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次世代インクジェット技術

次世代インクジェット技術 - epson.jp · い製品群に展開できます。この優れた拡張性にピエゾ方式特有の耐久性とインク多様性を統合 し、ドキュメントを印刷するデスクトッププリンターから、ポスターやラベルなどを印刷する商業

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次世代インクジェット技術

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1. PrecisionCoreテクノロジー

2. 印刷市場全体で高まる高速印刷へのニーズ

3. 300億円の投資:革新的な要素技術とMEMS製造技術との融合

4. PrecisionCoreテクノロジーが実現する高速印刷

5. プロフェッショナルな印刷品質と耐久性

6. PrecisionCoreテクノロジーの信頼性

7. PrecisionCore: 未来のテクノロジー

テクノロジーフォーカス :● PrecisionCoreを支えるテクノロジー● 解像度̶数字だけでは語れないインクジェットの印刷品質● インク対応性● オフィスプリンターの改革 : レーザープリンターのような印字品質、鮮やかな色彩、 耐久性

補足 : PrecisionCoreプリントチップ仕様

 

 

目次

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PrecisionCore(プレシジョンコア)テクノロジーは、500年にわたる印刷技術発展の歴史にお

いて、エプソンが成し遂げた新たな進歩です。印刷速度を大幅に向上させながらも高画質な

印刷を実現し、インクジェットプリンティングの水準を新たなレベルにまで引き上げています。

PrecisionCoreテクノロジーの中核は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製造

技術をベースとして開発された次世代のプリントチップです。このチップを構成する薄さ1ミク

ロンのピエゾアクチュエーターにより、非常に高速かつ正確にインクを吐出させることができま

す。PrecisionCoreテクノロジーは、エプソンがこれまで長年培ってきた技術を継承しながらも、

それをさらに幅広い分野・用途に対応できるように発展させ、より高画質で耐久性に優れたプリ

ントを実現します。

PrecisionCoreプリントチップは拡張性が高く、用途に合わせて配列することにより、シリアル

方式(可動式ヘッド)とライン方式(固定式ヘッド)両方のプリントヘッドを構成することが可能です。

さらに、PrecisionCoreプリントチップを用いたプリントヘッドは、さまざまな種類のインクに対

応できるため、多種多様なメディアに印刷することができます。このような特長により、デスク

トッププリンターから産業用の大型ラベル印刷機に至るまで、さまざまな製品に同一のプリント

チップを適用することができます。

PrecisionCoreテクノロジーに対する投資は、これまでエプソンが行ってきた投資として最大

規模のものです。このテクノロジーは、要素技術の飛躍的な進歩と高精度なMEMS製造技術

を融合させて開発した、新たな市場を切り開く最先端のインクジェットプリンティング技術です。

お客様に最高の品質を最適な価格で提供するために、エプソンは取り組みを続けています。

また、安定した量産体制のもと、この新開発のプリントチップを幅広い市場分野へと展開するこ

とで、エプソンは、オフィス向けのレーザープリンターや産業用印刷機、さらに従来のアナログ

印刷機をも含む、あらゆる領域において、次世代の高性能インクジェットプリンティング技術へ

の置き換えを加速させていきます。

1. PrecisionCoreテクノロジー

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1440年代、ヨーロッパでグーテンベルグが活版印刷を発明して以来、印刷は世界の文化や経

済において重要な役割を果たしています。過去10年間、印刷産業の市場規模は年間平均1%

で拡大し続け、今では8,000億米ドルに達していると言われています *1。小規模オフィスから巨

大な工場に至るまで、あらゆる場所で印刷が行われています。

しかし、活版印刷が発明されてから500年以上経った現在でも、ほとんどの企業ではいまだに

モノクロ印刷が多く使用されています。ラベル製造の現場では、改訂が必要になるたびに、大

量の印刷済みラベルが毎月廃棄されています。また、服飾生地メーカーは、ファッショントレン

ドを予測して、あらかじめ次のシーズンの準備をしなければなりません。一方、ラベルやパッ

ケージなどの多品種小ロットの要求は、これから増え続けると予想されています。印刷に対す

るニーズが多種多様化し、オーダーメイド的な対応が要求される今日の印刷業界では、印刷に

かかるコストや納期はさらなる圧縮が求められています。

近年、デジタル印刷は、その最大の利点ともいえるオンデマンド性が非常に有益であることが

認識されてきていますが、さらに大きな成長を続けるためには、印刷品質に妥協することなく、

印刷速度のさらなる高速化を実現していく必要があります。このような高速・高画質のニーズ

に対応することによって、インクジェットプリンティングは、2つの大きな印刷領域においてビジ

ネスを拡大することが期待できます。1つは、オフセット印刷に代表される従来のアナログ印刷

の領域、もう1つは、レーザープリンターがシェアの大半を占めるオフィスプリンティングの領

域です。

従来のアナログ印刷は、速度が速いとはいえ、コスト効率が良いのは、同じ印刷物を大量に印

刷するときだけです。少量印刷の場合は、製版などの印刷前工程の作業にかかる費用や工数に

より、あまり効率的な印刷方法ではないと言われています。そのため、ラベルやテキスタイル

などの「小ロット・多品種」の印刷では、すでに、アナログ印刷機からインクジェット方式のデジ

タル印刷機に代わり始めています。デジタル印刷は、版が不要で、オンデマンドで印刷できる

ため在庫を抱える心配もなく、品目ごとにカスタマイズした印刷物をすばやく提供することがで

きます。

前述のアナログ印刷以外の領域では、オフィス向けレーザープリンターと、一部の商業用プリ

ンターが市場シェアの大半を占めています。そんな中、レーザープリンターが備える高い耐久

性と印字品質に、インクジェットの特長である高い色再現力と効率性、さらに商業・産業用印

刷機並みのスピードを持ち合わせた、新世代のインクジェットプリンターが登場し始めています。

レーザープリンターが独占するビジネス市場は、今後さらに速いペースで、この新世代のイン

クジェットプリンターに置き換わっていくと予想できます。

このような市場ニーズをとらえ、エプソンは、独自の優れたピエゾ技術を搭載した拡張性の高

いPrecisionCoreプリントチップを開発し、商業・産業領域からオフィス向けのデスクトッププリ

ンターにいたるまで、高速なオンデマンド印刷をお客様に提供していきます。

2. 印刷市場全体で高まる高速印刷へのニーズ

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3. 300億円の投資:革新的な要素技術とMEMS製造技術との融合

エプソンの強みは、その起源でもある時計製造で培われた、精密加工技術をベースとした「も

のづくり力」にあります。このものづくりの技術は、その対象が機械式時計の内部構造であろ

うと、ミクロンレベルのプリントヘッドであろうと、独自の製品や技術を生み出す際に、柔軟性

のある設計や製造を行う原動力となります。1980年代、エプソンはインクジェット技術の開発

に取り掛かり、電圧を加えると変形する性質を持つ薄い圧電素子を使用してインクを吐出する、

ピエゾ方式を採用しました。この方式の大きな利点は、ほぼすべての液体をほぼ全てのものに

驚くべき精密さで印刷できるポテンシャルがあり、かつ耐久性にも優れているということです。

家庭用フォトプリンターが普及してきた2003年、エプソンはピエゾ技術の可能性をさらに拡げ

ていくことに狙いを定めました。印刷業界、とりわけ商業・産業用の印刷機に要求される、高

速、高品質、高信頼性といった高い性能を実現するため、液滴サイズを正確にコントロールで

きる、可能な限り薄いピエゾ素子を開発する必要がありました。その結果が、2007年に発表し

たTFP(薄膜ピエゾ)技術です。そしてこれが、PrecisionCoreテクノロジーの始まりです。

薄さわずか1ミクロン(人間の髪の毛の太さの100分の1)のピエゾ結晶膜の技術開発に成功し、

プリントヘッドのノズル密度を大幅に高め、小型でありながらもインク吐出量を最大限に増加さ

せることを可能にしました。また精密に作られたノズルやインク流路とこの薄膜ピエゾを組み合

わせて作られるエプソンのプリントヘッドは、真円に近いインク滴を高い精度でメディアに着弾

させることができます。

2007年以降、薄膜ピエゾはエプソンの最も重要なテクノロジーのひとつとなっており、巨大な

ポスターや看板などを制作する際に、高い生産性と細部の描写や色彩表現といった高画質印刷

が必要となる大判インクジェットプリンターに採用されています。PrecisionCoreプリントヘッド

テクノロジーは、この薄膜ピエゾ技術にさらなる要素技術分野での革新と高精度なMEMS製造

技術を融合させ、より広範囲な印刷用途にその可能性を拡げています。PrecisionCoreテクノ

ロジーに対して、エプソンはこれまでに、研究開発、機械・設備投資などを含めておよそ300

億円の投資を行ってきました。これはエプソンの歴史においても大規模な投資のひとつで、ピ

エゾ材料開発から製造技術開発、生産設備の設計まで、ほぼすべてを自社で手がけています。

この革新的な技術開発の成果が、PrecisionCoreマイクロTFPプリントチップです。ピエゾア

クチュエーターの変位量がPrecisionCoreTFPプリントチップの2倍になり、インク流路、電

極など、さまざまな構成要素が最適に設計され、さらなる小型化を実現しました。また、この

プリントチップは用途に応じて最適に配列してプリントヘッドを構成できるモジュラー設計のた

め、同一のプリントチップをシリアル方式にもライン方式にも採用でき、高度な基本性能を幅広

い製品群に展開できます。この優れた拡張性にピエゾ方式特有の耐久性とインク多様性を統合

し、ドキュメントを印刷するデスクトッププリンターから、ポスターやラベルなどを印刷する商業

用プリンター、産業用印刷機に至るまで、さまざまなアプリケーションに展開していきます。

1993年にはじめて一般向けのインクジェットプリンターを世に送り出して以降、業界最高水準

の印刷品質を提供することに努めていますが、PrecisionCoreテクノロジーを通じて、インク

ジェットプリンティング業界のリーディングカンパニーとしてさらなる高みを目指していきます。

商業分野ですでに実績があるTFP(薄膜ピエゾ)と、さらに進化したマイクロTFPを搭載したプ

リントヘッド技術の両方を備えるPrecisionCoreテクノロジーにより、最高レベルのパフォーマ

ンスと価値を幅広いお客様に提供していきます。

PrecisionCoreマイクロTFPプリントチップ

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PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーは、高生産性を実現するカギとなるスピードとパワー

の両方を実現できるプラットフォーム技術です。PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーでは、

エプソン従来のピエゾプリントヘッドの2~ 3倍の解像度を実現しています。インク滴を、正確

な位置に、必要な量だけ吐出することで、スピードとパワーを同時に実現できる能力を備えてい

ます。スピードの面だけでいうならば、例えばエプソンの大判インクジェットプリンターは、ピエ

ゾ素子の収縮によりひとつのノズル穴から1秒間に5万発に近いインク滴を吐出します。純粋に

パワーの面でいうと、PrecisionCoreプリントヘッドのノズルからは、最小1.5ピコリットル(ピコ

は1兆分の1)の極小のインク滴から、最大32.5ピコリットルまでの大きさのインク滴を吐出する

ことができます。“スピードもパワーも”ということでいえば、PrecisionCoreラインヘッドを搭載

するSurePress L-6034VW(産業用デジタルラベル印刷機)は、52,800個のノズルを備え、1

分間に15mの印刷物を出力することができます。

インク着弾形状と精度

通常、ピエゾインクジェット方式では、解像度を上げるとピエゾの変位量が減り、ノズルから1回

に吐出できるインク量は減少してしまうので、特定のインクまたはメディアによっては、必要なイ

ンク量を吐出するために、パス数(一定の範囲を印刷する際にヘッドが往復する回数)やノズル数

を増やさなければならないこともあります。一方、PrecisionCoreプリントヘッドでは、大小複

数サイズのインク滴を打ち分けられるため、このような問題を回避できます。

高濃度の広い領域を高速で印刷する場合やグラデーションのような細かいディテール表現が必

要な部分を印刷する場合、あるいはその両方を同時に実行したい場合に、PrecisionCoreテ

クノロジーがあれば、最適なインクドットを正確でムダなく吐出でき、高画質と高速を両立で

きます。1インチあたりの性能でみると、高解像度を実現するPrecisionCoreプリントチップ

は、世界で最も高速なインクジェットプリンティングテクノロジーのひとつです。以下の表に、

PrecisionCoreプリントチップの性能を示します。

先述のように、PrecisionCoreプリントチップは、シリアル方式にもライン方式のいずれのヘッド

にも適用できます。

4. PrecisionCoreテクノロジーが実現する高速印刷

インチあたりのノズル数

ノズル列の長さ

プリントチップあたりのノズル数

インク滴のサイズ

動作周波数

一列あたりの吐出性能

PrecisionCoreTFPプリントチップ PrecisionCoreマイクロTFPプリントチップ

720        600

25.4mm(1インチ)        33.8mm(1.33インチ)

720(360×2列)         800(400×2列)

  1.5~ 32.5ピコリットル

  最大 50kHz

113μℓ/秒   130μℓ/秒 PrecisionCoreマイクロTFPプリントチップ

PrecisionCore TFPプリントチップ

PrecisionCoreプリントチップの性能

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複数のエンジンを使用して大きな機関車を動かすように、PrecisionCoreラインヘッドは、複数

のプリントチップを並び合わせて、用紙幅の範囲を一度に高速で印刷することができます。たと

えば、SurePress L-6034VWの場合は、1ヘッドあたり11個のPrecisionCoreマイクロTFP

プリントチップを配列したヘッドが6つ、つまり合計66個のプリントチップを搭載したラインヘッド

方式で、幅33cmのメディアであれば1分間に15mの高速印刷が可能です。このSurePress

L-6034VWは、マルチパス方式のSurePress L-4033AWに比べて、5倍も速く印刷すること

ができます。

高速画像処理、正確な紙送り

PrecisionCoreプリントチップのスピードを十分に生かすには、データ転送や制御を高速に行

う高性能な ICなども必要です。インクジェットプリンターは、最高の画質を得るために複雑な

画像処理を行って最適なインク色と液滴サイズの組み合わせを決定しています。通常、この

データ処理は、エプソンが自ら設計した高性能な専用 ICで、高速かつ円滑に実行されていま

す。SurePress L-6034VWは、600×600dpiの高解像度を実現しながらも、1分間に15mの

スピードで印刷します。言い換えると、その間に、インクを吐出するかどうか、吐出する場合は

インク滴のサイズをどのくらいにするかの決定を、1秒間に約25億回行なっているのです。

同様に、用紙の制御についても高いレベルが求められます。エプソンの印刷技術は、単にプリ

ントヘッドからインクを正確に吐出するだけにとどまりません。SurePress L-6034VWでは、ス

ムーズで正確な紙送り機構による安定した連続給紙を実現し、高速印刷を確実なものにしてい

ます。1分間に15mという高速印刷においても、給紙位置の横ずれはわずか2.5mm以内です。

SurePress L-6034VWでは、紙の位置合わせの精度を維持しながら、必要に応じて印刷媒体を

逆方向に搬送し、必要な処理をすることもできます。

高速印刷を実現するには、高密度・高速のノズル、高速で拡張性の高いプリントチップ、業界

トップレベル品質のインク、正確かつ安定した連続給紙など、印刷に関わる主要なテクノロジー

を高いレベルで集結させる必要があり、エプソンはそれらのすべてを自社で開発しています。

大判プリンター用、5チップ、TFPプリントヘッド

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SurePress L-6034、11チップ、33cmのラインヘッド

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プロフェッショナルな画質

画質はさまざまな要素によって決まります。PrecisionCoreプリントチップは、従来のピエゾプ

リントチップと比べて、ノズル密度が2~ 3倍になり、1チップあたり600dpiまたは720dpiの

解像度で出力することが可能です。通常の用途ではこのレベルの画質で十分ですが、さらに、

ピエゾ技術を生かした複数サイズのインク滴の打ち分けやインク吐出の正確なコントロールと

いう強みを加えると、PrecisionCoreテクノロジーでは、実際の解像度以上の画質を実感する

ことができます。

インクドットのサイズは、ピエゾ素子に加える電圧を緻密に制御することによってコントロールで

きます。この特性こそ、エプソンがピエゾテクノロジーを採用したそもそもの理由の1つです。

MEMS製造技術によってつくられるPrecisionCoreプリントチップの高精細なノズルは、その

特性をさらに強化します。左 (上 )は、直径約20ミクロンのノズル穴の写真です。真円に近い

高精細な穴が連続して形成されていることが分かります。

左(下)は、このノズルから吐出され、着弾したインクドットの実際の写真です。一つのドットは

直径わずか40ミクロンという非常に小さなものですが、微細で真円に近いドットが連続して正

確に着弾していることが見て取れると思います。

このように、エプソンは、全体としての画質はもとより、それを構成するインクドットの1つ1つ

でも最高の品質を極めています。これにより、高画質印刷が必須要件となるプロフェッショナル

なグラフィックアートやデジタルプルーフなどの分野においても高い評価を得てきました。ビジ

ネス文書で文字や線をくっきりとシャープに印刷する場合も、ドットの精度が特に重要です。さ

らに、インクドットの形状と着弾位置を正確にコントロールすることで、メディアやインクの違い

に応じて吐出方法を細かく調整し、商業・産業用途における要求を満たす高速・高画質を実現

しています。

PrecisionCoreプリントヘッドは、ノズルを効率的に使います。1つのノズルから複数の異なる

サイズのインクドットを状況に応じて打ち分けられる技術により、まるでさまざまな大きさのノ

ズルを使い分けるかのようにリアルタイムで最適なドットを吐出し、結果、高品質な出力が可能

になります。滑らかな曲線を描いたり、文字をくっきりと印字したり、あるいはグラデーション

や塗りつぶしなどにも的確に対応することができます。

PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーには、多様な液体を吐出できるという大きな利点が

あります。これは、さまざまな種類のインクに対応できることを意味し、特殊コーティングが施

された用紙を使用しなくても、幅広い色再現領域を実現できるインクを使用することが可能と

なります。

左のガマット(色域)図はエプソンの次世代ビジネスインクジェットプリンター用顔料インクの色域

(普通紙に印刷した状態)がレーザープリンターの色域と同等レベルであることを示しています。

これは、高濃度で速乾性のあるインクにより、用紙の表面に顔料が定着するためです。

UVインクは、インクジェットプリンターで安定して使用することが非常に難しいインクです。し

かし、SurePress-L6034VWでは、UVインクを安定して使用でき、また幅広い素材(メディ

ア)に対応できます。同時に、商業用デジタルプリンターで主流の4色液体トナー方式よりも広

い色域とパントンカバー率で印刷を行うことが可能です。これは新しいUV硬化型インクに含ま

れている色彩豊かな色素粒子とより透明な樹脂コーティングによるものです。このような幅広

い色域と発色濃度により、お客様の細かいニーズに対応した色表現が可能となります。

5. プロフェッショナルな印刷品質と耐久性

ノズルプレート

真円に近いインクドット

エプソンの次世代ビジネスインクジェットプリンター用顔料インクの色域(A)とエプソンのレーザープリンターの色域(B)との比較

A

B

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優れた耐久性

このようにインクやメディアに柔軟に対応できるということは、印刷物の耐久性に関しても非常

に大きな優位性があるといえます。ビジネス文書から産業用ラベル、さらには、数年間は使用

されるカーラッピングや何百回もの洗濯に耐えうる衣類など、出力物の耐久性は非常に重要で

すが、エプソンは、こういったさまざまな用途において、耐久性に配慮したバラエティに富んだ

インクを提供することができます。

例えば、エプソンのUVインクは、屋外で使用される製品やアルコールなどを使用する製品の

ラベルなど、さまざまな環境における長期間の使用でも、オリジナルの品質を保持するよう最

適化されており、すぐれた色表現の実現と同時に、耐久性の面でも、商業・産業用のラベル印

刷の高い要求に応えます。

エプソン独自の技術によって、メディアに応じて適切な成分を組み合わせた速乾性のある顔料イ

ンクは、特殊な印刷用紙を使用しなくても、色褪せやにじみを防ぎ、耐水性を備えた印刷物を

出力できます。エプソンのラベル用の顔料インクは、アルコールやハンドソープなどの石鹸類、

メチルエチルケトン(ペンキ除去剤などで使用されている成分)に対しても耐性があります。

例えば、海上で取り扱われる危険物に貼り付けるラベルの耐久性に関する国際基準として、英

国規格BS5609*2という規程があります。BS5609では、印刷物の耐久性や耐摩耗性などを含

め、耐久性基準が厳しく規定されています。1つ例を挙げると、「印刷物は少なくとも3ヵ月間海

水に浸したとしても、印刷された文字を読むことができなければならない」と規定されています。

このBS5609に準拠しているインクジェットプリンターは、エプソンのプリンターだけです *3。

PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーは、エプソンのすぐれたインク技術を組み合わせる

ことで高速印刷を実現し、普通紙でも、高画質・高濃度、にじみのない高精細な文字、そして

圧倒的な耐久性と速乾性を兼ね備えた印刷を可能にしています。そして、インクジェットプリン

ティングの品質水準をさらに引き上げていきます。

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プリントヘッドの定期的なメンテナンスは、信頼性の高い印刷品質を提供するために不可欠なも

のです。PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーにおいては、独自のピエゾ技術の特性を最

大限に生かして、何ページにわたっても、何ヵ月、何年にわたっても、高い信頼性を提供する

技術開発が進んでいます。そして、この技術は、今後さまざまなプリンターに展開できるポテ

ンシャルをもっています。

一般的にインクジェットプリンターの多くは、ノズルが正常にインクを吐出できる状態を保つた

めにさまざまな工夫をしています。例えば、プリントヘッドにキャップをすることによって湿度が

保たれ、ノズルのインクは粘度を保ち、乾燥することなく、必要なときにすぐに吐出することが

できます。また、インクの中に溶け込む空気を少なくして、インク室での気泡の発生を抑える

システムもあります。さらにPrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーでは、ピエゾ自身の力

を使って信頼性を向上する、ピエゾヘッドだからこそできる新たな技術展開を試みています。

ピエゾ素子は、電圧を加えると変形して、アクチュエーター(インクを押し出すポンプ)の

役割を果たしますが、逆に、変形すると電圧を発生するという特性も持っています。また、

PrecisionCoreプリントヘッドテクノロジーのピエゾ素子は、電圧を加えると非常に大きく変形

する強力な圧電素子です。逆に言えば、変形に対して極めて敏感に電圧を発生するセンサーに

もなるのです。このセンサーとしての特性を使って、吐出が正常か、気泡が発生して吐出が妨

げられていないか、インクの粘度が上がって問題が発生する可能性がないかを1000分の1秒

単位で検出します。つまり、PrecisionCoreプリントヘッドのノズルは、一瞬で状態を自己診断

することができるのです。

近い将来、このような診断情報に基づいて、もし問題のあるノズルがあったとしても、それ以

外のノズルで埋め合わせをしておき、次のメンテナンスの時期までプリンターを動かし続ける、

といったことが可能になります。

つまり、PrecisionCoreの場合、プリンターが停止するのは、本当に

必要なとき、または適切なタイミングだけになるということです。

6. PrecisionCoreテクノロジーの信頼性

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ピエゾ素子に電圧を加えることでノズル状態を診断する技術

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今日、印刷市場においては、ハードウェアやインク、メディアの価格だけでなく、プリンター

がもたらす利便性や柔軟性など、付加価値が重要になっています。例えば、アナログ印刷機

は、大量印刷を前提に設計されているので、少量印刷にはあまり適していないと言われていま

す。一方、オフィス向けレーザープリンターは、モノクロ印刷の場合は経済的ですが、カラー

印刷の場合は、費用効率があまり良くないと考えられています。

このような環境においてエプソンは今後、優れた拡張性とさらなる可能性をもつ

PrecisionCoreテクノロジーを次世代のプリンティングソリューションとして新たな市場にも広

く展開し、高度な技術を身近な価値ある技術として幅広いお客様に提供していきます。さらに、

エプソンは優れたインク技術も有していることから、広範な市場においてこのテクノロジーの可

能性をさらに多様な用途・分野に拡げることができ、お客様の便益を向上できると確信してい

ます。

より速いプロセッサーが IT革命を推し進めたように、より速いプリントチップが、生産性が高く

経済性に優れた印刷を実現する最も重要な原動力となっていきます。カラー印刷がモノクロ印

刷と大差なく日常的に使用できる、印刷の新たな時代が到来しつつあります。次世代のインク

ジェットプリンティング技術の普及により、企業とっては、生産性を向上するための選択肢が増

え、次々にプリンターを買い足す必要はなくなります。プリントサービスを提供する会社は、看

板、ラベル、Tシャツなどに対して、短納期で大量に印刷するコスト効率のよい出力だけではな

く、個人のニーズ合わせてカスタマイズされた出力物をオンデマンドで提供できます。印刷工

場は、高速インクジェットのメリットを活用して、プロフェッショナルな印刷品質を実現しながら

も業務効率を上げ、カスタマイズしたラベルやパッケージをオンデマンドで提供し、在庫数を減

らすことができます。

これまで述べたことは、PrecisionCoreをはじめとするデジタルインクジェット技術によってす

ぐに改善が可能な、現在の印刷市場の課題です。PrecisionCoreテクノロジーは応用範囲が

広く非常に柔軟性に優れているため、将来、想像もできないような使用用途がでてくる可能

性を秘めています。PrecisionCoreテクノロジーの優れたインク対応性により、多種多様なメ

ディアへの印刷が可能であることはすでに説明しました。今後、プラスチック、ガラス、布地、

金属、粘土など、新たなメディアにもその技術は拡がっていきます。さらには、液晶パネル用

のカラーフィルターやプリント基板の金属配線など、微小な液滴を精密に吐出する必要がある

工業応用分野においても、TFP(薄膜ピエゾ)技術をベースとしたライン方式のプリントヘッドで、

高速・高効率な製造・形成を実現できるポテンシャルをもっています。PrecisionCoreテクノロ

ジーは、インクジェット技術の可能性を拡げています。

PrecisionCoreテクノロジーは、長年にわたる精密加工・組み立て技術の蓄積と経験、ピエゾ

材料分野での飛躍的な進歩、高精度なMEMS製造技術の確立、そして生産効率が高い製造プ

ロセスによって実現した、プリンティングの世界を牽引する次世代のインクジェットプリントヘッ

ド技術です。エプソンは、今後もプリンティングテクノロジーの最前線に立ち続け、今も、そし

てこれからも高品質なプリンティングを提供することをお約束します。

7. PrecisionCore: 未来のテクノロジー

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ピエゾアクチュエーター

インク室

0.55mm

84.7ミクロン

ノズル

インク流路

使ってシリコンやガラスの上に微小な機械システ

ムを形成する技術で、加速度センサーとして自動

車や携帯電話に、そしてHDDの部品など現代社

会を支えるさまざまな機器を製造する際に使用さ

れています。エプソンでは独自のピエゾ材料にこ

のMEMS製造技術を組み合わせることで、小型

で高性能なアクチュエーターの製造と高精度なイ

ンク流路加工を行い、正確で高速なインク吐出

を実現するPrecisionCoreプリントチップを製造

しています。

精密加工技術

プリントヘッドの構成要素となるプリントチップユ

ニットは、独自の画像処理技術と高精密組立技術

を併せ持つエプソンの産業用ロボットにより生産

されています。これらのプリントチップは、エプソ

ンの高度な生産技術を継承した最先端の完全自

動組立ラインで、インク流路、フィルター、電子

基板などに接続され、プリントヘッドとなります。

自動生産ラインの組立ロボット

12

TFP(薄膜ピエゾ)

ピエゾ素子は、電圧をかけると変形する特性(逆

圧電効果)を持っています。この変形動作は、イ

ンクを押し出す微小なポンプ(アクチュエーター)

の役割を果たしており、エプソンのほぼすべての

インクジェットプリンターに採用されています。一

般的に、ピエゾ素子は薄ければ薄いほど変位量が

大きくなります。

従来のピエゾプリントヘッドは、ピエゾ素子を精密

に機械加工して作られます。PrecisionCoreTFP

プリントチップの場合、エプソン独自のピエゾ材

料の配合と製造技術により、より緻密に結晶化

させた素子を作ることで、ピエゾのアクチュエー

ターとしての性能を飛躍的に高めています。厚さ

は、わずか1ミクロンです。

MEMS製造技術 

下の図は、エプソン独自のMEMS(Micro Electro

Mechanical Systems)製造技術で作られた

PrecisionCoreマイクロTFPプリントチップの心

臓部である84.7ミクロンの間隔で形成されたイ

ンク室、ピエゾアクチュエーター、ノズルプレー

トの拡大図です。MEMS製造技術は、LSI(超

小型の電子回路)などの半導体と同じ加工技術を

PrecisionCoreを支えるテクノロジー

ピエゾ結晶断面の電子顕微鏡写真

PrecisionCoreプリントチップの主要構成要素

テクノロジーフォーカス :

Page 13: 次世代インクジェット技術 - epson.jp · い製品群に展開できます。この優れた拡張性にピエゾ方式特有の耐久性とインク多様性を統合 し、ドキュメントを印刷するデスクトッププリンターから、ポスターやラベルなどを印刷する商業

画質は1インチあたりの印刷ドット数(dpi)で決ま

ると長い間考えられてきましたが、人が感じる印

刷品質は、単なるドット数だけではないさまざま

な要素が関係しています。現在の印刷技術では、

人間の眼では認識できないほどの微細なドットを

作り出すことが容易にできますが、画質を本当に

理解するためには、解像度と並行して他の要素を

考慮する必要があります。

研究 *4によると、純粋な解像度よりも、画像で

使用されるグレースケールの階調レベルのほうが、

見た目の品質に大きな影響を与えることがわかり

ました。右の図は、複数のドットサイズによるグ

ラデーションのイメージ図です。PrecisionCore

プリントヘッドは、1つのノズルから複数の異なる

サイズのインクドットを打ち分けられるので、薄

い階調部分には小さいドット、濃い部分には大き

いドットを使用して、グラデーションをきれいに表

現できます。このような理由から、印刷技術を比

較する場合に解像度だけではその品質を決めるこ

とはできません。実際、エプソンのプリントは解

像度の値ではなく、色域の広さとグラデーション

の美しさで高画質だと評価されています。

また、インクドットの着弾精度も、特に細部の描

写においては重要な要素になります。ドットの着

弾位置や形が正確でなければ、いくらドットを増

やしたとしても効果はありません。ここでいう着

弾精度とは、ドットを正しい場所に打つだけでは

なく、真円に近いドット形状になっているか、何

ページにもわたる印刷でもその形状をくり返し再

現できるかなど、複数の要素を意味しています。

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解像度̶数字だけでは語れないインクジェットの印刷品質

複数のドットサイズによる、なめらかなグラデーションのイメージ図

一般に市販されているプリンターの場合、そのイ

ンクには約20の成分が含まれており、各成分が

印刷物を完成するために重要な役割を果たしてい

ます。ピエゾ方式によるPrecisionCoreプリント

ヘッドは、熱を使用しないため、インク素材の制

約を受けることなく、高濃度の顔料などさまざま

な種類のインク成分を使用できます。

これにより、多くのメリットがもたらされますが、

ひとつは、これまで以上に色彩豊かで耐久性の

あるインク開発が可能です。エプソンのインク開

発では、高濃度の顔料とバインダーを含めること

ができるため、熱を使うインクジェット方式と比

べ、出力物の耐久性が強化され、より明るく鮮や

かな色彩の写真やドキュメント、ラベル、布地な

どを印刷できます。また昇華性染料を使用する

こともでき、専用の昇華転写プリンターではコー

ヒーカップなどの日常品にも転写することができ

ます。また、エプソンのビジネス向け顔料インク

は、その耐久性と鮮やかな色彩が実証されてい

ます。さらに、インク成分に機能性添加剤を加え

インク対応性ることで、対応可能なメディアが増え、これまで

以上にさまざまな素材にインクを定着できるよう

になります。

このように、印刷に熱を用いないPrecisionCore

テクノロジーは、顔料、染料、エコソルベント、

樹脂、昇華性染料、油性、またUV硬化型インク

など、バラエティに富んだインクを使用できます。

つまり、独自開発した多様なインクを使用して、

オフィス文書から光沢紙を使ったラベル、合成繊

維まで、3ポイントの小さな文字から看板用の大

きな文字まで、多種多用な用途に対応することが

可能です。

テクノロジーフォーカス :

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印刷頻度の高いオフィス用レーザープリンターの

耐久性と印字品質に、インクジェットの色彩豊かな

カラー印刷を組み合わせた、新世代のインクジェッ

ト製品が、最近オフィス用プリンターとして登場し

始め、レーザープリンターに対抗しています。

レーザープリンター(乾式トナー電子写真または乾

式トナー EP)は、1980年代以降にオフィス用プリ

ンターとして普及しました。レーザープリンターは、

電荷の力で粉末のトナーを内部の部品に付着させ、

その後、トナーを用紙の表面に転写し、熱をかけ

て定着させます。レーザープリンターは、ビジネ

ス文書において重要とされる、OD(光学濃度、印

刷濃度)や輪郭がくっきりとした印字に優れていま

す。これは、帯電した複数の粉末状のトナーが結

合して紙に定着することで、輪郭のはっきりした文

字や線を形成できるからです。そのため、長い間、

オフィスプリンターとして多用されてきました。

一方で、インクジェットプリンターは、何色ものイ

ンクをさまざまなドットサイズで正確な場所に吐出

することができるので、写真のような豊かな色彩

表現が可能で、空の色や人の肌の色のような微妙

なグラデーションも色鮮やかに印刷できます。しか

し、普通紙に小さな文字や線を描く場合には、イ

ンクドットのにじみが目立ったり、インクドットの正

確さが十分でなかったために、文字の輪郭がゴツ

ゴツとして見え、長い間、インクジェットはビジネ

ス文書には不向きとされてきました。しかし、今や

その差はなくなりつつあります。

右は、PrecisionCoreのインクジェットプリンター

とエプソンのレーザープリンターによる印字サン

プルを比較したものです。PrecisionCoreプリント

ヘッドは、真円に近い小さなドットを今まで以上に

正確に打つことによって、ビジネス文書の文字印刷

(黒)も、レーザープリンターで印刷した文字と肉

眼では見分けがつかないほどの品質を実現してい

ます。

つまり、PrecisionCoreは、レーザープリンターが

得意としていた小さな文字や線と、インクジェット

の強みであるカラー表現の豊かさを両立する技術

なのです。

さらに、PrecisionCoreとエプソンのビジネスイン

クで印刷した文書は、特殊な紙だけでなく、普通

紙でも、オフィス印刷で求められる高い耐久性を

備えています。例えば、レーザープリンターで印

刷した文字を蛍光ペンでなぞるとインクをはじい

オフィスプリンターの改革 : レーザープリンターのような印字品質、鮮やかな色彩、耐久性

てしまいますが、PrecisionCoreで使用されてい

るビジネス印刷用の顔料インクを使っていれば蛍

光インクをはじくことがなく、インクがにじんで文

章が読めなくなることもありません。また、レー

ザープリンターと同様に、印刷した部分を擦って

文字が消えるようなこともありません。オフィス

ではメモを書き込んだり、折り曲げたり、擦ったり

と、印刷した後にさまざまな使われ方をしますが、

PrecisionCoreとエプソンのビジネス用インクで印

刷したオフィス文書は、このような使用環境下でも

くっきりした文字がしっかり読めます。

また、インクジェットプリンターは、レーザープリ

ンターで大きな電力消費を必要とする感光や定着

といったプロセスがないため、節電が可能になり、

レーザープリンターに比べてエネルギー消費量を

大幅に減らすことができます。また、レーザープ

リンターの場合、ほとんどの場合において、感光

体や定着ユニットなどの定期交換が必要で消耗品

の費用がかかりますが、インクジェットプリンター

ではこの手間と経済的な負担が少なくてすみます。

さらに、レーザープリンターとは異なり、起動前

にウォーミングアップする必要がないため、電源

投入時またはスリープモードから復帰するときに高

速起動が可能です。このように、オフィス用プリン

ターとして市場を独占してきたレーザープリンター

に代わり、インクジェットプリンターが活躍の場を

広げる時がきているのです。

PrecisionCore インクジェットプリンターによる印字サンプル (12ポイント)

エプソンのレーザープリンターによる印字サンプル (12ポイント)

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PrecisionCore

TFPプリントチップPrecisionCore

マイクロ TFPプリントチップ

テクノロジー

プリントチップ構成

互換性のあるインクの種類

動作周波数

インク滴サイズ

寸法(長さ × 幅)

ノズル列の長さ

プリントチップあたりのノズル列

ラインあたりのノズル数

プリントチップあたりのノズル数

インチあたりのノズル数

プリントチップあたりのノズルピッチ

(2ノズル列)

29.7 × 8mm       38.5 × 6.8mm

25.4mm (1インチ)   33.8mm (1.33インチ)

2列           2列

360            400

720            800

720            600

35.2µm(700dpi)        42.3µm(600dpi)

TFP(薄膜ピエゾ)技術

MEMS(微細加工技術)すべてシリコンのインク流路とノズルプレート

水性、ソルベント、樹脂、紫外線硬化型など

最大 50kHz

1.5 ~ 32.5ピコリットル(複数のインク滴サイズを打ち分け可能)

PrecisionCoreプリントチップ仕様補足

*1. 出典:Pira International, Infotrends

*2. 英国規格BS-5609は、海上で取り扱われる危険物に貼り付けるラベルの耐久性に関する国際基準  エプソンのPX-510、TM-C3400、GP-C820がこの基準に準拠

*3. エプソンの顔料インクを使用してNeenah KIMDURAR® インクジェット用紙に出力

*4. Farrell, J.E (1997). Grayscale and Resolution Tradeoffs in Photographic Image Quality. SPIE Vol. 3016

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2013年 9月 発行

〒392-8502 長野県諏訪市大和3-3-5Tel: 0266-52-3131(代表)http://www.epson.jp

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