業化指定

席化をストップします名古屋市議会を解散し名古屋市民の名古屋市民による

名古屋市民の為の議会を作ろう 名古屋で生まれようとしている「民主主義のつくしんぼう」を育てようそして日本

中に発信しましょう

第Ⅲ章 直接請求の概要

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 26: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

24

住民投票では解散を賛成とするものが 7 割を占めたため議会は解散され

ました

<投票結果>

賛成 696146 (得票率7335)

反対 252921 (得票率2665)

無効 13156

当日有権者数 1776399人

投票率 5417

【経過】

平成 22 年 8月 27 日 署名収集開始

9月 27 日 署名収集期間終了

10 月 4日 審査を求め市選挙管理委員会へ約 46 万5千人

分の署名が提出された

10 月 24 日 市選挙管理委員会が審査期間を延長

11 月 24 日 約 11 万人分の署名が無効とされ有効署名数

が 35 万 3791 人となる

11 月 25 日から 署名簿の縦覧異議の申立てが約3万4千人分

12 月 1日まで なされる

12 月 15 日 市選挙管理委員会の再審査の結果有効署名数

が 36 万 9008 人となる

12 月 17 日 市選挙管理委員会へ直接請求

平成 23 年 2月 6日 解散の是非を問う住民投票

【課題】

指定都市では初めて成立した名古屋市の議会の解散を求める直接請求では

その署名運動の過程で大きな問題点が表面化しました

〈1〉今議会が解散されれば来年度予算が決められなくなるおそれがあります 〈2〉緊急の課題である景気雇用対策や福祉教育の分野の施策を決めることがで

きなくなり4月以降の市民の生活に大きな影響を及ぼすおそれがあります 3億2千万円もの税金を使うことになります 今議会を解散しなくてももともと4月10日には市議選と県議選が予定されて

います仮に解散となると市議選と県議選が別々の日に行われることとなり1か

月市議選を早く行うためだけに3億2千万円の税金が余分にかかります

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 27: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

25

3つの問題点

(1)大都市では署名集めの期間が短い

(2)大都市では必要な署名数が多い

(3)選挙管理委員会での署名審査に明確な基準がない

当時の法は署名収集期間は都市の大小にかかわらず都道府県は2か月市

町村は1か月と規定し必要署名数は人口40万人を目安に定めていました

例えば有権者数が約48万6千人の鳥取県では署名期間2か月ですが約1

80万人の名古屋市は1か月しかないことになります平成 22 年10 月に市

長の解職の直接請求が行われた鹿児島県阿久根市の必要な署名数は名古屋市の

約2にもかかわらず両市の署名収集期間は同じ1か月間という状況でした

また署名の審査基準について市の選挙管理委員会は「署名に1字でも誤字

があれば無効」という基準を打ち出し家族で署名した際に住所欄に「同じ」

を示す「」と記入しているケースなどでも無効な署名となりました法では

無効の基準について「何人(なんぴと)であるかを確認し難い署名」としてい

るだけで明確な基準はない点が審査基準の曖昧さを生じさせ署名審査に混

乱と労力を要する結果となりました

(1)(2)の問題については総務省地方行財政検討会議でも以前から議論

されていたこともあり平成 24 年に法を改正し必要な署名数の要件を緩和

しました(法第 76 条p19 参照)また平成 25 年には令を改正し指定

都市における署名収集期間を2か月と改めました(令第 92 条第3項p9

参照)

(3)の問題については現在でも法には署名の審査に関する細かな規定は

設けられていません

第Ⅲ章 直接請求の概要

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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テキストボックス
資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 28: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

26

公務員を選定し及びこれを罷免することは憲法でも規定された国民固有の権利

です(憲法第 15 条第 1 項)

(1)議員及び長の解職の請求

ア 概要

選挙権を有する者はその総数の3分の1()以上の者の連署をもって

その代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該所属の選

挙区の議会の議員又は長の解職を請求することができます(法第 13 条第

2項第 80 条第 1 項及び第 81 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 80

条第 1 項及び第 81 条第 1 項)

4 議員長及び主要公務員の解職の請求

地方自治法

第 80 条 選挙権を有する者は政令の定めるところにより所属の選挙区

におけるその総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合に

あつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の

1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合に

あつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分の

1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)

以上の者の連署をもつてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対し当該選挙区に属する普通地方公共団体の議会の議員の解職

の請求をすることができるこの場合において選挙区がないときは選挙

権を有する者の総数の3分の1(その総数が 40万を超え 80万以下の場合

にあつてはその 40万を超える数に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数その総数が 80 万を超える場合

にあつてはその 80万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40万に6分

の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た

数)以上の者の連署をもつて議員の解職の請求をすることができる

第 81 条 選挙権を有する者は政令の定めるところによりその総数の3

分の1(その総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40 万を

超える数に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数と

を合算して得た数その総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を

超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と

40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をも

つてその代表者から普通地方公共団体の選挙管理委員会に対し当該

普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる

憲法

第 15条 公務員を選定し及びこれを罷免することは国民固有の権利である

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 29: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

27

この制度は住民により直接選挙された公務員が時として住民の意

思からかい離し又は意思に反する事態を招いた場合にこれを罷免し地

方自治行政の運営が常に住民の意思に基づき行われることを確保しようと

するものです

議員及び長の解職請求では議会の解散請求と同様に住民の投票によ

ってその可否が決するもので(法第 80 条第 3 項第 81 条第 2 項及び第

76 条第 3 項)投票の結果過半数の同意が得られればその職を失うこ

ととなります(法第 83 条)

請求期間の制限

議会の解散と同様に議員及び長の解職請求にも期間の制限が設けられてい

ます理由については議会の解散と同様権利の濫用の防止のためでとも

に就職の日又は解職投票が行われたから1年間は請求できないこととなって

います(法第 84 条)ただし無投票選挙人は 1 年以内においても適用さ

れます

イ 請求の手続

請求代表者証明書交付から本請求に至るまでは条例の制定(改廃)と若干

の点を除き同じです

すなわち請求代表者証明書の交付申請は当該普通地方公共団体の選挙管理

委員会に対して行い請求代表者の資格の確認及び請求代表者証明書の交付は

当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います本請求は当該普通地方公

共団体の選挙管理委員会に対して行い本請求の受理の決定及び受理後の通知

等も当該普通地方公共団体の選挙管理委員会が行います

本請求後の解職投票は本請求の受理の告示の日から 60 日以内に原則と

して公職選挙法の定める手続によって行われ(法第 85 条)過半数の同意が

あった場合にはその職を失うことになります(法第 83 条)

投票後選挙管理委員会はその結果を議員の解職の場合は請求代表者並

びに議会の議長及び被解職請求者たる関係議員に通知し公表しかつ長に

対して報告し長の解職の場合は請求代表者並びに議会の議長及び長に通知

するとともに公表しなければなりません(法第 82 条)

地方自治法

第 84条 第 80 条第 1 項又は第 81 条第1項の規定による普通地方公共団体の議

会の議員又は長の解職の請求はその就職の日から1年間及び第 80 条第3項

又は第 81 条第2項の規定による解職の投票の日から1年間はこれをすること

ができないただし公職選挙法第 100 条第6項の規定により当選人と定められ

普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求はそ

の就職の日から1年以内においてもこれをすることができる

第Ⅲ章 直接請求の概要

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 30: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

28

議会の議員及び長の解職請求の流れ(本請求以後) (図 5)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③解職投票の告示

④解職投票

通知

⑤議員の解職の投票結果

報告

⑤長の解職の投票結果の通知

⑤投票結果の通知(公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p17 図 4 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を「長」とあるのを「選挙管理委員会」に読み替

えて御参照ください

地方自治法

第 80条

3 第1項の請求があつたときは委員会はこれを当該選挙区の選挙人の投票

に付さなければならないこの場合において選挙区がないときはすべての選

挙人の投票に付さなければならない

第 81条

2 第 74 条第5項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の3分の1の数

(その総数が 40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6

分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える数に8分の1を乗

じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た

数とを合算して得た数)について同条第6項の規定は前項の代表者について

同条第7項から第9項まで及び第 74 条の2から第 74 条の4までの規定は前項

の規定による請求者の署名について第 76条第2項及び第3項の規定は前項の

請求について準用する

議 長

関係議員

議 長

29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

66

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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29

ウ 他の自治体における事例について

巻末の「地方自治月報第 56 号」によれば平成 21 年 4 月 1 日から平成

24 年 3 月 31 日までの間に都道府県議会の議員については 1 件都道府

県知事については 1 件市町村議会の議員については 2 件市町村長につい

ては 18 件解職に係る請求代表者証明書の交付がなされました

ここでは他の自治体での長の解職の直接請求について事例を1件御紹介

します

事例5 独善的な市政運営を行った市長の解職を求めた直接請求(鹿児島県阿

久根市)

【概要】

鹿児島県阿久根市において竹原信一市長が職員のボーナス半減や副市長選

任などの専決処分を繰り返し議会招集を求める鹿児島県知事の是正勧告を無

視するなど「独善的に市政運営を行うやり方はまさに独裁」であるとして

市長の解職を求め平成 22 年8月に市民団体が署名の収集を開始したとこ

ろ1か月の法定署名収集期間に 10364 人分の署名が集まりました

市の選挙管理委員会での審査の結果最終的な有効署名数は10197 人と

なり直接請求に必要な法定数 6673 人をはるかに超え有権者の過半数に

達する署名が集まったこととなりました

これを受け平成 22 年 10 月 13 日市民団体から市選挙管理委員会に対

し市長の解職を求めて直接請求がなされました

平成 22 年 12 月5日には解職の是非を問う住民投票がなされ解職を賛成

とするものが過半数となったため市長は失職しました

【経過】

平成 22 年8月 17 日 署名収集開始

第 82 条 第 80 条第3項の規定による解職の投票の結果が判明したときは普通

地方公共団体の選挙管理委員会は直ちにこれを同条第1項の代表者並びに当

該普通地方公共団体の議会の関係議員及び議長に通知しかつこれを公表す

るとともに都道府県にあつては都道府県知事に市町村にあつては市町村長

に報告しなければならないその投票の結果が確定したときもまた同様と

する

2 前条第2項の規定による解職の投票の結果が判明したときは委員会は直

ちにこれを同条第1項の代表者並びに当該普通地方公共団体の長及び議会の議

長に通知しかつこれを公表しなければならないその投票の結果が確定し

たときもまた同様とする

第 83条 普通地方公共団体の議会の議員又は長は第 80条第3項又は第 81条第

2項の規定による解職の投票において過半数の同意があつたときはその職

を失う

第Ⅲ章 直接請求の概要

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 32: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

30

9 月 15 日 10364 人分の署名を市選挙管理委員会に提出

10 月 5日 市選挙管理委員会の審査の結果有効署名数が

10197 人となる

10 月 13 日 市選挙管理委員会へ直接請求

12 月 5日 解職の是非を問う住民投票

(2)主要公務員の解職の請求

ア 概要

法では直接選挙によって選ばれた公務員のみならず任命により職に就

く公務員についても住民がその罷免を求めることを認めています

住民は選挙権を有する者の総数の3分の1()以上の者の連署をもっ

てその代表者から普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市

町村長選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職を請

求することができます(法第 13 条第2項及び第 86 条第1項)

総数が 40 万人を超える場合は法に定める所定数となります(法第 86

条第 1 項)

主要公務員については住民によって選ばれた者ではないため住民に自

身に賛否を決する権利はなく長が議会に付議し(法第 86 条第3項)議

会において議員の3分の2以上の者が出席の上でさらに4分の3以上の

者の同意があったときに解職されることになります(法第 87 条第 1 項)

地方自治法

第 86 条 選挙権を有する者(道の方面公安委員会の委員については当該

方面公安委員会の管理する方面本部の管轄区域内において選挙権を有す

る者)は政令の定めるところによりその総数の3分の1(その総数が

40万を超え 80万以下の場合にあつてはその 40万を超える数に6分の1を

乗じて得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数そ

の総数が 80万を超える場合にあつてはその 80万を超える数に8分の1を

乗じて得た数と 40万に6分の1を乗じて得た数と 40万に3分の1を乗じ

て得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつてその代表者から

普通地方公共団体の長に対し副知事若しくは副市町村長選挙管理委員

若しくは監査委員又は公安委員会の委員の解職の請求をすることができ

地方自治法

第 87 条 前条第1項に掲げる職に在る者は同条第3項の場合において

当該普通地方公共団体の議会の議員の3分の2以上の者が出席しその4

分の3以上の者の同意があつたときはその職を失う

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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ノート注釈
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ノート注釈
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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 33: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

31

このように住民自らが意思で選択していないにもかかわらず制度が認

められた趣旨については「地方団体の行政執行の衡に当たるものが公共

の福祉の増進を念とし責任を以て事務の公正にして敏活適実なる処理に

努めるか否かは一般住民の安危の懸る所であるが(中略)これを罷免す

ることが出来るようにすることは(中略)是非とも必要であってこの事

情は必ずしも直接選挙による職員のみではなくその下において重要とな

る職務執行の任に当っている幹部職員についても同様であると考える(後

略)」(地方制度改正資料第一部昭和 21 年 10 月地方制度関係答弁資料

1202 頁)と述べられています

請求期間の制限

議会の解散や議員及び長の解職請求と同様に主要公務員の解職請求に

も期間の制限が設けられていますこの制限により当該主要公務員の就

職の日又は主要公務員の解職請求にかかる議会の議決の日から 1 年間(選

挙管理委員監査委員及び公安委員会の委員については6か月間)は解

職の請求を行うことができません(法第 88 条)

イ 請求の手続

手続については本請求に至るまでは条例の制定又は改廃の請求と全く

同じです本請求を受理したときは長はこれを議会に付議しその結果

を請求代表者及び被解職請求者たる関係者に通知し公表します(法第

86 条第 3 項)

地方自治法

第 88条 第 86 条第1項の規定による副知事又は副市町村長の解職の請求はそ

の就職の日から1年間及び同条第3項の規定による議会の議決の日から1年間

はこれをすることができない

2 第 86 条第1項の規定による選挙管理委員若しくは監査委員又は公安委員会の

委員の解職の請求はその就職の日から6箇月間及び同条第3項の規定による

議会の議決の日から6箇月間はこれをすることができない

第Ⅲ章 直接請求の概要

32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

50

51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

54

55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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32

主要公務員の解職請求の流れ(本請求以後) (図 6)

①解職の請求

②受理の通知

(請求要旨等の告示公表)

③付議

④議決

⑤結果の通知

⑤結果の通知

(結果の公表)

(「実務解説 直接請求制度」(直接請求実務研究会編)p19 図 5 をもとに作成)

本請求に至るまではp7図1を御参照ください

地方自治法

第 86条

3 第1項の請求があつたときは当該普通地方公共団体の長はこれを議

会に付議しその結果を同項の代表者及び関係者に通知しかつこれを

公表しなければならない

者 被解職請求者

議 会

33

lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

50

51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

54

55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

66

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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lt参考gt 横浜市において直接請求に必要な有権者数(平成 26 年 9 月 12 日現在)

50 分の1の数60129 人

6分の 1 の数501075 人

3分の1の数1002149 人

総数の 80 万を超える数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じ

て得た数と 40 万に3分の1を乗じて得た数とを合算して得た数

475806 人

選挙区ごとの3分の1の数

鶴見区75959 人 神奈川区63758 人

西区26856 人 中区38283 人

南区54493 人 港南区59904 人

保土ケ谷区55746 人 旭区68657 人

磯子区45364 人 金沢区55862 人

港北区91592 人 緑区47555 人

青葉区81174 人 都筑区52893 人

戸塚区74030 人 栄区34086 人

泉区41983 人 瀬谷区33958 人

ここではアメリカと韓国における解職請求制度について御紹介します

① アメリカ合衆国

2009年現在18州で州政府レベルの解職請求が認められています

自治体政府レベルでは2500人以上の全米自治体のうち685で「解職請

求」が認められています(1996年)

署名収集に必要な署名数

州によって有権者の10から40の署名要件という幅がありますが25が

最も一般的な要件となっています

(カリフォルニア州の例)

全州単位で選出される公務員(州知事法務長官等)

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の12

州議会議員税査定平準委員会委員控訴裁予審裁判事の場合

rArrその官職の直近の選挙での総投票数の20

コラム 諸外国における解職請求制度

第Ⅲ章 直接請求の概要

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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ノート注釈
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 36: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

34

署名収集期間

解職請求の請願書の提出から州によって60日から180日までの幅がありま

(カリフォルニア州の例)

解職請求の請願書の提出から160日以内

48の郡(county)のうち少なくとも5つの郡から集めなければならずそ

れぞれの郡における署名の数は解職請求を要求する公選職についての直近の投

票数の少なくとも1に達していなければなりません

② 韓国

住民召還投票請求権を有する者の連署により地方自治体の長地方議会議員(比例代表地

方議会議員は除く)等の失職を求める「住民召還制度」があります

住民召還投票の請求

住民召還対象 必要署名数()

特別市長広域

市長道知事

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 10 以上

市長郡守区

庁長

当該地方自治体の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 15 以上

地方議会議員 当該地方議会議員の選挙区内の住民召還投票請求権者総数の

100 分の 20 以上

必要署名数には上記に加え各自治体内の3分の1以上の地域(特別市長広域市長

道知事の場合は市郡自治区市長郡守自治区の区庁長地方議会議員の場合は邑

面洞)において各々大統領令が定める数(005~1)以上の署名を集めなけ

ればなりません

住民召還投票の請求を受けた選挙管理委員会はその請求が適法であると認定する場合に

は住民召還投票を発議します

住民召還投票は賛成又は反対を選択する形式で実施し住民召還投票権を持つ有権者総数

の 3 分の 1 以上の投票と有効投票総数過半数の賛成で確定します

住民召還投票により失職した者は後任者を選出する選挙に候補者として登録することは

できません

地方行財政検討会議 第一分科会(第6回)資料4 p811 をもとに作成

35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

64

65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

66

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
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35

第Ⅲ章で御紹介した直接請求制度は全て法に規定のある請求制度となっています

が第Ⅱ章でも触れたように法以外の法律で直接請求制度が認められているもの

があります

(1)教育委員会の教育長又は委員の解職請求(地方教育行政の組織及び運営に関

する法律第8条)教育長については平成 27 年 4 月 1 日から解職請求ができます

(2)農業委員会の委員の解任請求(農業委員会等に関する法律第 14 条)

(3)海区漁業調整委員会の委員の解職請求(漁業法第 99 条)

(4)土地改良区総代の解職請求(土地改良法第 24 条)

これら請求の諸要件は次のとおりです(図)

選挙権を有する者の総数が 40 万を超え 80 万以下の場合にあつてはその 40

万を超える数に6分の1を乗じて得た数と40万に3分の1を乗じて得た数とを

合算して得た数その総数が 80 万を超える場合にあつてはその 80 万を超える

数に8分の1を乗じて得た数と 40 万に6分の1を乗じて得た数と 40 万に3分

の1を乗じて得た数とを合算して得た数となります

対象者 必要署名数 受理機関 請求による効果

教育委員会の教育長

又は委員

選挙権を有する者

の3分の1以上

地方公共団体

の長

長は議会に付議し3 分

の 2 以上の出席により

その 4 分の3以上の同

意があれば失職する

農業委員会の委員

農業委員会の委員

の選挙権を有する

者の 2 分の 1 以上

市町村の選挙

管理委員会

選挙管理委員会は請求

のあった旨を告示しそ

の日に失職する

海区漁業調整委員

会の委員

海区漁業調整委員

会の委員の選挙権

を有する者の 3 分

の1以上

都道府県の選

挙管理委員会

選挙人の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

土地改良区の総代

組合員総数の 3 分

の 1 以上

都道府県又は

市町村の選挙

管理委員会

組合員の投票に付し過

半数の同意があれば失

職する

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

1 その他の公務員の解職の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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54

55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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Page 38: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

36

(1)概要

市町村長が住居表示を実施するために町又は字の区域の新設等をする際には

あらかじめその案を公示しなければなりませんが(住居表示に関する法律第5条

の2第1項)公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で当該

市町村の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議のあるときは政令

に定めるところにより50 人以上の連署をもって市町村長に対し変更の請

求をすることができます(同条第2項)

市町村の議会は変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に関する議

案を議決する前にあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の区域

内に住所を有する者から意見を聞いた後でなければ当該議案の議決をすること

ができません(同条第 6 項)

(2)横浜市における事例について

本市では平成 19 年に港北区太尾町の住居表示実施の際に変更の請求がなさ

れた事例があります

事例6 横浜市港北区太尾地区住居表示の変更請求

【概要】

港北区太尾町は約1万 2000 世帯約2万 3000 人の住民が暮らしていた

ところ地番が 3000 番台まであり欠番や飛び地が多く住所が分かりにくいこ

とから住居表示を実施すべく住民らが平成 17 年 12 月に「住居表示検討委

2 住居表示に関する変更の請求

住居表示に関する法律

第5条の2 市町村長(特別区の区長を含む以下同じ)は第2条に規定する

方法による住居表示の実施のため地方自治法第 260条第1項の規定により町若

しくは字の区域の新設若しくは廃止又は町若しくは字の区域若しくはその名称

の変更(以下「町又は字の区域の新設等」という)について議会の議決を経よ

うとするときはあらかじめその案を公示しなければならない 2 前項の規定により公示された案に係る町又は字の区域内に住所を有する者で

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有するものはその案に異議があるとき

は政令の定めるところにより市町村長に対し前項の公示の日から 30 日を

経過する日までにその 50 人以上の連署をもつて理由を附してその案に対

する変更の請求をすることができる

6 市町村の議会は第2項の変更の請求に係る町又は字の区域の新設等の処分に

関する議案についてはあらかじめ公聴会を開き当該処分に係る町又は字の

区域内に住所を有する者から意見をきいた後でなければ当該議案の議決をする

ことができない

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

39 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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資料総務省「地方自治月報56号」(抜粋)
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40

41 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

42

43 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

44

45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

46

47 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

48

49 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

50

51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

52

53 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

54

55 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

56

57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 39: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

37

員会」を設置しました

その後検討委員会や地元説明会の開催住民アンケートを経て住居表示実

施後の新町名を駅名にもなっていて知名度の高い「大倉山」とする案をまとめ

て市に具申し市はその旨を横浜市住居表示審議会に諮問し了承を得ました

そこで港北区における町区域の設定等に関する案の告示を行ったところ「太

尾」という歴史的な地名の存続を求めてこの案に反対する住民から56 人分の署

名をもって案に対する変更の請求がなされました

港北区における町区域の設定等の議案は議会では市民活力推進教育委員会

に付託されました委員会では公聴会を開催して住民の意見を聴取しその意

見を参考に議論がなされましたが最終的には検討委員会における議論や住民

アンケートの結果等を踏まえ原案に賛成する意見が多数となりました

【経過】

平成 17 年 12 月から 住居表示検討委員会開催(7回)

住居表示実施に伴うチラシを配布(4回)

平成 19 年 1 月まで 地元説明会開催(2回)

2月 横浜市住居表示審議会開催(港北区太尾町住居表示整備

事業承認)

横浜市報で案の告示

3月 変更請求書の提出

5月 議会に議案上程(変更請求も添付継続審議決定)

9月 公聴会開催

第3回定例会で原案可決

市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者は政令で定めるところによりそ

の総数の 50 分の1以上の者の連署をもってその代表者から市町村の長に対し

当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方となる市町村(以下「合併対象市町村」

といいます)の名称を示して合併に関する協議を行う協議会(以下「合併協議会」

といいます)の設置を請求することができます(市町村の合併の特例に関する法律

第4条第1項)

当該請求のあった市町村(以下「合併請求市町村」といいます)の長は直ちに

請求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該請求

に基づく合併協議会設置に係る協議について議会に付議するか否かの意見を求めな

ければなりません(同条第2項)

合併対象市町村の長はこの意見を求められた日から 90 日以内に合併請求市町

村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答しなければ

なりません(同条第3項)

3 合併協議会設置の請求

第Ⅳ章 地方自治法以外の直接請求

38

山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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山梨県道志村には村面積の36を占める横浜市所有の水源涵養(かんよう)

林があり横浜市水道局の水源林管理所があるなど横浜市の水源地として100

年以上にも続く深いつながりがあります

この道志村において平成 15 年6月住民グループが有権者 1730 人の4割

弱に当たる 653 人分の署名を集め横浜市との合併を協議する合併協議会の設置

を求める請求が道志村の村長に対してなされました

道志村の村長から通知を受けた中田宏市長(当時)は同年9月

(1)双方の住民に合併機運の高まりが欠けている

(2)道志村の総意として合併を求めているとはいい切れない

(3)50 キロも離れ生活圏が一体とはいえない

との理由から議会に付議することなく合併の申入れを断る形になりました

合併には至らなかったもののその後横浜市は道志村と「友好交流に関する

協定書」を締結し現在も友好関係は続いています

市町村の合併の特例に関する法律

第4条 選挙権を有する者(市町村の議会の議員及び長の選挙権を有する者(公職

選挙法 (昭和 25年法律第 100号)第 22条の規定による選挙人名簿の登録が行わ

れた日において選挙人名簿に登録されている者をいう)をいう以下同じ)は

政令で定めるところによりその総数の 50分の1以上の者の連署をもってその

代表者から市町村の長に対し当該市町村が行うべき市町村の合併の相手方と

なる市町村(以下この条及び第5条の2第1項において「合併対象市町村」とい

う)の名称を示し合併協議会を置くよう請求することができる

2 前項の規定による請求があったときは当該請求があった市町村(以下この条

及び第5条の2第1項において「合併請求市町村」という)の長は直ちに請

求の要旨を公表するとともに合併対象市町村の長に対しこれを通知し当該

請求に基づく合併協議会に係る地方自治法第 252 条の2の2第1項の協議(以下

この条において「合併協議会設置協議」という)について議会に付議するか否か

の意見を求めなければならないこの場合において合併請求市町村の長は当

該意見を求めた旨を合併請求市町村を包括する都道府県の知事に報告しなければ

ならない

3 合併対象市町村の長は前項の意見を求められた日から 90日以内に合併請求

市町村の長に対し合併協議会設置協議について議会に付議するか否かを回答し

なければならない

コラム 山梨県道志村からの合併の申入

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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45 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

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『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

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『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

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『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

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『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

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51 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

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『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

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『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

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『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

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『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

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『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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57 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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参考文献

『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

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58

59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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59 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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60

61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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61 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

62

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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63 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

担当)が編集発行しているものです

  • 空白ページ
Page 66: 26 Vol.11 (通算138号) - Yokohama...2018/08/09  · 2013 第8回マニフェスト大賞「優秀成果賞」及び「審査委員会特別賞」受賞 平成26年度 Vol.11

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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65 資料総務省「地方自治月報第56号」(抜粋)

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

面でも積極的にサポートすることを目的として議会局政策調査課(法制等

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『実務解説 直接請求制度』直接請求実務研究会 編(ぎょうせい)

『新地方自治講座5 条例規則直接請求』神崎冶一郎 著(第一法規)

『地方自治法概説(第5版)』宇賀克也 著(有斐閣)

『要説 地方自治法 第八次改訂版』松本英昭 著(ぎょうせい)

『逐条 地方自治法 第7次改訂版』松本英昭 著(学陽書房)

『注釈地方自治法(全訂)』成田頼明園部逸夫金子宏塩野宏磯部力小早川

光郎 著(第一法規)

『地方自治関係実例判例集(第 14 次改訂版)』地方自治制度研究会 編(ぎょうせ

い)

『ホーンブック地方自治法』人見剛 須藤陽子 著(北樹出版)

『韓国の地方自治』財団法人自治体国際化協会 編(財団法人自治体国際化協会)

『アメリカの地方自治』小滝敏之 著(第一法規)

『韓国におけるリコール法の制定』白井京 著(国立国会図書館『外国の立法』(2006

年 11 月))

『カリフォルニア州における直接民主制』山岡規雄 著(国立国会図書館『レファレ

ンス』2009 年 12 月)

『衆議院米国カナダ及びメキシコ憲法調査議員団報告書』(平成 16 年 2 月)

「法制レポート」は「市会ジャーナル」の特別編として議会活動を法制

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