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神奈川県にある「東海大学医学部付属病院」の「救命救急科 診療科長」中川 儀英先生にお話をお聞きしました。東海大学医学部付属病院では、高度救 命救急センターとドクターヘリを保有し、神奈川県内における救急医療を 担う基幹病院として運営されております。救急医療の中でのLUCAS®2 心臓マッサージシステムはどの様に活用されているのでしょうか。 LUCAS ® 2 高度管理医療器/特定保守管理医療機器/販売名:LUCAS2心臓マッサージシステム/医療機器承認番号:22200BZI00006000 使用事例 東海大学医学部付属病院 〈神奈川県伊勢原市〉 vol. 6 Physio-Control Japan CASE REPORT

CASE REPORTvolCASE LUCAS ®2 REPORT 3 3 当院のドクターヘリでは、交通事故や心疾患、脳疾患などの重症患者への対応以外にも、心 肺停止症例についても対応しています。昨年度の実績を見ると、2016年の4月から2017年

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Page 1: CASE REPORTvolCASE LUCAS ®2 REPORT 3 3 当院のドクターヘリでは、交通事故や心疾患、脳疾患などの重症患者への対応以外にも、心 肺停止症例についても対応しています。昨年度の実績を見ると、2016年の4月から2017年

神奈川県にある「東海大学医学部付属病院」の「救命救急科 診療科長」中川儀英先生にお話をお聞きしました。東海大学医学部付属病院では、高度救命救急センターとドクターヘリを保有し、神奈川県内における救急医療を担う基幹病院として運営されております。救急医療の中でのLUCAS®2 心臓マッサージシステムはどの様に活用されているのでしょうか。

LUCAS®2高度管理医療器/特定保守管理医療機器/販売名:LUCAS2心臓マッサージシステム/医療機器承認番号:22200BZI00006000

使用事例

東海大学医学部付属病院〈神奈川県伊勢原市〉

vol.6

Physio-Control Japan

CASEREPORT

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Physio-Control Japan

東海大学医学部付属病院≲高度救命救急センター≳

CASEREPORT vol.6

 東海大学医学部付属病院は神奈川県のほぼ中央にある伊勢原市にあり、当院の高度救命救急センターは、湘南・県西・一部県央地域を担当する三次救急医療施設として、重症救急患者の診療に当たっています。さらに神奈川県全域および静岡県や山梨県の一部の基地病院としてドクターヘリを運用し、地域の救命救急医療に貢献しています。ドクターヘリ運航の歴史は、1999年から1年6か月にわたっておこなわれた当時の厚生労働省の試行的事業に始まり、2001年より開始された同省の「ドクターヘリ導入促進事業」の一環として今日に至ります。

東海大学医学部付属病院 救命救急科 診療科長 中川儀英先生

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このドクターヘリ導入促進事業により、今では神奈川県のほか全国41箇所に51機(2017年3月時点)のドクターヘリが配備されています。 ドクターヘリには医療機器と医薬品が搭載されており、救急医療専門の医師と看護師を救急現場にいち早く運ぶ事で、直ちに治療を開始できます。さらに、救急車では搬送に時間を要する遠距離からでも、短時間で高度な医療機関に患者を搬送することが可能です。実際に神奈川県の最西部から救急車で搬送する場合は1時間ほど搬送時間が必要になりますが、ドクターヘリでは10分から15分程度で搬送が可能です。また、当院のドクターへリは狭い場所でも離着陸できるように小型機を採用しています。 ドクターヘリは消防本部からの要請により出動します。当院高度救命救急センター医師により出動が適当と判断されると、概ね5分以内で離陸し、各市町村に確保されている臨時ヘリポート(ランデブーポイント)にて患者を乗せた救急車と合流し、直ちに初期治療を開始します。その後、当院を始めとする救命救急センターに搬送します。当院では、さまざまな患者の対応で年間約280件のドクターヘリ運用をおこなっています。

LUCAS®2CASEREPORT

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 当院のドクターヘリでは、交通事故や心疾患、脳疾患などの重症患者への対応以外にも、心肺停止症例についても対応しています。昨年度の実績を見ると、2016年の4月から2017年3月までの期間で、208件のドクターヘリ対応を実施していました。このうち、心肺停止症例は25件で、内因性18例、外因性7例でした。当院では外傷の場合には機械的CPRをおこなわないことにしているので、内因性に対して機械的CPRを考慮することにしています。 当院では以前より、内因性の心肺停止症例に機械的CPR装置を使用しております。LUCAS2は従来使用していた装置の更新を機会に導入しました。医療機器の選定には装置の使い易さや臨床上のエビデンスが大切と考えています。LUCAS 2 は、動物実験における用手とLUCAS 2の比較研究において、用手より高い冠灌流圧を維持し、EtCO2の増加も確認されています1。また、人を対象とした大規模なRCTでは、用手と比較し非劣性が確認されています2。 さらに、LUCAS 2は実用性にも長けた装置です。ヘリに搭載された機械的CPR装置を患者に装着し胸骨圧迫を続けながらERまで搬送するには、装置の携帯性や装着の容易さ、駆動時間が重要です。LUCAS 2は携帯性に優れたコンパクトな設計で持ち運びし易く、容易に患者に装着ができ、駆動時間も満充電のバッテリにて最大45分間連続使用が可能、と十分な性能を持っています。

ドクターヘリの運用と機械的CPR装置。ヘリ搬送時の装置を用いた胸骨圧迫に求められる根拠と実用性

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 2016年度には4症例の心肺停止症例にてLUCAS 2を使用しました。3症例においては、LUCAS 2 を装着後も ROSC には至らず死亡確認となりました。しかしながら、1 例では、LUCAS 2を装着後、搬送中のヘリ内部で自己心拍再開が認められました。ER到着時も自己心拍が維持されておりましたが、転帰は死亡確認となりました。 これらの症例では箱根や 愛川の現場から10分から15分程度の時間で搬送しました。10分から15分の時間であっても、ヘリ内での質の高い胸骨圧迫をおこなうことは難しいものです。揺れるヘリ内では、揺れとともに胸骨圧迫の力を入れる方向が不安定になり、質の高い胸骨圧迫をおこなうには、高い集中力と技術が求められます。さらに、狭いヘリ内部では胸骨圧迫実施者の交代を頻回におこなえません。このため1人あたりの胸骨圧迫実施時間は長くなり、質の高い胸骨圧迫の継続が難しくなります。この様な用手での質の高い胸骨圧迫が困難な状況で、LUCAS 2は用手の胸骨圧迫の代替手段として良い選択だと考えています。実際にヘリ内でLUCAS 2を用いた際のCPPなどを測定したことはありませんが、実際に自分自身でヘリ

ドクターヘリ内での胸骨圧迫とLUCAS 2 の役目とは

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LUCAS®2CASEREPORT

内での胸骨圧迫をおこなって来た者として、LUCAS2を装着された患者への胸骨圧迫が安定しておこなえている様に見え、用手より質の高い胸骨圧迫が可能になっているのではないかと考えております。 ドクターヘリにて心肺停止症例をLUCAS 2を使用しながら搬送することは、他にもメリットがあります。ドクターヘリ運用では、患者の処置は基本的に全て現場で実施し、ヘリでの搬送中は必要最低限の処置を実施することにしています。しかしながら胸骨圧迫は、搬送中も継続しておこなわれることが多い上、救急現場から救急車、ヘリなどの乗り降りを繰り返してERに運び込まれるまでには、何度も胸骨圧迫の中断を余儀なくされる場合があります。この様な搬送中の胸骨圧迫の中断に関して、用手と機械的CPR装置の比較をおこなった過去の研究では、搬送中における胸骨圧迫の中断時間は用手の方が長く必要になったとされています3。  当院のドクターヘリ運用では、LUCAS 2を現場にて患者に装着し動作の準備をおこなってから搬送を開始する様にしています。LUCAS 2を現場からERまで患者から外すこと無く使用ができている為、用手では胸骨圧迫の中断が余儀なくされる様な移動中の場面においても質の高い絶え間ない胸骨圧迫が可能になっています。

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 さらに、女性医師の良きパートナーになることも別のメリットとしてあげられるでしょう。質の高い絶え間ない胸骨圧迫は、医師の性別を問わず求められます。当院のドクターヘリに搭乗する女性医師は多いのですが、体重や体力の面で不利になりがちなうえ、ドクターヘリのような質の高い胸骨圧迫を継続しておこなうことが難しい環境下で、女性医師にとってLUCASは強い味方となってくれるでしょう。 LUCAS 2は私たちのドクターヘリ運用における、用手での質の高い絶え間ない胸骨圧迫が難しい状況における代替手段として良い役目を果たしてくれています。 私たちのドクターヘリを用いた救急活動では、厳しい現場で重症度が高い患者に多く出会います。より有効で安全な医療を提供し、1人でも多くの患者の救命に努めていきたいと思います。

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LUCAS®2CASEREPORT

Reference

Manual versus mechanical cardiopulmonary resuscitation. An experimental study in pigs. Liao et al; BMC Cardiovasc Disord. 2010 Oct 28;10:53.ブタを使った用手とLUCASの比較研究。LUCAS vs 用手 = 20-25 vs 5-10㎜HgとLUCAS群が高い冠灌流圧の維持を示した。

Mechanical chest compressions and simultaneous defibrillation vs conventional cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest: the LINC randomized trial. Sten Rubertsson, MD, PhD; Erik Lindgren, MD; David Smekal, MD, PhD; et al; JAMA. 2014 Jan 1;311(1):53-61.大規模RCT;LINC study (LUCAS IN Cardiac arrest study) では、2,589名の成人の患者を対象に、用手での胸骨圧迫と機械的CPR装置での無作為比較対照試験がおこなわれた。その結果、1ヶ月及び6ヶ月後の生存において機械的CPR装置の非劣性が確認された。

Quality of cardiopulmonary resuscitation before and during trans-port in out-of-hospital cardiac arrest. Theresa M. Olasveengen; Lars Wik; Petter A. Steen; Resuscitation. 2008 Feb;76(2):185-90.搬送中における用手とLUCASの胸骨圧迫の時間割合。搬送中の患者で、用手及びLUCASのそれぞれについて、全 CPR 期間に対する胸骨圧迫の実施時間比と中断時間比を調査。用手群では胸骨圧迫時間比73%、LUCAS群では92%と、LUCAS群が搬送中の胸骨圧迫中断が少なくなることが示された。

1.

2.

3.

LUCAS(n:1,300)

用手(n:1,289) p値

1ヶ月後生存 112(8.6%) 109(8.5%) 0.89

内、CPC 1 92(7.1%) 74(5.7%) 0.17

CPC 2 13(1.0%) 20(1.6%) —

6ヶ月後生存 111(8.5%) 104(8.1%) 0.67

内、CPC 1 103(7.9%) 88(6.8%) 0.29

CPC 2 7(0.5%) 10(0.8%) —

0

20

40

60

80

100

用手胸骨圧迫(搬送中)

LUCASを使用した胸骨圧迫(搬送中)

73%

27%

92%

8%全体時間の割合

(%)(挿管患者)

胸骨圧迫実施時間

胸骨圧迫中断時間

-10

0

5

10

20

30

冠動脈流還流圧(mmHg)

-5

15

25

5 1000 15 20時間(分)

LUCAS-CPRManual-CPR

ERで臨床試用中のLUCAS 3

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LUCAS-014-A

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