16
支配人の権限 (129) 支配人の権限濫用について 支配人の権隈は、包括的かつ定型化されており、 制隈は善意の第三者に対抗しえない(商三八1、皿)。 かつ、支配人のなした行為が、その支配権の範囲内かは 主観的事情によらず行為の客観的性質により判断される。 このような支配権の特質上、支配人の行為が外形上、 支配権の範囲内であるが、その内実は支配人自身又は相 手方の利益を図る意図をもってなされ、相手方が悪意の ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。これに ついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、 その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れ ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様 な規定が存する会杜代表者の場合(商七八、 有三二、民五四等)、さらに部分的包括的代理権を 番頭等の中級使用人(商四三)の場合にも生ずるし、 いては代理権一般にも通ずるものであるが、本稿では支 配λの権限濫用についてのみ西独法を概観して一つ肌検 ^1) 討をなすものである。 西独商法上、支配権は商業経営に必然的に伴う全ての 種類の行為(裁判上吸ぴ裁判外を含めて)に及ぷ(HG B四九1)のであり、その範囲の制限は、営業主と支配 人との内部関係でのみ意味を有し、これに違反すれぱ支 ^2〕 配人は損害賠償義務を負うが、外部に対しては、法文上、

HERMES-IR | HOME - 支配人の権限濫用について URL Right...支配人の権限濫用について 石 原 全 (129) 支配人の権限濫用について ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。

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Page 1: HERMES-IR | HOME - 支配人の権限濫用について URL Right...支配人の権限濫用について 石 原 全 (129) 支配人の権限濫用について ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。

支配人の権限濫用について

石  原

(129) 支配人の権限濫用について

 支配人の権隈は、包括的かつ定型化されており、その

制隈は善意の第三者に対抗しえない(商三八1、皿)。

かつ、支配人のなした行為が、その支配権の範囲内かは

主観的事情によらず行為の客観的性質により判断される。

 このような支配権の特質上、支配人の行為が外形上、

支配権の範囲内であるが、その内実は支配人自身又は相

手方の利益を図る意図をもってなされ、相手方が悪意の

ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。これに

ついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、

その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れ

ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様

な規定が存する会杜代表者の場合(商七八、二六一皿、

有三二、民五四等)、さらに部分的包括的代理権を有する

番頭等の中級使用人(商四三)の場合にも生ずるし、ひ

いては代理権一般にも通ずるものであるが、本稿では支

配λの権限濫用についてのみ西独法を概観して一つ肌検

       ^1)

討をなすものである。

 西独商法上、支配権は商業経営に必然的に伴う全ての

種類の行為(裁判上吸ぴ裁判外を含めて)に及ぷ(HG

B四九1)のであり、その範囲の制限は、営業主と支配

人との内部関係でのみ意味を有し、これに違反すれぱ支

          ^2〕  .

配人は損害賠償義務を負うが、外部に対しては、法文上、

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一橋論叢 第95巻 第2号(130)

善意・悪意を間わず第三者に対して無効である(HGB

 ^3)

五〇1)。この意味で、支配権は包括的かつ文字通りの

不可制眼性を有するといえる。そして、たとえ法偉上許

容されない制隈が登記されたとしても法効果を生じない

し、登記能妻有しない菱に関するから善意の浦与

は登記の公示力(HGB一五)の利益を享受しえない。

さらに、不可制限性から、支配人が支配権を授権契約に

反して行使しても、その結果は営業主の有利又は不利に

効果を生ずるし、特に支配人が営業主に損害を生ぜしめ

るため意図的に支配権を濫用した場合にもこのことは妥

当を;こでは・法偉上不可製的に有効とされる支

配権における濫用の危険は、原則として営業主が負担す

          ^6)

べきものとされるのである。しかし、他面、支配権の包。

括性及ぴ不可制限性を定めるHGB四九条、五〇条は、

商取引の確実性と営業主の第二の自己(里岸、、。o員。)と称

される支配人と取引する第三者の信頼保護を確保するた

めの規定であるから、この目的設定により一つの制限が

生ずる。つまり、第三者が保謹に値する隈りでのみ、か

つ、その場含にのみ信頼保謹が付与されるのであり、保

謹に値しないときには両条により規定された第三者の信

頼保護は作用し島こたが一て、支配権の濫用が存し、湖

相手方が悪意であるにも拘らず取引をなしたときには、

支配権の包括性・不可製性の原則を貫くことはで毒、

営業主を保護すべきことについては見解は一致している。

ただ、その理論的根拠及ぴ悪意の内容いかんについて見

解が対立している。もっとも、相手方が営業主を害すべ

く故意に支配人と共働した(通謀)ときは、良俗違反に

より無効であり(BGB一三八)、相手方は損害賠償義

務を営業主に対して負う(BGB八二六)ことになる点

            ^9)

については見解は一致している。それ以外の場合につい

て対立が存するのである軌まず、理論的根拠を検討する。

 この点に関しては、代理制度上で解決を図る説とそれ

以外の法制度を活用する説とに大別しうる。前説は、現

什法は代理人の義務違反に対して代理権を独立させてい

るが、代理権の濫用、つまり、代理人による義務違反が

存し、相手方が悪意である限りでは、独立性には限界が

存する。代理権濫用はその性質上代理権限によつてカバ

ーされていないし、かつ、相手方の悪意は代理権の資格

付与(■晶麸昌嘗ま昌)を排除してしまうのである。した

がって、代理人は代理権なしで行為していることになり、

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(131) 支配人の権隈濫用について

無権代理に関するBGB一七七条以下の規定が類推連用

  ^加)

される。たとえ、代理権濫用が外都効果を生ずるとして

も、BGB一七七条の類推適用により、契約は浮動的無

効(ω旨峯ま實o旨乏津竃目)であり、本人の追認いか

んによって決定される。相手方の撤回権は代理権濫用を

知らなかった場合にのみ生じうるし(BGB一七八類推

適用)、代理人自身の責任は相手方が濫用を知っていた

か又は知りうべき場合には生じない(BGB一七九1、

皿類推適用)。かくて、BGB一七七条以下の類推適用

は結果的に一義的解決をもたらし、当該取引は有効か無

        ^u〕

効かのいずれかである。この説は、代理権濫用に代理人

の義務違反をも合めると共に、一般代理権に関して展開

するものである。しかし、支配権のように商法上の代理

権で、しかも、制定法上不可制限性を有する代理権隈に

関しては、これは妥当しない。この法規定の意味は、代

理人が本人との関係で自己の権隈を瞼越しても代理人と

しての資格付与を存続させることにあるし、相手方の見

地からは、代理人が自己に帰属する権限外で行為してい

るか又はこの権隈を本人との関係で濫用的に行使してい

るかについては本質的な差違とはならない。かつ又、B

GB一七七条以下の類推適用では、代理人の行為の危険

は本人ではなく相手方に生じてしまい、信頼原則に反す

る。より基本的には、代理権濫用は、代理権が存在し、

それが単に濫用的に行使された場合のみに問題となるに

   ^12〕

すぎない。

 後説、つまり、代理制度以外の法制度を援用する見解

にも、契約締結上の過失理論と信義則(BGB二四二)

による説とが存する。契約締結上の過失理論では、相手

方は代理人と契約交渉に入ることにより、契約以前の債

務関係(くoミ胃ヰ晶5ぼωωo巨巨く胃冨津邑蜆)が生じ、

そこから相手方には解明義務(旨{昌昌きo冨且ざ巨)が

課され、代理人が代理権を意図的に濫用しているか否か

を吟味することが要請されるのであり、これをなさなけ

れぱ損害賠償として代理人との取引からなんらの権利を

              ^口〕

もひきだすことはできない、とする。しかし、この種の

義務を相手方に課するのは妥当でなく、代理人行為の有

効性を損害とみなし、かつ、取肌の無効を損害調整とみ

                ^蠣)

なさな、けれぱならないのは擬制にすぎる。したがって、

今日では、後説、しかも信義則による見解が判例学説上

広く支持されている。これによると、支配権の定型性・

253

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一橋論叢 第95巻 第2号(132)

不可制限性によって、文配権が支配権授与の基本関係か

ら独立し、かつ、内部関係における支配権の制眼に関し

て特別な吟味義務が相手方(第三者)に課されない。こ

れにより、取引の安全と容易化が強行的に保障されてい

る。そこでは、営業主が特定の者に支配権を授与するこ

とにより生ずる危険を原則として負担すべきものとされ

るのである。しかし、支配人が営業主にとり不利益に意

図的に行為したときは、この原則を貫くことはできない。

この場合にも取引は有効であり、営業主のために締結さ

れた取引が有益であるか否かにつき監視すべきことは相

手方の任務ではない。したがって、支配人が権限を濫用

し、相手方がこれにつき悪意であるときには、相手方が

代理権の不可制眼性を援用することは信義則(BGB二

四二)に反するのであり、営業主は悪意の抗弁(許され

                 (H〕

ぬ権利行使の抗弁)を主張しうるのである。そこでは、

支配権の不可倒限性の原則は、誠実な取引を保謹するこ

とにあり、営業主に対して不誠実な加害行為に手を貸す

                 (16)

べきものではないという考慮が働いている。なお、判例

によると、営業主が支配人に対して当然なすべきコント

ロールを怠ったために支配権濫用となったことを相手方

が証明したときは、営業主の保護はBGB二四二条に基

づき完全に又は部分的に失われる、とされる。つまり、

営業主が支配人に対して自己に要講されるコントロール

を怠ることによって法取引上自己の利益保持を顧慮しな

かったときには、支配権濫用による不利益を完全に相手

方の負担とさせるのは信義則に基づき許されない。この

場合には、信義則を特に発現しているBGB二五四条

(被害者の有責性)の法思想により、取引の不利益な結

果は各々の有責の程度に応じて分配されなければならな

いのであり、したがって、営業主に対する相手方の取引

に基づく請求権は場合によっては特定部分につき肯定さ

       葺〕                壼)

れなけれぱならない。これに賛成する見解も存するが、

一般にはBGB二五四条の類推適用は否定される。BG

B二五四条の分配思想は損害賠償講求権を取り扱うもの

であり、支配権濫用は履行請求権の問題で、支配人の行

為が有効である場合にのみ成立し、無効ならぱ成立しな

いものである。かつ、これは不可分で、BGB二四二条

                    ^”)

により全体として行使できないものだからである。

 次に、相手方悪意の意味内容の問題につき検討する。

これに関しては、相手方が通謀したか又は支配権濫用を

25些

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(133) 支配人の権限濫用について

                    ^20〕

積極的に認識している場合については問題ないが、これ

らの場合に隈定すべきか、さらに、重過失又は単紺な過

失でも足りるかについては争いがある。まず判例は、民

法上の代理人の権眼濫用と同様に単純な過失、つまり、

               ^21)

単なる認識必然性で足りる、とすち。学説上、営業主に

対する支配人の明らかな意図的背信行為であることから

いえぱ相手方は単純な過失でもって責を負わされるとす

         ^刎〕

るのが正当とする見解もあるが、このような見解は妥当

とはいえない。というのは、この見解は、相手方に内部

.関係又は営業主の真の利益を照会する義務を要求するこ

とになり、HGB五〇条-項の強行規定はこの種の義務

を課さないで商取引の安全と容易化を図ることにあるか

                   ^肇

ら、この規定目的が挫折してしまうからである。支配的

見解は、重過失で足るとする。つまり、支配権の不可制

隈性は誠実な法取引の保謹にあり、したがって、単に支

配人が内部関係での制隈に反しているときは営業主の利

益は相手方の利益に劣後するが、意図的に営業主を害す

るものであるときは相手方には営業主の利益をより以上

に顧慮することが要求され、相手方は誠実な法取引の要

講に自己の行態を一致させることが要講されるのであり、

知っているときは相手方の態様は信義則に基づき決して

容認されえない。このごとは、重過失で知らないときに

も妥当する。というのは、客観的判断者にとって、支配

人がこのような意図を有する疑いが即座に生ずるときに、

相手方が取引上必要な注意を異常に欠くならぱ、対立す

る利害関係’(営業主の保謹と相手方の保護)の正当な比

較考量により信義則上相手方の権利主張を否定すべきこ

        ^刎〕

とになるからである。つまり、誠実で合理的な取引相手

方であれぱ無視しえない支配権濫用が存するときには、

これを無視することは許さ松ず、相手方は支配権の不可

                   ^筆

制限性を盲目的に信頼することは許されない。しかし、

HGB五〇条-項の意味目的を考慮すると重過失で足る

とする■のは妥当でない。同項の意味目的は、明確な関係

の創造、つまり、個々の事案で、相手方に支配権の内容

を念入りに再吟味することを免除することにより、法取

                  ^26〕

引を迅速かつ安全に遂行せしめることにある。このこと

から、制定法上の利益較量は、この種の義務を免除され

た第三者の利益に、かつ、原則として自己が付与した支

.配権についての責任が自己の支配領域に入る営業主の負

。担へ、となされていることになる。したがって、いかな

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一橋論叢 第95巻 第2号 (134)

る法的根拠の下でも、常に第三者には探究義務、再照会

義務又は一般に取引上遵守すべき通常の注意義務は課し

えないことになる。このような義務を課すならば、支配

権に関丈る立法目的に反するし、相手方(第三者)は、

自己又は他人にとって利益となる金ての取引に際して、

支配人が営業主の不利益に行為したか又は取引が営業主

の利益に反するかを吟味することを要することになって

しまう。相手方は営業主の利益を保護することを要しな

いと共に、この点で取引を吟味することを要しない。営

業主の利益は営業主自身が配慮し、誠実な支配人を任命

すべきである。支配人がその利益を配慮しなければ、そ

れは営業主の危険であり、その結果については営業主白

身が負担すべきである。このような制定法上の取引安全

によって確定された利益較量に基づけば、支配人の権限

濫用につき重過失で知らずに取引をした相手方も支配権

                      (η)

の不可制限性援用を否定されるぺきでないことになる。

殊に、法文上、第三者につき本来的になんら限定してい

ないし、他の条文における信頼要件のように重過失をう

たっていない。制定法の規定に信頼して不注意で行為し

た者を、不誠実として取り扱うべきでないし、制定法の

         ^28)

保謹を否定すべきでない。したがって、重過失で足ると

すぺきでなく、認識していたときに否定すれぱ足りると

     ^”〕

解すべきである。ただ、このように解するのが妥当とし

ても、認識と同視しうる場合が考えられる。この点で、

重過失というような相手方の注意義務によらず、支配権

濫用が相手方にとって明白(向く巳Φ冒)であれぱ、営業

主は対抗しうるとする見解が有カである。これによると、

支配権濫用が明白であるとされるのは、合理的な者が濫

用を認識しえたであろうと思われるか、又は支配人の行

為が非常に疑わしいものであり合理的な者ならぱ取引を

なさなかった場合である。これは、支配人の表示を基礎

に置いて、これに関して濫用が相手方にとって明白に解

るのであれば足り、外部的な事実によるのであって、調

           ^30〕

査義務を要求しないのである。判例も、これに近い表現

をしばしぱ付加している。例えぱ、支配人が自己の支配

権を明白に疑わしい態様で利用し、その結果、相手方に

支配人の背信行為が存するかにつき当然の疑問が必然的

に生ずるように支配権濫用が認識できるものであること

を要するとか、支配人が取引締結に際して営業主の不利

益へと行為したことが正に即座に想起せしめられる状態

256

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(135) 支配人の権限濫用について

           (31)

にあることを要する、とする。実際上、この種の場合は

相手方が支配人の濫用と加害意図を知っていた場合と本

質的に異ならないし、相手方と営業主との利益較量と誠

実な法取引という尺度によれぱ、保護必要性は、これ以

外の場合には原則として危険を負担しなけれぱならない

                  ^祝〕

営業主の方へと明らかに移転するからである。もっとも、

従来の重過失説との差異は明確でないとの指摘は存する。

というのは、濫用が明白である(oま寿冒2o目)であるな

らぱ、つまり、相手方の立場にある全ての合理的な者に

とって認識できるものであるならぱ重過失の存在も肯定

しうるし、重過失も客観的類型的に決定され個人的非難

            ^33〕

可能性は重要でないからである。この点から、相手方が

積極的に濫用を知っていたか又は重過失で知らない場合

に隈定しながらも、重過失は明白な濫用の場合に存する

       ^㏄〕

とする見解も存する。このように両者の区別は非常に困

難であるが、異なると解すべきであろう。濫用が明白で

あるとする説は確かに合理的な者という表現をとってい

るが、むしろ、これは、全ての決め手となる事実が、通

常人にとってその存在に気づくことが全く疑問がない程

度に即座に知覚可能であることを要するとするものであ

り、全ての照会や調査をなす義務を明らかに排除するも

                  ^狛〕

のであるから、重過失とは異なると解される。ところで、

重過失では不十分で認識あることを要するとする既述の

立場からは、この場合を認識あることに合めてよいかが

間題となるが、これは背定してよい。つまり、支配権の

不可制隈性は、しぱしぱ述ぺているように、第三者に調

査義務を課さずに明確な関係を創造し迅遠な法取引を可

能にするためにのみ、第三者に信頼保謹を認容している

のであり、第三者には誠実な取引行為をなすことが要請

される。支配人が誠実に行為していないことが誰から見

ても即座に明白であるのに、認識しなかったか又は認識

しようともしなかった者は保護に値しないのであり、む

しろ、営業主が保謹される必要があるといえる。全ての

者にとって認識可能であることから、梱手方も即座に認

識したと仮定しうるし、かつ、そのように要講されるの

 ^餉〕

である。

 なお、営業主側で、支配人の権隈濫用と相手方がこれ

を知っていたこと又は明白であったことの主張・立証責

任を負う。相手方は、なんら調査義務を負わないし、支

配権の不可制隈性に信頼できるのが原則だからである。

257

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一橋論叢 第95巻 第2号 (136)

 西独商法と異なり、わが商法上、支配権の制限は善意

の第三者に対抗しえずとされ(商三八皿)、善意者につ

いてのみ不可制限性を有するにすぎないが、支配権濫用

については状況はさほど変わりなく、営業主を保護すべ

きことについては争いがない。間題は、その理論的根拠

             ^〃〕

及ぴ悪意の意味内容である。判例は、今日では、「代理

人が自己又は第三者の利益をはかるため権隈内の行為を

したときは相手方が代理人の右意図を知り又は知りうべ

かりし場合に隈り民九三条但書を類推して本人はその責

   ^蝸)

に任じない」とし、第三取得者との関係では、手形振出

につき悪意の受取人から取得した第三取得者については

「本人は手形法一七条但書の規定により第三取得者が受

取人の知情につき悪意であることを立証した場合に隈り

                ^39〕

第三取得者に対し手形上の責任を免れる」し、それ以外

については「第三敢得者側でこの事実を知らなかったこ

とを主張立証した場合には民九四条n項の規定を類推適

用し、本人は民九三条但書の類推による無効を対抗しえ

^仰〕

ない」としており、判例としてはほぼ固まっているとい

えよう。学説は多岐である。代理権制度の枠内で考察す

る見解は、この種の行為は代理権の範囲に属せず、相手

方悪意のときは代理権α授権行為からの独自性は限定を

うけ、無権代理となり、相手方は表見代理の規定により

              ^伽〕

保護される余地があるにすぎない、とする。これについ

ては、本来的には外形理論による支配権の範囲とされる.

支配人の行為に関して媚手方の主観的事情いかんによる

ことになり妥当でないと批判される。学説の大勢は判例

の立場を支持する民九三条但書類推適用説と信義則違反

、ないし権利濫用説とに分かれる。前説は、代理行為が成

立していることを前提として、このような背任的意図に

つき相手方が悪意のときは相手方の立場を考慮する必要

がなく、本人の利益を図るのが適当であり、そこで、代

理人の外部的表示が代理の形をとりながら内部的意図は

代理形式に仮装して代理人自身又は第三者の利益を図ろ・

うとすることに着目して、心裡留保における表示と真意

の不一致との類似関係があるとして、民九三条但書の趣

旨を類推して代理人の行為につき本人に責任は生じない

        石〕

とするものといえる。しかし、この説には、民九三条但

書の真意とは法偉的効果意恩が内心に実在しないことを

258

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(13ア) 支配人の権限濫用について

いうから、背任の意図から距離がありすぎるし、代理行

為成立に必要な代理意恩は直接本人に行為の法偉効果を

生じさせる意恩であれぱ足り、本人の利益のためにする

意思であることを要しないから、類推の根拠を欠き理論

                ^珊〕

的難点があることは既に指摘されている。したがって、

判例の見解は相手方が悪意のときは無効であるという一

般法理をとりあげ、これを単に民九三条但書に擬律した

にとどまろうとされるし、民九三条を持ち出すのはただ

何等かの規定をあてはめるだけのことで特に答めること

        ^榊〕

もあるまい、とされる。このような難点は後説には存し

ない。これによると、支配権の画一性は第三者が取引に

当り、具体的に支配人の行為が支配権の範囲に属するか

否かを調査する必要をなくすることに基づくから、支配

人が何人の利益をはかる目的をもって取引したかを問わ

ず、その行為は権隈内の行為であり、当然に営業主は賛任

を負う。たとえ、相手方が支配人の権隈濫用行為を知っ

ていても、支配人の権限内の行為であることに変わりは

ない。しかし、このような場合に、悪意の相手方が取得

した権利を営業主に対し主張することは、法の保謹の目

的を逸脱した権利濫用(民-皿)ないし信義則違反(民

1n)として許されないのであり、営業主は相手方の悪

                 ^蝸〕

意を立証して一般悪意の抗弁を対抗しうるとされる。こ

の見解はかなり技巧的な説明方法であるとの指摘がある

が、論理整合性を有し、民九三条但書類推適用よりも第

三取得者関係を適切に処理しうることなどにより多くの

支持を得ているが、一般条項の安易な利用とか、さらに

                       ^雀

は鶏頭を断つに牛刀をもってする感がある旨指摘される。

そこで、法は、支配権について制限を加えうることを前

  ^仰〕

提として「支配権の制隈は善意の第三者に対抗しえず」

(商三八皿)としており、支配権の濫用につき支配人の

権隈の法定制隈としてこの制度を適用しえないか、の検

     ^侶〕

討が要請される。これに応ずるのが、内部的制限説であ

る。つまり、権利濫用説が相手方の取得した権利の濫用

を論ずるのに対し、これは支配人の代理権濫用そのもの

に主眼をおいて、権隈濫用か否かは外都からみて明確で

ない場合が多いし、又、形式的・外面的には権限濫用行

為は支配権の範囲内の行為と認められるので、行為は営

業主の行為としては有効であるが、ただ悪意の第三者に

対しては営業主がこれを立証して支配権の内都的制隈の

             石〕

問題として権限濫用を対抗できる。そこでは、商三八条

259

Page 10: HERMES-IR | HOME - 支配人の権限濫用について URL Right...支配人の権限濫用について 石 原 全 (129) 支配人の権限濫用について ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。

一橋論叢 第95巻 第2号(138)

皿項の内都的制限違反行為も一種の代理権濫用行為によ

                     ^50〕

る背信行為とみて、同項を類推適用することになる。こ

の見解は、権利濫用説よりも根拠が明確といえるし、同

じ類推適用といっても民九三条但書によるよりも支配権

の制度に立脚するものであり、妥当と恩われる。ただ、

客観的には支配権の範囲内のことであり、支配権に加え

た制隈とはいえないのではないか、という凝問が提起さ

れている。しかし、いわゆる権隈濫用とは営業主と支配

           ■          ^肌)

人との間の内部関係たる義務違反の問題であることから

いえぱ、商三八条皿項の内部的制隈との類似性は肯定で

きるといえよう。

 次に、悪意の意味内容についてぱどうか。相手方が支

配人と通謀しているか又は支配人の権隈濫用を認識して

いる場合には、保護に値するのは相手方でなく営業主で

あるから、悪意とされることに問題はない。それ以外の

場合、つまり、知りうべきであった場含(過失で知らな

かった場合)でも足りるのか、それとも重過失で知らな

かった場合に限定するか、については見解が分れる。判

                ^雪

例は、知りうべきであった場合で足りるとし、挙説上も

過失ある相手方を保護する必要ないとしてこれに賛成す

  ^的-

る見解がある。しかし、これは商取引上妥当でない。こ

れを肯定すると、相手方は支配人の内心の意図を探究す

るために常に積極的な努カをなすことを要し取引の円滑

が害されると共に、それは支配権の定型性・不可制限性

とは調和しないし、元々、支配人の権隈濫用危険はこれ

を任命した営業主側の危険領域に属するものであり、過

                      ^豊

失なきよう相手方に求めるのは妥当でないからである。

                  ^脆)

挙説の多数は、重過失で不知のとき背定する。しかし、

重過失という程度に差はあっても、相手方に積極的な注

意義務を要求することになり取引の安全を害することに

変わりはないし、支配権の定型性・不可制限性からみて

        ^舶〕

も、妥当とはいえない。以上の点から、悪意は通謀又は

               ^研)

認識したときにのみ肯定すべきである。ただ、これでは、

相手方の保謹が厚すぎ、営業主に酷であるとも考えられ

るが、支配権の定型性・不可制限性による相手方の信頼

保謹と危険負担領域がいずれに存するかを考慮すると、

悪意を上記のように解せざるをえない。もっとも、この

悪意に準ずべき場合が考えられる。つまり、過失の程度

を問題にするのではなく、相手方は進んで支配人が背任

の意図をもって支配権を行使しているか否かについてま

260

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(139) 支配人の権限濫用について

で調査する必要はないが、特に何をしなくても支配人の

背任の真意が通常人なら当然わかるような場合には、相

                        ^駆〕

手方は保謹に値しないといえ、悪意に準ずるべきである。

これは、既述の西独法における明白性の理論と同一で、

そこで述べたことがわが法でも妥当すると考えられる。

 本稿では、代理権が定型性・不可制隈性を有する旨法

定されている支配人の権限濫用につき、規定茎言を異に

する西独法とわが商法とをとりあげて、その概観をなし

た。勿論、なお検討すぺき点は多いが、問題状況はほぼ

似ており、法律上の規定茎言と悪意者を保護すべきでな

いという命題との対立、さらに、営業主と相手方との利

害調整に問題は尽きるといえよう。理論的根拠としては、

西独法上、代理制度そのものから解決を図る説と、それ

以外の法制度によるものとしての信義則の活用による説

が対立しており、判例・学説は信義則に依拠するのに対

し、わが国では民九三但書(心裡留保)類推適用説と権

利濫用ないし信義則違反説とが対立し、判例は前説、学

説は後説に主として依拠しており、結果はほぼ同じとし

ても顕著な差異を示している。本稿では、第三の説とし

て、内部的制限は善意の第三者に対抗しえないとする商

三八条皿項の類推適用で処理すぺきとする説を肯定した。

悪意の意味内容については、彼我に顕著な差異はないよ

うである。ただ、西独法でも近時有カとなった濫用が誰

から見ても明白である場合は悪意に準ずるとする見解が、

わが国でも既に存在することを指摘すると共に、これを

とりうる旨述べた。もとより、比較法としては、わが商

法の立法上参照され、同じく「支配権のその他の制限は

善意の第三者に対してなんら法的効カを有しない」(償

務法四六〇条皿項)とするス■イス法、さらには、支配権

制度を有しない英米法における問題状況も関心を惹くが、

これらについては他日の検討に委ねる。

(1) 通説は、代理と代表とで区別する必要はないとして、

 支配人と会社代表者との権隈濫周を同一理諭で処理する。

 本稿も、一応これに従い、引用文献における手間を省くた

 め、会社代表に関する表現等を支配人に置き換えているこ

 とを断っておく。ただ代理権ないし代表権の範囲などにつ

 き、規定文言は同一であるが、会社代表者が必要不可欠な

・機関であるのに対し、支配人は任意なものであるから、支

 配人は一般代理人と会社代表者との中間に位置づけられる

26j

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一橋論叢 第95巻 第2号 (140)

  といえ、この点で若干差異が生ずると思われるが、この点

  の検討は将来に留保する。

(2)ωo巨oo目色牙・o司o・-ω9・9員匡彗箒厨窃♀ま冒F塁ード

 ㎞>畠。旨旨ggsご・醐伽o>目昌。N(以下、}Ωφと略

  記)

(3) この種の規定は、文言は異なる点も存するが、会社代

 表者につき同様に存する(閉冨α自由Ω貝㎜o.N>ζ9吻

 讐Ω昌σ串Ω)。なお、支配権の制限に関して、HGB五〇

  nで例示規定を設けている。詳細は、凹g9ωo巨晶o冒宵o司g-

 ωoすHα旦①■ 葭〔}H… }o >自自デ ㎞{.

(4)峯8ω尉±oぎ顯昌.b胃雪oぎ・卑-阜>邑.一匡o崖o豪売

 Hoooo’ ω-NH{… 4く饒Hら-自吹o『 }目 〔…『o饒片o昌胃F 匡〔}}1}oーポ ω

 >自p団害昌目HぎN一㎝8>■昌1-(以下、Ω昌団片o昌昌1=Ωd

  と略記)

(5) 峯o窃斥o-■o{昌簑自P固-芭一〇一ω一N]

(6)団薯目99白邑9土o貝葭Ω宙.ざぎP呂旨9血目

 一〇〇〇“ ……㎞O >目H目. い>} ωOす目己ρ1  目雷旨{O-㎜コWOげけ. N >目巨.’

 H(◎-■ ・田O『-コ .}O目コ・]≦口目OげO目 一〇〇〇N-ω. ω企臥} ωΩ■’く旨

 -oひひ-杜oH (N)’ く、旨 Hoooo- oo阜- (~)1

(7)ooo巨晶o冒①轟胃-ooo-・9員匡Ω籟.吻8>目旨-一戸。。.

(8) 支配権濫用につき、支配人が意図的に営業主に不利益

  に行為したことを要する・かについては争いがある。判例は

  この点を認める。9o巨9田O{N㎞9;N(企)■有カ説は、

  このような主観的要件は不要で、相手方の悪意のみが決め

  手であるとし、内部的制隈違反につき悪意であれぱ足りる、

  とする。ωg昌己ゴ芭.芭.o.ω1ωお一峯o2昌9>=o官o冒9自害

  一「o= oo蜆 ■(…bl国而-αo-『①『晒 Hoo0N.勾N oαoo… 一リす-o-o -自]≦口.

  目O巨宍O目昌1H…〔叩5.dO. -J >昌OqO自-O}目O『一りO=. N >自饒’ 雪饒-

  コo--昌;ooナー塞>自冒。-8・(以下、峯o目g穴o冒昌・ωΩ田

  と略記)。しかし、HGB五〇1の趣旨からみて、支配人側

  に不誠実な行為が存することを要すると解すべきである。

  向ポoブ冒一U宰 旨罵σ『芭自oげ {雪 く胃言o口冒oq蜆昌里oブF ρ自oチ

  一』自片Φ『いω①『目o片巴o旨立σq目目αqq0H}芭目oo-蜆oq①蜆①二moブ與津Φ自.}ω申目『

  ミーωoげ=-=oq.}oH=目・zo≦ くo『斥 H0Nω’ ωω. Hαl No… 峯o-

 鶉岸o-雪o『昌嘗一P芭一凹一〇一ω.N卓}』oフ戸 Uo『 旨轟σ『芭自o甘

 o『oq嘗目8ゴ呉;o巨胃く曾冨o9目o司m昌閏oす庁一}ω 旨『 O.竃冒巨1

 ω斤F一一一〇q凹『斤・田O『=目・肉α-目・峯顯-■N -OOOガ ω. 山血OO… =饒σ目蜆■

 -)-0 H-『o】{自『芭 凹』蜆 {oH日口里--眈-o『〔o『 <0H叶『臼一』o日「眈眈o--自一N. H¶ω {縢『

 向-穴冒目岬ヨロO=O『■H(回H-囮『1}O HON阜. ω. HN阜.

(9) 冨o昌昌μ酉.票Ol内■oa…』oヴP句oo旨『O・峯饒巨一

 ω.u㎞N…弟oN Hωp ωωo (αo)■

(10)  勺-目昌9 >旨岬o冒o-目血『一『o自 ρom b旦『oqo『=o--o目 内oo=芹餉‘

 ■ρ.N1 -)回餉 カooブ片閉岬o蜆o-凹{け ω>自olHw0H旨目.H{o}ρo-σ①『oq・

 2o毛 ko『汗 -0N旧- ω- N0oo} 向目昌oooΦ『目蜆-z-勺りo『ρoく1 >=oqo-

 目-o-自0H一『o昌 ρo餉 ω目『o目⑪H-o}o目 射oo庁F蜆. N 靹顯-σσ. -㎞>筥饒-

 ↓饒巨自oqo目宅8一ω一H曽3 くogo巨μ 串-芭l〇一射N一〇雪…

 一「oH自oo-一-〕-血ω一〇自くo『一『oけ自自oq一-目”向H巨目一〇『-o=一].閏.(}『蜆岬1)1

 Ω筥冒2與如O自ρ鶉く實R芭O月甲自目ρOOO巨]巨『OOケ冨(>け巨O自岬自昌-

262

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(141) 支配人の権限濫用について

  Nミ畠冨o】]け-)一HoN“u〇一NωN一ωoげ畠巨戸票寧〇一ω一ω{ooも、

  法効果の面から、BGB一七七類推適用によるのが決定的

  に優れている、とする。

(n) ωo-昌巳“里・蓼一〇一ω一ω阜o〇一Ho昌勺0F閏.PO.oo-N山N.

(12)寡9貝易胃妻.蟹巨一冨一ωIH二一冒巨。二自

  ω一芭一]o-目帥血『閉 H(o昌自-. 目自H目 ■〔…H}- do. --- >目吹‘ 一『o自一 -N

  >自p籟害旨コδoop閉Hs>■昌.-8(以下、卑昌繧自σq萬-

  冒-g①■民(肖と略記)一毫-&o目彗タo鶉邑蜆g雪豪竃o享・

  団pH’峯饒昌5自H湯pω.so。.

(13)5罫彗一>昌.豊射Ω戸くLN二L婁(11』婁

  -oω企一ひooω)1』4く -oω阜. 靹ooω (阜).

(14)婁茅■易葦奉撃巨一碁1ω.轟{こ。貝富葦

  O・婁巨・ω」3ごミ葦2■。・808窯…員国Ω卑吻8

  >自昌ーゲ

(15) ミ庁α①昌顯■P顯一凹一〇一ω一So{∴『尿o}雪一句ω簑Hミ一

 ㎝o庁自-目軸.ωω. -㎞]印.NH串} 曽ooo斥・ ]〕閏蜆 射ooチ片oo『o申oコo『■

 }曽自旦巾7岬O眈O--閉O-一嘗{ウω>自O’団^W邑-自-Oひ♪ω一N].㎞…峯血『一〇■9

 宍g目胃内o目昌.>ζΩ1民邑」一宍α一目・黒H一5・}昌目一素旨1

 9昌H署01㎜OON>冒目.ご(以下、宍0!-亮HH(O昌昌‘>ζΩ

  と略記)一ωo葭N舳〇一-昌(壮{)一ωΩ匡ミ峯這g工o-(N)一

婁旨§NL峯(H)一ミ旨嚢〇一温ω(全)葛Ω曽N弓曇♪

 旨o(N).

(16) 凹匙-9目毒o-’,P串〇一ω一冒ω

(〃) 田Ω工N㎞〇一=N(㎞)一〇■O=彗自…ミ髪6,Pこo(杜o)一

(18) 句げo-睾一句oo旨『婁.ωo巨曇自ポ ω.Hミ一目雪]旨σ凹o7

  U一]q血自.匡O勺戸=Ω宙・吻㎞o>■冒■山O…ωo巨-ooqo-σΦ『岬o『-ωo--

  肇宰・串o}閉おぎ目・5■藺事3易琴戸曇目。・-

  目-自冒o『- ω’ HN0.

(19) ωo}昌邑サ臼一芭一〇一ω一ω{唱山Ho昌勺o卜芦算〇一ω一~ωN一

  ω一葭自q-目oqo『1-〕-o匡o■ ■Ω}‘吻HαN >目目一’-o占}ミーooo目-葭目目一

  寧固・O・ω・3二-o崖昌・句ω旨『O.峯饒巨.ω.ωS{-}8斥o--

  昌彗p彗~宰8巨5昌旨㎜<oユ『g彗昌σ乱昌穿冨自oブ

 OO『くO箒『9自目O口蜆昌葭oげF』N -ON〇一①~ (少 阜)…2-o片9 ぎ

 宙凹自o印血o巨 (巨『蜆岬.)- 串oΨ籟1ω>自o.- 乞o自≦-oρ 自1-)臼『H目眈叶餌o叶

  岩o.p吻8>目目.{(以下、民彗ら鶉o㌣暑艮具串o}と略

 記)    .

(20) ωoヴ昌巳戸串寧〇一ω一ω㎞o}Oo雪o■N自目呂邑σ『里自o}

。、溶。、邑肇峯鶉<鼻曇j冒。目蜆…員易琴向;.寮-

 -目-自0H0『. ]「oσ-目oqo目 -oNoo■ ω. ㎞ωひ■

(21) 宛ON一{仰ω-H (㎞)…困O串N ㎞o- 一HN (卓)-田Ω■ 』N

岩呈志o(No)一宙o庄ミ峯6ひo-α嵩(ω)一婁昌嚢pおH

 (~)。もっとも、これらの判例は、必ずしポ単純な過失と

  いう表現を使用しているとは限らず、より軽度の有責性と

 か、濫用を有貴な態様で(叩o巨民ぎ津萬ミo冨)知りえな

 かったとか、多様である。したがって、Ω耐2員『ωh旨貝

 く・O器昌昌雪員ω・㎞畠は、判例は単純な過失で濫用抗弁

 を貫徹する意図はなく、むしろ、重過失を要件とする旨、

指摘している。

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(142)

第2号一橘論叢 第95巻

(吻)薫蕃多嚢一毒ぎ冒昌-寿δ・鴛N>彗・,一㎞・

(23)薫象Φ-5;彗P芭lPO.ω・き豪ま員嘗・寧O・

寄§一寡葦■易膏婁.ω邑=夏ω」3霊…σ葭g.

○邑昌土o享}Ω軍苫oぎ冒・ω貝

(24)目邑員霊箒峯・ぎ巨一息一ωωL竃し一・

(刎)掌藍と旨g委冒昌』Ω団・伽曇>冒・§一向.暮.

§姜当電邑撃酉-凹.O.ω.§竃≡員}§〆葭・芭・ρ

ωω.姜自-昌α一5呂二目ω§翌・ω雲貴団富』O」・

≧。目.室し;鼻ω葦一。・葦・畢ぎ一嚢=,董目二婁・

㍗ミぎ冒員9巨曇旨。曇・-ω葦婁・}冨・望O>彗・

一二-㎝8ぎ昌.30S霊冒昌婁竃§P.§(さ)一

 吋Ω曽峯峯岩N少ご崖(。。o)

(26)ω藍9零}幸旨濠9§(~)一ξ昌H萎をo(N)・

  ミ峯5員ひ蟹(o)一N弓H湯杜LHo(HH)・

(η)Ω茎8易葦向;.9。冒…員ωω・㎞葦目・奏・

  ω雲。嘗員峯旨書。・員o8戻昌目・籟冨・鴛一>…・一・

(28)O董員轟箒■.く・O霊昌昌竃■ω・篭・

(29) 旨o9片o-饒oh昌彗P印-票O・ω・N杜…』o}P}ω冒『O・

  冒葦L.§.撃ぎ・g巨一肉Ωω竃毒婁ミ歩§(N)・

(30) 『巨昌9顯一四一.〇一ω一N00oご■彗o昌N・>=oqo昌oぎ。『Ho、-

  ま朋ま募g竃雲曇ま。}昌雰o募.㎞・ぎp一暮目。蔚目

  §9ω.塞一薫き冨、.葭.o.寄§一9睾・ら二饒・

  向ーく‘o竃冒冒婁■ω.睾旨一団彗旦萎宇峯一昆具雷Ω}竃o

  >自昌一ω一ωoげ昌巨戸寧陣lO・ω・㎞o・

   もっとも、これが妥当するのは、原則として代理人が本

 人の不剰益に行為した場合のみであり、単に本人の指図に

 違反したにすぎないときは認められない。これも代理権濫

 用であるが、この濫用が相手方にとって明白であるとされ

 るのは、指図違反で行為していることを相手方が知ってい

 た場合である、とされる。ヨ目昌p曽.胆■ρω。Nε.

(31)穿星零雪員;(杜)一宙冨ミ三奏・董(N∀

婁呂嚢。・㌧♂(N)一峯冒§①一婁(o)1峯窒嚢98}(阜)一

〇}H湯H二さ(さ)一N弓;。。♪旨o(ε・

(32)}Ω回峯峯§9α轟(o)・

(33)量血す曇昌豪冒目』冨・ω曇>冒・曇一室、。冨、一

易琴ミー誓書昼一ω」ω一雲σ冨’易琴向・き息、

 冒昌員ω.崖-1

(34)霊冒σき-旨奮-ま暑匡冨・吻8>…・竃・

(∬) 』9P}ω簑『O、冨書-、ω一い8一かつ又、重過失のよ

  うな立証困難を生じない。-o甘P宙.串〇一09-宵一『ω}冒

  戸く一〇罵目目o話『一〇〇一塞十

(36)Ω董員男豪向・く・Ω竃昌…員ω・蓬・

(37) 判例の分析については、遠田「代理人の通謀虚偽行為

  について(一)(二完)」法学雑誌二六巻三・四号、三一巻

  一号が詳細である。

(38) 最判昭三八・九・五民集一七-八-九〇九、同昭四

  二・四・二民集二一-三-六九七、同昭四二.七.六金法

  四八八-三二、同昭五一・一〇・一金法八〇九-七八、同

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(143) 支配人の権隈濫用について

 昭五一・一一・二六判時八三九-一一一。

(39) 最判昭四四・四・三民集二三-四-七三七、同昭五

 四・五・一判時九=二-一一二。

(40) 最判昭四四・一一・一四民集二三-一一-二〇二三。

(41) 川島・氏法総則(法偉学全集一七、昭四〇)三八○頁、

 浜上・注釈民法(4)(昭四二)二〇頁。

(42) 末弘・判民大正一〇年度二二員、我葵・新訂民法総則

 (昭四〇)三四五頁、星野・法協八二巻四号九九頁、淡路・

 法協八五巻四号ニハ三員、神崎・商法総則・商行為法通論

 (昭五七) 一一八頁。そして、第三取得者については民九

 四皿の趣旨を類推適用するものと、される。我妻・前掲曹

 二八八頁。

(幻) 例えぱ、喜多・商法総則(店舗営業法 上巻)(昭六〇)

 二六四頁。

(44) これらについては、於保、.民商法五〇巻四号六〇頁、

 星野・法協八二巻四号一〇〇頁。

(45) 犬隅・私と商事判例(昭五一)三八三頁、竹田「会社

 代表者の職権濫用と悪意の第三者」民商法七巻二号一六

 四員。高鳥・会社法の藷問題(昭四八)三〇六頁、田中

 (誠)・商法総則詳諭(昭四七)三八○頁、四宮・民法総則

 (新版)(昭五一) 一一三、二四五頁。

(46) 於保・民商法五〇巻四号六一頁以下、星野・法協八二

 巻四号一〇〇頁。

(〃) 因みに、沿革的には、「主人ハー:代理権ニツキ制限

 ヲ加フルコトヲ得Lとされていたが、これは第三者に対し

 有効か否か明らかでないという疑問、さらには削除すぺき

 とする見解が示されたので、修正されて現在の文言となっ

 た。その際、悪意の第三者を保護する必要がないので善意

 の第三者としたのであり、独商法の主義を採らず、その他

 の諸国がおおむね善意の第三者を保護する制限的規定を設

 けているので、これを採用したのでポる。法典調査会・商

 法委員会議事要録一巻一〇三、二四丁。

(48) 於保・民商五〇巻四号六二、六三貢参照。

(49) 服部「代表取締役」法セ四五号三四頁、大阪高判昭三

 六・四・一二高民一四-四-二五七、同昭三五・五・一四

 判時二二九-三九、福岡地判昭四五・二一・八判タニ六〇

 -三二一。なお、矢沢「代表取締役の代表権の隈界」法セ

 三〇号三九頁も参照。

(50) 喜多・前掲書二六五員、同・外観優越の法理(昭五一)

 六九二員、同・金商七五号四頁。

(“) 実方(正)・民商九巻一号八三頁参照。なお、鈴木・

 商法研究皿(昭四九)六三頁も参照。

・(醐) 例えぱ、最判昭四四・一一・一四民集二五-一一-二

 〇二三。

(53) 石田(喜)「心裡留保」(谷口・加藤編・新民法滅習-

 総則(昭四二)所収) 二三二員。

(“) 鈴木・前掲薔六一頁以下、六三頁。困中(誠)・前掲

 書三八○員、犬隅・前掲書三八四貫以下、喜多・前掲薔

265

Page 16: HERMES-IR | HOME - 支配人の権限濫用について URL Right...支配人の権限濫用について 石 原 全 (129) 支配人の権限濫用について ていることは周知の通りである。この種の間題は、同様その理論的根拠およぴ悪意の内容に関しては見解が分れついては、否定に解すべきことに見解は一致しているが、ときに、営業主が責任を負うか、が問趨となる。

一橋論護 第95巻 第2号(144)

 (商法総則)二六五、二五九頁、同・金商七五号四頁、四

 宮・前掲曹二四七頁。

(肪) 大隅・前掲菩三八五頁、四宮・前掲書二四七頁など。

 東京地判昭五五・一・二九判タ四一〇-二二六。

(56) 鈴木・前掲醤六二頁、喜多・前掲書(商法総則)二五

 九頁以下。

(ワ) 田中(誠)・前掲書三八O頁、喜多・前掲曹(商法総

 則)二六五、二五九頁。因みに、旧商法(明二三年法)四

 五皿に取り入れられた.回エスレル商法草案四六nでは、

 「代理権二制限ヲ立ツルモ他人二対シテ法律上ノ効ナキモ

 ノトス但他人此制限アルコトヲ知リタルトキハ此限リニア

 ラスLとされていた。そして、創眼はその他人が知りえた

 る時のみ効カあるのであり、一般には他人が知りえたと想

 察すぺきでないから、営業圭がこれを証明すぺきである、

 とされる。ロエスレル氏起稿・商法草案上一六〇、 一六二

 員。

(58) 星野・法協八二巻四号九九頁。同・民法概論1(改訂

 版昭四九)ニニ七貝は、通常の重過失と呼ぱれるものであ

 るとする。なお、鈴木・前掲警六二、六三頁参照。

                  (一橘大学教授)

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